説明

洗浄装置および洗浄水の消臭方法

【課題】洗浄水の不快な臭いを抑えることができる洗浄装置および洗浄水の消臭方法を提供する。
【解決手段】電解水生成手段2が、電解質溶液を電気分解して強酸性水と強アルカリ性水とを生成する。酸性容器3が生成された強酸性水を貯水し、アルカリ容器4が生成された強アルカリ性水を貯水する。ミスト容器5がアルカリ容器4に接続され、アルカリ容器4内の強アルカリ性水の一部を受けて消臭用ミストを生成する。吐出口6aが、酸性容器3、アルカリ容器4または水道管8に選択的に接続されて、強酸性水、強アルカリ性水または水道水を吐出可能に設けられている。ミスト排出部7が、吐出口6aから吐出される強酸性水または水道水の周囲に、強酸性水または水道水を包囲するようミスト容器5内の強アルカリ性水の消臭用ミストを噴霧可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置および洗浄水の消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手洗いや洗顔、食器の洗浄、医療機器の洗浄など、殺菌や消毒のための洗浄水として強酸性水が活用されている(例えば、特許文献1参照)。なお、強酸性水は、水などの電解質溶液を電気分解することにより得られるが、一般には、電解質として塩化ナトリウムなどを利用した塩化物塩水溶液を電気分解することにより生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−31189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塩化物塩水溶液を電気分解して生成される強酸性水には塩素が含まれているため、特許文献1に記載のような強酸性水生成器では、使用時に塩素臭が発生し、不快であるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、洗浄水の不快な臭いを抑えることができる洗浄装置および洗浄水の消臭方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る洗浄装置は、洗浄水を吐出する吐出口と、前記吐出口から吐出される前記洗浄水を包囲するよう消臭用ミストを噴霧可能なミスト排出部とを、有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る洗浄装置は、吐出口から吐出される洗浄水を包囲するようミスト排出部から消臭用ミストを噴霧することにより、洗浄水の周囲を消臭用ミストで包んで、洗浄水が発する臭いを抑えることができる。このため、洗浄水として酸性水を使用したときに発生する塩素臭などの不快な臭いを効果的に抑えることができる。
【0008】
本発明に係る洗浄装置で、前記洗浄水は水道水または酸性水から成り、前記消臭用ミストはアルカリ性水から成ることが好ましい。この場合、水道水や酸性水に含まれる塩素による塩素臭をアルカリ性水の消臭用ミストにより抑えることができる。殺菌・消毒・洗浄効果を高めるために、酸性水はpH4以下の強酸性水であることが好ましく、アルカリ性水はpH10以上の強アルカリ性水であることが好ましい。
【0009】
本発明に係る洗浄装置で、前記ミスト排出部は、前記吐出口からの前記洗浄水の吐出に連動して、前記消臭用ミストを噴霧するよう構成されていてもよい。この場合、消臭用ミストを無駄に噴霧することなく、効率的に洗浄水の臭いを抑えることができる。洗浄水の吐出と消臭用ミストの噴霧とを連動させる構成は、例えば、洗浄水の吐出を操作する水栓の動きに連動させて、モータなどにより消臭用ミストの噴霧を調整する構成であっても、洗浄水の流れによる吸引力を利用して消臭用ミストを噴霧する構成であってもよい。
【0010】
本発明に係る洗浄装置は、電解質溶液を電気分解して酸性水とアルカリ性水とを生成する電解水生成手段と、前記電解水生成手段により生成された前記酸性水を貯水するための酸性容器と、前記電解水生成手段により生成された前記アルカリ性水を貯水するためのアルカリ容器と、前記アルカリ容器に接続され、前記アルカリ容器内のアルカリ性水の一部を受けて消臭用ミストを生成するミスト容器と、前記酸性容器または前記アルカリ容器に選択的に接続されて、前記酸性容器内の酸性水または前記アルカリ容器内のアルカリ性水を吐出可能な吐出口と、前記吐出口から吐出される前記酸性水を包囲するよう前記ミスト容器内の消臭用ミストを噴霧可能なミスト排出部とを、有していてもよい。
【0011】
この電解質溶液を電気分解する構成の場合、電気分解により生成された酸性水およびアルカリ性水を殺菌、消毒、洗浄に利用することができる。また、酸性水を吐出するとき、その酸性水を包囲するようアルカリ性水の消臭用ミストを噴霧することにより、酸性水の不快な塩素臭を抑えることができる。このように、電気分解により生成された酸性水およびアルカリ性水を効率よく利用して、快適かつ安全に洗浄を行うことができる。
【0012】
本発明に係る洗浄水の消臭方法は、吐出口から吐出される洗浄水を包囲するよう消臭用ミストを噴霧することを、特徴とする。
【0013】
本発明に係る洗浄水の消臭方法は、本発明に係る洗浄装置により好適に実施することができる。本発明に係る洗浄水の消臭方法は、吐出口から吐出される洗浄水を包囲するよう消臭用ミストを噴霧することにより、洗浄水が発する臭いを抑えることができる。
【0014】
本発明に係る洗浄水の消臭方法で、前記洗浄水は水道水または酸性水から成り、前記消臭用ミストはアルカリ性水から成ることが好ましい。この場合、水道水や酸性水に含まれる塩素による塩素臭を、アルカリ性水の消臭用ミストにより抑えることができる。また、水道水や酸性水から有毒な塩素ガスが発生したときにも、その塩素ガスをアルカリ性水に溶け込ませることができるため、安全性が高い。殺菌・消毒・洗浄効果を高めるために、酸性水はpH4以下の強酸性水であることが好ましく、アルカリ性水はpH10以上の強アルカリ性水であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る洗浄水の消臭方法は、電解質溶液を電気分解して酸性水とアルカリ性水とを生成し、吐出口から前記酸性水を吐出するとき、吐出する酸性水を包囲するよう前記アルカリ性水の消臭用ミストを噴霧してもよい。この場合、電気分解により生成された酸性水およびアルカリ性水を殺菌、消毒、洗浄に利用することができる。また、酸性水を吐出するとき、酸性水を包囲するようアルカリ性水を噴霧することにより、酸性水の不快な塩素臭を抑えることができる。このように、電気分解により生成された酸性水およびアルカリ性水を利用して、快適かつ安全に洗浄を行うことができる。
【0016】
本発明に係る洗浄水の消臭方法は、吐出口から吐出される洗浄水に沿って前記洗浄水と前記洗浄水の使用者とを隔てるよう消臭用ミストを噴霧する方法であってもよい。この場合、吐出口から吐出される強酸性水または水道水の臭いを使用者に対して消臭用ミストで遮り、塩素臭を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、洗浄水の不快な臭いを抑えることができる洗浄装置および洗浄水の消臭方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の洗浄装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す洗浄装置の(a)吐出口およびミスト排出部を示す斜視図、(b)ミスト排出部の変形例を示す斜視図、(c)ミスト排出部の他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2は、本発明の実施の形態の洗浄装置および洗浄水の消臭方法を示している。
図1に示すように、洗浄装置1は、電解水生成手段2と酸性容器3とアルカリ容器4とミスト容器5と吐出部6とミスト排出部7とを有している。なお、本発明の実施の形態の洗浄水の消臭方法は、洗浄装置1により実施することができる。
【0020】
図1に示すように、電解水生成手段2は、電解槽から成り、水道水を供給可能に水栓11を介して水道管8に接続されている。電解水生成手段2は、水道管8から供給された水道水と塩化ナトリウムなどの電解質とを混合した塩化物塩水溶液を電気分解するよう構成されている。電解水生成手段2は、陽極側で強酸性水を生成し、陰極側で強アルカリ性水を生成するようになっている。
【0021】
酸性容器3は、電解水生成手段2の陽極側に接続され、電解水生成手段2で生成された強酸性水を受けて貯水可能になっている。アルカリ容器4は、電解水生成手段2の陰極側に接続され、電解水生成手段2で生成された強アルカリ性水を受けて貯水可能になっている。ミスト容器5は、アルカリ容器4に接続され、アルカリ容器4に貯水された強アルカリ性水の一部を受けて、強アルカリ性水の消臭用ミストを生成するよう構成されている。
【0022】
図1および図2(a)に示すように、吐出部6は、管状を成し、先端に吐出口6aを有している。また、吐出部6は、開閉用の水栓12を有している。吐出部6は、それぞれバルブ13,14,15を介して酸性容器3、アルカリ容器4および水道管8に接続されている。吐出部6は、各バルブ13,14,15の操作により、酸性容器3、アルカリ容器4または水道管8に選択的に接続されて、吐出口6aから酸性容器3内の強酸性水、アルカリ容器4内の強アルカリ性水、または水道水を吐出可能になっている。なお、各バルブ13,14,15は、手動で操作可能であってもよく、使用する水の種類をボタン等で選択することにより自動で操作可能であってもよい。また、コンピュータによるプログラミング等により、所定の時間で自動切替可能になっていてもよい。
【0023】
ミスト排出部7は、二重管状を成し、ミスト容器5に接続されている。ミスト排出部7は、内部に吐出部6が挿入されて、吐出部6の外側面を覆うよう取り付けられている。ミスト排出部7は、吐出部6の水栓12や各バルブ13,14,15の動きに連動して、モータなどの駆動源によりミスト容器5内の強アルカリ性水の消臭用ミストを噴霧するよう構成されている。ミスト排出部7は、吐出口6aから強酸性水または水道水が吐出されるとき、強酸性水または水道水の周囲に、強酸性水または水道水を包囲するよう強アルカリ性水の消臭用ミストを噴霧するようになっている。
なお、ミスト排出部7は、ミスト容器5に接続される代わりに直接、アルカリ容器4に接続され、アルカリ容器4に貯水された強アルカリ性水の一部を受けて、強アルカリ性水の消臭用ミストを噴霧するようになっていてもよい。
【0024】
次に、作用について説明する。
洗浄装置1は、電解水生成手段2による電気分解で生成された強酸性水および強アルカリ性水を利用して殺菌、消毒、洗浄を行うことができる。例えば、まず、手や医療器具などの被洗浄物を強アルカリ性水で洗浄する。これにより、酸性下で凝固する血液などのタンパク質や脂質などを分解することができる。強アルカリ性水で洗浄後、被洗浄物を強酸性水で洗浄し、殺菌を行う。これにより、効果的に殺菌、消毒、洗浄を行うことができる。なお、より洗浄効果を高めるために、強アルカリ性水や強酸性水による洗浄の前後に、水道水で洗浄を行ってもよい。
【0025】
洗浄装置1は、吐出口6aから吐出される強酸性水または水道水の周囲に、強酸性水または水道水を包囲するようミスト排出部7から強アルカリ性水の消臭用ミストを噴霧することにより、強酸性水や水道水に含まれる塩素による塩素臭を抑えることができる。また、水道水や強酸性水から有毒な塩素ガスが発生したときにも、その塩素ガスを強アルカリ性水に溶け込ませることができるため、安全性が高い。
【0026】
ミスト排出部7が、強酸性水または水道水の吐出に連動して、強アルカリ性水の消臭用ミストを噴霧するよう構成されているため、強アルカリ性水の消臭用ミストを無駄に噴霧することなく、効率的に強酸性水や水道水の臭いを抑えることができる。このように、洗浄装置1は、電気分解により生成された強酸性水および強アルカリ性水を効率よく利用して、快適かつ安全に洗浄を行うことができる。
【0027】
なお、図2(b)に示すように、ミスト排出部7は、吐出部6の外側面の外周全体ではなく、外周の一部を覆うよう設けられて、ミスト排出部7から消臭用ミストが使用者と吐出部6とを隔てるよう噴霧される構成から成っていてもよい。また、図2(c)に示すように、ミスト排出部7は、吐出口6aの周縁のみを覆うようになっていてもよい。この場合にも、吐出口6aから吐出される強酸性水または水道水の臭いを使用者に対して消臭用ミストで遮り、塩素臭を抑制することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 洗浄装置
2 電解水生成手段
3 酸性容器
4 アルカリ容器
5 ミスト容器
6 吐出部
6a 吐出口
7 ミスト排出部
8 水道管
11,13,14,15 バルブ
12 水栓



【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を吐出する吐出口と、
前記吐出口から吐出される前記洗浄水を包囲するよう消臭用ミストを噴霧可能なミスト排出部とを、
有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄水は水道水または酸性水から成り、
前記消臭用ミストはアルカリ性水から成ることを、
特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記ミスト排出部は、前記吐出口からの前記洗浄水の吐出に連動して、前記消臭用ミストを噴霧するよう構成されていることを、特徴とする請求項1または2記載の洗浄装置。
【請求項4】
電解質溶液を電気分解して酸性水とアルカリ性水とを生成する電解水生成手段と、
前記電解水生成手段により生成された前記酸性水を貯水するための酸性容器と、
前記電解水生成手段により生成された前記アルカリ性水を貯水するためのアルカリ容器と、
前記アルカリ容器に接続され、前記アルカリ容器内のアルカリ性水の一部を受けて消臭用ミストを生成するミスト容器と、
前記酸性容器または前記アルカリ容器に選択的に接続されて、前記酸性容器内の酸性水または前記アルカリ容器内のアルカリ性水を吐出可能な吐出口と、
前記吐出口から吐出される前記酸性水を包囲するよう前記ミスト容器内の消臭用ミストを噴霧可能なミスト排出部とを、
有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項5】
吐出口から吐出される洗浄水を包囲するよう消臭用ミストを噴霧することを、特徴とする洗浄水の消臭方法。
【請求項6】
前記洗浄水は水道水または酸性水から成り、
前記消臭用ミストはアルカリ性水から成ることを、
特徴とする請求項5記載の洗浄水の消臭方法。
【請求項7】
電解質溶液を電気分解して酸性水とアルカリ性水とを生成し、吐出口から前記酸性水を吐出するとき、吐出する酸性水を包囲するよう前記アルカリ性水の消臭用ミストを噴霧することを、特徴とする洗浄水の消臭方法。
【請求項8】
吐出口から吐出される洗浄水に沿って前記洗浄水と前記洗浄水の使用者とを隔てるよう消臭用ミストを噴霧することを、特徴とする洗浄水の消臭方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−201081(P2010−201081A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52445(P2009−52445)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【特許番号】特許第4348405号(P4348405)
【特許公報発行日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(595159264)
【Fターム(参考)】