説明

洗浄装置

【課題】管にケーブルを挿通したままであっても、ケーブルを損傷することなく高圧洗浄流体により管内に付着する異物を除去することができる洗浄技術の提供。
【解決手段】洗浄装置6はケーブル2を挿通させて保持した状態とし、この状態で洗浄装置6の外周面に設けた多数の噴射口23から高圧洗浄水を噴射してケーブル管1の内周面に噴き付ける。このため高圧洗浄流体が線状体に直接噴きかからず、高圧洗浄水によってケーブル2を損傷することが無い。したがって高圧洗浄水の昇圧限界を高めることができ、ケーブル2を挿通したままであってもケーブル管1の管内に付着する異物を強力に洗浄することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は線状体が挿通されている管の内周面を洗浄する技術に関し、特に通信ケーブルや送電ケーブル等のケーブルを敷設したケーブル管の内周面に付着している錆瘤や土砂等の異物を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤には通信ケーブルや送電ケーブル等のケーブルを敷設するためのケーブル管が埋設されている。ケーブル管は埋設期間が長期に亘ると、管の継ぎ手部から流入した土砂等が固形状に付着したり、特に金属製のケーブル管については錆瘤が発生することがある。これらの異物の付着による不都合は、例えば既存のケーブル管を有効活用して管内の余裕空間に新規のケーブルをさらに敷設するような場合に生じる。つまり付着した異物によって管内の余裕空間が狭められていると、新規に挿入したケーブルが異物に引っ掛かって敷設が困難となるためである。したがって異物を除去する洗浄技術が必要とされるが、必要であるとしても現在使用中の既存のケーブルを管内から撤去して洗浄する方法は取り得ない。このため、既存のケーブルを残したままで異物を除去できることが洗浄技術に求められる基本条件となる。こうした既存の洗浄技術としては、例えば高圧洗浄水の供給ホースを接続した洗浄装置をケーブルに添わせるようにしてケーブル管の管内に送り込み、異物に対して高圧洗浄水を噴射することで除去する技術が知られている(一例として特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−286540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来技術によれば高圧洗浄水によって管内に付着したり堆積した異物を除去することが可能である。しかしながら洗浄装置を既存のケーブルに添わせるようにして送り込むため、高圧洗浄水が既存のケーブルに向けて噴射されてしまい、高圧洗浄水の水圧が100kg/cmを超えると場合によってはケーブルを損傷してしまうおそれがある。このため高圧洗浄水の昇圧限界をケーブルを損傷しない程度に低く設定せざるを得ず、より強力な洗浄効果を得ることが難しいという課題がある。
【0004】
以上のような従来技術を背景にしてなされたのが本発明である。本発明の目的は、管にケーブル(線状体)を挿通したままであっても、ケーブルを損傷することなく高圧洗浄流体により管内に付着する異物を除去することができる洗浄技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成する本発明は以下のように構成される。
【0006】
(1)本発明は、線状体を挿通した管の内部を移動しながら高圧洗浄流体の噴射によって管内を洗浄する洗浄装置について、
内周面にて線状体を挿通状態で保持する筒状本体を備えるとともに、
該筒状本体の外周面に高圧洗浄流体を管軸方向へ斜め放射状に噴射して管の内周面に噴き付ける多数の噴射口を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、筒状本体に線状体を挿通させて保持した状態とし、この状態で筒状本体の外周面に設けた多数の噴射口から高圧洗浄流体を噴射して管の内周面に噴き付ける。このため高圧洗浄流体が線状体に直接噴きかからず、高圧洗浄流体によって線状体を損傷することが無い。したがって高圧洗浄流体の昇圧限界を高めに設定することができ、線状体を挿通したままでも管内に付着する異物を強力に洗浄することができる。そして洗浄の際には、噴射口から高圧洗浄流体を管軸方向へ斜め放射状に噴射するので、放射状に噴き付ける高圧洗浄流体によって管の内周面の略全面を効果的に洗浄することができる。
【0008】
(2)本発明は、線状体を挿通した管の内部を移動しながら高圧洗浄流体の噴射によって管内を洗浄する洗浄装置について、
内周面にて線状体を挿通状態で保持する筒状本体を備えるとともに、
該筒状本体の外周面に高圧洗浄流体を管周方向へ斜め渦流状に噴射して管の内周面に噴き付ける多数の噴射口を有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、筒状本体に線状体を挿通させて保持した状態とし、この状態で筒状本体の外周面に設けた多数の噴射口から高圧洗浄流体を噴射して管の内周面に噴き付ける。このため高圧洗浄流体が線状体に直接噴きかからず、高圧洗浄流体によって線状体を損傷することが無い。したがって高圧洗浄流体の昇圧限界を高めに設定することができ、線状体を挿通したままでも管内に付着する異物を洗浄することができる。そして洗浄の際には、噴射口から高圧洗浄流体を管周方向へ斜め渦流状に噴射するので、渦流状に噴き付ける高圧洗浄流体によって管の内周面の略全面を効果的に洗浄することができる。
【0010】
(3)前記本発明は、噴射口として、高圧洗浄流体を管軸を中心とする右周りの管周方向へ噴射する右周り噴射口と、高圧洗浄流体を管軸を中心とする左周りの管周方向へ噴射する左周り噴射口とを有するものとして構成できる。
管周方向の一方向へのみ高圧洗浄流体を噴射すると、筒状本体が線状体を回転軸として回転するおそれがある。しかし本発明であれば右回り噴射口と左周り噴射口とからそれぞれ噴射することでバランスするので、筒状本体が回転しないように抑えることができる。また管内に付着する異物に対して異方向から高圧洗浄流体が噴き付けるので、より強力に異物を除去することができる。
【0011】
(4)前記本発明は、噴射口が高圧洗浄流体を筒状本体の移動方向前向きに噴射するものとして構成できる。
高圧洗浄流体を筒状本体の移動方向後ろ向きに噴射させると、洗浄装置の推進力が得られる反面、異物混じりの排水が管内に残存してしまう。しかしながら本発明では高圧洗浄流体を筒状本体の移動方向前向きに噴射させるので、洗浄装置の移動とともに剥離した異物を後押しして洗浄後の管内に残さずに管外へ排出することができる。
【0012】
(5)前記本発明は噴射口に着脱可能な噴射ノズルを有するものとして構成できる。
噴射ノズルが着脱可能であるため他の噴射ノズルと交換することができる。したがって管の内径の大小や異物の付着状態などの洗浄状況に応じて口径の異なる噴射ノズルを使い分けたり、高圧洗浄流体によって摩耗した噴射ノズルを新しいものと交換することができる。
【0013】
(6)前記本発明は、筒状本体が複数の分割体でなり、分割体ごとに複数の噴射口どうしが連通する共用通路を設けるとともに、隣接する分割体の境界部に共用通路どうしが連通する連絡通路を設けるものとして構成できる。
筒状本体が分割体でなるため、管に分割体を周着させることで容易に取付けることができる。また隣接する分割体の境界部では連絡通路を介して共用通路どうしが連通するので、例えば一つの分割体に高圧洗浄流体を供給すれば他の分割体にも高圧洗浄流体を供給することができる。したがって地上から延在する供給ホースのような供給路を少なくすることができ、狭い管路にも対応できる。
【0014】
(7)前記本発明は、連絡通路に一端と他端をそれぞれ対応する共用通路に差し込ませて共用通路どうしを水密に連通する筒状の連通部材を有するものとして構成できる。
共用通路どうしが開口どうしの突き合わせによって連通するのではなく、筒状の連通部材の両端部を共用通路に差し込ませた状態で連通するので、高圧洗浄流体を漏れなく供給することができる。
【0015】
(8)前記本発明の連通部材はゴム状弾性体として構成できる。
例えば連通部材がプラスチック製であると、高圧洗浄流体の流れの挙動に「剛」をもって抵抗するので材料破壊を生じるおそれが高くなる。しかし本発明であれば、流れの挙動に応じて伸縮変形ないし膨縮変形することができるので耐久性を高めることができる。
【0016】
(9)前記本発明については、境界部に、筒状本体の外周面に開口し、筒状本体から漏れ出る高圧洗浄流体を筒状本体の外部に排出する逃げ溝を有するものとして構成できる。
仮に共用通路や連絡通路(連通部材)から高圧洗浄流体が漏れ出たとしても、高圧洗浄流体が筒状本体の内周面から高圧で噴出してしまうと、線状体を損傷するおそれがある。しかしながら本発明であれば、高圧洗浄流体が逃げ溝を通じて筒状本体の外部に排出されるため、線状体を損傷するおそれを無くすことができる。
【0017】
(10)前記本発明の筒状本体は、その外周面を管の内周面から離した状態で支持する支持脚を有するものとして構成できる。
支持脚によって筒状本体が管の内周面と接触しないよう浮かせることができるので、より確実に管の内周面の略全面を洗浄することができる。
【0018】
(11)以上の本発明における管は通信用管路、電力用管路として用いる管とすることができる。この場合、線状体は具体的には通信ケーブル送電ケーブルなどのケーブルとすることができる。また本発明における管はガス管や水道管として用いる管としてもよい。この場合、線状体は、ガス管や水道管の中に挿通したロッドやワイヤ等とすることができ、それらを線状体として利用して本発明の洗浄装置を用いることができる。
【0019】
(12)以上の本発明における高圧洗浄流体は高圧エアーや高圧洗浄水を利用することができる。このうち本発明ではより洗浄効果が高い高圧洗浄水を利用するものとして構成できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の洗浄装置によれば、地盤に埋設した既存の管に通信ケーブルや送電ケーブル等の既存の線状体を挿通したままであっても、高圧洗浄流体が線状体に直接噴きかかることが無く損傷するおそれがない。したがって高圧洗浄流体の昇圧限界を高めに設定することができ、管内に付着した異物を強力に除去して洗浄することができる。したがって新規の光通信ケーブル等の線状体を敷設するために、既存の管の余裕空間を活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の例を図面を参照しつつ説明する。実施形態どうしで同一の構成については同じ符号を付して重複説明を省略する。また以下の実施形態では、通信ケーブルや送電ケーブル等のケーブルを敷設するケーブル管を洗浄対象として高圧洗浄水(高圧洗浄流体)により洗浄する例を説明する。
【0022】
第1実施形態〔図1〜図8〕
【0023】
洗浄方法の説明〔図1〕
まず始めにケーブル管の洗浄方法について説明する。図1で示すように地盤には鋼管でなるケーブル管1が埋設されており、その中にはケーブル2が収容されている。ケーブル管1の両端にはマンホール3,4が設けられており、洗浄作業はそこを利用して行われる。
【0024】
即ち本実施形態では、予めケーブル管1に通線してある通線紐を利用して、マンホール3,4からケーブル管1の管内に牽引ロープ5を引き通す。次にマンホール3の中で露出しているケーブル2の外周に本実施形態の洗浄装置6を装着する。ここで洗浄装置6の前端部には牽引ロープ5を接続し、洗浄装置6の後端部には図外の牽引ロープを接続する。後端部の牽引ロープはケーブル管1に引き込んだ洗浄装置6を洗浄作業中に引き戻したりするような場合に利用する。また洗浄装置6の後端部には地上の給水車7から高圧洗浄水を供給する供給ホース8も接続される。そしてマンホール4の反力受け台9に設置した電動ウィンチ10にて洗浄装置6をケーブル管1の中に引き込んでいく。このケーブル管1を通じてマンホール4に到達するまでに洗浄装置6による洗浄が行われる。ケーブル管1の管内からマンホール4に排出された水や異物はポンプ11を使って貯留処理槽12に送られる。
【0025】
洗浄装置6の構成〔図2〜図7〕
洗浄装置6は図2で示すような円筒状の胴部13を備えている。胴部13の前端部14と後端部15にはそれぞれ牽引ロープ5を接続する環状の接続部16が2つずつ取付けてある。接続部16は前端部14及び後端部15でそれぞれ中心軸に対して左右対称に取付けてあり牽引力を偏って受けないようにされている。後端部15には図3で示すように円弧状に湾曲するケーブル支持板17が溶接されており、胴部13の内周面13aから出て行くケーブル2をここで一旦支持しながらケーブル管1に送るようにしている。ケーブル支持板17の支持面17aの基端側は、図2(B)で示すように胴部13の内周面13aに対して外向きの段差をもって胴部13に溶接されている。そして段差付きの基端側から長手方向中央付近にかけて下り傾斜面が形成されており、段差部分で極端にケーブル2が屈曲しないよう緩衝している。符号18は供給ホース8の連結部で、給水車7から供給される高圧洗浄水はその通路18aから胴部13に送られる。
【0026】
胴部13には前端部14に4つ、後端部15に4つの弾性支持脚19が突出するように設けられている。弾性支持脚19は図4で示すように丸脚19aがコイルばね19bによって変位可能な構造となっている。したがって本実施形態の洗浄装置6は胴部13の内周面13aにケーブル2を挿通した状態であっても、外周面13bをケーブル管1の内周面1aから離した状態で支持しつつ管内を移動できるようになっている。また管内に多少の段差があってもそれを吸収できるようにされている。
【0027】
胴部13は半割形状となっており、上部分割体20と下部分割体21とを4本のボルト22で締結することで一体となる。したがってケーブル2への装着時には、一旦それらを分離してからケーブル2に周着して4本のボルト22を締結することで、洗浄装置6がケーブル2に装着される。
【0028】
上部分割体20と下部分割体21には図2(A)で示すように多数の噴射口23が開口しており、そこから高圧洗浄水が噴射される。噴射口23は胴部13の前端部14の側から後端部15の側にかけて3列として設けられている。各列は図2(A)及び図5で示すように僅かに周方向で位置をずらした千鳥掛け状に形成されている。各噴射口23には、着脱可能なノズル23aが螺合により取付けられている。そして本実施形態における個々の噴射口23は、図6で示すように、高圧洗浄水Wを管軸方向Xに沿って移動方向前向きX1に、所定の上方傾斜角θ1をもって斜めに噴射するようになっている。それぞれの噴射口23がこのように高圧洗浄水Wを噴射することで、本実施形態の洗浄装置6では全体として高圧洗浄水Wを管軸方向Xへ斜め放射状に噴射してケーブル管1の内周面1aに噴き付けるようになっている。なおYは幅方向(径方向)、Zは高さ方向である。
【0029】
上部分割体20と下部分割体21の肉厚内には、図5で示すように、噴射口23と連通する断面円弧状で胴部13の長手方向に伸びる共用通路24,25が形成されている。そしてこれらの共用通路24,25は、上部分割体20と下部分割体21との境界部26において、図7で示すような連絡通路27(27a,27b)を介して連通している。
【0030】
すなわち連絡通路27にはゴム状弾性体でなる円筒状の連通部材27aが取付けられている。連通部材27aの一端は上部分割体20の共用通路24の開口24aに差し込まれており、他端は下部分割体21の共用通路25の開口25aに差し込まれる。このように共用通路24,25どうしを開口24a,25aどうしの単なる突き合わせによって連通させるのではなく、両端部を開口24a,25aに差し込ませた連通部材27aを介して連通させるので、高圧洗浄水を漏れなく流通させることができる。
【0031】
漏れのない流通を強化するために、本実施形態の連通部材27aには外向きに環状に突出するシールフランジ27bが形成されている。このシールフランジ27bは、それと相対形状に形成された上部分割体20の円形のシール凹部24bに入り込み、下部分割体21に形成された円筒状のシール突起25bの端面によって押圧状態で保持される。これにより強固に圧着する不連続なシール面が形成されることになり、この点でも優れた水密効果を得ている。
【0032】
連通部材27aは、例えばそれがプラスチック製であると、高圧洗浄水の流れの挙動に「剛」をもって抵抗するので材料破壊を生じるおそれが高くなる。しかし前述のようにゴム状弾性体であることから、高圧洗浄水の流れの挙動変化に応じて伸縮変形ないし膨縮変形することができるので耐久性を高めることができる。また前述の押圧状態による密着性も高めることができる。
【0033】
そして連絡通路27には、円筒状のシール突起25bの周囲を凹状に切削して形成した略U字形の逃げ溝27cが形成されている。仮に共用通路24,25や連通部材27aから高圧洗浄水が漏れ出た場合に、高圧洗浄水が胴部13の内周面13aから高圧で噴出してしまうとケーブル2に勢いよく噴きかかってケーブル2を損傷してしまうおそれがある。しかしながら胴部13の外周面13bに開口する前述の逃げ溝27cを形成しておけば、それが高圧洗浄水の圧力を逃がす流路となって高圧洗浄水を外に排出することができ、仮に漏れ出た場合であってもケーブル2を損傷するおそれを無くすことができる。
【0034】
実施形態の作用・効果〔図8〕
以上のような構成の洗浄装置6は、既に説明したことに加えて次のような作用・効果を奏することができる。
【0035】
洗浄装置6は、円筒状の胴部13の内周面13aにケーブル2を挿通させて保持した状態とし、この状態で胴部13の外周面13bに設けた多数の噴射口23から高圧洗浄水Wを噴射してケーブル管1の内周面1aに噴き付ける。このため高圧洗浄水Wがケーブル2に直接噴きかかることが無くケーブル2を損傷することも無い。したがって高圧洗浄水Wの昇圧限界を従来よりも高く設定することができ、ケーブル2を挿通したままであってもケーブル管1の管内に付着する錆瘤や土砂などの異物を強力に洗浄することができる。一例として本発明者による実験例では供給圧500kg/cm程度の高圧洗浄水Wを噴射してもケーブル2を損傷せずに洗浄することができることを確認した。
【0036】
そして洗浄の際には、噴射口23から高圧洗浄水Wを管軸方向Xへ斜め放射状に噴射する。具体的には図5(A)の一列目の噴射口群23では図8の実線で示すように噴射し、二列目の噴射口群23は図8の破線で示すように噴射し、三列目の噴射口群23は図8の一点鎖線で示すように噴射する。つまり各列の噴射口群23が斜め放射状に噴射することによるケーブル管1の内周面1aへの噴き付け位置はすべて異なっており、同じ位置には噴きかからない。このように放射状に噴き付ける高圧洗浄水Wによってケーブル管1の内周面1aの略全面を効果的に洗浄することができる。
【0037】
高圧洗浄水Wを洗浄装置6の移動方向前向きに噴射させるので剥離した異物を洗浄後のケーブル管1の管内に残さずに管外へ排出することができる。
【0038】
各噴射口23には、着脱可能なノズル23aが螺合により取付けられている。したがってケーブル管1の内径の大小や異物の付着状態などの洗浄状況に適応するように口径の異なるノズル23aを使い分けたり、高圧洗浄水Wの噴射によって摩耗したノズル23aを新しいものと交換することができる。
【0039】
胴部13が上部分割体20と下部分割体21との2つの部材で構成されるものの、連絡通路27を介して噴射口23に通じる共用通路24,25どうしが連通している。したがって、各分割体20,21のそれぞれに供給ホース8を接続する必要がなく、ケーブル管1の管内が狭くても対応することができる。
【0040】
第2実施形態〔図9〜図12〕:
【0041】
本実施形態の洗浄装置28が第1実施形態の洗浄装置6と相違する点は、噴射口29,30の構成とそれによる作用・効果である。残余の構成及び作用・効果と洗浄方法については同一である。
【0042】
本実施形態の洗浄装置28の噴射口29,30は、図9で示すように、胴部13の前端部14の側から後端部15の側にかけて4列として設けられている。各列は図9(A)及び図10で示すように僅かに周方向で位置をずらして千鳥掛け状に形成されている。
【0043】
そして本実施形態では、1列目と3列目に属する個々の噴射口29が管軸方向を中心として右回りの管周方向に高圧洗浄水Wを噴き付けるようになっている(右回り噴射口)。つまり図11(A)で示すように、高圧洗浄水Wを管軸方向Xを中心とする側方傾斜角θ2の管周方向へ前向きX1に、所定の上方傾斜角θ3をもって斜めに噴射するようになっている。
【0044】
また2列目と4列目に属する個々の噴射口30が管軸方向を中心として左回りの管周方向に高圧洗浄水Wを噴き付けるようになっている(左回り噴射口)。つまり図11(B)で示すように、高圧洗浄水Wを管軸方向Xを中心とする側方傾斜角θ4の管周方向へ前向きX1に、所定の上方傾斜角θ5をもって斜めに噴射するようになっている。
【0045】
それぞれの噴射口群29,30がこのように高圧洗浄水Wを噴射することで、本実施形態の洗浄装置28では全体として高圧洗浄水Wを管周方向へ斜め渦流状に噴射してケーブル管1の内周面1aに噴き付けるようになっている。
【0046】
以上のような本実施形態の洗浄装置28では次のような固有の作用・効果を奏することができる。すなわち洗浄の際には、噴射口29,30から高圧洗浄水Wをそれぞれ管周方向へ斜め渦流状に噴射する。具体的には一列目の右回り噴射口群29では図12の実線で示すように噴射し、二列目の左回り噴射口群30では図12の破線で示すように噴射し、三列目の右回り噴射口群29では図12の一点鎖線で示すように噴射し、四列目の左回り噴射口群30では図12の二点鎖線で示すように噴射する。そして各列の噴射口群29,30によるケーブル管1の内周面1aへの噴き付け位置はすべて異なっており、同じ位置に噴き付けるようにしていない。このようにして渦流状に噴き付ける高圧洗浄水Wでケーブル管1の内周面1aの略全面を効果的に洗浄することができる。また異方向からケーブル管1に付着する異物に対して高圧洗浄水が噴き付けるので、より強力に異物を除去することができる。
【0047】
そして管周方向の一方向へのみ高圧洗浄水Wを噴射すると、洗浄装置28がケーブル2回転軸として回転するおそれがある。しかし本実施形態であれば右回り噴射口29と左周り噴射口30とを同数列で有するので、洗浄装置28が回転しないように抑えることができる。
【0048】
実施形態の変形例
第1実施形態では噴射口23を3列で設ける例を示し、第2実施形態では4列で設ける例を示したが、より多列で設けるようにしてもよい。また胴部13が半割形状であるものを例示したが、3つ以上の分割体として構成することもできる。前記実施形態では管としてケーブル管を例示したが他の用途の管でもよい。また高圧洗浄流体として高圧洗浄水を例示したが高圧エアーでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】一実施形態による洗浄方法の説明図。
【図2】第1実施形態による洗浄装置の説明図で、分図(A)は平面図、分図(B)はA−A線断面図。
【図3】図2(B)の洗浄装置の右側面図。
【図4】図2(B)のB−B線断面図。
【図5】図2(B)の洗浄装置の各部の断面図で、分図(A)はC−C線断面図、分図(B)はD−D線断面図、分図(C)はE−E線断面図。
【図6】一つの噴射口における高圧洗浄水の噴射方向を模式的に示す説明図。
【図7】図2(B)の洗浄装置の要部説明図で、分図(A)はF−F線断面図、分図(B)は分図(A)G部の拡大説明図。
【図8】すべての噴射口による高圧洗浄水の噴射状態を模式的に示す説明図。
【図9】第2実施形態による洗浄装置の説明図で、分図(A)は平面図、分図(B)はH−H線断面図。
【図10】図9(B)の洗浄装置の各部の断面図で、分図(A)はI−I線断面図、分図(B)はJ−J線断面図、分図(C)はK−K線断面図、分図(D)はL−L線断面図。
【図11】高圧洗浄水の噴射方向を模式的に示す説明図で、分図(A)は右回り噴射口による噴射方向の説明図、分図(B)は左回り噴射口による噴射方向の説明図。
【図12】高圧洗浄水の噴射状態を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0050】
1 ケーブル管(管)
1a 内周面
2 ケーブル(線状体)
3,4 マンホール
5 牽引ロープ
6 洗浄装置(第1実施形態)
7 給水車
8 供給ホース
9 反力受け台
10 電動ウィンチ
11 ポンプ
12 貯留処理槽
13 胴部(筒状本体)
13a 内周面
13b 外周面
14 前端部
15 後端部
16 接続部
17 ケーブル支持板
17a 支持面
18 連結部
19 弾性支持脚
19a 丸脚
19b コイルばね
20 上部分割体(分割体)
21 下部分割体(分割体)
22 ボルト
23 噴射口
23a ノズル(噴射ノズル)
24 共用通路
24a 開口
24b シール凹部
25 共用通路
25a 開口
25b シール突起
26 境界部
27 連絡通路
27a 連通部材
27b シールフランジ
27c 逃げ溝
28 洗浄装置(第2実施形態)
29 噴射口(右回り噴射口)
30 噴射口(左回り噴射口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状体を挿通した管の内部を移動しながら高圧洗浄流体の噴射によって管内を洗浄する洗浄装置において、
内周面にて線状体を挿通状態で保持する筒状本体を備えるとともに、該筒状本体の外周面に高圧洗浄流体を管軸方向へ斜め放射状に噴射して管の内周面に噴き付ける多数の噴射口を有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
線状体を挿通した管の内部を移動しながら高圧洗浄流体の噴射によって管内を洗浄する洗浄装置において、
内周面にて線状体を挿通状態で保持する筒状本体を備えるとともに、該筒状本体の外周面に高圧洗浄流体を管周方向へ斜め渦流状に噴射して管の内周面に噴き付ける多数の噴射口を有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
噴射口として、高圧洗浄流体を管軸を中心とする右周りの管周方向へ噴射する右周り噴射口と、高圧洗浄流体を管軸を中心とする左周りの管周方向へ噴射する左周り噴射口とを有する請求項2記載の洗浄装置。
【請求項4】
噴射口が高圧洗浄流体を筒状本体の移動方向前向きに噴射するものである請求項1〜請求項3何れか1項記載の洗浄装置。
【請求項5】
噴射口に着脱可能な噴射ノズルを有する請求項1〜請求項4何れか1項記載の洗浄装置。
【請求項6】
筒状本体が複数の分割体でなり、
分割体ごとに複数の噴射口どうしが連通する共用通路を設けるとともに、
隣接する分割体の境界部に共用通路どうしが連通する連絡通路を設ける請求項1〜請求項5何れか1項記載の洗浄装置。
【請求項7】
連絡通路に一端と他端をそれぞれ対応する共用通路に差し込ませて共用通路どうしを水密に連通する筒状の連通部材を有する請求項6記載の洗浄装置。
【請求項8】
連通部材がゴム状弾性体である請求項7記載の洗浄装置。
【請求項9】
境界部に、筒状本体の外周面に開口し、筒状本体から漏れ出る高圧洗浄流体を筒状本体の外部に排出する逃げ溝を有する請求項6〜請求項8何れか1項記載の洗浄装置。
【請求項10】
筒状本体がその外周面を管の内周面から離した状態で支持する支持脚を有する請求項1〜請求項9何れか1項記載の洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−95703(P2009−95703A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267439(P2007−267439)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000100942)アイレック技建株式会社 (45)
【出願人】(302059953)株式会社メーシック (24)
【出願人】(000141082)株式会社キャプティ (22)
【Fターム(参考)】