説明

注入可能ナルトレキソン微細球体組成物、並びにヘロイン及びアルコールの摂取量を減少させるためのその使用

【課題】注入可能徐放性ナルトレキソン配合物を提供する。
【解決手段】本発明で提供される注入可能徐放性ナルトレキソン配合物は、ポリ(D,L−ラクチド)及び少量の残留エチルアセテート中にナルトレキソンを含有している。組成物の筋肉注射によって、長期間にわたってナルトレキソンが制御された様式で放出される。この配合物は、ヘロイン中毒及びアルコール依存症の治療で使用して、乱用物質の摂取を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
薬物乱用による疾病は社会的な問題である。中毒になるのにはかなりの遺伝的な要因があることは比較的明らかになってきているので、薬物の乱用を道徳上の問題として扱うのではなく、中毒の人を助けて、それらの人の依存を終わらせること又は少なくとも社会の一員としての役割を行えるようにすることは、段々と受け入れられる考えとなってきている。公的又は私的な施設において、様々なプログラムが行われている。私的な分野では、そのような組織としてアルコール依存症者自主治療協会(Alcholics Anonymous)及び麻薬依存症者自主治療協会(Narcotics Anonymous)があり、これらは心理社会的支援の重要な役割を果たしている。更に多くの私的なクリニックがあり、これらは、入手可能な何らかの制限された一連の薬剤を使用して、心理社会的支援及び治療的支援の両方で重要な役割を担っている。公共の分野では、薬物乱用の弊害に若い人及び両親を注目させ、また若い人が薬物を使用しないようにするために、費用のかかるプログラムを行っている。また、主に公費によって支援されているメタドンプログラムも存在する。
【0002】
米国の薬物中毒者の数は、非常に恐ろしく、アルコールの乱用者は約1,500万人、コカイン類の乱用者は約130万人、アンフェタミンの乱用者は約80万人、ヘロインの乱用者は約50〜80万人であると見積もられている。これに加えて、幻覚剤のような他の薬剤も使用されている。薬物及びアルコールの常用者の数を減らす努力が継続して行われてきているが、その効果はあまり出ていない。プログラムを行った人の多くは残念ながら再発する。したがってプログラムを開始し、そしてプログラムの完了後にも長期間にわたって薬物等の使用を止められる人は少数である。
【0003】
継続性の欠如及び再発の1つの重要な要素は、指示の遵守である。毎日錠剤を飲むような反復的な行動は、錠剤を飲むことが被験者にとって面倒でなくても、簡単ではない。乱用薬物を生理学的及び感情的に必要としていることがある薬物乱用者では、治療手順を持続することは、実質的に比較的困難である。被験者に忍耐を要求する治療技術は、処置の成功率を低下させる。従って医療的処置を行うときに、被験者が関与する程度、特に頻繁な計画的な行為、指示の遵守、及び特定の習慣の維持の要求を減少させることが、非常に重要である。
【0004】
指示遵守の変化を減少させるために、持続放出法を使用する試みが行われてきた。これらは、ポンプ、パッチ、デポット等に関する。被験者が放出具にふれられる場合、この放出具を除去したいという誘惑が常につきまとう。しかしながら、意志力の表示でもあるこの機会には、被験者がこの誘惑に負ける危険性がある。体内に埋め込まれる徐放性薬剤を提供することによって、この誘惑が避けられ、所定の期間にわたって所定のスケジュールに従って薬剤が放出される。手術によって埋め込んで手術によって取り出さなければならない埋め込み可能棒状体、又は所定の様式で長期間にわたって薬剤を放出するようにされている注射可能微細球体が入手可能である。
【0005】
様々な徐放性微細球体(又は微細粒子)が、様々な薬剤のために研究されてきており、いくらかのものは商業化されている。満足な徐放性注入可能組成物には多くのことが求められている。これは例えば、薬剤の放出を長期間にわたって行わなければならないこと;処理の期間にわたって被験体中で薬剤の濃度を有効な濃度に保ち、また危険な濃度に達しないようにしなければならないこと;最悪の薬剤の急激な放出をもたらさずに、薬剤をゆっくりと放出しなければならないこと;微細球体のために使用されるポリマーマトリックスが生体適合性で生物分解性でなければならないこと;全ての残留化学物質が、許容できる最大濃度未満であること;微細球体が小さく、被験体が許容できる針を有する注射器で投与できなければならないこと;結果が再現可能であり、プロセスを正確に制御でき、且つ条件のわずかな変化に対して過度に感受性ではないこと;注入可能組成物が殺菌できること;生成される代謝物が許容される濃度であること;並びに一般的な又は特定の医療に特定な特徴を有することである。微細球体の性質は、薬剤及びマトリックスの多くの性質、並びに微細球体を調製及び処理する条件及び方法の選択に対して感受性である。
【背景技術】
【0006】
非特許文献1は、徐放性ナルトレキソン(naltrexone)粒子注入可能配合物でのアルコール依存症の治療を報告している。Reunings研究所によって、ナルトレキソン及び徐放性の形でのその使用に関して多くの研究がなされてきた。これについては非特許文献2〜6がある。また、非特許文献7〜16を参照。
【0007】
アルコール依存症の治療でのナルトレキソンの使用は、非特許文献17及び他の多くの文献で説明されている。
【0008】
関連のある特許明細書としては、特許文献1〜4を挙げることができる。特許文献5では、本発明で使用される方法に適用可能な方法が説明されている。
【0009】
薬剤含有微細球体の調製でのポリラクチドの使用は、非特許文献18〜20で説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,568,559号
【特許文献2】米国特許第4,623,588号
【特許文献3】米国特許第4,897,267号
【特許文献4】米国特許第5,486,362号
【特許文献5】米国特許第5,407,609号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Krantzler等のAlcoholism:Clin and Exp Res、1998、22、p.1074〜1079
【非特許文献2】Reuning等のNIDA Re : Monograph Series、1976年1月、(4)、p43〜5
【非特許文献3】Reuning等のJ. Pharmacokinet Biopharm、1983年8月、(4)、p369〜87
【非特許文献4】Reuning等のDrug Metab Dispos、1989年11〜12月、17(6)、p.583〜9
【非特許文献5】MacGregor等のJ. Pharm Pharmacol、1983年1月、35(1)p.38〜42
【非特許文献6】Reuning等のNIDA Res Monograph Series、1980年、28、p.172〜84
【非特許文献7】Schwope等のNIDA Res Monograph Series、1975年、(4)、p.13〜8
【非特許文献8】Yolles等のJ Pharm Sci、1975年2月、64(2)、p.348〜9
【非特許文献9】ThiesのNIDA Res Monograph Series、1975年、(4)、p.19〜20
【非特許文献10】Schwope等のNIDA Res Monograph Series、1976年1月、4、p.13〜18
【非特許文献11】Chiang等のClin Pharmacol Ther、1984年11月、36(5)、p.704〜8
【非特許文献12】Pitt等のNIDA Res Monograph Series、1981年、28、p232〜53
【非特許文献13】Chiang等のDrug Alcohol Depend (スイス国)、1985年7月、16(1)、p.1〜8
【非特許文献14】Yoburn等のJ. Pharmacol Exp Ther、1986年4月、237(1)、p.126〜130
【非特許文献15】Cha及びPittのJ. Control Release、1989年、8 (3)、p.259〜265
【非特許文献16】Yamaguchi及びAndersonのJ. Control Release、1992年、19(1〜3)、p.299〜314
【非特許文献17】O=Malley等のPsychiatric Annals、1995年11月、11、p.681〜688
【非特許文献18】Benita等のJ Pharm Sci、1984年12月、73(12)、p.1271〜4
【非特許文献19】Speniehauer等のibid、1986年8月、75(8)、p.750〜5
【非特許文献20】Nihant等、1994年10月、11(10)、p.1479〜84
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明では、注入可能な徐放性ナルトレキソン配合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明で提供される注入可能な徐放性ナルトレキソン配合物は、長期間にわたって放出される治療に有効的な量のナルトレキソンと、ポリ(D,L−ラクチド)ポリマーからなるマトリックスとを含んでいる。微細球体は、直径が100μm未満であり、容易に筋肉注射することができる。ポリマーの分子量、ポリマーの分子重量均質性、微細球体のマトリックスサイズ、及びナルトレキソンの重量分率に依存して、異なる放出特性が得られる。微細球体は水中油タイプのエマルションの溶媒抽出によって調製される。ここで分散油相は、ナルトレキソンとポリマーとの有機溶液である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、アルコール依存症及びヘロイン中毒、並びにナルトレキソンが有効であることが分かっているそのような他の徴候の治療で使用するために、注入可能な徐放性ナルトレキソン配合物を提供する。小さい殺菌された粒子、すなわち殺菌された微細球体を提供する。これは、注射器の針を通すこと及び筋肉内に投与することができ、また長期間にわたって注入箇所に維持させて、少なくとも28日間にわたって、治療に関して有効な量のナルトレキソンを連続的に放出及び維持することができる。放出特性は、微細球体中のナルトレキソンの量、塩と比較される遊離塩基の使用、並びにポリ(D,L−ラクチド)の内部粘度及び均一性(分子量分布)に感受性であることが分かっている。放出分布は、マイクロカプセル化プロセスを行う条件、組成物が実質的に20〜100μmの粒子からなっている場合の微細球体のサイズ分布、及びポリマー溶媒の量が約3wt%未満である場合の保持されているポリマー溶媒の量に対しては、比較的感受性でないと考えられる。
【0015】
SEMによって観察される微細球体は、マトリックスに分散している薬剤に関して実質的に均一である。微細球体は約3wt%未満のエチルアセテートを含有する。ここでエチルアセテートは、微細球体の調製で使用される有機溶媒である。微細球体中のナルトレキソン含有率は5〜50wt%であり、これは、微細球体のポリマーマトリックスを作っているポリ(D,L−ラクチド)の内部粘度に依存して変化してよい。ポリマーの内部粘度は、約0.3〜1.2dl/gの範囲である(キャピラリー粘度測定法、クロロホルム、ポリマー濃度0.5g/dl、30℃)。マトリックスの内部粘度が約0.3〜0.4dl/gである場合、ナルトレキソンの量は約5〜45wt%、通常10〜40wt%、特に10〜30wt%である。これに対して、マトリックスの内部粘度が約1.0〜1.2dl/g、通常1.0〜1.1dl/gである場合、ナルトレキソンの量は約35〜50wt%、通常35〜45wt%である。たいていの場合、内部粘度が0.45〜0.95dl/gのポリマーは、マトリックスとして使用されない。ポリマーの混合物及び/又は微細球体を使用して、所望の期間にわたって所望の量のナルトレキソンを投与することができる。したがって、異なる内部粘度の2種類のポリマーを混合する場合(マイクロカプセル化の前に)、2種類の異なるポリマーの重量分率は、1:99〜99:1、より一般的には10:90〜90:10の範囲でよく、ここでは内部粘度が比較的小さいポリマー(すなわち分子量が比較的小さいポリマー)が、内部粘度が比較的大きいポリマー(分子量が比較的大きいポリマー)よりも少量である。同様に、低分子量ポリマーでできているナルトレキソン微細球体を、高分子量ポリマーでできている微細球体と混合することができる。ここでは、混合される2又はそれよりも多い種類の微細球体で、薬剤含有量(微細球体配合物中のナルトレキソンの重量分率)が異なっていてよい。2種類の異なる微細球体配合物では、混合物の重量比は5:95〜95:5であり、ここでは比較的低分子量のポリマーでできた微細球体が通常、約10〜65wt%の量で存在する。
【0016】
微細球体の約90wt%超の直径が約20〜100μmであり、且つ微細球体の約5wt%未満の直径が約100μm超である。
【0017】
凝集を減少させるために、微細球体に、マンニトールのような凝集防止剤をコーティングすることができる。これは微細球体の約10wt%未満、通常は約5wt%未満の量で使用し、約2wt%未満の量で使用することもできる。
【0018】
望ましくは、少なくとも4週間にわたって微細球体がナルトレキソンを放出する。ここでは、被験体中のナルトレキソンの血しょう濃度監視において、曲線の下の面積が、任意の1週間で、約40%未満、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約12%である。一般に、少なくとも2つの週、好ましくは3つの週における割合が、約25%以下、一般に20%以下である。望ましくは曲線の下側の面積によって測定したときに、少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約80%であって、且つ約95%以下のナルトレキソンが、初めの4週間で放出される。曲線の下側の面積は、標準の薬物動力学コンピュータープログラムであるWinNonlin Professional(Ver.2.1、カルフォルニア州マウンテンビューのPharsight社)によって決定できる。
【0019】
微細球体を適当なビヒクル中に配合して、約150〜350mg、通常250〜350mg、特に300±15mgのナルトレキソンを投与のために提供する。このビヒクルは殺菌水、ホスフェート緩衝塩水、又は微細球体を投与するための他の従来のビヒクルでよい。添加剤を存在させて、微細球体の付着を減少させること、注入の際の不快感を最少化すること、又は水腫、かゆみ、刺激若しくは他の不快感を減少させることができる。ビヒクルの約2〜10wt%、特に4〜7wt%のマンニトールを存在させることが便利なことがある。他の生理学的に許容できる添加剤としては、非イオン性浄化剤、例えばTween、ポリソルベート等を挙げることができ、存在する場合、これらはビヒクルの約0.05〜0.2wt%の量で存在し、粘性促進剤、例えばカルボキシメチルセルロースは、ビヒクルの約0.1〜1wt%の量で存在し、また適当な場合には他の従来の添加剤も存在していてよい。ビヒクルの量は一般に、約1.5〜5ml、通常2〜4ml、特に2〜3mlであり、ここで比較的少ない量は一般に複数回、例えば2回の注入に関連する。微細球体は、使用の直前にビヒクル中に分散させる。一般に微細球体は、隔膜を有する殺菌瓶に殺菌の後で貯蔵し、ここで微細球体をビヒクルと混合し、その後でシリンジで抜き出すことができる。一般に、針の内径は、約18ゲージ以下である。一回の投与で複数の注入を行う場合、注入を、同じ場所、隣接する場所、又は離れた場所に行うことができる。
【0020】
実質的に米国特許第5,407,609号明細書で説明されているマイクロカプセル化プロセスによって、微細球体を調製する。このプロセスはエマルションに基づくプロセスであり、連続水相(水と界面活性剤及び/又は増粘剤)及び疎水性分散相(ポリマー溶媒、ポリマー及び薬剤)を含むエマルションの調製に関する。エマルション調製の直後に、ポリマー溶媒を水性抽出相に抽出する。十分な量のポリマー溶媒を抽出して微細球体を硬化させた後で、微細球体をふるいに集めて洗浄し、微細球体の表面に残っている全ての界面活性剤を除去する。その後で微細球体を、室温での空気乾燥、凍結乾燥、又は他の便利な乾燥方法によって乾燥させる。
【0021】
目的の微細球体の調製のために、分散相(有機相)は、エチルアセテート中に溶解した約1〜20wt%のポリマー及び約1〜10wt%のナルトレキソンを含有している。連続相は、ポリ(ビニルアルコール)が約1〜10wt%でエチルアセテートが1〜7wt%の水溶液である。抽出相は水である。一般に、使用されるナルトレキソンの量は、最終的な微細球体中のナルトレキソンの量に対して、約20〜50wt%過剰な量である。温度は周囲温度でよく、一般に約15〜30℃である。
【0022】
微細球体を回収して乾燥させた後で、周囲温度、特に約0〜20℃の温度の酸素及び水を含まない雰囲気において貯蔵すること、又はアリコートに分けて適当な容器に入れて殺菌することができる。様々な殺菌方法が使用でき、ガンマ線放射が便利である。
【0023】
比較的単純な装置を使用して、微細球体を製造することができる。様々な液体を保持する貯蔵容器、管路、ポンプ、弁及び均一化機を使用して、容易に装置を組み立てることができる。更に様々な監視装置、例えば流量計、温度計、粒度監視装置等を具備させることができる。有機溶媒を、均一化機に取り付けられた第1の管路に送出する。同様に、水溶液(連続相にするもの)を、均一化機に取り付けられた第2の管路に送出する。均一化機に接続された管路内のこれら2つの流れの流量を制御して、これら2つの流れの比、及び均一化機での滞留時間を制御できる。均一化機からの流出物(水中油型エマルション)を、水が流れている第3の管路に送る。この水は、エマルション滴からポリマーの溶媒であるエチルアセテートを抽出して、微細球体を作る。また、流量比を制御して、第3の管路に導入されるエマルションと水の量を制御する。第3の管路の長さ及び組み合わされた流れの流量を制御して、水による抽出工程の滞留時間を制御する。微細球体は2又はそれよりも多いふるいに通すことによって、大きさによって分類する。これは、所望の大きさの範囲外の微細球体をなくす。
【0024】
目的とする配合物の第1の用途は、筋肉内注入可能なものであるが、皮下注射することもできるものである。対象者は通常、アルコール及びヘロインのような薬物の乱用者であるが、この組成物は、肥満のような他の症状にも使用できる。適当な量の目的とする組成物を、大臀筋のような便利な場所に直接に注入する。その後、ナルトレキソン血しょう濃度に関して被験体を監視して、この量が、少なくとも約1ng/ml、好ましくは少なくとも約2ng/mlの治療に有効な量であることを確認できる。ナルトレキソン血しょう濃度が、治療に有効な量よりも少なくなったら、次の注入を行うことができ、治療期間の間にこの処置を繰り返すことができる。
【0025】
ヘロイン中毒の場合には、ブプレノルフィン、クロニジン、ナルトレキソン等を使用し、ナロキソンで確認する様々な方法のうちの1つで、通常は対象者の中毒を治療する。ナロキソンへの反応は、被験体の中毒が完全に治療されていないことを示す。経口投与ナルトレキソンで試験した人の約10%が、好ましくない反応を示すことも分かっている。この好ましくない反応によって、ナルトレキソンの使用を止めてしまうこと又は使用を受け付けない場合がある。更に、多量のナルトレキソンの使用が肝臓毒性を有し、また多量の代謝物質6β−ナルトレキソールが肝臓毒性有し、それによって肝臓に問題のある被験体、例えばC型肝炎を患っている被験体ではこの治療を行えないことがあることも報告されている。それ以外の場合には、ナルトレキソンは、この組成物で使用される濃度を超える投与濃度で安全であることが分かっている。アルコール中毒の場合には、被験体がナルトレキソンに対して好ましくない反応を示さないことが分かったら、この組成物を被験体に注入できる。ナルトレキソンは、摂取されるアルコールの量及び暴飲の回数に関して、アルコール中毒者の抑制を促進する役割を果たすことが分かっている。
【0026】
長期間、すなわち28日間、特に約32日間にわたって放出する能力を有する微細球体を使用することによって、投与を重ねることが可能になり、それによって定期的に注入を行って、追加の効果を得ることができる。この様式では、初めの投与の後では比較的少量を投与することができる。これは、後から投与した微細球体からの放出に加えて、先に注入した微細球体からの放出を継続して得られることによる。あるいは、投与される微細球体の量を増加させずに、増加したナルトレキソン濃度を利用できる。注入後約28日間よりも経過した後、頻繁に少なくとも約36日、より頻繁に少なくとも約42日経過した後で、血液中において1ng/mlを超える濃度、好ましくは1.5ng/mlを超える濃度、より好ましくは2ng/mlを超える濃度で、継続して放出することができる微細球体を提供する。この様式では、被験者が連続的に保護濃度のナルトレキソンで保護され、またヘロイン50mgの投与又はフェンタニールのような薬剤の等価量の投与への反応を抑制するナルトレキソン濃度を提供できるので、保護かかなり促進される。
【0027】
以下の例は説明のためのものであり、限定をするものではない。
【実施例】
【0028】
マイクロカプセル化プロセスは、溶媒抽出によるマイクロカプセル化に関する。ナルトレキソンの無水物塩基、ポリ(D,L−ラクチド)、及びエチルアセテートを組み合わせて、水及び界面活性剤を伴う直列均一化機に加えた。エマルションを作り、追加の水を加えて抽出プロセスを開始する。生成物であるナルトレキソン微細球体を、容器内での凍結乾燥によって乾燥した。2.5Mradのガンマ線による殺菌を行い、生物量、静菌作用及び静真菌作用を監視した。
【0029】
適当な量の乾燥したナルトレキソン微細球体を計量して、空の5cc瓶に入れ、ゴム栓で閉じ、アルミニウムシールで密封し、そして輸送及び殺菌のためのフィルムの袋に密封した。0.5%のカルボキシメチルセルロース、0.1%のポリソルベート80及び5%のマンニトールを含有する2mlの希釈剤が入った瓶を使用して、微細球体を再び懸濁させる。このサスペンションを、18ゲージの針を有する3ccのシリンジに入れる。すぐに筋肉注射を行って、微細球体が沈降するのを防いだ。注入は、2〜4mlの1又は2回の注入を含むことができ、通常は合計で4ml以下である。
【0030】
粒度分布は、それぞれのバッチの90体積%が40μm超で90μm未満であるように制御する。生体外放出特性は、37℃において初めの72時間で放出される%として定義される。
【0031】
ナルトレキソンのマイクロカプセル化は以下の工程を含む。
【0032】
(工程1)
PTFEでコーティングされた撹拌シャフトを具備している8リットルバイオリアクターフラスコ中で、低分子量のポリ(D.L−ラクチド)とエチルアセテートとを混合することによって、ポリマーの2.5wt%溶液を調製する。ポリマーを完全に溶解させるためには少なくとも4時間が必要である。ポリマー溶液及びフラスコの重量を測定し、必要であれば、更なるエチルエチルアセテートを加えて、溶液を所望の重量に戻す。
【0033】
(工程2)
3〜4バッチで、殺菌水中においてポリ(ビニルアルコール)(PVA)を混合し、90℃で撹拌することによって、2wt%のPVA溶液を調製する。それぞれのバッチを室温まで冷却し、その後で水を加えて蒸発損失を調節する。Millipak200リットル装置のろ過前強度試験がうまく行われた後で、溶液をろ過して36リットルのバイオリアクターフラスコに溜める。このフラスコ及びその内容物を計量し、2.5wt%のエチルアセテートをPVA溶液に加えて、モーター駆動PTFEインペラーで少なくとも30分間にわたって溶液を撹拌する。
【0034】
(工程3)
製造される薬剤生成物15g毎に、少なくとも8リットルの水を50ガロンステンレス鋼タンクに入れて、蓋をして貯蔵した。
【0035】
(工程4)
撹拌しながらポリマー溶液にナルトレキソンを加えることによって、ナルトレキソン分散相溶液を調製する。この溶液を少なくとも1時間にわたって撹拌して、ナルトレキソンを溶解させる。
【0036】
(工程5)
連続マイクロカプセル化装置を用意するために、分散相、連続相及び抽出相、並びにポンプを、特定の流量、例えばそれぞれ25g/分、125g/分及び2,000g/分のために較正して、配合物F−1を調製する。分散相針に分散相溶液を供給し、分散相ポンプ流量をバイパス設定で確認する。抽出相ポンプを始動させて、抽出ラインを満たして泡がないようにする。連続相ポンプを始動させて、PVAが抽出管路に流入するようにする。均一化機を始動させて、撹拌速度を650±20rpmに設定する。分散相針の弁を開放し、分散相ポンプを始動させて、分散相溶液を、PVA溶液を保持している均一化容器に流入させる。これはバッチ操作の始まりである。均一化の後で、エマルションを直列均一化機から流出させ、微細球体からエチルアセテートを抽出する流水を保持している抽出ラインに入れる。
【0037】
微細球体の水性サスペンションを、撹拌モーター及びインペラーを具備する50ガロンのステンレス鋼保持タンクに集める。タンクが25〜50%まで満たされるまで、微細球体を500±50rpmで撹拌する。微細球体サスペンションを、遠心ポンプを使用して、125μm及び20μmの一連のふるいを有するRBF−12 Vorti−Sieve振動ふるいデッキに通す。ふるいが目詰まりしたら、それらを除去して新しい1連の清浄なふるいで置き換える。その後、20μmふるいを水すすいで、80ガロンステンレス鋼洗浄タンクに入れ、残りの試料を回収している間、連続的に撹拌した。最後の分散相溶液を均一化機に通した後で、分散相ポンプを停止させ、分散相針の弁を閉じる。これがバッチ操作の終わりである。最終的な量の分散相溶液を均一化し、抽出し、ふるいを通してろ過する。
【0038】
その後、10分間にわたってふるいに水を送って、微細球体を洗浄する。20μmふるい上の微細球体をすすいで、80ガロンのステンレス鋼洗浄タンクにいれ、少なくとも3時間にわたって500±50rpmで連続的に撹拌する。遠心ポンプを使用して、微細球体を、一連の125μm及び20μmふるいを有する他のRBF−12 Vorti−Sieve振動ふるいに通す。20μmふるい上の微細球体を水ですすいで、回収容器に移す。見積もられる収率に基づいて微細球体を水で希釈して、固体含有率が15%のサスペンションを作る。サスペンションを連続的に撹拌しながら、1リットルの凍結乾燥フラスコに分け、それぞれのフラスコが、見積もられた量で20gの微細球体を含むようにする。凍結乾燥の後で、125μmふるいに通して微細球体を乾燥ふるい分けする。その後、微細球体を計量して、コハク色のガラスボトルに分ける。
【0039】
このボトルに蓋をし、密封し、シリカゲル乾燥剤と共にプラスチックバックに入れる。このバックは2〜8℃で貯蔵する。
【0040】
微細球体が、コア含有量、粒度分布、理論収率及び残留エチルアセテートに関して、所定の許容基準に適合した後で、これらを1投与量として5ccのフリントガラス瓶に入れる。この容器は、PTFEでコーティングされたゴム栓で蓋をし、上が開いたアルミニウムシールで密封し、ラベルを付け、そして個別のフィルム袋内で密封する。
【0041】
調製の細部及び用具の説明を以下に挙げる。
1.18ゲージ針を使用して、2.0ccの希釈剤を3ccのシリンジに入れ、微細球体を保持している瓶に注入する。この針及びシリンジは廃棄する。
2.瓶を30秒間にわたって激しく振盪して、微細球体を懸濁させる。
3.新しい3ccのシリンジに新しい18ゲージの針を取り付ける。
4.瓶を逆さにしながら、微細球体サスペンションをシリンジに吸入する。
5.微細球体を出して瓶に戻す。
6.工程4及び5を更に2回繰り返す。
7.この針及びシリンジを廃棄する。
8.新しい3ccのシリンジに新しい18ゲージの針を取り付ける。
9.瓶を逆さにしながら、微細球体サスペンションをシリンジに吸入する。瓶から針を引き抜く。
10.サスペンションから気泡を除去し、可能な限りすぐに投与して、微細球体の沈降を防ぐ。
【0042】
以下の表は、微細球体の調製に関する特定のパラメータを示し、生体外及び生体内での微細球体の性質及び性能を示す。生体内での試験では、表に示す重量で微細球体を含有する約2mlの溶液を、18ゲージの針で筋肉注射によって犬に注入した。示している時間で、ナルトレキソンに関して血しょうを監視した。生体外試験では、37℃でpH7.4の0.01Mのホスフェート緩衝剤中に微細球体を保持し、微細球体中の残留ナルトレキソンを示している時間で測定した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
(犬の血中濃度に関する解析)
HPLC及び電気化学検知を使用して、犬の血しょう中におけるナルトレキソンの解析を行った。標準対照の犬の血しょう及び試験した犬の血しょうを評価した。試料を抽出した後で、ナルトレキソン及び内部標準の測定を妨げる内因性の化合物は血しょう中に存在しなかった。この方法は、直線性、正確さ、精度及び感受性で特徴付けられた。この方法の線形性の範囲は、犬血しょう中のナルトレキソンで0.5〜10ng/mLである。標準の逆算濃度と理論濃度との差が15%未満であるときに、精度が高い。検知の下限は0.5ng/mLである。犬の全ての薬物動力学的な試験試料は、この方法を使用して試験した。
【0047】
フェンタニールに関して犬を試験して、フェンタニールに対する反応がナルトレキソンによって鈍くなるかを調べた。ナルトレキソンが0.2ng/ml未満の循環濃度では、犬の呼吸への効果は、0.01、0.02及び0.04mg/kgのフェンタニールで観察された。静脈注射で使用した場合、意識のある犬では、フェンタニールは、0.5〜8mg/kgのモルヒネと同じ脳電図うつ状態をもたらした。続いてアヘン剤での試験を行って、標準対照の犬に最少の反応をもたらすのに必要とされるアヘン剤の量の増加を、週毎に測定した。この測定された投与量を、徐放性のナルトレキソンで処置した犬に与えた。このアヘン剤の試験では、4つのパラメータを測定した。これら4つのパラメータは、痛みに対する嫌悪性、注意力、呼吸速度及び瞳孔直径である。フェンタニールでのこれら一連の処置は、注意力レベル5に達するために、標準対照の犬で段々と多量の投与を必要とした。初めのフェンタニール投与量は50μgで、それぞれの週で投与量は連続的に、60、70、110、150、180、220、240及び280μgとなった。
【0048】
組成物F−1でのデータを以下にまとめている。
【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

(注)
犬のタイプの標準対照は、ナルトレキソンで処置していない標準対照の犬を示す。犬のタイプのF−1は、15mg/kgのナルトレキソン微細球体、つまり組成物F−1を投与した犬を示す。
注意力の尺度は、1が興奮、2が活動的、3が覚醒(立っている)、3.5が立っていることはできるが座りたがる、4が眠気を催しているが座っている、5が横たわっている状態を示している。
屈筋反射の尺度は、+が明らかな反射、Dが鈍い反射、−が無反射を示している。
【0051】
次の研究では人間の被験体で、複数の異なる配合物でのナルトレキソン放出特性及び異なる投与プロトコルに対する反応を調べた。
【0052】
【表6】

【0053】
人で使用するためのFDA標準に従って、上述のようにして微細球体を調製した。全ての反応体及び生成物を解析して、パッチの組成が適当であり、発熱性でなく、且つ人体で使用できることを確かめた。HPLC/MSを使用して、被験者の体内のナルトレキソンと6β−ナルトレキソールの両方について解析した。ナロキソンを内標準として使用して、エチルエーテル中で血しょう試料を抽出した。4日間にわたって、5つの標準曲線を分析した。日毎の又は同日の再現性、再注入安定性、卓上安定性、凍結/解凍安定性、冷却安定性、及び−20℃で4日間までの貯蔵安定性を測定した。0.50〜50ng/mLのナルトレキソン及び2〜100ng/mLの6β−ナルトレキソールで、直線性が得られた。ナルトレキソン及び6β−ナルトレキソールの測定限界は、それぞれ0.50ng/mL及び2.0ng/mLであった。精度/正確さ及び特殊性も測定した。
【0054】
使用した6つの組成物の組成及び特徴は以下に示している。
F−1 :目標含有率25%(実際の含有率17±3%)のナルトレキソンを伴うポリ(D,L−ラクチド)(内部粘度0.37dl/g)ポリマー。
F−1’:目標含有率50%(実際の含有率38%)のナルトレキソンを伴うポリ(D,L−ラクチド)(内部粘度0.37dl/g)ポリマー。
F−2 :目標含有率50%(実際の含有率40±3%)のナルトレキソンを伴うポリ(D,L−ラクチド)(内部粘度1.07dl/g)ポリマー。
F−3 :F−1及びF−2の微細球体が50:50の組み合わせ(ナルトレキソンの重量による)。
F−4 :目標含有率50%(実際の含有率40±3%)のナルトレキソンを伴うそれぞれF−1及びF−2で使用されるポリ(D,L−ラクチド)の90:10の組み合わせ。
【0055】
粒度分布は、それぞれのパッチの90体積%が50μm超で70μm未満である粒度分布ある。
【0056】
(臨床試料からの血中濃度解析)
人間の血しょう中のナルトレキソン及び6β−ナルトレキソールの解析を、HPLC/MSを使用して行った。ナロキソンを内標準として使用して、エチルエーテル中で血しょう試料を抽出した。4日間にわたって、5つの標準曲線を分析した。日毎の又は同日の再現性、再注入安定性、卓上安定性、凍結/解凍安定性、冷却安定性、及び−20℃で4日間までの貯蔵安定性を測定した。0.50〜50ng/mLのナルトレキソン及び2〜100ng/mLの6β−ナルトレキソールで、線形性が得られた。ナルトレキソン及び6β−ナルトレキソールの測定限界は、それぞれ0.50ng/mL及び2.0ng/mLであった。精度/正確さ及び特殊性も測定した。人間による全ての臨床薬物動力学の試験は、この方法を使用して評価した。
【0057】
配合物F−1’でのAUCデータの試験は、1日に投与される50mgの1つの錠剤から得られるAUCデータを、1つの錠剤を31日間にわたって毎日使用した場合にまで外挿した結果に基づいている。これを、5人の被験者のグループ(グループ3)で得られるAUCの値と比較した。ここでこのグループ3は、4mlでの一回の注入で微細球体配合物F−1’の300mgのマイクロカプセル化ナルトレキソンを投与されており、31日間にわたって血しょう濃度を測定している。
【0058】
経口投与とF−1配合物とでの、ナルトレキソン及び6β−ナルトレキソールの平均AUC濃度を以下に示している。
【0059】
【表7】

【0060】
(ナルトレキソン)
平均比は1.18(0.75〜2.9の範囲)である。
【0061】
(6β−ナルトレキソール)
平均比は0.17(0.09〜0.29の範囲)である。
【0062】
このデータは、活性ナルトレキソン成分への露出が、毎日50mgの錠剤を1ヶ月間にわたって飲むのと、1ヶ月に一回微細球体配合物F−1’を筋肉注射して1回に300mgのマイクロカプセル化ナルトレキソンを注入するのとで同様であることを示している。
【0063】
F−1’配合物及び錠剤の全体の薬物動力学パラメータを、以下の表にまとめている。
【0064】
【表8】

ここで、NALはナルトレキソン、6−βMETABは6β−ナルトレキソール代謝物である。
【0065】
F−1で処置した個々の被験者についての薬物動力学パラメータを以下にまとめている。
【0066】
【表9】

【0067】
F−1’での血しょう濃度の全てが、1〜4時間の間の初期最大値及び2〜3週間の間の第2の最大値を示している。初期のピークは、注入したときに微細球体の表面又はその近くのナルトレキソンが容易に利用されることを反映していると考えられる。注入されると、微細球体は流体を吸収し、これがナルトレキソンが通る気孔を形成して薬剤の連続的な供給を維持する。2〜3週間の間の第2のピークは、微細球体の生物分解を反映しており、初期の塊が分解されて、蓄積された箇所において露出されるナルトレキソンの表面積を比較的大きくし、ナルトレキソン血しょう濃度を一時的に高くしていると考えられる。投与後1ヶ月の間のナルトレキソンの連続的な放出は、蓄積されている注入箇所から血流を通してオピオイド受容体に達する薬剤の推進力を維持する。この推進力は、1ヶ月の投与間隔にわたって受容体を遮断することを確実にする。
【0068】
配合物F−1’の曲線データの下の面積の試験は、1ヶ月間にわたる薬剤の連続的な放出が行われること、及び1ヶ月に1度300mgの注入を行うこと又は毎日50mgを経口投与することによるナルトレキソンの作用がかなり同様であることを示している。
【0069】
このデータは以下のように特徴付けることができる。1つの50mg錠剤を摂取した後のAUCを、32日まで外挿した。これは、中毒の治療での通常投与量が50mg/日であるという仮定に基づいている。更に、従来の臨床的な研究で示されているように、1回の投与と複数回の投与の後でのナルトレキソンの薬物動力学的分布及び代謝が異なっていないとする仮定を使用した。F−1’を注入した後のAUC0〜32dayは、毎日50mgを32日間にわたって経口投与した場合のそれと同じである。経口投与の後の代謝物露出は、ナルトレキソン露出よりも22倍大きい。代謝物/ナルトレキソン露出の比はF−1’では3.5であり、経口投与の後のTlastは平均で8.9時間である。持続放出性配合物では、有効な濃度範囲で、血しょう中に一定の割合のナルトレキソンが存在している。
【0070】
追加のデータを、下記の表及び数値で示す。
【表10】

【0071】
この表は、31日間にわたるナルトレキソンの放出量が、最初に注入された全ナルトレキソンの大部分にあたることを示す。
【0072】
この結果から、生理学的に有効な量での長期間のナルトレキソンの供給が生体中で可能であることが明らかである。これによれば、毎日錠剤を飲む要求に関する指示遵守の問題を避けられる。また、これによれば、対象者が毎日錠剤を飲んでいるかを監視することが不要になる。対象者は薬物乱用の問題に取りかかりやすくなり、アルコール依存症の場合には対象者が抑制をしやすくなり、またヘロインから所望の幸福感を得なくなる。対象者はヘロインを使用する気を失い、またアルコール依存症の場合には比較的少量の飲酒で我慢できるので、相談がより効果的に行える。この様式では、対象者は、その家族及び社会に対する役割及び義務を果たすことができる。
【0073】
本発明の徐放性ナルトレキソンは、6β−ナルトレキソール代謝物に関する肝臓毒性の問題を減少させる。毎日の投与による大きい初期の代謝を避けること及び一定の比較的少ないナルトレキソン供給量を維持することによって、6β−ナルトレキソールの濃度が減少する。また、毎日錠剤を摂取する場合の高い初期ナルトレキソン濃度に起因する大きい初期代謝が避けられる。ナルトレキソンの必要量が減少し、1ヶ月間にわたって人体で維持するのに必要とされる薬剤の量が減少する。
【0074】
本明細書で言及した全文献及び特許明細書は、個々の文献又は特許明細書を特に及び個々に参照して本明細書の記載に含めるとの同じ程度に、ここで参照して本明細書の記載に含める。
【0075】
本発明は完全に説明されており、特許請求の範囲で示される本発明の範囲及び本発明の本質の範囲内で、当業者には多くの変更及び変形が明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
15〜50wt%のナルトレキソン遊離塩基、マトリックスとしてのポリ(D,L−ラクチド)、及び約3wt%未満のエチルアセテートを含有しており、ほ乳類に筋肉注射して投与したときに、28日間にわたって、生理学的に有効な濃度のナルトレキソンを提供してヘロイン及びアルコールの摂取を減少させることができ、且つ少なくとも90wt%の微細球体の直径が20〜100μmである、微細球体組成物。
【請求項2】
前記ナルトレキソンが15〜25wt%の量で存在し、且つ前記ポリ(D,L−ラクチド)の内部粘度が約0.3〜0.4dl/gである、請求項1に記載の微細球体組成物。
【請求項3】
前記ナルトレキソンが35〜45wt%の量で存在し、且つ前記ポリ(D,L−ラクチド)の内部粘度が約1.0〜1.1dl/gである、請求項1に記載の微細球体組成物。
【請求項4】
前記微細球体がマンニトールでコーティングされている、請求項1に記載の微細球体組成物。
【請求項5】
前記ポリ(D,L−ラクチド)が、異なる内部粘度のポリ(D,L−ラクチド)の混合物である、請求項1に記載の微細球体組成物。
【請求項6】
ナルトレキソンの重量分率及びポリ(D,L−ラクチド)の内部粘度の少なくとも一方に関して異なる微細球体の混合物である、請求項1に記載の微細球体組成物。
【請求項7】
前記ナルトレキソン及びポリ(D,L−ラクチド)のエチルアセテート溶液を、ポリ(ビニルアルコール)の水溶液に導入し、そして得られた微細球体を、水でエチルアセテートを抽出して分離することによって、前記微細球体が調製されている、請求項1に記載の微細球体組成物。
【請求項8】
35〜45wt%のナルトレキソン及びポリ(D,L−ラクチド)マトリックスを含む微細球体組成物であって、4週間にわたって、少なくとも約1ng/mlの治療力のある供与量を維持しながら、放出される全ナルトレキソンの約10〜40%のナルトレキソンを1週間当たりに被験者の体内で放出することができる、微細球体組成物。
【請求項9】
放出される全ナルトレキソンの約20%超が放出されるのが、前記4週間の期間のうちの1週間のみである、請求項8に記載の微細球体組成物。
【請求項10】
請求項1及び8のいずれかに記載の微細球体組成物、カルボキシメチルセルロース、及びマンニトールを含有する、注入用配合物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物を保持しているシリンジ。
【請求項12】
ヘロイン及びアルコールの摂取を抑制する量の、有効量の請求項1に記載の微細球体組成物を筋肉注射で投与し、それによってヘロイン及び/又はアルコールの摂取量を減少させること、
を含む、ヘロイン及びアルコールの少なくとも一方の乱用者によるヘロイン及びアルコールの摂取量を減少させる方法。
【請求項13】
前記投与が2〜4mlの投与を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも有効供与量で28日間を超える期間にわたってナルトレキソンを継続して放出する、有効供与量の請求項1に記載の微細球体組成物を投与すること;
ナルトレキソン濃度が有効供与量未満に低下する前に、前記微細球体組成物の2回目の投与を行って、前記初めの有効量供与とこの2日目の有効量投与の組み合わせが、更に少なくとも28日間の期間にわたって有効供与量のナルトレキソンを提供すること;並びに
前記投与を反復して、先に投与された前記微細球体組成物と後で投与された微細球体組成物との両方からナルトレキソンを放出させて、有効供与量のナルトレキソンを維持すること;
を含む、ヘロイン及びアルコールの少なくとも一方乱用者によるヘロイン及びアルコールの摂取量を減少させる方法。
【請求項15】
前記投与が2〜4mlの投与を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ヘロイン及びアルコールの摂取を抑制する量の、有効供与量の請求項8に記載の微細球体組成物を筋肉注射によって投与し、それによってヘロイン及び/又はアルコールの摂取量を減少させること、
を含む、ヘロイン及びアルコールの少なくとも一方の乱用者によるヘロイン及びアルコールの摂取量を減少させる方法。

【公開番号】特開2010−31036(P2010−31036A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−252183(P2009−252183)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【分割の表示】特願2000−610480(P2000−610480)の分割
【原出願日】平成12年4月8日(2000.4.8)
【出願人】(506123014)ブルックウッド ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】