説明

波エネルギーを電力に変換する装置

本発明は、波エネルギーを電力に変換する装置に関し、この装置は、密閉浮遊要素(1)と質量形成要素(2)とを含み、質量形成要素(2)が、浮遊要素(1)の内部に配置され、浮遊要素(1)に対して動くように取り付けられ、質量形成要素(2)が、浮遊要素(1)に対する波の作用の下で、浮遊要素(1)に対して相対的に動くように駆動されるよう適合される。本発明は、質量形成要素(2)の動きをロックするように適合されたロック手段(13)と、連続する波に対して装置の動きを連続的に適合させることによって質量形成要素(2)の動きを増幅するために、質量要素(2)を選択的にロックまたはロック解除するようにロック手段(13)を制御するよう適合された制御手段とをさらに含むことによって特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波エネルギーを電気エネルギーに変換する装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
「波力発電機」とも呼ばれるこれらの装置が特に興味深いのは、それらを用いると、温室効果ガスを排出せずに、再生可能なエネルギー源(波の位置エネルギーおよび運動エネルギー)から電気を作り出すことができるからである。
【0003】
波から生成されるエネルギーの有用性は、島のような孤立した場所に電気を供給するという状況では、さらに大きい。
【0004】
仏国特許第547765号明細書(1924年7月28日発行)は、波のうねりによって発生するエネルギーを集める装置について記載している。この装置は、浮遊体を含み、浮遊体の中に、浮遊体に対して動くように取り付けられた質量体(M)が配置される。この装置はさらに、質量体の動きによって動作する油圧ピストンの形の電力回収装置を含む。
【0005】
そのような装置は、浮遊体が、限界角度に近付く位置まで駆動されているときに、質量体の移動を制限するために用いる空気圧ブレーキ手段が必要である。これらのブレーキ手段は、波が高い場合に装置の破損(あるいは破壊)を防ぐ。
【0006】
国際公開第02/23039号パンフレット(2002年3月21日発行)は、波エネルギー変換装置について記載している。この装置は、波の作用によって運動に入るように駆動されるよう設計されたパドルと、パドルに対してスライドするように設計された質量体とを含む。
【0007】
このシステムは、その固有振動数が波の平均共振振動数と一致するように調節される必要がある。
【0008】
仏国特許第8000785号明細書(1980年8月8日発行)は、水中の波エネルギーを変換する装置について記載しており、この装置は、水中に沈められることを意図された2つの要素と、その2つの要素の間の接続手段とを含む。2つの要素は、波の作用の下で互いに対して振動するように設計される。この2つの要素の相対運動により、電気エネルギーが発生する。この装置はさらに、それらの要素が互いに相手をロックするようにする装置を含む。このロック装置は、波の各サイクルにおける選択された時間の間に、互いに関連する2つの要素をロックするために用いられる。
【0009】
このロック装置の巧妙な使い方は、装置によって生成されるエネルギーが増加することを意図されたものである。
【0010】
しかしながら、そのような装置は、外部要因による攻撃を受けやすい。実際、その装置の構成部品、および特に、接合ジョイントを含む接続手段は、水に直接接触している。
【0011】
ラッチングによる制御の価値については、理論レベルの研究も、以下の刊行物において行われてきた。
A.BABARIT、G.DUCLOS、A.H.CLEMENT、「Discrete control by latching of a wave−power generator system with one degree of freedom」、paper from the 9th instance of hydrodynamic days、Poitiers、2003年3月、p.251−264
A.BABARIT、G.DUCLOS、A.H.CLEMENT、「Comparison of latching control strategies for a heaving wave energy device in random sea」、proceedings of 5th European Wave Energy Conference、Cork、2003年
A.BABARIT、G.DUCLOS、A.H.CLEMENT、「Benefit of latching control for heaving wave energy device in random sea」、proceedings of 13th International Offshore and Polar Engineering Conference、ISOPE 2003年、Honolulu、Vol.1、p.341−348
【0012】
これらの研究は、ラッチングによる制御により、平均動力の大幅な増加を達成することが理論的に可能になることを示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明によって解決された1つの課題は、水中の波エネルギーを電気エネルギーに変換するとともに、堅牢にしてより効率的な装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のために、本発明は、密閉浮遊要素および質量形成要素を備え、波エネルギーを電気エネルギーに変換する装置を提案し、この装置は、質量形成要素が、浮遊要素の内部に配置されて浮遊要素に対して移動可能に取り付けられ、質量形成要素が、浮遊要素に接する波の作用の下で、浮遊要素に対して相対的に動くように駆動されるよう設計され、質量形成要素の動きをロックするように設計されたロック手段と、連続する波に対して本装置の動力を連続的に適合させることによって質量形成要素を選択的にロックまたはロック解除するようロック手段を制御するように設計された制御手段と、をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
浮遊要素は密閉船殻型なので、その内部で動作する要素は、外部攻撃および特に水の作用から保護される。浮遊要素の外面(フェアリング)だけが、水と接触している。したがって、質量形成要素は、浮遊要素の動きによって動くよう、直接的に駆動される。
【0016】
ロック手段および制御手段は、エネルギーを生成する質量形成要素の動きを増幅するよう、質量形成要素を選択的にロックまたはロック解除するために用いられることが可能である。質量形成要素の動きを増幅することは、この質量形成要素を、その振動サイクルの不利な期間では動かないようにすることと、その後の動きについての初期条件がより有利になり、その初期条件を用いてその後の動きを増幅することが可能になるときに質量形成要素を解放することと、によって達成される。
【0017】
この特徴は、装置のエネルギー出力を増やすために用いられる。
【0018】
提案される装置は、ぴんと張られたアンカーまたは海底に固定された上部構造物を設置することを必要とする以前の設計のいくつかの装置と異なり、固定された外部参照を必要としない。本装置の固定は、ボートを係留場所につなぎ留めることと同様であってよく、特にシンプルであり、低コストである。
【0019】
また、本発明の装置は、目に見える上部構造物を必要としないので、ほとんど目立たない。
【0020】
本発明の装置は、以下の特徴を有利に有することが可能である。
・制御手段は、質量形成要素が浮遊要素に対して相対的にゼロである相対速度に達したときにロック手段が質量形成要素をロックするように、ロック手段を制御するよう設計される。
・制御手段は、浮遊要素の動きの関数として計算されるロック時間の間、ロック手段が質量形成要素をロックするように、ロック手段を制御するよう設計される。
・質量形成要素は、回転軸を中心に自由に回転し、質量形成要素の動きは制限装置によって制限されない。
・質量形成要素は、回転軸を有する回転形態を有し、質量形成要素は、この回転軸を中心に、浮遊要素に対して自転することが可能である。
・質量形成要素は、略円柱形状を有し、その円柱の軸を中心に、浮遊要素に対して自転することが可能である。
・質量形成要素は、回転軸に対して偏った重心を有する。
・本装置は、質量形成要素と接触している少なくとも1つの回転ホイールを含む電力回収装置を備える。
・電力回収装置は、回転ホイールに接続された発電機を含む。
・本装置は、質量形成要素上および前記浮遊要素上に位置決めされた多数の巻線および多数の磁石であって、前記質量形成要素が前記浮遊要素に対して回転駆動されたときに前記巻線に電流が発生するように位置決めされる多数の巻線および多数の磁石を含む電力回収装置を備える。
・浮遊要素は、下部部分と、その上に載る上部部分とを含み、下部部分は質量形成要素を含有する。
・下部部分は、平らな略円柱形状を有する。
・上部部分は、上に向かって広がるフレアー形状である。
・上部部分は、吃水線の下まで上に向かって広がるフレアー形状であり、海の状態が非常に厳しい場合の砕ける波の損傷作用が最小になるように、吃水線の上に上部構造物がない外形形状である。
・浮遊要素は、本装置が水中に沈められ、単一のロープでつなぎ留められた場合に、本装置が波の主たる伝搬方向に対して、質量形成要素の最大駆動が得られるように自然に方向付けられるような外形である。
・質量形成要素は、浮遊要素に対して、回転軸を中心に回転するように取り付けられ、本装置は、その回転軸が波の主たる伝搬方向にほぼ垂直になるように、自然に方向付けられる。
・本装置は、浮遊要素に対して移動可能に取り付けられた複数の質量形成要素と、各質量形成要素に関連付けられたロック手段と、を備え、各質量形成要素は、浮遊要素に対する波の作用の下で浮遊要素に対して動くように駆動されるよう設計され、質量形成要素のそれぞれを選択的にロックまたはロック解除するように制御手段がロック手段を制御するよう設計される。
【0021】
さらに、本発明は、密閉浮遊要素と質量形成要素とを備える装置から波エネルギーを電気エネルギーに変換する方法にも関し、その装置は、質量形成要素が、浮遊要素の内部に配置され、浮遊要素に対して移動可能に取り付けられ、質量形成要素が、浮遊要素に対する波の作用の下で浮遊要素に対して動くように駆動されるよう設計され、本方法は、連続する波に対して本装置の動きを連続的に適合させることによって質量形成要素の動きを増幅するために、質量形成要素を選択的にロックまたはロック解除するように、制御手段を用いて、質量形成要素の動きをロックするように設計されたロック手段を制御することからなる諸段階を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の方法は、以下の諸段階を有利に含むことが可能である。
・測定手段が、浮遊要素および質量形成要素の動きに関するパラメータの値を含むデータを、処理手段に定期的に送信する。
・処理手段は、後刻の波の支配的な励起振動数の値を、測定されたパラメータ値の関数として決定する。
・制御手段は、質量形成要素が浮遊要素に対してゼロ相対速度に達した時点でロック手段が質量形成要素をロックするように、ロック手段を制御する。
・処理手段は、質量形成要素に対する最適なロック時間を、波の支配的な励起振動数の値の関数として決定する。
・制御手段は、タイミング・カウンタが最適時間に達した時点で質量形成要素をロック解除するように、ロック手段を制御する。
【0023】
本方法の一実施態様では、質量形成要素の最適ロック時間を決定するために、処理手段が、後刻の波の励起振動数の値の関数としてのロック時間値を含む、事前準備されたテーブルをルック・アップする。
【0024】
さらに、ロック時間値は、規則的なうねり、および当該装置について、決定されていてもよい。
【0025】
本発明の他の特徴および利点については、以下に続く説明から明らかになるであろう。この説明は、純粋に例示であって限定ではなく、添付図面を参照しながら読まれたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1に表された第1の実施形態によれば、波エネルギーを電気エネルギーに変換する本装置は、水中に沈められることを意図された密閉浮遊要素1と、浮遊要素1の内部に配置された質量形成要素2とを含む。本装置はさらに、一端Dが質量形成要素2に接続されたロッド3を含む。ロッド2は、回転軸4を中心に、浮遊要素1に対して回転するように取り付けられる。
【0027】
図1の装置はさらに、電力回収装置5を含み、電力回収装置5は、第1に、ロッド3の、質量形成要素2が接続されている端部Dの反対側の端部Mに固定され、第2に、浮遊要素1の固定点Nに固定される。
【0028】
図1の装置はさらに、質量形成要素2がスライドすることが可能なガイド・レール6を含む。最後に、本装置は、質量形成要素のレール6上の動きをロックするように設計されたロック手段と(ロック手段は双方向矢印で示されている)、質量形成要素2を選択的にロックまたはロック解除するようにロック手段を制御するよう設計された制御手段(図示せず)とを含む。
【0029】
質量形成要素2は、動作時には、浮遊要素1に対する波の作用の下で、浮遊要素1に対して動くように駆動されるよう設計される。波は、浮遊要素1を動かし(水平x軸上および垂直y軸上の線形運動、ならびに角度θにわたるピッチ運動)、これが、質量形成要素2の動き(浮遊要素1に対する、軸4を中心とする角度αの回転)を駆動することにつながる。質量形成要素2は、レール6に沿って動き、浮遊要素1に対する波の作用と調和して振動する。その動きの過程で、質量形成要素2は、ロッド3を回転させ、これが電力回収装置5を動作させる。
【0030】
図2に表された、第1の実施形態の変形形態によれば、電力回収装置は、間接発電型である。電力回収装置は、流体(水、油、または空気)に対するポンプ手段7および8を含み、ポンプ手段7および8は、ロッド3の回転運動によって動作したときに、アキュムレータ9に格納された流体の加圧を引き起こす。アキュムレータ9に格納されている、加圧された流体は、その後、発電機10を駆動するために用いられる。発電機から供給される電気エネルギーは、浮遊要素2に接続された海底ケーブル11によって陸地に送られる。
【0031】
制御手段は、質量形成要素2が浮遊要素1に対してゼロ速度(α=0)に達したときにロック手段が質量形成要素2をロックするように、ロック手段を制御するよう設計される。より厳密には、制御手段は、所定のロック時間の間、ロック手段が質量形成要素2をロックするように、ロック手段を制御するよう設計され、前記所定のロック時間は、浮遊要素1の動きの関数として、リアルタイムに計算される。
【0032】
図3は、本発明による装置の、第2の特に有利な実施形態を概略的に表す。この実施形態では、質量形成要素2の回転運動に制限がない。
【0033】
図3に示されるように、質量形成要素2は、回転軸4を有する回転の形態を有する。より具体的には、質量形成要素2は、略円柱形状である。質量形成要素2は、円柱自体の軸である回転軸4を中心に、浮遊要素1に対して自転することが可能である。質量形成要素は、その回転軸4に対して偏った重心Rを有する。
【0034】
図3に表された装置は、質量形成要素2と接触している多数の回転ホイール12を含む電力回収装置を含む。質量形成要素2の回転運動は、ホイール12の回転を駆動する。ホイールは、回転ホイールに接続された発電機を動作させる。図3に表された装置はさらに、質量形成要素2のまわりに分散するロック手段13を含む。
【0035】
図3に表された装置においては、質量形成要素2の回転は、浮遊要素1の内部空間によっても、電力回収装置によっても制限されない。したがって、そのような装置は制限装置を必要としない。うねりが激しい場合、質量形成要素2は、装置の構造を損傷することなく、完全に自転することが可能である。この理由で、この第3の実施形態による装置は、その前の設計の装置と比較して、特に堅牢である。
【0036】
さらに、ホイールの直径に対して大きな直径を有する質量形成要素を与えることにより、質量形成要素の回転の速度がホイールによって大幅にギヤ・ダウンされる。この配置により、電力回収装置の効率が高くなる。
【0037】
さらに、質量形成要素2の周囲にロック手段を配置することにより、ロック・トルクのギヤ・ダウンが行われ、これによって、ロック作用の効力が高くなる。したがって、この配置により、ロック手段の寸法が最小化される。
【0038】
図4は、図3の装置の変形形態を概略的に表し、この場合は、電力回収装置が直接発電型である。
【0039】
電力回収装置は、質量形成要素2上に位置決めされ、回転軸4のまわりに星形の並びで位置決めされた、多数の磁石81を含む。電力回収装置はさらに、質量形成要素2のまわりに、浮遊要素1に対して固定された形で位置決めされた多数の巻線82を含む。
【0040】
この変形形態においては、浮遊要素1と質量形成要素2とは、発電機の固定子と回転子とに相当する。質量形成要素2が浮遊要素1に対して回転駆動されると、可変磁界の影響下にある巻線82が、それらの端部に電位を発生させ、巻線82に電流が発生する。
【0041】
図5Aおよび5Bは、図3の装置の内部機構の実施形態の例を、それぞれ正面図および側面図の形で概略的に示す。
【0042】
この実施形態では、この機構は、軸Aに対する回転の形態を有する質量形成要素2を含み、質量形成要素2は、略円柱形状の部分14と、円柱部分14の両側の、円柱部分14の2つの平坦面の上に配置された2つの水平フランジ15とを含む。各フランジ15は、略円錐形状を有し、フランジ15が配置された円柱部分14の水平面に対して角度を付けられたベアリング面16を含む。
【0043】
この機構はさらに、各フランジ15の周囲に位置決めされた、ベアリング面16と接触する円錐ローラ17を含み、質量形成要素2が、ベアリング面16によってローラ17に押しつけられて支えられる。ローラ17は、それらの機能として、質量形成要素2を支持し、質量形成要素2を、軸Aを中心とする回転運動に導く。
【0044】
さらに、質量形成要素2は、円柱部分14の円周上に、ギヤ歯の環18が設けられる。
【0045】
この機構はさらに、電力回収装置を含む。電力回収装置は、略円柱形状の2つのスプロケット・ホイール30および40を含む。スプロケット・ホイール30および40は、それぞれ軸BおよびCを中心に回転するように取り付けられる。スプロケット・ホイール30および40は、それぞれ、その円周上に、ギヤ歯の環33および43が設けられる。スプロケット・ホイール30および40は、各スプロケット・ホイール30および40の歯33および43が質量形成要素2の歯18と噛み合い、各スプロケット・ホイール30および40が質量形成要素2と噛み合うように、質量形成要素2に対して位置決めされる。
【0046】
電力回収装置はさらに、油圧アクチュエータ31、32、41、42を含む。各スプロケット・ホイール30および40は、油圧アクチュエータ31、32、および41、42のうちの一方のペアに関連付けられる。所与のペアの油圧アクチュエータ31、32、または41、42は、関連付けられたスプロケット・ホイール30、40のいずれかの側に配置される。所与のペアの油圧アクチュエータ31、32、または41、42は、一端が所与の回転軸D、Eに接続され、他端が所与のスプロケット・ホイール30、40の、そのスプロケット・ホイールの回転軸B、Cに対して偏った点に接続される。スプロケット・ホイール30、40の連続的な回転運動が、それぞれに接続されたアクチュエータ31、32、または41、42の交互の直線運動を引き起こす。
【0047】
所与のペアのアクチュエータ31、32、または41、42は、対応するスプロケット・ホイール30、40の、スプロケット・ホイールの直径に沿って対向する2つの点に接続されることが理解されるであろう。したがって、ペアの一方のアクチュエータがその移動範囲の、ある極端な位置(たとえば、最大圧縮の位置)にあるときには、ペアのもう一方のアクチュエータは、正反対の極端な位置(最大伸張の位置)にある。
【0048】
また、スプロケット・ホイール30、40およびアクチュエータ31、32、41、42は、所与のペアのアクチュエータ(たとえば、スプロケット・ホイール30に関連付けられたアクチュエータ31および32)がその移動範囲における極端な位置にあるときに、他方のペアのアクチュエータ(スプロケット・ホイール40に関連付けられたアクチュエータ41および42)が中間的な位置にあるように配置されることも理解されるであろう。より厳密には、他方のペアのアクチュエータ(アクチュエータ41および42)は、伸張の長さが等しい位置にある。
【0049】
質量形成要素2は、動作時には、浮遊要素に対する波の作用の下で、浮遊要素に対して軸Aを中心に交互に回転するように駆動される。質量形成要素2の回転は、スプロケット・ホイール30および40の回転を駆動する。スプロケット・ホイール30および40の回転は、アクチュエータ31、32、41、42の振動を駆動する。スプロケット・ホイール30、40およびアクチュエータ31、32、41、42の特定の配置により、アクチュエータ31、32、41、42は、位相が互いにずれて振動する。
【0050】
アクチュエータ31、32、41、42は、電力回収装置を動作させ、電力回収装置は、その並進運動を電気エネルギーに変換するよう設計されている。
【0051】
さらに、図5Aおよび5Bに表される機構は、ロック手段を含む。ロック手段は、2つのブレーキ・ディスク58および59を含み、各ブレーキ・ディスク58、59は、略平坦円形形状である。ブレーキ・ディスク58、59は、質量形成要素2の円柱部分14の両側の、円柱部分14の各面上に固定される。ロック手段はさらに、ブレーキ・パッドがはめ込まれたスターラップ50、52、54、56、および51、53、55、57を含み、これらのスターラップは、それぞれ、ブレーキ・ディスク58および59の周囲に分散される。スターラップ50、52、54、56、および51、53、55、57は、質量形成要素2を所定の位置で動けなくするためにブレーキ・ディスク58、59を圧迫するように、制御手段によって制御されるよう設計される。
【0052】
ロック時間のテーブルの作成
ここで、波エネルギー変換装置の最適ロック時間の値
【数1】

のテーブルを作成するために用いられる方法を説明する。このテーブルは、規則的なうねりによる本装置の励起に関して作成される。この事前準備されたテーブルは、ロック手段を制御する方法において、制御手段によって用いられる。
【0053】
本波力発電装置が波に対して動作しているとき、浮遊要素に対する質量形成要素の、角度αの回転運動は、回転速度
【数2】

がゼロになる死点を各サイクルの最後に有する振動運動(往復運動)である。
【0054】
可動質量形成要素の、浮遊要素に対する角度αの相対回転運動(したがって、生成されるエネルギー)を増やすために提案される制御原理は、次のとおりである。まず、可動質量の動きがゼロ速度(死点)に達するまで待ち、達した時点でその動きをロックする。そして、一定時間δが経過した後、可動質量形成要素をロック解除することにより、可動質量形成要素は次の振動を開始することが可能になる。したがって、動きの各サイクルについて、最適ロック時間
【数3】

をリアルタイムに決定することが必要である。
【0055】
内部搭載された測定手段が、次に挙げる、浮遊要素の6つの基本的運動パラメータを連続的に測定する。
・シャトル・パラメータ(前後運動)
・ヨー・パラメータ(左右運動)
・バンプ・パラメータ(上下運動)
・ロール・パラメータ(シャトル軸を中心とする回転)
・ピッチ・パラメータ(ヨー軸を中心とする回転)
・ツイスト・パラメータ(ツイスト軸を中心とする回転)
【0056】
この測定手段はさらに、可動質量形成要素の、浮遊要素に対する相対角度αを測定する。
【0057】
永続的な周期的体制が確立されるのに十分な長さの時間にわたって本装置を駆動する、パルス振幅ω(したがって周波数ω/2π、振幅2π/ω)の小振幅の、規則的な正弦波のうねりのケースを考える。このケースでは、最適ロック時間
【数4】

は、入射うねりのパラメータωだけの関数である。
【0058】
次のことがわかる。
・dは、質量形成要素の回転軸と、浮遊要素の重心との間の距離である。
・lは、可動質量形成要素の回転軸と、可動質量形成要素自身の重心との間の距離である。
・mは、浮遊要素の質量である。
・lは、浮遊要素の、それ自身の重心を中心とする回転における慣性モーメントである。
・zは、浮遊要素の重心の垂直座標である。
・xは、浮遊要素の重心の水平座標である。
・θは、浮遊要素の、垂直方向に対する回転角度である。
・αは、質量形成要素の、浮遊要素の垂直対称軸に対する回転角度である。
・mは、質量形成要素の質量である。
・lは、質量形成要素の、それ自身の重心Rに対する慣性モーメントである。
・KPTOは、電力回収装置(油圧アクチュエータ)の線形化された剛性である。
・kは、本装置のつなぎ留めの等価水平剛性である。
・BPTOは、電力回収装置の線形化されたダンピングである。次式を仮定する。
X=(x,z,θ,α) [1]
【0059】
静的平衡位置のまわりの動きが小さいと仮定することにより力学方程式を線形化した後、本アセンブリの動きに関する方程式を、次の行列微分方程式の形にすることが可能である。
【数5】

ここで、
exは、浮遊要素が動けないときの、浮遊要素に対するうねりの作用による、一般化された駆動力であり、次の形をとる。
【数6】

Mは、一般化された質量行列であり、次の形をとる。
【数7】

+Kは、静水圧剛性およびつなぎ留め剛性の行列であり、次の形をとる。
【数8】

は、質量形成要素から浮遊要素に加えられる戻り力の剛性であり、次の形をとる。
【数9】

Pは、電気を発生させる電力回収装置に関連付けられた、線形化されたダンピングであり、次の形をとる。
【数10】

【0060】
行列μおよびベクトルIは、水中の浮遊要素の動きによる流体力学的力を表す。これらは、この微分形式で、これらの積分のコアにおいて指数関数を合計することによる識別を適用することにより、畳み込み積分(Cummins積分)によるそれらの方程式から得られる。それらの積分方程式は、周波数領域または時間領域で動作する流体力学計算ソフトウェアを用いて得られることが可能であり、周波数領域の場合は、追加質量および流体力学的ダンピングが与えられ、時間領域の場合は、それらの積分に現れるインパルス応答が直接与えられる。
【0061】
この件の詳細については、以下の刊行物を参照されたい。
A.H.CLEMENT、「Using differential properties of the Green function in seakeeping computational codes」、Proceedings of 7th international conference Numer.Ship Hydrod、Nantes.(1999)、p.6.5−1−6.5−15
【0062】
その一部については、Pronyアルゴリズムを用いて指数関数を合計することによる識別方法が、次の刊行物の付録に記載されている。
G.DUCLOS、A.H.CLEMENT、G.CHATRY、「Absorption of outgoing waves in a numerical wave tank using a self−adaptive boundary condition」、Int.Journal of Offshore and Polar Engineering (2001)、Vol.11、No.3、p.168−175、ISSN 1053−5381
【0063】
以上の準備計算を行った結果、
【数11】

および
【数12】

へのアクセスが可能になる。
【0064】
従来の形の状態方程式に到達するために、項に(M+μ−Iを掛けることにより、方程式[2]を、よりコンパクトな、実数係数を有する一次行列微分方程式の形に書くことが可能である。すなわち、次式が得られる。
【数13】

ただし、Xは、ここでは、次のように拡張された状態ベクトルである。
【数14】

およびIは、それぞれ複素状態Iの実数部分および虚数部分を指定する。
【0065】
関係[9]は、質量形成要素がロックされていない時間の間にシステムの軸を伝搬する、振幅ωの規則的なうねりによって駆動される、本アセンブリ(浮遊要素+質量形成要素)の動作を支配する。
【0066】
ロック時間の間の関係[9]は、若干異なり、簡略化される。質量形成要素の相対運動α(エネルギーを生成する運動)に対応する唯一の方程式は、次のように簡略化される。
【数15】

ここで、t=0は、ロックする時点を表す。対応する係数を関係[9]に代入することにより、可動質量形成要素のロック時間の間は有効である、別の微分方程式(次式)が得られる。
【数16】

【0067】
一般に、初期条件X=X(t−ti)を適用すると、この時点の後の方程式[9]の解は、次のように書かれることが可能である。
【数17】

【0068】
その後、規則的なうねりの中で周期的な動作が確立されるこれらの条件における最適なロック時間を決定するために、次のように続けることが可能である。
【0069】
目標とする体制は、質量形成要素のロック・モードとロック解除モードとが交互に起こることである。質量形成要素がその相対運動
【数18】

を停止し、その移動範囲の死点(順方向または逆方向)においてロックされる時点を、時間原点t=0とする。次に、t=tの場合質量形成要素をロック解除する。これにより、質量形成要素は、浮遊要素に対する回転を再開し、質量形成要素が反対側の死点に達して相対速度が再びゼロ
【数19】

になる時点tまで回転する。したがって、tは、質量形成要素の運動の半周期を表す。全体的な体制が周期的であり、それが確立されるために、質量形成要素の周期2tは、入射うねりの周期と等しいか、その複数倍でなければならない。そこで次式が得られる。
【数20】

ここで、k=0,1,2,...である。
【0070】
以下であるとする。
・Δ=t−t
・X=X(t
・X=X(t
【0071】
t=tでは、[12]および[13]から
【数21】

であることがわかり、t=tでは、周期性のためにX=−X(0)でなければならない。したがって、次式が得られる。
【数22】

【0072】
ここで、
【数23】

はXの8番目の成分であり(式[10]を参照)、t=0では、定義により、速度
【数24】

がゼロ(ロックする時点)なので、方程式[16]の8番目の列をキャンセルすると、最適なtを決定するために用いられる式が与えられ、したがって、最適時間
【数25】


【数26】

と求められる。
【0073】
次に、ωの所与の値に対する
【数27】

の検索アルゴリズムは、以下の諸段階に従って実行される。
【0074】
第1の段階では、方程式[16]のすべての項を、所与のパラメータ(浮遊要素の形状、質量、慣性、質量形成要素の位置、その他)から確立する。
【0075】
第2の段階では、k=0,1,2,...を設定する。
【0076】
第3の段階では、φ∈[0,π](駆動力Fexの位相)を設定する。
【0077】
次に第4の段階では、方程式[16]を満たすtの値を探す。
【0078】
第5の段階では、このトルク解(φ、t)について動作の1サイクルにわたって取り出された動力を計算する。
【0079】
第6の段階では、第3、第4、および第5の段階を繰り返し、駆動力Fexの位相について間隔φ∈[0,π]をスキャンする。
【0080】
第7の段階では、第2、第3、第4、および第5の段階を繰り返して、kをインクリメントする(まれに、ω > ω1(浮遊要素の共振ピッチ周波数)の場合)。
【0081】
第8の段階では、1サイクルにわたって生成されるエネルギーを最大化するトルク
【数28】

を決定し、対応するωの値について、
【数29】

をロック時間のテーブルに格納する。
【0082】
数値シミュレーションによれば、規則的なうねりωによって駆動され、ロック/ロック解除制御手段を備えられ、したがって値
【数30】

が決定されたシステムは、ロック解除時点における初期条件φに関係なく、位相
【数31】

で、独りでに、確立された体制に向かって進む。
【0083】
ラッチングによる制御アルゴリズム
次に、波エネルギー変換装置のロック手段を制御する方法の、別の諸段階について説明する。
【0084】
図19に示されるように、制御手段は、ロック手段のロック時間を決定する諸段階を実行するように設計された処理手段を含む。
【0085】
第1の段階100では、測定手段が、浮遊要素の6つの基本的運動に関連するパラメータ値ならびに質量形成要素の相対角度αを含むデータを、処理手段に定期的に送信する。
【0086】
第2の段階200では、必要に応じて、寄生成分およびそれに含まれるノイズを除去するために、処理手段がデータをフィルタリングする。
【0087】
第3の段階300では、処理手段が、6つの運動パラメータの時間導関数、水中の浮遊の運動による流体力学的放射力の成分、波による流体力学的駆動力の成分を含む追加パラメータ値を決定する。これらの追加パラメータ値は、波エネルギー変換装置の動的モデルを用いて、浮遊要素の6つの基本的運動に関連するパラメータ値から決定される。
【0088】
第4の段階400では、処理手段が、段階100および300で決定されたパラメータの組み合わせ、ならびに本装置の過去の状態を含む、本装置の現在の状態を決定する。
【0089】
第5の段階500では、処理手段が、後刻の波の駆動力の値を決定する。言い換えると、処理手段は、本装置に作用する次の波の振動数を検出するために、未来の時点における波の駆動力の値を予測する。
【0090】
そのような予測は、たとえば、「拡張カルマン・フィルタリング」型のアルゴリズムを用いることにより、実施可能である。たとえば、そのようなアルゴリズムは、以下の刊行物に記載されている。
G.CHATRY、A.H.CLEMENT、T.GOURAUD、「Self adaptative control of a piston wave−absorber」、proceedings of the 8th international Offshore and Polar Engineering Conference、ISOPE 1998年、Montreal、Vol 1、p.127−133
【0091】
そのような推定値は、質量形成要素がロックされているかどうかに関係なく、連続的に独立的に計算される。
【0092】
第6の段階600では、制御手段が、質量形成要素が浮遊要素に対してゼロ相対速度に達した時点、すなわち、
【数32】

になった時点で、ロック手段が質量形成要素をロックするように、ロック手段を制御する。同時に、制御手段は、質量形成要素が浮遊要素に対して動けない間の時間を測定するタイミング・カウンタをトリガする。
【0093】
第7の段階700では、処理手段が、段階500で決定された波の駆動振動数の値を記録する。
【0094】
第8の段階800では、処理手段が、質量形成要素の最適ロック時間
【数33】

を決定する。この目的のために、処理手段は、段階700で記録された、入射波の駆動振動数の値の関数としてのロック時間値
【数34】

を含む、事前準備されたテーブルをルック・アップする。
【0095】
このテーブルは、波の駆動振動数の値が関連付けられた
【数35】

の、事前準備された値を含む。これらの
【数36】

の値は、規則的なうねり、および関係する装置について決定されている。
【0096】
第9の段階900では、制御手段が、タイミング・カウンタが最適時間
【数37】

に達した時点で質量形成要素をロック解除するように、ロック手段を制御する。
【0097】
その後、連続する波に対して本装置の動きを連続的に適合させることによって質量形成要素の動きを増幅するために、質量形成要素を選択的にロックまたはロック解除するよう、段階100〜800が繰り返される。
【0098】
図6の図において、カーブAは、規則的なうねりにおける波の所与の振動数に対して、質量形成要素が自由放置されている場合の、時間の経過に対する質量形成要素の振動の振幅αを表す。
【0099】
カーブBは、制御手段によってロック手段が起動されている場合の、時間の経過に対する質量形成要素の角度振動の振幅を表す。
【0100】
所定の時間の間、要素をロックすることは、本装置の全体の動きを修正して、波の動きによって発生する励起の形式に本装置を連続的に適合させる効果がある。ロック手段を制御することにより、本装置の共振周波数が明白な形で動き、このことは、可動質量体の動き(したがって、回収装置によって吸収されるエネルギー)を増幅する効果がある。カーブBにおいては、質量形成要素のロック時間に対応する平坦部分を識別することが可能である。
【0101】
図7の図a)は、質量形成要素が不規則なうねりの条件において自由放置されている場合の、時間の経過に対する、浮遊要素の振動(ピッチ)の振幅と、質量形成要素の、浮遊要素に対する振動の振幅とを表す。
【0102】
図7の図b)は、図b)の場合と同じうねりの条件においてロック手段が制御手段によって起動されている場合の、時間の経過に対する、浮遊要素の振動(ピッチ)の振幅と、質量形成要素の、浮遊要素に対する振動の振幅とを表す。
【0103】
ラッチングによる制御は、質量形成要素の、浮遊要素に対する振動の振幅を大幅に増やすことを可能にすることがわかる。
【0104】
図8の図は、規則的なうねりの中で、質量形成要素が自由放置されている場合(カーブA)、またはロック手段によって制御されている場合(カーブB)の、質量形成要素の、浮遊要素に対する相対運動の振幅を、うねりの振動数の関数として示す。この係数は、角度応答αとうねりの最大傾斜角度との比である。これは、駆動作用に対する応答の線形性による。
【0105】
本装置は、カーブAの2つのピークに対応する2つの共振振動数ωおよびωを有することがわかる。周波数ωは、質量形成要素がうねりの振動数に等しい振動数ω(k=0)で振動する振動モードに対応する。周波数ωは、質量形成要素がうねりの振動数の3分の1に等しい振動数(k=1)(すなわち、3倍の周期)で振動する振動モードに対応する。
【0106】
図9の図は、規則的なうねりの中で、質量形成要素が自由放置されている場合(カーブA)、またはロック手段によって制御されている場合(カーブB)に、うねりの振動数の関数としての質量形成要素の振動によって動力が発生することを示す。この動力は、これを波面のメートル当たりの入射うねりの動力で割ることにより、メートル当たりで表される。そこで、これを捕獲幅と呼ぶ。
【0107】
波の振動数が質量体の共振振動数とちょうど同じ(ω=ω)であれば、この振動数で本装置の応答が自然に最適になるので、ロック手段の制御は不要であることがわかる。これに対し、波の振動数が本装置の共振振動数と異なる場合には、ロック手段を起動することが特に有利である。本装置の通過帯域を大幅に広げるために、ラッチングによる制御が用いられる。この特性は、規則的な正弦波駆動力について有利な効果を有するだけでなく、多くの規則的な波の重ね合わせと等価であると見なされる実際の海においても、有利な効果を有する。
【0108】
図10〜12は、図3、4、5A、および5Bの実施形態において用いられることを意図された浮遊要素1の形態を概略的に表す。
【0109】
これらの図からわかるように、浮遊要素1は、下部部分70と、その上に載る船殻を形成する上部部分60とを含み、下部部分70は、上部部分および下部部分(60、70)にとっての補助翼を形成する。上部部分60の機能は、本装置を水面に維持することであり、下部部分70の機能は、質量形成要素を収容し、本装置を安定させることである。
【0110】
質量形成要素を収容する下部部分70は、2つの平坦な円形面を有する、平らな略円柱形状を有する。
【0111】
浮遊要素1は、波の伝搬方向に自然に向くような外形になっている。具体的には、上部部分60は、長手方向のX軸に沿って概ね伸張された形状を有し、この長手方向のX軸は、下部部分70の平坦面と平行に位置する。さらに、浮遊要素は、本装置の長手方向のX軸と垂直方向のZ軸とを含む平面に関して対称である。
【0112】
上部部分60は、吃水線まで上に向かって広がるフレアー形状であり、海の状態が非常に厳しい場合の砕ける波の損傷作用が最小になるように、吃水線の上に上部構造物がない外形形状を有する。
【0113】
より厳密には、上部部分60は、ひし形の基部を有するピラミッド形の略形状を有する。上部部分1は、浮遊要素が沈められたときにピラミッドの頂上が下を向くように配置される。ピラミッドの基部の長い方の対角線は、長手方向のX軸に沿って位置し、ピラミッドの基部の短い方の対角線は、横方向のY軸上に位置する。
【0114】
図12に示されるように、本装置は、沈められたときに、水中で、下部部分70の上に上部部分60が来るように、自身を自然に位置決めする。さらに、本装置は、単一のロープでつなぎ留められたときに、その長手方向のX軸が、波の主たる伝搬方向とおおよそ一致するように、自然に方向付けられる。この特性は、質量形成要素の最大駆動が得られるように、質量形成要素の(横方向のY軸に平行な)回転軸が、波の伝搬方向に垂直に方向付けられることを意味する。
【0115】
図13は、本発明の第4の可能な実施形態による波エネルギー変換装置の内部機構を概略的に表す。
【0116】
この第4の実施形態では、質量形成要素は、スイベル・リンクで浮遊要素と接続される。したがって、質量形成要素は、浮遊要素に対して回転自由度2で動くことが可能である。
【0117】
図14は、図13の装置の電力回収装置を概略的に表す。電力回収装置は、スイベル・リンクの両側に位置決めされた6つのアクチュエータを含み、これらを互いに60度の角度で方向付ける。各アクチュエータは、質量形成要素を支持するロッドと浮遊要素との間に配置される。
【0118】
図15は、本発明の第5の可能な実施形態による波エネルギー変換装置の内部機構を概略的に表す。
【0119】
この第5の実施形態では、質量形成要素は、ユニバーサル・ジョイント型のリンクで浮遊要素と接続される。ユニバーサル・ジョイント型リンクは、浮遊要素に対して軸AA’を中心に回転するように取り付けられたユニバーサル・ジョイント部品を含む。質量形成要素を支持するロッドは、ユニバーサル・ジョイント部品に対して軸BB’を中心に回転するように取り付けられ、軸BB’は軸AA’に垂直である。したがって、質量形成要素は、浮遊要素に対して、軸AA’および軸BB’を中心に回転自由度2で動くことが可能である。
【0120】
図16は、図15の装置の第1の電力回収装置を概略的に表す。この第1の電力回収装置は、軸BB’を中心とする質量形成要素の回転に関連するエネルギーを吸収することを意図され、この回転は、本装置のロール運動によって駆動される。第1の電力回収装置は、質量形成要素を支持するロッドとユニバーサル・ジョイント部品との間に位置するアクチュエータを含む。
【0121】
図17は、図15の装置の第2の電力回収装置を概略的に表す。この第2の電力回収装置は、軸AA’を中心とする質量形成要素の回転に関連するエネルギーを吸収することを意図され、この回転は、本装置のピッチ運動によって駆動される。第2の電力回収装置は、ユニバーサル・ジョイント部品と浮遊要素との間に位置するアクチュエータを含む。
【0122】
図18は、図15の装置のロック手段を概略的に表す。ロック手段は、第1に、回転軸BB’上に配置されて、質量形成要素とユニバーサル・ジョイント部品との間の回転運動をロックするために用いられるディスク・ブレーキを含み、第2に、回転軸AA’上に配置されて、ユニバーサル・ジョイント部品と浮遊要素との間の回転運動をロックするために用いられるディスク・ブレーキを含む。
【0123】
軸BB’上および軸AA’上にそれぞれ配置されたロック手段は、これら2つの軸に対する波の力の関数として、制御手段によって個別に操作されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1の可能な実施形態による、波エネルギーを変換する装置の原理図である。
【図2】図1の装置の変形形態の原理図である。
【図3】本発明の第2の可能な実施形態による、波エネルギーを変換する電力回収装置の原理図である。
【図4】図3の装置の変形形態の原理図である。
【図5A】図3の装置の内部機構の実施形態の一例の概略正面図である。
【図5B】図5Aの機構の概略側面図である。
【図6】規則的なうねりの中で、波エネルギーを変換する装置の質量形成要素が自由放置されている場合、またはロック手段によって制御されている場合の、質量形成要素の振動を示す図である。
【図7】不規則的なうねりの中で、質量形成要素が自由放置されている場合、またはロック手段によって制御されている場合の、浮遊要素および質量形成要素の振動の振幅を示す図である。
【図8】規則的なうねりの中の、図3〜5の波エネルギー変換装置において、質量形成要素が自由放置されている場合、またはロック手段によって制御されている場合の、質量形成要素の、浮遊要素に対する振動の振幅の増幅を、うねりの振動数の関数として示す図である。
【図9】規則的なうねりの中で、質量形成要素が自由放置されている場合、またはロック手段によって制御されている場合に、うねりの振動数の関数として、捕獲幅の形で表される、図3〜5の波エネルギー変換装置によって吸収される動力を示す図である。
【図10】本発明の波エネルギー変換装置の第2の実施形態で用いられることを意図された浮遊要素の概略図である。
【図11】本発明の波エネルギー変換装置の第2の実施形態で用いられることを意図された浮遊要素の概略図である。
【図12】本発明の波エネルギー変換装置の第2の実施形態で用いられることを意図された浮遊要素の概略図である。
【図13】本発明の第4の可能な実施形態による波エネルギー変換装置の、質量形成要素がスイベル・リンクによって浮遊要素につり下げられる内部機構の概略図である。
【図14】図13の装置の第1の電力回収装置の概略図である。
【図15】本発明の第5の可能な実施形態による波エネルギー変換装置の、質量形成要素がユニバーサル・ジョイントによって浮遊要素につり下げられる内部機構の概略図である。
【図16】図15の装置のエネルギー回収手段の概略図である。
【図17】図15の装置のエネルギー回収手段の概略図である。
【図18】図15の装置のロック手段の概略図である。
【図19】本発明による波エネルギー変換装置のロック手段を制御する方法の異なる段階を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉浮遊要素(1)と質量形成要素(2)とを備え、波エネルギーを電気エネルギーに変換する装置であって、
前記質量形成要素(2)は、前記浮遊要素(1)の内部に配置されて前記浮遊要素(1)に対して移動可能に取り付けられ、
前記質量形成要素(2)は、前記浮遊要素(1)に接する波の作用の下で前記浮遊要素(1)に対して相対的に動くように駆動されるよう設計され、
前記質量形成要素(2)の動きをロックするように設計されたロック手段(13、50から59)と、
連続する前記波に対して前記装置の動力を連続的に適合させることによって前記質量形成要素(2)の動きを増幅するために、前記質量形成要素(2)を選択的にロックまたはロック解除するように前記ロック手段(13、50から59)を制御するよう設計された制御手段と、をさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記質量形成要素(2)が前記浮遊要素(1)に対して相対的にゼロである相対速度に達したときに前記ロック手段(13、50から59)が前記質量形成要素(2)をロックするように、前記ロック手段(13、50から59)を制御するよう設計される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記浮遊要素(1)の動きの関数として計算されるロック時間の間、前記ロック手段(13、50から59)が前記質量形成要素(2)をロックするように、前記ロック手段(13、50から59)を制御するよう設計される、請求項1または2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記質量形成要素(2)が、回転軸を中心に自由に回転し、前記質量形成要素(2)の動きが制限装置によって制限されない、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記質量形成要素(2)が、回転軸(4)を有する回転形態を有し、前記質量形成要素(2)が、この回転軸を中心に、前記浮遊要素(1)に対して自転することが可能である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記質量形成要素(2)が、略円柱形状を有し、前記円柱の軸を中心に、前記浮遊要素(1)に対して自転することが可能である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記質量形成要素が、前記回転軸に対して偏った重心を有する、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記質量形成要素(2)と接触している少なくとも1つの回転ホイールを有する電力回収装置を備える、請求項4乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記電力回収装置は前記回転ホイールに接続された発電機を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記質量形成要素(2)上および前記浮遊要素(1)上に位置決めされた多数の巻線(81)および多数の磁石(82)であって、前記質量形成要素(2)が前記浮遊要素(1)に対して回転駆動されたときに前記巻線(81)に電流が発生するように位置決めされる多数の巻線および多数の磁石を含む電力回収装置を備える請求項4乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記浮遊要素は下部部分(70)と、その上に載る上部部分(60)とを含み、前記下部部分(70)が前記質量形成要素を含有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記下部部分(70)が、平らな略円柱形状を有する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記上部部分(60)が、上に向かって広がるフレアー形状である、請求項11または12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記上部部分(60)が、吃水線の下まで上に向かって広がるフレアー形状であり、海の状態が非常に厳しい場合の砕ける波の損傷作用が最小になるように、前記吃水線の上に上部構造物がない外形形状である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記浮遊要素(1)は、前記装置が水中に沈められ単一のロープでつなぎ留められた場合に、前記装置が前記波の主たる伝搬方向に対して、前記質量形成要素(2)の最大駆動が得られるように自然に方向付けられるような外形である、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記浮遊要素(1)に対して回転軸(A)を中心に回転するように取り付けられた質量形成要素(2)を備え、
前記回転軸(A)が前記波の前記主たる伝搬方向に実質的に垂直になるように、前記装置が自然に方向付けられる、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記浮遊要素に対して移動可能に取り付けられた複数の質量形成要素と、各質量形成要素に関連付けられたロック手段と、を備え、
各質量形成要素は、前記浮遊要素に対する前記波の作用の下で前記浮遊要素に対して動くように駆動されるよう設計され、
前記制御手段は、前記質量形成要素のそれぞれを選択的にロックまたはロック解除するように前記ロック手段を制御するよう設計される、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
密閉浮遊要素(1)と質量形成要素(2)とを備える装置であって、前記質量形成要素(2)が、前記浮遊要素(1)の内部に配置され、前記浮遊要素(1)に対して移動可能に取り付けられ、前記質量形成要素(2)が、前記浮遊要素(1)に対する前記波の作用の下で前記浮遊要素(1)に対して動くように駆動されるよう設計された装置から波エネルギーを電気エネルギーに変換する方法であって、
連続する前記波に対して前記装置の動きを連続的に適合させることによって前記質量形成要素(2)の動きを増幅するために、前記質量形成要素(2)を選択的にロックまたはロック解除するように、制御手段を用いて、前記質量形成要素(2)の動きをロックするように設計されたロック手段(13、50から59)を制御することからなる諸段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項19】
測定手段が、前記浮遊要素および前記質量形成要素の動きに関するパラメータの値を含むデータを、処理手段に定期的に送信する段階と、
前記処理手段が、後刻の前記波の支配的な駆動振動数の値を、測定されたパラメータ値の関数として決定する段階と、
前記制御手段が、前記質量形成要素が前記浮遊要素に対してゼロ相対速度に達した時点で前記ロック手段が前記質量形成要素をロックするように前記ロック手段を制御する段階と、
前記処理手段が、前記質量形成要素をロックする最適時間
【数1】

を、前記波の前記支配的な駆動振動数の値の関数として決定する段階と、
前記制御手段が、タイミング・カウンタが前記最適時間
【数2】

に達した時点で前記質量形成要素をロック解除するように前記ロック手段に命令する段階と、を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記質量形成要素をロックする前記最適時間
【数3】

を決定するために、前記処理手段が、後刻の前記波の駆動振動数の値の関数としてのロック時間値
【数4】

を含む、事前準備されたテーブルをルック・アップする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ロック時間値
【数5】

が、規則的なうねり、および関係する前記装置について決定されている、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2008−517197(P2008−517197A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536178(P2007−536178)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055234
【国際公開番号】WO2006/040341
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【Fターム(参考)】