説明

洋上施設用浮体構造物および洋上施設の施工方法

【課題】アンカーの施工コストを低減することができる洋上施設用浮体構造物および洋上施設の施工方法を提供する。
【解決手段】洋上施設基礎としての中央浮体12と、中央浮体12の上下方向の軸心Zから径外方側に配置され、中央浮体12とそれぞれ連結された複数の外側浮体14とからなる本体16を備えた洋上施設用の浮体構造物10であって、本体16を緊張係留索で海底に係留するための降下可能な重力式アンカー22と、アンカー22の水中重量を相殺するための取り外し可能な仮設浮体24とをさらに備えるようにする。そして、製作ヤードにて製作した洋上施設用浮体構造物10を洋上施設設置海域に曳航し、本体16からアンカー22を降下して海底に着底させ、本体16の喫水を大きくして係留索を本体16に固定し、本体16の喫水を小さくすることで係留索に初期張力を発生させ、仮設浮体24を撤去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、洋上に浮かべた浮体構造に風車を搭載して洋上風力発電を行う浮体式洋上風力発電施設などの洋上施設用の浮体構造物および洋上施設の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、風力発電が注目されている。しかし、陸地での適地が減少しており、今後は、洋上での立地開発が進むと考えられる。日本は海岸線が長く、洋上での風力開発の推進が期待される。しかし、太平洋など外洋に面していることから海象条件が厳しく、風力発電施設を支える浮体そのものが大型になることや、施工の難易度が高いことから高コストとなることが問題であった。
【0003】
特に、浮体方式の洋上風力発電施設の建設においては、浮体を係留する係留索とこれを海底に固定するアンカーのコストが高い。また、浮体の係留方式としては、鋼製チェーンなどを用いたカテナリー係留方式である緩係留方式と、鋼管や鋼棒、ケーブルなどに張力を与えて堅牢に固定するテンションレグ係留方式である緊張係留方式が知られている(例えば、特許文献1〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−248535号公報
【特許文献2】特開2002−285951号公報
【特許文献3】特開2002−285952号公報
【特許文献4】特開2010−64648号公報
【特許文献5】特開2010−30379号公報
【特許文献6】特開平4−197887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の緊張係留方式による緊張係留浮体(TLP:テンションレグプラットフォーム)は、浮体の揺れが少なく、陸上用の風車をそのまま搭載できる可能性があることから注目されているが、海象条件の厳しい海域では、アンカー重量が巨大になることからその施工の難易度が上がって、施工コストが増大するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アンカーの施工コストを低減することができる洋上施設用浮体構造物および洋上施設の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る洋上施設用浮体構造物は、洋上施設基礎としての中央浮体と、前記中央浮体の上下方向の軸心から径外方側に配置され、前記中央浮体とそれぞれ連結された複数の外側浮体とからなる本体を備えた洋上施設用の浮体構造物であって、前記本体を緊張係留索で海底に係留するための降下可能な重力式アンカーと、前記アンカーの水中重量を相殺するための取り外し可能な仮設浮体とをさらに備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る洋上施設用浮体構造物は、上述した請求項1において、前記アンカーを降下して海底に設置する際に前記アンカーの位置を保持する位置保持手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る洋上施設用浮体構造物は、上述した請求項2において、前記位置保持手段は、前記アンカーに接続可能で、バラスト調整により自身に働く浮力を調整可能な位置保持用浮体からなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る洋上施設用浮体構造物は、上述した請求項1〜3のいずれか一つにおいて、前記仮設浮体を前記外側浮体に設け、前記アンカーを前記仮設浮体に係留索で接続した状態で降下可能としたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に係る洋上施設用浮体構造物は、上述した請求項1〜4のいずれか一つにおいて、セミサブ型の浮体構造物であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に係る洋上施設の施工方法は、上述した請求項1〜5のいずれか一つに記載の洋上施設用浮体構造物を用いて洋上施設を施工する方法であって、製作ヤードにて製作した前記洋上施設用浮体構造物を洋上施設設置海域に曳航し、前記本体から前記アンカーを降下して海底に着底させ、前記本体の喫水を大きくして係留索を前記本体に固定し、前記本体の喫水を小さくすることで前記係留索に初期張力を発生させ、前記仮設浮体を撤去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る洋上施設用浮体構造物によれば、洋上施設基礎としての中央浮体と、前記中央浮体の上下方向の軸心から径外方側に配置され、前記中央浮体とそれぞれ連結された複数の外側浮体とからなる本体を備えた洋上施設用の浮体構造物であって、前記本体を緊張係留索で海底に係留するための降下可能な重力式アンカーと、前記アンカーの水中重量を相殺するための取り外し可能な仮設浮体とをさらに備えたので、アンカーを予め浮体構造物に備えたことで、現地洋上でのアンカーの施工日数の短縮を図ることができ、アンカーの施工コストを低減することができるという効果を奏する。また、アンカーを予め浮体構造物に備えると浮体構造物に大きな浮力が必要となり浮体構造物本体が大型化するおそれがあるが、取り外し可能な仮設浮体を備えたことで、浮体構造物本体の大型化を防ぐことができる。
【0014】
本発明に係る洋上施設の施工方法によれば、洋上施設用浮体構造物を用いて洋上施設を施工する方法であって、製作ヤードにて製作した前記洋上施設用浮体構造物を洋上施設設置海域に曳航し、前記本体から前記アンカーを降下して海底に着底させ、前記本体の喫水を大きくして係留索を前記本体に固定し、前記本体の喫水を小さくすることで前記係留索に初期張力を発生させ、前記仮設浮体を撤去するので、アンカーを予め浮体構造物に備えたことで、現地洋上でのアンカーの施工日数の短縮を図ることができ、アンカーの施工コストを低減することができるという効果を奏する。また、アンカーを予め浮体構造物に備えると浮体構造物に大きな浮力が必要となり浮体構造物本体が大型化するおそれがあるが、取り外し可能な仮設浮体を備えたことで、浮体構造物本体の大型化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明に係る洋上施設用浮体構造物の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係る洋上施設用浮体構造物の一例を示す側面図である。
【図3】図3は、本発明に係る洋上施設用浮体構造物の一例を示す上面図である。
【図4】図4は、本発明に係る洋上施設の施工方法のフローチャート図である。
【図5】図5は、本発明に係る洋上施設の施工方法の工程1を示す図である。
【図6】図6は、本発明に係る洋上施設の施工方法の工程2を示す図である。
【図7】図7は、本発明に係る洋上施設の施工方法の工程3を示す図である。
【図8】図8は、本発明に係る洋上施設の施工方法の工程4を示す図である。
【図9】図9は、本発明に係る洋上施設の施工方法の工程5を示す図である。
【図10】図10は、本発明に係る洋上施設の施工方法の工程6を示す図である。
【図11】図11は、本発明の洋上施設の施工方法の変形例1を示す図である。
【図12】図12は、本発明の洋上施設の施工方法の変形例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る洋上施設用浮体構造物および洋上施設の施工方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
図1〜図3に示すように、本発明に係る洋上施設用浮体構造物(以下、「浮体構造物」という。)10は、洋上施設基礎としての円柱状の中央浮体12と、中央浮体12の上下方向の軸心Zから径外方側に連結配置された3個の円柱状の外側浮体14とからなる本体16を備えたセミサブ型(半潜水型)の浮体構造物である。
【0018】
中央浮体12は、風力発電用風車および塔4を搭載する風車基礎として用いられる。中央浮体12の上側の外周面には、斜めに延びた3本の棒状の第1連結部材18の一端が固定してあり、中央浮体12の下側の外周面には、水平に延びた3本の棒状の第2連結部材20の一端が固定してある。
【0019】
3個の外側浮体14は、中央浮体12の軸心Zを中心とする円の周方向等間隔に配置してあり、第1連結部材18、第2連結部材20を介して中央浮体12に連結されている。
【0020】
浮体構造物10は、円盤状の3個の重力式アンカー22と、円柱状の3個の仮設浮体24と、菱形状の3個の位置保持用浮体26(位置保持手段)とをさらに備えている。
【0021】
アンカー22は、3個の外側浮体14の下面側に配置されるものであり、浮体構造物本体16をテンドンなどの緊張係留索で海底に係留する際に、外側浮体14から分離して降下可能に構成してある。アンカー22は、降下時にはテンドンなどの係留索で仮設浮体24に接続固定された状態で降下する。このように、アンカー22を製作ヤード等で予め浮体構造物本体16に取り付けておける構造とすることで、洋上でのアンカー施工日数の短縮を図ることが可能となる。
【0022】
仮設浮体24は、アンカー22の水中重量を相殺するためのものであり、3個の外側浮体14の上面側に取り外し可能に設けてある。アンカー22は、重力式で非常に重量が大きくなることから、このアンカー22を予め浮体構造物本体16に取り付けた構造とすると本体16に大きな浮力が必要となる。しかしながら、この取り外し可能な仮設浮体24を併せて本体16に取り付けることで、本体16のサイズアップを防ぐことが可能となる。つまり、本体16からアンカー22を降下して海底にアンカー22を設置するとともに、本体16から仮設浮体24を撤去して本体16の浮力バランスを保持することができる。
【0023】
位置保持用浮体26は、アンカー22を降下して海底に設置する際にアンカー22の平面配置位置を保持するためのものであり、バラスト調整により自身に働く浮力を調整可能なものである。位置保持用浮体26は、両端に形成した凹部の下面の接続部28を介して2個のアンカー22の上面に当接した状態で配置されている。
【0024】
ここで、本実施の形態のアンカー22は、海底に不陸があることが予想されるため、一体構造のアンカーではなく、複数個(本実施の形態では3個)からなる個別のアンカーを採用している。個別のアンカーを採用すると、設置精度が要求され施工難易度が上がるため、係留索を介して各アンカー22を仮設浮体24にて固定した状態で海底まで吊り降ろす構造とする。位置保持用浮体26は、アンカー22を吊り降ろす際に、アンカー22の上面からバラスト重量を作用させつつアンカー22とともに沈降する。この場合、アンカー22の揺動を防止してその位置を保持する位置保持手段として利用される。アンカー22が海底に着底した後に、位置保持用浮体26はバラストを除去して浮上することができる。
【0025】
このように、本発明の洋上施設用浮体構造物10によれば、現地洋上でのアンカーの施工日数の短縮を図ることができ、アンカーの施工コストを低減することができる。また、アンカー22を予め浮体構造物10に備えると浮体構造物10に大きな浮力が必要となり浮体構造物本体16が大型化するおそれがあるが、取り外し可能な仮設浮体24を備えたことで、浮体構造物本体16の大型化を防ぐことができ、浮体構造物本体16を必要最小限の大きさとすることができる。さらに、位置保持用浮体26の作用により、アンカー22を海底に吊り降ろす際のアンカー設置精度を確保することができる。
【0026】
次に、本発明に係る洋上施設の施工方法について、図4〜図10を参照しながら説明する。
【0027】
図4のフローチャート図に示すように、本発明に係る洋上施設の施工方法は、洋上風力発電施設を施工する方法であり、ドッグ(浮体製作ヤード)にて洋上施設用浮体構造物10を製作し(工程1)、ドッグに注水して浮上させ(工程2)、洋上施設設置海域に曳航する(工程3)。そして、本体16からアンカー22を降下して海底BLに着底させ、本体16の喫水を大きくして係留索30を本体16に固定し(工程4)、本体16の喫水を小さくすることで係留索30に初期張力を発生させ(工程5)、仮設浮体24を撤去する(工程6)というものである。
以下に、各工程1〜6の内容を詳述する。
【0028】
[工程1:浮体構造物の製作・風車を搭載]
図5に示すように、ドッグ内で浮体構造物本体16、アンカー22、仮設浮体24、位置保持用浮体26、風車を組み立て、浮体構造物10を製作する。
【0029】
[工程2:ドッグに注水]
次に、図6に示すように、ドッグに注水して浮体構造物10を水面に浮上させ、引き出す。
【0030】
[工程3:現地曳航]
次に、図7に示すように、浮体構造物10を船舶等で洋上施設設置地点に曳航する。
【0031】
[工程4:アンカーの降下・海底設置]
次に、図8に示すように、浮体構造物10とアンカー22の固定を解除する。位置保持用浮体26内に注水してバラスト重量を増し、これをアンカー22とともに降下して海底BLに着底させる。ここで、アンカー22は、仮設浮体24と係留索30で繋がれた状態で降下する。
【0032】
[工程5:位置保持用浮体の浮上・撤去]
次に、図9に示すように、アンカー22着底後、位置保持用浮体26内のバラスト水を排水しエアを注入して浮上させ、位置保持用浮体26を撤去する。続いて、本体16内部(例えば、外側浮体14内部)にバラスト水を注水して本体16を水面WLから所定の喫水まで沈み込ませ、係留索30の上端を本体16(例えば、外側浮体14上端)に固定する。係留索30を固定した後、本体16内部のバラスト水を排水して係留索30に本体16の浮力のみで初期張力を付与する。
【0033】
[工程6:仮設浮体の撤去]
最後に、図10に示すように、仮設浮体24を撤去する。こうすることで、洋上風力発電施設100を施工することができる。
【0034】
このように、本発明に係る洋上施設の施工方法によれば、現地洋上でのアンカーの施工日数の短縮を図ることができ、アンカーの施工コストを低減することができる。また、アンカー22を予め浮体構造物10に備えると浮体構造物10に大きな浮力が必要となり浮体構造物本体16が大型化するおそれがあるが、取り外し可能な仮設浮体24を備えたことで、浮体構造物本体16の大型化を防ぐことができ、浮体構造物本体16を必要最小限の大きさとすることができる。さらに、位置保持用浮体26の作用により、アンカー22を海底に吊り降ろす際のアンカー設置精度を確保することができる。
【0035】
次に、本発明に係る洋上施設の施工方法の変形例1および2について図11および図12を参照しながら説明する。以下の変形例1、2は、位置保持用浮体26を引き上げる時の重量と安定性等を配慮した施工方法であり、現場の施工条件等に応じて適宜選択することができる。
【0036】
[変形例1]
まず、変形例1について説明する。
図11に示すように、本発明の変形例1に係る洋上施設の施工方法は、洋上施設用浮体構造物の本体16にウインチ32を設け、位置保持用浮体26内のエアを残したままこれをウインチ32で吊り降ろすものである。ここで、各仮設浮体24に張り出し架台34を設け、この架台34上にウインチ32を設けて、このウインチ32からのワイヤロープ36を位置保持用浮体26の両端上面に固定してある滑車38に巻回しておく。
【0037】
この変形例1の具体的な施工手順を説明する。
上記の工程4(図8)において、浮体構造物10とアンカー22の固定を解除した後、位置保持用浮体26内のエアを残し、アンカー22および位置保持用浮体26の吊り重量を軽減した状態で、ウインチ32により位置保持用浮体26とともにアンカー22を降下して海底BLに着底させる。
【0038】
着底後に、位置保持用浮体26内からエアを排出して浮力を軽減し、ウインチ32で位置保持用浮体26を吊り上げ、水面WL近くで位置保持用浮体26内に再びエアを注入して位置保持用浮体26を撤去する。
【0039】
続いて、上記の工程5、6と同様にして、本体16内部にバラスト水を注水して本体16を水面WLから所定の喫水まで沈み込ませ、係留索30の上端を本体16に固定し、本体16内部のバラスト水を排水して喫水を小さくすることで係留索30に本体16の浮力のみで初期張力を発生させる。最後に、仮設浮体24を撤去する。
【0040】
[変形例2]
次に、変形例2について説明する。
図12に示すように、本発明の変形例2に係る洋上施設の施工方法は、上記の変形例1と同様にウインチ32等を設け、位置保持用浮体26内に注水して、これを海底に残置するものである。
【0041】
具体的には、上記の工程4(図8)において、浮体構造物10とアンカー22の固定を解除して、位置保持用浮体26とともにアンカー22を降下して海底BLに着底させる。着底後に、位置保持用浮体26内にバラスト水を注水し、そのまま位置保持用浮体26を海底BLに残置する。
【0042】
続いて、上記の工程5、6と同様にして、本体16内部にバラスト水を注水して本体16を水面WLから所定の喫水まで沈み込ませ、係留索30の上端を本体16に固定し、本体16内部のバラスト水を排水して係留索30に本体16の浮力のみで初期張力を発生させる。なお、この変形例2の場合には、上記の工程6のように、仮設浮体24を撤去する必要はない。
【0043】
以上説明したように、本発明に係る洋上施設用浮体構造物によれば、洋上施設基礎としての中央浮体と、前記中央浮体の上下方向の軸心から径外方側に配置され、前記中央浮体とそれぞれ連結された複数の外側浮体とからなる本体を備えた洋上施設用の浮体構造物であって、前記本体を緊張係留索で海底に係留するための降下可能な重力式アンカーと、前記アンカーの水中重量を相殺するための取り外し可能な仮設浮体とをさらに備えたので、アンカーを予め浮体構造物に備えたことで、現地洋上でのアンカーの施工日数の短縮を図ることができ、アンカーの施工コストを低減することができるという効果を奏する。また、アンカーを予め浮体構造物に備えると浮体構造物に大きな浮力が必要となり浮体構造物本体が大型化するおそれがあるが、取り外し可能な仮設浮体を備えたことで、浮体構造物本体の大型化を防ぐことができる。
【0044】
また、本発明に係る洋上施設の施工方法によれば、洋上施設用浮体構造物を用いて洋上施設を施工する方法であって、製作ヤードにて製作した前記洋上施設用浮体構造物を洋上施設設置海域に曳航し、前記本体から前記アンカーを降下して海底に着底させ、前記本体の喫水を大きくして係留索を前記本体に固定し、前記本体の喫水を小さくすることで前記係留索に初期張力を発生させ、前記仮設浮体を撤去するので、アンカーを予め浮体構造物に備えたことで、現地洋上でのアンカーの施工日数の短縮を図ることができ、アンカーの施工コストを低減することができるという効果を奏する。また、アンカーを予め浮体構造物に備えると浮体構造物に大きな浮力が必要となり浮体構造物本体が大型化するおそれがあるが、取り外し可能な仮設浮体を備えたことで、浮体構造物本体の大型化を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る洋上施設用浮体構造物は、洋上に浮かべた浮体構造に風車を搭載して洋上風力発電を行う浮体式洋上風力発電用の浮体構造物および洋上施設の施工方法に有用であり、特に、海底に緊張係留方式で係留する洋上風力発電用浮体構造物および洋上風力発電施設の施工方法に適している。
【符号の説明】
【0046】
4 塔
10 洋上施設用浮体構造物
12 中央浮体
14 外側浮体
16 本体
18 第1連結部材
20 第2連結部材
22 アンカー
24 仮設浮体
26 位置保持用浮体(位置保持手段)
28 接続部
30 係留索
32 ウインチ
34 架台
36 ワイヤロープ
38 滑車
100 洋上風力発電施設(洋上施設)
WL 水面
BL 海底
Z 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上施設基礎としての中央浮体と、前記中央浮体の上下方向の軸心から径外方側に配置され、前記中央浮体とそれぞれ連結された複数の外側浮体とからなる本体を備えた洋上施設用の浮体構造物であって、
前記本体を緊張係留索で海底に係留するための降下可能な重力式アンカーと、前記アンカーの水中重量を相殺するための取り外し可能な仮設浮体とをさらに備えたことを特徴とする洋上施設用浮体構造物。
【請求項2】
前記アンカーを降下して海底に設置する際に前記アンカーの位置を保持する位置保持手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の洋上施設用浮体構造物。
【請求項3】
前記位置保持手段は、前記アンカーに接続可能で、バラスト調整により自身に働く浮力を調整可能な位置保持用浮体からなることを特徴とする請求項2に記載の洋上施設用浮体構造物。
【請求項4】
前記仮設浮体を前記外側浮体に設け、前記アンカーを前記仮設浮体に係留索で接続した状態で降下可能としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の洋上施設用浮体構造物。
【請求項5】
セミサブ型の浮体構造物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の洋上施設用浮体構造物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の洋上施設用浮体構造物を用いて洋上施設を施工する方法であって、
製作ヤードにて製作した前記洋上施設用浮体構造物を洋上施設設置海域に曳航し、
前記本体から前記アンカーを降下して海底に着底させ、前記本体の喫水を大きくして係留索を前記本体に固定し、前記本体の喫水を小さくすることで前記係留索に初期張力を発生させ、前記仮設浮体を撤去することを特徴とする洋上施設の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−56333(P2012−56333A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198287(P2010−198287)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】