説明

泥土圧シールド工法及び泥土圧シールド掘進機

【課題】巨礫が多く散在する地山であっても、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することが可能な泥土圧シールド工法及び泥土圧シールド掘進機を提供する。
【解決手段】地山の切羽Zを掘削するスポークタイプの回転カッター2の後方に、隔壁4で区画してカッターチャンバー5を形成した泥土圧シールド掘進機1であって、粒径2mm未満の砂分が20%を超えず、粒径2mm以上の礫分が80%を超える地山の切羽から回転カッターで掘削され破砕されてカッターチャンバー内に取り込まれる礫分を含む掘削土砂に混合する薬材を、切羽やカッターチャンバー内へ向けて注入する第1〜第3注入手段20〜22を備え、薬材は、カッターチャンバーに取り込まれる礫分を含む土砂の塑性流動性及び不透水性、並びに礫分と土砂との一体性が得られるように、作泥土材と気泡材とが併用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巨礫が多く散在する地山であっても、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することが可能な泥土圧シールド工法及び泥土圧シールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
泥土圧シールド工法は概略的には、シールドジャッキでシールド掘進機を推進し、この推進と共に、当該シールド掘進機前面の回転カッターで地山の切羽を掘削する。掘削した土砂は、回転カッター後方のカッターチャンバー内及びカッターチャンバー内から排土するためのスクリューコンベアに充満させる。
【0003】
この際、回転カッターの前面やカッターチャンバ内に添加材を注入する。添加材は、掘削土砂に練り混ぜられて、土砂を、塑性流動性(自由に変形・移動できる性質)に富み、不透水性を発揮する泥土に変換する。
【0004】
泥土は、カッターチャンバー内からスクリューコンベア内にわたって充満されていて、シールドジャッキの推進力により、当該泥土には、切羽の土圧及び地下水圧(以下、「切羽土圧」という)に対抗する泥土圧が発生する。
【0005】
この泥土圧と切羽土圧との平衡を保つように、シールド掘進機の推進量とスクリューコンベアによる排土量のバランスを図ることによって、切羽の安定を保ちつつ掘進していくようになっている。
【0006】
掘削土砂に添加材を添加して塑性流動性と不透水性を持つ泥土を作成することにより、スクリューコンベアによる円滑な排土が確保されると共に、スクリューコンベア内にプラグゾーン(止水領域)が形成されて地下水の噴発が防止される。
【0007】
この種の泥土圧シールド工法は例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の「土圧シールド掘進工法」では、水溶性高分子を気泡状にしたものを土圧室に注入し、シールドカッターによる掘削ずりと混合撹拌しつつ切羽面を掘削するので、ベントナイト等の作泥土材を用いることなく、簡易な設備を用いて、気泡状の水溶性高分子により土圧室及びスクリューコンベア内の掘削ずりに流動性及び止水性を付与して容易にトンネル掘削を行うことができる。また、作泥土材を使用しないので、排出土砂の処理を容易に行なうことができる。
【0008】
特許文献1では、添加材として、気泡材を注入する場合を示している。気泡材は、掘削土砂に練り混ぜることにより、得られる泥土に圧縮性を付与すると共に、泥土の不透水性を高め、さらには掘削土砂の粒子同士が付着結合することを防止して、泥土の流動性を向上させる。
【0009】
ベントナイト系の添加材は、気泡材とは異なる添加材(作泥土材)として知られている。ベントナイト系添加材は、細粒分として掘削土砂に対して補充され、掘削土砂に流動性を持たせると共に、その不透水性を高める。通常、ベントナイト系添加材は、掘削土量の30%程度混入することが好ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3124368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、地山が、巨礫、例えば外形寸法がφ500を超えるような巨礫が多く散在し、その他に玉石や礫を含むような地質である場合、特にこのような巨礫は、特殊なスクリューコンベアを製作する場合はともかく、通常一般のシールド掘進機用スクリューコンベアの内径相当でその能力の限界であると共に、当該巨礫を小さく細かく破砕して掘進することは非効率的かつ非現実的である。
【0012】
そして、このような地山から回転カッターで掘削されある程度破砕される巨礫や玉石等に対し、ベントナイト系添加材を掘削土砂の細砂分と混合しても、そしてまた気泡材を添加する場合であっても、良好な泥土になりにくいという課題があった。すなわち、巨礫や玉石、礫、粗砂は元々、泥土化し得ないものであり、従って、カッターチャンバー内やスクリューコンベア内に、必要な泥土圧を生じさせることは困難であった。
【0013】
詳細には、ベントナイト系添加材のみを添加する場合、当該添加材を含む掘削土砂中に巨礫や玉石等を取り込み包み込んで両者を分離させないためには、きわめて大量の添加材を添加しなければならないことが想定される。
【0014】
しかし、ベントナイト系添加材を混入した土砂は、圧縮性に乏しく、いわゆる「シャビシャビに」緩んだ性状を呈し、カッターチャンバー内やスクリューコンベア内で巨礫や玉石等が容易に転がり移動してしまう。そしてこの移動が生じる度に泥土圧が大きく変動するため、従って泥土圧はきわめて不安定な状態となり、カッターチャンバー内等の泥土圧を切羽土圧にバランスさせて切羽を安定させることは難しい。
【0015】
他方、気泡材だけを添加する場合、回転カッターによって切羽から巨礫や玉石等を取り込む際の取り込み易さが向上し、また、これら玉石等が移動するときにも、気泡材のクッション作用により、比較的泥土圧を一定に維持し易いと考えられる。
【0016】
しかしながら、気泡材は、土砂の粒子同士の付着結合を妨げる作用があり、従って玉石等に細砂が付着することを阻止して、両者の分離が顕著となってしまう。この状態では、スクリューコンベアがカッターチャンバー内から排土する際、玉石等は、スクリューコンベアに送り込まれることなくカッターチャンバー内に滞留してしまい、結局、カッターチャンバー内で閉塞が生じるおそれが高い。
【0017】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、巨礫が多く散在する地山であっても、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することが可能な泥土圧シールド工法及び泥土圧シールド掘進機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明にかかる泥土圧シールド工法は、地山の切羽を掘削するスポークタイプの回転カッターの後方に、隔壁で区画してカッターチャンバーを形成した泥土圧シールド掘進機を用いる泥土圧シールド工法であって、粒径2mm未満の砂分が20%を超えず、粒径2mm以上の礫分が80%を超える地山の切羽から上記回転カッターで掘削され破砕されて上記カッターチャンバー内に取り込まれる礫分を含む掘削土砂の塑性流動性及び不透水性、並びに礫分と土砂との一体性が得られるように、切羽や該カッターチャンバー内へ向けて注入する薬材として、作泥土材と気泡材とを併用するようにしたことを特徴とする。
【0019】
前記作泥土材は、前記カッターチャンバー内からスクリューコンベアで排土された土砂分の30%以上となるように、切羽や該カッターチャンバー内へ向けて注入されることを特徴とする。
【0020】
前記気泡材は、前記カッターチャンバー内からスクリューコンベアで排土された排土量に対し、発泡前の当該気泡材原液の量が3%以上に設定されて、切羽や該カッターチャンバー内へ向けて注入されることを特徴とする。
【0021】
本発明にかかる泥土圧シールド掘進機は、地山の切羽を掘削するスポークタイプの回転カッターの後方に、隔壁で区画してカッターチャンバーを形成した泥土圧シールド掘進機であって、粒径2mm未満の砂分が20%を超えず、粒径2mm以上の礫分が80%を超える地山の切羽から上記回転カッターで掘削され破砕されて上記カッターチャンバー内に取り込まれる礫分を含む掘削土砂に混合する薬材を、切羽や該カッターチャンバー内へ向けて注入する注入手段を備え、薬材は、上記カッターチャンバーに取り込まれる礫分を含む土砂の塑性流動性及び不透水性、並びに礫分と土砂との一体性が得られるように、作泥土材と気泡材とが併用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる泥土圧シールド工法及び泥土圧シールド掘進機にあっては、巨礫が多く散在する地山であっても、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の好適な一実施形態を示す概略側断面図である。
【図2】図1に示した泥土圧シールド掘進機の回転カッターの正面図である。
【図3】本発明にかかる泥土圧シールド工法及び泥土圧シールド掘進機が適用される地山の粒径加積曲線を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1には本実施形態にかかる泥土圧シールド工法に用いられる泥土圧シールド掘進機1の概略側断面図が示されていると共に、図2には当該泥土圧シールド掘進機1の回転カッター2の正面図が示されている。
【0025】
泥土圧シールド掘進機1は主に、中空円筒体状のスキンプレート3と、スキンプレート3の前端側に設けられた隔壁4と、隔壁4から前方に間隔を隔てて設けられ、回転駆動手段(図示せず)で回転駆動されて地山の切羽Zを掘削する回転カッター2と、回転カッター2と隔壁4との間に形成され、掘削された土砂が取り込まれるカッターチャンバー5と、カッターチャンバー5内に設けられ、取り込まれた土砂と注入された薬材とを混合撹拌する撹拌装置(図示せず)と、スキンプレート3内に隔壁4よりも後方に位置させて設けられ、セグメント6に反力をとって、スキンプレート3と共に回転カッター2を前進させる推進力を発生するシールドジャッキ7と、隔壁4を貫通してカッターチャンバー5内に取り込み端部8aが位置され、排出端部8bがスキンプレート3後方へ、斜め上向きに延出されて、カッターチャンバー5内から土砂を排土するスクリューコンベア8とから構成される。また、シールド掘進機1後方の後続台車9には、シールド掘進機1の運転室10が設けられ、この運転室10から運転手がシールド掘進機1の運転制御を行うようになっている。
【0026】
本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1は、特に、カッターチャンバー5へ取り込むことが好ましくない巨礫Xが混在し得る玉石混じり砂礫や玉石層からなる地山の切羽Zを掘削する場合に、好適に適用される。勿論、このような巨礫Xを含まない玉石混じり砂礫や玉石層、通常の砂礫層などに対しても、適用することが可能である。
【0027】
回転カッター2は図2に示すように、スポークタイプで構成される。回転カッター2は、当該回転カッター2の中央に位置され、センタビット11が取り付けられるハブ部12と、ハブ部12から回転カッター2の周縁に向かって放射状に延出され、各種ビット13,14やローラカッター15が取り付けられる6本のスポーク部16と、スポーク部16の中途部同士を連結する中間リング17と、スポーク部16の先端部同士を連結する外周リング18とから構成される。
【0028】
中間リング17には、スポーク部16とスポーク部16のほぼ中間に位置させて、上述した大きな外形寸法の巨礫Xや玉石等がスポーク部16の間からカッターチャンバー5内へ取り込まれることを規制するために、制限用突起19が設けられる。すなわち、回転カッター2には、ハブ部12周りに、スポーク部16、制限用突起19を有する中間リング17及び外周リング18で規定して、巨礫取り込み制限区画Rが形成される。
【0029】
泥土圧シールド工法では、薬材を、回転カッター2で掘削した土砂に添加し、撹拌装置で撹拌混合することにより、掘削土砂を塑性流動性と不透水性を持つ泥土に変換する。そして、この泥土をカッターチャンバー5内及びスクリューコンベア8内に充満させ、シールドジャッキ7の推進力によりカッターチャンバー5内等に充満した泥土を加圧して泥土圧を発生させ、この泥土圧で切羽土圧に対抗させて、切羽Zを安定させるようになっている。
【0030】
泥土圧シールド掘進機1の推進に際しては、切羽Zの安定を維持するために、例えば、回転カッター2の回転速度を一定にして、シールドジャッキ7の伸長速度やスクリューコンベア8の回転速度を調整し、隔壁4に設けた土圧計(図示せず)によって測定されるカッターチャンバー5内の泥土圧を常時一定の圧力に保つようにして、掘進するようにしている。
【0031】
本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1には、細砂や粗砂、礫に混ざって、玉石、そしてさらには巨礫Xが散在している地山の切羽Zを掘進するにあたり、カッターチャンバー5内の泥土の状態を好適化する泥土調整手段が設けられる。
【0032】
泥土調整手段は、回転カッター2のスポーク部16やハブ部12の適宜位置に設けられて、回転カッター2前方の切羽Zへ向けて薬材を注入する第1注入手段20、隔壁4の中央部付近に設けられて、カッターチャンバー5内へ向けて薬材を注入する第2注入手段21、並びに、隔壁4の周縁部の適宜位置に設けられて、スキンプレート3の外回りやカッターチャンバー5内へ向けて薬材を注入する第3注入手段22を備える。
【0033】
第1及び第3注入手段20,22は、ベントナイト系添加材などの作泥土材を注入する。第2注入手段21は、気泡材を注入する。作泥土材を注入する注入手段20,22及び気泡材を注入する注入手段21の具体的構成は、従来周知である。
【0034】
また、本実施形態では、作泥土材を注入する注入手段20,22と気泡材を注入する注入手段21を別々に備える場合が示されているが、作泥土材と気泡材を注入口(図示せず)付近で混ぜ合わせることによって、あるいは、作泥土材の注入タイミングと気泡材の注入タイミングをずらすことによって、作泥土材用の注入手段20,22と気泡材用の注入手段21を供用するようにしてもよい。すなわち、作泥土材と気泡材は、すべての注入手段20〜22から注入するようにしてもよい。
【0035】
回転カッター2で切羽Zから掘削され破砕されたばかりの礫分を含む土砂は、回転カッター2の回転作用で、当該回転カッター2の第1注入手段20から切羽Zへ向けて注入される作泥土材や気泡材と撹拌混合されつつ、カッターチャンバー5内へ取り込まれるようになっている。また、回転カッター2で切羽Zから掘削され破砕されてカッターチャンバー5内に取り込まれた礫分を含む土砂は、カッターチャンバー5内で、隔壁4の第2及び第3注入手段21,22からカッターチャンバー5内へ向けて注入される作泥土材や気泡材と撹拌混合される。
【0036】
すなわち、回転カッター2で掘削された礫分を含む土砂は、スクリューコンベア8へ取り込まれる前に、切羽Z位置及びカッターチャンバー5内にて、作泥土材及び気泡材双方と撹拌混合される。
【0037】
また、本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1には、カッターチャンバー5内からスクリューコンベア8内に亘る間での土砂の閉塞を監視するために閉塞監視手段が設けられる。土砂の閉塞傾向は、撹拌等される土砂に滞留する摩擦熱に起因して、土砂温度が上昇することにより推定される。
【0038】
閉塞監視手段は、スクリューコンベア8の外側シェルに設けられ、スクリューコンベア8で搬送される礫分を含む土砂の温度をスクリューコンベア8外側から計測する温度センサ23と、運転室10内に設置され、温度センサ23で計測された土砂温度が入力されると共に、当該土砂温度を運転者に視認させるために表示する制御盤24とから構成される。
【0039】
温度センサ23の土砂温度は、閉塞推定用の設定温度と比較され、閉塞を未然に防ぐためのフィードフォワード制御用のデータとして制御盤24に入力される。土砂温度が設定温度に向かう温度上昇傾向が判別されたとき、運転者による手動制御もしくは制御盤24による自動制御により、注入手段20〜22から注入する薬材を増量するようになっている。
【0040】
また、本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1には、噴出防止手段が設けられる。噴出防止手段は、スクリューコンベア8として、大径な礫などを搬送することが可能なリボン式スクリューコンベアを採用し、このリボン式スクリューコンベアの排出端部8bに、泥土圧が発生して止水領域となるプラグゾーンを形成し得る長さ寸法の排土管25を連結して構成される。
【0041】
本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1では、巨礫Xを破砕した大型の礫等が排土に含まれていて、軸付きスクリューコンベアでは当該礫等で閉塞を起こしやすいことから、リボン式スクリューコンベア8が用いられる。
【0042】
排土管25は、リボン式スクリューコンベア8の排出端部8bから、後続台車9に組み込まれるズリ搬出台車26まで延設され、スクリューコンベア8からの排土を、ズリ搬出台車26に排出する。排土管25は、その内部を排土が移動する際の圧力損失によって、止水性を得るプラグゾーンを形成し、これにより地下水圧等に起因する土砂の噴出を防止するようになっている。
【0043】
次に、上記実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1を例示して、本実施形態にかかる泥土圧シールド工法について説明する。本発明にかかる泥土圧シールド工法及び泥土圧シールド掘進機は具体的には、図3に示す粒径加積曲線(粒径2mm未満の細粒(砂分)が20%を超えず、粒径2mm以上の礫石(礫分)が80%を超える)を有する地山を対象として開発され、台湾の大南湾近郊のトンネル掘削に、守秘状態で、実際に採用されたものである。
【0044】
泥土圧シールド工法は基本的には、カッターチャンバー5からスクリューコンベア8に亘って充満する泥土に薬材を添加して塑性流動性や不透水性を確保した上で、シールドジャッキ7の推進力で切羽土圧に拮抗する泥土圧を発生させ、この泥土圧で切羽Zを安定に維持しつつ、カッターチャンバー5内から排土するスクリューコンベア8の回転速度とシールドジャッキ7の伸長速度とを適正に調整して掘進を進めていく。
【0045】
泥土圧シールド掘進機1の掘進作業にあたり、本実施形態にかかる泥土圧シールド工法では、薬材としてベントナイト系添加材などの作泥土材及び気泡材を併用して、これら薬材を第1〜第3注入手段20〜22から、回転カッター2前方の切羽Zに向かって、そしてまたカッターチャンバー5内に向けて、注入する。
【0046】
本実施形態にかかる泥土圧シールド工法は、カッターチャンバー5へ取り込むことが好ましくない巨礫Xが混在し得る玉石混じり砂礫や玉石層からなる地山の切羽Zを掘削する場合を対象としていて、ベントナイト系添加材に代表される作泥土材は、通常一般に認識されている細粒分の補充という意味合いから、土砂の塑性流動性や不透水性を高めるという作用に加えて、巨礫Xを破砕した礫や玉石等の礫分を含む掘削土砂に関し、当該礫分を掘削土砂と共に包み込んで当該礫分が土砂から分離してしまうことを抑制し、これら土砂と礫分との一体性を向上するようにしている。これにより、気泡材の難点である、土砂の粒子同士の付着結合を妨げる等の分離作用を抑制することができる。
【0047】
また、気泡材は、上記作泥土材と組み合わせて使用することで、通常一般に認識されている塑性流動性や不透水性の向上に関し、細粒分である作泥土材との相乗作用で、ベアリング効果をもつ塑性流動性や不透水性を発揮して礫分を含む土砂の回転カッター2や隔壁4への付着を抑制することができると共に、作泥土材では得られない気泡材のクッション作用により、掘削土砂や作泥土材の圧縮性を高めて、カッターチャンバー5内やスクリューコンベア8内で礫分が転がり移動することを妨げ、また転がり移動したとしてもそのクッション作用で泥土圧の急激な変動を抑制することができる。
【0048】
従って、薬材として、作泥土材及び気泡材を併用することにより、泥土圧を安定化することができて切羽Zを安定的に維持することができると共に、スクリューコンベア8による礫分の排土を円滑化して閉塞の発生を防止できると共に、噴出が発生することも防ぐことができる。
【0049】
作泥土材の注入量は、礫分を含む掘削土砂のうち、礫分を除く土砂に対して検討すればよく、通常一般には土砂の30%とされていることから、作泥土材で礫分を包み込む量を考慮すればよい。作泥土材の注入量は、カッターチャンバー5内からスクリューコンベア8で排土された土砂分の30%以上となるように設定することが好ましい。これにより、巨礫Xを破砕した礫や玉石等の礫分を含む掘削土砂に対し、当該礫分を掘削土砂と共に包み込んで当該礫分が土砂から分離してしまうことを抑制して、これら土砂と礫分との一体性を向上することができる。作泥土材の注入量上限については、種々の対象地山の状況如何によって設定することが好ましい。
【0050】
気泡材の注入量は、礫層等を対象とする場合、通常一般には気泡化状態で単位土量に対し40%以上とされていることから、作泥土材の注入による細粒分の増加分を見込めばよい。気泡材の注入量、より具体的には、発泡前の気泡材原液の量は、カッターチャンバー5内からスクリューコンベア8で排土された排土量に対し、3%以上に設定することが好ましい。これにより、作泥土材との相互作用によるベアリング効果を得ることができると共に、巨礫Xを破砕した礫分を含む掘削土砂の圧縮性を向上して、泥土圧の急激な変動を防止することができる。注入量上限については、気泡材についても、種々の対象地山の状況如何によって設定することが好ましい。
【符号の説明】
【0051】
1 泥土圧シールド掘進機
2 回転カッター
4 隔壁
5 カッターチャンバー
8 スクリューコンベア
20 第1注入手段
21 第2注入手段
22 第3注入手段
Z 切羽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山の切羽を掘削するスポークタイプの回転カッターの後方に、隔壁で区画してカッターチャンバーを形成した泥土圧シールド掘進機を用いる泥土圧シールド工法であって、
粒径2mm未満の砂分が20%を超えず、粒径2mm以上の礫分が80%を超える地山の切羽から上記回転カッターで掘削され破砕されて上記カッターチャンバー内に取り込まれる礫分を含む掘削土砂の塑性流動性及び不透水性、並びに礫分と土砂との一体性が得られるように、切羽や該カッターチャンバー内へ向けて注入する薬材として、作泥土材と気泡材とを併用するようにしたことを特徴とする泥土圧シールド工法。
【請求項2】
前記作泥土材は、前記カッターチャンバー内からスクリューコンベアで排土された土砂分の30%以上となるように、切羽や該カッターチャンバー内へ向けて注入されることを特徴とする請求項1に記載の泥土圧シールド工法。
【請求項3】
前記気泡材は、前記カッターチャンバー内からスクリューコンベアで排土された排土量に対し、発泡前の当該気泡材原液の量が3%以上に設定されて、切羽や該カッターチャンバー内へ向けて注入されることを特徴とする請求項1または2に記載の泥土圧シールド工法。
【請求項4】
地山の切羽を掘削するスポークタイプの回転カッターの後方に、隔壁で区画してカッターチャンバーを形成した泥土圧シールド掘進機であって、
粒径2mm未満の砂分が20%を超えず、粒径2mm以上の礫分が80%を超える地山の切羽から上記回転カッターで掘削され破砕されて上記カッターチャンバー内に取り込まれる礫分を含む掘削土砂に混合する薬材を、切羽や該カッターチャンバー内へ向けて注入する注入手段を備え、
薬材は、上記カッターチャンバーに取り込まれる礫分を含む土砂の塑性流動性及び不透水性、並びに礫分と土砂との一体性が得られるように、作泥土材と気泡材とが併用されることを特徴とする泥土圧シールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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