説明

洗浄用保持冶具、及び、洗浄方法

【課題】洗浄用保持冶具及び洗浄方法において、被洗浄体に傷がつくのを抑えると共に洗浄用保持冶具内の液残りを防ぐ。
【解決手段】洗浄用保持冶具は、被洗浄体(100)の少なくとも一部を収容する収容部11と、この収容部11に開口する流路(12)と、を備え、収容部11は、この収容部11の周方向に亘って被洗浄体(100)に線接触又は面接触により接触し、流路(12)は、収容部11の被洗浄体(100)との接触部分を挟んだ2つの空間S1,S2を連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光学素子などの被洗浄体を保持する洗浄用保持冶具、及び、被洗浄体を洗浄する洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被洗浄体を水系洗浄剤により洗浄し、温風ブロアを用いて水切りを行う洗浄方法が一般に知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、被洗浄体を洗浄液へ浸漬する際に被洗浄体を保持する洗浄用保持冶具が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
特許文献2記載の冶具には、厚み方向に貫通する2つの長穴が互いに直交するように形成されている。この冶具では、被洗浄体は、2つの長穴の交差部分である4つの角部によって点接触で支持された状態で回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−124529号公報
【特許文献2】特開2004−66110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2記載の冶具は、被洗浄体を点接触により保持するため、この点接触部分において被洗浄体に傷がつきやすくなる。更には、上記特許文献2記載の冶具は、被洗浄体を回転させるため、点接触させると、より一層傷がつきやすくなる。そのため、上記特許文献2記載の冶具を光学素子などの被洗浄体に用いるのは困難である。
【0006】
ところで、被洗浄体を洗浄した後、被洗浄体を保持した冶具を例えば回転させることで冶具内の水切りが行われる。しかし、冶具内で液残りすると、異物の再付着やシミ残りなどが発生する。
【0007】
本発明の目的は、被洗浄体に傷がつくのを抑えることができると共に洗浄用保持冶具内の液残りを防ぐことができる洗浄用保持冶具及び洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の洗浄用保持冶具は、被洗浄体の少なくとも一部を収容する収容部と、上記収容部に開口する流路と、を備え、上記収容部は、この収容部の周方向に亘って上記被洗浄体に線接触又は面接触により接触し、上記流路は、上記収容部の接触部分を挟んだ2つの空間を連結する。
【0009】
好ましくは、上記洗浄用保持冶具において、上記収容部は、凹部と、この凹部の内部に形成され上記洗浄用保持冶具を厚み方向に貫通する貫通孔と、を含み、上記収容部は、上記貫通孔の上記凹部側の開口端において上記被洗浄体に接触する。
【0010】
好ましくは、上記流路は、上記凹部よりも深く形成されている。
好ましくは、上記洗浄用保持冶具において、上記流路は、上記洗浄用保持冶具の少なくとも一端側まで延びる。
好ましくは、上記洗浄用保持冶具において、上記洗浄用保持冶具は、回転駆動装置に配置されて回転し、上記流路は、上記洗浄用保持冶具の回転中心となる回転軸に交差する方向に長く形成されている。
【0011】
好ましくは、上記洗浄用保持冶具において、上記洗浄用保持冶具は、上記収容部及び上記流路が形成された第1の保持部材と、上記第1の保持部材に対向して配置され、この第1の保持部材と共に上記被洗浄体を保持する第2の保持部材と、を含む。
【0012】
好ましくは、上記洗浄用保持冶具において、上記収容部及び上記流路は、上記第1の保持部材及び上記第2の保持部材の両方に形成され、上記第2の保持部材の上記収容部は、上記第1の保持部材の上記収容部に対向して配置されている。
好ましくは、上記洗浄用保持冶具において、上記被洗浄体は、光学素子である。
【0013】
本発明の洗浄方法は、被洗浄体を洗浄する洗浄工程と、その後、上記被洗浄体に付着した液体を除去する脱水工程と、を含み、上記脱水工程では、洗浄用保持冶具によって上記被洗浄体を線接触又は面接触により保持した状態でこの被洗浄体を回転させ、上記洗浄用保持冶具の上記被洗浄体との接触部分を挟んだ2つの空間を連結する流路によって、上記液体を上記洗浄用保持冶具の回転中心となる回転軸に交差する方向に排水する。
【0014】
好ましくは、上記洗浄方法において、上記洗浄工程では、上記洗浄用保持冶具で保持した状態の上記被洗浄体を洗浄する。
好ましくは、上記洗浄方法において、上記被洗浄体は、光学素子である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被洗浄体に傷がつくのを抑えることができると共に洗浄用保持冶具内の液残りを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る洗浄用保持冶具の第1の保持部材を示す平面図である。
【図2A】図1のII−II断面図である。
【図2B】2つの保持部材が互いに対向するように配置された状態の図1のII−II断面図である。
【図3A】図1のIII−III断面図である。
【図3B】2つの保持部材が互いに対向するように配置された状態の図1のIII−III断面図である。
【図4A】本発明の一実施の形態に係る洗浄方法の脱水工程を説明するための脱水装置を示す斜視図である。
【図4B】本発明の一実施の形態に係る洗浄方法の脱水工程を説明するための脱水装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る洗浄用保持冶具及び洗浄方法について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る洗浄用保持冶具の第1の保持部材10を示す平面図である。
【0018】
図2Aは図1のII−II断面図であり、図2Bは2つの保持部材10,20が互いに対向するように配置された状態のII−II断面図である。
図3Aは図1のIII−III断面図であり、図3Bは2つの保持部材10,20が互いに対向するように配置された状態のIII−III断面図である。
【0019】
洗浄用保持冶具1は、図1等に示す第1の保持部材10と、図2B及び図3Bに示すように第1の保持部材10に対向するように配置された第2の保持部材20と、を備える。本実施の形態では、第1の保持部材10と第2の保持部材20とは、同一部材であり、収容部11,21が互いに対向するように配置されている。
【0020】
図1、図2B、図3B等に示すように、第1の保持部材10及び第2の保持部材20は、収容部11,21と、平行に複数並設された第1の溝12,22と、これら第1の溝12,22に直交し平行に複数並設された第2の溝13,23と、を備え、平面視矩形の板状を呈する。なお、本実施の形態では、第1の溝12,22のみが「流路」として機能する。
【0021】
図1に示すように、第1の保持部材10及び第2の保持部材20には、中央において厚み方向に貫通するように中央貫通孔14(第2の保持部材20のものは図示せず)が形成されている。第1の保持部材10及び第2の保持部材20は、上記の中央貫通孔14において、図示しない機構によって、例えば搬送されたり、位置決めされたりすることが可能となる。
【0022】
また、第1の保持部材10及び第2の保持部材20には、保持部材10,20を互いに位置決めするためのピン(位置決め部材)が挿入される2つの位置決め用孔15,15(第2の保持部材20のものは図示せず)が形成されている。
【0023】
図1〜図3Bに示すように、収容部11,21は、凹部11a,21aと、この凹部11a,21aの内部に形成され保持部材10,20を厚み方向に貫通する貫通孔11b,12bと、を含む。また、収容部11,21は、被洗浄体としての1つの光学素子100の一部(少なくとも一部)を収容する。なお、光学素子100は、例えば、ガラスレンズである。
【0024】
凹部11a,21aは、例えば断面円形状を呈し、洗浄用保持冶具1(保持部材10,20)の厚み方向に深さD0で形成されている。貫通孔11b,21bは、例えば、凹部11a,21aと同軸の断面円形状を呈し、凹部11a,21aよりも断面形状が小さい。
【0025】
収容部11,21は、その周方向に亘って光学素子100に線接触(又は面接触)により接触する。具体的には、収容部11,21は、貫通孔11b,12bの凹部11a,12a側の開口端において光学素子100に接触する。
【0026】
第1の溝12,22及び第2の溝13,23は、保持部材10,20(洗浄用保持冶具1)の両端側(少なくとも一端側)まで延び、両端に開口している。
なお、本実施の形態では、第1の溝12,22は、7つ形成され、そのうち両端の2つを除く5つは収容部11,21の凹部11a,21a及び貫通孔11b,21bを貫通することで収容部11,21に開口する。
【0027】
一方、第2の溝13,23は、5つ形成され、その全てが収容部11,21の凹部11a,21aのみを貫通することで収容部11,21に開口する。
なお、本実施の形態では、第1の保持部材10及び第2の保持部材20の中央貫通孔14は、中央の第1の溝12,22上で且つ中央の第2の溝13,23上に位置し、位置決め用孔15,15は、いずれも中央の第2の溝13,23上に位置するが、中央貫通孔14及び位置決め用孔15,15は、溝12,22,13,23上に形成しなくともよく、また、省略することも可能である。
【0028】
図2A〜図3Bに示すように、第1の溝12,22は、洗浄用保持冶具1(保持部材10,20)の厚み方向に深さD1で形成されている。この深さD1は、凹部11a,21aの深さD0よりも深い。そのため、第1の溝12,22は、凹部11a,21aのみならず貫通孔11b,21bにも開口する。したがって、図2A及び図2Bに示すように、第1の溝12,22は、収容部11,21の光学素子100との接触部分を挟んだ2つの空間S1,S2、即ち本実施の形態では凹部11a,21a内の空間S1及び貫通孔11b,21b内の空間S2を互いに連結する。
【0029】
第2の溝13,23は、洗浄用保持冶具1(保持部材10,20)の厚み方向に深さD2で形成されている。この深さD2は、凹部11a,21aの深さD0よりも深くない。そのため、第2の溝13,23は、貫通孔11b,21bには開口せず、凹部11a,21aのみに開口する。したがって、第2の溝13,23は、第1の溝12,22とは異なり、2つの空間S1,S2を連結しない。
【0030】
上述のように、収容部11,21は、その周方向に亘って、貫通孔11b,12bの凹部11a,12a側の開口端において光学素子100に線接触(又は面接触)により接触する。但し、第1の溝12,22が凹部11a,21aよりも深く形成されていることで(深さD1>深さD0)、収容部11は、貫通孔11b,12bの凹部11a,12a側の開口端のうち第1の溝12,22以外の部分において、収容部11,21の周方向に亘って光学素子100に接触する。
【0031】
なお、第1の溝12,22の幅を大きくしすぎると収容部11,21が光学素子100に線接触する領域が相対的に小さくなる。本実施の形態では、図1に示すように、収容部11,21がその周方向の半分以上の領域に亘って光学素子100に線接触している。
【0032】
図4A及び図4Bは、本実施の形態に係る洗浄方法の脱水工程を説明するための脱水装置200を示す斜視図及び平面図である。
図4A及び図4Bに示す回転駆動装置としての脱水装置200は、回転テーブル210と、この回転テーブル210上に配置されて回転移動する冶具収納部220と、を備える。なお、回転テーブル210上には、図4Bに二点鎖線で示す領域に、錘或いは他の冶具収納部220などが配置される。また、回転テーブル210は、例えば、図示しない脱水槽の内部に配置される。
【0033】
冶具収納部220は、平面視円形枠状の上端部221及び下端部222と、これらを連結する互いに平行に3本設けられた柱部223,224,225と、そのうちの中央の柱部224bに固定された冶具支持部226と、を含む。この冶具支持部226には、洗浄用保持冶具1が挿入される。
【0034】
以下、本実施の形態に係る洗浄方法について説明する。
まず、図示しない洗浄装置は、洗浄用保持冶具1により保持された状態の光学素子100を洗浄する(洗浄工程)。このとき、洗浄用保持冶具1は、既に図4A及び図4Bに示す冶具収納部220の冶具支持具226内に斜め上方から縦向きに収納されている。
【0035】
洗浄工程では、アルカリ又は酸の水系洗浄剤を含む洗浄液中で超音波により光学素子100が洗浄された後、洗浄液が排水される。その後、純水(すすぎ液)中で超音波洗浄が再度行われる。そして、純水が排水される。この純水の排水時には、例えば純水の掛け流しなどが行われる。なお、この洗浄工程は、一例にすぎず、超音波洗浄以外の洗浄などが行われるものでもよく、光学素子100その他の被洗浄体を液体で洗浄するものであればよい。
【0036】
その後、洗浄用保持冶具1は、冶具収納部220ごと図4A及び図4Bに示す脱水装置200に搬送される。脱水装置200は、回転テーブル210が冶具収納部220を回転させることで光学素子100を回転させる。これにより、光学素子100に付着した液体(本実施の形態では、すすぎ液)が除去される(脱水工程)。なお、脱水工程では、洗浄用保持冶具1に温風を吹き付けるなどして脱水を促進させてもよい。
【0037】
上述のように、光学素子100は、洗浄用保持冶具1によって線接触(又は面接触)により保持された状態で回転する。図4Bに示すように、洗浄用保持冶具1の第1の溝12,22は、洗浄用保持冶具1の回転中心となる回転テーブル210の回転軸Aに交差する方向として本実施の形態では遠心力方向CFに延びるように、洗浄用保持冶具1は冶具支持部226に挿入されている。
【0038】
そのため、回転テーブル210上で冶具収納部220が回転すると、図2Bに示すように、収容部11,21の光学素子100との線接触部分を挟んだ2つの空間S1,S2を連結する第1の溝12,22によって、図4Bに示す遠心力方向CF(図2Bでは左方向)に光学素子100や洗浄用保持冶具1に付着した液体を排水することができる。
【0039】
以上説明した本実施の形態では、洗浄用保持冶具1は、光学素子(被洗浄体)100の一部(少なくとも一部)を収容する収容部11,21と、この収容部11,21に開口する第1の溝(流路)12,22と、を備える。また、収容部11,21は、この収容部11,21の周方向に亘って光学素子100に線接触(又は面接触)により接触し、第1の溝12,22は、収容部11,21の光学素子100との接触部分を挟んだ2つの空間S1,S2を連結する。
【0040】
そのため、収容部11,21がその周方向に亘って光学素子100に線接触することで、収容部11,21が光学素子100に点接触する場合に比較して、光学素子100に傷がつくのを抑えることができる。また、収容部11,21がその周方向に亘って光学素子100に線接触しても、第1の溝12,22が線接触部分を挟んだ2つの空間S1,S2を連結するため、光学素子100や洗浄用保持冶具1に付着したすすぎ液(液体)が線接触部分又はその近傍において液残りするのを防ぐことができる。
【0041】
よって、本実施の形態の洗浄用保持冶具1によれば、被洗浄体(光学素子100)に傷がつくのを抑えることができると共に洗浄用保持冶具1内の液残りを防ぐことができる。
また、本実施の形態では、収容部11,21は、凹部11a,21aと、この凹部11a,21aの内部に形成され洗浄用保持冶具1を厚み方向に貫通する貫通孔11b,21bと、を含む。また、収容部11,21は、貫通孔11b,21bの凹部11a,21a側の開口端において光学素子100に接触する。そのため、第1の溝12,22に加えて貫通孔11b,21bからも排水することができ、したがって、洗浄用保持冶具1内の液残りをより一層防ぐことができる。
【0042】
また、本実施の形態では、第1の溝12,22(深さD1)は、凹部11a(深さD0)よりも深く形成されている(D1>D0)。そのため、光学素子100や洗浄用保持冶具1に付着したすすぎ液が線接触部分又はその近傍において液残りするのをより一層防ぐことができる。
【0043】
また、本実施の形態では、第1の溝12,22は、洗浄用保持冶具1の両端側(少なくとも一端側)まで延び、両端に開口している。そのため、洗浄用保持冶具1の端部から排水することができ、したがって、洗浄用保持冶具1内の液残りをより一層防ぐことができる。
【0044】
また、本実施の形態では、洗浄用保持冶具1は、脱水装置(回転駆動装置)200に配置されて回転し、第1の溝12,22は、洗浄用保持冶具1の回転中心となる回転軸Aに直交する遠心力方向CF(回転軸Aに交差する方向)に長く形成されている。そのため、洗浄用保持冶具1の回転時に、遠心力によって、第1の溝12,22を介して排水することができ、したがって、洗浄用保持冶具1内の液残りをより一層防ぐことができる。
【0045】
また、本実施の形態では、洗浄用保持冶具1は、収容部11及び第1の溝12が形成された第1の保持部材10と、この第1の保持部材10に対向して配置され、この第1の保持部材10と共に光学素子100を保持する第2の保持部材20と、を含む。そのため、光学素子100を確実に保持することができ、したがって、回転時における脱水装置200からの光学素子100の飛び出し及び紛失を防ぐことができる。
【0046】
また、本実施の形態では、収容部11,21及び第1の溝12,22は、第1の保持部材10及び第2の保持部材20の両方に形成され、第2の保持部材20の収容部21は、第1の保持部材10の収容部11に対向して配置されている。そのため、第1の保持部材10及び第2の保持部材20の両方から排水を行うことができ、したがって、洗浄用保持冶具1内の液残りをより一層防ぐことができる。
【0047】
また、本実施の形態の洗浄方法は、光学素子100を洗浄する洗浄工程と、その後、光学素子100に付着した液体を除去する脱水工程と、を含む。また、脱水工程では、脱水装置200は、洗浄用保持冶具1によって光学素子100を線接触により保持した状態で光学素子100を回転させる。また、洗浄用保持冶具1の光学素子100との接触部分を挟んだ2つの空間S1,S2を連結する第1の溝12,22は、液体を洗浄用保持冶具1の回転中心となる回転軸Aに直交する遠心力方向CF(回転軸Aに交差する方向)に排水する。
【0048】
そのため、洗浄用保持冶具1が光学素子100に線接触することで、洗浄用保持冶具1が光学素子100に点接触する場合に比較して、光学素子100に傷がつくのを抑えることができる。また、2つの空間S1,S2を連結する第1の溝12,22が、液体を洗浄用保持冶具1の回転中心となる回転軸Aに直交する遠心力方向CF(回転軸Aに交差する方向)に排水するため、光学素子100や洗浄用保持冶具1に付着した液体が線接触部分又はその近傍において液残りするのを防ぐことができる。
【0049】
よって、本実施の形態の洗浄方法によれば、被洗浄体(光学素子100)に傷がつくのを抑えることができると共に洗浄用保持冶具1内の液残りを防ぐことができる。
【0050】
また、本実施の形態の洗浄工程では、光学素子100は、洗浄用保持冶具1で保持された状態で洗浄される。そのため、洗浄工程及び脱水工程の両方の工程において単一の洗浄用保持冶具1を用いることができ、したがって、光学素子100の洗浄方法を簡易化することができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、洗浄用保持冶具1が第1の保持部材10及び第2の保持部材20の両方を備えるが、一方のみ備えるようにしてもよい。その場合、洗浄用保持冶具1を回転させる際に、光学素子100が飛び出さないように収容部11,21が光学素子100を収容する部分を多くするなどの対策をとるとよい。
【0052】
また、本実施の形態では、収容部11,21が1つの光学素子100を収容するため、光学素子100が互いに接触することなく、擦れ傷や微小欠けの発生を防止することができるが、仕切りを設けることなどによって収容部11,21に複数の光学素子100を収容するようにしてもよい。また、収容部11,21が1つ又は複数の光学素子100の全体を収容するようにしてもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、洗浄用保持冶具1は、流路としての第1の溝12,22のみならず第2の溝13,23をも備えるが、第2の溝13,23を省略しても第1の溝13,23から排水することができるため、第2の溝13,23は省略してもよい。また、第2の溝13,23を第1の溝12,22と同様の深さに形成し、これらの溝を互いに交差させることで、位置決めを行わなくとも、少なくとも一方の溝を回転軸Aと交差する方向に向けることができる。
【0054】
また、本実施の形態では、第1の溝12,22は、複数の収容部11,21に開口するが、単一の収容部11,21のみに開口するようにしてもよい。その場合、洗浄用保持冶具1内の液残りをより一層防ぐことができる。
【0055】
また、本実施の形態では、洗浄用保持冶具1(第1の保持部材10及び第2の保持部材20)は、平面視矩形の板状を呈するため、第1の溝12,22を遠心力方向CF等に向けることが容易になるが、平面視円形の板状その他の形状としてもよく、形状は特に制限されない。
【0056】
また、本実施の形態では、第1の溝12,22は、洗浄用保持冶具1(回転テーブル210)の回転軸Aに交差する方向として遠心力方向CFに延びるが、回転軸Aに交差する方向であれば遠心力によって円滑に排水することは可能であるため、必ずしも遠心力方向CFに完全に一致する方向に延びる必要はない。
【0057】
また、本実施の形態では、脱水装置200は、回転テーブル210の回転軸Aを中心に洗浄用保持冶具1を回転させるが、この回転軸が洗浄用保持冶具1上に位置するように回転させてもよい。また、洗浄用保持冶具1の厚み方向が鉛直方向に一致するように洗浄用保持冶具1を寝かせた状態で回転させるようにしてもよい。
また、本実施の形態では、被洗浄体が光学素子100である場合について説明したが、被洗浄体は、例えば、光学素子成形用型や光学素子の鏡枠などであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 洗浄用保持冶具
10 第1の保持部材
20 第2の保持部材
11,21 収容部
11a,21a 凹部
11b,12b 貫通孔
12,22 第1の溝
13,23 第2の溝
14 中央貫通孔
15 位置決め用孔
100 光学素子
200 脱水装置
210 回転テーブル
220 冶具収納部
221 上端部
222 下端部
223,224,225 柱部
226 冶具支持部
A 回転軸
CF 遠心力
D0,D1,D2 深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄体の少なくとも一部を収容する収容部と、
前記収容部に開口する流路と、を備え、
前記収容部は、該収容部の周方向に亘って前記被洗浄体に線接触又は面接触により接触し、
前記流路は、前記収容部の前記被洗浄体との接触部分を挟んだ2つの空間を連結する、洗浄用保持冶具。
【請求項2】
請求項1記載の洗浄用保持冶具において、
前記収容部は、凹部と、この凹部の内部に形成され前記洗浄用保持冶具を厚み方向に貫通する貫通孔と、を含み、
前記収容部は、前記貫通孔の前記凹部側の開口端において前記被洗浄体に接触する、洗浄用保持冶具。
【請求項3】
請求項2記載の洗浄用保持冶具において、
前記流路は、前記凹部よりも深く形成されている、洗浄用保持冶具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項記載の洗浄用保持冶具において、
前記流路は、前記洗浄用保持冶具の少なくとも一端側まで延びる、洗浄用保持冶具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項記載の洗浄用保持冶具において、
前記洗浄用保持冶具は、回転駆動装置に配置されて回転し、
前記流路は、前記洗浄用保持冶具の回転中心となる回転軸に交差する方向に長く形成されている、洗浄用保持冶具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項記載の洗浄用保持冶具において、
前記収容部及び前記流路が形成された第1の保持部材と、
前記第1の保持部材に対向して配置され、該第1の保持部材と共に前記被洗浄体を保持する第2の保持部材と、を含む、洗浄用保持冶具。
【請求項7】
請求項6記載の洗浄用保持冶具において、
前記収容部及び前記流路は、前記第1の保持部材及び前記第2の保持部材の両方に形成され、
前記第2の保持部材の前記収容部は、前記第1の保持部材の前記収容部に対向して配置されている、洗浄用保持冶具。
【請求項8】
請求項1から請求項7記載の洗浄用保持冶具において、
前記被洗浄体は、光学素子である、洗浄用保持冶具。
【請求項9】
被洗浄体を洗浄する洗浄工程と、
その後、前記被洗浄体に付着した液体を除去する脱水工程と、を含み、
前記脱水工程では、
洗浄用保持冶具によって前記被洗浄体を線接触又は面接触により保持した状態で該被洗浄体を回転させ、
前記洗浄用保持冶具の前記被洗浄体との接触部分を挟んだ2つの空間を連結する流路によって、前記液体を前記洗浄用保持冶具の回転中心となる回転軸に交差する方向に排水する、洗浄方法。
【請求項10】
請求項9記載の洗浄方法において、
前記洗浄工程では、前記洗浄用保持冶具で保持した状態の前記被洗浄体を洗浄する、洗浄方法。
【請求項11】
請求項9又は請求項10記載の洗浄方法において、
前記被洗浄体は、光学素子である、洗浄方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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