説明

洗浄液

本発明は、外科的、特に眼科的侵襲時に使用するために適した、非ニュートン流体を含有する洗浄液に関する。さらに本発明はこのような洗浄液の使用法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に眼科学における外科的侵襲で洗浄液として使用するための非ニュートン流体に関する。
【背景技術】
【0002】
外科的侵襲では、手術領域から不都合な物質を除去するために、侵襲時に洗浄を行うことが不可欠である場合が多い。このために、一般に等張性食塩水が場合によっては添加剤と共に使用される。
【0003】
脊椎動物の目の疾患の多くは網膜または硝子体の変化に起因する。硝子体は眼の構成部分であり、眼の特定形状を保持する役割を果たす。硝子体は眼の網膜と水晶体との間に配置されており、約98%の水、約2%のヒアルロン酸、および保持力によって水を安定化させる役割を果たすコラーゲン繊維網からなる。これにより、硝子体のゲル状の堅さおよび透明度が生じる。
【0004】
眼、特に網膜の疾患、例えば網膜剥離を治療するための可能性は近年著しく増大した。治療を行う医師にとっては疾患または損傷領域をよく認識することが重要である。一般に、そして特に眼における成果のある外科的侵襲のための条件は、解剖学的構造の良好な視界である。
【0005】
このような治療の一部が、手術による硝子体の除去(硝子体切除術)となる場合もある。硝子体を除去するためには、硝子体が位置する後眼房に至る3つの小さい切り口を眼の強膜に設ける。これらの切り口を通って眼の内部に適宜な手術器具を挿入することができる。眼をできるだけ損傷しないようにするために、切り口は極めて小さいことが望ましい。侵襲時には、一般に食塩水によって手術領域を洗浄する。
【0006】
安定性を付与する硝子体の吸取り時に圧力損失によって眼が形状を損なわないようにし、二次的損傷を防止するために、硝子体の代わりに中空空間に内圧を一定に保持する補充流体が注入される。従来技術では、洗浄液として通常は化学的組成および物理的特性に基づき等張性食塩水を使用する。なぜなら、食塩水は硝子体の水と最適に混合可能であり、両流体の交換は問題なしに行うことができるからである。
【0007】
治療時には、外科的侵襲を施す場所を洗浄することが不可欠である。しかしながら、この場合に手術領域の視界が制限されてはならない。さらに洗浄液は生理的に相容性がなければならず、良好に注入可能であり、容易に除去可能である必要がある。
【0008】
汎用の等張性食塩水は水との良好な混合可能性により、他の流体、例えば房水および血液と混合され、これにより、着色され、混濁するという欠点を有していることがいまわかった。このような混濁により手術領域の視界が制限されてしまい、このようなことは極めて不都合である。
【0009】
さらに食塩水には標準的にグルタチオンおよびグルコースが添加される。このような溶液は不安定なので、グルタチオンおよびグルコースは使用直前にようやく添加することができるが、このようなことは手間がかかり、汚染の危険性を高める。
【0010】
従来技術では種々異なったタンポナーデ溶液の使用について示唆があるが、外科的侵襲時に使用する洗浄液では、好ましくはほぼ水の濃度を有する水溶液のみが一般に挙げられる。
【0011】
ドイツ国特許第60107451号明細書は、硝子体切除術時の従来の眼科用洗浄液として食塩水を使用することを記載している。硝子体切除術後に、硝子体に(一時的に)補充物質を挿入することが不可欠である。この関連では、国際公開第03/079927号パンフレットは、特に網膜剥離の外科的侵襲の場合にペルフルオロアルカンを交換液およびタンポナーデ調合剤として使用することを記載している。このようなペルフルオロアルカンは、高濃度よって特に硝子体の下部に集まり、これにより、外科医の網膜治療を容易にする。しかしながら、このような高濃度は欠点でもある。なぜなら、ペルフルオロアルカンは高濃度により組織に圧力を加えるからである。ペルフルオロアルカンの欠点は、さらに平均を超える高価格ならびに極端な疎水性および脂溶性である。ペルフルオロアルカンは、疎水性物質、脂溶性物質またはフッ化物においても実質的にほとんど可溶性ではなく、これにより、硝子体空間の内部からの調合剤の除去が困難であり、付加的コストの原因となる。
【0012】
様々な切断率で作業する硝子体切除術を行う場合に、別の問題が生じる場合がある。網膜に極めて密接して作業した場合、網膜がはためき始める場合があり、これにより、外科医は正確な作業を行うことが困難となり、網膜が危険にさらされる。
【0013】
これまでに既知の外科的侵襲のための洗浄液の欠点、特に眼科的侵襲時に使用する場合の欠点により、改善された調合剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】ドイツ国特許第60107451号
【特許文献2】国際公開第03/079927号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、外科医の手術による侵襲の実施を容易にし、この場合に二次的損傷を防止し、容易に使用でき、生理的に受容可能であり、十分に相容性があり、上記ペルフルオロアルカンに比べて価格を著しく減じた洗浄液を提案することである。さらに本発明の課題は、眼における外科的侵襲のための洗浄液において、生理的に相容性があり、良好に注入可能であり、同時に手術領域の良好な視界が得られ、手術器具、例えば硝子体切除器の使用を容易にする洗浄液を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、請求項1に記載のような、特に硝子体外科および網膜外科における外科的、特に眼科的侵襲のための洗浄液によって解決される。
【0017】
驚くべきことに、非ニュートン流体、特に非水性で水と混合不能な非ニュートン流体を洗浄液として使用することが外科的侵襲に有利であることが突き止められた。なぜなら、このような洗浄液は、一方では血液と混合されず、これにより、混濁ひいては視界の妨害が阻止され、他方では、外科器具の使用時に生じる剪断応力を緩衝することができるからである。このことは一般に、外科的侵襲においてとりわけ器具を使用した場合に器具の剪断応力が不利に作用する場合には有利である。
【0018】
本発明による洗浄液により、侵襲場所に存在する流体、特に血液との混合が生じず、したがって、医師はより良好な視界を得ることが可能となる。さらに剪断応力の作用による組織のはためきまたは動きが防止されるか、または減じられる。このことは、網膜などの敏感な組織では特に重要である。
【0019】
本発明では、手術による侵襲時の洗浄のために非ニュートン流体を使用することが重要である。非ニュートン流体は温度が一定の場合に剪断応力が速度勾配に比例しない流体または流体に作用した剪断応力を吸収し、ひいては緩衝する流体として定義される。
【0020】
さらに注入される洗浄液は水とほとんど混合不能であり、これにより血液との混合ひいては着色が防止される。水と混合不能またはほとんど混合不能な生理的に相容性の適宜な流体が当業者には既知である。水と混合不能またはほとんど混合不能な流体とは、水にほとんど溶解しないか、または溶解が困難であるか、または溶解が極めて困難であり、100部の水につき20部未満、有利には10部未満、特に有利には5部未満の割合でしか溶解しない溶媒である。
【0021】
眼科で使用する場合、侵襲時に硝子体と洗浄液とを区別することが不可欠であり、これは本発明による解決方法により可能となる。同時に、外科医の侵襲を容易にし、特に外科的処置による二次的な損傷を防止するために硝子体ベースは常に良好に認識可能であることが望ましい。
【0022】
驚くべきことに、特定の濃度および特定の粘度を有するシリコーン油は外科的、特に眼科的侵襲のための洗浄液として特に好適であり、高価なペルフルオロ化合物に代替できるだけでなく、さらに他の利点を提供することがわかった。
【0023】
シリコーン油は久しく知られている。シリコーン油は多くの分野で使用され、例えば商業分野では消泡剤または被覆材として使用され、さらに化粧品分野では、例えば光沢付与剤および付着性改善手段として使用される。医療技術では、主に形成外科により知られている。
【0024】
多様な合成により、シリコーン油は使用分野に応じて任意の構成で合成することができる。環状のシリコーンおよび脂肪族のシリコーン、ならびに特にシロキサン、その中でもとりわけポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられる。この場合、脂肪族シリコーンおよび特にシロキサンの幅は、低分子から高分子までに及び、高分子では、100万mPasを遙かに超える粘度を有するものもある。
【0025】
シリコーン油を生成する方法は既知であり、シリコーン油は、比較的安価に容易に入手可能である。
【0026】
驚くべきことに、特定のシリコーン油は外科的、特に眼科的侵襲のための洗浄液として極めて好適であることを発明者は発見した。
【0027】
本発明により使用される非ニュートン流体、特にシリコーンの重要な利点は、血液との劣悪な混合可能性である。これまで使用されてきた洗浄液は血液と混合し、これにより、手術時に視界の妨害が生じる。シリコーンでは混合は生じず、むしろ医師が良好に視認できる界面が形成される。さらにシリコーンは血液を押し戻し、これにより、場合によってはある程度の止血作用さえもが生じる。
【0028】
本発明により使用される非ニュートン流体、特にシリコーンの透明度は、血液または他の水溶液によって損なわれずに保持され、さらに別の利点を有する。有利には、本発明による溶液は、とりわけ硝子体切除術で洗浄液として使用するためのものである。硝子体切除術は硝子体を除去するために行い、硝子体が炎症した場合、網膜の侵襲を行わねばならない場合、または硝子体が不透明となった場合には不可欠である。いずれの場合にも網膜が一緒に剥がれないように硝子体を除去する必要がある。硝子体は硝子体境界膜にわたって網膜に位置している。それ故、硝子体が既に混濁している場合、洗浄液が混濁していないこと、そして血液および別の構成成分によって混濁させられないことがますます重要となる。
【0029】
本発明により使用されるシリコーン油の重要な特性は濃度である。水より低い濃度、すなわち、1.0g/cmより低い濃度を有するシリコーン油のみが適している。有利には、0.80〜0.98g/cm、特に有利には0.90〜0.98g/cmの範囲の濃度を有するシリコーン油が使用される。水に比べて低い濃度により、このようなシリコーン油は、硝子体空間の上部領域をも満たすことができる。本発明によるシリコーン油調合剤の注入により、網膜下の流体が硝子体空間の後方領域に押しのけられる。このことは、特に硝子体空間の前領域の手術時に重要な利点を有する。そこでは、本発明による注入液は、硝子体の容積代替物としての役割を果たすだけでなく、網膜の崩壊を防止する網膜安定剤としても機能する。
【0030】
本発明による洗浄液の別の利点は、非ニュートン特性に基づく。本発明による洗浄液は、網膜の近傍で硝子体切除器を使用する場合に生じる網膜の揺動またははためきを緩衝することができる。このような理由で、シリコーン油は、外科医にとって侵襲を良好に制御可能であり、より確実なものとし、ひいては容易にする。
【0031】
本発明によるシリコーン油の第2の重要な特性は粘度である。粘度が十分に低い場合にのみ、本発明による洗浄液は細いカニューレまたは針によって注入し、吸取ることができる。したがって、ウベローデ毛細管粘度計Schott CT52によって25℃および周辺圧力で計測した場合に、粘度は100mPasの値を超えてはならない。
【0032】
約0.1〜100mPasの粘度を有する本発明によるシリコーン油は、従来技術で使用されるペルフルオロアルカンに比べて著しく低い粘度によって優れている。この範囲の粘度を有するシリコーン油は加工に適していることがわかった。このようなシリコーン油は、適宜な外科的侵襲で使用されるような細いカニューレによって眼の内部に適切に注入することができ、再び眼の内部から吸取ることができる。眼における侵襲では今では25ゲージまでのカニューレが使用され、このようなカニューレの極めて狭い管腔を通って流体を流す必要がある。本発明による洗浄液は、このようなカニューレによっても供給可能である。100mPasよりも高い粘度を有するシリコーン油は、粘り気があり、このような細いカニューレによっては全く注入することおよび吸取ることができず、太いカニューレによっても限定的にしか注入することおよび吸取ることはできない。例えば0.1mPasの粘度を有する低粘度のシリコーン油は極めて薄い液体であるが、蒸気圧ひいては蒸気圧に結びついた揮発性が高すぎ、もはや有意義に使用することはできない。さらに0.1mPas未満の粘度を有するシリコーン油では、殺菌性における問題が生じる。1シロキサンユニットのみを有するシリコーンも毒性の理由から眼に使用する溶液としては不適切な場合もあるが、本発明により規定されたシリコーンの場合には該当しない。反対に本発明により考慮したシリコーン油はまさに生体適合性によって優れている。
【0033】
それ故、粘度が約0.5〜50mPas、有利には1〜20mPasであるシリコーン油は特に適している。この範囲では、揮発性と粘度との間で釣合いのとれた比率が得られ、このようなシリコーン油は、適宜なカニューレにより硝子体空間に容易に注入することができ、揮発性は低く、他の外科的切り口を通って、または角膜を介して揮発することなしに硝子体空間に残る。粘度が約2〜10mPasであるシリコーン油は特に好適である。このようなシリコーン油は、2mPas未満の粘度を有するシリコーンよりもさらに著しく低い揮発性を有している。10mPasの上限は、眼科的侵襲のためにシリコーン油の最適な流れ特性、ひいては好適な注入液の生成を可能にする値を示す。
【0034】
シリコーン油としては、本発明によれば、要求される両方の特性を満たす流動可能なシリコーン、特にシロキサンが使用される。メチルシロキサンおよびその重合体ならびにジメチルシロキサンおよびその重合体が好適である。シリコーンは、置換していない状態または置換した状態で提供されていてよい。置換とは、この場合、他の原子または分子群による、シリコーン原子に結合した水素原子の代替である。この場合、一般的な置換基は、1〜18個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基、または6〜15個の炭素原子を有するアリール基である。この場合、アルキル基またはアリール基自身が再び置換されていてもよい。置換基は、ブロック毎に、またはシロキサン鎖にわたって分配して設けられていてもよく、置換基の割合は、周知のように所望の特性に応じて調整することができる。
【0035】
本発明によれば、特に置換されていないシリコーン油ならびにアルキル置換またはアリール置換されたシリコーン油が考慮される。置換されていなくても置換されていてもよいポリジメチルシロキサン(PDMS)が特に適している。置換されたシリコーンの場合、アリール置換生成物、中でもフェニル置換生成物が使用可能である。
【0036】
シリコーン油は一般に水、したがって血液とも混合不能であるという特徴を有する。これにより、眼の硝子体空間に本発明による調合剤を注入した後、シリコーン油と硝子体との間の相境界には界面が形成される。したがって、シリコーン油および水の異なる屈折率は、外科器具がどこに位置しているのか、硝子体の内部にあるのか、またはシリコーン油内にあるのかが、外科医には手術のいずれの時点においてもわかり、外科医は硝子体が完全に取り除かれたかどうかをより良く判断することができるという利点を有する。界面の形成は外科の方向付けを助ける。このような状況で、屈折率が水の屈折率とは明らかに異なるシリコーン油は適している。このような観点から、置換されたシリコーン油のうちで、特にフェニル置換されたシリコーン油、例えばフェニルジメチコン、フェニルメチコン、フェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチコン、ジフェニルトリメチコンなどが有利である。なぜなら、フェニル基は屈折率を高め、さらに透明度を高めるからである。増大した屈折率により、水の屈折率とシリコーン油の屈折率との間の隔たりがさらに大きくなり、両流体の界面は、外科医にさらに明らかに見えるようになる。これにより、複雑な外科的侵襲の著しい簡易化がもたらされ、ひいては改善された手術結果が得られる。
【0037】
本発明による洗浄液に適したシリコーン油は、とりわけ、n-ポリジメチルシロキサン、イソ-ポリジメチルシロキサン、例えばフェニル-ポリジメチルシロキサン、ジフェニル-ポリジメチルシロキサン、ポリフェニル-ポリジメチルシロキサンなどのアリール置換されたPDMS、例えばメチル-ポリジメチルシロキサン、エチルポリジメチルシロキサン、プロピル-ポリジメチルシロキサンなどのアルキル置換されたPDMS、さらに他の置換されたPDMS、例えばフルオレン-アルキル置換されたPDMSが挙げられる。これらは本発明による洗浄液に使用するために適したシリコーン油を例示的に示すが、これらに限定されない。次に幾つかの適宜な化合物を挙げる:ビス-ジフェニルエチルジシロキサン、ビスフェニルヘキサメチコン、カプリルジメチコン、カプリリルジメチコン、カプリリルメチコン、ジメチコン、ジシロキサン、ヘキシルジメチコン、ヘキシルメチコン、ラウリルジメチコン、ラウリルメチコン、メチコン、メチルトリメチコン、フェニルエチルジメチコン、フェニルエチルジシロキサン、フェニルプロピルエチルメチコン、フェニルプロピルトリメチコン、フェニルトリメチコン、トリフルオロプロピルジメチコン、トリフルオロプロピルメチコン、トリシロキサンなど。
【0038】
上記のように、本発明によれば、ペルフルオロアルカンの使用に結びついた欠点を除外するためにシリコーン油が使用される。セミフルオロアルカンの使用も同様の理由から好ましくない。セミフルオロ化合物とシリコーンとの良好な混合可能性により、例えば、濃度および/または粘度を意図的に設定するためにわずかな割合のセミフルオロ化合物の添加が有効な場合ももちろんある。使用材料および所定の目的に関係して、有利には10容量%までのセミフルオロアルカンを添加することができる。適したセミフルオロアルカンが、例えば欧州特許第0859751号明細書に記載されている。
【0039】
セミフルオロアルカンの添加は別の利点をもたらす。セミフルオロアルカンは作用物質に対してシリコーンよりも高い溶解力を有している。したがって、本発明による洗浄液の有利な実施形態では、1つ以上のセミフルオロアルカンを作用物質のための溶解補助剤として添加することができる。この関連では作用物質として、眼のための薬、酸化防止剤、栄養剤またはこれらに類するものが考慮される。薬の例としては、鎮静剤または抗生剤が挙げられる。酸化防止剤の例は、フリーラジカルを捕捉する化合物である。栄養剤としては、糖、例えばブドウ糖が挙げられる。
【0040】
洗浄液、有利にはシリコーンにおけるセミフルオロアルカンの割合は、所望の特性に関係して変化してもよい。セミフルオロアルカンによって、所定の媒体のための溶解度を改善することができるだけでなく、濃度を調整することができる。有利には、セミフルオロアルカンは1重量%よりも多い、有利には5重量%よりも多い割合で添加される。セミフルオロアルカンの割合はこれより多くてもよい。専門家は、シリコーンとセミフルオロアルカンとの適宜な比率を幾つかの決められた方法で容易に調整することができ、50:1〜1:2の範囲のシリコーンとセミフルオロアルカンとの比率が特に適している。
【0041】
上記シリコーン油は、眼科的侵襲、特に手術中の器具、特に眼内構造を操作する器具のための洗浄液を生成するために適している。本発明による調合剤は、眼科手術において、特に硝子体空間を洗浄するために有利である。それ故、本発明による調合剤は、有利には眼、特に網膜領域における侵襲時に使用する洗浄剤の形態で準備される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ニュートン流体を用いた外科的侵襲のための洗浄液。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄液において、
硝子体外科および網膜外科のための洗浄液。
【請求項3】
請求項1または2に記載の洗浄液において、
シリコーン油、2〜4個の炭素原子を有する多価アルコール、酸化ポリエチレン含有液および/または酸化ポリプロピレン含有液またはこれらの混合物から選択した少なくとも1つの流体を含む洗浄液。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の洗浄液において、
1g/cm未満の濃度および0.1〜100mPasの粘度を有する少なくとも1種類のシリコーン油を含有する洗浄液。
【請求項5】
請求項3または4に記載の洗浄液において、
前記シリコーン油の濃度が、0.80〜0.98g/cmである洗浄液。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の洗浄液において、
0.5〜50mPasの範囲の粘度を有する洗浄液。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の洗浄液において、
前記粘度が、2〜10mPasの範囲である洗浄液。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の洗浄液において、
前記シリコーン油が直鎖状シロキサンである洗浄液。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の洗浄液において、
前記シリコーン油が、置換されたポリジメチルシロキサンまたは置換されていないポリジメチルシロキサンである洗浄液。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の洗浄液において、
前記シリコーン油が、2〜10のシロキサン単位を有するシロキサンから生成される洗浄液。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の洗浄液において、
前記シリコーン油がフェニル置換されている洗浄液。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の洗浄液において、
付加的にセミフルオロアルカンを含有する洗浄液。
【請求項13】
請求項12に記載の洗浄液において、
溶液の濃度が1g/cm未満となるような比率でシリコーン油とセミフルオロアルカンとを含有する洗浄液。
【請求項14】
請求項12または13に記載の洗浄液において、
50:1〜1:2の比率でシリコーン油とセミフルオロアルカンとを含有する洗浄液。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項に記載の洗浄液において、
付加的に1つ以上の作用物質を含有する洗浄液。
【請求項16】
請求項15に記載の洗浄液において、
1つ以上の不水溶性の作用物質を含有する洗浄液。
【請求項17】
請求項8から10までのいずれか一項に記載の洗浄液において、
1つ以上の薬、抗生剤および/または栄養剤を含有する洗浄液。
【請求項18】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の洗浄液の使用法において、
硝子体外科および網膜外科で用いることを特徴とする使用法。
【請求項19】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の洗浄液の使用法において、
眼の後方領域における侵襲時に眼を洗浄するために用いる使用法。

【公表番号】特表2011−503135(P2011−503135A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533513(P2010−533513)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009769
【国際公開番号】WO2009/065565
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(510137490)フルオロン ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】