説明

洗浄装置および洗浄方法

【課題】容器の内部を洗浄する際の作業者への負担を軽減し、かつ、洗浄性に優れた洗浄装置を提供する。
【解決手段】所定量の洗浄液が収容された少なくとも一つの容器2を保持する保持部10と、該保持部を揺動させるための少なくとも一つのアクチュエータ23を具備する揺動部20と、を具備する洗浄装置1を用いて該容器の洗浄を行う。該保持部に保持された該容器は保持部とともに揺動し、容器の内部の洗浄液が盛んに動くことにより容器の内部に付着した汚れが付着した部分から浮き上がり、洗浄液に取り込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の内部、または容器に収容された被洗浄物を洗浄する洗浄装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器の内部を洗浄する洗浄装置としては、容器の内部に洗浄液を噴射するノズルと、該ノズルから噴射される洗浄液を容器の内部に隈無く行き渡らせるためにノズルの位置や向き、姿勢等を変更する機構とを組み合わせたもの(以下「ノズル式洗浄装置」という。)が知られている。例えば、特許文献1および特許文献2に記載の如くである。
ノズル式洗浄装置は一般的には、「容器の内部に付着した汚れを付着した部分から浮き上がらせて洗浄液に取り込む工程」と、「汚れを取り込んだ洗浄液を容器の外部に排出する工程」の二つの工程を同時に行うものである。
【0003】
このようなノズル式洗浄装置は、洗浄の対象となる容器に蓋を設けて該容器を閉塞し、該蓋を貫通して容器の内部に洗浄液を噴出するノズルを挿入するとともに、容器の内部に噴射された洗浄液を回収するための機構を洗浄装置に設ける必要があるため、洗浄装置が複雑な構造となるという問題がある。
また、上記の如き蓋を設けない場合には、容器の内部に噴射された洗浄液のミストが周囲に飛散することを防止するためのドラフト(排気装置)を追加的に設ける必要があり、装置全体が大型化するという問題がある。
【0004】
また、上記「容器の内部に付着した汚れを付着した部分から浮き上がらせて洗浄液に取り込む工程」のみを行う洗浄装置としては、図5および図6に示す洗浄装置が知られている。
【特許文献1】特開2003−245621号公報
【特許文献2】国際公開第96/41688号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5および図6に示す従来の揺動式洗浄装置101は、所定量の洗浄液を収容した容器(ここでは、塗料カップ2)を揺動させることにより、該洗浄液を容器の内部で盛んに動かして洗浄する(容器の内部に付着した汚れを付着した部分から浮き上がらせて洗浄液に取り込む)。従って、容器の内部に洗浄液を噴射するためのノズルを必要とせず、洗浄装置を簡素化することが可能である。
しかし、図5および図6に示す従来の揺動式洗浄装置101は、作業者がレバー102を手動で回すことにより容器を揺動させるため、作業者への負担が大きく、また洗浄性も良くない(洗浄に要する時間が長い、または、洗い残しが発生する)という問題がある。
【0006】
本発明は上記の如き状況に鑑み、作業者への負担を軽減し、かつ、洗浄性に優れた洗浄装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、容器の内部を洗浄する洗浄装置であって、
所定量の洗浄液が収容された少なくとも一つの容器を保持する保持部と、
該保持部を揺動させるための少なくとも一つのアクチュエータを具備する揺動部と、
を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記揺動部は、少なくとも平面視または側方視において、前記容器を略円運動または略楕円運動させるものである。
【0010】
請求項3においては、前記容器が略円筒形状または略円錐形状であり、
前記揺動部が前記保持部を水平面に略平行な所定の方向に往復動させる場合において、
該保持部に保持された容器の軸方向が、保持部が往復動する方向、鉛直方向、保持部が往復動する方向および鉛直方向の両方に対して略直交する方向、のいずれに対しても傾斜しているものである。
【0011】
請求項4においては、前記容器は、自動車用の塗装装置に塗料を供給するための容器であるものである。
【0012】
請求項5においては、容器に収容された対象物を洗浄する洗浄装置であって、
所定量の洗浄液が収容された少なくとも一つの容器を保持する保持部と、
該保持部を揺動させるための少なくとも一つのアクチュエータを具備する揺動部と、
を具備するものである。
【0013】
請求項6においては、前記揺動部は、少なくとも平面視または側方視において、前記容器を略円運動または略楕円運動させるものである。
【0014】
請求項7においては、前記容器が略円筒形状または略円錐形状であり、
前記揺動部が前記保持部を水平面に略平行な所定の方向に往復動させる場合において、
該保持部に保持された容器の軸方向が、保持部が往復動する方向、鉛直方向、保持部が往復動する方向および鉛直方向の両方に対して略直交する方向、のいずれに対しても傾斜しているものである。
【0015】
請求項8においては、前記対象物を前記容器の内部の所定位置に固定する固定部材を設けたものである。
【0016】
請求項9においては、前記対象物は、自動車用の塗装装置において塗料の流通経路に係る部材であるものである。
【0017】
請求項10においては、略円柱形状または略円錐形状の容器の内部、または該容器に収容された対象物の洗浄を行う洗浄方法であって、
該容器に所定量の洗浄液を収容して一方向へ往復動させ、
往復動しているときの該容器の姿勢を、該容器の軸方向が、保持部が往復動する方向、鉛直方向、保持部が往復動する方向および鉛直方向の両方に対して略直交する方向、のいずれに対しても傾斜している状態に保持するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、容器の内部を洗浄する際の作業者への負担を軽減することが可能であり、かつ、洗浄性に優れる。
【0020】
請求項2においては、容器の内部に収容された洗浄液が渦流を形成しつつ盛んに動くので、洗浄性が向上する。
【0021】
請求項3においては、容器の内部に収容された洗浄液が該容器の内周面に沿って渦流を形成しつつ盛んに動くので、洗浄性が向上する。
【0022】
請求項4においては、容器の内部を隈無く洗浄して内部に付着した塗料を残さず除去し、混色を防止することが可能である。
【0023】
請求項5においては、容器に収容された対象物を洗浄する際の作業者への負担を軽減することが可能であり、かつ、洗浄性に優れる。
【0024】
請求項6においては、容器の内部に収容された洗浄液が渦流を形成しつつ盛んに動くので、洗浄性が向上する。
【0025】
請求項7においては、容器の内部に収容された洗浄液が該容器の内周面に沿って渦流を形成しつつ盛んに動くので、洗浄性が向上する。
【0026】
請求項8においては、洗浄時に対象物が破損することを防止することが可能である。
【0027】
請求項9においては、自動車用の塗装装置において塗料の流通経路に係る部材に付着した塗料を残さず除去し、混色を防止することが可能である。
【0028】
請求項10においては、容器の内部に収容された洗浄液が該容器の内周面に沿って渦流を形成しつつ盛んに動くので、洗浄性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下では図1、図2および図3を用いて、本発明の洗浄装置の実施の一形態である洗浄装置1の全体構成について説明する。
【0030】
洗浄装置1は、塗料カップ2・2・・・の内部を洗浄するものであり、主に保持部10、揺動部20等を具備する。
【0031】
以下では図1、図2および図3を用いて、本発明に係る容器の実施の一形態である塗料カップ2の構成について説明する。
塗料カップ2は、その内部に主に液体状の塗料を収容し、自動車用の塗装装置(図示せず)に該塗料を供給する着脱可能な(カートリッジ式の)容器であり、主に胴体部2aとバルブ部2bとを具備する。
図3に示す如く、胴体部2aは塗料カップ2の胴体を成す略円筒形状の部材であり、その底部(下端部)には底面が形成され、頂部(上端部)には開口部が形成される。
バルブ部2bは、塗料カップ2が塗装装置に装着されている場合にのみ開くバルブと、該バルブが開いた場合に塗料カップ2の内部に収容された塗料を塗装装置に供給する配管(パイプ)と、を具備し、胴体部2aの底面に設けられる。
【0032】
ここで、本発明に係る「容器」とは、「内部に気体、液体または固体またはこれらの混合物等を収容可能な空間が形成され、該空間と外部とを連通する開口部が少なくとも一箇所形成されたもの」を広く含むものとし、本実施例の塗料カップ2に限定されるものではない。
【0033】
本実施例の塗料カップ2は、特定の色の塗料にのみ用いられる訳ではないため、異なる色の塗料を収容する場合には、必ずその内部を隈無く洗浄して内部に付着した塗料を残さず除去し、混色(塗装に供する塗料に異なる色の塗料が混入する不具合)を防止する必要がある。また、自動車用の塗装装置におけるスプレーガンの先端のノズル部や回転霧化頭(ベルカップ)等、塗料の流通経路に係る部材(塗装装置において塗料と接触する部材)も同様に、付着した塗料を残さず除去し、混色を防止する必要がある。
【0034】
なお、本実施例の塗料カップ2は胴体部2aの底部にバルブ部2bを具備しているが、塗料カップの蓋にバルブを設けても良い。
【0035】
以下では、図1および図2を用いて保持部10の構成について説明する。
保持部10は所定量の洗浄液が収容された後、蓋3により開口部が閉塞された塗料カップ2を保持する(所定の姿勢で固定する)ものである。本実施例の保持部10は主に保持板11、係止部材12・12・・・、ガイド部材13a・13b等を具備する。
【0036】
ここで、「洗浄液」とは容器の内部の汚れを洗浄するための液体である。
本実施例の場合、塗料カップ2の内部の汚れは塗料カップ2の内周面に付着した塗料である。自動車の塗装装置に用いられる塗料は一般的には油性塗料および水性塗料であり、該塗料が油性塗料の場合における洗浄液は有機溶剤(シンナー等)、該塗料が水性塗料の場合における洗浄液は水である。
なお、洗浄液は本実施例の如き有機溶剤または水に限定されず、容器の内部の汚れの種類等に応じて適宜選択される。
【0037】
また、容器に収容される洗浄液の量(所定量)については、容器を揺動した場合に洗浄液が容器の内部で盛んに動くことができ、かつ、隈無く行き渡る量(例えば、容器の容積の20%〜80%程度)であることが好ましい。
これは、容器の内部を完全に洗浄液で満たした場合には容器を揺動しても洗浄液が内部で盛んに動かず、逆に容器に収容される洗浄液の量が少ない場合には洗浄液が容器の内部に隈無く行き渡りにくいからである。
【0038】
保持板11は保持部10の構造体を成す部材である。保持板11は、表面と裏面からなる一対の広い平滑面を有し、該表面には係止部材12・12・・・、該裏面にはガイド部材13a・13bが設けられる。
【0039】
係止部材12は、所定量の洗浄液が収容された後、蓋3により開口部が閉塞された塗料カップ2を、保持板11に固定する部材である。係止部材12は主に底部係止部材12aと頂部係止部材12bとを具備する。
底部係止部材12aは塗料カップ2の底部を係止する部材であり、頂部係止部材12bは塗料カップ2の頂部(より厳密には、塗料カップ2の頂部に形成された開口部を閉塞する蓋3)を係止する部材である。
【0040】
図1に示す如く、本実施例の保持部10は、計8個の係止部材12・12・・・を具備する。従って、保持部10に同時に保持し得る塗料カップ2の個数(すなわち、同時に洗浄し得る塗料カップ2の個数)は最大で8個である。このように、複数の塗料カップ2を同時に洗浄可能とすることにより、洗浄作業の省力化、高速化を図ることが可能である。
なお、保持部に保持し得る容器(塗料カップ2)の個数については、1個以上の個数で使用状況等に応じて適宜選択すれば良く、本実施例の保持部10の如く8個に限定されるものではない。
また、本発明に係る保持部は本実施例の保持部10に限定されるものではなく、所定量の洗浄液が収容された少なくとも一つの容器を保持するものであれば他の構成でも良い。
【0041】
ガイド部材13a・13bは保持板11の裏面に設けられる。該ガイド部材13a・13bはその長手方向が保持板11の裏面および水平面(重力の作用する方向である鉛直方向に直交する面)の両方に対して略平行となるように配置される。ガイド部材13a・13bにおいて、後述する揺動部20(より厳密にはガイド部材22a・22b)と対向する面には、長手方向に沿って係合凹部が形成されている。
【0042】
以下では、図1および図2を用いて揺動部20の構成について説明する。
揺動部20は保持部10を揺動させるものである。
ここで、本発明における「揺動」は、
(1)往復動(対象物が直線状の軌跡に沿って行く動作と戻る動作を交互に行う運動)、
(2)回動(円弧状の軌跡に沿って行く動作と戻る動作を交互に行う運動)、
(3)円運動または楕円運動(円形または楕円形の軌跡に沿って移動する運動)、
(4)上記(1)から(3)の運動を適宜組み合わせた運動、
を含むものとする。
なお、揺動時に洗浄の対象物が描く軌跡が一定でも、該軌跡が時間の経過とともに変化しても良い。
すなわち、容器の内部に収容された洗浄液を盛んに動かして容器の内部を洗浄することが目的であり、洗浄の対象物たる容器の形状、大きさ、汚れの種類、洗浄液の種類等に応じて揺動の態様を適宜選択することが望ましい。
【0043】
揺動部20はフレーム21、ガイド部材22a・22b、エアモータ23、ピニオンギア24等を具備する。
【0044】
フレーム21は揺動部20の構造体を成す部材である。フレーム21には揺動部20を構成する他の部材が設けられるとともに、前記保持部10を揺動可能に支持する。
【0045】
ガイド部材22a・22bは保持板11の裏面に設けられたガイド部材13a・13bに対向する位置に設けられる。ガイド部材22a・22bにおいて、ガイド部材13a・13bと対向する面には、長手方向に沿って係合凸部が形成されている。ガイド部材22a・22bの長手方向は、水平面に対して略平行である。
ガイド部材22a・22bに形成された係合凸部の断面形状は楔形であり、ガイド部材22a・22bはガイド部材13a・13bに形成された係合凹部に脱落不能に係合する。
また、ガイド部材22a・22bはガイド部材13a・13bに対して長手方向に摺動可能である。
【0046】
エアモータ23は保持部10を揺動させるためのアクチュエータ(作動装置)である。より具体的には、エアモータ23は空圧式のモータであり、エアモータ23はフレーム21に固定される。エアモータ23の出力軸には回転板24が設けられる。該回転板24の周縁部にはクランクロッド25の一端が回動可能に枢支され、該クランクロッド25の他端はベアリング14に貫装されたピンに回動可能に枢支される。ベアリング14の外輪は、保持板11の裏面に固定される。
エアモータ23を駆動させる(エアモータ23の出力軸を回転駆動させる)と、回転板24の回転に伴ってクランクロッド25が揺動し、保持部10はガイド部材22a・22bの長手方向に沿って往復摺動する。従って、エアモータ23を一定方向に回転駆動させることにより、保持部10をガイド部材22a・22bの長手方向に沿って往復動させることが可能である。
【0047】
なお、保持部を揺動させるためのアクチュエータは、油圧式または電動式のモータ、空圧式、油圧式または電動式のシリンダ等でも良く、本実施例のエアモータ23に限定されない。
また、揺動部に具備される当該アクチュエータの数については、本実施例においては1基であるが、保持部の揺動の態様によっては複数基設けても良い。
【0048】
以上の如く、本実施例の洗浄装置1は、塗装カップ2・2・・・の内部を洗浄する洗浄装置であって、所定量の洗浄液が収容された最大で8個の塗装カップ2・2・・・を保持する保持部10と、該保持部10を揺動させるためのエアモータ23を具備する揺動部20と、を具備するものである。
【0049】
このように構成することは、以下の如き利点を有する。
すなわち、図5および図6に示す従来の揺動式洗浄装置101で塗料カップ2を洗浄する作業は、(A)所定量の洗浄液を塗料カップ2に収容して蓋3により塗料カップ2の開口部を閉塞し、(B)塗料カップ2を保持部110に保持し、(C)手動でレバー102を回すことにより、作業台103上に設けられたガイド部材104・104に沿って保持部110を揺動(ここでは往復動)させる、という手順で行われていた。
しかし、揺動式洗浄装置101による洗浄作業は作業者への(肉体的な)負担が大きく、また洗浄性も良くない(洗浄に要する時間が長い、または、洗い残しが発生する)という問題があった。
これに対して、本実施例の洗浄装置1は、作業者が所定量の洗浄液を塗料カップ2に収容して蓋3により塗料カップ2の開口部を閉塞し、塗料カップ2を保持部10に保持すれば、後は揺動部20がエアモータ23の駆動力により保持部10を揺動して塗料カップ2を洗浄するので、作業者への(肉体的な)負担が軽減される。
また、作業者が手動で容器を揺動させる場合、作業者の疲労に応じて容器の揺動の態様が変化する(例えば容器を振る力が弱くなったり、単位時間当たりの振る回数が少なくなったりする)が、本実施例の洗浄装置1の場合はエアモータ23の駆動力により保持部10を揺動するので、揺動の態様を一定に保持することができ、洗浄性に優れる(洗浄に要する時間を短縮し、かつ、洗い残しを防止することができる)。
【0050】
また、本実施例の洗浄装置1は、塗料カップ2が略円筒形状であり、揺動部20が保持部10を水平面に略平行な所定の方向(ガイド部材22a・22bの長手方向)に往復動させるものであり、保持部10に保持された塗料カップ2の軸方向(図1、図2および図3中の矢印A)が、保持部が往復動する方向(図1中の矢印X)、鉛直方向(図1および図2中の矢印Y)、保持部が往復動する方向および鉛直方向の両方に対して略直交する方向(図2中の矢印Z)、のいずれに対しても傾斜している。
本実施例の場合、正面視(図1)において矢印Aと矢印Xとが成す角度は40度であり、平面視において矢印Aと矢印Xとが成す角度は30度である。
このように構成することにより、塗料カップ2の内部に収容された所定量の洗浄液は、塗料カップ2の内周面に沿って螺旋状の渦流を形成しつつ盛んに動く。ここで、塗料カップ2の内部の汚れ(本実施例では塗料)は通常、塗料カップ2の内周面に付着していることから、上記渦流が形成されると当該内周面に接する部分における洗浄液の流速が大きく、洗浄性が向上する。
【0051】
なお、本実施例の如く、保持部10の揺動方向(往復動方向)および塗料カップ2の軸方向との関係を規定しなくても、保持部に保持された容器を、少なくとも平面視(矢印Zの方向から見て)または側方視(水平面に略平行な方向)において略円運動または略楕円運動させるように保持部を揺動させれば、容器の内部に収容された洗浄液が渦流を形成しつつ盛んに動くので、洗浄性が向上する。
【0052】
また、本実施例の洗浄装置1は、塗料カップ2に代えて図4に示す洗浄用容器52を保持することも可能である。洗浄用容器52はそれ自体が洗浄の対象ではなく、洗浄の対象となる対象物54および所定量の洗浄液を収容するための容器である。洗浄用容器52の開口部は蓋53により閉塞される。
【0053】
なお、洗浄用容器52に収容される対象物は、特に固定しなくても良い場合もあるが、対象物の種類によっては、洗浄用容器52の内部で動くと破損のおそれがあるものもある。このような場合には、図4に示す如く洗浄用容器52の内部に固定部材55を設け、該固定部材55に対象物54を固定することにより、破損を防止することが可能である。
【0054】
対象物54の具体例としては、自動車用の塗装装置におけるスプレーガンの先端のノズル部や回転霧化頭(ベルカップ)等、塗料の流通経路に係る部材(塗装装置において塗料と接触する部材)が挙げられる。
【0055】
以上の如く構成することにより、洗浄装置1は塗料カップ2の内部だけでなく、洗浄用容器52に収容し得る対象物を洗浄することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る洗浄装置の正面図。
【図2】本発明に係る洗浄装置の側面図。
【図3】塗料カップの斜視図。
【図4】洗浄用容器の側面断面模式図。
【図5】従来の揺動式洗浄装置の側面図。
【図6】従来の揺動式洗浄装置の平面図。
【符号の説明】
【0057】
1 洗浄装置
2 塗料カップ(容器)
10 保持部
20 揺動部
23 エアモータ(アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内部を洗浄する洗浄装置であって、
所定量の洗浄液が収容された少なくとも一つの容器を保持する保持部と、
該保持部を揺動させるための少なくとも一つのアクチュエータを具備する揺動部と、
を具備することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記揺動部は、少なくとも平面視または側方視において、前記容器を略円運動または略楕円運動させることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記容器が略円筒形状または略円錐形状であり、
前記揺動部が前記保持部を水平面に略平行な所定の方向に往復動させる場合において、
該保持部に保持された容器の軸方向が、保持部が往復動する方向、鉛直方向、保持部が往復動する方向および鉛直方向の両方に対して略直交する方向、のいずれに対しても傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記容器は、自動車用の塗装装置に塗料を供給するための容器であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
容器に収容された対象物を洗浄する洗浄装置であって、
所定量の洗浄液が収容された少なくとも一つの容器を保持する保持部と、
該保持部を揺動させるための少なくとも一つのアクチュエータを具備する揺動部と、
を具備することを特徴とする洗浄装置。
【請求項6】
前記揺動部は、少なくとも平面視または側方視において、前記容器を略円運動または略楕円運動させることを特徴とする請求項5に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記容器が略円筒形状または略円錐形状であり、
前記揺動部が前記保持部を水平面に略平行な所定の方向に往復動させる場合において、
該保持部に保持された容器の軸方向が、保持部が往復動する方向、鉛直方向、保持部が往復動する方向および鉛直方向の両方に対して略直交する方向、のいずれに対しても傾斜していることを特徴とする請求項5に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記対象物を前記容器の内部の所定位置に固定する固定部材を設けたことを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記対象物は、自動車用の塗装装置において塗料の流通経路に係る部材であることを特徴とする請求項5から請求項8までのいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項10】
略円柱形状または略円錐形状の容器の内部、または該容器に収容された対象物の洗浄を行う洗浄方法であって、
該容器に所定量の洗浄液を収容して一方向へ往復動させ、
往復動しているときの該容器の姿勢を、該容器の軸方向が、保持部が往復動する方向、鉛直方向、保持部が往復動する方向および鉛直方向の両方に対して略直交する方向、のいずれに対しても傾斜している状態に保持することを特徴とする洗浄方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−26540(P2006−26540A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209406(P2004−209406)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】