説明

注記表作成支援装置及びシステム

【課題】会社法に規定する計算書類の注記表の作成を支援するシステム。特に、会社計算規則及び事業者別会計規則に対応し、更に今後の法令の改定にも対応できるような注記表作成を支援するための装置及びシステムを提供すること。
【解決手段】注記表処理装置30は、会社計算規則、及び/又は事業者別会計規則の条文電子データを入力として受け付ける条文電子データ入力手段31と、条文電子データそれぞれに前記注記表の注記項目に関する条文を抽出しタグ付けさせるタグ附加手段32と、タグ付けされた条文の少なくとも一方と当該条文に対応した前記注記表の記載項目を含んだ注記項目チェック表を操作員の端末に表示し、今期に必要な前記記載項目のIDを選択させて前記注記項目チェック表を完成する注記項目チェック表作成手段33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会社法に規定する注記表を作成するための注記表作成支援装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
平成18年5月1日の会社法の施行に伴い、旧商法に規定する計算書類(決算書)の記載方法が変更となった。すなわち、旧商法上の計算書類は、「貸借対照表」、「損益計算書」、「営業報告書」、「利益処分(損失)処理案」であったが、会社法上の計算書類は、「貸借対照表」、「損益計算書」の他、「株主資本等変動計算書」、「個別注記表」となっている。そのため、企業の決算担当者は、平成18年度の期末決算より上記会社法に基づいて計算書類を作成する必要がある。
【0003】
従来、旧商法上の計算書類を作成するためには様々なシステムが存在する。例えば、特許文献1には、各財務システムから出力された総勘定科目のデータから、商法計算書類である貸借対照表・損益計算書・営業報告書・付属明細書・利益処分案・貸借対照表注記を作成し、商標計算書類間で整合性をとって作成するシステムが開示されている。
【特許文献1】特開2002−24507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のシステムをはじめ、会社法及びその政令である会社計算規則(平成18年2月7日法務省令第13号)に基づいて計算書類を作成するシステムはあまり知られていない。特に、会社法第435条第2項、及び会社計算規則第91条で新たに規定された「個別注記表」については、参照すべき書類が多岐にわたる上、記載項目も多く、決算担当者の負担も大きいが、この「個別注記表」を作成したり、支援したりできるシステムは現在のところ存在しない。また、企業の事業の種類によっては、他の法令(以後、「事業者別会計規則」と呼ぶことにする。例えば、電気事業法(昭和39年7月11日法律第170号)に基づく電気事業会計規則(昭和40年6月15日通商産業省令第57号)等がある。)によって規定される独自の注記項目もあり、このような事業者にとって「個別注記表」の作成は一般的な会計システムでは対応できない。更に、会社法は施行されて間もないため、今後も法令の改定が続くと予想され、そのたびに「個別注記表」をその都度見直す必要があると考えられる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、会社法上の計算書類の注記表の作成を支援するシステム、特に、会社計算規則及び「事業者別会計規則」に対応し、更に今後の法令の改定にも対応できるような注記表作成を支援するための装置及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。なお、会社法上では、個別計算書類として「個別注記表」(会社計算規則第91条第1項)の他、連結計算書類として「連結注記表」(会社計算規則第93条第4号)があるが、本発明で取り扱う注記表の範囲は共通であるので、以降、両者をまとめて「注記表」と呼ぶことにする。
【0007】
(1) 会社法の規定する注記表の作成を支援する注記表処理装置であって、会社計算規則及び事業者別会計規則のうち少なくとも一方の条文電子データを入力として受け付ける条文電子データ入力手段と、前記条文電子データそれぞれに前記注記表の注記項目に関する条文を抽出しタグ付けさせるタグ附加手段と、前記タグ付けされた条文の少なくとも一方と当該条文に対応した前記注記表の記載項目を含んだ注記項目チェック表を操作員の端末に表示し、今期に必要な前記記載項目のIDを選択させて前記注記項目チェック表を完成する注記項目チェック表作成手段と、を備えた注記表処理装置。
【0008】
このような構成によれば、注記表処理装置は、会社計算規則や、事業者別の会計規則の条文電子データのうち少なくとも一方を基に、会社法に規定する「注記」に関する条文を抽出し、抽出された条文にタグを注記項目チェック表に付加する。操作員は該当条文をチェックし、不要な条文を除去できる。また、操作員はタグを附加された条文を参照しながら注記表に記載すべき項目を入力する。更に、操作員は本装置とインタラクティブにやり取りしながら「注記項目チェック表」を完成させることができる。このようにすることで、注記表の記載項目をチェックするためのチェック表を作成することができる。また、入力として条文電子データを用いることで注記記載項目の根拠を確認し、正確を期すことができる。
【0009】
(2) 前記注記項目チェック表作成手段は、会社計算規則及び前記事業者別会計規則の少なくとも一方の条文電子データの改訂があった場合に、改定前と改定後の条文を前記注記項目チェック表に含めて表示する、(1)に記載の注記表処理装置。
【0010】
このような構成によれば、今後の法令の改正にも対応する装置を提供することができる。なお、条文電子データは、インターネット上のサイトである政令データ提供システムから入力できる。
【0011】
(3) 前記注記表処理装置は、前記タグ付けされた会社計算規則と前記タグ付けされた前記事業者別会計規則とを併記して表示し、前記操作員にそれぞれの条文を比較させ比較結果IDを入力させる手段を更に備えた、(1)乃至(2)に記載の注記表処理装置。
【0012】
このような構成によれば、一般の会社計算規則と事業者別会計規則を対比できるのでより、注記項目チェック表の正確性を増すことができる。
【0013】
(4) 前記事業者別会計規則は、電気事業会計規則である、(1)乃至(3)のいずれかに記載の注記表処理装置。
【0014】
このような構成によれば、電力会社のような事業においては本装置が即時に利用可能となる。
【0015】
(5)前記注記表処理装置は、外部から計算書類の電子データを受信する計算書類受信手段と、前記注記項目チェック表を用いて前記注記表を作成する注記表作成手段と、前記注記表に記載された記載項目と前記注記項目チェック表の記載項目を比較する注記項目比較手段と、前記比較した結果、前記注記表の記載項目に記載もれを検出した場合には確認画面を前記操作員の端末に送信する確認表示手段と、を更に備えた、(1)乃至(4)のいずれかに記載の注記表処理装置。
【0016】
このような構成によれば、注記項目チェック表作成時に固有の記載項目(記載項目ID)が定義され、これに基づいて注記表が作成されるので、注記表の記載項目の漏れがないかどうかを容易に操作員にチェックさせることができる。
【0017】
(6) 前記注記項目比較手段は、前期の注記表と今期の注記表を比較し、前記確認表示手段は、当該比較の結果を表示する、(5)に記載の注記表処理装置。
【0018】
このような構成によれば、注記表は一貫した記載項目(記載項目ID)で識別されるので、前記の注記表との対応する記載項目を容易に比較でき、その差分を確認のため操作員端末に表示できる。
【0019】
(7) 前記確認表示手段は、前記計算書類を送信したユーザ端末に更に前記確認画面を表示する、(5)乃至(6)のいずれかに記載の注記表処理装置。
【0020】
このような構成によれば、記載項目の差分を関連した担当者のユーザ端末にも表示されるので、操作員と担当者の共同作業に役立つ。
【0021】
(8) 会社法の規定する計算書類の注記表の作成を支援するシステムであって、ネットワークに接続された複数のユーザ端末と、注記表処理装置と、操作員端末とを含んで構成され、前記ユーザ端末は、前記注記表処理装置に対して前記計算書類の電子データを送信する送信手段を有し、前記注記表処理装置は、会社計算規則及び事業者別会計規則のうち少なくとも一方の条文電子データを入力として受け付ける条文電子データ入力手段と、前記条文電子データそれぞれに前記注記表の注記項目に関する条文を抽出しタグ付けさせるタグ附加手段と、前記タグ付けされた条文の少なくとも一方と当該条文に対応した前記注記表の記載項目を含んだ注記項目チェック表を操作員端末に表示し、今期に必要な前記記載項目のIDを選択させて前記注記項目チェック表を完成する注記項目チェック表作成手段と、前記注記項目チェック表を用いて前記計算書類に記載された注記項目と比較する手段と、前記計算書類に注記項目の入力もれを検出した場合に確認画面を前記操作員端末に送信する確認表示手段と、を有し、前記操作員端末は、前記確認画面を受信して表示する表示手段を有する、システム。
【0022】
このような構成によれば、(1)から(7)と同様な作用効果を一つのシステム全体で実現することができる。
【0023】
(9) 会社法の規定する計算書類の注記表の作成を支援するための方法であって、ネットワークに接続された複数のユーザ端末と、注記表処理装置と、操作員端末とを含んだシステムにおいて、前記ユーザ端末が、前記注記表処理装置に対して前記計算書類の電子データを送信する送信ステップを実行し、前記注記表処理装置が、会社計算規則及び事業者別会計規則のうち少なくとも一方の条文電子データを入力として受け付ける条文電子データ入力ステップと、前記条文電子データそれぞれに前記注記表の注記項目に関する条文を抽出しタグ付けさせるタグ附加ステップと、前記タグ付けされた条文の少なくとも一方と当該条文に対応した前記注記表の記載項目を含んだ注記項目チェック表を操作員端末に表示し、今期に必要な前記記載項目のIDを選択させて前記注記項目チェック表を完成する注記項目チェック表作成ステップと、前記注記項目チェック表を用いて前記計算書類に記載された注記項目と比較するステップと、前記計算書類に注記項目の入力もれを検出した場合に確認画面を前記操作員端末に送信する確認表示ステップと、を実行し、前記操作員端末が、前記確認画面を受信して表示する表示ステップを実行する方法。
【0024】
このような構成によれば、(1)から(7)と同様な作用効果を持つ方法の発明として捉えることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、会社法上の注記表の作成を支援するシステムを提供できる。特に、会社計算規則だけでなく、電気事業会計規則のような事業者別会計規則に対応することができ、また、今後の法令の改定にも対応できる。更に、注記表の記載項目を事前にチェックできるので、会計士等の協議にも役立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム構成の一例を示したものである。注記表作成支援システム10(以下、システム10という)は、通信ネットワーク50で接続された複数のユーザ端末20と、注記表処理装置30と、操作員端末40とを含んで構成される。ユーザ端末20は、例えば、経理部門の決算担当者ごとに設置された端末であり、各担当者が作成した計算書類(決算報告書)を注記表処理装置30へ送信する。注記表処理装置30は、決算書類の総括管理部門に設置された決算報告書作成システムの一部として構成され得る。注記表処理装置30は、各ユーザ端末20からの計算書類の電子データを受信し、内部又は外部の記憶装置に格納し、各電子データを会社又はグループ企業全体の決算報告としてまとめて集計した決算書類の注記表を作成する作業を行う「操作員」を支援する。
【0028】
操作員端末40は、注記表処理装置30に直接接続又は通信ネットワーク50を介して接続され、注記表処理装置30から前記の操作員に対して、処理状況を表示したり、あるいは操作員から注記表処理装置30への指示を与えるための端末である。なお、通信ネットワーク50は、企業間の専用回線やLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)であっても、インターネット等の公衆回線網であってもよい。
【0029】
図2は、この注記表作成支援システム10の概念図を示したものである。すなわち、本システムは、各担当者からの計算書類のファイルを受信し、会社計算規則に定められた注記の必要な書類に対して、注記表を作成する。注記表には、「個別注記表」と「連結注記表」があるがまとめて、図3に示すように、(1)継続企業の前提に関する注記、(2)重要な会計方針に係る事項に関する注記、(3)貸借対照表に関する注記、(4)損益計算書に関する注記、(5)株主資本等変動計算書に関する注記、(6)税効果会計に関する注記、(7)リースにより使用する固定資産に関する注記、(8)関連当事者との取引に関する注記、(9)一株当たり情報に関する注記、(10)重要な後発事象に関する注記、(11)連結配当規制適用会社に関する注記、(12)その他の注記、の12項目に区分して表示しなければならない(会社計算規則第129条)。なお、図3の○は提出が必要なもの、△は状況によっては必要となる場合と不要となる場合があるもの、×は提出の必要ないものを示す(但し、(11)は、連結配当規制適用会社の場合は必要である)。
【0030】
図2に戻り、本システムは、注記表処理装置30を中核として構成され、入力データとして計算書類を始めとする各種の財務データ11、会社計算規則の条文電子データ12、及び電子事業会計規則条文電子データ13を与える。条文の電子データは、政府の法令データ提供システム(http://law.e−gov.go.jp/)等から入手してよい。操作員端末40は、注記表処理装置30を操作する操作員(一般的には経理の注記表作成担当者)の端末である。注記表処理装置30は、操作員端末40とインタラクティブに表示と指示を交わしながら出力データとして、上記12項目の注記書類(15A〜15L)を作成する。
【0031】
図4は、ユーザ端末20、注記表処理装置30、及び操作員端末40のハードウェア構成の概略図である。例えば、注記表処理装置30は、典型的にはサーバ・コンピュータであり、図示するように内部にシステムバス21を有し、システムバス21には、CPU22、RAM(Random Access Memory)23,ROM(Read Only Memory)24,HDD(Hard Disk Drive)25、電源部26、入力部27、表示部28、及び通信部29等が接続されている。CPU22は、コンピュータのプロセッサであり、装置全体を制御する制御部として機能する。また、記憶部として、RAM23、ROM24、HDD25等の記憶装置を備える。HDD25等の記憶部は、装置内部に実装されるものだけでなく、直接的に又はネットワークで接続された間接的に接続された外部の記憶装置であってもよい。また、ユーザ端末20、操作員端末40は、典型的にはPC(Personal Computer)であり、上記と同様のハードウェア構成であってよい。
【0032】
入力部27は、マウスやキーボード等の操作員からの直接入力だけでなく、他のシステムから通信部29を介してデータを入力するようにしてもよい。表示部28は、典型的には、CRT(Cathode Ray Tube)装置や液晶表示装置であるが、通信部29を介して、外部のシステムにデータを出力する出力部としても機能する。また、通信部29は各種の通信インターフェースを備えてよく、通信回線は、有線であっても無線であってもよい。
【0033】
図5は、注記表処理装置30の機能ブロックの概要を示したものである。図示するように、機能ブロックには、条文電子データ入力手段31、タグ附加手段32、注記項目チェック表作成手段33、計算書類受信手段34、注記表作成手段35、注記項目比較手段36、及び確認表示手段37が含まれる。各機能ブロックは、図4のハードウェア上で動作するコンピュータ・プログラムの機能ブロックと考えてよい。このような機能ブロックはほんの一例に過ぎず、全体として同等な機能であれば他の機能ブロック構成も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0034】
条文電子データ入力手段31は、前述したように法令データ提供システム等から、会社計算規則(平成18年2月7日法務省令第13号)の電子データと、法律で定められた特定の事業者に対し別途定められた事業者別の会計規則である電気事業会計規則(昭和40年6月15日通商産業省令第57号)、電気通信事業会計規則(昭和60年4月1日郵政省令第26号)、鉄道事業会計規則(昭和62年2月20日運輸省令第7号)、ガス事業会計規則(昭和29年4月1日通商産業省令第15号)等の事業者別会計規則の電子データを入力として受信する。なお、以降では説明を具体的にするため、電気事業会計規則を事業者別会計規則の例にとって説明することにする。
【0035】
まず、注記項目チェック表作成工程について説明する。タグ附加手段32は、入力された条文電子データから「注記」という用語を含んだ条文とその条文番号を抽出する。ここで、条文には関連する「別表」も含むものとする。例えば、電気事業会計規則には、会社計算規則の128条〜144条に対応する記載が、別表第2の第4表に記載されている。したがって、検査対象は、条文本文だけでなく、別表等全体を走査する必要がある。そして、抽出された条文等は、操作員端末に表示され、操作員の指示によって注記表の記載に関連した条項には、タグを付ける。タグは、条文の番号であってもよいが、一義的に定義できるものであれば何でもよい。例えば、電気事業会計規則の別表2の第4表の「記載注記欄」であれば、「別表2−4注5−1」のようにタグを附加する。もちろん、注記表の記載に関連しない条文はたとえ「注記」の文字が含まれていても操作員によって選別されるので、タグ付けされた条文からは取り除かれることになる。タグ付の条文電子データは、装置内部の記憶部又は外部の記憶装置(両者をまとめて、タグ付条文電子データ記憶手段38と呼ぶ)に格納される。
【0036】
注記項目チェック表作成手段33は、タグ附加手段32によって作成されたタグ付条文とそのタグを注記項目チェック表に含める。具体的には、後述の図6における左側の2列を生成する。注記項目チェック表は、操作員端末40に表示され、記載項目とそのIDを入力させる。この段階で図6に右4列に示すような「年度」、「中間」、「旧法」、及び「備考」を入力させるようにしてもよい。ここで、「年度」、「中間」は、各記載項目が必要な報告時期を示す欄である。例えば、年度決算と中間決算とで共に必要な記載項目であれば、「年度」欄と「中間」欄に○を入力できるようにする。また「旧法」欄には旧商法に対応する条文等があれば、そのことを示す○を入力できるようにしてもよい。ここで、入力記号は○である必要はなく、チェックボックス等、選択されたことが分かるような任意の手段を用いてよい。また、「備考」欄には、記載項目がない場合であっても「(今期は)該当なし」のような注を記載させることが望ましい。このように注記項目チェック表作成手段33によって作成された注記項目チェック表は、以降の注記表作成工程で使用される。
【0037】
次に、注記表そのものの作成工程について説明する。注記表作成工程では、まず、ユーザ端末20から、各担当者が作成した計算書類やその他の財務データ11が、計算書類受信手段34によって受信される。集められた受信データは装置内部の記憶部又は外部の記憶装置に格納される(図示せず)。
【0038】
そして、注記表作成手段35によって、入力された受信データと前記の注記項目チェック表とを用いて、操作員が装置とインタラクティブに会話しながら注記表を作成する。例えば、特に図示していないが、注記表作成画面が操作員端末に表示され、図3の12項目それぞれの注記事項ごとに注記表を作成する。ここで、注記表の数値計算が必要な部分(例えば、貸借対照表の固定資産の減価償却累計額や子会社に対する債務金等)については、入力データの所定のフィールドを操作員が指定すれば自動計算によって結果が注記表に転記したり、集計されるようにする。数値で記載できない項目は、注記項目チェック表を用いながら、操作員が文字入力する。また、注記表を作成する際の参照した計算種類のIDと参照項目のIDも注記表作成の根拠として注記表の所定の欄に記録しておくとよい。更に、操作員が注記表に記載項目を入力するごとに注記項目チェック表の各記載項目のIDを附加するようにする(装置がIDを自動生成してもよい)。こうすることで次のチェック工程が容易になる。
【0039】
次に、注記表のチェック工程について説明する。作成された注記表は、注記項目比較手段36によって再度注記項目チェック表の記載項目IDに関連付けられた内容が比較される。作成された注記表に注記項目チェック表にある該当記載項目のIDがないことを、注記項目比較手段36が検出すると、確認表示手段37は、操作員端末40に通知する。このとき、関連する計算書類の入力元であるユーザ端末20にも通知するようにしてもよい。表示された確認画面を見ながら操作員は、必要に応じて関連する担当者(ユーザ)にも参加させ、注記表の修正、レビュー、確認を繰り返し、最終的な注記表を完成させて装置内部の記憶部又は外部の記憶装置(両者をまとめて、注記項目チェック表・注記表記憶手段39と呼ぶ)に所定の箇所に格納する。
【0040】
図6は、注記項目チェック表の例として、貸借対照表に関する注記項目チェック表を示したものである。このような注記項目チェック表が図3で示した12項目について存在する。既に述べたように、左の2列はタグ附加された条文電子データから作成する。ここでは、条文電子データは、電気事業会計規則の別表第二の第4表の(記載注意)5を表示しているが、条文データは複数表示してもよい。例えば、会社計算規則と電気事業会計規則の対応表を作成しておき、2つの条文の対応する箇所を注記チェック表に併記する。あるいは、電気事業会計規則の条文欄横にアイコンを用意しておきこのアイコンをクリックすると対応する会社計算規則を表示するようにしてもよい。
【0041】
図6の右4列については既に説明したのでここでは省略するが、左3列目の記載項目IDは、操作員が記載必要と判断した記載項目と、(今期においては)該当なしと判断した記載項目では記載項目IDの種類を操作員に変更させるようにしてもよい。この例では、記載が必要な項目は、A3−nで、記載が必要ない項目はB3−nで表している。
【0042】
図7は、注記項目チェック表の作成処理フローを更に詳しく説明したものである。まず、ステップS101において、電気事業会計規則のタグ付条文電子データの読み込みを行う。次に、ステップS102において、会社計算規則のタグ付条文電子データの読み込みを行う。そして、両方の条文を図8で示すような表に併記する(ステップS103)。このとき、条文の文言がほぼ一致するものについては、同じ行に表示する。例えば、「一 資産が担保に供されている場合における次に掲げる事項」と「(1) 資産が担保に供されている場合における次に掲げる事項」は、最初の符号部分「一」と「(1)」のみが異なるので、対応条文として同じ行に表示する。その他、公知の文章比較技術を組み合わせて、対応すると判断される条文を併記する。対応条文が見つからない場合は、他方の条文の箇所をブランク行にする。
【0043】
次に、ステップS104において、操作員に表中の条文データを適時並べ換えさせ、対応条文の比較結果を入力させる。例えば、符号部分を除いて完全に一致するものは比較結果ID=0、文章の一部が完全に一致するものは比較結果ID=1、対応する条文がないものについは比較結果ID=2のように判定させる。
【0044】
作成した条文対応表は、ステップS105において、注記項目チェック表に含ませ操作員に表示する。もちろん、注記項目チェック表には、電気事業会計規則のみを表示し、操作員の要求があったときに、対応する会社計算規則の条文を表示するようにしてもよい。そして、ステップS106において、操作員に注記項目チェック表の記載項目、備考欄を入力させる。以上のステップS104からS106の処理を全ての注記表に対してチェック表を作成するまで繰り返す(ステップS107)。
【0045】
図8は、このようにして作成した会社計算規則と電気事業会計規則の条文対応表の例を示した図である。
【0046】
図9は、注記表作成処理のフローを示した図である。まず、ステップS201において、ユーザ端末20から、計算種類データと関連する財務データを受信する。そして、ステップS202において、注記項目チェック表を参照しながら、操作員に注記項目を作成させる。この時、作成した注記項目にはチェック表と同じ記載項目IDを付記する。次に、ステップS203において、作成した注記項目と注記項目チェック表の記載項目IDを比較し、全ての記載項目が入力されているかをチェックする。このチェックは、記載項目の脱落についてはチェックのみで、注記内容の妥当性、計算結果の正誤については、別のシステムで行うようにしてもよい。
【0047】
一つの注記表に対する注記項目に対してステップS202からS203の処理を繰り返し、注記項目の抜けがないかどうかを判断し(ステップS204)、抜けがなければ注記ファイルとして出力する(ステップS205)。以上のステップS201〜S205の処理を12項目の注記表全てに対して行う(ステップS206)。
【0048】
図10は、注記表の一例として、貸借対照表に関する注記表を示した図である。ここでは、記載項目IDは、前述したように、記載項目があるものと該当記載があるものとを区別できるようしておく。図では、A3−nは、記載項目が存在するもので、B3−nは、記載項目が存在しないもの(該当なし)に対応する。なお、記載項目IDは、注記項目チェック表に記載されたIDと一致するが、最終的に提出する書類においては消去される。なお、この注記表は、単独で注記表としてまとめてもよいが、貸借対照表に計算書類のあるものはその計算書類に付記してもよい。
【0049】
図11は、注記表の比較の確認表示の概念図について示した図である。上記の装置で作成された注記表は、決算報告を提出するたびに保存されるので、本システム10では、この保存されたデータを元に今期と前年同期の注記表の内容を項目ごとに比較し、その変遷をチェックすることができる。例えば、図示するように、今期の注記表Aと前年同期の注記表Aの項目2が前年同期の注記表に存在しない場合は、操作員端末40及び/又は関連するユーザ端末の確認表示を行うことができる。このようにすることで、注記表の記載漏れも確認することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係るシステム構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る注記表作成支援システム10の概念図を示す図である。
【図3】注記表に記載すべき事項をまとめた図である。
【図4】ユーザ端末20、注記表処理装置30、及び操作員端末40のハードウェア構成の概略図を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る注記表処理装置30の機能ブロックの概要を示す図である。
【図6】注記項目チェック表の例として、貸借対照表に関する注記項目チェック表を示す図である。
【図7】注記項目チェック表の作成処理フローを示す図である。
【図8】会社計算規則と電気事業会計規則の条文対応表の例を示す図である。
【図9】注記表作成処理のフローを示す図である。
【図10】注記表の一例として、貸借対照表に関する注記表を示す図である。
【図11】注記表の比較確認表示の概念図を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
10 注記表作成支援システム
11 計算書類、財務データ
12 会社計算規則条文電子データ
13 電気事業会計規則条文電子データ
14 注記項チェック表
15A〜15L 注記表
20 ユーザ端末
21 システムバス
22 CPU(制御部)
23,24,25 記憶部
26 電源部
27 入力部
28 表示部
29 通信部
30 注記表処理装置
31 条文電子データ入力手段
32 条文タグ附加手段
33 注記項目チェック表作成手段
34 計算書類受信手段
35 注記表作成手段
36 注記項目比較手段
37 確認表示手段
38 タグ付条文電子データ記憶手段
39 注記項目チェック表・注記表記憶手段
40 操作員端末
50 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
会社法の規定する注記表の作成を支援する注記表処理装置であって、
会社計算規則及び事業者別会計規則のうち少なくとも一方の条文電子データを入力として受け付ける条文電子データ入力手段と、
前記条文電子データそれぞれに前記注記表の注記項目に関する条文を抽出しタグ付けさせるタグ附加手段と、
前記タグ付けされた条文の少なくとも一方と当該条文に対応した前記注記表の記載項目を含んだ注記項目チェック表を操作員の端末に表示し、今期に必要な前記記載項目のIDを選択させて前記注記項目チェック表を完成する注記項目チェック表作成手段と、
を備えた注記表処理装置。
【請求項2】
前記注記項目チェック表作成手段は、会社計算規則及び前記事業者別会計規則の少なくとも一方の条文電子データの改訂があった場合に、改定前と改定後の条文を前記注記項目チェック表に含めて表示する、請求項1に記載の注記表処理装置。
【請求項3】
前記注記表処理装置は、
前記タグ付けされた会社計算規則と前記タグ付けされた前記事業者別会計規則とを併記して表示し、前記操作員にそれぞれの条文を比較させ比較結果IDを入力させる手段を更に備えた、請求項1乃至2に記載の注記表処理装置。
【請求項4】
前記事業者別会計規則は、電気事業会計規則である、請求項1乃至3のいずれかに記載の注記表処理装置。
【請求項5】
前記注記表処理装置は、
外部から計算書類の電子データを受信する計算書類受信手段と、前記注記項目チェック表を用いて前記注記表を作成する注記表作成手段と、
前記注記表に記載された記載項目と前記注記項目チェック表の記載項目を比較する注記項目比較手段と、
前記比較した結果、前記注記表の記載項目に記載もれを検出した場合には確認画面を前記操作員の端末に送信する確認表示手段と、
を更に備えた、請求項1乃至4のいずれかに記載の注記表処理装置。
【請求項6】
前記注記項目比較手段は、前期の注記表と今期の注記表を比較し、前記確認表示手段は、当該比較の結果を表示する、請求項5に記載の注記表処理装置。
【請求項7】
前記確認表示手段は、前記計算書類を送信したユーザ端末に更に前記確認画面を表示する、請求項5乃至6のいずれかに記載の注記表処理装置。
【請求項8】
会社法の規定する計算書類の注記表の作成を支援するシステムであって、
ネットワークに接続された複数のユーザ端末と、注記表処理装置と、操作員端末とを含んで構成され、
前記ユーザ端末は、前記注記表処理装置に対して前記計算書類の電子データを送信する送信手段を有し、
前記注記表処理装置は、
会社計算規則及び事業者別会計規則のうち少なくとも一方の条文電子データを入力として受け付ける条文電子データ入力手段と、
前記条文電子データそれぞれに前記注記表の注記項目に関する条文を抽出しタグ付けさせるタグ附加手段と、
前記タグ付けされた条文の少なくとも一方と当該条文に対応した前記注記表の記載項目を含んだ注記項目チェック表を操作員端末に表示し、今期に必要な前記記載項目のIDを選択させて前記注記項目チェック表を完成する注記項目チェック表作成手段と、
前記注記項目チェック表を用いて前記計算書類に記載された注記項目と比較する手段と、
前記計算書類に注記項目の入力もれを検出した場合に確認画面を前記操作員端末に送信する確認表示手段と、
を有し、
前記操作員端末は、前記確認画面を受信して表示する表示手段を有する、
システム。
【請求項9】
会社法の規定する計算書類の注記表の作成を支援するための方法であって、
ネットワークに接続された複数のユーザ端末と、注記表処理装置と、操作員端末とを含んだシステムにおいて、
前記ユーザ端末が、前記注記表処理装置に対して前記計算書類の電子データを送信する送信ステップを実行し、
前記注記表処理装置が、
会社計算規則及び事業者別会計規則のうち少なくとも一方の条文電子データを入力として受け付ける条文電子データ入力ステップと、
前記条文電子データそれぞれに前記注記表の注記項目に関する条文を抽出しタグ付けさせるタグ附加ステップと、
前記タグ付けされた条文の少なくとも一方と当該条文に対応した前記注記表の記載項目を含んだ注記項目チェック表を操作員端末に表示し、今期に必要な前記記載項目のIDを選択させて前記注記項目チェック表を完成する注記項目チェック表作成ステップと、
前記注記項目チェック表を用いて前記計算書類に記載された注記項目と比較するステップと、
前記計算書類に注記項目の入力もれを検出した場合に確認画面を前記操作員端末に送信する確認表示ステップと、
を実行し、
前記操作員端末が、前記確認画面を受信して表示する表示ステップを実行する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−48500(P2009−48500A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215250(P2007−215250)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】