説明

注出容器

【課題】煩雑な操作を強要することなく、1回の操作により確実な注出を可能にする使い勝手の良好な、新規な注出器を提供する。
【解決手段】容器本体の口部に装着されるシェル部材を有し、シェル部材から露出する可動栓を引き上げ可能な注出器と、容器本体の口部に着脱可能に取り付けられるキャップとを備え、キャップの天壁から当該キャップを閉じたときに可動栓を取り囲む周壁33を垂下させると共に、周壁33の内面に、キャップを閉じたときに可動栓の外面から膨出するリップに着脱可能に係合する複数のリブ31aを設け、リブ31aはリップが乗り上がって接触する先端部位31bと、先端部位31bに連なってリップとの係合が解除される位置31eまでリップが接触する案内部位31cとを有し、案内部位31cの周方向接触幅Wcが先端部位31bの周方向接触幅Wbよりも小さくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に装着されたシェル部材から露出する可動栓を引き上げ可能な注出器を備え、当該可動栓の引き上げをキャップの取り外しに同期させた注出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
注出容器では、可動栓の先端周りに、外向きに膨出する環状の係合部(第一係合部)を設け、この係合部をキャップの裏面に設けた被係合部(第二係合部)に着脱可能に係合させることで、キャップの取り外しと同時に、可動栓を引き上げるように構成するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3759428号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記係合は一般的に、可動栓に設けた係合部に対してキャップに設けた被係合部をアンダーカット嵌合(段差による引っ掛かりを伴う嵌合)させる構成によって実現されるものであるところから、キャップの被係合部が可動栓の係合部から外れるときには、互いを弾くように外れるため、その反力によって折角引き上げた可動栓を再び押し下げてしまうことがあった。
【0004】
こうした可動栓の下げ戻しは、可動栓を確実に引き上げることで実現される流路形成を妨げるため、折角、キャップを開けると同時に可動栓を引き上げたにもかかわらず、それとは別に再度の引き上げという煩雑な操作を使用者に強制することになる。
【0005】
これに対し、可動栓に対してシェル部材で抵抗を与えて当該可動栓の上下動を規制する方法も考えられるが、この場合、可動栓本来の動作(内容物の貯留及び注出の切り換えを司る上下動)が損なわれてしまうという新たな問題が生じる。
【0006】
本発明の目的とするところは、可動栓に設けた第一係合部にキャップの裏側に設けた第二係合部を着脱可能に係合させることで、キャップの取り外しと同時に可動栓を引き上げる構成の注出容器において、使用者に煩雑な操作を強要することなく、1回の操作により確実な注出を可能にする使い勝手の良好な、新規な注出容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の注出容器は、口部を有しその内側に内容物が充填される容器本体と、
この容器本体の口部に装着されるシェル部材を有し、当該シェル部材から露出する可動栓を引き上げ可能な注出器と、
この注出器の上側に配置される天壁を有し、容器本体の口部に着脱可能に取り付けられるキャップとを備え、
このキャップの天壁から当該キャップを閉じたときに可動栓を取り囲む周壁を垂下させると共に、当該周壁の内面に、当該キャップを閉じたときに可動栓の外面から膨出する第一係合部に着脱可能に係合する第二係合部を設け、キャップの取り外しと同時に、可動栓を引き上げる注出容器であって、
第二係合部は、キャップの取り外しに際して、第一係合部が乗り上がって接触する先端部位と、この先端部位に連なって第一係合部との係合が解除される位置まで当該第一係合部が接触する案内部位とを有し、この案内部位における周方向の接触幅が先端部位における周方向の接触幅よりも小さくなるようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
案内部位の接触面を先端部位の接触面積よりも小さく構成する場合、案内部位としては、先端部位から軸線方向に沿って先細りになるものや、先端部位から当該先端部位よりも狭い幅で軸線方向に沿って平行に延在するもの、又は、軸線方向に対して傾斜するもの等が挙げられる。
【0009】
また、第二係合部は、キャップを取り外す際に、第一係合部が第二係合部を乗り越えて互いの係合が解除される位置を、周壁の周方向に沿って異なるようにして当該係合が解除されるタイミングを周壁の周方向に沿って異ならせるように構成することができる。
【0010】
当該係合が解除されるタイミングを異ならせるにあっては、第一係合部が第二係合部を乗り越えて互いの係合が解除される位置が、周壁の周方向に沿って異なればよいが、本発明に従えば、周壁の周方向に沿って螺旋状の軌跡を描くように構成されたものとすることができる。
【0011】
キャップに設けた第二係合部としては、可動栓を取り囲むように天壁から垂下された周壁の内面に沿って軸線周りに環状に膨出させたリブや、当該周壁の内面に沿って軸線周りに間隔を空けて膨出させた複数のリブ等が挙げられる。
【0012】
但し、第二係合部を周壁の内面に沿って連続する環状のリブとする場合、また、周壁の内面に沿って軸線周りに間隔を空けて膨出させる場合には、可動栓に設けた第一係合部との係合が確実に実現されるように配置するのは勿論である。加えて、第二係合部が複数のリブで構成されている場合、かかるリブの間隔は、適宜調整することができる。
【0013】
これに対し、可動栓に設ける第一係合部としても、先端注出口(軸線)周りに環状に膨出させたものや、先端注出口(軸線)周りに間隔を空けて膨出させたもの等が挙げられる。特に、先端注出口(軸線)周りに間隔を空けて膨出させる場合には、キャップに設けた第二係合部との係合が確実に実現されるように配置するのは勿論である。
【0014】
キャップは、容器本体から上向きに外す構成であれば、容器本体に対しては、螺着させたものでも、着脱可能にアンダーカット嵌合させたものでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、第二係合部が、キャップの取り外しに際して、第一係合部が乗り上がって接触する先端部位と、この先端部位に連なって第一係合部との係合を解除する位置まで当該第一係合部が接触する案内部位とを有し、この案内部位における周方向の接触幅が先端部位における周方向の接触幅よりも小さくなるようにしたため、キャップの引き上げに伴う可動栓の引き上げ後、当該可動栓の第一係合部がキャップの第二係合部を乗り越えて互いの係合が解除される際に、かかる係合の解除前に、キャップの取り外し中に生じる摩擦力を予め低下させておくことができる。
【0016】
このため、かかる係合の解除動作に起因した反力により、第一係合部が第二係合部によって下向きに弾かれる現象を抑制することができるので、第一係合部が第二係合部によって下向きに弾かれることで、再び押し下げられることはない。
【0017】
即ち、本発明によれば、キャップの第二係合部を可動栓の第一係合部に係合させることでキャップの取り外しと同時に可動栓を引き上げても、当該係合の解除に伴い可動栓が再び押し下げられることがないため、可動栓を使用者に再び引き上げさせるような煩雑な操作を強要することなく、1回の操作により確実な注出を可能にすることができる。従って、本発明によれば、使い勝手の良好な、新規な注出容器を提供することができる。
【0018】
また、キャップに設けた第二係合部に関し、キャップを取り外す際に、可動栓に設けた第一係合部が第二係合部を乗り越えて互いの係合が解除される位置を、可動栓を取り囲む周壁の周方向に沿って異なるようにして当該係合が解除されるタイミングを周壁の周方向に沿って異ならせるように構成すれば、案内部位により摩擦力を軽減することに加え、キャップの引き上げに伴う可動栓の引き上げ後、当該可動栓の第一係合部がキャップの第二係合部を乗り越えて互いの係合が解除されるときに、当該第一係合部が第二係合部によって下向きに弾かれる現象が時系列的に分散されるため、第一係合部が第二係合部によって下向きに弾かれることに起因した可動栓の押し下げを更に抑制することができる。
【0019】
加えて、第二係合部として、可動栓を取り囲むように周壁の内面に沿って軸線周りに間隔を空けて配置された複数のリブを採用すれば、キャップの取り外し中に生じる摩擦力を効果的に抑制することができるので、可動栓の押し下げを抑制することに有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の注出容器を詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一形態である注出容器を側面から示す要部断面図である。また、図2は、同形態に係る注出器10を、キャップ30を取り外した状態で示す要部断面図である。
【0022】
符号11は、図1に示すように、容器本体20の口部21の外側に装着される装着筒11aを有し当該装着筒11aから肩部11bを介して上方に起立する筒状部11cが形成されたシェル部材である。
【0023】
符号12は、シェル部材11の内側に嵌合して当該シェル部材11と口部21とを仕切る仕切壁12aを有する中栓である。仕切壁12aからは、シャフト部12bが軸線Oに沿って起立する。
【0024】
また、仕切壁12aには、軸線O周りに間隔を空けて、容器本体20の倒立によって当該容器本体20内の内容物をシェル部材11の内側に供給する3つの貫通孔(以下、「供給孔」という)A1が形成されている。
【0025】
なお、本形態では、仕切壁12aの裏面(下面)に、口部21の内側を垂下する筒状部12dが一体に設けられている。この筒状部12dの外面は、口部21の内面との間を液密状態に保持する。
【0026】
また、本発明によれば、中栓12がシェル部材11の内側に嵌合することで、シェル部材11と中栓12とを一体化させているが、本形態では、仕切壁12aの外縁上部に軸線O周りに環状の嵌合膨出部12fを形成し、この嵌合膨出部12fを、シェル部材11の筒状部11cとの連結部内側に環状に設けられた嵌合突起11dにアンダーカット嵌合(段差による引っ掛かりを伴う嵌合)させることで、かかる一体化を実現している。
【0027】
符号13は、筒状周壁13aで形作られた筒体からなる可動栓である。可動栓13を形作る筒状周壁13aは、シャフト部12bを取り囲む大径の可動栓基部13a1を有し、この可動栓基部13a1の内面は、シャフト部12bとの間に供給孔A1に通じる隙間A3を形成する。
【0028】
これに対し、可動栓基部13a1の外面からは、シェル部材11の筒状部11cの内面全周に亘って、当該内面に向かって膨出する環状のシール部13b1,13b2が形成されている。これにより、シール部13b1,13b2は、筒状部11cとの間の液密性を確保すると共に、当該筒状部11cに沿った可動栓13のスムースな上下動も確保する。
【0029】
更に、可動栓基部13a1には、当該可動栓基部13a1よりも小径な可動栓本体部13a2が一体に設けられている。可動栓本体部13a2の内側には、先端注出口A2に通じさせる流路Cが形成されている。
【0030】
なお、筒状部11cの内面には、可動栓基部13a1が摺動可能に接触するガイド部11fが形成されている。ガイド部11fは、軸線O周りに間隔を空けて複数設けられており、可動栓13を軸線Oに沿って上下動させたときのガタツキを抑制し、スムースな動作を実現する。
【0031】
また、可動栓13の内側には、可動栓基部13a1と可動栓本体部13a2との内径差によって、軸線O周りに内向きに突出する環状段差13cが形成されている。この環状段差13cは、シャフト部12bの先端(以下、「シャフト部先端」という)12cと接触することで、供給口A1と先端注出口A2との間を封止すると共に、可動栓13の下死点を規定する。可動栓13の先端(以下、「可動栓先端という」)13eは、当該可動栓13が下死点にある状態でも、図1等に示すように、シェル部材11の筒状部11cを通って外界に露出する。
【0032】
また、可動栓13の外側には、図2に示すように、可動栓基部13a1と可動栓本体部13a2との外径差によって、軸線O周りに外向きに突出する環状段差13dが形成されている。
【0033】
これに対し、筒状部11cには、その先端を軸線Oに向かって折り返してなる環状の折り返しフランジ11eが形成されている。この折り返しフランジ11eは、可動栓13の環状段差13dと接触することで、可動栓13の上死点を規定する。これにより、可動栓13が上死点に達しても、当該可動栓13は、図2等に示すように、シェル部材11から抜け落ちることがない。
【0034】
これにより、本形態では、図1に示すように、可動栓13を押し下げたときには、環状段差13cがシャフト部先端12cと接触することで、供給孔A1からの内容物が先端注出口A2から注出されるのを阻止する一方、図2に示すように、可動栓13を引き上げたときには、環状段差13cがシャフト部先端12cから離間することで、供給孔A1からの内容物を先端注出口A2から注出させることができる。
【0035】
なお、本形態では、装着筒11aを口部21に装着するに際し、口部21の外面に、軸線O周りに環状の係止突起22を設け、当該係止突起22を装着筒11aの内面に設けた突起11gにアンダーカット嵌合させることで固定している。
【0036】
また、可動栓13には、その先端注出口A2周りに、外向きに環状に膨出する第一係合部であるリップ13hが設けられている。本形態では、リップ13hをキャップ30の裏側から垂下された周壁33内面に設けた第二係合部31である複数のリブ31aに着脱可能にアンダーカット嵌合させることで、図2に示すように、キャップ30の取り外しと同時に、可動栓13を引き上げるように構成している。
【0037】
キャップ30は、図1に示すように、注出器10の上側に配置される天壁32を有し、この天壁32からは、同図に示すように、当該キャップ30を閉じたときに可動栓13を取り囲む周壁33が一体に垂下している。
【0038】
図3(a),(b)はそれぞれ、第1の形態たるリブ31aを有する周壁33をその内側から展開した状態で示す要部展開図及び、同リブ31を軸線O周りで一部立体的に示す要部断面図である。
【0039】
リブ31aは、図3(a)に示すように、周壁33の内面の一部を軸線O周りに間隔を空けて膨出させてなる(図面左右のリブ31aは両者を合せて1つのリブ31aを構成する)。リブ31aは、リップ13hを下側から着脱可能に引っ掛けて当該リップ13hを係止する係止端eを有する。
【0040】
これにより、リブ31aは、図1に示すように、キャップ30を閉じたときに可動栓13のリップ13hに着脱可能にアンダーカット嵌合する。
【0041】
また、係止端eには、リップ13hが乗り上がって接触する先端部位31bが繋がる。先端部位31bには、図3(b)に示すように、この先端部位31bに連なってリップ13hとの係合を解除する位置31eまで当該リップ13hが接触する案内部位31cが連なる。案内部位31cは、先端部位31bよりも幅が狭く、軸線Oに沿って上下方向に延在する。
【0042】
これにより、リブ31aは、図3(a)に示す如く、先端部位31bと案内部位31cとでT字形を形成してなる。即ち、図4(a)にて、例示的に1つのリブ31aに示すように、案内部位31cにおける周方向(軸線O周り)の接触幅Wcが先端部位31bにおける周方向(軸線O周り)の接触幅Wbよりも小さくなるように構成されている。
【0043】
これにより、リップ13hがリブ31aを乗り越えて当該リブ31との係合が解除される位置は、案内部位31cの下端位置31eとなる。
【0044】
更に詳細には、本発明に従う第二係合部31は、図3(a)に示すように、周壁33の内面に沿って、軸線O周りに間隔L1〜L4を空けて断続的に設けられた複数のリブ31aからなる。なお、本形態では、間隔L1〜L4を等しくしているが、これら間隔L1〜L4は適宜設定することができる。
【0045】
かかる構成によれば、キャップ30を回転させながら引き上げると、これに併せて、リップ13hでは先ず、リブ31aの係止端eを越えて先端部位31bに乗り上げたのち、先端部位31bよりも接触面積の小さい案内部位31c上を摺動しながら下端位置31eに至ることで、リブ31aでの係合が解除されたときには、可動栓13を上死点まで引き上げていることなる。
【0046】
本形態では、リブ31aが、リップ13hが乗り上がって接触する先端部位31bと、この先端部位31bに連なって下端位置31eまでリップ13hが接触する案内部位31cとを有し、この案内部位31cの接触幅Wcが先端部位31bの接触幅Wbよりも小さくなるように構成されているので、リップ13hがリブ31aを乗り越えてかかる係合を解除する前に、キャップ30の取り外し中に生じる摩擦力を予め低下させておくことができる。
【0047】
このため、かかる摩擦力に起因した反力により、リップ13hがリブ31aによって下向きに弾かれる現象を抑制することができるので、リップ13hがリブ31aによって下向きに弾かれることで、可動栓13が再び押し下げられることはない。
【0048】
即ち、本形態によれば、リブ31aをリップ13hに係合させることでキャップ30の取り外しと同時に可動栓13を引き上げても、当該係合の解除に伴い可動栓13が再び押し下げられることがないため、可動栓13を使用者に再び引き上げさせるような煩雑な操作を強要することなく、1回の操作により確実な注出を可能にすることができる。従って、本形態によれば、使い勝手の良好な、新規な注出容器を提供することができる。
【0049】
なお、リブ31aの各係止端eは、図3(a)に示すように、周壁33の下端33eからの高さHeを同一とするものである。即ち、本形態では、キャップ30を締めるときには、各リブ31aは、同一のタイミングで係止される。また、リブ31aの各下端31eも、同図に示すように、周壁33の下端33eからの高さHを同一とするものである。即ち、本形態では、キャップ30を取り外すときには、各リブ31aの係合は、同一のタイミングで解除される。
【0050】
更に、図4(a),(b)はそれぞれ、第2の形態たるリブ31を有する周壁33をその内側から展開した状態で示す要部展開図及び、同リブ31を軸線O周りで一部立体的に示す要部断面図である。なお、以下の説明において、図1〜3と同一の部分は、同一符号をもって、その説明を省略する。
【0051】
本形態では、図4(a)に示すように、先端部位31bと案内部位31cとをT字形とすることで、案内部位31cにおける周方向の接触幅Wcが先端部位31bにおける周方向の接触幅Wbよりも小さくなるように構成していることに加え、案内部位31cを、周壁33の内面に沿って軸線O方向に対して傾斜させている。
【0052】
なお、上述した第1及び第2の形態では、先端部位31bと案内部位31cとの間を、先端部位31b及び案内部位31cの厚さ(突出高さ)を等しくすることで同一平面として構成したが、先端部位31bと案内部位31cとの間を段差としたり、案内部位31cを周壁33の下端33eに向かうに従って当該周壁33の内面に接近するように傾斜させてもよい。
【0053】
次に、本形態の作用を説明する。
【0054】
本形態では、図1に示す状態からキャップ30を外すべく、当該キャップ30を回して引き上げると、キャップ30に設けたリブ31aが可動栓13のリップ13hに引っ掛かっている間は、可動栓13もいっしょに引き上がる。更にキャップ30を回すと、リップ13hがリブ31aの係止端eを越えて先端部位31bに乗り上がり、先端部位31bよりも接触面積の小さい案内部位31c上を摺動する。
【0055】
更にキャップ30を回すと、リップ13hが接触面積の小さい案内部位31c上を摺動しながら下端位置31eに至ることで、リブ31aとの引っ掛かりは外れる。このため、最終的には、図2に示すように、可動栓13を上死点まで引き上げた後、当該係合が解除されることに伴い可動栓13が押し下げられることなく、キャップ30は容器本体20の口部21から外れる。
【0056】
この引き上げで、当該可動栓13は、図2に示すように、供給口A1を先端注出口A2に通じさせる。これにより、その先端排出口A2が下向きになるように、容器本体20ごと倒立させて振れば、容器本体20の内容物は、その口部21から供給孔A1を経て先端注出口A2から注出させることができる。
【0057】
なお、本発明に従えば、キャップ30に係るリブ31aは、少なくとも2つであればよいが、リブ31aの個数を増やせば、可動栓13に対してキャップ30を強固に係合させることができる。
【0058】
また、本形態では、可動栓13の押し下げに関しても、キャップ30を締めたときに、図1に示すように、キャップ30に設けたリブ31aがリップ13hを介して可動栓13の先端13eを押し下げるように構成している。
【0059】
更に、リブ31aは、キャップ30を取り外す際に、リップ13hが乗り越えて互いの係合が解除される位置31eを、周壁33の周方向に沿って異なるようにして当該係合が解除されるタイミングを周壁33の周方向に沿って異ならせるように構成することもできる。
【0060】
図5(a),(b)はそれぞれ、第3の形態たるリブ31を有する周壁33をその内側から展開した状態で示す要部展開図及び、同リブ31を軸線O周りで一部立体的に示す要部断面図である。
【0061】
第3の形態たるリブ31aは、図5(a)に示すように、図面向かって左側から、第1リブ31a1、第2リブ31a2、第3リブ31a3及び第4リブ31a4の4つのリブからなる。
【0062】
リブ31a1〜31a4はそれぞれ、図5(a)に示すように、周壁33の内面に沿って、軸線O周りに間隔L1〜L4を空けて断続的に設けられている。なお、本形態では、間隔L1〜L4を等しくしているが、これら間隔L1〜L4は適宜設定することができる。
【0063】
第1リブ31aの下端位置31e1は、周壁33の下端33eからの高さH1が最も高く、それから周壁33の周方向(図面では左側)に向かって順次、低くなっている。即ち、第2リブ31a2の下端位置31e2は、その高さH2が第1リブ31a1よりも低く(H2<H1)、第3リブ31a3の下端位置31e3は、その高さH3が第2リブ31a2よりも低く(H3<H2)、更に、第4リブ31a4の下端位置31e4は、その高さH4が第3リブ31a3よりも低く(H4<H3)構成されている。
【0064】
これにより、本形態に係るリブ31a1〜31a4の下端位置31e1〜31e4は、周壁33の内側にて、この周壁33の周方向に沿って軸線O周りに螺旋状の軌跡を描くように構成されたものとなる。
【0065】
かかる構成によれば、キャップ30を回転上昇させると、これに併せて、リップ13hでは先ず、第1リブ31a1との係合が解除されるが、このとき、リップ13hは、依然として、残りのリブ31a2〜31a4で保持されている。更に、キャップ30が回転させると、第2リブ31a2との係合が解除されるが、このとき、残りの第3リブ31a3及び第4リブ31a4では依然として、リップ13hを保持する。
【0066】
以下、キャップ30が取り外されるまで、第3リブ31a3での係合及び第4リブ31a4での係合が順次異なるタイミングで解除され、結果的に、第4リブ31a4での係合が解除されたときには、可動栓13を上死点まで引き上げていることなる。
【0067】
本形態では、案内部位31c1〜31c4により摩擦力が軽減されることに加え、キャップ30に設けた複数のリブ31a1〜31a4の下端位置31e1〜31e4をそれぞれ、周壁33の周方向に沿って異なるようにして当該係合が解除されるタイミングを周壁33の周方向に沿って異ならせるように構成したことで、キャップ30の引き上げに伴う可動栓13の引き上げ後、リブ31aがリップ13hを乗り越えて互いの係合が解除されるときに、リップ13hがリブ31aによって下向きに弾かれる現象が時系列的に分散されるため、リップ13hがリブ31aによって下向きに弾かれることに起因した可動栓13の押し下げを更に抑制することができる。
【0068】
加えて、本形態の如く、第二係合部31として、可動栓13を取り囲むように周壁33の内面に沿って軸線O周りに間隔を空けて配置された複数のリブ31aを採用すれば、キャップ30の取り外し中に生じる摩擦力を効果的に抑制することができるので、可動栓13の押し下げを抑制することに有効である。
【0069】
なお、リブ31a1〜リブ31a4の各係止端e1〜e4は、図5(a)に示すように、周壁33の下端33eからの高さHeを同一とするものである。即ち、本形態では、キャップ30を締めるときには、各リブ31a1〜31a4は、同一のタイミングで係止される。
【0070】
加えて、本形態では、案内部位31c1〜c4の軸線Oに対する寸法を変更することで、リブ31aの下端位置eの高さH1〜H4を規定している。更に詳細には、リブ31aの下端位置eの高さH1〜H4に反比例するように、案内部位31c1〜c4の軸線Oに対する寸法を延長させている。この場合、第4リブ31a4の係合が解除されるまで、確実な嵌合強度を確保することができる。
【0071】
上述したところは、本発明の一形態を示したに過ぎず、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。例えば、可動栓のリップは、その先端周りに設けられているが、その位置は適宜変更することができる。また、キャップに配置されるリブの個数やその配置間隔も適宜変更することができる。更に、可動栓の外観形状は、本形態の如くの円筒形状ではなく、角形状とすることもできる。また、キャップ天壁32から垂下される周壁33を可動栓13の先端注出口A2内に挿入可能に構成し、該周壁33外面に第二係合部、及び可動栓13の筒状周壁13a内面に第一係合部を設けることや、可動栓13側に前記第二係合部(上下反転状態)を設け、キャップ側に前記第一係合部を設けることも可能である。加えて、各形態に採用された各構成はそれぞれ、互いに適宜組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、可動栓の引き上げで、容器本体内の内容物を注出可能とする注出容器であれば、例えば、可動栓の引き上げ操作に次いで容器本体を倒立させることで、容器本体からの内容物を一定量だけ計量した後、当該可動栓の押し下げ操作により、かかる計量済みの内容物を小出しに注出することができる計量注出容器に採用することができ、その内容物には、例えば、育毛剤等の薬液や化粧液等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一形態である注出容器を側面から示す要部断面図である。
【図2】同形態を、キャップを取り外した状態で示す要部断面図である。
【図3】(a),(b)はそれぞれ、本発明に従う第1の形態たるリブを有する周壁をその内側から展開した状態で示す要部展開図及び、同リブを軸線周りで一部立体的に示す要部断面図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ、本発明に従う第2の形態たるリブを有する周壁をその内側から展開した状態で示す要部展開図及び、同リブを軸線周りで一部立体的に示す要部断面図である。
【図5】(a),(b)はそれぞれ、本発明に従う第3の形態たるリブを有する周壁をその内側から展開した状態で示す要部展開図及び、同リブを軸線周りで一部立体的に示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0074】
10 注出器
11 シェル部材
11a 装着筒
11b 肩部
11c 筒状部
11d 嵌合突起
11e 折り返しフランジ
11f ガイド部
11g 突起
12 中栓
12a 仕切壁
12b シャフト部
12c シャフト部先端
13 可動栓
13a 可動栓筒状周壁
13a1 可動栓基部
13a2 可動栓本体部
13b 環状シール部
13c 内側環状段差
13d 外側環状段差
13e 可動栓先端
13h 係合用リップ(第一係合部)
20 容器本体
21 容器本体口部
22 係止突起
30 キャップ
31 第二係合部
31a リブ
31a1 第1リブ
31a2 第2リブ
31a3 第3リブ
31a4 第4リブ
31b 先端部位
31c 案内部位
32 天壁
33 周壁
1 供給口
2 先端注出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部を有しその内側に内容物が充填される容器本体と、
この容器本体の口部に装着されるシェル部材を有し、当該シェル部材から露出する可動栓を引き上げ可能な注出器と、
この注出器の上側に配置される天壁を有し、容器本体の口部に着脱可能に取り付けられるキャップとを備え、
このキャップの天壁から当該キャップを閉じたときに可動栓を取り囲む周壁を垂下させると共に、当該周壁の内面に、当該キャップを閉じたときに可動栓の外面から膨出する第一係合部に着脱可能に係合する第二係合部を設け、キャップの取り外しと同時に、可動栓を引き上げる注出容器であって、
第二係合部は、キャップの取り外しに際して、第一係合部が乗り上がって接触する先端部位と、この先端部位に連なって第一係合部との係合が解除される位置まで当該第一係合部が接触する案内部位とを有し、この案内部位における周方向の接触幅が先端部位における周方向の接触幅よりも小さくなるようにしたことを特徴とする、注出容器。
【請求項2】
請求項1において、案内部位は、軸線方向に沿って平行に延在するものであることを特徴とする、注出容器。
【請求項3】
請求項1において、案内部位は、軸線方向に対して傾斜するものであることを特徴とする、注出容器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、キャップを取り外す際に、第一係合部が第二係合部を乗り越えて互いの係合が解除される位置を、周壁の周方向に沿って異なるようにして当該係合が解除されるタイミングを周壁の周方向に沿って異ならせるように構成したことを特徴とする、注出容器。
【請求項5】
請求項4において、第二係合部は、第一係合部が第二係合部を乗り越えて互いの係合が解除される位置が、周壁の周方向に沿って螺旋状の軌跡を描くように構成されたものであることを特徴とする、注出容器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、第二係合部は、可動栓を取り囲むように周壁の内面に沿って軸線周りに間隔を空けて配置された複数のリブからなることを特徴とする、注出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−95307(P2010−95307A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270009(P2008−270009)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】