説明

洗浄剤組成物

【課題】水溶性の付着物を洗浄除去することが可能な洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】被洗浄物に付着した付着物を洗浄除去するための洗浄剤組成物である。洗浄剤組成物は、炭化水素系の基材と水とアルコールとからなる。水の含有量は、洗浄剤組成物全体において0.01〜5重量%であり、アルコールの含有量は、重量%で水の1〜200倍であり、かつ洗浄剤組成物全体において90重量%以下であり、残部が、基材よりなる。基材は、軽油あるいはガソリンであることが好ましい。基材は、有機溶剤であってもよい。基材は、30℃における動粘度が0.5〜20mm2/sであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料噴射機器の噴孔部やエンジン内部で代表される、内燃機関の燃料と接触する部品等には、長期間使用することにより、付着物が付着する。これらの部品を適正に使用するためには、付着物を洗浄する必要があり、付着物の除去には、ポリブテンアミンやポリエーテルアミン等を主成分にした洗浄剤が用いられている。
【0003】
しかしながら、これらの洗浄剤は、カーボン系の付着物を洗浄除去することはできるが、一般的にインジェクタ燃料噴射機器の内部に付着する、水溶性のナトリウムやカリウム化合物からなる付着物については、ほとんど洗浄することができなかった。
従って、これらの水溶性の付着物に対し洗浄効果の高い洗浄剤の開発が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開昭57−101676号公報
【特許文献2】特開平2−42878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、水溶性の付着物を洗浄除去することが可能な洗浄剤組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被洗浄物に付着した付着物を洗浄除去するための洗浄剤組成物において、
該洗浄剤組成物は、炭化水素系の基材と水とアルコールとからなり、
上記水の含有量は、上記洗浄剤組成物全体において0.01〜5重量%であり、
上記アルコールの含有量は、重量%で上記水の1〜200倍であり、かつ上記洗浄剤組成物全体において90重量%以下であり、
残部が、上記基材よりなることを特徴とする洗浄剤組成物にある(請求項1)。
【0007】
上記洗浄剤組成物は、上述したように、水とアルコール含有量を調整することにより、水との親和性が低い炭化水素系の基材中に、水を安定的に分散した洗浄剤組成物である。
すなわち、上記水を上記洗浄剤組成物全体において0.01〜5重量%含有することにより、洗浄剤組成物に、水溶性の付着物に対する洗浄除去効果を与えることができる。
【0008】
また、上記アルコールを、重量%で上記水の1〜200倍であり、かつ上記洗浄剤組成物全体において90重量%以下の範囲で含有することにより、水を洗浄剤組成物中に安定的に分散させることができる。
そして、このように、水溶性の付着物を洗浄除去することができる水を、アルコールによって基材中に安定的に分散させることにより、この洗浄剤組成物は、水溶性の付着物の洗浄除去を可能にすることができるのである。
【0009】
さらに、水の含有量を上記特定の範囲に限定して安定的に分散させることによって、上記被洗浄物が、水によって腐食しやすい材質であっても、洗浄することによる腐食の発生を抑制することができる。
以上のように、本発明によれば、水溶性の付着物を洗浄除去することが可能な洗浄剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の洗浄剤組成物は、上記水の含有量は、上記洗浄剤組成物全体において0.01〜5重量%である。
上記水の含有量が0.01重量%未満の場合には、水溶性付着物に対する洗浄除去の効果を十分に得られないという問題があり、一方、上記水の含有量が5重量%を超える場合には、腐食の原因となる等、上記被洗浄物を用いたシステムに悪影響を与えるという問題がある。
【0011】
また、上記アルコールの含有量は、重量%で上記水の1〜200倍であり、かつ上記洗浄剤組成物全体において90重量%以下である。
上記アルコールの含有量が水の含有量の1倍未満である場合には、上記水を上記基材に安定的に分散させることができず、一方、上記アルコールの含有量が水の含有量の200倍を超える場合には、水とアルコールの親和力が増し、付着物に作用しなくなり、付着物の洗浄除去効果が低下するという問題がある。また、上記アルコールの含有量が90重量%を超える場合には、腐食の原因となる等、上記被洗浄物を用いたシステムに悪影響を与えるという問題がある。
また、上記アルコールの含有量は、より好ましくは、10重量%以下とするのが良い。
【0012】
本発明の洗浄剤組成物は、上記基材は、軽油あるいはガソリンであることが好ましい(請求項2)。
軽油あるいはガソリンは、比較的揮発性が高く、これを基材として用いることにより、付着物の洗浄除去後にシステム中に洗浄剤組成物が残存しにくく、また、残存していても問題がほとんどない。特に、後述するごとく、被洗浄物が内燃機関の燃料と接触する部品である場合には、その燃料が軽油あるいはガソリンである場合がほとんどであり、非常に有効である。
また、上記軽油はJIS K 2204に規定されたものを指し、上記ガソリンはJISK 2202に規定されたものを指す。
【0013】
また、上記基材は、有機溶剤とすることもできる(請求項3)。
この場合にも、基本的に上記と同様の効果を得ることができる。
上記有機溶剤としては、例えば、アセトン、トルエン、ヘキサン等が挙げられる。
【0014】
また、上記基材は、30℃における動粘度が0.5〜20mm2/sであることが好ましい(請求項4)。
この場合には、適度な流動性を確保することができ、取り扱いが容易であり、付着物の洗浄除去を良好に行うことができる。
【0015】
上記基材の30℃における動粘度が0.5mm2/s未満の場合には、内燃機関の燃料と接触するしゅう動部品の摩耗が増加するおそれがあり、一方、上記動粘度が20mm2/sを超える場合には、粘性が高くなり、取り扱いが困難になるおそれがある。
【0016】
また、上記アルコールは、水酸基を1つ以上有する炭素数2〜6の物質であることが好ましい(請求項5)。
この場合には、水を基材中に、特に安定的に分散させることができる。
【0017】
上記アルコールの炭素数が1の場合には、上記被洗浄物を用いたシステムのゴムや樹脂部品に悪影響を与えるおそれがあり、一方、上記アルコールの炭素数が7以上の場合には、水を上記基材に安定的に分散させることができないおそれがある。
また、上記アルコールとしては、例えば、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0018】
また、上記洗浄剤組成物は、上記被洗浄物としての内燃機関の燃料と接触する部品に付着した付着物を洗浄除去する際に用いられることが好ましい(請求項6)。
内燃機関の燃料と接触する部品に付着する付着物を洗浄除去する場合には、上述したように、上記付着物に水溶性の付着物が含まれている場合が多く、これを従来の洗浄剤により洗浄除去することは困難である。この場合に本発明の洗浄剤組成物を用いれば、水を基材中に安定的に分散させることが可能であり、水溶性の付着物洗浄除去を行うことができるため、非常に有効である。なお、本発明は洗浄除去する対象である被洗浄物を特定することなく、多目的に利用が可能であることは言うまでもない。
【0019】
なお、本発明の洗浄剤組成物は、上記のごとく、基本組成が、基材、水、アルコールよりなる。しかしながら、液体状のものであることから、更に他の成分を加えることが可能である。そのため、実使用においては、本発明の作用効果を阻害しない範囲で、種々の目的により他の成分を更に添加しても良い。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
本例は、本発明の洗浄剤組成物にかかる実施例及び比較例について説明する。
本例の洗浄剤組成物は、炭化水素系の基材と水とアルコールとからなる洗浄剤組成物である。
まず、本発明の実施例及び比較例として、表1、表2に示す組成の洗浄剤組成物(試料E1〜試料E14、試料C1〜試料C10)を作製した。
【0021】
【表1】

【0022】
表1より知られるごとく、本例の実施例としての試料E1〜試料E14は、水の含有量は、上記洗浄剤組成物全体において0.01〜5重量%であり、上記アルコールの含有量は、重量%で上記水の1〜200倍であり、かつ上記洗浄剤組成物全体において90重量%以下であり、残部が、上記基材よりなる。
【0023】
【表2】

【0024】
次に、各試料(試料E1〜試料E14、試料C1〜試料C10)について、洗浄性評価試験を行い、洗浄性及び腐食性を評価し、総合評価を行った。結果を、表1及び表2に合わせて示す。
<洗浄性評価試験>
洗浄性評価試験は、まず、水溶性付着物を金属試験片(SKH2)に付着させたテストピースを作製した。具体的には、水溶性付着物に含まれる代表的な物質の試薬を水に15%溶解させた水溶液を作製し、金属試験片を浸漬した後引き上げ、水を加熱蒸発させることにより金属試験片に付着させた。
【0025】
その後、このテストピースを各試料中に4時間浸漬して洗浄除去を行った。その後、付着物の減少量を電子天秤を用いて測定し、洗浄性を評価した。評価が◎及び○のものを合格、評価が×のものを不合格とする。
【0026】
(評価基準)
◎:付着物の減少量が81〜100%のもの。
○:付着物の減少量が31〜80%のもの。
×:付着物の減少量が0〜30%のもの。
【0027】
<腐食性評価>
上記洗浄性評価試験後の金属試験片の表面に腐食の兆候が見られるか否かを目視にて観察し、腐食性を評価した。評価が○のものを合格とし、評価が×のものを不合格とした。
(評価基準)
○:腐食の兆候が確認されないもの。
×:腐食の兆候が確認されたもの。
【0028】
<総合評価>
上記洗浄性評価及び上記腐食評価から、総合的に評価を行った。評価が◎及び○のものを合格とし、×のものを不合格とした。
(評価基準)
◎:洗浄性評価が◎であり、腐食性評価が○のもの。
○:洗浄性評価及び腐食性評価が○のもの。
×:洗浄性評価、腐食性評価のいずれか一方でも×のもの。
【0029】
表1より知られるごとく、本発明の実施例としての試料E1〜試料E14は、付着物の洗浄除去を良好に行うことができた。
また、本発明の比較例としての試料C1〜試料C3及び試料C6〜試料C8は、水の含有量が本発明の下限を下回るため、十分な洗浄性を得ることができず、洗浄性が不合格であった。
【0030】
また、本発明の比較例としての試料C4及び試料C9は、アルコールの含有量が、水の含有量に対して、500倍であり、本発明の上限を上回っているため、水とアルコールの親和力が増し、付着物に作用しなくなるという理由により、付着物の洗浄効果が不合格であった。
また、本発明の比較例としての試料C5及び試料C10は、水分の含有量が、本発明の上限を上回るため、金属試験片に金属腐食の兆候が見られ、不合格であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物に付着した付着物を洗浄除去するための洗浄剤組成物において、
該洗浄剤組成物は、炭化水素系の基材と水とアルコールとからなり、
上記水の含有量は、上記洗浄剤組成物全体において0.01〜5重量%であり、
上記アルコールの含有量は、重量%で上記水の1〜200倍であり、かつ上記洗浄剤組成物全体において90重量%以下であり、
残部が、上記基材よりなることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
請求項1において、上記基材は、軽油あるいはガソリンであることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項3】
請求項1において、上記基材は、有機溶剤であることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記基材は、30℃における動粘度が0.5〜20mm2/sであることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記アルコールは、水酸基を1つ以上有する炭素数2〜6の物質であることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記洗浄剤組成物は、上記被洗浄物としての内燃機関の燃料と接触する部品に付着した付着物を洗浄除去する際に用いられることを特徴とする洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2008−81626(P2008−81626A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264134(P2006−264134)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】