説明

注入材の施工方法

【課題】浸透性が良く、優れた地山改良効果を奏することができる注入材の施工方法の提供。
【解決手段】予めポゾラン物質と水を含有するA材と、予めカルシウム含有物質と水を含有するB材を、別々に注入する注入材の施工方法。A材が予め分散剤を含有する該注入材の施工方法。ポゾラン物質が球状シリカである該注入材の施工方法。カルシウム含有物質が消石灰である該注入材の施工方法。B材、A材の順に注入する該注入材の施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注入材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
注入材としては、以下の製造方法が知られている(特許文献1〜4)。
【特許文献1】特開昭62−84177号公報
【特許文献2】特開2007−217453号公報
【特許文献3】特開2006−117887号公報
【特許文献4】特開平6−330036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、特許文献1〜4よりも、止水性を改良するものである。
【0004】
本発明は、浸透性が良く地山改良効果に優れた注入材の施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、予めポゾラン物質と水を含有するA材と、予めカルシウム含有物質と水を含有するB材を、別々に注入する注入材の施工方法であり、A材が予め分散剤を含有する該注入材の施工方法であり、ポゾラン物質が球状シリカである該注入材の施工方法であり、カルシウム含有物質が消石灰である該注入材の施工方法であり、B材、A材の順に注入する該注入材の施工方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の注入材の施工方法は浸透性が良く、優れた地山改良効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ポゾラン物質として、フライアッシュ、シリカヒューム、及び球状シリカ等のシリカ質物質等が挙げられる。これらの中では、浸透性の点で、シリカヒューム及び/又は球状シリカが好ましく、球状シリカがより好ましい。球状シリカとしては、平均粒径1μm以下に粉砕した原料珪石を高温の火炎中で溶融し、球状にした球状シリカが好ましい。
【0008】
予めポゾラン物質と水を含有するA材は水に予め分散して製造する。
【0009】
A材の水の使用量は、ポゾラン物質100質量部に対して、100〜2000質量部が好ましく、200〜600質量部がより好ましい。水量が少ないと浸透性が悪くなり好ましくない傾向がある。水量が多いと強度が弱くなり好ましくない傾向がある。
【0010】
又、分散性を高めるためA材に分散剤を併用することも可能である。分散剤として、市販のセメント減水剤が使用できる。分散剤の使用量は、ポゾラン物質100質量部に対して、0.5〜3質量部が好ましく、1〜2質量部がより好ましい。分散剤の量が少ないと浸透性が悪くなり好ましくない傾向がある。分散剤の量が多いと強度が弱くなり好ましくない傾向がある。
【0011】
予めカルシウム含有物質と水を含有するB材は、カルシウム含有物質を水に予め分散又は溶解して製造する。
【0012】
カルシウム含有物質としては、セメント、消石灰、生石灰、石膏等の無機物質、ギ酸カルシウム等の有機酸のカルシウム塩等が挙げられる。これらの中では、浸透性の点で、消石灰が好ましい。
【0013】
カルシウム含有物質の使用量は水100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。カルシウム含有物質の使用量が少ないと強度が弱くなり好ましくない傾向がある。カルシウム含有物質の使用量が多いと浸透性が悪くなり好ましくない傾向がある。
【0014】
又、分散性を高めるためB材に分散剤を併用することも可能である。
【0015】
A材とB材の混合比率は地山の条件によって異なるので特に限定されるものではない。A材とB材の混合比率は質量比で、2:1〜1:2が好ましく、1:1がより好ましい。
【0016】
A材を先に注入する場合、A材は設計量を注入した後、B材を圧力上昇が認められるまで注入すればよい。又、逆にB材を先に注入する場合も同様な方法で注入すればよい。
【0017】
本発明は、A材とB材からなる注入材において、A材とB材をそれぞれ別々に注入するのが特徴である。注入する順序はB材を先に注入した後、A材を注入する方法が、地山の改良効果が大きく、地山の透水係数を小さくできる点で、好ましい。
【0018】
注入材は、スクイズポンプやプランジャーポンプ等の通常のグラウトポンプで注入できる。又、空気で圧送することもできる。
【実施例】
【0019】
実施例1
平均粒径1μm以下に粉砕した原料珪石を高温の火炎中で溶融し、球状シリカを製造した。球状シリカ100質量部と、水400質量部を混合してA材を製造した。一方、消石灰(試薬)1質量部と、水100質量部を混合してB材を製造した。A材とB材を表1に示す順序に従い、1.5mPaの圧力で注入した。注入材の透水係数と圧縮強度を測定し、表1に示した。A材とB材を、質量比で等量ずつ混合した。
【0020】
(評価方法)
透水係数:地盤工学会基準のJGS0831に準ずる注入装置を用いた。50cmの試料槽に7号珪砂を充填し、注入試験を行った。1日後、水を用いて透水係数を測定した。
強度:透水係数を測定した試料槽から硬化物を取り出し、長さ10cmに切断し、アムスラー型圧縮試験機で圧縮強度を測定した。
【0021】
【表1】



【0022】
実験No.2のA材のみ注入の場合と実験No.6のB材のみ注入の場合は、何も注入していない実験No.1とほぼ同等の透水係数であり、浸透性が劣っていた。実験No.5のA材とB材を同時注入した場合は、注入材が直ちに硬化してしまい、注入ができなかった。一方、本願発明の実験No.3、本願発明の実験No.4は、実験No.1より透水係数が小さく、止水性や浸透性が優れ、圧縮強度が優れていた。特にB材を先に注入した実験No.4は、止水性や浸透性の効果が顕著であった。
【0023】
実施例2
球状シリカ100質量部、水400質量部、表2に示す量の分散剤を混合してA材を製造し、A材とB材を実験No.3に示す順序に従い、注入し、注入材の透水係数と圧縮強度を測定したこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を、表2に示した。ここで、FT−500はナフタリン系の減水剤であり、FT−80はナフタリン系の減水剤であり、FT−700NLはメラミン系の減水剤である。
【0024】
【表2】



【0025】
分散剤を適量使用することにより、実験No.3より透水係数が小さく、止水性や浸透性が優れ、圧縮強度が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の注入材の施工方法は、止水性、浸透性、強度発現性が大きい。本発明の注入材の施工方法は地山改良の他に、コンクリートのひび割れ補修の用途にも適応できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予めポゾラン物質と水を含有するA材と、予めカルシウム含有物質と水を含有するB材を、別々に注入する注入材の施工方法。
【請求項2】
A材が予め分散剤を含有する請求項1記載の注入材の施工方法。
【請求項3】
ポゾラン物質が球状シリカである請求項1又は2記載の注入材の施工方法。
【請求項4】
カルシウム含有物質が消石灰である請求項1又は2記載の注入材の施工方法。
【請求項5】
B材、A材の順に注入する請求項1又は記載の注入材の施工方法。

【公開番号】特開2009−299291(P2009−299291A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152111(P2008−152111)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】