説明

波形整形回路

【課題】 複数のツェナーダイオードを用いることによって、簡易な構成で、所望の波形に変換できる波形整形回路を提供する。
【解決手段】 オルタネータGからの出力信号に基づいて、矩形状に信号変換された矩形波信号を制御手段2へ出力する波形整形回路において、アノード側に接続されたオルタネータGからの前記出力信号が所定レベル以上の電圧である場合に、カソード側からの電源出力によってハイレベルに設定し、前記矩形波信号として制御手段2が検出可能に接続される第1のツェナーダイオード3と、アノード側に接続されたオルタネータGからの前記出力信号が所定レベルよりも低い電圧である場合に、アノード側の電源出力を、カソード側の接地によってローレベルに設定し、前記矩形波信号として制御手段2が検出可能に接続される第2のツェナーダイオード4と、を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される波形整形回路に関し、特に、発電機からの出力信号に基づいてツェナーダイオードを使用して信号変換する波形整形回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電機からの出力信号を、車速計の検出信号や他のスイッチ、センサなどの電源として用いて、該出力信号に基づいて計測値や車両状態を車両用計器に表示させるようにした構成があり、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1によれば、車速などに応じた周波数の交流信号を発生する信号発生源は、単発信号を発生する交流発電機からなるピックアップセンサであり、低速から高速に渡る発生電圧のレンジは広く、車速に応じて、波高値の大きな信号が発生されるようになる。
【0004】
このため、自動車など走行速度を表示する車速計において、コンパレータICを用いて矩形波パルスに波形整形し、メータなどの表示装置へ供給する波形整形回路を備えた構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−46378号公報 (図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したコンパレータICを用いた波形整形回路にあっては、メータ駆動回路が認識可能な所望の位相を有する波形を生成することができるが、コンパレータのしきい値設定に伴う、複数の電源回路とコンパレータとの間の配線接続が必要となり回路が複雑化するという問題があった。また、これらの回路スペースを広く必要とするという問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的とするところは、上述した課題に着目し、複数のツェナーダイオードを用いることによって、簡易な構成で、所望の波形に変換できる波形整形回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の波形整形回路は、車載発電機からの出力信号に基づいて、矩形状に信号変換された矩形波信号を制御手段へ出力する波形整形回路において、アノード側に接続された前記車載発電機からの前記出力信号が所定レベル以上の電圧である場合に、カソード側に接続された車載バッテリからの電源出力を用いてハイレベルに設定し、前記矩形波信号として前記制御手段が検出可能に接続される第1のツェナーダイオードと、アノード側に接続された前記車載発電機からの前記出力信号が所定レベルよりも低い電圧である場合に、アノード側に接続された前記電源出力に基づいて入力される電圧を、カソード側の接地によってローレベルに設定し、前記矩形波信号として前記制御手段が検出可能に接続される第2のツェナーダイオードと、を備えてなることを特徴とする。
【0009】
また、車載発電機からの出力信号に基づいて、矩形状に信号変換された矩形波信号を制御手段へ出力する波形整形回路において、車載バッテリからの電力を前記制御手段が入力可能な範囲に変換する電源回路と、アノード側に接続された前記車載発電機からの前記出力信号が所定レベル以上の電圧である場合に、カソード側に接続された前記電源回路からの電源電圧によってハイレベルに設定し、前記矩形波信号として前記制御手段が検出可能に接続される第1のツェナーダイオードと、アノード側に接続された前記車載発電機からの前記出力信号が所定レベルよりも低い電圧である場合に、アノード側に接続された前記電源電圧を、カソード側の接地によってローレベルに設定し、前記矩形波信号として前記制御手段が検出可能に接続される第2のツェナーダイオードと、を備えてなることを特徴とする。
【0010】
また、前記第1,第2のツェナーダイオードと前記車載発電機との間に、前記第2のツェナーダイオードへの過電流を防止する保護回路を備えてなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態における電気的な構成を示す図。
【図2】同上実施の形態による入出力波形の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明が適用された実施の形態について添付図面を用いて説明する。
【0013】
本発明の波形整形回路を、オートバイなどの二輪自動車の計器に搭載されたものについて実施例として説明する。図1に示すように、計器Mは、電源回路1と、制御手段2と、第1,第2のツェナーダイオード3,4と、保護回路5と、表示手段6とを備えている。この場合、図2に示すように、マイナス電位が周期的に出力される出力信号がオルタネータ(車載発電機)Gから発せられるとともに、この出力信号に接続されたスイッチSの状態を検出し、この検出に基づく表示出力を行う計器Mを例に挙げて説明する。
【0014】
電源回路1は、レギュレータを適用でき、車載バッテリBからの電源出力(例えば、9〜14V)に基づいて制御手段2が入力可能な電圧(例えば、5V)を生成し、電源電圧として、制御手段2へ出力する。
【0015】
制御手段2は、マイクロコンピュータを適用でき、前記電源電圧を駆動源として、予めメモリに格納された各種プログラムを実行することができる。制御手段2は、各種情報を入出力するためのポートを複数用意しており、例えば、オルタネータGからの出力信号を電源としたスイッチSのオン/オフ状態を入力し、この状態に応じて表示手段6を制御するための制御信号を生成し出力するように構成している。
【0016】
第1のツェナーダイオード3は、アノード側にオルタネータGが接続され、カソード側に電源回路と制御手段とが分岐して接続される。また、第1のツェナーダイオード3は、アノード側に接続されたオルタネータGの出力信号が所定レベル(例えば、マイナス10V)以上の電圧である場合に、カソード側に接続された電源回路からの電源電圧によってハイレベルに設定し、矩形波信号として、制御手段2の入力ポートへ出力できるように接続されている。
【0017】
なお、前記所定レベルについては、オルタネータGまでの電子部品(保護回路5など)の負荷と、第1のツェナーダイオード3のツェナー電圧によって設定される。また、第1のツェナーダイオード3と電源回路1との間には、第1のツェナーダイオード3を保護するための抵抗体3aが設けられる。
【0018】
第2のツェナーダイオード4は、アノード側に接続されたオルタネータGからの出力信号が前記所定レベルよりも低い電圧である場合に、アノード側に接続された電源回路からの電源電圧を、カソード側の接地によってローレベルに設定し、矩形波信号として制御手段2の入力ポートへ出力できるように接続される。なお、第1,第2のツェナーダイオード3,4のツェナー電圧は、同じ値が選択され、電源回路1からの電源電圧(この場合、5V)よりも大きな値(例えば、5.1V)で、かつ想定されるオルタネータGからの出力信号に基づいて、矩形波を整形できる値(この場合、10V)よりも小さい値の範囲で設定される。
【0019】
したがって、図2に示すように、オルタネータGからの出力信号に対して、所定レベル(マイナス10V)以上でハイレベル、前記所定レベル未満でローレベルの矩形波信号で、かつ、前記出力信号の周期に同期しながら、制御手段2が認識可能な電圧範囲(0〜5V)の矩形波信号を生成することができる。
【0020】
保護回路5は、第1,第2のツェナーダイオード3,4とオルタネータGとの間に設けられ、第2のツェナーダイオード4への過電流を防止するもので、抵抗体が適用できる。
【0021】
表示手段6は、計器M内において車両利用者が乗車状態にて視認可能な位置に設けられ、制御手段2からの制御信号に基づいて車両情報を表示出力するためのインターフェースである。この場合、表示手段6は、スイッチSがオン状態であるかオフ状態であるかを発光ダイオードの点灯/消灯によって表示するインジケータ(スイッチSの操作に対応する機能表示)が適用できる。例えば、前照灯インジケータ、方向指示器インジケータ、あるいはサイドスタンドインジケータなど適用できる。
【0022】
なお、表示手段6は、駆動ドライバを含む液晶表示パネルや有機ELパネルを適用することもでき、総積算走行距離表示や区間走行距離表示、外気温、燃費などの車両情報をゲージや数値などで切換え表示することも考えられる。また、上述回路構成によって生成された矩形波信号の周期を測定することによってエンジン回転数を計測し、これを表示するように構成することもできる(この場合、スイッチSを省略すればよい)。
【0023】
斯かる波形整形回路は、オルタネータGからの出力信号に基づいて、矩形状に信号変換された矩形波信号を制御手段2へ出力する波形整形回路において、車載バッテリBからの電力を制御手段2の入力可能範囲に変換する電源回路1と、アノード側に接続されたオルタネータGからの前記出力信号が所定レベル以上の電圧である場合に、カソード側に接続された電源回路1からの電源電圧によってハイレベルに設定し、前記矩形波信号として制御手段2が検出可能に接続される第1のツェナーダイオード3と、アノード側に接続されたオルタネータGからの前記出力信号が所定レベルよりも低い電圧である場合に、アノード側に接続された前記電源電圧を、カソード側の接地によってローレベルに設定し、前記矩形波信号として制御手段2が検出可能に接続される第2のツェナーダイオード4と、を備えてなる。
【0024】
したがって、コンパレータICを用いて波形整形したものに比べて、複数のツェナーダイオードを用いた簡易な構成で、制御手段が検出できる所望の波形に変換できる波形整形回路となる。また、制御手段2の駆動電源を生成する電源回路からの出力をスイッチS状態検出における波形整形用に兼用することによって、簡易で省スペースな回路構成となる。また、レギュレータ等の構成部品を複数用意するものに比べて部品点数を削減でき、低コストとなる。
【0025】
また、保護回路5を設けることによって、車載電装品の負荷が小さいとき(例えば、前照灯の断線)など通常よりもオルタネータからの出力が大きくなった場合に、過電流を抑制し、電子部品(特に、第2のツェナーダイオード4)を保護することができる。
【0026】
なお、本発明の波形整形回路を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに設計の変更が可能なことは勿論である。
【0027】
例えば、上述した実施の形態において、波形整形回路の用途として、スイッチSの操作状態や、エンジン回転数の計測について例に挙げたが、発電機を電源としたセンサー出力などに適用することも可能である。
【0028】
また、電源回路1からの電源電圧を用いて波形整形する例を挙げたが、例えば、車載バッテリB、あるいは図示しないイグニションスイッチに接続される別途用意された降圧回路からの供給電圧を用いて、波形整形することもでき、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、波形整形回路に関し、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械など発電機を備えた移動体に搭載される車両用計器に適用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 電源回路
2 制御手段
3 第1のツェナーダイオード
4 第2のツェナーダイオード
B 車載バッテリ
G 車載発電機(オルタネータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載発電機からの出力信号に基づいて、矩形状に信号変換された矩形波信号を制御手段へ出力する波形整形回路において、
アノード側に接続された前記車載発電機からの前記出力信号が所定レベル以上の電圧である場合に、カソード側に接続された車載バッテリからの電源出力を用いてハイレベルに設定し、前記矩形波信号として前記制御手段が検出可能に接続される第1のツェナーダイオードと、
アノード側に接続された前記車載発電機からの前記出力信号が所定レベルよりも低い電圧である場合に、アノード側に接続された前記電源出力に基づいて入力される電圧を、カソード側の接地によってローレベルに設定し、前記矩形波信号として前記制御手段が検出可能に接続される第2のツェナーダイオードと、を備えてなることを特徴とする波形整形回路。
【請求項2】
車載発電機からの出力信号に基づいて、矩形状に信号変換された矩形波信号を制御手段へ出力する波形整形回路において、
車載バッテリからの電力を前記制御手段が入力可能な範囲に変換する電源回路と、
アノード側に接続された前記車載発電機からの前記出力信号が所定レベル以上の電圧である場合に、カソード側に接続された前記電源回路からの電源電圧によってハイレベルに設定し、前記矩形波信号として前記制御手段が検出可能に接続される第1のツェナーダイオードと、
アノード側に接続された前記車載発電機からの前記出力信号が所定レベルよりも低い電圧である場合に、アノード側に接続された前記電源電圧を、カソード側の接地によってローレベルに設定し、前記矩形波信号として前記制御手段が検出可能に接続される第2のツェナーダイオードと、
を備えてなることを特徴とする波形整形回路。
【請求項3】
前記第1,第2のツェナーダイオードと前記車載発電機との間に、前記第2のツェナーダイオードへの過電流を防止する保護回路を備えてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の波形整形回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−222683(P2012−222683A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88037(P2011−88037)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】