説明

波長変換光源

【課題】導波路型の非線形光学結晶を用いた、中赤外光を発生する波長変換光源において、励起光強度を抑えて低消費電力化を図ることにある。
【解決手段】非線形光学結晶301に導波路302の構造が施されている。導波路302の両端面には、波長λ2に対して高反射率になっている第1及び第2の高反射率膜303、304が施されている。波長λ1の励起光を発する励起光源305からの入射光は、ファイバ306から供給され、第1及び第2のレンズ307、308を介して、高反射率膜303を通して導波路302に結合されている。一方、波長λ2の信号光のシード光を発するシード光源309からの入射光は、ファイバ310から供給され、第3のレンズ311とミラー312を介して、高反射率膜304を通して導波路302に結合されている。ミラー312はシード光に対して反射し、中赤外光に対して透過をする特性を持っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換光源に関し、より詳細には、環境ガス計測等に用いる中赤外光を発生する波長変換素子を備える波長変換光源に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護や安全衛生上の観点から、CH4、CO2、CO、N2O等の温室効果ガス、NOx、SOx、アンモニア系等の環境ガス、水の吸収ピーク、多くの有機系ガス、又は残留農薬の極微量分析技術の確立が強く望まれている。ガス濃度を計測する一手法として、被測定ガスにレーザ光を当て、その吸収特性を観測する方法が知られている。ガスはそれぞれ特有の吸収線を有しているので、吸収線付近の波長を有するレーザ光をスキャンし、吸収スペクトルを観測することによりガス濃度を計測することができる。
【0003】
環境ガスの多くは、波長2μm以上の中赤外光領域に基本振動またはその低次の倍音の吸収線を有している。従って、波長2μm以上の中赤外領域において、室温で連続発振が可能な中赤外光光源の需要が高まっている。このような光源として、擬似位相整合型波長変換素子による差周波発生により、ガスの吸収線波長である中赤外領域のレーザ光を出力する光源が多数発表されている(例えば、非特許文献1参照)。この光源は、波長変換素子に励起光および信号光を入力するレーザとして技術的に安定した波長2μm以下の半導体レーザを用いることができるので実用化が容易である。
【0004】
波長変換により中赤外光を得る方法として差周波発生以外に光パラメトリック発振がある(例えば、非特許文献2参照)。光パラメトリック発振の構成図を図1に示す。光パラメトリック発振ではバルク型の非線形光学結晶がこれまで用いられてきたので、バルク型非線形光学結晶を用いて説明をする。非線形光学結晶11が、凹面型のミラー12、13の間に挟まれるように配置する。波長λ1の励起光を光軸14に沿って入力すると、非線形光学結晶11内で非線形光学効果により1/λ1=1/λ2+1/λ3を満たす波長λ2とλ3の光が発生する。ミラー12、13は少なくとも波長λ2の光に対して高反射となっており、波長λ2の光はミラー12、13間を光軸15に沿って往復する。実際の光は、点線で示した光形状16の様に非線形光学結晶11内で光が絞られた軌跡をたどる。非線形光学結晶11内では波長λ2とλ3の光が発生するが、これはいわゆる利得媒質として働き、ミラー12、13の間に挟まれることによって光発振器の構成になっている。非線形光学結晶11内の利得がミラー12、13での損失を超えた時に発振をはじめ波長λ2の発振光が光軸17に沿って得られる。この場合、強い波長λ2の光に誘発されて同時に強い波長λ3の光も得られる。
【0005】
ここでは波長λ2の光に対してミラー12、13が共振器を構成するミラーとなっている場合について説明したが、ミラー12、13が波長λ3の光に対して共振器を構成するミラーとなっていてもかまわない。
【0006】
このような光パラメトリック発振では、光軸15内で定在波となり、ミラー12、13での損失を超える非線形光学結晶11の利得波長領域内の全ての波長で発振が可能であり、複数波長で発振する可能性がある。そこで、波長λ1の励起光以外に利得領域内の固定した波長λ2のレーザ光をシード光として非線形光学結晶11に入射すると安定したシングルモード発振が可能であることが良く知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】D. G. Lancaster et al., Optics Lett., Vol .24, No. 23, 1744 (1999).
【非特許文献2】L. E. Myers et al., J. Opt. Soc. Am. B., Vol .12, No. 11, 2102 (1995).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のようなバルク型の非線形光学結晶を用いた光パラメトリック発振では、非線形光学効果が小さく、発振に必要な励起光強度が数Wと非常に大きく消費電力が大きい。光密度を高めて、高い変換効率の得られる導波路型の非線形光学結晶を用いるのが最善だと考えられる。
【0009】
図2に、導波路型の非線形光学結晶を用いた場合の構成図を示す。本構成図では、入力光を光ファイバから供給する場合について説明を行う。非線形光学結晶21に導波路22の構造が施されている。導波路22の両端面には高反射率膜23、24が施されている。入射光はファイバ25から供給され、レンズ26、27を介して導波路22に結合されている。このような構造に対して、波長λ1の励起光と波長λ2のシード光の2波をファイバ25により入力する場合、この2波は波長が異なるので、レンズ26、27の色収差のために2つの光において同時に最適な結合効率が取れないという問題が存在する。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、導波路型の非線形光学結晶を用いた、中赤外光を発生する波長変換光源において、励起光強度を抑えて低消費電力化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、中赤外光を発生する波長変換光源において、第1の波長λ1の励起光を発する励起光源と、前記第1の波長λ1と異なる第2の波長λ2のシード光を発するシード光源と、非線形光学結晶導波路とを備え、前記非線形光学結晶導波路の両端面に、前記シード光に対して反射率が70%以上の反射膜が設置されており、前記励起光源が発する前記励起光は、前記非線形光学導波路の一端からレンズを介して前記非線形光学結晶導波路に入射され、前記シード光源が発する前記シード光は、前記非線形光学導波路の他端からレンズ及びミラーを介して前記非線形光学結晶導波路に入射され、前記中赤外光は、前記非線形光学結晶導波路において光パラメトリック発振によって発生する、1/λ1−1/λ2=1/λ3を満たす第3の波長λ3の中赤外光であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記ミラーが、前記シード光に対して反射し、前記中赤外光に対して透過する特性を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記ミラーが、前記シード光に対して透過し、前記中赤外光に対して反射する特性を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第4の態様は、第2又は第3の態様において、前記非線形光学結晶導波路のコア層に分極反転構造が施されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記コア層の材料がニオブ酸リチウムであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第6の態様は、第2又は第3の態様において、前記励起光源および前記シード光源からの光はファイバを介して前記非線形光学結晶導波路に結合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1の波長λ1の励起光と第1の波長λ1と異なる第2の波長λ2のシード光とを非線形光学結晶導波路端の別方向から入射することにより、非線形光学結晶導波路に最適に第1の波長λ1及び第2の波長λ2の光を入射することが可能となる。これは、従来のバルク型結晶から導波路素子に置き換えることによる波長変換効率の向上とともに、結合損失の低下をもたらす。したがって、励起光源の出力を抑えて、消費電力の小さな波長変換光源が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の光パラメトリック発振の構成図である。
【図2】導波路型の非線形光学結晶を用いた場合の従来の構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかる波長変換光源の構成を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる波長変換光源の構成を示す図である。
【図5】実施例1にかかる波長変換光源の構成を示す図である。
【図6】実施例2にかかる波長変換光源の構成を示す図である。
【図7】実施例3にかかる波長変換光源の構成を示す図である。
【図8】実施例4にかかる波長変換光源の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。まず、第1及び第2の実施形態について説明し、その後に実施例を示す。
【0020】
(第1の実施形態)
図3に、本発明の第1の実施形態にかかる波長変換光源の構成を示す。非線形光学結晶301に導波路302(以下「非線形光学結晶導波路」とも呼ぶ。)の構造が施されている。導波路302の両端面には、波長λ2(「第2の波長」に対応)に対して90%以上の反射率を有する第1の高反射率膜303及び70%以上の反射率を有する第2の高反射率膜304が施されている。波長λ1(「第1の波長」に対応)の励起光を発する励起光源305からの入射光は、ファイバ306から供給され、第1及び第2のレンズ307、308を介して、高反射率膜303を通して導波路302に結合されている。一方、波長λ2の信号光のシード光を発するシード光源309からの入射光は、ファイバ310から供給され、第3のレンズ311とミラー312を介して、高反射率膜304を通して導波路302に結合されている。ミラー312はシード光に対して反射し、中赤外光に対して透過をする特性を持っている。
【0021】
入射された波長λ2のシード光は、導波路302の両端面の第1及び第2の高反射率膜303、304により反射を受けて導波路302内を往復する。第1の高反射率膜303から第2の高反射率膜304の方向へ進行する導波路内302の波長λ1の励起光により、同方向に進行する波長λ2のシード光が増幅作用を受ける。波長λ2のシード光において、第1及び第2の高反射率膜303、304における損失と導波路302の導波による導波損失との和を増幅が上回るときにレーザ発振が起こる。この信号光のレーザ発振に伴い、1/λ1−1/λ2=1/λ3をみたす高強度の波長λ3(「第3の波長」に対応)の中赤外光を取り出すことができる。このとき、波長λ3の中赤外光はミラー312を透過し、レンズ313を介して取り出す。
【0022】
以上の第1の実施形態では、第1及び第2のレンズ307、308のファイバ306及び導波路302に対する設置位置により、最適に波長λ1の励起光を導波路302に結合可能である。一方、シード光源309からの光は、独立した第3のレンズ311により導波路302に結合され、シード光源309からの光と導波路302との結合のみを考慮して第3のレンズ311の位置を設置可能である。
【0023】
なお、上述の構成では、励起光源およびシード光源からの光をファイバを介して導波路に結合しているが、ファイバを介さずに半導体LDチップからの出力をレンズを介して導波路に結合させてもよい。
【0024】
また、非線形光学結晶に周期的な分極反転を施してもよい。通常、励起光、シード光、中赤外光の3つの光の間には位相整合が取れず中赤外光の発生効率が低くなるが、分極反転構造を取ることにより擬似的に位相整合を満たす事が可能となり、非線形光学導波路内での中赤外光の発生効率が高まるという利点がある。
【0025】
(第2の実施形態)
図4に、本発明の第2の実施形態にかかる波長変換光源の構成を示す。非線形光学結晶401に導波路402(以下「非線形光学結晶導波路」とも呼ぶ。)の構造が施されている。導波路402の両端面には波長λ2(「第2の波長」に対応)に対して90%以上の反射率を有する第1の高反射率膜403及び70%以上の反射率を有する第2の高反射率膜404が施されている。波長λ1(「第1の波長」に対応)の励起光を発する励起光源405からの入射光は、ファイバ406から供給され、第1及び第2のレンズ407、408を介して第1の高反射率膜403を通して導波路402に結合されている。一方、波長λ2の信号光のシード光を発するシード光源409からの入射光は、ファイバ410から供給され、第3のレンズ411、ミラー412、及び第4のレンズ413を介して、第2の高反射率膜404を通して導波路402に結合されている。ミラー412は、信号光に対して透過し、中赤外光に対して反射をする特性を持っている。
【0026】
入射された波長λ2のシード光は、導波路402の両端面の第1及び第2の高反射率膜403、404により反射を受けて導波路402内を往復する。第1の高反射率膜403から第2の高反射率膜404の方向へ進行する導波路内402の波長λ1の励起光により、同方向に進行する波長λ2のシード光が増幅作用を受ける。波長λ2のシード光において、第1及び第2の高反射率膜403、404における損失と導波路402の導波による導波損失との和を増幅が上回るときにレーザ発振が起こる。このシード光のレーザ発振に伴い、1/λ1−1/λ2=1/λ3を満たす高強度の波長λ3(「第3の波長」に対応)の中赤外光を取り出すことができる。このとき、波長λ3の中赤外光はミラー413を反射して取り出す。
【0027】
以上の第2の実施形態では、第1及び第2のレンズ407、408のファイバ406及び導波路402に対する設置位置により最適に波長λ1の励起光を導波路402に結合可能である。一方、光源409からの光は、独立した第3及び第4のレンズ411、413により導波路402に結合され、シード光源409からの光と導波路402との結合のみを考慮して第3及び第4のレンズ411、413の位置を設置可能である。
【0028】
なお、上述の構成では、励起光源およびシード光源からの光をファイバを介して導波路に結合しているが、ファイバを介さずに半導体LDチップからの出力をレンズを介して導波路に結合させてもよい。
【0029】
また、非線形光学結晶に周期的な分極反転を施してもよい。第1の実施形態と同様に、非線形光学導波路内での中赤外光の発生効率が高まるという利点がある。
【実施例1】
【0030】
図5に、実施例1にかかる波長変換光源の構成を示す。本波長変換光源は第1の実施形態の一例である。導波路502を有し、周期的な分極反転を施したLiNbO3で構成された非線形光学結晶501を用意した。分極反転周期は28.4μmであり、導波路長は5cmであった。非線形光学結晶501の導波路両端面に、波長1550nmに対して高反射率の第1及び第2の高反射率膜503、504を施した。第1の高反射率膜503の1550nmでの反射率は99%、第2の高反射率膜504の1550nmでの反射率は70%であった。
【0031】
波長1064nmの励起光源505は、ファイバ506を出力ポートとして有する。励起光源505からの出力を、導波路502に、高反射率膜503の施してある側から、第1及び第2のレンズ507、508を介して結合した。このとき、ファイバ506と導波路502の光結合は1064nmだけを考慮すればよく、第1及び第2のレンズ507、508の焦点距離は色収差を考慮する必要がなく、波長1064nmの光に関してファイバ506内でのモード径と導波路502内でのモード径の比率を補償するように焦点距離比率を持つ第1及び第2のレンズ507、508を選定可能である。また、設置場所も波長による屈折角の違いを考慮する必要がなく1064nmにおいてのみ第1及び第2のレンズ507、508の設置位置を決定できるので、シード光を考慮する場合よりも効率よく1064nmの光を結合することが出来る。
【0032】
また、シード光源509には、波長1550nmの発振波長を持つ半導体レーザモジュールを用いた。シード光源509は、ファイバ510を出力ポートとして有する。シード光源509からの出力を、導波路502に、高反射率膜504の施してある側から最適に結合するように第3のレンズ511及びミラー512を設置した。ミラー512は、波長1550nmを反射し、3〜4μmの中赤外光を透過する特性を持つものを用いた。第2の高反射率膜504の施してある側の導波路502の端からの光軸上にミラー512を通して第3のレンズ513を配置し、中赤外光出力を測定した。
【0033】
励起光源505の出力強度が100mW付近で中赤外光出力を観測し始めた。励起光源505の出力強度が1Wにおいて中赤外光出力6mWを観測した。
【実施例2】
【0034】
図6に、実施例2にかかる波長変換光源の構成を示す。本波長変換光源は第2の実施形態の一例である。導波路602を有し、周期的な分極反転を施したLiNbO3で構成された非線形光学結晶601を用意した。分極反転周期は28.4μmであり、導波路長は5cmであった。非線形光学結晶601の導波路両端面に、波長1550nmに対して高反射率の第1及び第2の高反射率膜603、604を施した。第1の高反射率膜603の1550nmでの反射率は99%、第2の高反射率膜604の1550nmでの反射率は80%であった。
【0035】
波長1064nmの励起光源605は、ファイバ606を出力ポートとして有する。励起光源605からの出力を、導波路602に、第1の高反射率膜603の施してある側から最適に結合するように第1及び第2のレンズ607、608を設置した。
【0036】
また、シード光源609には、波長1550nmの発振波長を持つ半導体レーザモジュールを用いた。シード光源609は、ファイバ610を出力ポートとして有する。シード光源609からの出力を、導波路602に、第2の高反射率膜604の施してある側から最適に結合するように第3のレンズ611、ミラー612、及び第4のレンズ613を設置した。ミラー612は波長1550nmを透過し、3〜4μmの中赤外光を反射する特性を持つものを用いた。ミラー612で反射された中赤外光出力を測定した。
【0037】
励起光源505の出力強度が90mW付近で中赤外光出力を観測し始めた。励起光源505の出力強度が1Wにおいて中赤外光出力4mWを観測した。
【実施例3】
【0038】
図7に、実施例3にかかる波長変換光源の構成を示す。本波長変換光源は第1の実施形態の一例である。導波路702を有し、周期的な分極反転を施したLiNbO3で構成された非線形光学結晶701を用意した。分極反転周期は28.4μmで導波路長は5cmであった。非線形光学結晶701の導波路両端面に、波長1550nmに対して高反射率の第1及び第2の高反射率膜703、704を施した。第1の高反射率膜703の1550nmでの反射率は99%、第2の高反射率膜704の1550nmでの反射率は90%であった。
【0039】
波長1064nmの励起光源705は、分布帰還型の半導体レーザチップを用いた。励起光源705からの出力を、導波路702に、高反射率膜703の施してある側から最適に結合するように第1及び第2のレンズ706、707を設置した。
【0040】
シード光源708には、波長1550nmの発振波長を持つ分布帰還型半導体レーザチップを用いた。また、シード光源708からの出力を、導波路702に、高反射率膜704の施してある側から最適に結合するように第3のレンズ709及びミラー710を設置した。ミラー710は、波長1550nmを反射し、3〜4μmの中赤外光を透過する特性を持つものを用いた。第2の高反射率膜704の施してある側の導波路702の端からの光軸上にミラー710を通して第3のレンズ711を配置し、中赤外光出力を測定した。
【0041】
励起光源705の出力強度が60mW付近で中赤外光出力を観測し始めた。励起光源705の出力強度が800mWにおいて中赤外光出力4mWを観測した。
【実施例4】
【0042】
図8に、実施例4にかかる波長変換光源の構成を示す。本波長変換光源は第2の実施形態の一例である。導波路802を有し、周期的な分極反転を施したLiNbO3で構成された非線形光学結晶801を用意した。分極反転周期は28.4μmで導波路長は5cmであった。非線形光学結晶801の導波路両端面に、波長1550に対して高反射率の第1及び第2の高反射率膜803、804を施した。第1の高反射率膜803の1550nmでの反射率は99%、第2の高反射率膜804の1550nmでの反射率は70%であった。
【0043】
波長1064nmの励起光源805は、分布帰還型の半導体レーザチップを用いた。励起光源805からの出力を、導波路802に、高反射率膜803の施してある側から最適に結合するように第1及び第2のレンズ806、807を設置した。
【0044】
シード光源808には、波長1550nmの発振波長を持つ分布帰還型半導体レーザチップを用いた。また、シード光源808からの出力を、導波路802に、高反射率膜804の施してある側から最適に結合するように第3のレンズ809、ミラー810、及び第4のレンズ811を設置した。ミラー810は波長1550nmを透過し、3〜4μmの中赤外光を反射する特性を持つものを用いた。ミラー810で反射された中赤外光出力を測定した。
【0045】
励起光源805の出力強度が120mW付近で中赤外光出力を観測し始めた。励起光源805の出力強度が1Wにおいて中赤外光出力12mWを観測した。
【符号の説明】
【0046】
302、402、502、602、702、802 非線形光学結晶導波路
303、304、403、404、503、504、603、604、703、704、803、804 高反射率膜
306、310、406、410、506、510、606、610 ファイバ
307、308、311、313、407、408、411、413、507、508、511、513、607、608、611、613、706、707、709、711、806、807、809、811 レンズ
305、405、505、605、705、805 励起光源
309、409、509、609、708、808 シード光源
301、401、501、601、701、801 非線形光学結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中赤外光を発生する波長変換光源において、
第1の波長λ1の励起光を発する励起光源と、
前記第1の波長λ1と異なる第2の波長λ2のシード光を発するシード光源と、
非線形光学結晶導波路と
を備え、
前記非線形光学結晶導波路の両端面に、前記シード光に対して反射率が70%以上の反射膜が設置されており、
前記励起光源が発する前記励起光は、前記非線形光学導波路の一端からレンズを介して前記非線形光学結晶導波路に入射され、
前記シード光源が発する前記シード光は、前記非線形光学導波路の他端からレンズ及びミラーを介して前記非線形光学結晶導波路に入射され、
前記中赤外光は、前記非線形光学結晶導波路において光パラメトリック発振によって発生する、1/λ1−1/λ2=1/λ3を満たす第3の波長λ3の中赤外光であることを特徴とする波長変換光源。
【請求項2】
前記ミラーは、前記シード光に対して反射し、前記中赤外光に対して透過する特性を有することを特徴とする請求項1に記載の波長変換光源。
【請求項3】
前記ミラーは、前記シード光に対して透過し、前記中赤外光に対して反射する特性を有することを特徴とする請求項1に記載の波長変換光源。
【請求項4】
前記非線形光学結晶導波路のコア層に分極反転構造が施されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の波長変換光源。
【請求項5】
前記コア層の材料は、ニオブ酸リチウムであることを特徴とする請求項4に記載の波長変換光源。
【請求項6】
前記励起光源および前記シード光源からの光はファイバを介して前記非線形光学結晶導波路に結合していることを特徴とする請求項2又は3に記載の波長変換光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−128368(P2011−128368A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286668(P2009−286668)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】