洗浄消毒装置及び洗浄消毒装置の制御方法
【課題】トップカバーの天井洗浄を行う場合において、すすぎ工程の総時間を延ばすことなく、排水終了時点における、天井に残存する水滴とそれに起因する洗浄槽の残水を減らす。
【解決手段】洗浄消毒装置の洗浄槽は、上部開口部がトップカバーで覆われる。洗浄槽内にはトップカバーの内面である天井に向けて液体を噴射する天井洗浄ノズルが設けられている。すすぎ工程では、循環ポンプ76によって洗浄槽内の水を循環させる。循環ポンプ76と天井洗浄ノズルをつなぐ供給経路にはバルブ92が配置されており、循環開始時にバルブ92が開かれて天井洗浄ノズルから水が噴射される。バルブ92は、循環開始から噴射時間T1が経過したところで閉じられて天井洗浄ノズルの噴射が停止する。循環が終了すると、排水が行われる。排水の時間を長くすることなく、天井から水が自重によって落下する時間が長く確保される。
【解決手段】洗浄消毒装置の洗浄槽は、上部開口部がトップカバーで覆われる。洗浄槽内にはトップカバーの内面である天井に向けて液体を噴射する天井洗浄ノズルが設けられている。すすぎ工程では、循環ポンプ76によって洗浄槽内の水を循環させる。循環ポンプ76と天井洗浄ノズルをつなぐ供給経路にはバルブ92が配置されており、循環開始時にバルブ92が開かれて天井洗浄ノズルから水が噴射される。バルブ92は、循環開始から噴射時間T1が経過したところで閉じられて天井洗浄ノズルの噴射が停止する。循環が終了すると、排水が行われる。排水の時間を長くすることなく、天井から水が自重によって落下する時間が長く確保される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡などの医療器具を洗浄消毒する洗浄消毒装置及び洗浄消毒装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済みの内視鏡を洗浄及び消毒する洗浄消毒装置が知られている(特許文献1及び2参照)。洗浄消毒装置は、使用済みの内視鏡を洗浄槽に収容し、洗浄工程、消毒工程等からなる洗浄消毒処理を自動的に行う。洗浄槽には、供給された洗浄液や消毒液が貯留されて、長尺の挿入部を持つ内視鏡が巻き回された状態で収容される。洗浄槽の上部開口部は、洗浄槽外に洗浄液や消毒液が飛散するのを防止するために、装置本体に開閉自在に設けられたトップカバーで覆われる。
【0003】
洗浄工程は、洗浄液を洗浄槽に貯留し、貯留した洗浄液を洗浄槽から循環用の配管を経由して再び洗浄槽に循環させることで水流を発生させ、水流によって、内視鏡の外表面及び内視鏡内に配設された各チャンネル内に付着した体液や汚物を洗い流す。消毒工程は、装置内に設けられている消毒液タンクから洗浄槽内に所定量の消毒液を供給し、消毒液中に内視鏡を浸漬させて病原菌やウイルスを除去し、または病原性を消失させる。
【0004】
洗浄工程及び消毒工程の各工程の後には、すすぎ工程が行われる。すすぎ工程は、洗浄槽に水を供給し、洗浄工程と同様に、供給された水を、循環用の配管を経由して循環させることで、内視鏡の外表面及びチャンネル内に残っている洗浄液や消毒液を水で洗い流す。すすぎ工程は、洗浄槽に水を供給する給水と、給水終了後の水の循環と、循環終了後にすすぎに使用した水の洗浄槽からの排水の3つのサブ工程からなる。
【0005】
排水が終了した時点において、洗浄槽や配管から排水しきれなかった残水があると、不衛生であるばかりか、消毒工程の前のすすぎ工程において残水があると、残水によって消毒液が希釈されてしまい、消毒液が適正な濃度にならない場合がある。残水が完全に排水されるように排水の時間を長くとると、すすぎ工程の総時間が長くなってしまう。
【0006】
特許文献1及び2に記載されている洗浄消毒装置では、排水時に、管路内に加圧した空気を送り込んだり、管路内を負圧にすることで、排水能力を高めている。これにより、すすぎ工程の総時間を延ばすことなく、管路内の残水を減らしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−112343号公報
【特許文献2】特開2009−142324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
洗浄消毒装置には、洗浄槽内に、トップカバーに向けて水を噴射して天井(トップカバーの内面)を洗浄するための天井洗浄ノズルが設けられているものがある。天井洗浄ノズルは、循環用の管路に接続されており、すすぎ工程において水の循環が行われている間、天井に向けて水を噴射し続ける。噴射された水は、天井から自重によって洗浄槽に向けて落下する。循環終了と同時に天井洗浄ノズルの噴射も停止し、洗浄槽に落下した水は、排水される。
【0009】
しかしながら、天井から水が洗浄槽に落下するまでにはある程度の時間がかかるため、排水終了時点においても、天井に多くの水滴が残存していることがあった。天井の水滴は時間が経てば洗浄槽に落下するが、排水終了後に洗浄槽に落下しても排水されないため、洗浄槽に残水が生じる。残水が多いと、上述の通り、不衛生であるのはもちろんのこと、次に消毒工程が行われる場合には、消毒液を希釈する原因にもなる。また、排水終了後に天井に水滴が残存していると、排水終了直後にトップカバーが開けられたときに水滴が天井から流れ落ちて、洗浄槽外に飛散することもあり、操作者に対して不快感を与える原因にもなる。
【0010】
こうした問題の対策として、排水時間を延ばすことが考えられるが、排水時間を延ばすと、すすぎ工程の総時間が延びてしまうという問題が生じるため、採用し難い。上記特許文献1及び2は、配管の残水を排出する技術が開示されているのみであり、天井に残存する水滴及びそれに起因する洗浄槽の残水の処理に関しては明示も示唆もなく、何ら考慮されていない。
【0011】
本発明は、こうした背景に鑑みてなされたもので、その目的は、すすぎ工程において、トップカバーの天井洗浄を行った場合でも、すすぎ工程の総時間を延ばすことなく、排水終了時点における、天井に残存する水滴とそれに起因する洗浄槽の残水を減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の洗浄消毒装置は、医療器具を収容するとともに液体が貯留される洗浄槽であり、貯留された液体によって医療器具の洗浄工程、消毒工程、及び洗浄と消毒の各工程の後にすすぎ工程が行われる洗浄槽と、洗浄槽の上部開口部を開閉するトップカバーと、洗浄槽に貯留された液体を、循環経路を通じて循環させる循環手段と、前記洗浄槽内に配置され、前記トップカバーの内面である天井に向けて、前記循環手段によって供給される液体を噴射する天井洗浄ノズルと、前記すすぎ工程のうち少なくも1つのすすぎ工程であり、前記すすぎ工程は、前記循環手段による水の循環と、循環終了後の排水とからなるサブ工程を含んでおり、前記すすぎ工程において、前記天井洗浄ノズルによる水の噴射を、前記循環の途中で停止する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
前記制御手段は、前記消毒工程の直前に実行される前記すすぎ工程において、前記循環の途中で天井洗浄ノズルの噴射を停止することが好ましい。これによれば、消毒工程開始時にすすぎ工程の残水によって消毒液が希釈される程度を軽減できる。
【0014】
前記天井洗浄ノズルの噴射を停止するタイミングは、前記排水が終了する時点において前記天井に残存する水滴の許容量を考慮して決められていることが好ましい。また、前記制御手段は、前記循環が終了する時点から予め決められた所定時間前に天井洗浄ノズルの噴射を停止することが好ましい。
【0015】
さらに、前記天井に向けて空気を噴射する天井送気ノズルを備えていることが好ましい。また、前記制御手段は、前記天井洗浄ノズルの噴射が停止した後、前記天井送気ノズルの噴射を開始することが好ましい。前記制御手段は、前記天井送気ノズルの噴射を前記排水が終了するまで継続することが好ましい。
【0016】
前記天井送気ノズルは、空気に加えて、アルコールの噴射が可能なことが好ましい。また、前記制御手段は、前記天井送気ノズルからアルコールを噴射させ、アルコールの噴射を停止させた後、空気を噴射させることが好ましい。前記天井洗浄ノズルと前記天井送気ノズルは兼用されてもよい。
【0017】
前記すすぎ工程が連続して複数回繰り返される場合には、前記制御手段は、最後のすすぎ工程においてのみ、前記循環の途中で前記天井噴射ノズルの噴射を停止することが好ましい。この場合のすすぎ工程は、消毒工程の直後に実行されることが好ましい。
【0018】
本発明の洗浄消毒装置の制御方法は、洗浄槽の上部開口部をトップカバーで覆った状態で洗浄槽に貯留された液体で医療器具の洗浄と消毒を行い、洗浄及び消毒の少なくとも一方の後に貯留された水ですすぎを行う洗浄消毒装置の制御方法において、洗浄槽内の水を循環経路を通じて循環させる循環ステップと、前記循環ステップの開始とともに洗浄槽内の天井洗浄ノズルから前記トップカバーの内面である天井に向けて水を噴射させる噴射ステップと、前記循環ステップの途中で前記水の噴射を停止する停止ステップと、前記循環ステップの終了後に前記洗浄槽から排水する排水ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、洗浄消毒装置のすすぎ工程において、天井洗浄ノズルによるトップカバーの天井への水の噴射を、排水の前に実行される循環の途中で停止するようにしたから、トップカバーの天井洗浄を行った場合でも、すすぎ工程の総時間を延ばすことなく、排水終了時点における、天井に残存する水滴とそれに起因する洗浄槽の残水を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の洗浄消毒装置の外観図である。
【図2】トップカバーを開けた状態の洗浄消毒装置の外観図である。
【図3】配管系統を示す説明図である。
【図4】すすぎ工程における循環ポンプの作動とバルブの開閉のタイミングチャートである。
【図5】電気構成の概略を示すブロック図である。
【図6】洗浄消毒処理手順を示すフローチャートである。
【図7】すすぎ工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態のすすぎ工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第3実施形態の配管系統を示す説明図である。
【図10】第3実施形態のすすぎ工程におけるタイミングチャートである。
【図11】第3実施形態のすすぎ工程の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
図1及び図2に示すように、内視鏡洗浄消毒装置(以下、洗浄消毒装置と呼ぶ)10は、箱状の装置本体11を備えている。装置本体11の上部には、使用後の内視鏡12を収容し、洗浄液や消毒液が供給される洗浄槽13が設けられている。洗浄槽13は、上部が開放された水槽であり、例えばステンレス等の耐熱性、耐蝕性等に優れた金属材料で形成されている。装置本体11には、洗浄槽13の開口部13aを覆う蓋として機能するトップカバー16が設けられている。
【0022】
装置本体11は、シャーシ(図示せず)を有しており、シャーシには、洗浄槽13やトップカバー16の他、洗浄消毒処理を行うための洗浄消毒機構(図3参照)が設けられている。洗浄消毒機構は、洗浄液や消毒液を洗浄槽13に供給するための配管、ポンプ、電磁弁、さらに、洗剤や消毒液を貯留するタンクなどからなる。シャーシの外周は、前面パネル17、側面パネル18、上部パネル19からなる外装部材によって覆われている。
【0023】
洗浄槽13の内周形状は、上方から見ると、前方部分が略円形で、後方部分が略方形をしている。前方部分の底面には、内視鏡12が載置される略円形のネット21が配置されている。ネット21は、内視鏡12と底面との間に液体が流れ込む隙間を作り、洗浄槽13に供給される液体が、内視鏡12の外表面に接触する面積を増加させる。
【0024】
ネット21の中央には、内視鏡12から取り外された、送気・送水ボタンや吸引ボタンなどの小物部品を収容する小物洗浄かご22が配置されている。小物洗浄かご22の近傍には、天井洗浄ノズル23、小物洗浄ノズル61(図3参照)、温度センサ57(図3参照)が配置されている。天井洗浄ノズル23は、上方に位置するトップカバー16の内面(天井)に向けて洗浄液や水を噴射して、天井を洗浄する。小物洗浄ノズル61は、小物洗浄かご22に収容された小物部品に向けて洗浄液や水を噴射して小物部品を洗浄する。温度センサ57は、洗浄槽13内に貯えられた液体の温度を測定する。
【0025】
内視鏡12は、被検体内に挿入される長尺の挿入部12a及びユニバーサルコード12bが巻き回された状態で、小物洗浄かご22の周囲を取り囲むようにして、ネット21上に載置される。ユニバーサルコード12bは、内視鏡12から受信する撮像信号を処理するプロセッサや、内視鏡12に内挿されたライトガイドに照明光を入力する光源装置に接続されるコードである。ユニバーサルコード12bの一端には、プロセッサに接続するコネクタや、光源装置に接続するためのコネクタが設けられている。プロセッサに接続するコネクタには、電気的な導通を得るための接点部が設けられているため、洗浄の際には、防水キャップが取り付けられる。
【0026】
挿入部12aには、送気・送水を行うための送気・送水チャンネル、鉗子などの処置具を挿通するための鉗子チャンネル、観察の障害となる体液や汚物等を吸引する吸引チャンネルが配設されている。送気・送水用のチャンネルは、一端が挿入部12aの先端の噴射ノズルに接続されており、他端は、挿入部に連設された操作部を経由してユニバーサルコード12b内へ延びている。鉗子チャンネルは、一端が挿入部12aの先端の鉗子出口に接続しており、他端が操作部12cの鉗子入口に接続している。吸引チャンネルは、挿入部の先端の鉗子出口から鉗子入口に向けて分岐する分岐点までが鉗子チャンネルと共用されており、分岐点から操作部12cを経由してユニバーサルコード12b内へ延びている。
【0027】
洗浄槽13の後方部分には、底面に、廃液口26が設けられており、側面には、水位センサ27が設けられている。廃液口26は、洗浄槽13から、使用済みの洗浄液や消毒液、及びすすぎに使用した水を排出する。水位センサ27は、例えば、液面に応じてフロートが上下動するフロートスイッチ式のレベルセンサであり、洗浄槽13内に貯えられた液体の液面の位置(水位)を検知する。水位センサ27としては、洗浄や消毒に適した液量に応じた第1水位と、第1水位よりも高く、貯留された液体のオーバーフローを検知するための第2水位といった複数の水位を検知可能な多点検知型のものが使用される。
【0028】
洗浄槽13の後方部分には、洗浄槽13の底面よりも一段高いテラス部13b、13cが設けられている。各テラス部13b、13cは、後方部分の2つの角にそれぞれ設けられており、上方から見ると、略三角形状をしている。一方のテラス部13bには、気密試験ポート28が設けられている。気密試験ポート28は、内視鏡12の挿入部12a及びユニバーサルコード12bの外皮と内蔵物の隙間に圧縮空気を送り込み、外皮に液体が進入する小さな孔や亀裂が生じていないかを試験するためのポートである。気密試験ポート28は、図示しないチューブを介して、ユニバーサルコード12bのコネクタに設けられた気密試験用の口金と接続される。
【0029】
また、テラス部13bには、内視鏡12の洗浄、消毒に用いる液体を洗浄槽13内に供給する供給ポートが設けられている。供給ポートには、洗浄槽13内に向けて屈曲された給水ノズル29a、消毒液供給ノズル29b、洗剤供給ノズル29cが設けられている。これらのノズル29a〜29cは、洗浄槽13内に貯えられる液体の液面よりも高い位置に配置されている。
【0030】
給水ノズル29aは、洗浄槽13内に水を供給し、洗剤供給ノズル29cは、洗剤タンク内に貯えられている洗剤を洗浄槽13内に供給する。使用後の内視鏡12に付着している体液や汚物は、水と洗剤とが混合された洗浄液により洗い流される。消毒液供給ノズル29bは、消毒液タンク内に貯えられている消毒液を洗浄槽13内に供給する。洗浄液で洗い流されなかった病原菌やウイルスは、消毒液により除去され、または病原性が消失される。
【0031】
テラス部13bの側面には、洗浄槽13内に貯留された液体を循環させて、洗浄槽13内の液体に水流を生じさせるための循環口31が設けられている。循環口31は、洗浄槽13内の液体を、洗浄槽13の下方に配置された循環用の配管に吸引する。給水ノズル29a、天井洗浄ノズル23、小物洗浄ノズル61は、循環用のノズルとしても使用され、循環口31から循環用の配管に吸引された液体は、各ノズル29a、23、61から洗浄槽13に再供給される。
【0032】
テラス部13cには、内視鏡12の送気・送水チャンネル、吸引チャンネル及び鉗子チャンネル内の洗浄、消毒に用いられるチャンネル洗浄ポート32が設けられている。チャンネル洗浄ポート32は、送気・送水チャンネル用、吸引チャンネル及び鉗子チャンネル用の複数のポートが設けられている。各ポートは、接続チューブ62(図3参照)を介して、送気・送水チャンネル及び吸引チャンネルのそれぞれに連通する、送気・送水ボタン及び吸引ボタンが装着される装着口と、鉗子チャンネルに連通する鉗子入口とに接続される。装着口と鉗子入口は内視鏡12の操作部12cに設けられている。チャンネル洗浄ポート32は、水、洗浄液、消毒液、アルコール、及び圧縮空気等の流体を、送気・送水チャンネル、鉗子チャンネル及び吸引チャンネル内に供給する。
【0033】
装置本体11の前面パネル17は、側端部がヒンジを介してシャーシに取り付けられており、開閉自在となっている。前面パネル17内には、図示しない収納トレイが設けられている。収納トレイには、洗剤タンク83(図3参照)及びアルコールタンク86(図3参照)が収納されている。洗剤タンク83には、内視鏡12の洗浄に使用される洗剤が貯えられている。アルコールタンク86には、内視鏡12の洗浄、消毒後に、鉗子チャンネル等の各チャンネル内に流されるアルコールが貯えられている。前面パネル17には、各タンク内の液体の残量視認用の透明窓33が取り付けられている。
【0034】
また、収納トレイには、消毒液(例えば、過酢酸、グルタールアルデヒド(GA)、オルトフタルアルデヒド(OPA)など)の濃縮液を貯えた供給ボトルが交換可能に収納される。供給ボトルは、シャーシに備え付けられた消毒液タンク84(図3参照)に接続され、濃縮液を消毒液タンク84内に供給する。濃縮液は、消毒液タンク内において水によって適正な濃度に希釈されて使用される。
【0035】
符号34は、洗浄履歴情報が印字されたプリントを排出する排紙口であり、排紙口34の奥には、プリンタ105(図5参照)が配置されている。洗浄履歴情報は、例えば、洗浄を実施した日時、洗浄担当者名、洗浄した内視鏡12のIDなどの情報である。洗浄履歴情報が印字されたプリントは、内視鏡12の洗浄消毒結果の確認、管理等に用いられる。
【0036】
上部パネル19の前端部には、操作パネル36が設けられている。操作パネル36には、各種の操作指示を入力するための操作ボタン37、各種表示を行うディスプレイ38、及び読み取り部39が設けられている。操作ボタン37は、例えば、洗浄、消毒の開始を指示するスタートボタン、緊急停止を指示するためのストップボタン、ディスプレイ38に表示される操作画面を操作するための操作キーからなる。
【0037】
ディスプレイ38は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)であり、洗浄プログラムを選択する選択画面や各種設定を行うための設定画面を含む操作画面を表示する他、洗浄・消毒処理の進捗状況や残り時間、トラブル発生時の警告メッセージ等を表示する。洗浄プログラムは、例えば、洗浄、消毒、すすぎの各工程を、どのような順序でそれぞれどの程度の時間実行するかといった洗浄処理の内容を規定する。洗浄プログラムは、洗浄、すすぎ、消毒、すすぎ、乾燥という順序で各工程を実行する標準的な洗浄プログラムの他、各工程を単独で実行する洗浄プログラムや、標準的な洗浄プログラムにおいて、洗浄時間や消毒時間が異なる複数の洗浄プログラムが用意されている。
【0038】
読み取り部39は、その内部にタグリーダ104(図5参照)が配置されている。タグリーダ104は、内視鏡12に設けられたRFIDタグや、洗浄担当者のネームプレートに設けられたRFIDタグと非接触で通信してRFIDタグ内の情報(内視鏡12のIDや洗浄担当者名など)を読み取る。
【0039】
上部パネル19は、洗浄槽13の開口部13aを露出する開口19aが形成された枠形状をしている。洗浄槽13の開口部13aの上端には、洗浄槽13の垂直に立ち上がる側面と直交し、水平方向に延設された周縁部13dが形成されている。周縁部13dと上部パネル19は、両者の境界から気体や液体が漏れる隙間が生じないように接合されている。上部パネル19の開口19aの内縁には、液体が重力の作用によって洗浄槽13に向かって流れるように、洗浄槽13の開口部13aに向かって傾斜した斜面19bが形成されている。
【0040】
トップカバー16は、例えば、プラスチックで形成された略矩形状の板状体で形成されたカバー本体41と、カバー本体41の洗浄槽13と対面する下面側の外周部に取り付けられたパッキン42とからなる。トップカバー16は、カバー本体41の後方から突出した取り付け部43(図1参照)において装置本体11に取り付けられており、取り付け部43を支点として、洗浄槽13の開口部13aを覆って閉じる閉じ位置と開口部13aを開放して露出させる開き位置との間で回動する。
【0041】
トップカバー16は、モータによって電動で開閉される。開閉の操作指示は、フットペダル44の踏み込み操作によって入力される。フットペダル44は、前面パネル17の下方に配置されている。トップカバー16が閉じているときにフットペダル44を踏み込むとトップカバー16が開き、開いているときに踏み込むと閉じる。
【0042】
トップカバー16の上面は、清掃がしやすいように、細かな凹凸の無い緩やかな曲面で構成されている。トップカバー16の下面である天井は、天井洗浄ノズル23から噴射された液体が、天井洗浄ノズル23と対向する部分から周縁部までの天井の全面に行き渡るように、断面が、天井洗浄ノズル23との対向部分を頂点として、上方に向かって凸型の緩やかな円弧状に形成されている。また、トップカバー16の天井には、前方部分にネット46が設けられている。ネット46は、トップカバー16が閉じたときに、洗浄槽13の底面に配置されたネット21と対向する位置に配置されている。ネット46は、洗浄槽13に収容された内視鏡12を上方から押さえつけて、内視鏡12を液面下に沈める。
【0043】
カバー本体41は、洗浄槽13内の様子を外部から視認できるように、例えば、透明又は半透明のプラスチック材料で形成される。パッキン42は、ゴムなどの弾性材料で形成されており、洗浄槽13の開口部13aを気密及び水密に密閉する。パッキン42は、洗浄槽13の周縁部13d及び上部パネル19の開口19aの内側面と圧接して、洗浄槽13に供給された液体が外部に飛散すること、さらに、消毒液の臭気が外部に漏れることを防止する。
【0044】
トップカバー16の後方部分には、洗浄槽13の内部と外部を連通する通気路48(図1参照)が設けられている。洗浄槽13の開口部13aは、パッキン42によって密閉される。このため、トップカバー16が閉じられている状態において、洗浄槽13の液体が廃液口26や循環口31から排出されるときには、通気路48を通じて、外部から洗浄槽13内に外気が取り入れられる。
【0045】
また、トップカバー16が閉じ位置から開き位置への回動を開始する回動初期においては、パッキン42によって開口部13aが密閉されているので、その状態でトップカバー16が開き方向に回動すると、洗浄槽13内が負圧になる。パッキン42による開口部13aの密閉が解除されるまでの間、通気路48を通じて外部から洗浄槽13に外気が取り入れられる。これにより、洗浄槽13の内外の気圧差が解消されて、トップカバー16が開き方向に回動することができる。
【0046】
トップカバー16の上面には、消臭フイルタ49が交換可能に装着されるフイルタ装着部51が形成されている。フイルタ装着部51には、通気路48を構成するスリット51aが形成されている。消臭フイルタ49は、上方からスリット51aを覆うようにフイルタ装着部51に装着され、通気路48内に配置される。消臭フイルタ49は、通気路48を通じて洗浄槽13内から外部に排出される気体の臭気を消臭する。
【0047】
フイルタ装着部51には、消臭フイルタ49を覆うフイルタカバー52が開閉自在に設けられている。フイルタカバー52には、スリット52aが形成されており、スリット52aは、スリット51aとともに通気路48を構成する。スリット51aは、断面がクランク状に屈曲して形成されており、洗浄槽13内の液体がスリット51aを通じて消臭フイルタ49に飛散することを防止している。
【0048】
図3に示すように、洗浄槽13の下面には、ラバーヒータ56が取り付けられている。ラバーヒータ56は、洗浄槽13を介して、洗浄槽13内に貯えられた液体を加熱する。液体の温度は、温度センサ(TE)57によって測定されて、測定された温度に基づいてラバーヒータ56が制御される。洗浄液や消毒液は、温度によって洗浄効果や消毒効果が変動するため、ラバーヒータ56によって適正な温度に調節される。
【0049】
また、洗浄槽13の下面には、振動板59を介して超音波振動子58が取り付けられている。振動板59は、円板形状をしており、超音波振動子58は、振動板59の周方向に沿って複数個配列されている。超音波振動子58は、洗浄槽13を振動させることで、洗浄槽13内に貯留された液体を振動させて、内視鏡12を超音波洗浄する。超音波振動子58によって液体が振動すると、液体に微細な泡が発生し、その泡の破裂に伴うエネルギーによって物体の表面から汚れが浮き上る。
【0050】
接続チューブ62は、チャンネル洗浄ポート32と、内視鏡12の各チャンネルを接続するためのものである。接続チューブ62の一端には、内視鏡12に接続チューブ62を取り付けるための取り付け具(図示せず)が設けられている。
【0051】
洗浄消毒装置10の配管系統は、大きく分けて、蛇口71から水を洗浄槽13に供給する給水経路と、洗剤、消毒液、アルコール、圧縮空気を洗浄槽13にそれぞれ供給するための供給ポンプ(SP)72、73、74、75が配置される供給経路と、循環口31から洗浄槽13内の液体を吸引して洗浄槽13に再供給するための循環ポンプ(CP)76、77が配置される循環経路と、廃液口26から洗浄槽13内の液体を排出する排出経路からなる。
【0052】
給水経路は、蛇口71から給水ノズル29aに至る経路であり、給水経路には、蛇口71とホースで接続される給水口78、バルブ(V)79、水フイルタ81、バルブ82が給水方向に沿って順に配置されている。バルブ79は、給水口78と水フイルタ81の間の経路を開閉して水の供給と停止を切り替える給水弁として機能する電磁弁である。
【0053】
水フイルタ81は、水道水に含まれる異物や細菌を捕捉して水道水を濾過する浄水フイルタである。医療器具である内視鏡12の洗浄消毒装置10では、高い浄水能力が求められるため、水フイルタ81には、酵素などの細菌作用を持つ物質が含有されたグレードの高い浄水フイルタが用いられる。バルブ82は、バルブ82から給水ノズル29aに通じる経路を、蛇口71に通じる給水経路と循環ポンプ76に通じる循環経路のいずれかと選択的に接続するための三方電磁弁である。
【0054】
供給ポンプ72は、洗剤を貯留する洗剤タンク83と洗剤供給ノズル29cとを接続する供給経路上に配置されており、洗剤タンク83から洗剤を吸い上げて洗剤供給ノズル29cに供給する。供給ポンプ73は、消毒液を貯留する消毒液タンク84と消毒液供給ノズル29bとを接続する供給経路上に配置されており、消毒液タンク84から消毒液を吸い上げて消毒液供給ノズル29bに供給する。
【0055】
供給ポンプ74は、アルコールを貯留するアルコールタンク86を供給する供給経路上に配置されており、アルコールタンク86からアルコールを吸い上げる。アルコールの供給経路は、供給ポンプ74の下流側において、チャンネル洗浄ポート32へ通じる経路と小物洗浄ノズル61へ通じる経路の2つの経路に分岐しており、供給ポンプ74が吸い上げたアルコールは、それぞれの経路を経て、チャンネル洗浄ポート32と小物洗浄ノズル61に供給される。
【0056】
エアポンプ75は、大気を圧縮して、圧縮空気をチャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61に供給する供給経路上に配置されている。エアポンプ75の下流側には、大気中に雑菌を補足して大気を浄化するエアフイルタ87が配置されている。エアフイルタ87の下流側には、バルブ88が配置されている。
【0057】
バルブ88は、バルブ88からチャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61へ通じる経路を、エアポンプ75に通じる大気を供給する経路と、循環ポンプ77に通じる経路のいずれかと選択的に接続するための三方電磁弁である。チャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61のそれぞれとバルブ82を接続する経路上には、チャンネル洗浄ポート32、小物洗浄ノズル61のそれぞれに通じる経路を開閉するバルブ89、91が配置されている。
【0058】
循環口31に一端が接続される循環経路は、循環ポンプ76へ通じる経路と、循環ポンプ77へ通じる2つの経路に分岐している。循環ポンプ76の下流側の経路は、さらに、バルブ82に通じる経路とバルブ92に通じる経路に分岐している。バルブ92は、循環ポンプ76と天井洗浄ノズル23とを接続する経路を開閉する電磁弁である。循環ポンプ76によって吸引された液体は、バルブ82及びバルブ92を経て給水ノズル29a、天井洗浄ノズル23に供給される。循環ポンプ77の下流側の経路は、バルブ88に接続している。循環ポンプ77によって吸引された液体は、バルブ88からバルブ89及びバルブ91を経て、チャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61に供給される。
【0059】
廃液口26に一端が接続される排出経路は、切り替えバルブ93に接続されている。切り替えバルブ93の下流側は、排出ポンプ(DP)94へ通じる経路と、消毒液タンク84へ通じる経路の2つの経路に分岐している。排出ポンプ94は、廃液口26から排出される液体を吸引して、装置外の下水へ廃液として排出する。切り替えバルブ93は、廃液口26から切り替えバルブ93の下流側への液体の排出を停止する閉じ状態と、廃液口26から排出ポンプ94へ通じる経路を開く状態と、廃液口26から消毒液タンク84へ通じる経路を開く状態の3つの状態を選択的に切り替える電磁弁である。
【0060】
洗浄槽13に供給された洗浄液や水は、1回使用された後、排出ポンプ94によって吸引されて装置外へ排出される。一方、消毒液は、複数回使用することが可能であるため、消毒能力が消失するまでの間、使用後の消毒液は、廃液口26から切り替えバルブ93を経由して消毒液タンク84に戻される。切り替えバルブ93は、消毒液を消毒液タンク84に戻すために設けられている。消毒液は激臭を放つため、洗浄液や水と同様に下水に排出することができない。消毒液タンク84には、図示しない排出口が設けられており、所定回数使用された消毒液は、消毒液タンク84の排出口から回収される。
【0061】
洗浄工程は、超音波洗浄と、洗浄液による洗浄(以下、本洗浄という)のサブ工程に分けられる。超音波洗浄では、まず、バルブ82が、バルブ79と給水ノズル29aを接続する状態に切り替えられた状態で、バルブ79が開かれて給水が実行される。水位センサ27が洗浄槽13に適量の水が満たされたことを検知すると、バルブ79が閉じられることにより給水が停止する。そして、超音波振動子58が作動して洗浄槽13に貯留された水を振動させる。超音波洗浄が終了すると、切り替えバルブ93が、液体の排出を停止する状態から廃液口26と排出ポンプ94を接続する状態に切り替えられて、洗浄槽13に貯留された水が装置外へ排出される。
【0062】
本洗浄では、まず、給水とともに、供給ポンプ72が作動して洗剤タンク83から洗剤ノズル29cを通じて洗浄槽13に洗剤が供給される。洗浄槽13内で水と洗剤が混合されて洗浄液が生成される。給水と洗剤供給が終了すると、洗浄液の循環が行われる。洗浄液の循環では、まず、切り替えバルブ93が閉じられて、バルブ82によって循環ポンプ76と給水ノズル29aへ通じる経路が開かれるとともに、バルブ92によって循環ポンプ76から天井洗浄ノズル23に通じる経路が開かれる。さらに、バルブ89、91によってチャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61に通じる経路が開かれる。
【0063】
この状態で、循環ポンプ76、77が作動して、循環口31から吸引された洗浄液が、給水ノズル29a、天井洗浄ノズル23、チャンネル洗浄ポート32、小物洗浄ノズル61を通じて洗浄槽13に再供給される。こうした循環により洗浄槽13内に水流が発生する。この水流によって内視鏡12の汚れが洗い流される。
【0064】
チャンネル洗浄ポート32から供給される洗浄液は、内視鏡12の各チャンネルを通って内部の汚れを洗い流し、挿入部の先端のノズル、鉗子出口等から洗浄槽13に放出される。小物洗浄ノズル61は小物洗浄かご22内の小物部品に向けて洗浄液を噴射して小物部品の汚れを洗い流す。
【0065】
天井洗浄ノズル23は天井に向けて洗浄液を噴射して、天井の汚れを洗い流す。天井に噴射された洗浄液は、天井の周縁部に向かって流れて、天井の全面に広がる。天井を伝って流れた洗浄液は、その自重によって洗浄槽13に落下する。洗浄工程においては、洗浄液の循環が行われている間、バルブ89、91、92は開かれており、チャンネル洗浄ポート32、天井洗浄ノズル23、小物洗浄ノズル61に洗浄液の供給が継続される。洗浄液の循環が終了すると、排出ポンプ94によって使用済みの洗浄液が排出される。
【0066】
消毒工程では、供給ポンプ73が作動して消毒液タンク84から消毒液供給ノズル29bを通じて洗浄槽13に消毒液が供給される。そして、洗浄工程の循環と同様に、循環ポンプ76、77が作動して消毒液の循環が所定時間行われる。循環が終了すると、切り替えバルブ93によって消毒液タンク84に通じる経路が選択されて、消毒液が廃液口26から消毒液タンク84に戻される。
【0067】
洗浄工程と消毒工程のそれぞれの工程の直後には、内視鏡12の外表面や各チャンネルに付着した洗浄液や消毒液を洗い流すすすぎ工程が行われる。図4に示すように、すすぎ工程は、洗浄工程と同様に、給水、循環、排出のサブ工程からなる。バルブ79が開かれると蛇口71から給水が行われ、洗浄槽13に水が貯留される。給水終了後、洗浄工程と同様に、循環ポンプ76、77が作動して水の循環が所定時間(循環時間)Tc行われる。すすぎ工程の循環においては、洗浄工程の循環と異なり、天井洗浄ノズル23からの水の噴射を循環開始から所定時間(噴射時間)T1の間だけ噴射を行い、噴射時間T1が経過したところで、バルブ92を閉じることにより循環ポンプ76から天井洗浄ノズル23への供給経路を遮断して水の噴射が停止される。
【0068】
天井に噴射された水の大半が自重によって天井から洗浄槽13に落下するまでには、ある程度の時間がかかる。排水が終了した後、洗浄槽13に落下する水は、洗浄槽13から排出されない残水として残る。そのため、天井洗浄ノズル23の水の噴射を循環が終了する前に(循環の途中で)停止することで、排水終了時点における残水の量を少なくしている。水が噴射されている噴射時間T1の間も、天井から水は落下するが、噴射によって天井に付着する水の増加もあるので、噴射が継続している間は、天井に残存する水滴の量は変化しない。
【0069】
水の噴射が停止されると、噴射による水の増加が無くなるので、水の落下により、天井に残存する水滴は徐々に減少する。循環時間Tcが経過して循環が終了すると、排出ポンプ94が作動して、廃液口26からの排水が開始される。排出中も、天井から洗浄槽13への水の落下は続き、排水が終了するまでの間に洗浄槽13に落下した水は、廃液口26から排水されるので、洗浄槽13には残らない。したがって、噴射停止後、排水終了までの時間T2が長いほど、天井に残存する水滴は少なくなり、排水しきれない洗浄槽13の残水の量も減る。本発明では、循環の途中で噴射を停止することで、排水時間を長くすることなく、時間T2を長くしている。
【0070】
給水時間Ts、循環時間Tc、排水時間Td、噴射時間T1の具体的な値は、例えば、給水時間Tsは約50sであり、循環時間Tcは約40sであり、排水時間Tdは約30sであり、すすぎ工程の総時間は約120s(約2分)である。噴射時間T1は約20sであり、時間T2は、循環時間Tc(約40s)+排水時間Td(約30s)−噴射時間T1(約20s)であるので、約50sである。
【0071】
噴射時間T1は、天井洗浄ノズル23からトップカバー16の天井に噴射された水が天井の全面に行き渡るのに必要な時間を考慮して決められる時間であり、具体的には、天井洗浄ノズル23の単位時間当たりの噴射量、水圧、トップカバー16のサイズに応じて適宜決定される。また、時間T2は、排水終了時点において天井に残存する水滴の許容量を考慮して決められる値である。具体的には、噴射停止後、天井から水滴が落下して、天井に残存する水滴が許容量に減少するまでの時間を計測し、この計測値に基づいて決定される。天井洗浄ノズル23の噴射量やトップカバー16のサイズによって天井に付着する水滴の量は変化するので、時間T2も噴射時間T1と同様に、天井洗浄ノズル23の噴射量やトップカバー16のサイズに応じて適宜決定される。
【0072】
図3に戻って、乾燥工程では、バルブ89、92を開いてチャンネル洗浄ポート32、小物洗浄ノズル61へ通じる経路が開かれる。供給ポンプ74が作動して、アルコールタンク86からアルコールが吸引されて、吸引されたアルコールがチャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61を通じて、内視鏡12の各チャンネル及び小物部品に吹き付けられる。
【0073】
この後、バルブ88によってエアポンプ75からバルブ89、91へ通じる経路が選択されて、エアポンプ75が作動する。エアポンプ75が作動すると、チャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61から、各チャンネル及び小物部品に圧縮空気が吹き付けられて、アルコールとともに各チャンネル内及び小物部品の外表面に付着した水滴がアルコールとともに吹き飛ばされる。また、アルコールは揮発性が高いため、アルコールの気化熱によって表面に付着した水分を蒸発させる。こうして内視鏡12の各チャンネル及び小物部品が乾燥される。
【0074】
図5に示すように、洗浄消毒装置10は、複数の電気部品を備えており、これらは装置全体を統括的に制御するCPU101に接続されている。ROM102は、装置全体の制御に用いられる制御プログラムの他、洗浄プログラムの内容が記述されたデータなど、予め設定された各種制御情報を格納している。
【0075】
RAM103は、ROM102からロードした制御プログラムなどの実行領域である。EEPROM104は、装置番号、各種設定情報、各種制御情報等の他、洗浄履歴情報を記憶している。装置番号は、個々の洗浄消毒装置10に付された識別情報である。装置番号は、製造時に付与された製造番号やシリアルナンバー、洗浄消毒装置10を使用する病院内で複数台の装置を識別するために付与された識別番号である。設定情報には、すすぎ工程における循環時間Tcや、すすぎ工程における天井噴射ノズル23の噴射時間T1などの各種処理時間が含まれる。
【0076】
制御情報には、例えば、消毒液の耐用回数が含まれている。上述の通り、消毒液は、複数回使用することが可能であり、耐用回数とは、消毒液が消毒効果を維持した状態で内視鏡12の消毒を行うことができる使用回数であり、消毒液のおおよその寿命を表している。耐用回数は、使用する消毒液によって異なる場合があるので、EEPROM104に記憶することにより、変更可能としている。耐用回数は、操作パネル36から直接入力してもよいし、消毒液名に基づいて自動的に設定してもよい。
【0077】
洗浄履歴情報は、上述した通り、洗浄を実施した日時、洗浄担当者名、洗浄した内視鏡12のIDなどの情報であり、この他、消毒液の使用回数や消毒液温度、個々の内視鏡12の識別情報であるスコープIDが含まれる。プリンタ105は、記録紙に洗浄履歴情報を印字して、印字したプリントを排紙口34から排出する。ネットワークIF106は、LANなどのネットワークに接続して通信制御を行うためのインターフェースであり、例えば、複数の洗浄消毒装置10の洗浄履歴情報や稼働状況などを、LANを経由して収集し、それらの情報を集約的に管理する管理用PC等に接続するために用いられる。
【0078】
また、CPU101には、水位センサ27、温度センサ57が接続されており、各センサ27、57は、水位検知信号や温度情報をCPU101に出力する。タイマ107は、時計回路などからの計時信号に基づいて、任意の時点からの経過時間を計測する。カウンタ108は、処理の繰り返し回数などのカウントに用いられる。さらに、CPU101には、供給ポンプ72〜74、循環ポンプ76、77、バルブ79、81、82、88、89、91、92、93、ラバーヒータ56、超音波振動子58からなる洗浄消毒処理機構を駆動するためのポンプ駆動部109、バルブ駆動部110、ヒータ駆動部111、超音波振動子駆動部112が接続されている。
【0079】
以下、上記構成による作用について、図6及び7のフローチャートに基づいて説明する。内視鏡12の洗浄消毒を行う場合には、フットペダル44が操作されて、洗浄消毒装置10のトップカバー16が開けられる。内視鏡12が洗浄槽13にセットされて、接続チューブ62で内視鏡12とチャンネル洗浄ポート32が接続される。内視鏡12がセットされた後、フットペダル44が操作されてトップカバー16が閉じられる。
【0080】
操作パネル36で洗浄プログラムが選択されて洗浄消毒の開始が指示されると(S(ステップ)10)、洗浄消毒装置10は、洗浄消毒処理を開始する。洗浄消毒装置10は、まず、洗浄工程を実行する(S20)。洗浄工程では、超音波振動子58による超音波洗浄が行われた後、洗浄液による本洗浄が実行される。本洗浄では、給水と洗剤の供給によって洗浄槽13に洗浄液が貯留された後、循環ポンプ76、77が作動して、洗浄液の循環が行われる。
【0081】
循環中、給水ノズル29a、チャンネル洗浄ポート32、天井洗浄ノズル23及び小物洗浄ノズル61から洗浄液が洗浄槽13に再供給される。循環によって、洗浄槽13内に洗浄液に水流が発生し、内視鏡12の外表面やチャンネルの汚れが洗い流される。天井洗浄ノズル23から噴射される洗浄液は、トップカバー16の天井の全面に行き渡り、天井の汚れを洗い流す。
【0082】
洗浄工程においては、給水ノズル29a、チャンネル洗浄ポート32、天井洗浄ノズル23及び小物洗浄ノズル61からの洗浄液の供給は、循環が終了するまで継続する。循環が終了すると排出ポンプ94が作動して廃液口26から洗浄液が排出される。洗浄工程が終了すると、すすぎ工程が開始される(S30)。
【0083】
図7に示すように、すすぎ工程では、まず、洗浄槽13への給水が行われる(S100)。給水が完了すると、タイマ107によって計測が開始されるとともに(S101)、循環ポンプ76、77による循環が開始される(S102)。循環が開始されると、給水ノズル29a、チャンネル洗浄ポート32、及び小物洗浄ノズル61から水が洗浄槽13に再供給される。循環によって発生した水流によって、内視鏡12の外表面やチャンネル内に付着した洗浄液が洗い流される。
【0084】
図4に示すように、循環開始時にはバルブ92が開かれた状態なので、天井洗浄ノズル23から、循環開始により水の噴射が開始される。噴射された水は天井の全面に行き渡り、天井に付着した洗浄液が洗い流される。
【0085】
CPU101は、循環が開始されると、タイマ107の計測値Tの監視を開始して、天井洗浄ノズル23の噴射時間T1が経過したか否かを判定する(S103)。CPU101は、計測値Tが噴射時間T1を上回った場合に、噴射時間T1が経過したと判定する(S103でY)。CPU101は、噴射時間T1が経過したと判定すると、バルブ92を閉じて、天井洗浄ノズル23の水の噴射を停止する(S104)。天井洗浄ノズル23の噴射が停止した後も、給水ノズル29a、チャンネル洗浄ポート32、小物洗浄ノズル61からの水の噴射は継続する。
【0086】
CPU101は、天井洗浄ノズル23の噴射を停止後もタイマ107の計測値Tの監視を継続し、循環時間Tcが経過したか否かを判定する(S105)。CPU101は、計測値Tが循環時間Tcを上回った場合に、循環時間Tcが経過したと判定する(S105でY)。CPU101は、噴射時間T1が経過したと判定すると、循環ポンプ76、77を停止して、水の循環を終了する(S106)。CPU101は、水の循環を終了した後、排出ポンプ94を作動させて、廃液口26を通じて排水する(S107)。
【0087】
すすぎ工程においては、循環開始後、噴射時間T1が経過したところで天井洗浄ノズル23の水の噴射が停止する。トップカバー16の天井に噴射された水は、天井から洗浄槽13に落下する。水の噴射が停止した後は、天井に付着する水が増えないので、水の落下によって天井に残存する水滴の量が徐々に減る。図4に示すように、循環の途中で噴射を停止しているの、循環が終了するまで噴射を継続する従来と比べて、天井に残存する水滴が減少する時間T2が長い。このため、従来と比べて、排水終了時点において、天井に残存する水滴や、洗浄槽13に残る残水を減らすことができる。排水時間を変化させず、循環の途中で噴射を停止することで、時間T2を長くしているので、すすぎ工程の総時間が延びることもない。
【0088】
図6に戻って、すすぎ工程(S30)が終了すると、消毒工程(S40)が実行される。CPU101は、供給ポンプ73を作動させて、消毒液タンク84から消毒液を洗浄槽13に供給する。消毒工程の直前のすすぎ工程(S30)において、天井洗浄ノズル23の噴射停止タイミングを早めているため、洗浄槽13の残水が少ない。そのため、消毒工程において、洗浄槽13に供給される消毒液が残水によって希釈される程度も減少するので、消毒液の適正な濃度が確保される。消毒工程では、洗浄工程及びすすぎ工程と同様に、消毒液を循環させて内視鏡12の消毒を行う。CPU101は、循環を終了した後、消毒液を廃液口26から消毒液タンク84に戻す。
【0089】
消毒工程(S40)が終了すると、すすぎ工程(S50)がすすぎ工程(S30)と同様の手順で実行される。すすぎ工程(S50)においても、天井洗浄ノズル23の水の噴射が循環途中で停止する。そのため、すすぎ工程(S50)終了時点において、洗浄槽13に残る残水が少ない。
【0090】
すすぎ工程(S50)が終了すると、乾燥工程(S60)が実行される。CPU1010は、供給ポンプ74を作動させて、チャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61からアルコールを噴射する。これにより、内視鏡12のチャンネルと小物部品にアルコールが吹き付けられる。この後、CPU101は、エアポンプ75を作動させて、チャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61から圧縮空気を噴射する。これにより、内視鏡12のチャンネルと小物部品に圧縮空気が吹き付けられて、アルコールとともにチャンネル内や小物部品の表面に付着した水滴が吹き飛ばされる。
【0091】
乾燥工程の直前のすすぎ工程(S50)の終了時点において、トップカバー16の天井に残存する水滴は少ない。そのため、例えば、乾燥工程において、小物部品に天井から落下する水滴も少ないので、乾燥効果も高い。
【0092】
乾燥工程(S60)が終了すると、洗浄消毒処理を施した内視鏡12を洗浄槽13から取り出すために、フットペダル44の操作によってトップカバー16が開けられる。トップカバー16の天井に残存している水滴が少ないため、トップカバー16の開放時に、天井を伝って洗浄槽13に向けて流れ落ちる水滴も少ない。トップカバー16の解放時にトップカバー16から多量の水滴が流れ落ちると、洗浄槽13外への水滴の飛散が多い上、見た目の印象も悪い。天井に残存する水滴を減らすことで、内視鏡12を取り出す操作者の不快感も軽減される。
【0093】
また、乾燥工程(S60)終了後、洗浄槽13から内視鏡12がすぐに取り出されずにしばらくの間放置されている場合もある。その場合でも、トップカバー16の天井に残存する水滴や洗浄槽13の残水が少ないので、雑菌の繁殖も軽減されるので、衛生面においてもよい。
【0094】
上記第1実施形態では、天井洗浄ノズル23による水の噴射時間T1を予め定められた所定時間としているが、天井洗浄ノズル23による水の噴射量や水圧を変化させることができる場合には、単位時間当たりの噴射量や水圧に応じて噴射時間T1を変化させることにより、噴射停止から排水終了までの時間T2を決定してもよい。例えば、単位時間当たりの噴射量や水圧が変化すると、トップカバー16の天井に付着する水滴の量も変化する。水滴の量が少なければ、天井に残存する水滴の許容量に減少するまでの時間も短くて済むので、噴射時間T1を長くして、排水終了までの時間T2を短くしてもよい。この場合、CPU101は、天井洗浄ノズル23の噴射量や水圧に応じて噴射時間T1を変化させて、時間T2を決定する。
【0095】
上記第1実施形態では、消毒工程の直前のすすぎ工程(S30)と、消毒工程の直後のすすぎ工程(S50)の両方のすすぎ工程において、循環の途中で、天井洗浄ノズル23の噴射を停止しているが、各すすぎ工程(S30)及び(S50)のいずれか一方でもよい。例えば、確実な消毒を行うためには消毒液の濃度は重要であるので、消毒液が希釈されないように、少なくとも消毒工程の直前のすすぎ工程(S30)において天井洗浄ノズル23の噴射停止を実行することが好ましい。
【0096】
[第2実施形態]
消毒工程の直後のすすぎ工程(図6のS50)においては、消毒液を十分に洗い流すために、すすぎ工程が繰り返し行われる場合がある。この場合、各すすぎ工程の循環の途中で天井洗浄ノズル23の噴射を停止してもよいが、図8のフローチャートに示す第2実施形態のように、最後のすすぎ工程においてのみ、その循環途中で天井洗浄ノズル23の噴射を停止してもよい。これ以外については、第2実施形態は、第1実施形態と同様なので説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0097】
第2実施形態の洗浄消毒装置において、CPU101は、すすぎ工程の回数をカウンタ108(図5参照)でカウントする。すすぎ工程が開始されるとき、まず、CPU101は、カウンタ108をリセットしてカウント値を「0」にする(S200)。そして、S201において、カウンタ108をインクリメントして、カウント値を「1」にする。この後、給水を実行する(S202)。給水後、CPU101は、タイマ107をリセットして計測をスタートさせる(S203)とともに、循環ポンプ76、77を作動させて循環を開始する(S204)。循環開始により、給水ノズル29a、チャンネル洗浄ポート32、天井洗浄ノズル23、小物洗浄ノズル61から洗浄槽13に水が再供給される。
【0098】
CPU101は、循環を開始するときに、カウント値がすすぎ工程の所定の繰り返し回数N(2以上の整数)に達したか否かを判定する。1回目のすすぎ工程では、カウント値は1であるので、CPU101は、カウント値は繰り返し回数Nに達していないと判定し(S205)、S208に進む。カウント値が繰り返し回数Nに達している場合には、最後のすすぎ工程であるので、タイマ107の計測値Tを監視して、噴射時間T1の経過を判定する(S206)。噴射時間T1が経過した場合には(S206でY)、天井洗浄ノズル23の噴射を停止する(S207)。
【0099】
S208〜S210は、第1実施形態のS105〜107と同様であり、CPU101は、循環時間Tcに達するまでの間、循環を実行し、循環終了後、排水する。排水後、S211において、CPU101は、カウント値が繰り返し回数Nに達しているかを判定し、繰り返し回数Nに達している場合には(S211でY)、すすぎ工程を終了する。繰り返し回数Nに達していない場合は(S211でN)、S201に戻り、カウンタ108をインクリメントして、給水から排水までのS202〜S211のステップを繰り返す。
【0100】
天井洗浄ノズル23の噴射を循環の途中で停止する意味は、すすぎ工程の直後に行われる消毒工程や乾燥工程などの開始時や、洗浄消毒の全工程終了時に、洗浄槽13の残水を減らすことにあるので、第2実施形態のように、すすぎ工程が連続して繰り返し実行される場合には、最後のすすぎ工程のみにおいて噴射を停止すれば、所期の効果は得られる。
【0101】
[第3実施形態]
図9〜11に示す第3実施形態のように、天井洗浄ノズル23に加えて、天井に向けて圧縮空気を噴射する天井送気ノズル121を設けて、圧縮空気によって天井に残存する水滴を吹き飛ばしてもよい。第3実施形態と第1実施形態の相違点は、天井送気ノズル121を設けた点であり、その他の構成は第1実施形態と同様であるので、以下、相違点を中心に説明する。
【0102】
図9に示すように、天井送気ノズル121は、天井洗浄ノズル23の近傍に配置されている。天井送気ノズル121は、バルブ122を介して、エアポンプ75からの圧縮空気の供給経路に接続されている。バルブ122を開けた状態でエアポンプ75が作動すると、天井送気ノズル121から圧縮空気が噴射される。
【0103】
図10及び図11に示すように、第3実施形態のすすぎ工程において、まず、給水が行われ(S301)、給水後にタイマ107がスタートし(S302)、循環が開始される(S303)。これにより、天井洗浄ノズル23から水の噴射が開始される。そして、CPU101は、タイマ107により噴射時間T1の経過を監視し(S304)、噴射時間T1が経過すると、循環途中で、バルブ92を閉じて天井洗浄ノズル23の噴射を停止する(S305)。
【0104】
CPU101は、天井洗浄ノズル23の噴射の停止と同時に、バルブ122を開き、エアポンプ75を作動させて、天井送気ノズル121からの圧縮空気の噴射を開始する(S306)。天井送気ノズル121が噴射する圧縮空気によって、トップカバー16の天井に付着している水滴が吹き飛ばされる。
【0105】
CPU101は、タイマ107により循環時間Tcの経過を監視し(S307)、循環時間Tcが経過すると、循環を終了する(S308)。循環が終了すると、排水が行われる(S309)。排水終了後、天井送気ノズル121の噴射を停止する(S310)。
【0106】
このように、天井洗浄ノズル23による水の噴射を停止した後、天井送気ノズル121による圧縮空気の噴射を行うことで、トップカバー16の天井に残存する水滴をより少なくすることができ、第1及び第2実施形態と比較して、洗浄槽13に残る残水の量をより減らすことができる。また、水滴をより早く取り除けるという効果もある。
【0107】
本例のように、天井洗浄ノズル23による水の噴射停止後、排水終了までの間、天井送気ノズル121による圧縮空気の噴射を継続すれば、圧縮空気の噴射時間が長くなるので、残水の量を減らす効果は高いが、天井送気ノズル121による圧縮空気の噴射開始及び終了のタイミングは、本例に限らず適宜決定することができる。例えば、天井送気ノズル121による圧縮空気の噴射を、天井洗浄ノズル23による水の噴射停止後、循環終了までの間としたり、あるいは、循環中は、圧縮空気の噴射を行わず、排水中のみ行ってもよい。
【0108】
また、本例では、天井送気ノズル121で圧縮空気を噴射する例で説明したが、天井送気ノズル121から圧縮空気に加えて、アルコールを噴射してもよい。例えば、すすぎ工程において、天井洗浄ノズル23の噴射停止後、まず、CPU101は、供給ポンプ74(図9参照)を作動させて、天井送気ノズル121からアルコールを天井に向けて噴射する。そして、アルコールの噴射を停止した後、エアポンプ75を作動させて天井送気ノズル121から圧縮空気を噴射する。上述の通り、アルコールは揮発性が高いため、アルコールの気化熱によって天井の水滴を蒸発させる効果があるので、天井に残存する水滴の量をより減らすことができる。さらに、アルコールには、消毒液の臭気を脱臭する作用もあるので、過酢酸などの消毒液の臭気を緩和する効果も期待できる。
【0109】
また、本例では、天井送気ノズル121と天井洗浄ノズル23を別々に設けた例で説明したが、天井送気ノズルと天井洗浄ノズルを兼用してもよい。例えば、天井洗浄ノズル23を天井送気ノズルとして利用する場合には、図3において、バルブ88とバルブ92を接続する配管を設けるとともに、バルブ92を、循環ポンプ76からの経路とバルブ88からの経路を切り替える三方電磁弁で構成する。天井洗浄ノズル23を天井送気ノズルとして利用すれば、天井送気ノズルの配置スペースを新たに確保する必要がないので、例えば、天井洗浄ノズルを有する既存の装置に対して設計変更を加える場合に有利である。
【0110】
また、天井洗浄ノズル23及び天井送気ノズル121をそれぞれ1つずつ設けた例で説明したが、少なくとも一方を複数個設けてもよい。また、天井洗浄ノズル23や天井送気ノズル121の位置も適宜変更可能である。例えば、天井送気ノズル121とは別に、テラス部13b、13cなどのより天井に近い位置に別の天井送気ノズルを設けてもよい。この場合、天井送気ノズルの噴射方向を、天井と略平行な水平方向に近い向きにすれば、水滴を吹き飛ばす効果が向上する。
【0111】
本発明は、内視鏡を洗浄・消毒する洗浄消毒装置に限らず、洗浄・消毒によって再使用される医療器具を洗浄・消毒する洗浄消毒装置にも適用できる。内視鏡以外の医療器具としては、例えば、鉗子、超音波プローブ、クリップ処置具、スネアなど、内視鏡の鉗子チャンネルを挿通して使用される処置具が考えられる。もちろん、内視鏡とともに使用される処置具以外の医療器具でもよい。本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
10 洗浄消毒装置
12 内視鏡
13 洗浄槽
13a 開口部
16 トップカバー
23 天井洗浄ノズル
76、77 循環ポンプ
79、92、122 バルブ
101 CPU
107 タイマ
108 カウンタ
121 天井送気ノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡などの医療器具を洗浄消毒する洗浄消毒装置及び洗浄消毒装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済みの内視鏡を洗浄及び消毒する洗浄消毒装置が知られている(特許文献1及び2参照)。洗浄消毒装置は、使用済みの内視鏡を洗浄槽に収容し、洗浄工程、消毒工程等からなる洗浄消毒処理を自動的に行う。洗浄槽には、供給された洗浄液や消毒液が貯留されて、長尺の挿入部を持つ内視鏡が巻き回された状態で収容される。洗浄槽の上部開口部は、洗浄槽外に洗浄液や消毒液が飛散するのを防止するために、装置本体に開閉自在に設けられたトップカバーで覆われる。
【0003】
洗浄工程は、洗浄液を洗浄槽に貯留し、貯留した洗浄液を洗浄槽から循環用の配管を経由して再び洗浄槽に循環させることで水流を発生させ、水流によって、内視鏡の外表面及び内視鏡内に配設された各チャンネル内に付着した体液や汚物を洗い流す。消毒工程は、装置内に設けられている消毒液タンクから洗浄槽内に所定量の消毒液を供給し、消毒液中に内視鏡を浸漬させて病原菌やウイルスを除去し、または病原性を消失させる。
【0004】
洗浄工程及び消毒工程の各工程の後には、すすぎ工程が行われる。すすぎ工程は、洗浄槽に水を供給し、洗浄工程と同様に、供給された水を、循環用の配管を経由して循環させることで、内視鏡の外表面及びチャンネル内に残っている洗浄液や消毒液を水で洗い流す。すすぎ工程は、洗浄槽に水を供給する給水と、給水終了後の水の循環と、循環終了後にすすぎに使用した水の洗浄槽からの排水の3つのサブ工程からなる。
【0005】
排水が終了した時点において、洗浄槽や配管から排水しきれなかった残水があると、不衛生であるばかりか、消毒工程の前のすすぎ工程において残水があると、残水によって消毒液が希釈されてしまい、消毒液が適正な濃度にならない場合がある。残水が完全に排水されるように排水の時間を長くとると、すすぎ工程の総時間が長くなってしまう。
【0006】
特許文献1及び2に記載されている洗浄消毒装置では、排水時に、管路内に加圧した空気を送り込んだり、管路内を負圧にすることで、排水能力を高めている。これにより、すすぎ工程の総時間を延ばすことなく、管路内の残水を減らしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−112343号公報
【特許文献2】特開2009−142324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
洗浄消毒装置には、洗浄槽内に、トップカバーに向けて水を噴射して天井(トップカバーの内面)を洗浄するための天井洗浄ノズルが設けられているものがある。天井洗浄ノズルは、循環用の管路に接続されており、すすぎ工程において水の循環が行われている間、天井に向けて水を噴射し続ける。噴射された水は、天井から自重によって洗浄槽に向けて落下する。循環終了と同時に天井洗浄ノズルの噴射も停止し、洗浄槽に落下した水は、排水される。
【0009】
しかしながら、天井から水が洗浄槽に落下するまでにはある程度の時間がかかるため、排水終了時点においても、天井に多くの水滴が残存していることがあった。天井の水滴は時間が経てば洗浄槽に落下するが、排水終了後に洗浄槽に落下しても排水されないため、洗浄槽に残水が生じる。残水が多いと、上述の通り、不衛生であるのはもちろんのこと、次に消毒工程が行われる場合には、消毒液を希釈する原因にもなる。また、排水終了後に天井に水滴が残存していると、排水終了直後にトップカバーが開けられたときに水滴が天井から流れ落ちて、洗浄槽外に飛散することもあり、操作者に対して不快感を与える原因にもなる。
【0010】
こうした問題の対策として、排水時間を延ばすことが考えられるが、排水時間を延ばすと、すすぎ工程の総時間が延びてしまうという問題が生じるため、採用し難い。上記特許文献1及び2は、配管の残水を排出する技術が開示されているのみであり、天井に残存する水滴及びそれに起因する洗浄槽の残水の処理に関しては明示も示唆もなく、何ら考慮されていない。
【0011】
本発明は、こうした背景に鑑みてなされたもので、その目的は、すすぎ工程において、トップカバーの天井洗浄を行った場合でも、すすぎ工程の総時間を延ばすことなく、排水終了時点における、天井に残存する水滴とそれに起因する洗浄槽の残水を減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の洗浄消毒装置は、医療器具を収容するとともに液体が貯留される洗浄槽であり、貯留された液体によって医療器具の洗浄工程、消毒工程、及び洗浄と消毒の各工程の後にすすぎ工程が行われる洗浄槽と、洗浄槽の上部開口部を開閉するトップカバーと、洗浄槽に貯留された液体を、循環経路を通じて循環させる循環手段と、前記洗浄槽内に配置され、前記トップカバーの内面である天井に向けて、前記循環手段によって供給される液体を噴射する天井洗浄ノズルと、前記すすぎ工程のうち少なくも1つのすすぎ工程であり、前記すすぎ工程は、前記循環手段による水の循環と、循環終了後の排水とからなるサブ工程を含んでおり、前記すすぎ工程において、前記天井洗浄ノズルによる水の噴射を、前記循環の途中で停止する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
前記制御手段は、前記消毒工程の直前に実行される前記すすぎ工程において、前記循環の途中で天井洗浄ノズルの噴射を停止することが好ましい。これによれば、消毒工程開始時にすすぎ工程の残水によって消毒液が希釈される程度を軽減できる。
【0014】
前記天井洗浄ノズルの噴射を停止するタイミングは、前記排水が終了する時点において前記天井に残存する水滴の許容量を考慮して決められていることが好ましい。また、前記制御手段は、前記循環が終了する時点から予め決められた所定時間前に天井洗浄ノズルの噴射を停止することが好ましい。
【0015】
さらに、前記天井に向けて空気を噴射する天井送気ノズルを備えていることが好ましい。また、前記制御手段は、前記天井洗浄ノズルの噴射が停止した後、前記天井送気ノズルの噴射を開始することが好ましい。前記制御手段は、前記天井送気ノズルの噴射を前記排水が終了するまで継続することが好ましい。
【0016】
前記天井送気ノズルは、空気に加えて、アルコールの噴射が可能なことが好ましい。また、前記制御手段は、前記天井送気ノズルからアルコールを噴射させ、アルコールの噴射を停止させた後、空気を噴射させることが好ましい。前記天井洗浄ノズルと前記天井送気ノズルは兼用されてもよい。
【0017】
前記すすぎ工程が連続して複数回繰り返される場合には、前記制御手段は、最後のすすぎ工程においてのみ、前記循環の途中で前記天井噴射ノズルの噴射を停止することが好ましい。この場合のすすぎ工程は、消毒工程の直後に実行されることが好ましい。
【0018】
本発明の洗浄消毒装置の制御方法は、洗浄槽の上部開口部をトップカバーで覆った状態で洗浄槽に貯留された液体で医療器具の洗浄と消毒を行い、洗浄及び消毒の少なくとも一方の後に貯留された水ですすぎを行う洗浄消毒装置の制御方法において、洗浄槽内の水を循環経路を通じて循環させる循環ステップと、前記循環ステップの開始とともに洗浄槽内の天井洗浄ノズルから前記トップカバーの内面である天井に向けて水を噴射させる噴射ステップと、前記循環ステップの途中で前記水の噴射を停止する停止ステップと、前記循環ステップの終了後に前記洗浄槽から排水する排水ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、洗浄消毒装置のすすぎ工程において、天井洗浄ノズルによるトップカバーの天井への水の噴射を、排水の前に実行される循環の途中で停止するようにしたから、トップカバーの天井洗浄を行った場合でも、すすぎ工程の総時間を延ばすことなく、排水終了時点における、天井に残存する水滴とそれに起因する洗浄槽の残水を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の洗浄消毒装置の外観図である。
【図2】トップカバーを開けた状態の洗浄消毒装置の外観図である。
【図3】配管系統を示す説明図である。
【図4】すすぎ工程における循環ポンプの作動とバルブの開閉のタイミングチャートである。
【図5】電気構成の概略を示すブロック図である。
【図6】洗浄消毒処理手順を示すフローチャートである。
【図7】すすぎ工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態のすすぎ工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第3実施形態の配管系統を示す説明図である。
【図10】第3実施形態のすすぎ工程におけるタイミングチャートである。
【図11】第3実施形態のすすぎ工程の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
図1及び図2に示すように、内視鏡洗浄消毒装置(以下、洗浄消毒装置と呼ぶ)10は、箱状の装置本体11を備えている。装置本体11の上部には、使用後の内視鏡12を収容し、洗浄液や消毒液が供給される洗浄槽13が設けられている。洗浄槽13は、上部が開放された水槽であり、例えばステンレス等の耐熱性、耐蝕性等に優れた金属材料で形成されている。装置本体11には、洗浄槽13の開口部13aを覆う蓋として機能するトップカバー16が設けられている。
【0022】
装置本体11は、シャーシ(図示せず)を有しており、シャーシには、洗浄槽13やトップカバー16の他、洗浄消毒処理を行うための洗浄消毒機構(図3参照)が設けられている。洗浄消毒機構は、洗浄液や消毒液を洗浄槽13に供給するための配管、ポンプ、電磁弁、さらに、洗剤や消毒液を貯留するタンクなどからなる。シャーシの外周は、前面パネル17、側面パネル18、上部パネル19からなる外装部材によって覆われている。
【0023】
洗浄槽13の内周形状は、上方から見ると、前方部分が略円形で、後方部分が略方形をしている。前方部分の底面には、内視鏡12が載置される略円形のネット21が配置されている。ネット21は、内視鏡12と底面との間に液体が流れ込む隙間を作り、洗浄槽13に供給される液体が、内視鏡12の外表面に接触する面積を増加させる。
【0024】
ネット21の中央には、内視鏡12から取り外された、送気・送水ボタンや吸引ボタンなどの小物部品を収容する小物洗浄かご22が配置されている。小物洗浄かご22の近傍には、天井洗浄ノズル23、小物洗浄ノズル61(図3参照)、温度センサ57(図3参照)が配置されている。天井洗浄ノズル23は、上方に位置するトップカバー16の内面(天井)に向けて洗浄液や水を噴射して、天井を洗浄する。小物洗浄ノズル61は、小物洗浄かご22に収容された小物部品に向けて洗浄液や水を噴射して小物部品を洗浄する。温度センサ57は、洗浄槽13内に貯えられた液体の温度を測定する。
【0025】
内視鏡12は、被検体内に挿入される長尺の挿入部12a及びユニバーサルコード12bが巻き回された状態で、小物洗浄かご22の周囲を取り囲むようにして、ネット21上に載置される。ユニバーサルコード12bは、内視鏡12から受信する撮像信号を処理するプロセッサや、内視鏡12に内挿されたライトガイドに照明光を入力する光源装置に接続されるコードである。ユニバーサルコード12bの一端には、プロセッサに接続するコネクタや、光源装置に接続するためのコネクタが設けられている。プロセッサに接続するコネクタには、電気的な導通を得るための接点部が設けられているため、洗浄の際には、防水キャップが取り付けられる。
【0026】
挿入部12aには、送気・送水を行うための送気・送水チャンネル、鉗子などの処置具を挿通するための鉗子チャンネル、観察の障害となる体液や汚物等を吸引する吸引チャンネルが配設されている。送気・送水用のチャンネルは、一端が挿入部12aの先端の噴射ノズルに接続されており、他端は、挿入部に連設された操作部を経由してユニバーサルコード12b内へ延びている。鉗子チャンネルは、一端が挿入部12aの先端の鉗子出口に接続しており、他端が操作部12cの鉗子入口に接続している。吸引チャンネルは、挿入部の先端の鉗子出口から鉗子入口に向けて分岐する分岐点までが鉗子チャンネルと共用されており、分岐点から操作部12cを経由してユニバーサルコード12b内へ延びている。
【0027】
洗浄槽13の後方部分には、底面に、廃液口26が設けられており、側面には、水位センサ27が設けられている。廃液口26は、洗浄槽13から、使用済みの洗浄液や消毒液、及びすすぎに使用した水を排出する。水位センサ27は、例えば、液面に応じてフロートが上下動するフロートスイッチ式のレベルセンサであり、洗浄槽13内に貯えられた液体の液面の位置(水位)を検知する。水位センサ27としては、洗浄や消毒に適した液量に応じた第1水位と、第1水位よりも高く、貯留された液体のオーバーフローを検知するための第2水位といった複数の水位を検知可能な多点検知型のものが使用される。
【0028】
洗浄槽13の後方部分には、洗浄槽13の底面よりも一段高いテラス部13b、13cが設けられている。各テラス部13b、13cは、後方部分の2つの角にそれぞれ設けられており、上方から見ると、略三角形状をしている。一方のテラス部13bには、気密試験ポート28が設けられている。気密試験ポート28は、内視鏡12の挿入部12a及びユニバーサルコード12bの外皮と内蔵物の隙間に圧縮空気を送り込み、外皮に液体が進入する小さな孔や亀裂が生じていないかを試験するためのポートである。気密試験ポート28は、図示しないチューブを介して、ユニバーサルコード12bのコネクタに設けられた気密試験用の口金と接続される。
【0029】
また、テラス部13bには、内視鏡12の洗浄、消毒に用いる液体を洗浄槽13内に供給する供給ポートが設けられている。供給ポートには、洗浄槽13内に向けて屈曲された給水ノズル29a、消毒液供給ノズル29b、洗剤供給ノズル29cが設けられている。これらのノズル29a〜29cは、洗浄槽13内に貯えられる液体の液面よりも高い位置に配置されている。
【0030】
給水ノズル29aは、洗浄槽13内に水を供給し、洗剤供給ノズル29cは、洗剤タンク内に貯えられている洗剤を洗浄槽13内に供給する。使用後の内視鏡12に付着している体液や汚物は、水と洗剤とが混合された洗浄液により洗い流される。消毒液供給ノズル29bは、消毒液タンク内に貯えられている消毒液を洗浄槽13内に供給する。洗浄液で洗い流されなかった病原菌やウイルスは、消毒液により除去され、または病原性が消失される。
【0031】
テラス部13bの側面には、洗浄槽13内に貯留された液体を循環させて、洗浄槽13内の液体に水流を生じさせるための循環口31が設けられている。循環口31は、洗浄槽13内の液体を、洗浄槽13の下方に配置された循環用の配管に吸引する。給水ノズル29a、天井洗浄ノズル23、小物洗浄ノズル61は、循環用のノズルとしても使用され、循環口31から循環用の配管に吸引された液体は、各ノズル29a、23、61から洗浄槽13に再供給される。
【0032】
テラス部13cには、内視鏡12の送気・送水チャンネル、吸引チャンネル及び鉗子チャンネル内の洗浄、消毒に用いられるチャンネル洗浄ポート32が設けられている。チャンネル洗浄ポート32は、送気・送水チャンネル用、吸引チャンネル及び鉗子チャンネル用の複数のポートが設けられている。各ポートは、接続チューブ62(図3参照)を介して、送気・送水チャンネル及び吸引チャンネルのそれぞれに連通する、送気・送水ボタン及び吸引ボタンが装着される装着口と、鉗子チャンネルに連通する鉗子入口とに接続される。装着口と鉗子入口は内視鏡12の操作部12cに設けられている。チャンネル洗浄ポート32は、水、洗浄液、消毒液、アルコール、及び圧縮空気等の流体を、送気・送水チャンネル、鉗子チャンネル及び吸引チャンネル内に供給する。
【0033】
装置本体11の前面パネル17は、側端部がヒンジを介してシャーシに取り付けられており、開閉自在となっている。前面パネル17内には、図示しない収納トレイが設けられている。収納トレイには、洗剤タンク83(図3参照)及びアルコールタンク86(図3参照)が収納されている。洗剤タンク83には、内視鏡12の洗浄に使用される洗剤が貯えられている。アルコールタンク86には、内視鏡12の洗浄、消毒後に、鉗子チャンネル等の各チャンネル内に流されるアルコールが貯えられている。前面パネル17には、各タンク内の液体の残量視認用の透明窓33が取り付けられている。
【0034】
また、収納トレイには、消毒液(例えば、過酢酸、グルタールアルデヒド(GA)、オルトフタルアルデヒド(OPA)など)の濃縮液を貯えた供給ボトルが交換可能に収納される。供給ボトルは、シャーシに備え付けられた消毒液タンク84(図3参照)に接続され、濃縮液を消毒液タンク84内に供給する。濃縮液は、消毒液タンク内において水によって適正な濃度に希釈されて使用される。
【0035】
符号34は、洗浄履歴情報が印字されたプリントを排出する排紙口であり、排紙口34の奥には、プリンタ105(図5参照)が配置されている。洗浄履歴情報は、例えば、洗浄を実施した日時、洗浄担当者名、洗浄した内視鏡12のIDなどの情報である。洗浄履歴情報が印字されたプリントは、内視鏡12の洗浄消毒結果の確認、管理等に用いられる。
【0036】
上部パネル19の前端部には、操作パネル36が設けられている。操作パネル36には、各種の操作指示を入力するための操作ボタン37、各種表示を行うディスプレイ38、及び読み取り部39が設けられている。操作ボタン37は、例えば、洗浄、消毒の開始を指示するスタートボタン、緊急停止を指示するためのストップボタン、ディスプレイ38に表示される操作画面を操作するための操作キーからなる。
【0037】
ディスプレイ38は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)であり、洗浄プログラムを選択する選択画面や各種設定を行うための設定画面を含む操作画面を表示する他、洗浄・消毒処理の進捗状況や残り時間、トラブル発生時の警告メッセージ等を表示する。洗浄プログラムは、例えば、洗浄、消毒、すすぎの各工程を、どのような順序でそれぞれどの程度の時間実行するかといった洗浄処理の内容を規定する。洗浄プログラムは、洗浄、すすぎ、消毒、すすぎ、乾燥という順序で各工程を実行する標準的な洗浄プログラムの他、各工程を単独で実行する洗浄プログラムや、標準的な洗浄プログラムにおいて、洗浄時間や消毒時間が異なる複数の洗浄プログラムが用意されている。
【0038】
読み取り部39は、その内部にタグリーダ104(図5参照)が配置されている。タグリーダ104は、内視鏡12に設けられたRFIDタグや、洗浄担当者のネームプレートに設けられたRFIDタグと非接触で通信してRFIDタグ内の情報(内視鏡12のIDや洗浄担当者名など)を読み取る。
【0039】
上部パネル19は、洗浄槽13の開口部13aを露出する開口19aが形成された枠形状をしている。洗浄槽13の開口部13aの上端には、洗浄槽13の垂直に立ち上がる側面と直交し、水平方向に延設された周縁部13dが形成されている。周縁部13dと上部パネル19は、両者の境界から気体や液体が漏れる隙間が生じないように接合されている。上部パネル19の開口19aの内縁には、液体が重力の作用によって洗浄槽13に向かって流れるように、洗浄槽13の開口部13aに向かって傾斜した斜面19bが形成されている。
【0040】
トップカバー16は、例えば、プラスチックで形成された略矩形状の板状体で形成されたカバー本体41と、カバー本体41の洗浄槽13と対面する下面側の外周部に取り付けられたパッキン42とからなる。トップカバー16は、カバー本体41の後方から突出した取り付け部43(図1参照)において装置本体11に取り付けられており、取り付け部43を支点として、洗浄槽13の開口部13aを覆って閉じる閉じ位置と開口部13aを開放して露出させる開き位置との間で回動する。
【0041】
トップカバー16は、モータによって電動で開閉される。開閉の操作指示は、フットペダル44の踏み込み操作によって入力される。フットペダル44は、前面パネル17の下方に配置されている。トップカバー16が閉じているときにフットペダル44を踏み込むとトップカバー16が開き、開いているときに踏み込むと閉じる。
【0042】
トップカバー16の上面は、清掃がしやすいように、細かな凹凸の無い緩やかな曲面で構成されている。トップカバー16の下面である天井は、天井洗浄ノズル23から噴射された液体が、天井洗浄ノズル23と対向する部分から周縁部までの天井の全面に行き渡るように、断面が、天井洗浄ノズル23との対向部分を頂点として、上方に向かって凸型の緩やかな円弧状に形成されている。また、トップカバー16の天井には、前方部分にネット46が設けられている。ネット46は、トップカバー16が閉じたときに、洗浄槽13の底面に配置されたネット21と対向する位置に配置されている。ネット46は、洗浄槽13に収容された内視鏡12を上方から押さえつけて、内視鏡12を液面下に沈める。
【0043】
カバー本体41は、洗浄槽13内の様子を外部から視認できるように、例えば、透明又は半透明のプラスチック材料で形成される。パッキン42は、ゴムなどの弾性材料で形成されており、洗浄槽13の開口部13aを気密及び水密に密閉する。パッキン42は、洗浄槽13の周縁部13d及び上部パネル19の開口19aの内側面と圧接して、洗浄槽13に供給された液体が外部に飛散すること、さらに、消毒液の臭気が外部に漏れることを防止する。
【0044】
トップカバー16の後方部分には、洗浄槽13の内部と外部を連通する通気路48(図1参照)が設けられている。洗浄槽13の開口部13aは、パッキン42によって密閉される。このため、トップカバー16が閉じられている状態において、洗浄槽13の液体が廃液口26や循環口31から排出されるときには、通気路48を通じて、外部から洗浄槽13内に外気が取り入れられる。
【0045】
また、トップカバー16が閉じ位置から開き位置への回動を開始する回動初期においては、パッキン42によって開口部13aが密閉されているので、その状態でトップカバー16が開き方向に回動すると、洗浄槽13内が負圧になる。パッキン42による開口部13aの密閉が解除されるまでの間、通気路48を通じて外部から洗浄槽13に外気が取り入れられる。これにより、洗浄槽13の内外の気圧差が解消されて、トップカバー16が開き方向に回動することができる。
【0046】
トップカバー16の上面には、消臭フイルタ49が交換可能に装着されるフイルタ装着部51が形成されている。フイルタ装着部51には、通気路48を構成するスリット51aが形成されている。消臭フイルタ49は、上方からスリット51aを覆うようにフイルタ装着部51に装着され、通気路48内に配置される。消臭フイルタ49は、通気路48を通じて洗浄槽13内から外部に排出される気体の臭気を消臭する。
【0047】
フイルタ装着部51には、消臭フイルタ49を覆うフイルタカバー52が開閉自在に設けられている。フイルタカバー52には、スリット52aが形成されており、スリット52aは、スリット51aとともに通気路48を構成する。スリット51aは、断面がクランク状に屈曲して形成されており、洗浄槽13内の液体がスリット51aを通じて消臭フイルタ49に飛散することを防止している。
【0048】
図3に示すように、洗浄槽13の下面には、ラバーヒータ56が取り付けられている。ラバーヒータ56は、洗浄槽13を介して、洗浄槽13内に貯えられた液体を加熱する。液体の温度は、温度センサ(TE)57によって測定されて、測定された温度に基づいてラバーヒータ56が制御される。洗浄液や消毒液は、温度によって洗浄効果や消毒効果が変動するため、ラバーヒータ56によって適正な温度に調節される。
【0049】
また、洗浄槽13の下面には、振動板59を介して超音波振動子58が取り付けられている。振動板59は、円板形状をしており、超音波振動子58は、振動板59の周方向に沿って複数個配列されている。超音波振動子58は、洗浄槽13を振動させることで、洗浄槽13内に貯留された液体を振動させて、内視鏡12を超音波洗浄する。超音波振動子58によって液体が振動すると、液体に微細な泡が発生し、その泡の破裂に伴うエネルギーによって物体の表面から汚れが浮き上る。
【0050】
接続チューブ62は、チャンネル洗浄ポート32と、内視鏡12の各チャンネルを接続するためのものである。接続チューブ62の一端には、内視鏡12に接続チューブ62を取り付けるための取り付け具(図示せず)が設けられている。
【0051】
洗浄消毒装置10の配管系統は、大きく分けて、蛇口71から水を洗浄槽13に供給する給水経路と、洗剤、消毒液、アルコール、圧縮空気を洗浄槽13にそれぞれ供給するための供給ポンプ(SP)72、73、74、75が配置される供給経路と、循環口31から洗浄槽13内の液体を吸引して洗浄槽13に再供給するための循環ポンプ(CP)76、77が配置される循環経路と、廃液口26から洗浄槽13内の液体を排出する排出経路からなる。
【0052】
給水経路は、蛇口71から給水ノズル29aに至る経路であり、給水経路には、蛇口71とホースで接続される給水口78、バルブ(V)79、水フイルタ81、バルブ82が給水方向に沿って順に配置されている。バルブ79は、給水口78と水フイルタ81の間の経路を開閉して水の供給と停止を切り替える給水弁として機能する電磁弁である。
【0053】
水フイルタ81は、水道水に含まれる異物や細菌を捕捉して水道水を濾過する浄水フイルタである。医療器具である内視鏡12の洗浄消毒装置10では、高い浄水能力が求められるため、水フイルタ81には、酵素などの細菌作用を持つ物質が含有されたグレードの高い浄水フイルタが用いられる。バルブ82は、バルブ82から給水ノズル29aに通じる経路を、蛇口71に通じる給水経路と循環ポンプ76に通じる循環経路のいずれかと選択的に接続するための三方電磁弁である。
【0054】
供給ポンプ72は、洗剤を貯留する洗剤タンク83と洗剤供給ノズル29cとを接続する供給経路上に配置されており、洗剤タンク83から洗剤を吸い上げて洗剤供給ノズル29cに供給する。供給ポンプ73は、消毒液を貯留する消毒液タンク84と消毒液供給ノズル29bとを接続する供給経路上に配置されており、消毒液タンク84から消毒液を吸い上げて消毒液供給ノズル29bに供給する。
【0055】
供給ポンプ74は、アルコールを貯留するアルコールタンク86を供給する供給経路上に配置されており、アルコールタンク86からアルコールを吸い上げる。アルコールの供給経路は、供給ポンプ74の下流側において、チャンネル洗浄ポート32へ通じる経路と小物洗浄ノズル61へ通じる経路の2つの経路に分岐しており、供給ポンプ74が吸い上げたアルコールは、それぞれの経路を経て、チャンネル洗浄ポート32と小物洗浄ノズル61に供給される。
【0056】
エアポンプ75は、大気を圧縮して、圧縮空気をチャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61に供給する供給経路上に配置されている。エアポンプ75の下流側には、大気中に雑菌を補足して大気を浄化するエアフイルタ87が配置されている。エアフイルタ87の下流側には、バルブ88が配置されている。
【0057】
バルブ88は、バルブ88からチャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61へ通じる経路を、エアポンプ75に通じる大気を供給する経路と、循環ポンプ77に通じる経路のいずれかと選択的に接続するための三方電磁弁である。チャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61のそれぞれとバルブ82を接続する経路上には、チャンネル洗浄ポート32、小物洗浄ノズル61のそれぞれに通じる経路を開閉するバルブ89、91が配置されている。
【0058】
循環口31に一端が接続される循環経路は、循環ポンプ76へ通じる経路と、循環ポンプ77へ通じる2つの経路に分岐している。循環ポンプ76の下流側の経路は、さらに、バルブ82に通じる経路とバルブ92に通じる経路に分岐している。バルブ92は、循環ポンプ76と天井洗浄ノズル23とを接続する経路を開閉する電磁弁である。循環ポンプ76によって吸引された液体は、バルブ82及びバルブ92を経て給水ノズル29a、天井洗浄ノズル23に供給される。循環ポンプ77の下流側の経路は、バルブ88に接続している。循環ポンプ77によって吸引された液体は、バルブ88からバルブ89及びバルブ91を経て、チャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61に供給される。
【0059】
廃液口26に一端が接続される排出経路は、切り替えバルブ93に接続されている。切り替えバルブ93の下流側は、排出ポンプ(DP)94へ通じる経路と、消毒液タンク84へ通じる経路の2つの経路に分岐している。排出ポンプ94は、廃液口26から排出される液体を吸引して、装置外の下水へ廃液として排出する。切り替えバルブ93は、廃液口26から切り替えバルブ93の下流側への液体の排出を停止する閉じ状態と、廃液口26から排出ポンプ94へ通じる経路を開く状態と、廃液口26から消毒液タンク84へ通じる経路を開く状態の3つの状態を選択的に切り替える電磁弁である。
【0060】
洗浄槽13に供給された洗浄液や水は、1回使用された後、排出ポンプ94によって吸引されて装置外へ排出される。一方、消毒液は、複数回使用することが可能であるため、消毒能力が消失するまでの間、使用後の消毒液は、廃液口26から切り替えバルブ93を経由して消毒液タンク84に戻される。切り替えバルブ93は、消毒液を消毒液タンク84に戻すために設けられている。消毒液は激臭を放つため、洗浄液や水と同様に下水に排出することができない。消毒液タンク84には、図示しない排出口が設けられており、所定回数使用された消毒液は、消毒液タンク84の排出口から回収される。
【0061】
洗浄工程は、超音波洗浄と、洗浄液による洗浄(以下、本洗浄という)のサブ工程に分けられる。超音波洗浄では、まず、バルブ82が、バルブ79と給水ノズル29aを接続する状態に切り替えられた状態で、バルブ79が開かれて給水が実行される。水位センサ27が洗浄槽13に適量の水が満たされたことを検知すると、バルブ79が閉じられることにより給水が停止する。そして、超音波振動子58が作動して洗浄槽13に貯留された水を振動させる。超音波洗浄が終了すると、切り替えバルブ93が、液体の排出を停止する状態から廃液口26と排出ポンプ94を接続する状態に切り替えられて、洗浄槽13に貯留された水が装置外へ排出される。
【0062】
本洗浄では、まず、給水とともに、供給ポンプ72が作動して洗剤タンク83から洗剤ノズル29cを通じて洗浄槽13に洗剤が供給される。洗浄槽13内で水と洗剤が混合されて洗浄液が生成される。給水と洗剤供給が終了すると、洗浄液の循環が行われる。洗浄液の循環では、まず、切り替えバルブ93が閉じられて、バルブ82によって循環ポンプ76と給水ノズル29aへ通じる経路が開かれるとともに、バルブ92によって循環ポンプ76から天井洗浄ノズル23に通じる経路が開かれる。さらに、バルブ89、91によってチャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61に通じる経路が開かれる。
【0063】
この状態で、循環ポンプ76、77が作動して、循環口31から吸引された洗浄液が、給水ノズル29a、天井洗浄ノズル23、チャンネル洗浄ポート32、小物洗浄ノズル61を通じて洗浄槽13に再供給される。こうした循環により洗浄槽13内に水流が発生する。この水流によって内視鏡12の汚れが洗い流される。
【0064】
チャンネル洗浄ポート32から供給される洗浄液は、内視鏡12の各チャンネルを通って内部の汚れを洗い流し、挿入部の先端のノズル、鉗子出口等から洗浄槽13に放出される。小物洗浄ノズル61は小物洗浄かご22内の小物部品に向けて洗浄液を噴射して小物部品の汚れを洗い流す。
【0065】
天井洗浄ノズル23は天井に向けて洗浄液を噴射して、天井の汚れを洗い流す。天井に噴射された洗浄液は、天井の周縁部に向かって流れて、天井の全面に広がる。天井を伝って流れた洗浄液は、その自重によって洗浄槽13に落下する。洗浄工程においては、洗浄液の循環が行われている間、バルブ89、91、92は開かれており、チャンネル洗浄ポート32、天井洗浄ノズル23、小物洗浄ノズル61に洗浄液の供給が継続される。洗浄液の循環が終了すると、排出ポンプ94によって使用済みの洗浄液が排出される。
【0066】
消毒工程では、供給ポンプ73が作動して消毒液タンク84から消毒液供給ノズル29bを通じて洗浄槽13に消毒液が供給される。そして、洗浄工程の循環と同様に、循環ポンプ76、77が作動して消毒液の循環が所定時間行われる。循環が終了すると、切り替えバルブ93によって消毒液タンク84に通じる経路が選択されて、消毒液が廃液口26から消毒液タンク84に戻される。
【0067】
洗浄工程と消毒工程のそれぞれの工程の直後には、内視鏡12の外表面や各チャンネルに付着した洗浄液や消毒液を洗い流すすすぎ工程が行われる。図4に示すように、すすぎ工程は、洗浄工程と同様に、給水、循環、排出のサブ工程からなる。バルブ79が開かれると蛇口71から給水が行われ、洗浄槽13に水が貯留される。給水終了後、洗浄工程と同様に、循環ポンプ76、77が作動して水の循環が所定時間(循環時間)Tc行われる。すすぎ工程の循環においては、洗浄工程の循環と異なり、天井洗浄ノズル23からの水の噴射を循環開始から所定時間(噴射時間)T1の間だけ噴射を行い、噴射時間T1が経過したところで、バルブ92を閉じることにより循環ポンプ76から天井洗浄ノズル23への供給経路を遮断して水の噴射が停止される。
【0068】
天井に噴射された水の大半が自重によって天井から洗浄槽13に落下するまでには、ある程度の時間がかかる。排水が終了した後、洗浄槽13に落下する水は、洗浄槽13から排出されない残水として残る。そのため、天井洗浄ノズル23の水の噴射を循環が終了する前に(循環の途中で)停止することで、排水終了時点における残水の量を少なくしている。水が噴射されている噴射時間T1の間も、天井から水は落下するが、噴射によって天井に付着する水の増加もあるので、噴射が継続している間は、天井に残存する水滴の量は変化しない。
【0069】
水の噴射が停止されると、噴射による水の増加が無くなるので、水の落下により、天井に残存する水滴は徐々に減少する。循環時間Tcが経過して循環が終了すると、排出ポンプ94が作動して、廃液口26からの排水が開始される。排出中も、天井から洗浄槽13への水の落下は続き、排水が終了するまでの間に洗浄槽13に落下した水は、廃液口26から排水されるので、洗浄槽13には残らない。したがって、噴射停止後、排水終了までの時間T2が長いほど、天井に残存する水滴は少なくなり、排水しきれない洗浄槽13の残水の量も減る。本発明では、循環の途中で噴射を停止することで、排水時間を長くすることなく、時間T2を長くしている。
【0070】
給水時間Ts、循環時間Tc、排水時間Td、噴射時間T1の具体的な値は、例えば、給水時間Tsは約50sであり、循環時間Tcは約40sであり、排水時間Tdは約30sであり、すすぎ工程の総時間は約120s(約2分)である。噴射時間T1は約20sであり、時間T2は、循環時間Tc(約40s)+排水時間Td(約30s)−噴射時間T1(約20s)であるので、約50sである。
【0071】
噴射時間T1は、天井洗浄ノズル23からトップカバー16の天井に噴射された水が天井の全面に行き渡るのに必要な時間を考慮して決められる時間であり、具体的には、天井洗浄ノズル23の単位時間当たりの噴射量、水圧、トップカバー16のサイズに応じて適宜決定される。また、時間T2は、排水終了時点において天井に残存する水滴の許容量を考慮して決められる値である。具体的には、噴射停止後、天井から水滴が落下して、天井に残存する水滴が許容量に減少するまでの時間を計測し、この計測値に基づいて決定される。天井洗浄ノズル23の噴射量やトップカバー16のサイズによって天井に付着する水滴の量は変化するので、時間T2も噴射時間T1と同様に、天井洗浄ノズル23の噴射量やトップカバー16のサイズに応じて適宜決定される。
【0072】
図3に戻って、乾燥工程では、バルブ89、92を開いてチャンネル洗浄ポート32、小物洗浄ノズル61へ通じる経路が開かれる。供給ポンプ74が作動して、アルコールタンク86からアルコールが吸引されて、吸引されたアルコールがチャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61を通じて、内視鏡12の各チャンネル及び小物部品に吹き付けられる。
【0073】
この後、バルブ88によってエアポンプ75からバルブ89、91へ通じる経路が選択されて、エアポンプ75が作動する。エアポンプ75が作動すると、チャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61から、各チャンネル及び小物部品に圧縮空気が吹き付けられて、アルコールとともに各チャンネル内及び小物部品の外表面に付着した水滴がアルコールとともに吹き飛ばされる。また、アルコールは揮発性が高いため、アルコールの気化熱によって表面に付着した水分を蒸発させる。こうして内視鏡12の各チャンネル及び小物部品が乾燥される。
【0074】
図5に示すように、洗浄消毒装置10は、複数の電気部品を備えており、これらは装置全体を統括的に制御するCPU101に接続されている。ROM102は、装置全体の制御に用いられる制御プログラムの他、洗浄プログラムの内容が記述されたデータなど、予め設定された各種制御情報を格納している。
【0075】
RAM103は、ROM102からロードした制御プログラムなどの実行領域である。EEPROM104は、装置番号、各種設定情報、各種制御情報等の他、洗浄履歴情報を記憶している。装置番号は、個々の洗浄消毒装置10に付された識別情報である。装置番号は、製造時に付与された製造番号やシリアルナンバー、洗浄消毒装置10を使用する病院内で複数台の装置を識別するために付与された識別番号である。設定情報には、すすぎ工程における循環時間Tcや、すすぎ工程における天井噴射ノズル23の噴射時間T1などの各種処理時間が含まれる。
【0076】
制御情報には、例えば、消毒液の耐用回数が含まれている。上述の通り、消毒液は、複数回使用することが可能であり、耐用回数とは、消毒液が消毒効果を維持した状態で内視鏡12の消毒を行うことができる使用回数であり、消毒液のおおよその寿命を表している。耐用回数は、使用する消毒液によって異なる場合があるので、EEPROM104に記憶することにより、変更可能としている。耐用回数は、操作パネル36から直接入力してもよいし、消毒液名に基づいて自動的に設定してもよい。
【0077】
洗浄履歴情報は、上述した通り、洗浄を実施した日時、洗浄担当者名、洗浄した内視鏡12のIDなどの情報であり、この他、消毒液の使用回数や消毒液温度、個々の内視鏡12の識別情報であるスコープIDが含まれる。プリンタ105は、記録紙に洗浄履歴情報を印字して、印字したプリントを排紙口34から排出する。ネットワークIF106は、LANなどのネットワークに接続して通信制御を行うためのインターフェースであり、例えば、複数の洗浄消毒装置10の洗浄履歴情報や稼働状況などを、LANを経由して収集し、それらの情報を集約的に管理する管理用PC等に接続するために用いられる。
【0078】
また、CPU101には、水位センサ27、温度センサ57が接続されており、各センサ27、57は、水位検知信号や温度情報をCPU101に出力する。タイマ107は、時計回路などからの計時信号に基づいて、任意の時点からの経過時間を計測する。カウンタ108は、処理の繰り返し回数などのカウントに用いられる。さらに、CPU101には、供給ポンプ72〜74、循環ポンプ76、77、バルブ79、81、82、88、89、91、92、93、ラバーヒータ56、超音波振動子58からなる洗浄消毒処理機構を駆動するためのポンプ駆動部109、バルブ駆動部110、ヒータ駆動部111、超音波振動子駆動部112が接続されている。
【0079】
以下、上記構成による作用について、図6及び7のフローチャートに基づいて説明する。内視鏡12の洗浄消毒を行う場合には、フットペダル44が操作されて、洗浄消毒装置10のトップカバー16が開けられる。内視鏡12が洗浄槽13にセットされて、接続チューブ62で内視鏡12とチャンネル洗浄ポート32が接続される。内視鏡12がセットされた後、フットペダル44が操作されてトップカバー16が閉じられる。
【0080】
操作パネル36で洗浄プログラムが選択されて洗浄消毒の開始が指示されると(S(ステップ)10)、洗浄消毒装置10は、洗浄消毒処理を開始する。洗浄消毒装置10は、まず、洗浄工程を実行する(S20)。洗浄工程では、超音波振動子58による超音波洗浄が行われた後、洗浄液による本洗浄が実行される。本洗浄では、給水と洗剤の供給によって洗浄槽13に洗浄液が貯留された後、循環ポンプ76、77が作動して、洗浄液の循環が行われる。
【0081】
循環中、給水ノズル29a、チャンネル洗浄ポート32、天井洗浄ノズル23及び小物洗浄ノズル61から洗浄液が洗浄槽13に再供給される。循環によって、洗浄槽13内に洗浄液に水流が発生し、内視鏡12の外表面やチャンネルの汚れが洗い流される。天井洗浄ノズル23から噴射される洗浄液は、トップカバー16の天井の全面に行き渡り、天井の汚れを洗い流す。
【0082】
洗浄工程においては、給水ノズル29a、チャンネル洗浄ポート32、天井洗浄ノズル23及び小物洗浄ノズル61からの洗浄液の供給は、循環が終了するまで継続する。循環が終了すると排出ポンプ94が作動して廃液口26から洗浄液が排出される。洗浄工程が終了すると、すすぎ工程が開始される(S30)。
【0083】
図7に示すように、すすぎ工程では、まず、洗浄槽13への給水が行われる(S100)。給水が完了すると、タイマ107によって計測が開始されるとともに(S101)、循環ポンプ76、77による循環が開始される(S102)。循環が開始されると、給水ノズル29a、チャンネル洗浄ポート32、及び小物洗浄ノズル61から水が洗浄槽13に再供給される。循環によって発生した水流によって、内視鏡12の外表面やチャンネル内に付着した洗浄液が洗い流される。
【0084】
図4に示すように、循環開始時にはバルブ92が開かれた状態なので、天井洗浄ノズル23から、循環開始により水の噴射が開始される。噴射された水は天井の全面に行き渡り、天井に付着した洗浄液が洗い流される。
【0085】
CPU101は、循環が開始されると、タイマ107の計測値Tの監視を開始して、天井洗浄ノズル23の噴射時間T1が経過したか否かを判定する(S103)。CPU101は、計測値Tが噴射時間T1を上回った場合に、噴射時間T1が経過したと判定する(S103でY)。CPU101は、噴射時間T1が経過したと判定すると、バルブ92を閉じて、天井洗浄ノズル23の水の噴射を停止する(S104)。天井洗浄ノズル23の噴射が停止した後も、給水ノズル29a、チャンネル洗浄ポート32、小物洗浄ノズル61からの水の噴射は継続する。
【0086】
CPU101は、天井洗浄ノズル23の噴射を停止後もタイマ107の計測値Tの監視を継続し、循環時間Tcが経過したか否かを判定する(S105)。CPU101は、計測値Tが循環時間Tcを上回った場合に、循環時間Tcが経過したと判定する(S105でY)。CPU101は、噴射時間T1が経過したと判定すると、循環ポンプ76、77を停止して、水の循環を終了する(S106)。CPU101は、水の循環を終了した後、排出ポンプ94を作動させて、廃液口26を通じて排水する(S107)。
【0087】
すすぎ工程においては、循環開始後、噴射時間T1が経過したところで天井洗浄ノズル23の水の噴射が停止する。トップカバー16の天井に噴射された水は、天井から洗浄槽13に落下する。水の噴射が停止した後は、天井に付着する水が増えないので、水の落下によって天井に残存する水滴の量が徐々に減る。図4に示すように、循環の途中で噴射を停止しているの、循環が終了するまで噴射を継続する従来と比べて、天井に残存する水滴が減少する時間T2が長い。このため、従来と比べて、排水終了時点において、天井に残存する水滴や、洗浄槽13に残る残水を減らすことができる。排水時間を変化させず、循環の途中で噴射を停止することで、時間T2を長くしているので、すすぎ工程の総時間が延びることもない。
【0088】
図6に戻って、すすぎ工程(S30)が終了すると、消毒工程(S40)が実行される。CPU101は、供給ポンプ73を作動させて、消毒液タンク84から消毒液を洗浄槽13に供給する。消毒工程の直前のすすぎ工程(S30)において、天井洗浄ノズル23の噴射停止タイミングを早めているため、洗浄槽13の残水が少ない。そのため、消毒工程において、洗浄槽13に供給される消毒液が残水によって希釈される程度も減少するので、消毒液の適正な濃度が確保される。消毒工程では、洗浄工程及びすすぎ工程と同様に、消毒液を循環させて内視鏡12の消毒を行う。CPU101は、循環を終了した後、消毒液を廃液口26から消毒液タンク84に戻す。
【0089】
消毒工程(S40)が終了すると、すすぎ工程(S50)がすすぎ工程(S30)と同様の手順で実行される。すすぎ工程(S50)においても、天井洗浄ノズル23の水の噴射が循環途中で停止する。そのため、すすぎ工程(S50)終了時点において、洗浄槽13に残る残水が少ない。
【0090】
すすぎ工程(S50)が終了すると、乾燥工程(S60)が実行される。CPU1010は、供給ポンプ74を作動させて、チャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61からアルコールを噴射する。これにより、内視鏡12のチャンネルと小物部品にアルコールが吹き付けられる。この後、CPU101は、エアポンプ75を作動させて、チャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61から圧縮空気を噴射する。これにより、内視鏡12のチャンネルと小物部品に圧縮空気が吹き付けられて、アルコールとともにチャンネル内や小物部品の表面に付着した水滴が吹き飛ばされる。
【0091】
乾燥工程の直前のすすぎ工程(S50)の終了時点において、トップカバー16の天井に残存する水滴は少ない。そのため、例えば、乾燥工程において、小物部品に天井から落下する水滴も少ないので、乾燥効果も高い。
【0092】
乾燥工程(S60)が終了すると、洗浄消毒処理を施した内視鏡12を洗浄槽13から取り出すために、フットペダル44の操作によってトップカバー16が開けられる。トップカバー16の天井に残存している水滴が少ないため、トップカバー16の開放時に、天井を伝って洗浄槽13に向けて流れ落ちる水滴も少ない。トップカバー16の解放時にトップカバー16から多量の水滴が流れ落ちると、洗浄槽13外への水滴の飛散が多い上、見た目の印象も悪い。天井に残存する水滴を減らすことで、内視鏡12を取り出す操作者の不快感も軽減される。
【0093】
また、乾燥工程(S60)終了後、洗浄槽13から内視鏡12がすぐに取り出されずにしばらくの間放置されている場合もある。その場合でも、トップカバー16の天井に残存する水滴や洗浄槽13の残水が少ないので、雑菌の繁殖も軽減されるので、衛生面においてもよい。
【0094】
上記第1実施形態では、天井洗浄ノズル23による水の噴射時間T1を予め定められた所定時間としているが、天井洗浄ノズル23による水の噴射量や水圧を変化させることができる場合には、単位時間当たりの噴射量や水圧に応じて噴射時間T1を変化させることにより、噴射停止から排水終了までの時間T2を決定してもよい。例えば、単位時間当たりの噴射量や水圧が変化すると、トップカバー16の天井に付着する水滴の量も変化する。水滴の量が少なければ、天井に残存する水滴の許容量に減少するまでの時間も短くて済むので、噴射時間T1を長くして、排水終了までの時間T2を短くしてもよい。この場合、CPU101は、天井洗浄ノズル23の噴射量や水圧に応じて噴射時間T1を変化させて、時間T2を決定する。
【0095】
上記第1実施形態では、消毒工程の直前のすすぎ工程(S30)と、消毒工程の直後のすすぎ工程(S50)の両方のすすぎ工程において、循環の途中で、天井洗浄ノズル23の噴射を停止しているが、各すすぎ工程(S30)及び(S50)のいずれか一方でもよい。例えば、確実な消毒を行うためには消毒液の濃度は重要であるので、消毒液が希釈されないように、少なくとも消毒工程の直前のすすぎ工程(S30)において天井洗浄ノズル23の噴射停止を実行することが好ましい。
【0096】
[第2実施形態]
消毒工程の直後のすすぎ工程(図6のS50)においては、消毒液を十分に洗い流すために、すすぎ工程が繰り返し行われる場合がある。この場合、各すすぎ工程の循環の途中で天井洗浄ノズル23の噴射を停止してもよいが、図8のフローチャートに示す第2実施形態のように、最後のすすぎ工程においてのみ、その循環途中で天井洗浄ノズル23の噴射を停止してもよい。これ以外については、第2実施形態は、第1実施形態と同様なので説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0097】
第2実施形態の洗浄消毒装置において、CPU101は、すすぎ工程の回数をカウンタ108(図5参照)でカウントする。すすぎ工程が開始されるとき、まず、CPU101は、カウンタ108をリセットしてカウント値を「0」にする(S200)。そして、S201において、カウンタ108をインクリメントして、カウント値を「1」にする。この後、給水を実行する(S202)。給水後、CPU101は、タイマ107をリセットして計測をスタートさせる(S203)とともに、循環ポンプ76、77を作動させて循環を開始する(S204)。循環開始により、給水ノズル29a、チャンネル洗浄ポート32、天井洗浄ノズル23、小物洗浄ノズル61から洗浄槽13に水が再供給される。
【0098】
CPU101は、循環を開始するときに、カウント値がすすぎ工程の所定の繰り返し回数N(2以上の整数)に達したか否かを判定する。1回目のすすぎ工程では、カウント値は1であるので、CPU101は、カウント値は繰り返し回数Nに達していないと判定し(S205)、S208に進む。カウント値が繰り返し回数Nに達している場合には、最後のすすぎ工程であるので、タイマ107の計測値Tを監視して、噴射時間T1の経過を判定する(S206)。噴射時間T1が経過した場合には(S206でY)、天井洗浄ノズル23の噴射を停止する(S207)。
【0099】
S208〜S210は、第1実施形態のS105〜107と同様であり、CPU101は、循環時間Tcに達するまでの間、循環を実行し、循環終了後、排水する。排水後、S211において、CPU101は、カウント値が繰り返し回数Nに達しているかを判定し、繰り返し回数Nに達している場合には(S211でY)、すすぎ工程を終了する。繰り返し回数Nに達していない場合は(S211でN)、S201に戻り、カウンタ108をインクリメントして、給水から排水までのS202〜S211のステップを繰り返す。
【0100】
天井洗浄ノズル23の噴射を循環の途中で停止する意味は、すすぎ工程の直後に行われる消毒工程や乾燥工程などの開始時や、洗浄消毒の全工程終了時に、洗浄槽13の残水を減らすことにあるので、第2実施形態のように、すすぎ工程が連続して繰り返し実行される場合には、最後のすすぎ工程のみにおいて噴射を停止すれば、所期の効果は得られる。
【0101】
[第3実施形態]
図9〜11に示す第3実施形態のように、天井洗浄ノズル23に加えて、天井に向けて圧縮空気を噴射する天井送気ノズル121を設けて、圧縮空気によって天井に残存する水滴を吹き飛ばしてもよい。第3実施形態と第1実施形態の相違点は、天井送気ノズル121を設けた点であり、その他の構成は第1実施形態と同様であるので、以下、相違点を中心に説明する。
【0102】
図9に示すように、天井送気ノズル121は、天井洗浄ノズル23の近傍に配置されている。天井送気ノズル121は、バルブ122を介して、エアポンプ75からの圧縮空気の供給経路に接続されている。バルブ122を開けた状態でエアポンプ75が作動すると、天井送気ノズル121から圧縮空気が噴射される。
【0103】
図10及び図11に示すように、第3実施形態のすすぎ工程において、まず、給水が行われ(S301)、給水後にタイマ107がスタートし(S302)、循環が開始される(S303)。これにより、天井洗浄ノズル23から水の噴射が開始される。そして、CPU101は、タイマ107により噴射時間T1の経過を監視し(S304)、噴射時間T1が経過すると、循環途中で、バルブ92を閉じて天井洗浄ノズル23の噴射を停止する(S305)。
【0104】
CPU101は、天井洗浄ノズル23の噴射の停止と同時に、バルブ122を開き、エアポンプ75を作動させて、天井送気ノズル121からの圧縮空気の噴射を開始する(S306)。天井送気ノズル121が噴射する圧縮空気によって、トップカバー16の天井に付着している水滴が吹き飛ばされる。
【0105】
CPU101は、タイマ107により循環時間Tcの経過を監視し(S307)、循環時間Tcが経過すると、循環を終了する(S308)。循環が終了すると、排水が行われる(S309)。排水終了後、天井送気ノズル121の噴射を停止する(S310)。
【0106】
このように、天井洗浄ノズル23による水の噴射を停止した後、天井送気ノズル121による圧縮空気の噴射を行うことで、トップカバー16の天井に残存する水滴をより少なくすることができ、第1及び第2実施形態と比較して、洗浄槽13に残る残水の量をより減らすことができる。また、水滴をより早く取り除けるという効果もある。
【0107】
本例のように、天井洗浄ノズル23による水の噴射停止後、排水終了までの間、天井送気ノズル121による圧縮空気の噴射を継続すれば、圧縮空気の噴射時間が長くなるので、残水の量を減らす効果は高いが、天井送気ノズル121による圧縮空気の噴射開始及び終了のタイミングは、本例に限らず適宜決定することができる。例えば、天井送気ノズル121による圧縮空気の噴射を、天井洗浄ノズル23による水の噴射停止後、循環終了までの間としたり、あるいは、循環中は、圧縮空気の噴射を行わず、排水中のみ行ってもよい。
【0108】
また、本例では、天井送気ノズル121で圧縮空気を噴射する例で説明したが、天井送気ノズル121から圧縮空気に加えて、アルコールを噴射してもよい。例えば、すすぎ工程において、天井洗浄ノズル23の噴射停止後、まず、CPU101は、供給ポンプ74(図9参照)を作動させて、天井送気ノズル121からアルコールを天井に向けて噴射する。そして、アルコールの噴射を停止した後、エアポンプ75を作動させて天井送気ノズル121から圧縮空気を噴射する。上述の通り、アルコールは揮発性が高いため、アルコールの気化熱によって天井の水滴を蒸発させる効果があるので、天井に残存する水滴の量をより減らすことができる。さらに、アルコールには、消毒液の臭気を脱臭する作用もあるので、過酢酸などの消毒液の臭気を緩和する効果も期待できる。
【0109】
また、本例では、天井送気ノズル121と天井洗浄ノズル23を別々に設けた例で説明したが、天井送気ノズルと天井洗浄ノズルを兼用してもよい。例えば、天井洗浄ノズル23を天井送気ノズルとして利用する場合には、図3において、バルブ88とバルブ92を接続する配管を設けるとともに、バルブ92を、循環ポンプ76からの経路とバルブ88からの経路を切り替える三方電磁弁で構成する。天井洗浄ノズル23を天井送気ノズルとして利用すれば、天井送気ノズルの配置スペースを新たに確保する必要がないので、例えば、天井洗浄ノズルを有する既存の装置に対して設計変更を加える場合に有利である。
【0110】
また、天井洗浄ノズル23及び天井送気ノズル121をそれぞれ1つずつ設けた例で説明したが、少なくとも一方を複数個設けてもよい。また、天井洗浄ノズル23や天井送気ノズル121の位置も適宜変更可能である。例えば、天井送気ノズル121とは別に、テラス部13b、13cなどのより天井に近い位置に別の天井送気ノズルを設けてもよい。この場合、天井送気ノズルの噴射方向を、天井と略平行な水平方向に近い向きにすれば、水滴を吹き飛ばす効果が向上する。
【0111】
本発明は、内視鏡を洗浄・消毒する洗浄消毒装置に限らず、洗浄・消毒によって再使用される医療器具を洗浄・消毒する洗浄消毒装置にも適用できる。内視鏡以外の医療器具としては、例えば、鉗子、超音波プローブ、クリップ処置具、スネアなど、内視鏡の鉗子チャンネルを挿通して使用される処置具が考えられる。もちろん、内視鏡とともに使用される処置具以外の医療器具でもよい。本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
10 洗浄消毒装置
12 内視鏡
13 洗浄槽
13a 開口部
16 トップカバー
23 天井洗浄ノズル
76、77 循環ポンプ
79、92、122 バルブ
101 CPU
107 タイマ
108 カウンタ
121 天井送気ノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具を収容するとともに液体が貯留される洗浄槽であり、貯留された液体によって医療器具の洗浄工程、消毒工程、及び洗浄と消毒の各工程の後にすすぎ工程が行われる洗浄槽と、
洗浄槽の上部開口部を開閉するトップカバーと、
洗浄槽に貯留された液体を、循環経路を通じて循環させる循環手段と、
前記洗浄槽内に配置され、前記トップカバーの内面である天井に向けて、前記循環手段によって供給される液体を噴射する天井洗浄ノズルと、
前記すすぎ工程のうち少なくも1つのすすぎ工程であり、前記すすぎ工程は、前記循環手段による水の循環と、循環終了後の排水とからなるサブ工程を含んでおり、前記すすぎ工程において、前記天井洗浄ノズルによる水の噴射を、前記循環の途中で停止する制御手段とを備えていることを特徴とする洗浄消毒装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記消毒工程の直前に実行される前記すすぎ工程において、前記循環の途中で天井洗浄ノズルの噴射を停止することを特徴とする請求項1記載の洗浄消毒装置。
【請求項3】
前記天井洗浄ノズルの噴射を停止するタイミングは、前記排水が終了する時点において前記天井に残存する水滴の許容量を考慮して決められていることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄消毒装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記循環が終了する時点から予め決められた所定時間前に天井洗浄ノズルの噴射を停止することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄消毒装置。
【請求項5】
さらに、前記天井に向けて空気を噴射する天井送気ノズルを備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗浄消毒装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記天井洗浄ノズルの噴射が停止した後、前記天井送気ノズルの噴射を開始することを特徴とする請求項5記載の洗浄消毒装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記天井送気ノズルの噴射を前記排水が終了するまで継続することを特徴とする請求項6記載の洗浄消毒装置。
【請求項8】
前記天井送気ノズルは、空気に加えて、アルコールの噴射が可能なことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の洗浄消毒装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記天井送気ノズルからアルコールを噴射させ、アルコールの噴射を停止させた後、空気を噴射させることを特徴とする請求項8記載の洗浄消毒装置。
【請求項10】
前記天井洗浄ノズルと前記天井送気ノズルは兼用されることを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の洗浄消毒装置。
【請求項11】
前記すすぎ工程が連続して複数回繰り返される場合には、前記制御手段は、最後のすすぎ工程においてのみ、前記循環の途中で前記天井噴射ノズルの噴射を停止することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の洗浄消毒装置。
【請求項12】
前記すすぎ工程は、前記消毒工程の直後に実行されることを特徴とする請求項11記載の洗浄消毒装置。
【請求項13】
洗浄槽の上部開口部をトップカバーで覆った状態で洗浄槽に貯留された液体で医療器具の洗浄と消毒を行い、洗浄及び消毒の少なくとも一方の後に貯留された水ですすぎを行う洗浄消毒装置の制御方法において、
洗浄槽内の水を循環経路を通じて循環させる循環ステップと、
前記循環ステップの開始とともに洗浄槽内の天井洗浄ノズルから前記トップカバーの内面である天井に向けて水を噴射させる噴射ステップと、
前記循環ステップの途中で前記水の噴射を停止する停止ステップと、
前記循環ステップの終了後に前記洗浄槽から排水する排水ステップとを含む洗浄消毒装置の制御方法。
【請求項1】
医療器具を収容するとともに液体が貯留される洗浄槽であり、貯留された液体によって医療器具の洗浄工程、消毒工程、及び洗浄と消毒の各工程の後にすすぎ工程が行われる洗浄槽と、
洗浄槽の上部開口部を開閉するトップカバーと、
洗浄槽に貯留された液体を、循環経路を通じて循環させる循環手段と、
前記洗浄槽内に配置され、前記トップカバーの内面である天井に向けて、前記循環手段によって供給される液体を噴射する天井洗浄ノズルと、
前記すすぎ工程のうち少なくも1つのすすぎ工程であり、前記すすぎ工程は、前記循環手段による水の循環と、循環終了後の排水とからなるサブ工程を含んでおり、前記すすぎ工程において、前記天井洗浄ノズルによる水の噴射を、前記循環の途中で停止する制御手段とを備えていることを特徴とする洗浄消毒装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記消毒工程の直前に実行される前記すすぎ工程において、前記循環の途中で天井洗浄ノズルの噴射を停止することを特徴とする請求項1記載の洗浄消毒装置。
【請求項3】
前記天井洗浄ノズルの噴射を停止するタイミングは、前記排水が終了する時点において前記天井に残存する水滴の許容量を考慮して決められていることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄消毒装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記循環が終了する時点から予め決められた所定時間前に天井洗浄ノズルの噴射を停止することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄消毒装置。
【請求項5】
さらに、前記天井に向けて空気を噴射する天井送気ノズルを備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗浄消毒装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記天井洗浄ノズルの噴射が停止した後、前記天井送気ノズルの噴射を開始することを特徴とする請求項5記載の洗浄消毒装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記天井送気ノズルの噴射を前記排水が終了するまで継続することを特徴とする請求項6記載の洗浄消毒装置。
【請求項8】
前記天井送気ノズルは、空気に加えて、アルコールの噴射が可能なことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の洗浄消毒装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記天井送気ノズルからアルコールを噴射させ、アルコールの噴射を停止させた後、空気を噴射させることを特徴とする請求項8記載の洗浄消毒装置。
【請求項10】
前記天井洗浄ノズルと前記天井送気ノズルは兼用されることを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の洗浄消毒装置。
【請求項11】
前記すすぎ工程が連続して複数回繰り返される場合には、前記制御手段は、最後のすすぎ工程においてのみ、前記循環の途中で前記天井噴射ノズルの噴射を停止することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の洗浄消毒装置。
【請求項12】
前記すすぎ工程は、前記消毒工程の直後に実行されることを特徴とする請求項11記載の洗浄消毒装置。
【請求項13】
洗浄槽の上部開口部をトップカバーで覆った状態で洗浄槽に貯留された液体で医療器具の洗浄と消毒を行い、洗浄及び消毒の少なくとも一方の後に貯留された水ですすぎを行う洗浄消毒装置の制御方法において、
洗浄槽内の水を循環経路を通じて循環させる循環ステップと、
前記循環ステップの開始とともに洗浄槽内の天井洗浄ノズルから前記トップカバーの内面である天井に向けて水を噴射させる噴射ステップと、
前記循環ステップの途中で前記水の噴射を停止する停止ステップと、
前記循環ステップの終了後に前記洗浄槽から排水する排水ステップとを含む洗浄消毒装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−206157(P2011−206157A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75145(P2010−75145)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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