説明

洗浄方法

【課題】 より高い洗浄効果が得られる洗浄方法を提供する。
【解決手段】 (i)泡形成機構を有し、(ii)吐出口の吐出面積が0.3〜1.0mm2であり、(iii)1回のストロークで0.3〜0.7gの内容物を吐出するトリガー式スプレーヤーにより、液体洗浄剤を、特定の線速度条件で対象物に噴霧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式スプレーヤーを用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体洗剤や次亜塩素酸系漂白剤の対象表面への付着性を高める技術は従来から検討が行われており、特許文献1では粘度鉱物を配合することで、特許文献2では界面活性剤を組み合わせることで、さらに特許文献3では特定の重合体を配合することによって、組成物に粘度を付与して付着性を高める技術が検討されている。さらに特許文献4では、このように粘度を付与した組成物の物性とスプレー性についての検討がなされている。一方、トリガー式スプレーヤーを用いて組成物を噴霧した際に、泡立ち性を向上することで付着性を高める検討も行われており、特許文献5〜6では界面活性剤の種類や組み合わせを、特許文献7では特定の重合体や水溶性化合物を配合することによって付着性を向上する検討が行われている。また、落ちにくい汚れに対する洗浄漂白性能を向上する技術として、特許文献8のように特定の界面活性剤を配合することや、pHを調整する技術の検討などもなされている。
【0003】
容器の点からも検討がなされていて、特許文献9ではスクリーンを設置することで泡を生成することが、特許文献10〜11ではトリガー式スプレーヤーのノズル部分を検討することで泡立ち性の検討がなされ、さらに特許文献12では好みにより泡立ち性を変えることができる機構が、特許文献13では組成物の物性とトリガー式スプレーヤーの機構との組み合わせも開示されている。
【0004】
【特許文献1】特公昭61−21969号公報
【特許文献2】特開平11−279591号公報
【特許文献3】特開2001−107091号公報
【特許文献4】特開2001−107095号公報
【特許文献5】特開昭63−72798号公報
【特許文献6】特開平6−256798号公報
【特許文献7】特開2000−204399号公報
【特許文献8】特開2002−212593号公報
【特許文献9】特公昭63−2668号公報
【特許文献10】実公平6−34858号公報
【特許文献11】実開平7−9451号公報
【特許文献12】特開平8−71463号公報
【特許文献13】特開2002−194400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
硬質表面用の洗剤、漂白剤等の洗浄剤は、使い勝手などの点からトリガー容器に充填し、対象表面に噴霧する方法が多く用いられる。特許文献5〜7のように、泡状に対象表面に噴霧し、垂直表面に付着させることで漂白剤を表面に保持することで垂直表面に対しても高い漂白効果を得ることも知られている。しかしながら、通常泡形成成分として用いられる界面活性剤だけでは垂直表面への付着性は満足できるレベルではなく、このため特許文献1〜4では漂白剤組成物の粘度や物性を制御することで付着性を向上させる技術が開示されている。しかしながら、組成物の粘度を向上させると付着性は向上するものの、期待される漂白効果が得られないという問題がある。さらに特許文献8のように、特定の界面活性剤の配合やpHを調整することによって、漂白性能を高める技術が開示されているが、浴室の壁面などの垂直面では、組成物の付着量が漂白洗浄性能に関与することなどから、低粘度の漂白剤組成物の垂直表面への付着性を向上させる技術が求められる。
【0006】
一方、次亜塩素酸系漂白剤に用いられるトリガー容器としては特許文献9〜13などが知られている。これらトリガー容器を用いると泡の形成能に優れるものの、低粘度の液体漂白剤を用いた場合には垂直表面への付着性が満足できるレベルではなく、この改善が求められる。
【0007】
従って本発明が解決しようとする課題は、例えば低粘度の液体洗浄剤で垂直表面を洗浄するような場合でも、より高い洗浄効果が得られる洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(i)泡形成機構を有し、(ii)吐出口の吐出面積が0.3〜1.0mm2であり、(iii)1回のストロークで0.3〜0.7gの内容物を吐出するトリガー式スプレーヤーにより、液体洗浄剤を、該トリガー式スプレーヤーの噴霧口を通過する液体洗浄剤の平均線速度が25m/s〜55m/s且つ最大線速度が60m/s〜100m/sの条件で対象物に噴霧する洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い洗浄効果が得られるトリガー式スプレーヤーを用いた洗浄方法が提供される。特に、本発明では、噴霧された洗浄剤の泡の硬質表面等に対する付着性が良好であるため、低粘度の液体洗浄剤で垂直表面を洗浄するような場合でも、優れた洗浄効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いられる液体洗浄剤としては、洗浄剤、漂白剤、漂白洗浄剤等が挙げられる。これらは、界面活性剤と水を含有し、トリガー式スプレーヤーで噴霧されることで、泡状に対象物に付着するものが好ましい。本発明では、漂白により対象物のシミ汚れや黒ずみ汚れ等を除去されることから、漂白も洗浄に包含されるものとする。以下、本発明の好ましい液体洗浄剤として液体漂白剤を例に説明する。
【0011】
<液体漂白剤>
本発明に係る液体漂白剤は次亜塩素酸アルカリ金属塩、好ましくは次亜塩素酸ナトリウムを含有する。次亜塩素酸ナトリウムは、製造上次亜塩素酸ナトリウムと当モルの塩化ナトリウムが混在するが、塩化ナトリウムが多量に存在する次亜塩素酸ナトリウムは貯蔵安定性を損なう場合があるため、予め塩化ナトリウムを低減化したものを用いることが好ましい。具体的には塩化ナトリウムを次亜塩素酸ナトリウムに対して10〜60モル%、好ましくは10〜40モル%のものが好適である。このような塩化ナトリウムを低減化した次亜塩素酸ナトリウムは、低食次亜塩素酸ナトリウムとして市販されている。
【0012】
本発明に係る液体漂白剤は、次亜塩素酸アルカリ金属塩を0.5〜5重量%、更に1.5〜4質量%、特に2〜3質量%含有することが好ましい。
【0013】
本発明に係る液体漂白剤には、起泡性を付与する目的から界面活性剤を含有する。具体的には非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種以上を用いることが可能である。しかしながら、界面活性剤は次亜ハロゲン酸塩の貯蔵安定性を悪くする場合が多く、種類及び含有量には注意を要する。
【0014】
非イオン界面活性剤としてはポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤が使用可能であり、アルキルグリコシドやアルカノールアミド型等の界面活性剤は次亜ハロゲン酸塩の安定性の点から用いない方が好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤のオキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数は2又は3、好ましくはエチレン基)の平均付加モル数は5〜15が貯蔵安定性の点から好適である。アルキル基の炭素数は好ましくは10〜18、より好ましくは10〜14である。さらに、オキシアルキレン基の末端を炭素数1〜5のアルキル基で修飾することによって、貯蔵安定性がさらに向上する。
【0015】
陰イオン界面活性剤としては、アルキル基の炭素数が10〜18、好ましくは10〜14、オキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数は2又は3、好ましくはエチレン基)の平均付加モル数が1〜6、好ましくは1〜4のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル基の炭素数が10〜18、好ましくは10〜14のアルキル硫酸エステル塩、炭素数が10〜18、好ましくは10〜14のアルカンスルホン酸塩、炭素数8〜14の飽和脂肪酸塩、アルキル基の炭素数が10〜18、好ましくは10〜14、オキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数は2又は3、好ましくはエチレン基)の平均付加モル数が1〜15、好ましくは1〜13のポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボキシメチルエーテル塩、アルキル基の炭素数が10〜18、好ましくは10〜14のアルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれる1種以上が好適である。
【0016】
陽イオン界面活性剤としては、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基から選ばれる基を1〜3個と残りが炭素数6〜18、好ましくは8〜14のアルキル基を有する4級アンモニウム塩が好適であり、エステル基やアミド基を有する陽イオン界面活性剤は安定性上使用を控えるべきである。
【0017】
両性界面活性剤としてはアルキル基の炭素数が8〜18、好ましくは8〜14のN−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシド、N−アルキル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−1−スルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチル−N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウムカルボベタインを用いることが可能である。
【0018】
本発明に係る液体漂白剤には界面活性剤として、起泡力の点で炭素数8〜12の脂肪酸塩、炭素数8〜14のアルカンスルホン酸塩、炭素数8〜12のアルキル硫酸エステル塩、アルキル基の炭素数が8〜12でありオキシエチレン基の平均付加モル数が1〜4のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、炭素数8〜16のアルキルジメチルアミンオキサイドが好ましく、樹脂部のカビ汚れへの浸透性に対しては、窒素原子に結合する4つの基のうち1つ又は2つが炭素数8〜12のアルキル基で、残りが炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基である第4級アンモニウム型カチオン界面活性剤を併用することが好ましい。
【0019】
なお、陰イオン界面活性剤の塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましく、第4級アンモニウム型カチオン界面活性剤の対イオンとしては塩素イオン、アルキル硫酸が好適である。
【0020】
本発明では、アミンオキサイド、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸及び第4級アンモニウム型カチオン界面活性剤が特に好ましく、アミンオキサイド、脂肪酸塩及び第4級アンモニウム型カチオン界面活性剤を併用することが最も好ましい。併用する場合には脂肪酸/第4級アンモニウム型カチオン界面活性剤の質量比は、0.5〜6、特に0.6〜4であることが、起泡性と漂白効果の点から好適である。
【0021】
本発明に係る液体漂白剤は、界面活性剤を0.01〜3.5質量%、更に0.05〜2.0質量%、特に0.1〜1.0質量%含有することが貯蔵安定性の点から望ましい。最も好ましい界面活性剤の組合せは、アミンオキシド型界面活性剤を0.05〜0.5質量%、脂肪酸塩を0.05〜0.5質量%、第4級アンモニウム型カチオン界面活性剤を0.01〜0.3質量%である。
【0022】
本発明に係る液体漂白剤は上記次亜塩素酸アルカリ金属塩及び界面活性剤を水に溶解させた水溶液の形態であり、次亜塩素酸アルカリ金属塩の貯蔵安定性の点から、微量に混入する金属を除去したイオン交換水あるいは蒸留水を用いることが好適である。
【0023】
水の含有量は貯蔵安定性の点から、液体漂白剤中80〜98質量%、更に90〜98質量%が好ましい。また、液体漂白剤の20℃におけるpHを12.5〜13.5に調整することが、貯蔵安定性及び漂白効果の点から好ましい。
【0024】
このようなpHに調整する目的から、本発明に係る液体漂白剤には水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有することが好ましく、この中でも水酸化ナトリウムが好ましい。本発明に係る水性液体漂白剤中に含有される上記アルカリ成分の含有量は0.2〜1質量%、好ましくは0.2〜0.8質量%、特に好ましくは0.3〜0.6質量%であり、0.2質量%以下では充分な貯蔵安定性が得られず、1質量%を越える含有量は漂白効果が低下する。
【0025】
本発明に係る液体漂白剤は、さらに炭素数1〜3のアルキル基で1〜3個、好ましくは1個置換されたベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩を含有することにより、スプレーヤーにて噴霧する時における起泡力を更に向上でき、使用時の硬質表面への付着性を改善することができる。また同時に高温下における保存安定性を向上させることができる。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩が好ましい。具体的にはクメンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。中でも、m−キシレンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0026】
本発明に係る液体漂白剤中には上記ベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩を0.1〜3.0質量%であり、0.1〜2.0質量%含有することが好ましい。この範囲において起泡力を更に向上させることがで、且つ高温下での次亜塩素酸ナトリウムの保存安定性を高めることがきる。
【0027】
本発明に係る液体漂白剤には、その他の任意成分として、香料成分を配合することができる。次亜塩素酸塩系に配合可能な香料成分の例としては、特開昭50−74581号公報及び特開昭62−205200号公報を参考にすることができ、単体香料及びそれらを組合せた配合香料であってもよい。香料は通常、液体漂白剤中に0.001〜0.5質量%含有されるが、安定性を損なう恐れがあるので、配合成分と配合量の決定には注意を要する。
【0028】
<トリガー式スプレーヤー>
本発明に係るトリガー式スプレーヤーは、(i)泡形成機構を有し、(ii)吐出口の吐出面積が0.3〜0.7mm2であり、(iii)1回のストロークで0.3〜0.7gの内容物を吐出するトリガー式スプレーヤーである。
【0029】
更に、該トリガー式スプレーヤーは、その噴霧口を通過する液体洗浄剤の平均線速度が25m/s〜55m/s且つ最大線速度が60m/s〜100m/sの条件で対象物に噴霧できる機構を有するものである。ここで、平均線速度とは、トリガー式スプレーヤーを用いて噴霧する動作をビデオで撮影し、トリガーレバーが動いている時間を計測し、同時に測定した内容液の吐出量と吐出口の断面積から算出した値であり、最大線速度とは、動作中のトリガーレバーが1フレームで動く最大の移動距離を求め、その際に吐出する内容液量と吐出口の断面積から算出した値である。
【0030】
これに対して、本発明では、一回のストロークで吐出される量が0.3〜0.7gであるトリガー式スプレーヤーにより、上記平均線速度と最大線速度となるように液体洗浄剤を噴霧することで、泡付着性を高め、洗浄力の向上を達成できることを見出した。特に、一回のストロークで吐出される量が例えば0.8〜1.2gに設計されたトリガー式スプレー容器に、敢えて吐出量が0.3〜0.7gになるような制限手段を設けることが、本発明の線速度の条件を満たすには好適である。なお、トリガーを引く力を手動で調整する、いわゆるチョコ引きでは本発明の要件である線速度を達成できないため、本発明の効果を得ることが出来ないことを付け加える。
【0031】
本発明に用いるトリガー式スプレーの非限定的ではあるが好ましい態様として、添付した図面により詳細に説明する。
【0032】
本発明におけるトリガー式スプレーとしては泡形成機構を有するものが好ましい。泡形成機構は、スピンエレメント及び筒状の構造体、直径4〜8mmの円形状の空間部分に棒状の突起を数個設置された液体通過板を有する構造のものが好適である。ここでスピンエレメントとは、スピンエレメントを通じて液状物の流れにスピンを与え、最後にノズルから噴出する機構であり、図1中の(2)の部材である。筒状の構造体とは図1中の(12)に形成される空間である。液体通過板とは図1中の(1)の部材である。また、その詳細な構造としては特許文献25や特許文献26の図などを参考にすることができる。
【0033】
泡形成機構の部材である液体通過板(図1中の部材(1))は、直径5〜7mmの円形状の空間部分に棒状の突起を好ましくは3〜8個設置されたものであり、通過する板を平面で見た場合に、好ましくは幅0.8〜1.2mm、長さ2〜4mmの長方形状の棒状突起が好適である。また、棒状の突起部分を除いた空間部分に対する突起部分の占める面積は20〜90面積%、好ましくは30〜80面積%、より好ましくは40〜70面積%が好適であり、このような液体通過板を設置することで、垂直表面への泡の付着性が良好になる。
【0034】
液体通過板の好ましい平面図を図2(a)〜(e)に示す。これらの中でも特に図2(a)のように、複数の棒状突起が均等な間隔で円周上に配置する平面構造を有する液体通過板が好適である。
【0035】
本発明に係るトリガー式スプレーヤーは、吐出口(図1中の(3)の部分)の吐出面積が0.3〜1.0mm2、好ましくは0.5〜0.8mm2である。通常、液吐出量が少ないトリガー式スプレーヤーは液垂れなどが生じるため吐出面積は非常に小さく、0.2mm2以下であるが、本発明では敢えて吐出口を大きく採ることで、付着性のよい泡を得ることができる。
【0036】
本発明に係るトリガー式スプレーヤーは、線速度を得る目的からピストン〔図1中の(4)〕の液体漂白剤等が接触する部分の面積〔図3中の(d)斜線部分の面積〕を100〜300mm2、好ましくは120〜280mm2、特に好ましくは150〜250mm2が好適であり、このような範囲内で本発明の好ましい線速度が得られ、その結果付着性の優れた泡を形成することが可能になる。
【0037】
本発明では、一回のストロークで吐出される量が0.8〜1.5g、好ましくは0.8〜1.2gに設計された容器(図1)に、敢えて吐出量が0.3〜0.7gになるような制限手段を設けることが好ましい。通常、液体漂白剤等の内容物はディップチューブ〔図1中の(7)〕を通して、ピストン液封入部分〔図1中の(5)〕に送られ、トリガーを引くことでバルブ〔図1中の(9)〕を通して、スピンエレメントに送られる。この液封入部分の容積は0.8〜1.2cm3になるように設計される。この液封入部分の容積を「ピストンの容量」という。本発明ではピストンの容積は0.8〜1.2cm3であるが、液封入部分からスピンエレメントに送られる液量を0.3〜0.7cm3になるように制限を設ける。具体的には〔図3中の(c)又は(d)の可動距離に制限を与える方法、あるいはレバー〔図1中の(6)〕とレバー突起部分〔図1中の(11)〕の角度〔図3中の(a)〕を好ましい吐出量が得られるように設計することが好ましい。
【0038】
ピストン可動距離を制限する方法としてはピストン可動部分のいずれかにストッパーを設けることが好ましく、また、レバーの可動部分に制限を設けることもできる。特に、図5に示すように、例えばノズル部分とレバー部分の間に、レバーの戻りを制限する手段(f)を設けることで、噴霧口を通過する液体洗浄剤の平均線速度と最大線速度を調整することができる。この方法は簡易な構成で済むため好ましい。
【実施例】
【0039】
<トリガー式スプレーヤー付き容器>
(1)容器1
図1のトリガー式スプレーヤー(1回のストロークで吐出する吐出量1g、吐出口の吐出面積0.6mm2、図3(d)の面積200mm2、手動でレバーを引いた場合の吐出口での内容物の平均線速度は30m/s〜50m/sの範囲になる)に、図4(e)のストッパーを設け、吐出量を0.5gになるように設計した。
【0040】
(2)容器2
カビとりハイターストロング(花王)のトリガー式スプレーヤーにおいて、ノズル部分とレバー部分との間に図5(f)のストッパーを設け、吐出量を調整できるようにした。
【0041】
<漂白効果>
表1に示す組成の硬質表面用塩素系液体漂白剤を調製し、漂白効果の評価を行った。該漂白剤の粘度は、TOKIMEC VISCOMETER BM型を用いて20℃で測定した。
【0042】
クラドスポリウム・ヘルバルム(Cladosporium herbaum)を接種し、30℃で14日間培養したプラスチック板(ABS樹脂製)をモデルプレートとして用意した。各組成物40μLをモデルカビプレート上に滴下し、1分間および5分間放置後直ちに測色計(日本電色工業(株)製、ND−300A)を用いて明度(L値)を測定した。なお、プラスチック板の元のL値は92.4であり、モデルプレートのL値は60〜70であった。よってL値が高い(92.4に近いほどカビの除去率が高く、漂白性能が高いことを示している。1分後または5分後のそれぞれのL値により以下の基準で漂白効果を判定した。
【0043】
(1分後の判定基準)
○:L値が78以上
×:L値が78未満
(5分後の判定基準)
○:L値が90以上
×:L値が90未満
【0044】
【表1】

【0045】
表中の配合成分は以下のものである。
・次亜塩素酸ナトリウム:次亜塩素酸ナトリウム(南海化学工業(株)製)
・水酸化ナトリウム:48%液体苛性ソーダ(南海化学工業(株)製)
・ラウリルジメチルアミンオキサイド:アンヒトール20N(花王(株)製)
・カプリン酸ナトリウム:ルナック10−98(花王(株)製)
・ラウリル酸ナトリウム:ルナックL−98(花王(株)製)
・アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:ネオペレックスG−25(花王(株)製)
・メタキシレンスルホン酸ナトリウム:SXA(三菱ガス化学(株)製)
【0046】
<泡の吐出性/付着性と漂白効果>
浴室用の3段ラック(COLTINA)を家庭で使用し、洗浄を行わずに汚れが発生するまで使用を続けたものを評価用サンプルとして用いた。垂直に延びている棒状の支柱部分に発生した汚れに対して、吐出量を可変できるようにした容器2を用いて表1の実施例の組成物を2回スプレーし、5分間放置した後に水洗して組成物を洗い流した。その際、組成物をスプレーした際の平均線速度、組成物を噴霧した直後の泡の吐出性と放置中の泡の付着性、および水で洗い流した後の漂白効果を専門パネラー1名が以下の判定基準で評価を行い、結果を表2に示した。なお組成物の吐出量は、10回続けてスプレーした際の重量の平均値を用いた。
【0047】
(泡の吐出性の判定基準)
○:泡状に噴霧されている
△:やや水っぽい部分がある
×:ほとんど泡になっていない。
(泡の付着性の判定基準)
○:ほとんどの泡が汚れに付着している
△:汚れには付着しているが、床に多く垂れ落ちている
×:汚れを覆うことができていない
(漂白効果の判定基準)
○:汚れがスッキリ落ちている
△:多くの汚れが落ちている
×:汚れが落ちていないことがわかる
【0048】
<タイル面での泡の付着性>
10cm角のタイルが目地剤を使用して張られている家庭の浴室の壁で、吐出量を可変できるようにした容器2を用いて表1の実施例の組成物を1回スプレーした際の付着性について、噴霧直後の泡が1分間放置した後にどのように移動するかを、泡の先端部分の移動距離を測定し、下記の判定基準て評価を行い表2に示した。
【0049】
(漂白効果の判定基準)
○:移動距離が10cm以下
△:移動距離が10cm以上20cm以下
×:移動距離が20cm以上
【0050】
【表2】

【0051】
表2中、試験No.1、5、6は比較例である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の方法に用いられるトリガー式スプレーヤーの一例において、その要部を示す概略断面図
【図2】本発明の方法に用いられるトリガー式スプレーヤーの液体通過板の一例を示す平面概略図
【図3】本発明の方法に用いられるトリガー式スプレーヤーの一例において、ピストン部分を拡大して示す概略断面図
【図4】本発明の方法に用いられるトリガー式スプレーヤーの他の例において、ピストン部分を拡大して示す概略断面図
【図5】本発明の方法に用いられるトリガー式スプレーの他の例を示す概略図
【符号の説明】
【0053】
(1):液体通過板
(2):スピンエレメント
(3):吐出口
(4):ピストン
(12):筒状の構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)泡形成機構を有し、(ii)吐出口の吐出面積が0.3〜1.0mm2であり、(iii)1回のストロークで0.3〜0.7gの内容物を吐出するトリガー式スプレーヤーにより、液体洗浄剤を、該トリガー式スプレーヤーの噴霧口を通過する液体洗浄剤の平均線速度が25m/s〜55m/s且つ最大線速度が60m/s〜100m/sの条件で対象物に噴霧する洗浄方法。
【請求項2】
液体洗浄剤が、次亜塩素酸アルカリ金属塩0.5〜5重量%、界面活性剤を0.01〜3.5質量%、及び水を含有する、20℃における粘度が3〜10mPa・sの液体漂白剤である請求項1記載の洗浄方法。
【請求項3】
トリガー式スプレーヤーの泡形成機構が、スピンエレメント及び筒状の構造体、直径4〜8mmの円形状の空間部分に棒状の突起を数個設置された液体通過板を含む請求項1又は2記載の洗浄方法。
【請求項4】
トリガー式スプレーヤーの泡形成機構が、前記空間部分の中心方向に0.5〜1.2mmの厚さの棒状の突起が3〜8個設置された構造である請求項3記載の洗浄方法。
【請求項5】
トリガー式スプレーヤーのピストンの容量が0.8〜1.2cm3であり、ピストンの可動距離が1回のストロークで内容物を0.3〜0.7g吐出する長さである請求項1〜4の何れか1項記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−320845(P2006−320845A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146661(P2005−146661)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】