説明

洗浄装置および方法

【課題】塩素系の洗浄液を使用できる簡易な構成の洗浄システムを提供する。
【解決手段】断面がほぼU字形の金属製の第1の洗浄槽11を含む超音波洗浄装置10と、第1の洗浄槽11の内側に着脱可能な金属製の第2の洗浄槽20と、第2の洗浄槽20の上部開口を覆うことができる蓋40とを含む洗浄システム1を提供する。第1の洗浄槽11の底壁には超音波振動子が取り付けられ、第1の洗浄槽11の上部開口11aの周囲は平坦な受け面19になっている。第2の洗浄槽20の上部開口21aの周囲は鍔状に外側に広がるように形成され、鍔状の部分22の一部が受け面19とシリコンゴム製の緩衝材51を挟んで重なり、蓋40の内面41bは全体が樹脂層53により覆われている。このため、第2の洗浄槽20に塩素系の洗浄液を入れて洗浄したときの塩素臭の広がりを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌を兼ねた洗浄に適した装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
殺菌を兼ねた洗浄を簡単に行えることについての要望は多い。例えば、歯科治療において院内感染を防止することは重要であり、治療器具をオートクレーブ(高圧蒸気滅菌)により加熱・滅菌処理することは通常行われている。しかしながら、血液などを洗浄することはできない。使い捨てることにより殺菌および洗浄を省くことも考えられているが、資源の浪費につながることも多い。
【0003】
歯科治療において、金属系の器具が使用されることは多い。例えば、超高速回転で回転し歯を切削するためのハンドピース、それらにつけて使用するスチール・ポイント類、歯石除去で用いるスケーラー、根管治療に用いるリ−マーおよびファイル、メス、探針、はさみ、ミラーが挙げられる。
【0004】
特許文献1−3に記載されている歯科治療用の洗浄装置は、洗浄槽と、この洗浄槽に洗浄液およびリンス水を供給するためのシステムとを備えている。システムは、バルブを含めた配管系およびタンクさらにはポンプなどを含む。また、特許文献1においては、洗浄槽を密閉真空にした後に、その陰圧を利用して洗浄液を洗浄槽内に噴出させることが記載されている。
【特許文献1】特開2005−65991号公報
【特許文献2】特開平6−205796号公報
【特許文献3】特開昭59−55248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの洗浄装置の1つの課題は、洗浄液を給水および排水するためのシステムが複雑であることである。したがって、装置は大型および高コストになるので普及させることが難しい。また、システムが複雑になると信頼性が低下しやすく、給水および排水のシステムが故障すると器具を洗浄できない。簡単な対策は予備システムを用意したり、冗長的なシステムにすることであるが経済的ではない。
【0006】
さらに、これらの洗浄装置では、洗浄液を配管、バルブを介して洗浄槽に供給するため、濯ぎの際は、洗浄対象の器具だけではなく、洗浄槽、配管、バルブも合わせて濯ぐ必要がある。そのため、リンス水が汚染されやすく、器具の濯ぎが不十分になりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の1つは、第1の洗浄槽と、第2の洗浄槽と、蓋とを備えた洗浄システムである。第1の洗浄槽は、断面がほぼU字形の金属製であって、超音波振動子が外面の一部に取り付けられ、上部開口の周囲が平坦な受け面になるように形成されている。第2の洗浄槽は、第1の洗浄槽の内側に着脱可能な金属製の槽であって、上部開口の周囲は鍔状に外側に広がるように形成され、鍔状の少なくとも一部を受け面の少なくとも一部の上に緩衝材を挟んで重ねることにより、第1の洗浄槽の内部に吊り下げた状態でセット可能になっている。蓋は、第2の洗浄槽の上部開口を、少なくとも覆うことができるサイズの金属製の蓋であって、ほぼ平坦な内面を備え、その内面全体が樹脂層により覆われている。
【0008】
この洗浄システムでは、第1の洗浄槽には水を入れ、その状態で第2の洗浄槽を第1の洗浄槽にセットし、さらに、第2の洗浄槽に洗浄液と、被洗浄物とを入れ、第2の洗浄槽の上部開口に蓋をすることにより洗浄液により被洗浄物を超音波洗浄できる。第2の洗浄槽は、第1の洗浄槽の内部に吊り下げられた状態にセットされるので、第1の洗浄槽内の液体と金属製の第2の洗浄槽を介して超音波が第2の洗浄槽の内部の洗浄液にも伝達され、洗浄液内において被洗浄物は超音波洗浄される。第2の洗浄槽の鍔状の部分は、シリコンゴムなどの緩衝材を挟んで第1の洗浄槽の受け面に接しているので、第1の洗浄槽と第2の洗浄槽とが金属同士で直に接触することはなく、超音波洗浄している間の振動あるいは騒音の発生を抑制できる。
【0009】
蓋は、内面全体が樹脂により覆われているので、内面のいずれかの場所が第2の洗浄槽の鍔状の部分に接して、第2の洗浄槽が多少振動している状態であっても、その内部からの気体のリークを防止する。したがって、洗浄液が塩素系のものであっても、洗浄中に塩素の臭いが外部に漏れ出すことを防止できる。
【0010】
第2の洗浄槽は、第1の洗浄槽に対して着脱できるので、第1の洗浄槽を濯ぎなどのために使用するときは、第2の洗浄槽を取り出せば良く、第2の洗浄槽から洗浄液を排出する必要はない。蓋は、第2の洗浄槽から簡単に取り外しできるので、第2の洗浄槽から被洗浄物を取り出すのは容易であり、第2の洗浄槽を含めて濯がなくても良い。したがって、被洗浄物を濯ぐときに第2の洗浄槽を同時に濯ぐ必要はない。また、第2の洗浄槽から洗浄液を排出する必要がないので、第2の洗浄槽に対して自動的に洗浄液を供給あるいは排出するシステムは不用であり、簡易な構成の洗浄システムを提供できる。また、被洗浄物の濯ぎも効率よく行うことができる。
【0011】
第1の洗浄槽の底壁の裏側に少なくとも3つの超音波振動子を非直線的(ジグザグ、千鳥など)に配置することが好ましい。1つの形態は、3つの超音波振動子、例えば、ランジバン振動子を、三角形状に配置することである。コンパクトな第1の洗浄槽で、超音波振動の出力を向上できるので、第1の洗浄槽内の液体を介して第2の洗浄槽の洗浄液中の被洗浄物に対し超音波振動を印加しやすく、洗浄力を向上できる。
【0012】
この洗浄システムは、第2の洗浄槽に収納可能な金属製のバスケットであって、被洗浄物を内部に収納可能なバスケットをさらに有することが望ましい。また、蓋は、第1の洗浄槽の上部開口をほぼ覆うことができるサイズであることが好ましい。内面全体を樹脂により覆うことにより、第2の洗浄槽の上部開口より蓋が大きくても、内面のいずれかが第2の洗浄槽の上部開口に接するので、有効に第2の洗浄槽を蓋できる。
【0013】
本発明の他の態様は、上記の洗浄システムを用いて被洗浄物を洗浄する方法である。この方法は、以下のステップを含む。
1.第1の洗浄槽の内側に第2の洗浄槽がセットされ、第1の洗浄槽と第2の洗浄槽との間に水が入り、第2の洗浄槽の中に洗浄液および被洗浄物が入り、第2の洗浄槽の上部開口が蓋により覆われた状態で、超音波振動子により超音波を印加すること。
2.第1の洗浄槽から第2の洗浄槽が外され、第1の洗浄槽の中に濯ぎ液および被洗浄物が入った状態で、超音波振動子により超音波を印加すること。
【0014】
洗浄液のひとつの例は、次亜塩素酸ナトリウムと、界面活性剤と、防錆剤とを含むものである。次亜塩素酸ナトリウムは、十分な殺菌効果を得るためには有効塩素濃度が1−5%程度、さらに好ましくは3%程度であることが望ましい。この程度の濃度であると、洗浄液に被洗浄物を入れて超音波洗浄により塩素臭気が広がるが、第1の洗浄槽に対して吊り下げられた状態の第2の洗浄槽と蓋とを用いることにより塩素臭気を抑制できる。界面活性剤は、血液などを含めた汚れを除去する効果が高い。さらに、塩素による腐食を防止するため防錆剤(PH安定剤)を含むことが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に、本発明の一実施形態にかかる洗浄システムを展開して示している。この洗浄システム1は、第1の洗浄槽11を備えた超音波洗浄装置10と、第1の洗浄槽11の内側にセット可能な第2の洗浄槽20と、第2の洗浄槽20の内側にセット可能なバスケット30と、第1の洗浄槽11の上部開口を塞ぐことができる蓋40とを備えている。
【0016】
図2に、超音波洗浄装置10を上方から見た様子を示している。図3に、洗浄システム1を上部に展開した様子を、超音波洗浄装置10の長手方向Xの断面により示している。また、図4に、洗浄システム1を組み立てた状態を、超音波洗浄装置10を方向Xと直交する方向(幅方向)Yの断面により示している。超音波洗浄装置10は、全体が方形で樹脂性のハウジング12を有し、その内部に断面がほぼU字形で上方が開口となった金属製、例えば、ステンレススチール(SUS304)製の第1の洗浄槽11が配置されている。第1の洗浄槽11は、上部開口11aの周囲がフランジ状になり、ハウジング12との間に平坦な受け面19が形成されている。さらに、ハウジング12の長手方向Xに沿った受け面19には、帯状のシリコンゴム製のシート51が緩衝材として取り付けられている。
【0017】
第1の洗浄槽11の底壁14の裏側14bには、超音波振動子として3つのランジバン振動子13a〜13cが非直線的に、三角形をなすように配置されている。さらに、洗浄槽11の底壁14の一方のコーナーには排水口15が設けられており、洗浄装置10は、底壁の裏面14bからハウジング12の内部を通って外部に排水を導くための排水管16を備えている。また、ハウジング12の内部には、ランジバン振動子13a〜13cに電力を供給して駆動するための駆動装置17が収納されている。また、ハウジング12の一方の面12aには操作パネル18が設けられている。
【0018】
第2の洗浄槽20は、第1の洗浄槽11の内側に着脱可能な金属製、例えば、ステンレススチール(SUS304)製のバケット(トレー、容器)である。第2の洗浄槽20は、断面がほぼU字形の槽部分21と、この槽部分21の上部開口21aの周囲に外側に広がるように形成された鍔状の部分22とを含む。槽部分21の上部開口21aは、第1の洗浄槽11の上部開口11aより若干小さい。鍔状の部分22を含めた第2の洗浄槽20のY方向の長さは、第1の洗浄槽11の上部開口11aのY方向の内側のサイズよりも長い。このため、第2の洗浄槽20を、第1の洗浄槽11の上部開口11aに上方からセットすると、第2の洗浄槽20の槽部分21は、第1の洗浄槽11の内側に入る。また、鍔状の部分22のY方向に広がった部分の一部が、第1の洗浄槽11の受け面19の上に、緩衝材51を挟んで重なる。このため、第2の洗浄槽20は、槽部分21が第1の洗浄槽11の内部に吊り下げた状態でセットされる。
【0019】
バスケット30は、第2の洗浄槽20の槽部分21に収納されるサイズの金属製、例えばステンレススチール(SUS304)製の方形の籠である。バスケット30は、被洗浄物を入れるためのものであり、上部に取っ手34が設けられている。バスケット30の側壁31および底壁32には複数の孔33が設けられている。また、底壁32の裏側32bには、シリコンゴム製の薄いシート52が脚部として取り付けられている。このため、バスケット30を第2の洗浄槽20に収納したときに、バスケット30と槽部分21の底壁24が金属同士により直に接触するのを防止できる。
【0020】
蓋40は、第1の洗浄槽11の上部開口11aを覆うことができるサイズの板状の部分41と、この板状の部分41の中央に配置された取っ手42と、板状の部分41の裏面41bの全体を覆うように設けられたシリコンゴム製のシート53とを含む。シート53は、板状の部分41の上面41aの周囲も含めてカバーしている。この蓋40は、ほぼ平坦な内面41bを備え、その内面41bの全体が樹脂層(シリコンゴム層)により覆われた状態になっている。
【0021】
図5に、第1の洗浄槽11に第2の洗浄槽20をセットし、さらに、蓋40を載せた状態の、第2の洗浄槽20の鍔状の部分22を拡大して示している。第2の洗浄槽20の鍔状の部分22は、槽部分21からフランジ状に、略水平に外側に延設されている。このため、第2の洗浄槽20を第1の洗浄槽11の内側にセットすると、鍔状の部分22の裏側22bが第1の洗浄槽11の受け面19に対してシリコンゴム製の緩衝材51を介して重なる。超音波洗浄装置10において、ランジバン振動子13a〜13cを駆動されて超音波が発生されると、金属製の第1の洗浄槽11を介して超音波振動が第1の洗浄槽11の内部の液体に伝達される。さらに、第1の洗浄槽11の内部に吊り下げられた状態でセットされた金属製の第2の洗浄槽20の槽部分21を介して槽部分21の内部の液体に超音波振動が伝達される。この際、第1の洗浄槽11も、第2の洗浄槽20も振動するが、緩衝層51を介して第2の洗浄槽20を第1の洗浄槽11に搭載することにより、第1の洗浄槽11と第2の洗浄槽22とが金属同士で直に接することを防止でき、振動による騒音の発生を抑制でき、さらに、これらの槽11および12が共振して大きく振動したりすることも抑制できる。
【0022】
超音波振動子は、ランジバン振動子に限らず、PZTなど他の振動子ユニットを採用することも可能である。ランジバン振動子は、高出力のものが低コストで得やすいので、好適な振動子の一例である。また、複数、特に3以上の振動子を非直線的、例えば、三角形、ジグザグ、千鳥状に配置することにより、面積あたりの出力を向上できる。本例の洗浄装置は3つの振動子を配置しているが、例えば、4つ、あるいは5つの振動子をジグザグに配置することができる。
【0023】
第2の洗浄槽20の鍔状の部分22の上面22aは、蓋40の内面41bに接する。蓋40の内面41bはほぼ平坦であり、その内面41bの全体がシリコン樹脂(シリコンゴム)53により覆われている。このため、蓋40の内面41bのいずれかの場所がシリコン樹脂層53を介して鍔状の部分22の上面22aに接する。シリコン樹脂層53は、柔軟であり、弾性もある。このため、シリコン樹脂層53は、鍔状の部分22の上面22aに沿って変形し、さらに、第2の洗浄槽20が小さな振幅で振動している状態であっても緩衝材として機能して振動を吸収して蓋40と鍔状の部分22との間に隙間が開くのを抑制する。このため、第2の洗浄槽30の内部からの気体のリークを防止する。したがって、洗浄液が塩素系のものであっても、洗浄中に塩素の臭いが外部に漏れ出すことを防止できる。
【0024】
この洗浄システム1では、第1の洗浄槽11に、洗浄槽11の内部の下側の目盛り65まで水61を入れ、第2の洗浄槽20をセットする。水の代わりに、他の液体を第1の洗浄槽11に入れることも可能であるが、水がもっとも害がなく、また、処理が容易な液体である。さらに、第2の洗浄槽20に、洗浄液62と、被洗浄物70が収納されたバスケット30とを入れる。被洗浄物70の一例は、歯科用の治療器具であり、たとえば、ピンセット、ミラー、探針、はさみなどの金属製の治療器具である。そして、蓋40をセットし、第2の洗浄槽20が蓋40により覆われた状態で超音波振動子13a〜13cを駆動して超音波を加え、被洗浄物70を超音波洗浄する。
【0025】
洗浄液(洗浄剤)62の好適なものは、次亜塩素酸ナトリウムと、界面活性剤と、防錆剤とを含むものである。次亜塩素酸ナトリウムは、十分な殺菌効果を得るためには有効塩素濃度が1−5%程度、さらに好ましくは3%程度であることが望ましい。この洗浄液62を超音波洗浄に用いると塩素臭気が広がるが、上記のように、洗浄システム1では、超音波洗浄中に、第2の洗浄槽20の上部開口21aを蓋40によりほぼ密閉できるので塩素臭気(塩素臭)が広がるのを抑制できる。界面活性剤は、血液などを含めた汚れを除去するために効果が高く、治療器具を洗浄するのに適している。さらに、金属製の治療器具は塩素により腐食し易い。このため、洗浄液62は、腐食を防止するため防錆剤(PH安定剤)を含むことが望ましい。
【0026】
所定の時間、洗浄液62に浸した状態で被洗浄物70を超音波洗浄した後、バスケット30を第2の洗浄槽20から取出す。バスケット30をパットの上などに置いて、十分に洗浄液62を切った後、図6に示すように、流水で予備濯ぎする。
【0027】
次に、図7に示すように、第1の洗浄槽11から第2の洗浄槽20を取り外し、第1の洗浄槽11の中に濯ぎ液63を上側の目盛り66まで入れて、被洗浄物70が入ったバスケット30を入れる。第1の洗浄槽11の上部開口11aに蓋40をセットし、この状態で、超音波振動子13a〜13cにより超音波を発生させて超音波洗浄する。この濯ぎの段階では、3つの超音波振動子13a〜13cの一部を稼動させても良い。また、濯ぎ液63の好適な例は水である。濯ぎの段階では塩素臭が広がることはほとんどないので、上部開口11aを蓋40により完全に覆う必要はない。しかしながら、超音波洗浄中の水はねや、騒音を防止する点では、第1の洗浄槽11の上部開口11aを覆うことができるサイズの蓋40を用意して、第1の洗浄槽11を覆うことが望ましい。また、この蓋40は内側41bが略平坦で、全面がシリコン樹脂53により覆われているので、蓋40のサイズが第2の洗浄槽の鍔状の部分22より大きくても、蓋40の内面41bのいずれかが鍔状の部分22に接して第2の洗浄槽20を封止できる。
【0028】
さらに、図8に示すように、濯ぎが終了した被洗浄物70をオートクレーブ69に入れて高圧蒸気により殺菌する。オートクレーブ69は、滅菌作用は高いが洗浄能力はなく、被洗浄物70に血液あるいはたんぱく質などが付着していると十分な殺菌効果が得られない。したがって、洗浄システム1を用い、洗浄物70を、塩素により殺菌するとともに、洗浄物70から、血液あるいはたんぱく質を含めた汚れを除去した後に、オートクレーブ69により滅菌処理することが望ましい。
【0029】
上記の洗浄システム1において、第2の洗浄槽20は、第1の洗浄槽11に対して着脱できる。このため、第2の洗浄槽20を第1の洗浄槽11から取り外すことにより、超音波洗浄装置10を濯ぎなどの他の目的のために使用できる。また、濯ぎのために、第2の洗浄槽20から洗浄液62を排出する必要はない。さらに、蓋40は、第2の洗浄槽20から簡単に取り外しできるので、第2の洗浄槽20から被洗浄物70を取り出すのは容易である。このため、被洗浄物70を濯ぐために、第2の洗浄槽20を含めて濯がなくても良い。したがって、濯ぎ液が洗浄液62および洗浄液62の中の汚れ(医療汚染物)により汚染される恐れが少なくなり、濯ぎ液の処理が容易になる。洗浄液62の液切りを十分に行ない、十分な量の流水で予備濯ぎすることにより、一般的な廃水処理で対応することが可能である。
【0030】
また、高濃度の次亜塩素酸ナトリウムを含む洗浄液62は、塩素臭気の問題と、腐食の問題があり直に超音波洗浄槽に入れて洗浄することは問題があった。腐食の問題の1つは、金属製の洗浄槽も含めて濯ぎが十分に行なえないと、錆びが発生し易いことである。これに対し、第1の洗浄槽11に対して着脱できる第2の洗浄槽20を用いることにより、超音波洗浄装置10に含まれる第1の洗浄槽11の濯ぎは不要としている。一方、第2の洗浄槽20は、超音波洗浄装置10から取り外しできるので、濯ぎは容易であり、また、錆びが発生した場合は交換することも容易である。
【0031】
洗浄液は、次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系の消毒剤を含有するものに限定されず、非塩素系、たとえば、グルタラール液を含むものであっても良い。しかしながら、非塩素系の消毒剤は、毒性が一般的に強く、歯科医院のような小規模の医療施設には不向きであり、塩素系の消毒剤を含む洗浄液が適している。そして、本発明に含まれる洗浄システムであれば、塩素臭気の放出も抑制できるので、洗浄のためのスペースが小さい施設でも塩素系の洗浄液を使用できる。また、この洗浄システムは、歯科医院に限定されることはなく、一般の医院、小規模の実験設備を備えた工場、さらには一般家庭において使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】洗浄システムの概略構成を示す展開斜視図である。
【図2】洗浄システムの超音波洗浄装置を上方から見た図である。
【図3】洗浄システムを上下に展開した状態を示す断面図である。
【図4】洗浄システムを組み立てた状態を示す断面図である。
【図5】洗浄システムの一部を拡大して示す図である。
【図6】流水により濯ぐ状態を示す図である。
【図7】水を用いた超音波洗浄により濯ぐ様子を示す図である。
【図8】オートクレーブにより殺菌する様子を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 洗浄システム、 10 超音波洗浄装置、 11 第1の洗浄槽
20 第2の洗浄槽、 21 槽部分、 22 鍔状の部分
30 バスケット、 40 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面がほぼU字形の金属製の第1の洗浄槽であって、超音波振動子が外面の一部に取り付けられ、上部開口の周囲が平坦な受け面になるように形成された第1の洗浄槽と、
前記第1の洗浄槽の内側に着脱可能な金属製の第2の洗浄槽であって、上部開口の周囲は鍔状に外側に広がるように形成され、前記鍔状の少なくとも一部を前記受け面の少なくとも一部の上に緩衝材を挟んで重ねることにより、前記第1の洗浄槽の内部に吊り下げた状態でセット可能な第2の洗浄槽と、
前記第2の洗浄槽の上部開口を少なくとも覆うことができるサイズの金属性の蓋であって、ほぼ平坦な内面を備え、その内面全体が樹脂層により覆われている蓋と、を有する洗浄システム。
【請求項2】
請求項1において、前記第2の洗浄槽に収納可能な金属製のバスケットであって、被洗浄物を内部に収納可能なバスケットをさらに有する、洗浄システム。
【請求項3】
請求項1において、前記蓋は、前記第1の洗浄槽の上部開口をほぼ覆うことができるサイズである、洗浄システム。
【請求項4】
請求項1において、前記第1の洗浄槽の底壁の裏側に少なくとも3つの前記超音波振動子が非直線的に配置されている、洗浄システム。
【請求項5】
請求項1に記載の洗浄システムを用いて被洗浄物を洗浄する方法であって、
前記第1の洗浄槽の内側に前記第2の洗浄槽がセットされ、前記第1の洗浄槽と前記第2の洗浄槽との間に水が入り、前記第2の洗浄槽の中に洗浄液および前記被洗浄物が入り、前記第2の洗浄槽の上部開口が前記蓋により覆われた状態で、前記超音波振動子により超音波を印加することと、
前記第1の洗浄槽から前記第2の洗浄槽が外され、前記第1の洗浄槽の中に濯ぎ液および前記被洗浄物が入った状態で、前記超音波振動子により超音波を印加することとを有する方法。
【請求項6】
請求項5において、前記洗浄液は、次亜塩素酸ナトリウムと、界面活性剤と、防錆剤とを含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−49233(P2008−49233A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225734(P2006−225734)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(592022855)株式会社エスエヌディ (3)
【Fターム(参考)】