説明

注視認識システム

【課題】自動改札機等の改札通路を通る人が自動改札機等に付設された広告表示物を関心を持って意識的に注視しているか否かを判別・認識できる注視認識システムを提供する。
【解決手段】この注視認識システム30は、改札通路12に沿って配置され、所定の場所に広告画面表示部23が付設された改札機本体11Aと、この改札機本体に配置され、かつ改札通路を移動する通行人36の顔の存在領域に設定された視線検知範囲35を撮像するカメラ31と、カメラ31から得られた撮像情報に基づいて、広告画面表示部23に対する通行人36の視線変化を検出する視線変化検出部33とを備えるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は注視認識システムに関し、特に、例えば自動改札機等を通行中の人の視線の動きが自動改札機に設けられた広告等の表示物に対してどのように動くかを検知する注視認識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動中の人間の視線は、通常、移動先の方向に向けられている。さらに移動の際、途中に広告等の表示物(ポスター、ディスプレイ、電子ディスプレイ等)が存在すると、移動者は、その表示物に興味を持つ場合には、通常、移動しながらその視線を表示物に向けることになる。このことは、自動改札機の改札通路を通過する人の場合であっても、自動改札機に設けられた広告表示物に対して同様なことが起こると考えられる。
【0003】
従来、市中の広告に対して、通行人の視線を検出して視認頻度を収集するシステムがある。しかし一般的に考察すると、視線を検出するだけでは、通行人が広告内容に対して本当に意識的に注視しているのか、または単に無意識に顔を向け、視線がたまたま向いているのかを判別することは難しい。広告内容にはまったく関心がなく、単に広告内に示されたイメージキャラクタ等を見ているだけでも同じ結果が生じる。
【0004】
人間の視線を検知するという観点での従来技術として、特許文献1,2に開示される装置を挙げることができる。特許文献1は、視線方向を特定するシステムであり、対象の顔を撮像し、当該顔の画像で、両眼の目尻、両口元、黒目中心の検出情報を取得し、さらにこれの情報に基づいて顔位置方向と黒目方向の情報を得て、視線方向を特定するようにしている。特許文献1によれば、視線の横座標だけでなく、縦座標も把握し、視線方向の検出精度を高めている。また特許文献2は眼球運動測定装置等を開示する。この眼球運動測定装置によれば、第1の撮像装置で被験者を広角に撮像し、第2の撮像装置で被験者の眼球を撮像する。この構成では、第1の撮像装置で得られた映像情報に基づいて第2の撮像装置のカメラ向きを制御し、第2の撮像装置で得られた映像情報に基づいて眼球の位置を追跡するようにしている。
【特許文献1】特開2006−141862号公報
【特許文献2】特開2005−323905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、移動中の人間が、広告表示物に対して意識的に視線を送るか否かということを判定することは容易ではない。特に、広告内容に対して、通行人が本当に関心をもって意識的に注視しているのか、または単に無意識に顔を向け、視線がたまたま向いているのかを判別することは難しい。また前述した従来の特許文献1,2に開示されるシステムによっても、視線方向の特定や眼球の動きを追跡することはできても、特定の広告表示物に対して通行人が意識的に注視している状態であるか否かを正確に認識することはできないという問題を有している。
【0006】
本発明の課題は、特定の通路を移動している人間に関して、当該人間が広告等の表示物に対して関心を持って意識的に注視しているのか否かを正確に判別・認識することを可能にするものである。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、自動改札機等の改札通路を通る人が自動改札機等に設けられた広告等の表示物を関心を持って意識的に注視しているか否かを判別・認識できる注視認識システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る注視認識システムは、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
【0009】
本発明に係る注視認識システムは、改札通路等の通路に沿って配置され、所定の場所に表示物が付設された装置本体と、装置本体に配置され、かつ通路を移動する通行人の顔の存在領域に設定された視線検知範囲を撮像する撮像装置と、撮像装置から得られた撮像情報に基づいて、表示物に対する通行人の視線変化を検出する視線変化検出手段とを備えるように構成される。
【0010】
上記の構成では、移動状態にある通行人における広告等の表示物に対する視線の変化状態を正確に検出することで、当該通行人の表示物に対する注視状態を正確に判定し認識することが可能になる。
【0011】
上記の構成において、好ましくは、通行人の顔の存在領域に光線を照射する光線照射部を備えることを特徴とする。光線として近赤外光を通行人の目の部分に照射した方が、通行人の視線の動きをより正確に撮像することが可能である。
【0012】
上記の構成において、好ましくは、視線変化検出手段から出力される通行人の視線変化に係る信号に基づいて、通行人が表示物に注視していたか否かを判定する注視状態判定手段を備えることを特徴とする。
【0013】
上記の構成において、好ましくは、注視状態判定手段は、通行人の移動量(移動距離や移動時間等)に対する通行人の視線の滞留状態(滞留時間等)に基づいて、通行人の注視状態を判定することを特徴とする。通行人の視線の滞留状態とは、上記表示物に対する通行人の目線の静止状態を意味している。
【0014】
上記の構成において、好ましくは、通路の近傍に付設され、通行人の位置を検知する人間検知手段と、この人間検知手段から出力される検知信号に基づき通行人の通行移動時間を演算する演算手段とを備え、通行人の通行移動時間と視線の滞留時間から求められる注視率により通行人の注視状態を判定することを特徴とする。
【0015】
上記の構成において、好ましくは、注視状態判定手段は、通行人の視線の滞留時間に基づいて、通行人の注視状態を判定することを特徴とする。
【0016】
上記の構成において、好ましくは、注視状態判定手段は、視線変化検出手段から出力される通行人の視線変化に係る信号に基づき、視線の滞留時間を演算する演算手段と、基準視線滞留時間を記憶する記憶手段と、演算された滞留時間と基準視線滞留時間とを比較して、通行人の注視状態を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
上記の構成において、さらに好ましくは、装置本体は自動改札機であることで特徴づけられる。自動改札機での通路は、2つの改札機本体の間に設けられる改札通路である。
【0018】
上記の構成において、好ましくは、表示物は広告表示物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、自動改札機の改札通路等を移動中の人の視線の変化(動き、流れ等)を正確に検出して当該視線が所定の一箇所に滞留する状態を検出することができ、これにより広告等の特定の表示物に対する当該人の注視を正確に認識することができる。特に、自動改札機の改札通路を通る通行人が、自動改札機の機械本体の上面等に表示された広告表示物を高い関心を持って意識的に注視しているか否かを正確に判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図3を参照して、本発明に係る注視認識システムが適用される装置の一例としての自動改札機の第1実施形態について説明する。図1は自動改札機の外観斜視図を示し、図2は1つの改札機本体を内側面から示した側面図を示し、図3は同改札機本体の平面図を示している。
【0022】
図1〜図3において、自動改札機11は、左右に位置する一対の改札機本体11A,11Bを備える。図示および説明の便宜上、改札機本体11Aは実線で描かれ、図1中手前側の改札機本体11Bは想像線(二点鎖線)で描かれている。一対の改札機本体11A,11Bの間に改札通路12が形成される。改札通路12は、自動改札機11を利用する者が通る通路である。自動改札機11において、矢印A1で示された方向が、通行人が移動するまたは進行する方向であるとする。図1等に示した自動改札機11で、場所13が入り口となり、場所14が出口となる。改札機本体11A,11Bの各々の改札通路12側の内側面において、入り口13の側と出口14の側の各箇所に開閉ドア15が設けられている。
【0023】
自動改札機11の両側の改札機本体11A,11Bの上部には、通常、フレーム16が取り付けられ、このフレーム16の上には通過表示灯17が設けられている。通過表示灯17は例えば券詰まり等の異常が発生したり、子供が通過したりする際に点灯して、異常等の稼動状況を駅係員に知らせるものである。
【0024】
また自動改札機11において、移動方向(矢印A1)に向かう位置から見て右側の改札機本体11Aの上面には、入り口13側に券投入口18aと券検知器18bが設けられ、出口14側に券取出し口19が設けられている。券投入口18aおよび券検知器18bは、通行人が使用する磁気記録式の券またはICカードに応じて読取り等の所要の機能を有している。券投入口18aおよび券取出し口19は磁気記録式の券に対して使用される。また券検知器18bは無線アンテナとリーダ/ライタによって構成されており、無線による電磁結合に基づき非接触の状態でICカードとの間で情報の送受を行う。また出口側では、さらに改札機案内表示部20が設けられている。
【0025】
上記の自動改札機11には2種類の人間検知器21a,21bが設けられている。下側であってほぼ腰の高さに配列された人間検知器21aは水平方向の位置を検知するためのものである。上側に配列された人間検知器21bは身長を判別するためのものである。人間検知器21bは、自動改札機11の改札通路12を通る通行人の身長に基づき大人かまたは子供かを検知するために用いられる。人間検知器21aは、改札機本体11Aの内側面で改札通路12に沿って同じ高さでほぼ一列状に配置された10個の光センサ21a−1〜21a−10によって構成されている。10個の光センサ21a−1〜21a−10は、例えば透過型のフォトセンサであり、他方の改札機本体11Bの対向面に受光用の光センサ(図示せず)を設けている。10個の光センサによって、図2に示すごとき二点鎖線ブロックA〜Iの9箇所の人間検知エリア22が設定される。人間検知エリアの各エリアA〜Iに関して遮光エリアがどこであるかに基づいて、自動改札機11を通過しようとする通行人の移動位置または進行位置を自動改札機11において認識することができる。複数の透過型光センサを利用して構成される人間検知器21aの検出原理等はよく知られたものである。
【0026】
上記の自動改札機11に対して、改札機本体11Aには広告画面表示部23が配置される。広告画面表示部23は、例えば液晶表示器等の電子ディスプレイを設けることにより形成されている。また広告シールを付着することにより同等の広告表示部(広告パネル等)を設けることもできる。
【0027】
自動改札機11の改札通路12を通る通行人は、上記の広告画面表示部23の表示内容に関心を持てば、その表示内容を視認すべく、通行しながら広告画面表示部23を注視することになる。
【0028】
さらに自動改札機11には本実施形態に係る注視認識システムが付設されている。注視認識システム30は、図4に示すごとく、主たる要素として、カメラ(撮像装置)31と、所定の光を発して所定の領域に照射させる発光器32と、視線変化検出部33と、注視状態判定部34とを備えている。なお発光器32は、他に何らかの光源や自然な光があれば、必ず必要というものではない。
【0029】
カメラ31と発光器32は、図3に示すごとく、上記の広告画面表示部23の近傍の場所に設置されている。発光器32から出射される光は例えば近赤外光である。発光器32から出射される光は、改札通路12を通る通行人の顔の存在領域に相当する箇所であって視線検知範囲に照射される。カメラ31は、改札通路12を通る通行人の顔の存在領域に設定された上記視線検知範囲を撮像するように配置されている。図2において、範囲35は視線検知範囲の例を示す。通行中(または移動中)の通行人の顔が視線検知範囲35に入り、当該通行人が関心を持って意識的に広告画面表示部23の表示内容を見ようとすると、発光器32からの光は、通行人の目の当たり、通行人の目から反射された光がカメラ31によって撮像されることになる。自動改札機11の改札通路12の移動中の通行人が、移動しながら顔を広告画面表示部23に向け、その視線を広告画面表示部23の表示内容に滞留させている限り、カメラ31は通行人の視線を撮像し続け、当該視線を検知し続けることになる。こうしてカメラ31と発光器32に基づいて、改札通路12を通る通行人の広告画面表示部23に対する視線を検出する。
【0030】
上記の注視認識システム30に関連する通行人の移動動作と注視動作のイメージを図5に示す。図5において、通行人36は、広告画面表示部23に注意を向けるとき、図中左側(A)から右側((B),(C)の順序で)に向って自動改札機11の改札通路12を移動しながら、自動改札機11の改札機本体11Aの広告画面表示部23に視線37を与え続けるものとする。図5において(A)は通行人36が入り口13の近くに居るときの状態を示し、(B)は通行人36が改札通路12の中央位置に居るときの状態を示し、(C)は通行人36が出口14の近くに居るときの状態を示している。なお、改札通路12内における通行人36の位置は、前述した人間検知器21a(21a−1〜21a−10)で検知される。
【0031】
従って、自動改札機11を移動する通行人36が、広告画面表示部23に関心を持って注視するときには、身体の移動の最中にその視線37が広告画面表示部23の上に一定時間の間滞留するという現象(挙動)が生じる。そこで、例えば、自動改札機11での通行人36の通行移動時間に対する広告画面表示部23に対する通行人36の視線37の視線滞留時間を算出し、通行移動時間と視線滞留時間とから注視率を算出すると、通行人36が広告画面表示部23に関心を持ってそれを注視しているか否かを判定することができる。なお上記の通行人36の通行移動時間は、例えば、10個の人間検知器21a−1〜21a−10の各々の検知信号に基づき同一人物を特定しながらその位置変化を計測することにより算出される。
【0032】
図4に注視認識システム30のブロック図を示す。この注視認識システム30で、視線変化検出部33から出力される信号は、視線変化に関する信号(または視線が一定位置に滞留することを表す信号)である。視線変化検出部33は注視座標データ記憶部39が付設されている。また人間検知器21aから出力される信号は、移動変化に関する信号(または通行人36を検知した人間検知エリアA〜Iを表す信号)である。これらの視線変化に関する信号と移動変化に関する信号は注視状態判定部34に入力される。注視状態判定部34は、視線変化に関する信号に基づいて、視線が広告画面表示部23に滞留する時間(視線滞留時間)を算出し、また移動変化に関する信号に基づいて、通行人36が自動改札機11を通行移動する時間(通行移動時間)を算出する。この視線滞留時間の計算は視線滞留時間計算部34aによって実行され、また通行移動時間の計算は通行移動時間計算部34dによって実行される。視線滞留時間計算部34aで算出された視線滞留時間と通行移動時間計算部34dで算出された通行移動時間は、注視率算出部34bに入力され、注視率が算出される。 注視率算出部34bから出力される注視率は注視決定部34cに入力される。注視決定部34cは、基準注視率記憶部34eに記憶される所定の基準注視率を参酌することにより基準注視率と注視率とを比較して、注視状態にあるか否かを判定する判定信号を出力する。こうして注視状態判定部34から出力される判定信号に基づいて、通行人36の広告画面表示部23に対する注視状態についての認識が行われる。
【0033】
次に、図6〜図9を参照しながら、上記の注視認識システム30で実行される通行人36の視線変化を検出するための具体的な方法を説明する。
【0034】
図6は、カメラ31で撮像した通行人36の画像をイメージ的に説明するための図である。画像38は、通行人36をカメラ31で撮像したものである。この画像データの通行人36の右目36aの右端部分の視線座標データをXa1、右目36aの左端部分の視線座標データをXa2、左目36bの右端部分の視線座標データをXa3、左目36bの左端部分の視線座標データをXa4とする。また、右目の瞳孔36cの右端部分の視線座標データをXb1、右目の瞳孔36cの左端部分の座標をXb2、左目の瞳孔36dの右端の視線座標データをXb3、左目の瞳孔36dの左端の視線座標データをXb4とする。これらの視線座標データXa1〜Xa4,Xb1〜Xb4は、撮影された画像38の横方向の画素数から求めることができる。
【0035】
図7はカメラ31で撮像された画像38における通行人36の視線座標データと注視座標データとをイメージ的に説明するための第1の図であり、図8はカメラ31で撮像された画像38における通行人36の視線座標データと注視座標データとをイメージ的に説明するための第2の図である。
【0036】
図7において(A)〜(D)は、人間検知エリア22のエリアAにおける右目36aと左目36bの位置がそれぞれ異なる通行人36の画像データの一部分を示すものである。また、図示されたXA1は右目36aの右端部分の注視座標データ、XA2は右目36aの左端部分の注視座標データ、XA3は左目36bの右端部分の注視座標データ、XA4は左目36bの左端部分の注視座標データをそれぞれ示す。
【0037】
また図8において(E)〜(H)は、同様にエリアAにおける右目の瞳孔36cと左目の瞳孔36dの位置がそれぞれ異なる通行人36の画像データの一部分を示すものである。また、図示されたXB1は右目の瞳孔36cの右端部分の注視座標データ、XB2は右目の瞳孔36cの左端部分の注視座標データ、XB3は左目の瞳孔36dの右端部分の注視座標データ、XB4は左目の瞳孔36dの左端部分の注視座標データをそれぞれ示す。
【0038】
視線変化検出部33は、図7の(A)〜(C)に示すような通行人36の画像データに基づき、視線座標データXa1〜Xa4を検出する機能を有している。さらに視線変化検出部33は、係る視線座標データを検出・取得した場合には、注視座標データXA1とXA2との範囲内に視線座標データXa1とXa2とがあり、かつ注視座標データXA3とXA4との範囲内に視線座標データXa3とXa4とがあるため、右目36a、左目36bは注視座標データ内にあると判定する機能を有している。
【0039】
また視線変化検出部33は、図7の(D)に示すような通行人36の画像データに基づき視線座標データXa1〜Xa4を検出する機能を有している。視線変化検出部33は、かかる視線座標データを検出・取得した場合には、注視座標データXA1とXA2との範囲内に視線座標データXa1とXa2とがなく、また注視座標データXA3とXA4との範囲内に視線座標データXa3とXa4とがないため、右目36a、左目36bは注視座標データ内にないと判定する機能を有している。
【0040】
さらに視線変化検出部33は、図8の(E)〜(G)に示すような通行人36の視線座標データXb1〜Xb4を検出・取得した場合には、上述した右目36aと左目36bの判定方法と同様に右目の瞳孔36c、左目の瞳孔36dは注視座標データ内にあると判定する。
【0041】
また、図8に示す(H)のような通行人36の画像から視線座標データXb1〜Xb4を検出・取得した場合には、右目の瞳孔36c、左目の瞳孔36dは注視座標データ内にないと判定する。
【0042】
注視座標データ記憶部39には自動改札機11を通過する通行人36の位置エリアA〜Iに対応する注視座標データXA1〜XA4、XB1〜XB4が記憶される。このため、視線変化検出部33は移動検知器21a−1〜21a−10から出力される移動変化に関する信号に基づいて、通行人36の移動と共に注視座標データXA1〜XA4、XB1〜XB4を可変させ、通行人36の位置エリアA〜Iのいずれのエリアにおいても視覚変化を正確に検出することができる。
【0043】
図9は、視線変化検出部33の動作(検出・判定)を説明するフローチャートである。視線変化検出部33は、最初に通行人36の位置エリアを取得し(ステップS101)、注視座標データ記憶部39から通行人36の位置エリアA〜Iに対応する注視座標データXA1〜XA4、XB1〜XB4を取得する(ステップS102)。続いて、視線変化検出部33は通行人36の視線座標データXa1〜Xa4、Xb1〜Xb4を取得する(ステップS103)。そして、右目36aの視線座標データXa1、Xa2が注視座標データXA1、XA2の範囲内にあるかを判定する(ステップS104)。判定の結果、範囲内にある場合(ステップS104のYES)、左目36bの視線座標データXa3、Xa4が注視座標データXA3、XA4の範囲内にあるかを判定する(ステップS105)。判定の結果、範囲内にある場合(ステップS105のYES)、右目の瞳孔36cの視線座標データXb1、Xb2が注視座標データXB1、XB2の範囲内にあるかを判定する(ステップS106)。判定の結果、範囲内にある場合(ステップS106のYES)、左目の瞳孔36dの視線座標データXb3、Xb4が注視座標データXB3、XB4の範囲内にあるかを判定する(ステップS107)。判定の結果、範囲内にある場合(ステップS107のYES)、視線滞留時間計算部34aに視点滞留時間をカウントするように指示を出力し(ステップS108)、ステップS101に戻り処理を繰り返す。なお、ステップS104〜S107の各判定の結果、範囲内にない場合(ステップS104〜S107のNO)、視点滞留時間をカウントするように指示を出力せずに、ステップS101に戻り処理を繰り返す。
【0044】
なお本実施形態では、両目の視線座標データが注視座標データの範囲内にある場合に注視している状態であると検出するように説明したが、一例として、右目または左目のいずれかの視線座標データが注視座標データの範囲内にあれば注視している状態であると検出するようにしても良い。さらには、両目の横方向の座標のみでなく、より精度を高めるために縦方向の注視座標データを記憶して、縦方向の視線座標データを取得し、これらを比較することで注視状態の判定を行うようにしても良い。
【0045】
次に、図10を参照しながら、通行人36の注視状態を判定する方法を説明する。
【0046】
図10は注視状態判定部34の動作を説明するフローチャートである。注視率算出部34bは、通行移動時間計算部34dから出力された通行移動時間を取得し(ステップS201)、視線滞留時間計算部34aから出力された視点滞留時間を取得する(ステップS202)。注視率算出部34bは、通行移動時間と視点滞留時間との比(視点滞留時間/通行移動時間)から注視率を算出する(ステップS203)。注視決定部34cは、注視率算出部34bで算出された注視率が基準注視率を超過している場合に(ステップS204のYES)、通行人36が注視状態であったと決定する(ステップS205)。また注視率が基準注視率を超過していない場合には(ステップS204のNO)、通行人36が注視状態でなかったと決定する(ステップS206)。さらに注視決定部34cは判定結果に基づいて判定信号を出力する(ステップS207)。
【0047】
上記において、視点滞留時間の算出は、通行人の視点が設定された視点注視範囲の外にあるか、または内にあるかで判断される。
【0048】
また、前述の実施形態に係る注視認識システム30における注視状態判定部34は、通行人36がいる時のみ稼動すれば良いため、人間検知器21aが通行人を検知した時にスタンバイモード状態から稼動状態に復帰し、人間検知器21aが通行人を検知しなくなった時に稼動状態からスタンバイモード状態に状態遷移するように構成しても良い。
【0049】
続いて、図11を参照して、本発明に係る注視認識システムが適用された自動改札機の第2実施形態について説明する。図11に注視認識システム40のブロック図を示す。
【0050】
第2実施形態において注視認識システム40は、第1実施形態で上述した注視認識システム30の注視状態判定部34の注視率算出部34b、注視決定部34c、通行移動時間計算部34d、基準注視率記憶部34eの代わりに、視線滞留時間判定部34f、基準視線滞留時間記憶部34gを備えている。注視状態判定部34は、視線変化に関する信号に基づいて、視線が広告画面表示部23に滞留する時間(視線滞留時間)を算出する。この視線滞留時間の計算は視線滞留時間計算部34aによって実行される。視線滞留時間計算部34aで算出された視線滞留時間は視線滞留時間判定部34fに入力される。視線滞留時間判定部34fは、基準視線滞留時間記憶部34gに記憶される所定の基準視線滞留時間を参酌することにより基準視線滞留時間と視線滞留時間とを比較して、注視状態にあるか否かを判定する判定信号を出力する。こうして注視状態判定部34から出力される判定信号に基づいて、通行人36の広告画面表示部23に対する注視状態についての認識が行われる。第2実施形態では、通行人一人あたりの視線滞留時間が基準視線滞留時間を超過した場合に、注視状態であると判定する。
【0051】
上述した注視認識システムはカメラ31に撮像されれば注視状態であるかを判定することができるため、判定対象となる通行人36は大人のみに限定されず、身長の低い子供に対しても注視状態であるかを判定することもできる。勿論、任意にカメラ31の撮像方向を変えることができるため、視線検知範囲35に大人の通行人のみが撮像されるようにカメラを設置すれば、注視判定対象となる通行人36を大人のみに限定することもできる。また、カメラ31を用いて大人と子供とを判定しなくても、上述した人間検知器21bにより大人と子供とを判定して注視判定対象となる通行人36を限定することもできる。
【0052】
さらに、この注視認識システムは自動改札機11に適用した例を説明したが、注視認識システム30の適用装置はこれに限定されない。例えばエスカレータや自動移動歩道等にも適用することもできる。
【0053】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、自動改札機等の改札通路を通る通行人の広告表示物に対する注視認識に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る注視認識システムが適用される自動改札機の外観を示す斜視図である。
【図2】自動改札機の1つの改札機本体の側面図である。
【図3】自動改札機の1つの改札機本体の平面図である。
【図4】第1実施形態に係る注視認識システムの構成を示すブロック図である。
【図5】注視認識システムに関連する通行人の移動動作と注視動作の関係をイメージ的に説明するための図である。
【図6】通行人をカメラで撮像した画像をイメージ的に説明するための図である。
【図7】カメラで撮像された画像における通行人の視線座標データと注視座標データとをイメージ的に説明するための第1の図である。
【図8】カメラで撮像された画像における通行人の視線座標データと注視座標データとをイメージ的に説明するための第2の図である。
【図9】視線変化検出部の動作を説明するフローチャートである。
【図10】注視状態判定部の動作を説明するフローチャートである。
【図11】第2実施形態に係る注視認識システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
11 自動改札機
11A,11B 改札機本体
12 改札通路
13 入り口
14 出口
15 開閉ドア
16 フレーム
17 通過表示灯
18a 券投入口
18b 券検知器
19 券取出し口
20 改札機案内表示部
21a,21b 人間検知器
22 人間検知エリア
23 広告画面表示部
30,40 注視認識システム
31 カメラ(撮像装置)
32 発光器
33 視線変化検出部
34 注視状態判定部
35 視線検知範囲
36 通行人
37 視線
38 画像データ
39 注視座標データ記憶部
36a 右目
36b 左目
36c 右目の瞳孔
36d 左目の瞳孔
XA1〜XA4,XB1〜XB4 注視座標データ
Xa1〜Xa4,Xb1〜Xb4 視線座標データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路に沿って配置され、所定の場所に表示物が付設された装置本体と、
前記装置本体に配置され、かつ前記通路を移動する通行人の顔の存在領域に設定された視線検知範囲を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置から得られた撮像情報に基づいて、前記表示物に対する前記通行人の視線変化を検出する視線変化検出手段と、
を備えて成ることを特徴とする注視認識システム。
【請求項2】
前記通行人の顔の前記存在領域に光線を照射する光線照射部を備えることを特徴とする請求項1記載の注視認識システム。
【請求項3】
前記視線変化検出手段から出力される前記通行人の視線変化に係る信号に基づいて、前記通行人が前記表示物に注視していたか否かを判定する注視状態判定手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の注視認識システム。
【請求項4】
前記注視状態判定手段は、前記通行人の移動量に対する前記通行人の前記視線の滞留状態に基づいて、前記通行人の注視状態を判定することを特徴とする請求項3記載の注視認識システム。
【請求項5】
前記通路の近傍に付設され、前記通行人の位置を検知する人間検知手段と、この人間検知手段から出力される検知信号に基づき前記通行人の通行移動時間を演算する演算手段とを備え、前記通行人の通行移動時間と前記視線の滞留時間から求められる注視率により前記通行人の注視状態を判定することを特徴とする請求項4記載の注視認識システム。
【請求項6】
前記注視状態判定手段は、前記通行人の前記視線の滞留時間に基づいて、前記通行人の注視状態を判定することを特徴とする請求項3記載の注視認識システム。
【請求項7】
前記注視状態判定手段は、前記視線変化検出手段から出力される前記通行人の視線変化に係る信号に基づき、前記視線の前記滞留時間を演算する演算手段と、基準視線滞留時間を記憶する記憶手段と、演算された前記滞留時間と前記基準視線滞留時間とを比較して、前記通行人の注視状態を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする請求項6記載の注視認識システム。
【請求項8】
前記装置本体は自動改札機であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の注視認識システム。
【請求項9】
前記表示物は広告表示物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の注視認識システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−226161(P2008−226161A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67264(P2007−67264)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】