説明

注入可能なデポー組成物およびそれらの使用

【課題】患者の体内の所望される位置に注入されて移植片を形成し、その移植片が益剤の持続的な放出を生ずることのできるデポー組成物の提供、また該組成物の使用方法。
【解決手段】生物侵食性の生物学的相容性ポリマー;25℃にて7重量%以下の水混和性を有し、前記ポリマーを可塑化して、それとゲルを形成するのに有効な量の芳香族アルコール;および、益剤を含む注入可能なデポー組成物。該組成物は、芳香族酸のエステルまたは芳香族ケトンを含有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体内の所望される位置に注入されて移植片を形成し、その移植片が益剤の持続的な放出を生ずることのできるデポー組成物に関する。本発明は、また、益剤を患者に投与するためにデポー組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
生物分解性のポリマーは、長年にわたって医学的用途に使用されている。生物分解性のポリマーを構成するデバイスの例としては、縫合糸、外科用クリップ、ステープル、移植片および薬剤供給システムが挙げられる。これら生物分解性ポリマーの大半は、グリコリド、ラクチド、カプロラクトンおよびこれらのコポリマーに基づく。
【0003】
生物分解性のポリマーは、それらが加熱されて種々の形状、例えば、繊維、クリップ、ステープル、ピン、フィルム等に成形される意味で熱可塑性であるのがよい。あるいは、これらは、架橋反応によって形成される熱硬化性の材料であってもよく、このことは、高温で流動性の液体を溶融または形成しないような高分子材料を導く。
【0004】
熱可塑性および熱硬化性生物分解性のポリマーは、多くの有用な生物・医学用途を有するが、ヒト、動物、鳥、魚および爬虫類を含め、種々の動物の身体におけるそれらの使用には、幾つかの重大な制限が存在する。これらのポリマーは、固形物であるので、それらの使用を含む例は、全て、最初に体外で高分子構造を形成し、続いて、固形構造物を体内に挿入する必要がある。例えば、縫合糸、クリップおよびステープルは、全て、使用前に熱可塑性生物分解可能なポリマー類より形成される。体内に挿入される時、それらは、それらの本来の形状を保持する。この特性は、幾つかの用途について不可欠であるものの、最も要求されるかもしれない場合に、それは、材料が流動して気孔または体腔を満たすことが所望される場合の欠点である。
【0005】
熱可塑性または熱硬化性生物分解性のポリマーを使用する薬剤供給システムは、また、体外で形成される必要がある。このような例においては、薬剤は、ポリマーに組み込まれ、混合物は、移植のために、ある種の形状、例えば、シリンダー、ディスクまたは繊維形状とされる。このような固形の移植片では、薬剤供給システムは、切開を通して体内に挿入される必要がある。これらの切開は、医師によって所望されるよりも大きい場合があり、場合によっては、このような移植片または薬剤供給システムを受容するのに、患者の不快感を導く。にもかかわらず、生物分解性および非生物分解性の移植可能な薬剤供給システムは、広く使用されて成功を納めている。
【0006】
速度制御膜と、口内の移植のために特に設計された薬剤の0次オーダー放出とを有する1つの溜めデバイスは、U.S.特許No.5,085,866に記載されている。このデバイスは、迅速に蒸発する低沸点の第1の溶剤と、緩やかに蒸発する高沸点の第2の溶剤とによって構成される溶剤とポリマーとを有する溶液で噴霧される心から製造される。
【0007】
浸透圧供給システムのその他の例としては、U.S.特許Nos.3,797,492;3,987,790;4,008,719;4,865,845;5,057,318;5,059,423;5,112,614;5,137,727;5,151,093;5,234,692;5,234,693;5,279,608および5,336,057に開示されているものが挙げられる。U.S.特許Nos.5,209,746;5,308,348および5,456,679に開示されているように、益剤を拍動で供給する拍動性の供給デバイスもまた公知である。
【0008】
移植片薬剤供給システムを移植するために必要とされる切開を回避するための1つの方法は、それらを小粒子、微細球またはマイクロカプセルとして注入することである。例えば、U.S.特許No.5,019,400は、非常に低い温度キャスチングプロセスによる制御放出微細球の製造を記載している。これら材料は、体内に放出することのできる薬剤を含有してもよく、または、含有しなくともよい。これら材料は、体内にシリンジで注入されるが、これらは、必ずしも、生物分解性の移植片についての要件を満足するものではない。これらは、事実上、粒状体であるので、これらは、ある種の人口装具に必要とされる構造的一体性を有する連続フィルムまたは固形移植片を形成しない。ある種の体腔、例えば、口、歯周ポケット、眼または膣に挿入する時、かなり流動性である場合、これらの小粒子、微細球またはマイクロカプセルは、それらのサイズが小さくかつ不連続性であるので、保持されにくい。さらに、粒子は、凝集しやすく、かくして、それらの挙動は予測することが難しい。また、これらのポリマーから製造され、体内に放出するための薬剤を含有する微細球またはマイクロカプセルは、大量に製造することが難しい場合があり、それらの貯蔵および注入特性には問題が存在する。さらに、マイクロカプセルまたは小粒子システムの他の1つの大きな制限は、もっぱら手術によらなければ、それらの可逆性がないことである。すなわち、それらが注入された後合併症がある場合、固形の移植片でよりも体からそれらを取出すことがより相当に困難である。微小粒子またはマイクロカプセルについてのなおさらなる制限は、蛋白質およびDNA-基体の薬剤を封入することが難しく、溶剤および高温での分解が生ずることである。
【0009】
前述のチャレンジに答えるべく、種々の薬剤供給システム技術が開発されている。例えば、U.S.特許No. 4,938,763;および、その分割U.S.特許No.5,278,201は、動物用のシリンジに入れることができ、in-situ形成することができ、生物分解性の移植片を生ずるのに使用される生物分解性のポリマーに関する。1つの実施態様にて、熱可塑性システムが使用され、非反応性のポリマーが生物学的相容性の溶剤に溶解されて、液体を形成し、これは、動物に入れられ、溶剤は、散逸して、固形の移植片を生ずる。あるいは、熱硬化性のシステムが使用され、有効な量の液体アクリルエステル末端生物分解性のプレポリマーおよび硬化剤が形成され、液体混合物が動物内に入れられ、そこで、プレポリマーが硬化して固形の移植片が形成される。システムは、動物に注入する前に有効レベルの生物学的活性剤を液体に加えることによりシリンジに入れることが可能な固形の生物分解性供給システムを生ずる。
【0010】
U.S.特許5,599,552は、水に混和させて分散可能である溶剤、例えば、N-メチル-2-ピロリドンを使用し、周囲の組織から水を迅速に吸収することのできるポリマー溶液を生ずる熱可塑性および熱硬化性ポリマー組成物を記載している。溶剤の極性は、約少なくとも10%水溶解度を生ずるのに有効であると記載されている。ポリマーマトリックスシステムは、多孔質スキンに取り囲まれた多孔質心を形成すると記載されている。
【0011】
U.S.特許No.5,242,910は、歯周病を治療するための持続的に放出される組成物を記載している。組成物は、ラクチドおよびグリコリドのコポリマー;トリアセチン(溶剤/可塑剤として);および、口腔病の軽減を生ずる薬剤を含む。組成物は、ゲルの形を取ることができ、針またはカテーテルのいずれかを使用してシリンジにより歯周腔に挿入することができる。さらなる任意の成分として、組成物は、界面活性剤、芳香剤、粘度調節剤、錯形成剤、抗酸化物、その他のポリマー、ガム、ワックス/油および着色剤を含有することができる。実施例の1つに記載されている粘度調節剤の1つの例は、ポリエチレングリコール400である。U.S.特許Nos.5,620,700および5,556,905は、溶剤および/または可塑剤を使用する注入可能な移植片についてのポリマー組成物に関する。
【0012】
注入可能な移植片についての従来技術の組成物は、移植部位でのポリマーの迅速な凝固を促進し、かつ、移植片からの薬剤の拡散を促進するために水性体液に非常にまたは比較的水溶性である溶剤/可塑剤を使用していた。しかし、現在、高粘度のゲルが移植後および分取期間中のデポーの一体性を維持し、また、ゲル中での所望される益剤の懸濁特性を促進するために望ましいことが観測されている。
【0013】
この問題を検討するために、この分野の研究には、組成物の全体としての粘度を低下させるべく種々の方法、例えば、より低い分子量のポリマー、より低いポリマー対溶剤比および粘度低下を生ずる薬剤の使用等が使用されている。例えば、Dunn et alに対するU.S.特許No.5,733,950;5,780,044および5,990,194ならびに国際出願WO98/27962参照。これら特許および刊行物は、より低い注入力がシリンジからのゲルを噴出させるために必要とされ、また、要求されるよりもより小さな針の使用によって被検者に実質的に不快感をより生じさせないように、剪断減粘性およびゲルのより許容可能な注入性を生じさせるチキソトロピーゲル組成物の形成を記載している。
【0014】
幾つかの成功にも拘わらず、従来文献に記載されているシステムは、完全に満足するものではない。例えば、これらのアプローチは、薬剤粒子の沈降;高い初期放出突発;比較的大量の乳化剤、例えば、組成物の合計重量の約1/3;溶剤の揮発性に関連する製造上の問題;蛋白質およびペプチド剤の変性等を生じかねない。また、生物侵食性のポリマーが低分子量を有するという要件が製造的観点からかなり制限される。
【0015】
ある種のシステムにて、適当なポリマー溶剤に溶解された生物分解性のポリマー;および、ある種の実施態様にて、チキソトロピー剤と混合され、実質的に有意に改善された剪断減粘性および、さらには、従来文献に記載されているデポーゲル配合物と比較して、さらに低い注入力を示すデポー組成物を生ずることが発見された。これらのデポー組成物は、エマルジョンを形成することなく改良された流動特性を有するが、なお、使用する時に、安定化/調節効果が移植部位へのその導入の際に益剤の望ましくない“突発”を防止するのに適当ではないかもしれないゲージを有する針および/またはカテーテルを介して容易に注入可能なチキソトロピー組成物を生ずる。
【0016】
従来技術のデバイスによって示されるポリマー移植片への迅速な水の吸収および体液への溶剤分散は、サイズおよび形状が不均質な多孔構造を有する移植片を生ずることが多い。典型的には、表面気孔は、1/3mm以上の移植表面から移植片に伸びる指様の気孔構造を取り、このような指様気孔は、移植片の表面で使用環境に開口している。内部気孔は、小さくなりやすく、使用環境に存在する体液にアクセスしにくい。したがって、このようなデバイスが移植される時、指様の気孔は、移植片内部への水性体液の非常に迅速な吸収、続いて、有意な量の益剤および拡散の妨害されない益剤の使用環境への拡散の早速かつ迅速な溶解を可能とし、上記考察した突発的な作用を生じさせる。
【0017】
さらに、迅速な水の吸収は、硬化された移植片または硬化された皮膚を有する移植片を生じさせるように、早発のポリマー沈殿を生じさせかねない。益剤を含有するポリマーの内部気孔および多くの内部は、体液との接触を遮断され、益剤の放出の有意な減少は、わずかばかりの時間(“遅滞時間(lag time)”)では生じえない。その遅滞時間は、益剤の治療を受ける被検者への制御された持続的放出を表す観点から望ましくない。観察すると、益剤の突発は、移植後直ちに短時間で放出され、益剤が全くまたはほとんど放出されない遅滞時間が存在し、続いて、(益剤が突発後維持されると推定される)益剤の連続供給は、益剤の供給が停止するまで続く。
【0018】
溶剤に溶解させたポリマーによって構成される溶剤基体のデポー組成物では、その組成物は、溶剤がデポーから拡散すると注入後凝固する。これらの組成物は、注入されるために非粘性である必要があるので、大きなパーセンテージの薬剤が、溶剤の拡散によって形成されるシステムとして放出される。この効果は、“突発”効果と称する。これに関して、溶剤基体の組成物は、薬剤突発を有するのが典型的であり、組成物中に含まれる30〜75%の薬剤が、初期注入の1日内に放出される。
【0019】
従来の溶剤基体のデポー組成物で遭遇するさらなる問題は、注入可能な組成物の粘度が、特に、高分子量ポリマーを使用する時は、比較的高く、したがって、この組成物を患者の体内に導入するために必要とされる注入力が非常に高いことである(例えば、U.S.特許No.6,130,200参照)。この問題を検討するために、この分野における研究は、低分子量ポリマー;および、比較的に揮発性で水溶性の溶剤、例えば、エタノールを使用してきた。例えば、Dunn et al. に対するU.S.特許No.5,733,950;5,780,044;および、5,990,194;ならびに、PCT公開パンフレットWO98/27962参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】U.S.特許No.5,085,866
【特許文献2】U.S.特許No.3,797,492
【特許文献3】U.S.特許No.3,987,790
【特許文献4】U.S.特許No.4,008,719
【特許文献5】U.S.特許No.4,865,845
【特許文献6】U.S.特許No.5,057,318
【特許文献7】U.S.特許No.5,059,423
【特許文献8】U.S.特許No.5,112,614
【特許文献9】U.S.特許No.5,137,727
【特許文献10】U.S.特許No.5,151,093
【特許文献11】U.S.特許No.5,234,692
【特許文献12】U.S.特許No.5,234,693
【特許文献13】U.S.特許No.5,279,608
【特許文献14】U.S.特許No.5,336,057
【特許文献15】U.S.特許No.5,209,746
【特許文献16】U.S.特許No.5,308,348
【特許文献17】U.S.特許No.5,456,679
【特許文献18】U.S.特許No.5,019,400
【特許文献19】U.S.特許No.4,938,763
【特許文献20】U.S.特許No.5,278,201
【特許文献21】U.S.特許No.5,599,552
【特許文献22】U.S.特許No.5,242,910
【特許文献23】U.S.特許No.5,620,700
【特許文献24】U.S.特許No.5,556,905
【特許文献25】U.S.特許No.5,733,950
【特許文献26】U.S.特許No.5,780,044
【特許文献27】U.S.特許No.5,990,194
【特許文献28】国際出願WO98/27962
【特許文献29】U.S.特許No.6,130,200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし、これらアプローチは、薬剤粒子の沈降および/または高い初期放出突発および/または比較的大量の乳化剤、例えば、組成物の合計重量の約1/3を招きかねない。さらに、溶剤の揮発性は、製造的観点から問題であり、1価の低級アルカノール、例えば、エタノールは、蛋白質およびペプチド薬剤を変性しかねない。また、生物侵食性のポリマーが低分子量を有する必要性は、製造的な観点からかなりの制約を与える。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、当分野における前述した必要性に係り、改善された剪断減粘性挙動を示す注入可能なデポー組成物を提供し、それによって、さらに低い注入力および小さな径の(例えば、16ゲージ以上の)針の使用を可能とする。組成物は、初期突発作用を制限することなく、益剤の持続的な放出を提供し、ポリマー/溶剤比および生物侵食性のポリマーの分子量に関して配合柔軟性の改善を提供する。さらに、本組成物は、揮発性および/または強力な変性溶剤、例えば、エタノールを含有しない。
【0023】
1つの態様にて、本発明は、注入可能なデポー組成物であって、
生物侵食性の生物学的相容性ポリマー;
25℃にて水混和性7%以下を有し、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成するのに有効な量の芳香族アルコール;および、
益剤;
を含み、
その組成物が1価の低級アルカノールを含まない組成物に係る。
【0024】
もう1つの態様にて、本発明は、注入可能なデポー組成物であって、
ほぼ5重量%〜ほぼ90重量%の重量平均分子量ほぼ、1,000〜ほぼ120,000、好ましくは、ほぼ5,000〜ほぼ50,000、さらに好ましくは、ほぼ8,000〜ほぼ30,000を有する生物分解性の生物学的相容性乳酸基体ポリマー;
25℃にて水混和性5%以下を有し、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成するのに有効な量の芳香族アルコールであり、その芳香族アルコールが、構造式(I):
Ar-(L)-OH (I)
〔式中、Arは、置換または未置換アリールまたはヘテロアリール基であり、nは、0または1であり、Lは、結合部分である。〕
を有する芳香族アルコール;および、
益剤;
を含み、
その組成物が1価の低級アルカノールを含まない組成物に係る。
【0025】
もう1つの態様にて、本発明は、注入可能なデポー組成物であって、
生物侵食性の生物学的相容性ポリマー;
芳香族酸のエステル類、芳香族ケトン類およびこれらの混合物からなる群より選択される溶剤であり、その溶剤が、25℃にて水混和性7%以下を有し、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成するのに有効な量存在する溶剤;
水混和性7%以下を有する有効なチキソトロピー量の芳香族アルコール;および、
益剤;
を含み、
その組成物が1価の低級アルカノールを含まない組成物に係る。
【0026】
もう1つの態様にて、本発明は、注入可能なデポー組成物であって、
ほぼ5重量%〜ほぼ90重量%の重量平均分子量ほぼ1,000〜ほぼ120,000、好ましくは、ほぼ5,000〜ほぼ50,000、さらに好ましくは、ほぼ8,000〜ほぼ30,000を有する生物分解性の生物学的相容性乳酸基体ポリマー;
芳香族酸のエステルであり、そのエステルが、25℃にて水混和性7%以下を有し、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成するのに有効な量存在する芳香族酸のエステル;
水混和性7%以下を有する有効なチキソトロピー量の芳香族アルコールであり、その芳香族アルコールが、構造式(I):〔式中、Ar、nおよびLは、上記定義した通りである。〕
を有する芳香族アルコール;および、
(c) 益剤;
を含み、
その組成物が1価の低級アルカノールを含まない組成物に係る。
【0027】
好ましい組成物は、1価の低級アルコールを含まないのがよく、また、25℃にて7重量%より大である水混和性を有する溶剤を含まないのがよい。
【0028】
もう1つの態様にて、本発明は、被検者に益剤を局所または全身的に投与する方法であって、益剤;生物侵食性の生物学的ポリマー;および、25℃にて7%以下の水混和性を有し、その芳香族アルコールが、組成物中に、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成のに有効な量存在する芳香族アルコールを被検者の体表面下に移植することを含む方法を含む。好ましくは、本システムは、被検者に移植後最初の24時間以内粘性のゲル中に存在する益剤の40重量%以下を放出する。さらに好ましくは、移植後最初の24時間以内に30重量%以下の益剤が放出され、移植された組成物は、突発指数12以下、好ましくは、8以下を有するであろう。
【0029】
もう1つの態様にて、本発明は、被検者に益剤を局所または全身的に投与する方法であって、益剤;生物侵食性の生物学的相容性ポリマー;溶剤をおよび25℃にて水混和性7%以下を有する有効なチキソトロピー量の芳香族アルコールを含有する組成物を患者の体表面下に移植することを含む方法を含む。溶剤は、芳香族酸エステル、芳香族ケトンおよびそれらの混合物からなる群より選択され、その溶剤は、25℃にて水混和性7%以下を有し、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成するのに有効な量存在する。
【0030】
もう1つの態様にて、本発明は、上記したような注入可能なデポー組成物およびそのような組成物の投与方法であり、粘性ゲルは、さらに、ポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリカプロラクトン類、ポリ無水物類、ポリアミン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリジオキサノン類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリホスホエステル類、ポリオルトカーボネート類、ポリホスファゼン類、スクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸類)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ホスホエステル類、ポリサッカライド類、キチン、キトサン、ヒアルロン酸;および、これらのコポリマー類、ターポリマー類および混合物からなる群より選択されるポリマーを含む組成物および方法を含む。1つの好ましい実施態様にて、ポリマーは、乳酸基体のポリマーである。好ましくは、ポリ乳酸ポリマーは、重量平均分子量、約1,000〜約120,000、好ましくは、約5,000〜約50,000、さらに好ましくは、約8,000〜約30,000の範囲を有するのがよい。
【0031】
好ましい実施態様にて、溶剤は、芳香族アルコール、アリール酸の低級アルキルおよびアラルキルエステル;アリール、アラルキルおよび低級アルキルケトン;および、クエン酸の低級アルキルエステルから選択される。好ましくは、溶剤は、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエートおよびエチルベンゾエートから選択される。好ましい実施態様にて、組成物は、25℃にて水混和性7重量%より大を有する溶剤を含まない。好ましくは、溶剤は、水混和性7重量%未満、さらに好ましくは、5重量%未満、さらに好ましくは、3重量%未満を有する。
【0032】
もう1つの態様にて、本発明は、上記したように注入可能なデポー組成物およびそのような組成物を投与する方法であり、その益剤は、薬剤、蛋白質類、酵素類、ホルモン類、ポリヌクレオチド類、核蛋白質類、ポリサッカライド類、グリコ蛋白質類、リポ蛋白質類、ポリペプチド類、ステロイド類、鎮痛剤、局所麻酔剤、抗生物質、化学療法剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、血管形成剤、抗凝血剤、線維芽溶解剤、成長因子、抗体、眼薬および代謝物質;ならびに、それらの類縁体、誘導体およびフラグメント;および、これらの種の精製され、単離された組み換え体および化学的に合成される異類から選択される組成物および方法に係る。好ましい実施態様にて、益剤は、ヒト成長ホルモン、メチオニン-ヒト-成長ホルモン;デスフェニルアラニンヒト成長ホルモン、アルファー、ベータまたはガンマーインターフェロン、エリスロポイエチン、グルガコン、カルシトニン、ヘパリン、インターロイキン-1、インターロイキン-2、因子VIII、因子IX、黄体ホルモン、リラキシン、卵胞刺激ホルモン、心房性ナトリウム排泄増加性因子、フィルグラスチム表皮成長因子(EGFs)、血小板誘導成長因子(PDGFs)、インスリン様成長因子(IGFs)、線維芽成長因子(FGFs)、形質転換成長因子(TGFs)、インターロイキン(ILs)、コロニー刺激因子(CSFs、MCFs、GCSFs、GMCSFs)、インターフェロン(IFNs)、内皮成長因子(VEGF、EGFs)、エリスロポイエチン(EPOs)、アンギオポイエチン(ANGs)、胎盤誘発成長因子(PIGFs)および低酸素誘発転写調節剤(HIFs)である。好ましくは、益剤は、ポリマー、溶剤および益剤合計量の0.1〜50重量%の量存在する。好ましい実施態様にて、益剤は、粘性ゲルに分散または溶解された粒子の形であり、益剤は、平均粒子サイズ0.1〜250μを有する粒子の形である。ある種の好ましい実施態様にて、益剤は、粒子がさらに安定剤、増量剤、キレート剤および緩衝剤からなる群より選択される構成成分を含む粒子の形である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の前述およびその他の目的、特徴および有益性は、以下の図面に関する詳細な説明を読むと、さらに容易に理解されるであろう。図面にて:
【図1】図1は、種々の溶剤に配合したデポービヒクル、すなわち、配合物5、6および7のレオロジー挙動を示すグラフである。
【図2】図2は、24-ゲージの注射針から室温で1ml/分で配合物5、6および7を分取するために要求される注入力を示すグラフである。
【図3】図3は、ベンジルベンゾエートまたはベンジルアルコールと組み合わせてポリ(ラクチド-コ-グリコリド)の重量平均分子量を変えて配合した注入可能なデポー組成物を24ゲージの注射針から室温で1ml/分で分取するのに要求される注入力を示すグラフである。
【図4】図4は、ベンジルベンゾエートもしくはベンジルアルコールまたはそれらの混合物と組み合わせてポリ(ラクチド-コ-グリコリド)の重量平均分子量を変えて配合したデポー組成物を24ゲージの注射針から室温で1ml/分で分取するのに要求される注入力を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物(配合物8〜10)から得られるヒト成長ホルモンのインビボ放出特性を示すグラフである。
【図6】図6は、種々のデポー配合物(配合物10および11)から得られるヒト成長ホルモンのインビボ放出特性を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物(配合物12および13)から得られるブピバカインのインビボ放出特性を示すグラフである。
【図8】図8は、種々のデポー配合物(配合物13および14)から得られるブピバカインのインビボ放出特性を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の配合物を含め、デポー配合物(配合物15および16)から得られるブピバカインのインビボ放出特性を示すグラフである。
【図10】図10は、5℃での時間の関数としての本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物のhGH安定性を示す。
【図11】図11は、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物(配合物8〜10および17)の注入力を示す。
【図12】図12は、5℃での時間の関数としての、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物(配合物36〜39)中のPDGFの安定性を示す。
【図13】図13は、25℃での時間の関数としての、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物(配合物36〜39)中のPDGFの安定性を示す。
【図14】図14は、40℃での時間の関数としての、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物(配合物36〜39)中のPDGFの安定性を示す。
【図15】図15は、本発明の配合物を含め、種々のデポー組成物(配合物36〜39)から得られるPDGFのインビボ放出特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
概観および定義:
本発明は、患者の体内に注入後移植された持続性放出益剤供給システムとして働く注入可能なデポー組成物に係る。本組成物は、生物侵食性の生物学的相容性ポリマー;および、25℃にて7%以下、好ましくは、25℃にて5%以下の水混和性を有する芳香族アルコールより形成されるゲルである。芳香族アルコールは、芳香族酸エステル、芳香族ケトン、または、その両方と組み合わさって存在してもよい。
【0035】
本組成物は、移植システムを取り囲む水性環境からの水の移動を制限することによる益剤の持続された放出を生じ、かくして、長時間にわたって益剤を供給する。水の吸収は、水不混和性の芳香族アルコールにより制御される。本組成物のポリマーが生物侵食性であるので、本移植システムは、益剤が移植片から枯渇された後に手術により取り除く必要がない。
【0036】
概して、本発明の組成物は、ゲル様であり、移植の際および薬剤供給の間、なお、それが硬化する際を通して、実質的に、均質な非多孔質構造を形成する。さらに、ポリマーゲル移植片は、水性環境に賦される時、緩やかに硬化し、硬化された移植片は、ガラス転移温度Tgが37℃以下で、ゴム状の(非硬質)組成物を維持するのがよい。
【0037】
これら組成物中の芳香族アルコールそれ自体がチキソトロピー剤として作用し、かくして、剪断減粘性および組成物均質性を実質的に増加させるので、通常、さらなるチキソトロピーを導入する必要がない。しかし、幾つかの実施態様にて、剪断減粘性および/または均質性は、さらなるチキソトロピー剤を配合することによって、さらに改善され(それによって、放出特性が改善される)。また、多孔質形成剤と益剤の溶解度調節剤を移植システムに加えると、本発明の有益な態様を変化させることのない典型的な薬学的賦形剤およびその他の添加剤と合わさって移植システムからの所望される放出特性を生ずる。
【0038】
本明細書の好ましい組成物は、益剤を水に飽和させ、それによって、益剤のゼロ次オーダー放出を加速するのに必要とされるより高いレベルでポリマーの内部に益剤を負荷可能とする。さらに、好ましい組成物は、ゲルが移植24時間以上後の期間非硬質を維持するように、37℃未満であるガラス転移温度を有する粘性ゲルを生ずるのがよい。
【0039】
本発明を記載し特許請求するのに、以下の術語は、以下に記載する定義に従い使用されるであろう。
【0040】
単数は“a”、“an”で表し、“the”は、特に明瞭に定義されない限り、複数の指示対象を含む。かくして、例えば、“溶剤(a solvent)”は、単数の溶剤および2つ以上の異なる溶剤の混合物を含み、“益剤(a beneficial agent)”とは、単数の益剤および2つ以上の異なる液剤の組み合わせを含み、“芳香族アルコール(an aromatic alcohol)”とは、単数の芳香族アルコールおよび2つ以上の異なる芳香族アルコールの混合物を含む等である。
【0041】
“益剤(beneficial agent)”という用語は、所望される有益性に影響を及ぼし、単独あるいはその他の薬学的賦形剤または不活性成分との組み合わせにて、ヒトまたは動物に投与する際の作用に影響を及ぼす薬剤を意味することが多い。
【0042】
本明細書で使用する場合、“ポリヌクレオチド”という用語は、いずれかの鎖長を有するヌクレオチオド、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドの高分子をいい、二重鎖および単鎖のDNAおよびRNAが挙げられる。当分野で公知のいずれのタイプの修飾、置換およびヌクレオチド間修飾も含まれる。
【0043】
本明細書で使用する場合、“組み換えポリヌクレオチド”という用語は、その起始または手技による、そのゲノム、cDNA、半合成または合成起源のポリヌクレオチドをいい:事実上、それの結合される全部または一部のポリヌクレオチドに関連するものではなく;事実上、それが結合されるもの以外のポリヌクレオチドにも結合されるか;または、天然に存在しないものをもいう。
【0044】
本明細書で使用する場合、“ポリペプチド”という用語は、例えば、ペプチド類、オリゴペプチド類および蛋白質を含めアミノ酸類のポリマーおよびその誘導体、類縁体およびフラグメント;および、天然産および非天然産の当分野公知のその他の修飾体をいう。
【0045】
本明細書で使用する場合、“精製される”および“単離される”という用語は、ポリペプチドまたはヌクレオチド鎖をいう時、その他の同タイプの生物学的巨大分子が実質的に存在することなく、示した分子が存在することを意味する。本明細書で使用される“精製された”という用語は、同タイプの生物学的巨大分子の少なくとも75重量%、さらに好ましくは、少なくとも85重量%、なおさらに好ましくは、少なくとも95重量%、最も好ましくは、少なくとも98重量%が存在することを意味する。
【0046】
“AUC”という用語は、組成物の移植の時間対移植後の時間“t”によって測定した、被検者中の益剤の血漿濃度を時間に対してプロットすることによる被検者にてのインビボ検定より得られる曲線下の面積を意味する。時間tは、益剤の被検者に対する供給時間に対応する。
【0047】
“突発指数(burst index)”という用語は、益剤の全身供給を意図する個々の組成物に関して、(i)第1の時間(t1)における時間数で割った被検者への組成物の移植後の第1の時間について計算されるAUC÷(ii)供給時間(t2)の合計における時間数で割った益剤の供給時間について計算されるAUCで表される商を意味する。例えば、24時間での突発指数は、(i)時間数24で割った被検者への組成物の移植後の最初の24時間について計算されるAUC÷(ii)供給時間の合計時間の時間数で割った益剤の供給時間について計算されるAUCで表される商である。
【0048】
“溶解されるかまたは分散された”という語句は、ゲル組成物にて益剤の存在を達成するあらゆる手段を包含し、溶解、分散、懸濁等が挙げられる。
【0049】
“全身的”という用語は、益剤の被検者への供給または投与に関して、その益剤が被検者の血漿にて生物学的に有意なレベルで検知可能であることを意味する。
【0050】
“局所的”という用語は、益剤の被検者への供給または投与に関して、その益剤が被検者の局所部位に供給されるが、被検者の血漿にて生物学的に有意なレベルで検知可能ではないことを意味する。
【0051】
“ゲルビヒクル”という用語は、益剤が存在することなく、ポリマーと溶剤との混合物によって形成される組成物を意味する。
【0052】
“長時間”という用語は、本発明の移植片からの益剤の放出が、概して、1週間以上、好ましくは、約30日以上にわたるであろう時間を意味する。
【0053】
“初期突発”という用語は、本発明の個々の組成物に関して、(i)移植後の予め決められた初期時間に組成物から放出される益剤の重量÷(ii)移植された組成物から供給されるはずである益剤の合計量によって得られる商を意味する。初期突発は、移植片の形状および表面積に依存して変化するかもしれないことを理解するべきである。したがって、本明細書にて記載する初期突発に関するパーセンテージおよび突発指数は、組成物の標準的なシリンジにより分取される形で試験される組成物に適用することを意図するものである。
【0054】
“溶解度調節剤”という用語は、益剤に関して、調節剤の不在における益剤の溶解度から、ポリマー溶剤または水に関して、益剤の溶解度を変化させるであろう薬剤を意味する。調節剤は、溶剤または水への益剤の溶解度を増加または低下させることができる。しかし、非常に水溶性の益剤の場合、溶解度調節剤は、概して、益剤の水に対する溶解度を低下させる調節剤であろう薬剤であろう。益剤の溶解度調節剤の効果は、例えば、複合体の形成により、溶解度調節剤の溶剤との、または、益剤それ自体とのあるいはその両方との相互作用により生ずるかもしれない。そのためには、溶解度調節剤が益剤に“関する”時、生ずるかもしれないこのような全ての相互作用または形成を意図する。溶解度調節剤は、粘性ゲルとのその組み合わせ以前に、益剤と混合してもよく、あるいは、適宜、益剤の添加前に、粘性のゲルに加えてもよい。
【0055】
“被検者”および“患者”という用語は、本発明の組成物の投与に関し、動物またはヒトを意味する。
【0056】
あらゆる溶剤は、少なくとも分子レベルで、極わずか、水に溶解性(すなわち、水と混和性)であろうから、本明細書で使用する“不混和性”という用語は、溶剤の7重量%以下、好ましくは、5重量%以下が水に溶解性または水と混和性であることを意味する。これを開示するために、溶剤の水への溶解度の値は、25℃にて決定されると考えられる。報告されている溶解度値は、必ずしも同一条件で行われていないので、本明細書で挙げる範囲または上限としての水との重量%混和性または溶解性の溶解度の限界は、絶対的ではないかもしれない。例えば、水への溶剤溶解度についての上限が、ここで“7重量%”と挙げられるが、溶剤についてのさらなる制限がない場合、溶剤“トリアセチン”は、水溶解度7.17グラム/100ml水と報告されており、7%の限度内に含まれると考えられる。本明細書で使用される7重量%未満を有する水への溶解度限界とは、溶剤トリアセチンまたはトリアセチン以上の水への溶解度を有する溶剤を含まない。
【0057】
“生物侵食性”という用語は、in situで、徐々に分解、溶解、加水分解および/または侵食される材料をいう。ここで、概して、“生物侵食性”ポリマーは、加水分解性であり、加水分解を通じて始めてin situで生物侵食性であるポリマーである。
【0058】
“チキソトロピー(thixotropic)”という用語は、機械的力、例えば、剪断力の負荷の際に、液化するかまたは少なくとも見掛け上の粘度の低下を示すことのできるゲル組成物をいうその慣用的な意味において使用される。低下の程度は、一部、剪断力に賦した時のゲルの剪断速度の関数である。剪断力が取り除かれる時、チキソトロピーゲルの粘度は、それが剪断力に賦される以前に示す粘度とほぼ同等に回復する。したがって、チキソトロピーゲルは、シリンジから注入される時、注入プロセスの間にその粘度を一時的に低下させる剪断力に賦すことができる。注入プロセスが完了する時、剪断力は、取り除かれ、そのゲルは、その以前の状態に非常に近く回復する。
【0059】
本明細書で使用する“チキソトロピー剤”は、それが含有される組成物のチキソトロピーを増大させるものであり、剪断減粘性を増進させ、低い注入力の使用を可能とする。
【0060】
本発明のポリマー、溶剤およびその他の薬剤は、“生物学的相容性”である必要があり;すなわち、それらは、使用環境にて、刺激、炎症または壊死を生じてはならない。使用環境は、流体環境であり、皮下、筋肉内、血管内(高/低流)、心筋内、外膜、腫瘍内または大脳内部、創傷部位、密着結合空間もしくはヒトまたは動物の体腔が挙げられる。
【0061】
以下の定義は、本明細書に記載する分子構造に適用する:
本明細書で使用する場合、“式を有する”または“構造を有する”という語句は、制限することを意図するものではなく、“含む(comprising)”という用語が一般に使用されるのと同様に使用される。
【0062】
本明細書で使用する“アルキル”という用語は、必ずしもというわけではないが、典型的には、1〜約30個の炭素原子を含有する飽和された炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、オクチル、デシル等;および、シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル等をいう。概して、必ずというわけではないが、ここでのアルキル基は、1〜約12個の炭素原子を含有する。用語“低級アルキル”とは、1〜6個の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を指す。“置換されたアルキル”とは、1つ以上の置換基で置換されたアルキルをいい、“ヘテロ原子含有アルキルおよび“ヘテロアルキル”という用語は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されたアルキルをいう。特に断らない限り、“アルキル”および“低級アルキル”という用語は、直鎖、分岐鎖、環式、未置換、置換および/またはヘテロ原子含有アルキルまたは低級アルキルを含む。
【0063】
本明細書で使用する“アリール”という用語は、特に断らない限り、1個の芳香族環または互いに縮合されるか、共有結合されるか、または、共通の基、例えば、メチレンまたはエチレン部分に結合されている多数の芳香族環を含有する芳香族置換基をいう。好ましいアリール基としては、1個の芳香族環または2個の縮合されるかまたは結合された芳香族環、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノン等が挙げられ、最も好ましいアリール基は、単環式である。“置換されたアリール”とは、1個以上の置換基で置換されたアリール部分をいい、“ヘテロ原子含有アリール”および“ヘテロアリール”とは、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されたアリールをいう。特に断らない限り、“アリール”という用語は、ヘテロアリール、置換されたアリールおよび置換されたヘテロアリール基を包含する。
【0064】
“アラルキル”という用語は、アリール基で置換されたアルキル基をいい、ここで、アルキルおよびアリールは、上記定義した通りである。“ヘテロアラルキル”という用語は、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基をいう。特に断らない限り、“アラルキル”という用語は、ヘテロアラルキルおよび置換されたアラルキルならびに未置換のアラルキル基を含む。概して、本明細書での“アラルキル”という用語は、アリール置換された低級アルキル基、好ましくは、フェニル置換された低級アルキル基であり、例えば、ベンジル、フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル等が挙げられる。
【0065】
“ヘテロ原子含有ヒドロカルビル基”におけるような“ヘテロ原子含有”という用語は、1つ以上の炭素原子が炭素以外の原子、例えば、窒素、酸素、硫黄、リンまたはケイ素で置換されている分子または分子フラグメントをいう。同様に、“ヘテロ環式”という用語は、ヘテロ原子含有である環式置換基をいい、“ヘテロアリール”という用語は、ヘテロ原子含有であるアリール置換基をいう等。
【0066】
前述の定義の幾つかにて言及したように、“置換されたアルキル”、“置換されたアリール”等におけるような“置換された”とは、アルキルまたはアリール部分にて、それぞれ、炭素原子に結合された少なくとも1つの水素原子が1つ以外の非妨害置換基、例えば、ヒドロキシ、アルコキシ、チオ、アミノ、ハロ等で置換されていることを意味する。
【0067】
生物侵食性の生物学的相容性ポリマー:
本発明の方法および組成物に関して有用であるポリマーは、生物侵食性である、すなわち、これらは、患者の体の水性流体内で、徐々に、加水分解し、溶解し、物理的に侵食されるかまたは分解する。概して、ポリマーは、加水分解または物理的侵食の結果として生物侵食されるが、主たる生物侵食プロセスは、典型的には、加水分解である。
【0068】
このようなポリマーとしては、ポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリラクトン類、ポリ無水物、ポリアミン類、ポリウレタン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリジオキサノン類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリホスホエステル類、ポリオルトカーボネート類、ポリホスファゼン類、スクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸類)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸;および、これらのコポリマー類、ターポリマー類および混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
現在のところ、好ましいポリマーは、ポリラクチド類、つまり、乳酸のみを基体とするか、または、乳酸、グリコール酸および/またはカプロラクトンを基体とするコポリマーであってもよく、乳酸基体のポリマーであり、これらは、本発明に従い達成することのできる有益な結果に実質的に悪影響を及ぼさないその他の少量のコモノマー類を含んでもよい。本明細書で使用する場合、“乳酸”という用語は、異性体L-乳酸、D-乳酸、DL-乳酸およびラクチドを含み、他方、“グリコール酸”という用語は、グリコリドを含む。ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー(一般的にPLGAと称す)が最も好ましい。ポリマーは、乳酸/グリコール酸のモノマー比約100:0〜約15:85、好ましくは、約75:25〜約30:70、さらに好ましくは、約60:40〜約40:60を有するのがよく、特に有用なコポリマーは、乳酸/グリコール酸のモノマー比約50:50を有する。
【0070】
ポリ(カプロラクトン-コ-乳酸)(PCL-co-LA)ポリマーは、カプロラクトン/乳酸のコモノマー比約10:90〜約90:10;約50:50;好ましくは、約35:65〜約65:35;さらに好ましくは、約25:75〜約75:25を有する。ある種の実施態様にて、乳酸基体ポリマーは、約0%〜約90%のカプロラクトン、約0%〜約100%の乳酸および約0%〜約60%のグリコール酸のブレンドを含む。
【0071】
乳酸基体のポリマーは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定して、数平均分子量約1,000〜約120,000、好ましくは、約5,000〜約50,000、さらに好ましくは、約8,000〜約30,000を有する。従来のポリマー基体の注入可能なデポーと対照的に、本発明は、組成物の芳香族アルコールが高分子量ポリマーとさえ優れた剪断減粘性を生ずる限り、より大きな高分子量のポリマーの使用を可能とする。前述のU.S.特許No.5,242,910に示されているように、ポリマーは、U.S.特許No.4,443,340の教示に従い製造することができる。これとは別に、乳酸-基体のポリマーは、U.S.特許No.5,310,865に記載されている技術に従い、乳酸からまたは(またはさらなるコモノマーの有無で)乳酸とグリコール酸との混合物から直接製造することもできる。これら特許の全てのコンテンツは、参考とすることによって組み込む。適した乳酸-基体のポリマーは、市販入手可能である。例えば、分子量8,000、10,000、30,000および100,000を有する50:50の乳酸:グリコール酸コポリマーは、以降に記載するように、Boehringer Ingelheim(Petersburg, VA)、Medisorb Technologies International L. P.(Cincinatti,OH)およびBirmingham Polymers, Inc.(Birmingham, AL)より市販入手可能である。
【0072】
ポリマーの例としては、ポリ(D,L-ラクチド)ResomerR(ここで、および以降において、上付きRは、登録商標を表す)L104、PLA-L104、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50ResomerRRG502、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50 ResomerRRG502H、PLGA-502H、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50 ResomerRRG503、PLGA-503、ポリ(D,L-ラクチド−コ-グリコリド)50:50 ResomerRRG506、PLGA-506、ポリL-ラクチドMW2,000(ResomerRL206、L207、ResomerRL209、ResomerRL214);ポリD,Lラクチド(ResomerRR104、ResomerRR202、ResomerRR203、ResomerRR206、ResomerRR207、ResomerRR208);ポリL-ラクチド-コ-ラクチド90:10(ResomerRLR209);ポリグリコリド(ResomerRG205);ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド50:50(ResomerRRG504H、ResomerRRG504、ResomerRRG505);ポリD-L-ラクチド-コ-グリコリド75:25(ResomerR752、PLGA-755、ResomerRRG756);ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド(ResomerRRG858);ポリL-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート70:30(ResomerRLT706);ポリジオキサノン(ResomerRX210)(Boehringel Ingelheim Chemicals,Inc., Petersburg, VA)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
さらなる例としては、D,L-ラクチド/グリコリド100:0(MEDISORBRPolymer 100DL High、MEDISORBRPolymer 100DL Low);DL-ラクチド/グリコリド85/15(MEDISORBR Polymer 8515 DL High、MEDISORBR Polymer 8515 DL Low);DL-ラクチド/グリコリド75/25(MEDISORBRPolymer 7525 DL High、MEDISORBRPolymer 7525 DL Low);DL-ラクチド/グリコリド65/35(MEDISORBR Polymer 6535 DL High、MEDISORBR Polymer 6535 DL Low);DL-ラクチド/グリコリド54/46(MEDISORBRPolymer 5050 DL High、MEDISORBRPolymer 5050 DL Low);および、DL-ラクチド/グリコリド54/46(MEDISORBR Polymer 5050 DL 2A(3)、MEDISORBR Polymer 5050 DL 3A(3)、MEDISORBR Polymer 5050 DL 4A(3))(Medisorb Technologies International L.P.,Cincinati,OH);ならびに、ポリD,L-ラクチド-コ50:50;ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド65:35;ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド75:25;ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド85:15;ポリD,L-ラクチド;ポリL-ラクチド;ポリグリコリド;ポリε-カプロラクトン;ポリDL-ラクチド-コ-カプロラクトン25:75および、ポリDL-ラクチドコ-カプロラクトン75:25(Birmigham Polymers Inc., Birmingham, AL)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
生物学的相容性ポリマーは、約5〜約90重量%、好ましくは、約10〜約85重量%、好ましくは、約15〜約80重量%、好ましくは、約20〜約75重量%、好ましくは、約30〜約70重量%、典型的には、約35〜約65重量%粘性ゲルの範囲の量ゲル組成物中に存在し、前記粘性ゲルは、生物学的相容性のポリマーと芳香族アルコールとの組み合わせた量を含む。溶剤は、以下に記載する量、ポリマーに加えられ、移植可能なまたは粘性のゲルを生ずる。ここでも、芳香族アルコールは、従来達成可能な範囲よりもはるかに広範囲のポリマー/溶剤比を達成可能とする。
【0075】
溶剤およびチキソトロピー剤:
第1の実施態様にて、本発明の注入可能なデポー組成物は、生物侵食性ポリマーおよび益剤以外に、水不混和性溶剤を含有する。この実施態様にて、芳香族アルコールは、溶剤およびチキソトロピー剤として働き、生物侵食性のポリマーの溶解を促進し、また、注入の際の剪断減粘性挙動を増進する。本組成物は、1価の低級アルカノールが揮発性であり、製造期間中に益剤と反応性であり、変性させるというような問題を生ずるので、このような溶剤を含まない。好ましくは、本明細書に記載する組成物は、また、25℃にて7重量%より大の水混和性を有する溶剤を含まない。
【0076】
芳香族アルコールは、生物学的相容性である必要があり、ポリマーと粘性ゲルを形成し、水の移植片への吸収を制限する。適した芳香族アルコールは、上記したように、移植片により水の吸収を実質的に制限し、水に不混和性であることを特徴とするのがよく、すなわち、水への溶解度または混和性せいぜい7重量%を有する。好ましくは、芳香族アルコールの水溶解度は、5重量%以下、さらに好ましくは、3重量%以下、なおさらに好ましくは、1重量%以下である。最も好ましくは、芳香族アルコールの水溶解度は、0.5重量%以下である。
【0077】
水混和性は、以下のように実験的に決定してもよい:水(1〜5g)を、制御された温度、約25℃で空の透明な容器内に入れ、秤量し、候補溶剤を滴下する。溶液を渦巻かせて、相分離を観察する。相分離の観察により決定して飽和点に到達したように見える時、溶液を一晩放置し、次の日に再チェックする。相分離の観察により決定して、溶液がなお飽和である場合に、添加した溶剤のパーセント(w/w)を決定する。あるいは、さらなる溶剤を追加して、このプロセスを繰り返す。溶解度または混和性は、添加した溶剤の総重量÷溶剤/水混合物の最終重量によって決定される。溶剤混合物を使用する時、これらは、水に加える前に予め混合する。
【0078】
芳香族アルコールは、構造式(I):
Ar-(L)n-OH (I)
〔式中、Arは、置換または未置換アリールまたはヘテロアリール基であり、nは、0または1であり、Lは、結合部分である。〕
を有する。好ましくは、Arは、単環式アリールまたはヘテロアリール基であり、1つ以上の非妨害置換基、例えば、ヒドロキシル、アルコキシ、チオ、アミノ、ハロ等で置換されていてもよい。さらに好ましくは、Arは、未置換の5-または6-員アリールまたはヘテロアリール基、例えば、フェニル、シクロペンタジエニル、ピリジニル、ピリマジニル、ピラジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル等である。下付き“n”は、0または1であり、結合部分Lが存在しても存在しなくともよいことを意味する。好ましくは、nは、1であり、Lは、概して、低級アルキレン結合、例えば、メチレンまたはエチレンであり、この結合は、ヘテロ原子、例えば、O、NまたはSを含んでもよい。最も好ましくは、芳香族アルコールがベンジルアルコールとなるように、Arは、フェニルであり、nは1であり、Lは、メチレンである。
【0079】
もう1つの実施態様にて、本発明の注入可能なデポー組成物は、生物相容性生物侵食性ポリマーおよび益剤以外に、(1) 芳香族酸のエステル、芳香族ケトンおよびそれらの混合物からなる群より選択される溶剤であり、これが25℃にて水混和性7%以下を有し、ポリマーを可塑化してそれとゲル形成するのに有効な量存在する溶剤;および、(2) 上記したように、有効なチキソトロピー量の芳香族アルコールを含有する。概して、芳香族アルコール対エステルまたはケトンの重量比は、約1%〜約99%の範囲、好ましくは、約10〜約90%の範囲、好ましくは、約20%〜約80%の範囲、好ましくは、約25%〜約75%の範囲であり、約25%〜約50%の範囲であることが多い。この場合、芳香族アルコールは、主として、チキソトロピー剤として働くが、また、生物侵食性のポリマーについての補助溶剤としても働く。第1の実施態様の注入可能な組成物のように、この組成物も、また、1価の低級アルカノールを含まない。
【0080】
芳香族酸エステルまたはケトンは、生物学的相容性である必要があり、ポリマーと粘性ゲルを形成し、移植片への水の吸収を制限する必要がある。芳香族アルコールと同様、適当な芳香族酸エステル類およびケトン類は、上記したように、移植片による水の吸収を実質的に制限するであろうし、水不混和性、すなわち、水溶解度または混和性せいぜい7重量%を有することを特徴とするのがよい。好ましくは、溶剤アルコールの水溶解度は、5重量%以下、さらに好ましくは、3重量%以下、なおさらに好ましくは、1重量%以下である。最も好ましくは、溶剤の水溶解度は、0.5重量%以下である。
【0081】
芳香族酸エステルまたはケトンは、芳香族酸の低級アルキルおよびアラルキルエステルおよびアリールならびにアラルキルケトン類から選択することができる。必ずというわけではないが、概して、芳香族酸エステル類およびケトン類は、それぞれ、構造式(II)または(III):
【化1】

を有する。
【0082】
式(II)のエステルにて、R1は、1つ以上の非妨害置換基、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、アルコキシ、チオ、アミノ、ハロ等で置換されていてもよい置換または未置換アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキル、好ましくは、置換または未置換アリールまたはヘテロアリール、さらに好ましくは、単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、なおさらに好ましくは、5-または6-員アリールまたはヘテロアリール、例えば、フェニル、シクロペンタジエニル、ピリジニル、ピリマジニル、ピラジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、チオフェニル、チアゾリルまたはイソチアゾリル、最も好ましくは、5-または6-員アリールである。R2は、1つ以上の非妨害置換基、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、アルコキシ、チオ、アミノ、ハロ等で置換されていてもよいヒドロカルビルまたはヘテロ原子置換されたヒドロカルビル、典型的には、低級アルキルあるいは置換または未置換アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキル、好ましくは、低級アルキルあるいは置換または未置換アラルキルまたはヘテロアラルキル、さらに好ましくは、低級アルキルもしくは単環式または二環式アラルキルまたはヘテロアラルキル、なおさらに好ましくは、低級アルキルあるいは5--または6-員アラルキルまたはヘテロアラルキル、最も好ましくは、構造式:-O-(CO)-R1を有する1つ以上のさらなるエステル基で置換されていてもよい低級アルキルあるいは5-または6-員アリールである。最も好ましいエステルは、安息香酸およびフタル酸誘導体である。
【0083】
式(III)のケトンにて、R3およびR4は、上記特定したいずれのR1およびR2から選択してもよい。
【0084】
要求される溶解度を有する溶剤を選択することのできる技術的に認識されている安息香酸誘導体としては、1,4-シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、プロピレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールベンゾエートおよびジプロピレングリコールベンゾエートブレンド、ポリエチレングリコール(200)ジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、グリセリルトリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、クミルフェニルベンゾエート、トリメチルペンタンジオールジベンゾエートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
要求される溶解度を有する溶剤を選択することのできる技術的に認識されているフタール酸誘導体としては、アルキルベンジルフタレート、ビス-クミル-フェニルイソフタレート、ジブトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジイソヘプチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ノニルウンデシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジ-イソオクチルフタレート、ジカプリルフタレート、混合アルコールフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フタレート、直鎖ヘプチル、ノニルフタレート、直鎖ヘプチル、ノニル、ウンデシルフタレート、直鎖ノニルフタレート、直鎖ノニルウンデシルフタレート、直鎖ジノニル、ジデシルフタレート(ジイソデシルフタレート)、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ウンデシルドデシルフタレート、デシルトリデシルフタレート、ジオクチルおよびジデシルフタレートのブレンド(50/50)、ブチルベンジルフタレートおよびジシクロヘキシルフタレートが挙げられる。
【0086】
最も好ましい溶剤は、安息香酸の誘導体であり、例えば、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、n-プロピルベンゾエート、イソプロピルベンゾエート、ブチルベンゾエート、イソブチルベンゾエート、sec-ブチルベンゾエート、t-ブチルベンゾエート、イソアミルベンゾエートおよびベンジルベンゾエートが挙げられるが、ベンジルベンゾエートが特に最も好ましい。
【0087】
組成物は、また、水不混和性の溶剤以外に、このようないずれかのさらなる溶剤が低級アルカノール以外である限り、1つ以上のさらなる混和性溶剤(“成分溶剤”)を含んでもよい。主要な溶剤と相溶性かつ混和性の成分溶剤は、水とより高い混和性を有し、生ずる混合物は、移植片への水の吸収の有意な制限もなお示すかもしれない。このような混合物は、“成分溶剤混合物”と称すことができるであろう。有用な成分溶剤混合物は、主要な溶剤それ自体よりも大なる水溶解度、典型的には、0.1重量%〜例えば、50重量%まで、好ましくは、30重量%まで、最も好ましくは、10重量%までを示してもよく、本発明の移植片により示される水の吸収限度に好ましくない悪影響を有しない。
【0088】
成分溶剤混合物にて有用な成分溶剤は、主要な溶剤または溶剤混合物と混和性である溶剤であり、例えば、トリアセチン、ジアセチン、トリブチリン、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリエチルグリセリド類、トリエチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジエチルタータレート、鉱油、ポリブテン、シリコーン液、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、オクタノール、エチルラクテート、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチロラクトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、グルセロールホルマール、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、グリコフロール、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸および1-ドデシルアザシクロ-ヘプタン-2-オンおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
特に好ましい実施態様にて、溶剤は、安息香酸の低級アルキルおよびアラルキルエステルから選択され、芳香族アルコールは、存在して、チキソトロピー剤として働き、ポリマーは、数平均分子量約1,000〜約120,000、好ましくは、約5,000〜50,000、さらに好ましくは、約8,000〜30,000を有する乳酸基体のポリマー、最も好ましくは、PLGAである。現在のところ、最も好ましい溶剤は、ベンジルベンゾエートおよび安息香酸の低級アルキルエステルであり、最も好ましいチキソトロピー剤は、本明細書で前述したように、ベンジルアルコールである。
【0090】
溶剤または溶剤混合物は、ポリマーを溶解して、使用環境に溶解または分散あるいは使用環境から単離される益剤の粒子を放出前に維持することのできる粘性ゲルを形成することができる。本発明の組成物は、突発指数の低い移植片を提供することができる。水の吸収は、ポリマーを溶解または可塑化させるが、水の移植片への吸収を実質的に制限する溶剤または成分溶剤混合物の使用により制御することができる。
【0091】
溶剤または溶剤混合物は、典型的には、約95重量%〜約5重量%、好ましくは、約75重量%〜約15重量%、最も好ましくは、約65重量%〜約20重量%粘性ゲルの量存在する。ポリマーと溶剤とを混合することによって形成される粘性ゲルは、混合完了後約1〜2日でHaake Rheometerを使用して25℃および1秒当りの剪断速度で測定して、典型的には、粘度約100〜約200,000ポアーズ、好ましくは、約500〜約50,000ポアーズを示し、約1,000〜約50,000ポアーズであることが多い。ポリマーと溶剤との混合は、慣用的な低剪断装置、例えば、Rossダブルプラネタリーミキサーで、約10分〜約1時間で達成されるが、それより短い時間も長い時間も、製造される組成物の個々の物理的特性に応じて当業者であれば選択することができるであろう。注入可能な組成物として移植片を投与することが望ましいので、相殺するには、粘性のゲルである移植片を形成する時、ポリマー/溶剤/益剤組成物は、小さな針の径、例えば、16ゲージ以上、好ましくは、20ゲージ以上、さらに好ましくは、22ゲージ以上、なおさらに好ましくは、24ゲージ以上の針で力を付与するために十分に低い粘度を有すると考えられよう。必要な場合、注入のためのゲルの粘度の調節は、本明細書に記載するように、乳化剤によって達成することができる。なお、このような組成物は、局在し、必要とされる場合に、取り出すことができるように適した寸法安定性を有する必要がある。本発明の個々のゲルまたはゲル様組成物は、このような要件を満足する。
【0092】
益剤
益剤は、薬学的に許容可能な担体;および、本発明によって達成される有益な結果に実質的に悪影響を及ぼさないさらなる成分、例えば、抗酸化剤、安定剤、透過促進剤等と組み合わされてもよいいずれかの生理学的または薬理学的に活性な1つまたは複数の物質であってもよい。益剤は、ヒトまたは動物の体内に供給されることが公知であり、ポリマー溶解溶剤よりもむしろより容易に水に溶解性のいずれの薬剤であってもよい。これらの薬剤としては、薬剤(drug agent)、医薬品類、ビタミン類、栄養剤等が挙げられる。本記載に合致する薬剤のタイプのうちには、低分子量化合物、蛋白質、ペプチド、遺伝性物質、栄養剤、ビタミン類、フード補給剤、不妊剤、受精抑制剤および受精促進剤が挙げられる。
【0093】
本発明により供給することのできる薬剤としては、末梢神経、アドリナリン作働受容体、コリン作働受容剤、骨格筋、心臓血管システム、平滑筋、血液循環系、シノップ部位(synoptic sites)、神経作用関節部位、内分泌およびホルモン系、免疫系、再生系、骨格系、局所ホルモン系、食餌および排出系、ヒスタミン系および中枢神経系に作用する薬剤が挙げられる。適した薬剤は、例えば、薬、蛋白質類、酵素類、ホルモン類、ポリヌクレオチド類、核蛋白質類、多糖類、グリコ蛋白質類、リポ蛋白質類、ポリペプチド類、ステロイド類、鎮痛剤類、局所麻酔剤、抗生物質、化学療法剤、免疫抑制剤、抗炎症コルチコステロイド類を含め抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、脈管形成剤、抗凝血剤、線維芽剤、成長因子、抗体、眼薬および代謝物質、類縁体(例えば、合成および置換された類縁体)、誘導体(例えば、その他の巨大分子との攻撃共役体/融合体および当分野公知の手段によって無関係な化学的部位との共有結合共役体を含め)、フラグメント;および、精製単離された組み換え体;ならびに、これら種の化学的に合成された異類から選択することができる。
【0094】
本発明の組成物によって供給することのできる薬剤の例としては、プロカイン、プロカイン塩酸塩、テトラカイン、テトラカイン塩酸塩、コカイン、コカイン塩酸塩、クロロプロカイン、クロロプロカイン塩酸塩、プロパラカイン、プロパラカイン塩酸塩、ピペロカイン、ピペロカイン塩酸塩、ヘキシルカイン、ヘキシルカイン塩酸塩、ナエパイン、ナエパイン塩酸塩、ベンゾキシネート、ベンゾキシネート塩酸塩、シクロメチルカイン、シクロメチルカイン塩酸塩、シクロメチルカイン硫酸塩、リドカイン、リドカイン塩酸塩、ブプビカイン、ブプビカイン塩酸塩、メピビカイン、メピビカイン塩酸塩、プリオカイン、プリオカイン塩酸塩、ジブカインおよびジブカイン塩酸塩、エチドカイン、ベンゾカイン、プロポキシカイン、ジクロニン、プラモキシン、オキシブプロカイン、プロクロルペルジンエディシレート、硫酸第1鉄、アミノカプロン酸、メカミラミン塩酸塩、プロカインアミド塩酸塩、アンフェタミン硫酸塩、メタムフェタミン塩酸塩、ベンザムフェタミン塩酸塩、イソプロテレノール硫酸塩、フェンメテトラジン塩酸塩、ベタネコールクロライド、メタコリンクロライド、ピロカルピン塩酸塩、アトロピン硫酸塩、スコポラミンブロマイド、イソプロパミドヨーダイド、トリジヘキセチルクロライド、フェンフォルミン塩酸塩、メチルフェニデート塩酸塩、テオフィリンコリネート、セファレキシン塩酸塩、ジフェニドール、メクリジン塩酸塩、プロクロルペラジンマレエート、フェノキシベンズアミン、チエチルペルジンマレエート、アニシンドン、ジフェナジオンエリスリチルテトラナイトレート、ジゴキシン、イソフルロフェート、アセタゾールアミド、メタゾールアミド、ベンドロフルメチアジド、クロロプロマイド、トラズアミド、クロルマジノンアセテート、フェナグリコドール、アロプリノール、アルミニウムアスピリン、メトトレキセート、アセチルスルフイソオキサゾール、エリスロマイシン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチコステロンアセテート、コルチゾンアセテート、デキサメタゾンおよびその誘導体、例えば、ベータメタゾン;トリアムシノロン、メチルテストステロン、17-S-エストラジオール、エチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール3-メチルエーテル、プレドニソロン、17α-ヒドロキシプロゲステロンアセテート、19-nor-プロゲステロン、ノルゲストレル、ノレチンドロン、ノレチステロン、ノレチエデロン、プロゲステロン、ノルゲステロン、ノルエチノドレル、アスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、スリンダック、インドプロフェン、ニトログリセリン、イソソルバイドジナイトレート、プロプラノール、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、シメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドーパ、クロルプロマジン、メチルドーパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、テオフィリン、カルシウムグルコナート、ケトプロフェン、イブプロフェン、セファレキシン、エリスロマイシン、ハロペリドール、ゾメピラック、乳酸第1鉄、ビンカミン、ジアゼパム、フェノキシベンザミン、ジルチアゼム、ミルリノン、マンドール、クアンベンツ、ヒドロクロロチアジド、ラニチジン、フルルビプロフェン、フェヌフェン、フルプロフェン、トルメチン、アルクロフェナック、メフェナミック、フルフェナミック、ジフイナール、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、リドフラジン、チアパミル、ガロパミル、アムロジピン、ミオフラジン、リシノールプリル、エナラプリル、エナラプリレート、カプトプリル、ラミプリル、ファモチジン、ニザチジン、スクラルフェート、エチンチジン、テトラトロール、ミノキシジル、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、アミトリプチリンおよびイミプラミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらなる例は、蛋白質およびペプチドであり、これらとしては、骨形成蛋白質、インスリン、コルヒチン、グルカゴン、甲状腺刺激ホルモン、上皮小体および脳下垂体ホルモン、カルシトニン、レニン、プロラクチン、コルチコトロフィン、甲状腺刺激ホルモン、小脳刺激ホルモン、毛膜性腺刺激ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン、ウシ成長ホルモン、ブタ成長ホルモン、オキシトシン、バソプレッシン、GRF、ソマトスタチン、リプレッシン、パンクレオザイミン、黄体ホルモン、LHRH、LHRHアゴニストおよびアンタゴニスト、ロイプロライド(leuprolide)、インターフェロン、例えば、インターフェロンアルファー-2a、インターフェロンアルファー2bおよびコンセンサスインターフェロン;インターロイキン、成長因子、例えば、上皮成長因子(EGF)、血小板誘導成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、形質転換成長因子(TGF-α)、形質転換成長因子-β(TGF-β)、エリスロポイエチン(EPO)、インスリン様成長因子-I(IGI-I)、インスリン様成長因子(IGF-II)、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-6、インターロイキン-8、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、腫瘍壊死因子-β(TNF-β)、インターフェロン-α(INF-α)、インターフェロン-β(INF-β)、インターフェロン-γ(INF-γ)、インターフェロン-ω(INF-ω)、コロニー刺激因子(CGF)、血管細胞成長因子(VEGF)、トロンボポエチン(TPO)、卵巣細胞誘導因子(SDF)、胎盤成長因子(PIGF)、肝細胞成長因子(HGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、グリア誘導ノイロトロピン因子(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、毛様体神経親和性因子(CNTF)、骨形成蛋白質(BMP)、凝血因子、ヒト膵臓ホルモン放出因子;および、これら化合物の類縁体および誘導体;ならびに、これら化合物の薬学的に許容可能な塩類;または、それらの類縁体もしくは誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
本発明の組成物によって供給することのできる薬剤のさらなる例としては、ビンカアルカロイド類(すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビン)、パクリタクセル、エピジポドフィロトキシン(すなわち、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイソン、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシンおよびイダルビシン)、アントラサイクリン類、ミトキサントロン、ブレオマイシン類、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびミトマイシンのような天然物を含め、抗増殖剤/抗有糸分裂剤;酵素(全身的にL-アスパラギンを代謝し、それら固有のアスパラギンを合成することのできない細胞を剥奪するL-アスパラギナーゼ);抗血小板剤、例えば、G(GP)IIbIIIa阻害剤およびビトロネクチン受容体アンタゴニスト;抗増殖/抗有糸アルキル化剤、例えば、チッソマスタード類(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類縁体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン類およびメチルメラミン類(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート-ブサルファン、ニトロソ尿素、(カルムスティチン(BCNU)および類縁体、ストレプトゾシン)、トラゼン類-ダカルバジニン(DTIC);抗増殖/抗有糸分裂抗代謝物質、例えば、ホール酸(folic acid)類縁体(メソトレキセート)、ピリミジン類縁体(フルオロウラシル、フロキシウリジンおよびシタラビン)、プリン類縁体および関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン));白金配位子錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトーテン、アミノグルテチミド、ホルモン類(すなわち、エストロゲン);抗凝血剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩類;および、トロンビンのその他の阻害剤);線維芽溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性剤、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドーゲル、アブシキマブ;抗移動剤、抗分泌剤(ブレベルディン);抗炎症剤、例えば、アドレノコルチカルステロイド類(コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニソン、プレドニソロン、6α-メチルプレドニソロン、トリアムシノロン、ベータメタソンおよびデキサメタソン)、非ステロイド剤(サリチル酸誘導体、すなわち、アスピリン;パラ-アミノフェノール誘導体、すなわち、アセトミノフェン);インドールおよびインデン酢酸類(インドメタシン、スリンダックおよびエトダラック)、ヘテロアリール酢酸類(トルメチン、ジクトフェナックおよびケトロラック)、アリールプロピオン酸(イブプロフェンおよび誘導体)、アントラニル酸(メフェナク酸およびメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾンおよびオキシフェンタトラゾン)、ナブメトン、金化合物(アウラノフィン、アウロチオグルコース、金ナトリウムチオマレエート);免疫抑制剤:(シクロスポリン、タクロリマス(FK-506)、シロリマス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノレートモフェチル);脈間形成剤、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽成長因子(FGF);アンギオテンシン受容体ブロッカー、二酸化窒素供与体、アンチセンスオリギオヌクレオチドおよびこれらの組み合わせ;細胞サイクル阻害剤、mTOR阻害剤;および、成長因子シグナルトランスダクションキナーゼ阻害剤、これら化合物の類縁体および誘導体;および、これら化合物の薬学的に許容可能な塩類;または、これらの類縁体または誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
ある種の好ましい実施態様にて、益剤としては、老化成長因子;増殖成長因子;刺激成長因子;形質転換ペプチド成長因子、例えば、遺伝子;前駆体;形質転換後の変種;代謝物;結合蛋白質;受容体;以下の成長因子属の受容体アゴニストおよびアンタゴニスト:表皮成長因子(EGFs)、血小板誘導成長因子(PDGFs)、インスリン様成長因子(IGFs)、線維芽成長因子(FGFs)、形質転換成長因子(TGFs)、インターロイキン(ILs)、コロニー刺激因子(CSFs、MCFs、GCSFs、GMCSFs)、インターフェロン(IFNs)、内皮成長因子(VEGF、EGFs)、エリスロ蛋白質(EPOs)、血管形成蛋白質(ANGs)、胎盤誘導成長因子(PIGFs)および低酸素誘発転写調節剤(HIFs)が挙げられる。
【0097】
本発明は、また、全身的な副作用を回避または最小とするためにこのような薬剤の局所施用のために化学療法剤とともに施用することを見出した。化学療法剤を含有する本発明のゲルは、化学療法剤を経時的に持続供給するために腫瘍に直接注入してもよい。場合によっては、特に腫瘍の切除後に、ゲルは、生ずる空孔に移植してもよく、または、塗膜として残りの組織に施用してもよい。ゲルが手術後に移植される場合、小径の針を通過させる必要がないので、より高い粘度を有するゲルを使用することが可能である。本発明の実施に従い供給することのできる典型的な化学療法剤としては、例えば、カルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、BCNU、ビンクリスチン、カンプトテシン、エトプサイド、サイトカイン、リボザイム、インターフェロン、オリゴヌクレオチド;および、腫瘍遺伝子の翻訳または転写を阻害するオリゴヌクレオチド鎖、前述の官能基誘導体および概して公知の化学療法剤、例えば、U.S.特許5,651,986に記載されている化学療法剤が挙げられる。本出願は、水溶性の化学療法剤、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチンならびにパクリタキセルの水溶性誘導体の持続的な供給にて特に有用性を有する。突発指数を最小とする本発明のこれら特性は、あらゆる種類の水溶性益剤の投与にて特に有益であり、これら化合物は、非常に有用であり、有効であるが、副作用を有するかもしれない。
【0098】
上記しなかったほどに、前述のU.S.特許No.5,242,910に記載されている益剤もまた使用することができる。本発明の1つの特別な有益性は、物質、例えば、蛋白質の例として、酵素リソチームおよびcDNA;および、ウイルスおよび非ウイルスのベクターに組み込まれたDNAが挙げられるが、これらは、微細球に微細封入または加工することが難しく、高温に暴露し、その他の加工技術に存在することの多い溶剤を変性することによって生ずる分解レベルを伴わずに本発明の組成物に組み込むことができることである。
【0099】
益剤は、好ましくは、典型的には、平均粒子サイズ約0.1〜約250ミクロン、好ましくは、約1〜約200ミクロン、多くは、30〜125ミクロンを有する粒子の形でポリマーと溶剤とから形成される粘性ゲルに組み込まれる。例えば、平均粒子サイズ約5ミクロンを有する粒子は、50%シュクロースおよび50%ニワトリのリソチーム(乾燥重量基準);および、10〜20%のhGHおよび15〜30mMの酢酸亜鉛の混合物を含有する水性混合物を噴霧乾燥または凍結乾燥することによって製造されている。このような粒子は、図面に示したある種の例で使用されている。慣用的な凍結乾燥法もまた適当な凍結および乾燥サイクルを使用してサイズの変化する益剤粒子を形成させるために使用することができる。
【0100】
ポリマーおよび溶剤から形成される粘性ゲル中の益剤の粒子の懸濁液または分散液を形成するためには、いずれの慣用的な低剪断デバイスも使用することができ、例えば、周囲条件でRossダブルプラネタリーミキサーを使用することができる。このように、益剤の有効な分布は、実質的に、益剤を分解することなく達成することができる。
【0101】
益剤は、典型的には、組成物中に、ポリマー、溶剤および益剤の合計重量の約0.1%〜約50重量%、好ましくは、約1%〜約40重量%、さらに好ましくは、約2%〜約30重量%、多くは、2〜20重量%の量溶解または分散される。組成物中に存在する益剤の量に応じて、種々の放出特性および突発指数を達成することができる。さらに詳しくは、所定のポリマーおよび溶剤について、これら成分の量および益剤の量を調節することによって、組成物から益剤の拡散よりもポリマーの分解により依存する放出特性を達成することができるし、その逆もできる。この点で、より低い益剤負荷速度で、概して、放出速度が経時的に増大するポリマーの分解を反映する放出特性を達成することができる。より高い負荷速度では、概して、放出速度が経時的に減少する益剤の拡散によって生ずる放出特性を達成することができる。中間の負荷速度では、所望される場合、実質的に一定の放出速度が達成されうるように、合わさった放出特性を達成することができる。突発を最小とするために、ゲル組成物、すなわち、ポリマー、溶剤および益剤の全体の30重量%以下のオーダーの益剤の負荷が好ましく、負荷20%以下がさらに好ましい。
【0102】
益剤の放出速度および負荷は、意図する持続供給期間にわたって益剤の治療学的に有効な供給を生ずるように調節されるであろう。好ましくは、益剤は、益剤が分取される薬溜めを生ずるように、益剤の飽和水濃度より高い濃度でポリマーゲル中に存在するであろう。益剤の放出速度は、個々の状況、例えば、投与される益剤に依存し、約0.1マイクログラム/日〜約30ミリグラム/日のオーダー、好ましくは、約1マイクログラム/日〜約20ミリグラム/日、さらに好ましくは、約10マイクログラム/日〜約10ミリグラム/日のオーダーの放出速度、約24時間〜約180日、好ましくは、24時間〜約120日、さらに好ましくは、24時間〜約90日、多くは、3日〜約90日の期間を達成することができる。さらに、益剤の投与は、注入されるデポーゲルの量を調節することによって調節することができる。供給が短時間内で行われるほど、より多量供給することができる。概して、突発指数が許容される場合、より高い放出速度が可能である。ゲル組成物が手術により移植されるか、または、“後に残して”デポーとして使用される例では、病気の状態またはもう1つの状態を治療するための手術が同時に実施される時、移植片が注入される場合に通常投与されるであろうよりも高い投与量を与えることが可能である。さらに、益剤の投与量は、移植されたゲルまたは注入された注入可能なゲルの体積を調節することによって制御することができる。好ましくは、システムは、被検者に移植後最初の24時間内に粘性ゲル中に存在する益剤の40重量%以下を放出する。さらに好ましくは、益剤の30重量%以下は、移植後最初の24時間内に放出されるであろうし、移植された組成物は、突発指数12以下、好ましくは、8以下を有する。
【0103】
任意のさらなる成分
その他の成分は、それらが所望され、組成物に有用な特性を付与する限り、ゲル組成物中に存在してもよく、例えば、ポリエチレングリコール、吸湿剤、安定剤(例えば、tween20、tween80等の界面活性剤;糖、例えば、シュクロース、トレホロース等、塩類、抗酸化剤);気孔形成剤;増量剤(例えば、ソルビトール、マンニトール、グリシン等);キレート剤(例えば、2価金属イオン類、具体的には、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、銅等);緩衝剤(例えば、ホスフェート、アセタン、スクシネート、ヒスチジン、TRIS等)およびその他が挙げられる。組成物が水性環境で溶解性または不安定性であるペプチドまたは蛋白質を含む時、例えば、安定剤であるのがよい溶解度調節剤を組成物中に含むことが非常に望ましい。種々の調節剤は、U.S.特許Nos.5,654,010および5,656,297に記載されており、その開示は、本明細書で参考とすることによって組み込む。hGHの場合、例えば、2価金属、好ましくは、亜鉛の塩量を含むことが好ましい。このような調節剤および安定剤の例は、益剤と錯形成または会合してもよく、安定化または調節放出効果を生じ、例えば、金属カチオン、好ましくは、2価であり、組成物中に、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、その他の酸中和剤等として存在するのがよい。使用されるこのような薬剤の量は、いずれの場合にも、形成される錯体の性質;または、益剤と薬剤との間の会合の性質に依存するであろう。溶解度調節剤または安定剤対益剤のモル比約100:1〜1:1、好ましくは、10:1〜1:1を、典型的には使用することができる。
【0104】
気孔形成剤としては、体液と接触した時、溶解、分散または分解してポリマーマトリックスに気孔または溝を生ずる生物学的相容性の材料が挙げられる。典型的には、水溶性である有機および非有機材料、例えば、糖(例えば、シュクロース、デキストロース)、水溶性塩類(例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウムおよび炭酸ナトリウム)、水溶性の溶剤、例えば、N-メチル-2-ピロリドンおよびポリエチレングリコール;および、水溶性のポリマー類(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピル-セルロース等)が、気孔形成剤として使用するのに便利である。このような材料は、ポリマーの重量の約0.1%〜約100%の可変量存在してもよいが、典型的には、ポリマーの重量の50%未満、さらに典型的には、ポリマーの重量の10〜20%未満であるのがよいであろう。
【0105】
有用性および投与
移植片の投与手段は、注入に限定されるものではないが、その供給モードが好ましいことが多い。移植片が後に残る生成物として投与される場合、手術の完了後存在する体腔に適合するように形成されるか、または、滞留組織または骨上にゲルをブラシするかパレットすることによって流動性ゲルとして施用するのがよい。このような施用は、典型的には、注入可能な組成物で存在する濃度より高い益剤の負荷を許容することができる。
【0106】
益剤を含まない本発明の組成物は、傷の治癒、骨修復およびその他の構造的な支持体として有用である。
【0107】
本発明の種々の態様のさらなる理解は、以下の実施例に従う図面に記載の結果により達成されるであろう。
【実施例】
【0108】
実施例 1
組成物の注入可能なデポーに使用されるゲルビヒクルは、以下のように調製した。ガラス容器をMettler PJ3000上でトップローダー平衡で風袋を測定した。50:50ResomerRRG502(PLGA RG502)として入手可能なポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)をガラス容器に秤量した。PLGAを含有するガラス容器の風袋を秤量し、対応する溶剤を加えた。種々のポリマー/溶剤組み合わせに対してパーセンテージとして表される量を以降の表1に記載する。ポリマー/溶剤混合物をステンレススチールスクエア-チップスパチュラで手動で攪拌すると、白色ポリマー粒子を含有する粘着性の琥珀色ペースト様物質を生成した。ポリマー/溶剤混合物を入れた容器をシールし、39℃に平衡させた温度制御インキュベータに入れた。ポリマー/溶剤混合物は、それが清澄な琥珀色の均質なゲルの概観を有する時、インキュベータから取り出した。インキュベーションの時間間隔は、1〜4日の範囲で、溶剤およびポリマータイプならびに溶剤とポリマーとの比に依存した。その後、混合物を(65℃)のオーブン内に30分間置いた。PLGA-504は、オーブンから取出す際に混合物に溶解していた。
【0109】
さらなるデポーゲルビヒクルは、以下の溶剤または混合物で調製した:ベンジルベンゾエート(“BB”)、ベンジルアルコール(“BA”)、プロピレングリコール(“PG”)ならびに以下のポリマー類。ポリ(D,L-ラクチド)ResomerRL104、PLA-L104、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50 ResomerRRG502、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50 ResomerRRG502H、PLGA-502H、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50 ResomerRRG503、PLGA-503、ポリL-ラクチドMW2,000(ResomerRL206、ResomerRL207、ResomerRL209、ResomerRL214);ポリD,L-ラクチド(ResomerRR104、ResomerRR202、ResomerRR203、ResomerRR206、ResomerRR207、ResomerRR208);ポリL-ラクチド-コ-D,L-ラクチド90:10 (ResomerRLR209);ポリDL-ラクチド-コ-グリコリド75:25(ResomerRRG752、ResomerRRG755、ResomerRRG756);ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド85:15(ResomerRRG858);ポリL-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート70:30(ResomerRLT706);ポリジオキサノン(ResomerRX2109)(Boehringer Ingelheim Chemicals, Inc.,Peterburg,VA);D,L-ラクチド/グリコリド100:0(MEDISORBRPolymer 100 DL High,MEDISORBR Polymer 100 DL Low);DL-ラクチド/グリコリド85/15(MEDISORBR Polymer 8515 DL High、MEDISORBR Polymer 8515 DL Low);DL-ラクチド/グリコリド75/25(MEDISORBR Polymer 7525 DL High、MEDISORBR Polymer 7525 DL Low);DL-ラクチド/グリコリド65/35(MEDISORBR Polymer 6535 DL High、MEDISORBR Polymer 6535 DL Low);DL-ラクチド/グリコリド54/46(MEDISORBR Polymer 5050 DL 2A(3)、MEDISORBR Polymer 5050 DL 3A(3);MEDISORBR Polymer 5050 DL 4A(3));(Medisorb Technologies International L.P.,Cincinati, OH)およびポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド50:50;ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド65:35;ポリD,Lラクチド-コ-グリコリド75:25;ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド85:15;ポリDL-ラクチド;ポリL-ラクチド;ポリグリコリド;ポリ-ε-カプロラクトン;ポリDL-ラクチド-コ-カプロラクトン25:75;および、ポリDL-ラクチド-コ-カプロラクトン75:25(Birmingham Pollymers,Inc.,Birmingham, AL)。代表的なゲルビヒクルは、以下の表1に記載する。
【表1】

【0110】
実施例 2
レオロジー挙動を種々の溶剤と配合したデポービヒクルについて試験した。50重量%のポリマー(PLGA RG502)と50重量%の溶剤(ベンジルアルコール)とを含むビヒクルを実施例1に概説した方法に従い調製した。比較目的のために、ベンジルアルコールを含む溶剤(例えば、配合物5)またはエタノールと組み合わせたベンジルベンゾエートを含む溶剤(例えば、配合物7)もまた調製した。表2は、試験で使用した配合物を列挙する。
【表2】

【0111】
配合物5,6および7を種々の剪断速度下で粘度について試験した。それぞれ、ベンジルベンゾエートを使用する配合物(例えば、配合物5)およびチキソトロピー剤としてのエタノールとともにベンジルベンゾエートを使用する配合物(例えば、配合物7)と対照的に、ベンジルアルコールを溶剤として使用した時(例えば、配合物6)、図1に示すように、有意な剪断減粘性挙動が観測された。
【0112】
実施例 3
デポービヒクルを分取するために必要とされる注入力は、実施例2で特定した3つの配合物について評価した。配合物は、室温で、24ゲージの注射針を通して1ml/分で注射した。図2に示すように、それぞれ、ベンジルベンゾエートを使用する配合物(例えば、配合物5)およびチキソトロピー剤としてのエタノールとともにベンジルベンゾエートを使用する配合物(例えば、配合物7)と対照的に、ベンジルアルコールを溶剤として使用する時(例えば、配合物6)、有意な注入力の低下が観測された。注目に値するのは、剪断減粘性挙動により、溶剤としてベンジルアルコールを使用する配合物(例えば、配合物6)およびチキソトロピー剤としてエタノールを含むベンジルベンゾエートを使用する配合物(例えば、配合物7)は、有意な注入力の低下を示し、他方、より低い剪断速度でベンジルベンゾエートを使用する配合物(例えば、配合物5)以上の粘度を維持し;かくして、動物に注入後にデポーを変性することなく維持した。
【0113】
実施例 4
デポービヒクルを分取するために要求される注入力を一連のビヒクルについて評価した。種々の重量パーセントでPLGA RG502を含有する配合物を各々以下のように溶剤と合わせた:例えば、溶剤45重量%、55重量%で使用する場合、PLGA 502に、100%ベンジルベンゾエート;75重量%ベンジルベンゾエート、25重量%ベンジルアルコール;および、100%ベンジルアルコールを、配合物の総重量が100%となるように、溶剤量加えた。ついで、配合物を1ml/分で24-ゲージの注射針に配合物を通すのに必要な注入力について室温で試験した。図3にみられるように、ベンジルアルコールは、デポービヒクル配合物に柔軟性を与え、それによって、はるかに高いPLGA分子量を有するデポービヒクルの配合を可能としつつ、同様のベンゾイルベンゾエート含有配合物と比較して理にかなって低い注入力を維持する。さらに、配合物中のPLGA-502のいずれの所定のパーセンテージについても、注入力は、図4に示すように、ベンジルアルコールのパーセンテージの増加につれて減少する。
【0114】
実施例 5
hGH粒子調製
ヒト成長ホルモン(hGH)粒子(酢酸亜鉛を含有してもよい)を以下のように調製した:Concentration/Dialysis Selectorジアフィルターリング装置を使用し、hGH溶液(5mg/ml)の水溶液(BresaGen Corporation, Adelaide, Australia)を10mg/mLまで濃縮した。ジアフィルターリングhGH溶液を5倍体積のトリスまたはホスフェート緩衝溶液(pH7.6)で洗浄した。ついで、慣用的な技術を使用し、噴霧乾燥または凍結乾燥によりhGHの粒子を形成した。hGH(5mg/mL)(およびZn錯体粒子を製造する時、酢酸亜鉛の任意の種々のレベル(0〜30mM))を含有するホスフェート緩衝溶液を、以下のパラメータに設定してYamato Mini Spray dryerを使用して噴霧乾燥した:
【表3】

【0115】
以下の凍結および乾燥サイクリルに従いDurastop μP Lyophilizerを使用し、hGH(5mg/mL)を含有するトリス緩衝溶液(5または50mM:pH7.6)から凍結乾燥させた粒子を調製した:
【表4】

【0116】
実施例 6
HGH-ステアリン酸粒子調製
以下のようにして、ヒト成長ホルモン(hGH)粒子を調製した:凍結乾燥させたhGH(3.22グラム、Pharmacia-Upjohn, Stockholm, Sweden)およびステアリン酸(3.22グラム、95%純度、Sigma-Aldrich Corporation, St. Lois,MO)をブレンドし、粉砕した。10,000ポンドの力で5分間、粉砕した材料を13mm丸形ダイで圧縮した。圧縮した錠剤を粉砕し、70メッシュスクリーンで篩にかけ、続いて、400メッシュスクリーンで篩にかけ、サイズ範囲38〜212ミクロンを有する粒子を得た。
【0117】
実施例 7
ブピバカイン-ステアリン酸粒子調製
以下のようにして、ブピバカイン粒子を調製した:ブピバカイン塩酸塩(100グラム、Sigma-Aldrich Corporation, St. Louis, MO)を63-125ミクロンの篩に通した。ブピバカイン粒子およびステアリン酸(100グラム、95%純度、Sigma-Aldrich Corporation, St. Louis, MO)をブレンドし、粉砕した。5,000ポンドの力で5分間、粉砕した材料を13mm丸形ダイで圧縮した。圧縮した錠剤を粉砕し、120メッシュスクリーン、続いて、230メッシュスクリーンの篩にかけ、サイズ範囲63〜125ミクロンを有する粒子を得た。
【0118】
実施例 8
薬剤負荷
上記のようにして調製した益剤/ステアリン酸を含む圧縮した粒子をゲルビヒクルに10〜20重量%の量加え、乾燥粉末が完全に湿潤するまで手動でブレンドした。ついで、スクエアーチップ金属スパチュラを備えたCaframo機械的攪拌機を使用して慣用的に混合することにより明るい乳黄色の粒子/ゲル混合物を完全にブレンドした。生ずる配合物を以下の表2に示す。最終的に均質なゲル配合物を貯蔵または分取するために3、10または30ccの使い捨てシリンジに移した。
【表5】

【0119】
典型的な数の移植可能なゲルを前述の方法に従い調製し、時間の関数として益剤のインビトロ放出について試験し、また、時間の関数として益剤の血清により測定される益剤の放出を測定するためにラットにてインビボ研究した。
【0120】
実施例 9
hGHインビボ研究
本発明の移植システムによるhGHの全身投与の際のhGHの血清レベルを測定するためにラットにてインビボ研究を行ない、その実験記録を以下に公表する。デポーゲルhGH配合物を特注の0.5cc使い捨てシリンジに負荷した。使い捨ての16ゲージ“注射針をシリンジに取り付け、循環浴を使用して37℃に加熱した。デポーゲルhGH配合物を免疫抑制したラットに注射し、注射後、特定の時間間隔で、血液を収集した。血清試料は、全て、分析前に4℃で貯蔵した。放射免疫検定法(RIA)を使用し、変性しなかったhGHについて試料を分析した。研究の終わりに、ラットは、肉眼臨床観測のために殺し、変性のないことを観測するためにデポーを取出した。
【0121】
図5&6は、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物からラットにて得られるヒト成長ホルモン(“hGH”)の典型的なインビボ放出特性を示す。ベンジルアルコールを含むデポー配合物(例えば、配合物10および11)のインビボ放出特性は、(ベンジルアルコールを含まない、例えば、配合物8および9)対照配合物に匹敵する。かくして、本発明のデポー配合物は、益剤のインビボ放出特性に関わりなく有意に注入力を低下させる。
【0122】
研究の終わりに(すなわち、28日目に)、デポーをラットから取出した。概して、動物に各々注射されたデポーに相当する一片の無変性の丸形デポーが回収された。
【0123】
実施例 10
ブピバカインインビボ研究
本発明の移植システムによるブピバカインの全身投与の際のブピバカインの血漿レベルを測定するためにラット(4匹/群)にてインビボ研究を行ない、その実験記録を以下に公表する。デポーゲルブピバカイン配合物を特注の0.5cc使い捨てシリンジに負荷した。使い捨ての18ゲージ注射針をシリンジに取り付け、循環浴を使用して37℃に加熱した。デポーゲルブピバカイン配合物をラットに注射し、血液を特定の時間間隔(1時間、4時間、および、1日、2日、5日、7日、9日および14日)で取出し、LC/MS使用してブピバカインについて分析した。研究の終わり(すなわち、14日目)に、ラットは、肉眼臨床観測のために殺し、無変性を観測するためにデポーを取出した。
【0124】
図7、8&9は、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物からラットにて得られるブピバカインの典型的なインビボ放出特性を示す。ベンジルアルコールを含むデポー配合物(例えば、配合物13〜16)のインビボ放出特性は、(ベンジルアルコールを含まない、例えば、配合物12)対照配合物に匹敵する。かくして、本発明のデポー配合物は、益剤のインビボ放出特性に関わりなく有意に注入力を低下させる。
【0125】
研究の終わりに(すなわち、14日目に)、デポーをラットから取出した。概して、動物に各々注射されたデポーに相当する一片の無変性の丸形デポーが回収された。
【0126】
実施例 11
デポー配合物中のhGHの安定性
デポーゲルhGH配合物を5℃で貯蔵した。予め決められた時点で、デポーゲル配合物(0.3ml)を冷却した有機溶剤(塩化メチレン/アセトンの50/50混合物、5℃、3x3ml)で処理して、デポー配合物からポリマーと溶剤とを抽出した。生ずる残渣hGHをPBS緩衝液(2ml,pH7.4)に溶解させ、hGHの純度を限外クロマトグラフィー(SEC)により分析した。図10は、本発明の配合物を含め、種々のデポーゲルhGH配合物中でのhGHの安定性を5℃で時間の関数として示す。ベンジルアルコールを含むデポー配合物中のhGHの安定性は、ベンジルアルコールを含まない対照配合物に匹敵する。かくして、本発明のデポー配合物は、益剤、例えば、hGHの安定性に関わりなく注入力を有意に低下させる。
【0127】
実施例 12
注入力に影響を及ぼすパラメータ
【数1】

【0128】
以下のパラメータが、予め設定した温度で所定の配合物についての注入力に影響を及ぼす:シリンジの半径(r);注射針の内径(R);注射針の長さ(L);注入速度(Q)。これら4つのパラメータの注入力に及ぼす効果は、1つのコンファメーションの中心近傍で部分要因デザインアプローチ(fractional factorial design approach)(8トライアル)を使用して測定した。このデザインの詳細は、表3(トライアル1〜9)にまとめて示す。注入力は、以下の式(n=3)を使用して試験した:PLGA RG 502/BB/BA(40/45/15重量%)を含有するビヒクルにリソチーム粒子(10重量%30μm)を負荷させた。注入力と試験パラメータとの間の関係は、以下のようなJMPソフトウエアー(これは、Power Law予測と非常に類似している)を使用して得られた:
【表6】

【0129】
実施例 13
薬剤粒子サイズおよびデポー配合物の注入力に及ぼす負荷効果
粒子サイズおよび、益剤、すなわち、薬剤の負荷量は、デポー配合物の注入力に強く影響を及ぼすさらなる因子である。薬剤粒子サイズおよびデポー配合物の注入力に及ぼす負荷効果を測定するためにデポーゲルリソチーム配合物を使用した。リソチームの種々の量(5〜30%負荷)および粒子サイズ(5〜50μm)を含有する本発明の種々のデポーゲルリソチーム配合物を、27ゲージ2“注射針を使用して、注入力について試験した。注入速度は、50μl/分に設定した。試験した配合物を表4にまとめて示す。図11に示すように、デポー配合物の注入力は、薬剤粒子負荷の増大につれて増大する。10重量%の粒子負荷では、ゲル配合物の組成に関わりなく、対応するゲル配合物と比較して、注入力は、約50%増大する。注入力は、ゲル配合物中のベンジルアルコールの量に比例するようであり、さらに、ベンジルアルコールが本発明のデポーゲル配合物の注入力を有意に低下させることを示す。
【表7】

【0130】
実施例 14
PDGF前配合物の調製
種々の血小板誘導成長因子(PDGF)前配合物を以下のように調製した:
透析
透析のために、以下の緩衝液を調製した:
(A) ヒスチジン緩衝液(10mM,pH6,2L)を以下のように調製した。L-ヒスチジン(3.10g)をメスフラスコ(2L)で秤量した。Milli-Q水(1800ml)をフラスコに加え、固体が溶解するまで混合物を攪拌した。HCl(0.1N,8ml)を加え、そのpHをチェックし、6に調整した。溶液をmilli-Q水で希釈して2Lの体積とした。
【0131】
(B) スクシネート緩衝液(10mM,pH6,2L)を以下のように調製した。コハク酸(5.91g)をメスフラスコ(250ml)で秤量し、millli-Q水(250ml)を加えて、コハク酸溶液(0.2M)を得た。NaOH溶液(4g,50%w/w)をメスフラスコ(250ml)で測定し、milli-Q水で希釈してNaOH溶液(0.2M)を得た。コハク酸溶液(0.2M,100ml)をメスフラスコ(2L)内でNaOH溶液(0.2M,165ml)およびmilli-Q水(1600ml)とを混合し、そのpHをチェックし、6に調整した。溶液をmilli-Q水で希釈して2Lの体積とした。
【0132】
PDGF-BBのバルク溶液(bulk solution)、すなわち、PDGFの酢酸塩緩衝水溶液を室温まで融解させた。400から250nmまで1cmパス長さキュベット(path length cuvette)を使用して、PDGF-BB溶液の種々のアリコートをUV吸光度測定のために適当に希釈した。吸光度を280nmで記録し、log(吸光度)対log(波長)補外を使用して400から330nmの範囲で光散乱について補正した。消光係数0.574ml/mgxcmを使用して、PDGF-BBの濃度を測定した。(溜め(100ml)とPellicon XL PLCCC 5000 MWCO再生セルロース膜とを有する)Millipore Tangential Flow Filtration Systemを使用して、PDGF-BB溶液を濃縮し、その蛋白質を2つの部分に分割した。製造者の指針に従い、蛋白質の1つの半分をヒスチジン緩衝液(10mM,pH6)に対してジアフィルタリング(diafiltered)し;蛋白質の他半分をスクシネート緩衝液(10mL,pH6)に対してジアフィルタリングした。ジアフィルタレーション(diafiltration)後、各部分からのアリコートを上記したような吸光度測定のために適当に希釈し、逆相および限外高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。Millipore TFFの指針に従い、TFFシステムから蛋白質溶液を取出した。
【0133】
PDGF-BB前配合物
PDGF-BBの種々の前配合物は、種々の賦形剤、例えば、シュクロース、tween 20、酢酸亜鉛またはこれらの組み合わせを上記ジアフィルタリングしたPDGF-BB溶液に加え、その溶液をヒスチジンまたはスクシネートのいずれかで緩衝させて、(表5および6に表記するように)溶液中の最終PDGF-BB濃度ほぼ5mg/mlを得た。これらの溶液を以下に記載する条件下で凍結乾燥して、乾燥PDGF-BB配合物を得た。
【0134】
凍結乾燥
凍結乾燥凍結サイクリルは、4℃の保存温度の平衡で2.5℃/分で開始し、この温度に30分間保持した。ついで、温度を−50℃まで2.5℃/分で下げ、3時間保持した。第1の乾燥サイクルの間、減圧を印加し、保存温度を以下のように上昇させた:(i) 0.14℃/分で24時間−20℃に;(ii) 0.14℃/分で24時間−15℃に;および、(iii) 0.14℃/分で12時間0℃に。第2の乾燥サイクルについては、保存温度を以下のように上昇させた:(i) 0.14℃/分で12時間20℃に;および、(ii) 0.14℃/分で4時間30℃に。乾燥後、保存温度を0℃または4℃に下げ、機器から取出すまでその温度に保持した。保存ストッパーを使用して、ガラス瓶に封をし、試験を止め、ガラス瓶を取出した。
【0135】
実施例 15
PDGF前配合物のゲルビヒクル内での初期安定性
表5および6に列挙するように凍結乾燥させた全ての蛋白質配合物を蛋白質配合物約10重量%の負荷でPLGA RG502/ベンジルベンゾエート(BB)/ベンジルアルコール(BA)40/45/15の組成でゲルビヒクルに混合した。5℃で1日間貯蔵した後、上記実施例15に記載したように、塩化メチレンとアセトン(50/50の比)との有機溶剤混合物でその混合物を抽出した。PDGF-BBの純度を逆相HPLC(rpHPLC)および限外クロマトグラフィー(SEC)により分析した。ゲルビヒクルと混合した後のPDGF-BB配合物の安定性のデータを表5および6にまとめて示す。概して、PDGF-BBの識別可能な分解は、実施例14に記載したように、賦形剤に配合され、本発明のゲルビヒクルと混合されたPDGF-BB配合物中には見出せなかった。
【表8】

【表9】

【0136】
実施例 16
PDGF粒子の調製
ヒスチジン緩衝液中にシュクロースを含み、スクシネート緩衝液中にシュクロースを含まないPDGF-BB配合物は、上記実施例14と同様にして調製した(表7):PDGF-BBバルク溶液を融解させる。溶液を合わせ、計量シリンダー内で体積を測定する。アリコートを取出し、UV吸光度測定のために適当に希釈する。400から250nmまで1cmパス長さキュベット(pathlength cuvette)で吸光度を記録する。吸光度を280nmで記録し、log(吸光度)対log(波長)補外を使用して400から330nmの範囲で光散乱について補正する。消光係数0.574ml/mgxcmを使用して、PDGF-BBの濃度を測定する。100mlの溜めとPellicon XL PLCC 5000 MWCO再生セルロース膜とを有するMillipore Tangential Flow Filtration Systemを使用し、必要な場合には、濃縮し、TFF指針に従い、その蛋白質の半分を10mM のヒスチジンpH6に対してジアフィルタリングし;必要な場合には、濃縮し、他半分を10mLスクシネートpH6に対してジアフィルタリングする。ジアフィルタレーション(diafiltration)後、各々からアリコートを取出し;UV吸光度を測定するために適当に希釈し;逆相および限外HPLCにより分析する。Millipore TFFの指針に従い、TFFシステムから全ての蛋白質溶液を取出す。10mMヒスチジン中のPDGF-BBについて、蛋白質(最終濃度でのPDGF-BB〜5mg/ml)との1:1最終比を与えるまでシュクロースを加える。10mMのスクシネートpH6中のPDGF-BBについて、10mMのスクシネートで希釈して、最終蛋白質濃度ほぼ5mg/mlを与える。アリコート配合物をガラス凍結乾燥瓶に入れ、実施例18に記載した条件下で凍結乾燥して、凍結乾燥させた乾燥PDGF-BB配合物を得た。凍結乾燥させたPDGF配合物を瑪瑙乳鉢中乳棒で粉砕した。粉砕した粒子は、US#230メッシュスクリーン(63μm)を通して篩にかけ、US#500メッシュスクリーン(25μm)上に収集する。
【表10】

【0137】
実施例 17
PDGFデポー配合物の調製
PDGFデポー配合物を2工程で調製した。第1の工程は、以下に記載する方法を使用してゲル配合物を調製することであった。適当量の予め照射PLGA RG 502および溶剤をKeyenceハイブリッドミキサーボール(高密度ポリエチレン(HDPE)製)に分取した。混合ボールを密閉し、ハイブリッドミキサー(Model HM-501,Keyence Corp., Japan)に入れ、混合速度(回転数2000rpm,回転800rpm)で(5〜10分)混合した。
【0138】
ゲル中の粒子の混合は、ガラスシリンジ(10mlまたは25ml)内で室温で行った。PDGF粒子およびゲルを最初に秤量し、シリンジに移した。ついで、PDGF粒子およびゲル混合物は、スクエアーチップスパチュラを備えたCaframo機械攪拌機を使用して慣用的に混合することにより完全にブレンドした。生ずる配合物は、表8に表記する。
【表11】

【0139】
実施例 18
デポー配合物中でのPDGFの安定性
デポーゲルPDGF配合物を、それぞれ、5、25および40℃で、異なる時間貯蔵した。予め決められた時点で、デポーゲルPDGF-BB配合物(0.3ml)を冷却した有機溶剤(塩化メチレン/アセトンの50/50混合物、5℃で、3x3.0ml)で処理した。生ずる残渣PDGF-BBをPBS緩衝液(2ml,pH7.4)に溶解させ、PDGFの純度を逆相HPLC(rpHPLC)および限外クロマトグラフィー(SEC)HPLCの両方により分析した。図12〜14は、それぞれ、5℃(図12)、25℃(図13)および40℃(図14)での時間の関数としての、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物中でのPDGFの安定性を示す。表9は、それぞれ、5℃、25℃および40℃での時間の関数としての、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物でrpHPLCにより試験したPDGFの化学的安定性をまとめて示す。図12〜14に示したように、シュクロースを含有するデポーゲルPDGF配合物は、測定したあらゆる温度で、シュクロースを含まないデポーゲルPDGF配合物と比較して、最少量のモノマー含量の喪失で、驚くほど良好な安定性を示した。
【表12−1】

【表12−2】

【0140】
実施例 19
デポー配合物からのPDGFのインビトロ放出
本発明のデポーゲルPDGF配合物からのPDGFのインビトロ放出は、以下のように行った。デポーゲルPDGF配合物(80〜120mg)をティーバッグに入れ、20mLシンチレーションバイアルに入れ、そのバイアルに、放出媒体(5mL,ホスフェート緩衝サリン(PBS)+0.1%Tween 20,pH7.4)を加えた。バイアルを、緩やかに攪拌しつつ、37℃水浴でインキュベートした。最初の5日間、媒体を毎日取り換え、ついで、その後、放出期間の終了まで週に2回取り換えた。デポーから放出されるPDGFの量は、限外クロマトグラフィー(SEC)HPLCにより測定した。図15に示すように、本発明のデポー配合物からのPDGFの持続的な放出が1ヶ月にわたって達成された。
【0141】
上記例として示した実施態様は、本発明を限定するというよりも、あらゆる点で、本発明を例示するものである。かくして、本発明は、当業者であれば、本明細書に含まれる記載から誘導することのできる詳細な実施にて多くの変更が可能である。このような変更および変形は、全て、本発明の範囲および精神に入ると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入可能なデポー組成物であって、
生物侵食性の生物学的相容性ポリマー;
25℃にて水混和性7重量%以下を有し、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成するのに有効な量の芳香族アルコール;および、
益剤;
を含み、
その組成物が1価の低級アルカノールを含まない組成物。
【請求項2】
芳香族アルコールが、構造式(I):
Ar-(L)-OH (I)
〔式中、Arは、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0または1であり、Lは
、結合部分である。〕
を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Arが、単環式アリールまたはヘテロアリールであり、nが、1であり、Lが、少なくとも1つのヘテロ原子を含有してもよい低級アルキレンである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
Arが、単環式アリールであり、Lが、低級アルキレンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
Arが、フェニルであり、Lが、メチレンである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマーが、ポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリカプロラクトン類、ポリ無水物類、ポリアミン類、ポリウレタン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリジオキサノン類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリホスホエステル類、ポリオルトカーボネート類、ポリホスファゼン類、スクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸類)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸;および、これらのコポリマー類、ターポリマー類および混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ポリマーが、乳酸基体のポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ポリマーが、乳酸とグリコール酸とのコポリマーである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
注入可能なデポー組成物であって、
ほぼ5重量%〜ほぼ90重量%の重量平均分子量ほぼ5,000〜ほぼ50,000を有する生物分解性の生物学的相容性乳酸基体ポリマー;
25℃にて水混和性5%以下を有し、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成するのに有効な量の芳香族アルコールであり、その芳香族アルコールが、構造式(I):
Ar-(L)-OH (I)
〔式中、Arは、置換または未置換アリールまたはヘテロアリール基であり、nは、0または1であり、Lは、結合部分である。〕
を有する芳香族アルコール;および、
益剤;
を含み、
その組成物が1価の低級アルカノールを含まない組成物。
【請求項10】
ポリマーが、組成物のほぼ25重量%〜ほぼ80重量%を占める、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ポリマーが、組成物のほぼ35重量%〜ほぼ75重量%を占める、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ポリマーが、乳酸とグリコール酸とのコポリマーである、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
芳香族アルコールが、ベンジルアルコールである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
注入可能なデポー組成物であって、
生物侵食性の生物学的相容性ポリマー;
芳香族酸のエステル類、芳香族ケトン類およびこれらの混合物からなる群より選択される溶剤であり、その溶剤が、25℃にて水混和性7%以下を有し、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成するのに有効な量存在する溶剤;
水混和性7%以下を有する有効なチキソトロピー量の芳香族アルコール;および、
益剤;
を含み、
その組成物が1価の低級アルカノールを含まない組成物。
【請求項15】
溶剤が、芳香族酸のエステルである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
溶剤が、安息香酸の低級アルキルエステルまたはアラルキルエステルである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
Arが、単環式アリールまたはヘテロアリールであり、nが、1であり、Lが、少なくとも1つのヘテロ原子を含有してもよい低級アルキレンである、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
Arが、単環式アリールであり、Lが、低級アルキレンである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
Arが、フェニルであり、Lが、メチレンである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
芳香族アルコール対溶剤の比が、約10%〜約99重量%の範囲である、請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
芳香族アルコール対溶剤の比が、約20%〜約80重量%の範囲である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
ポリマーが、ポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリカプロラクトン類、ポリ無水物類、ポリアミン類、ポリウレタン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリジオキサノン類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリオルトカーボネート類、ポリホスファゼン類、スクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸類)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸;および、これらのコポリマー類、ターポリマー類および混合物からなる群より選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項23】
ポリマーが、乳酸基体のポリマーである、請求項14に記載の組成物。
【請求項24】
ポリマーが、乳酸とグリコール酸とのコポリマーである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
注入可能なデポー組成物であって、
ほぼ5重量%〜ほぼ90重量%の重量平均分子量ほぼ5,000〜ほぼ50,000を有する生物分解性の生物学的相容性乳酸基体ポリマー;
芳香族酸のエステルであり、そのエステルが、25℃にて水混和性7%以下を有し、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成するのに有効な量存在する芳香族酸エステル;
水混和性7%以下を有する有効なチキソトロピー量の芳香族アルコールであり、その芳香族アルコールが、構造式(I):
Ar-(L)-OH (I)
〔式中、Arは、置換または未置換アリールまたはヘテロアリール基であり、nは、0または1であり、Lは、結合部分である。〕
を有する芳香族アルコール;および、
(c) 益剤;
を含み、
その組成物が1価の低級アルカノールを含まない組成物。
【請求項26】
ポリマーが、組成物のほぼ25重量%〜ほぼ80重量%を占める、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
ポリマーが、組成物のほぼ35重量%〜ほぼ75重量を占める、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
ポリマーが、乳酸とグリコール酸とのコポリマーである、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
芳香族アルコールが、ベンジルアルコールである、請求項25に記載の組成物。
【請求項30】
溶剤が、安息香酸の低級アルキルエステルまたはアラルキルエステルである、請求項25に記載の組成物。
【請求項31】
溶剤が、ベンジルベンゾエートである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
溶剤が、ベンジルベンゾエートである、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
芳香族アルコール対溶剤の比が、約10%〜約99重量%の範囲である、請求項25に記載の組成物。
【請求項34】
ベンジルアルコール対ベンジルベンゾエートの比が、約20%〜約80重量%の範囲である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
芳香族アルコールが、25℃にて水混和性5重量%以下を有する、請求項1〜請求項34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
芳香族アルコールが、25℃にて水混和性3重量%以下を有する、請求項1〜請求項35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
芳香族アルコールが、25℃にて水混和性1重量%以下を有する、請求項1〜請求項36のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
芳香族アルコールが、25℃にて水混和性0.5重量%以下を有する、請求項1〜請求項37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
さらに、以下の:気孔形成剤;益剤のための溶解度調節剤;および、浸透圧剤の少なくとも1つを含む、請求項1〜請求項38のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項40】
組成物が、25℃にて水混和性7重量%より大を有する溶剤を含まない、請求項1〜請求項39のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項41】
益剤が、薬剤、蛋白質類、酵素類、ホルモン類、ポリヌクレオチド類、核蛋白質類、ポリサッカライド類、グリコ蛋白質類、リポ蛋白質類、ポリペプチド類、ステロイド類、鎮痛剤、局所麻酔剤、抗生物質、化学療法剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、血管形成剤、抗凝血剤、線維芽溶解剤、成長因子、抗体、眼薬および代謝物質;ならびに、それらの類縁体、誘導体およびフラグメントから選択される、請求項1〜請求項40のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
益剤が、ポリマー、溶剤および益剤の合計量の0.1〜50重量%の量存在する、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
益剤が、粘性ゲルに分散または溶解された粒子の形である、請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
益剤が、粒子の形であり、その粒子が、さらに、安定剤、増量剤、キレート剤および緩衝剤からなる群より選択される成分を含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
益剤を被検者に投与する方法であって、
(1) 被検者内の前記被検者の部位に注入可能なデポー組成物であり、その組成物が、
(a) 生物侵食性の生物学的相容性のポリマー;
(b) 25℃にて水混和性7重量%以下を有し、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成するのに有効な量の芳香族アルコール;および、
(c) 益剤;
を含み、
その組成物が1価の低級アルカノール含まない組成物を被検者の被検者部位に投与し;
(2) その部位に移植片を形成し、その移植片が、その部位にて益剤の持続的放出を生ずる;
各工程を含む方法。
【請求項46】
芳香族アルコールが、構造式(I):
Ar-(L)-OH (I)
〔式中、Arは、アリールまたはヘテロアリールであり、nは、0または1であり、Lは、結合部分である。〕
を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
Arが、単環式アリールまたはヘテロアリールであり、nが、1であり、Lが、少なくとも1つのヘテロ原子を含有してもよい低級アルキレンである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
Arが、単環式アリールであり、Lが、低級アルキレンである、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
Arが、フェニルであり、Lが、メチレンである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ポリマーが、ポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリカプロラクトン類、ポリ無水物類、ポリアミン類、ポリウレタン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリジオキサノン類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリホスホエステル類、ポリオルトカーボネート類、ポリホスファゼン類、スクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸類)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸;および、これらのコポリマー類、ターポリマー類および混合物からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
ポリマーが、乳酸基体のポリマーである、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
ポリマーが、乳酸とグリコール酸とのコポリマーである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
益剤を被検者に投与する方法であって、
(1) 被検者内の前記被検者の部位に注入可能なデポー組成物であり、その組成物が、
(a) 生物侵食性の生物学的相容性ポリマー;
(b) 芳香族酸のエステル類、芳香族ケトン類およびそれらの混合物からなる群より選択される溶剤であり、その溶剤が、25℃にて水混和性7%以下を有し、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成するのに有効な量存在する溶剤;
(c) 水混和性7%以下を有する有効なチキソトロピー量の芳香族アルコール;および、
(d) 益剤;
を含み、
その組成物が1価の低級アルカノール含まない組成物を被検者の被検者部位に投与し;
(2) その部位に移植片を形成し、その移植片が、その部位にて益剤の持続的放出を生ずる;
各工程を含む方法。
【請求項54】
ポリマーが、組成物のほぼ25重量%〜ほぼ80重量%を占める、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
ポリマーが、組成物のほぼ35重量%〜ほぼ75重量%を占める、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
ポリマーが、乳酸とグリコール酸とのコポリマーである、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
芳香族アルコールが、ベンジルアルコールである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
益剤を被検者に投与する方法であって、
(1) 被検者内の前記被検者の部位に注入可能なデポー組成物であり、その組成物が、
(a) ほぼ5重量%〜ほぼ90重量%の重量平均分子量ほぼ1,000〜ほぼ120,000を有する生物分解性の生物学的相容性乳酸基体ポリマー;
(b) 25℃にて水混和性5%以下を有し、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成するのに有効な量の芳香族アルコールであり、その芳香族アルコールが、構造式(I):
Ar-(L)-OH (I)
〔式中、Arは、置換または未置換アリールまたはヘテロアリール基であり、nは、0または1であり、Lは、結合部分である。〕
を有する芳香族アルコール;および、
(c) 益剤;
を含み、
その組成物が1価の低級アルカノールを含まない組成物を被検者の被検者部位に投与し;
(2) その部位に移植片を形成し、その移植片が、その部位にて益剤の持続的放出を生ずる;
各工程を含む方法。
【請求項59】
溶剤が、芳香族酸のエステルである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
溶剤が、安息香酸の低級アルキルエステルまたはアラルキルエステルである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
Arが、単環式アリールまたはヘテロアリールであり、nが、1であり、Lが、少なくとも
1つのヘテロ原子を含有してもよい低級アルキレンである、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
Arが、単環式アリールであり、Lが、低級アルキレンである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
Arが、フェニルであり、Lが、メチレンである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
芳香族アルコール対溶剤の比が、約10%〜約99重量%の範囲である、請求項58に記載の方法。
【請求項65】
芳香族アルコール対溶剤の比が、約20%〜約80重量%の範囲である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
ポリマーが、ポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリカプロラクトン類、ポリ無水物類、ポリアミン類、ポリウレタン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリジオキサノン類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリオルトカーボネート類、ポリホスファゼン類、スクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸類)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸;および、これらのコポリマー類、ターポリマー類および混合物からなる群より選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項67】
ポリマーが、乳酸基体のポリマーである、請求項58に記載の方法。
【請求項68】
ポリマーが、乳酸とグリコール酸とのコポリマーである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
益剤を被検者に投与する方法であって、
(1) 被検者内の前記被検者の部位に注入可能なデポー組成物であり、その組成物が、
(a) ほぼ5重量%〜ほぼ90重量%の重量平均分子量ほぼ1,000〜ほぼ120,000を有するポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)コポリマー;
(b) ほぼ5重量%〜ほぼ90重量%の25℃にて水混和性7%以下を有し、前記ポリマーを可塑化してそれとゲルを形成するのに有効な量の芳香族アルコール溶剤;および、
(c) 益剤;
を含み、
その組成物が1価低級アルカノールを含まない組成物を被検者の被検者部位に投与し;
(2) その部位に移植片を形成し、その移植片が、その部位にて益剤の持続的放出を生ずる;
各工程を含む方法。
【請求項70】
ポリマーが、組成物のほぼ25重量%〜ほぼ80重量%を占める、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
ポリマーが、組成物のほぼ35重量%〜ほぼ75重量%を占める、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
ポリマーが、乳酸とグリコール酸とのコポリマーである、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
芳香族アルコールが、ベンジルアルコールである、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
溶剤が、安息香酸の低級アルキルエステルまたはアラルキルエステルである、請求項69に記載の方法。
【請求項75】
溶剤が、ベンジルベンゾエートである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
溶剤が、ベンジルベンゾエートである、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
芳香族アルコール対溶剤の比が、約10%〜約99重量%の範囲である、請求項69に記載の方法。
【請求項78】
ベンジルアルコール対ベンジルベンゾエートの比が、約20%〜約80重量%の範囲である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
芳香族アルコールが、25℃にて水混和性5重量%以下を有する、請求項1〜請求項78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
芳香族アルコールが、25℃にて水混和性3重量%以下を有する、請求項1〜請求項79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
芳香族アルコールが、25℃にて水混和性1重量%以下を有する、請求項1〜請求項80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
芳香族アルコールが、25℃にて水混和性0.5重量%以下を有する、請求項1〜請求項81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
さらに、以下の:気孔形成剤;益剤のための溶解度調節剤;および、浸透圧剤の少なくとも1つを含む、請求項1〜請求項82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
組成物が、25℃にて水混和性7重量%より大を有する溶剤を含まない、請求項1〜請求項83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
益剤が、薬剤、蛋白質類、酵素類、ホルモン類、ポリヌクレオチド類、核蛋白質類、ポリサッカライド類、グリコ蛋白質類、リポ蛋白質類、ポリペプチド類、ステロイド類、鎮痛剤、局所麻酔剤、抗生物質、化学療法剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、血管形成剤、抗凝血剤、線維芽溶解剤、成長因子、抗体、眼薬および代謝物質;ならびに、それらの類縁体、誘導体およびフラグメントから選択される、請求項1〜請求項84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
益剤が、ポリマー、溶剤および益剤の合計量の0.1〜50重量%の量存在する、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
益剤が、粘性ゲルに分散または溶解された粒子の形である、請求項85に記載の組成物。
【請求項88】
益剤が、粒子の形であり、その粒子が、さらに、安定剤、増量剤、キレート剤および緩衝剤からなる群より選択される成分を含む、請求項87に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−189407(P2010−189407A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−85269(P2010−85269)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【分割の表示】特願2003−543571(P2003−543571)の分割
【原出願日】平成14年11月14日(2002.11.14)
【出願人】(508027589)デュレクト コーポレーション (14)
【Fターム(参考)】