説明

洗濯乾燥機

【課題】使用者が操作に戸惑ったり、煩雑な操作を行ったりしなくても、洗いの時間又はすすぎの回数を設定できる洗濯乾燥機を提供する。
【解決手段】外枠と、この外枠内に設置された外槽と、この外槽内で回転可能に支持され洗濯物を収容する洗濯槽と、この洗濯槽の内側底部に回転可能に設置されたパルセータと、このパルセータおよび前記洗濯槽を回転駆動するモータと、空気を加熱するヒータと、このヒータで加熱した空気を送風機によって前記洗濯槽内に温風を送りながら前記洗濯槽および/またはパルセータを回転させる洗濯乾燥機において、使用者の発する音声が入力される音声入力手段と、この音声入力手段に入力された音声を認識する音声認識手段と、この音声認識手段で認識した結果に応じて洗いの時間又はすすぎの回数を設定する制御手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声を認識し、使用者の指示にあわせて洗濯の内容を設定する洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗濯機は、予め複数のコースが設けられており、使用者がスイッチボタンを操作により、使用者の判断にて洗濯条件を設定して洗濯を行うものであった。
【0003】
一方で、音声認識を搭載した洗濯機としては、下記特許文献1,2のような技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−7577号公報
【特許文献2】特開2002−355486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2に記載の洗濯機をはじめ、従来の洗濯機では、既定のコースから所定のコースを選択した場合でも、その時の衣類の量や種類によって、使用者が自ら判断して、洗い・すすぎ・脱水などの工程ごとに細かく、ボタンで設定しなければならず、操作回数が増え煩雑になる。
【0006】
また、使用者が既定のコースから調整したい仕上がりは、概ね抽象的なものが多く、例えば「標準コースだが、痛みを防ぎたいのでやさしめにしたい」の場合、洗い時間、脱水時間等をどのくらいに設定すれば、その時の洗濯物に対して「やさしめ」に仕上げられるのか、使用者は判断することができない。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用者が操作に戸惑ったり、煩雑な操作を行ったりしなくても、洗いの時間又はすすぎの回数を設定できる洗濯乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、外枠と、この外枠内に弾性的に支持した外槽と、この外槽内に回転可能に設置され、洗濯物を収容する洗濯槽と、この洗濯槽の内側底部に回転可能に設置されたパルセータと、このパルセータおよび前記洗濯槽を回転駆動するモータと、空気を加熱するヒータと、このヒータで加熱した空気を送風機によって前記洗濯槽内に温風を送りながら前記洗濯槽および/またはパルセータを回転させて前記洗濯物を撹拌する動作を繰り返して前記洗濯物を乾燥させる乾燥工程を実行する洗濯乾燥機において、使用者の発する音声が入力される音声入力手段と、この音声入力手段に入力された音声を認識する音声認識手段と、この音声認識手段で認識した結果に応じて洗いの時間又はすすぎの回数を設定する制御手段を設けた。
【0009】
望ましくは、使用者のコースに対する抽象的な音声による要望に対して好適な条件を判断するために、洗濯物の量を測定する測定手段と、洗濯物の質を測定する測定手段により、洗濯物の状態を判断し、その状態と、音声により入力された内容に応じて、洗いの時間やすすぎの回数を設定する。
【0010】
また、このような設定を行った際には、そのことを音声で出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用者が操作に戸惑ったり、煩雑な操作を行ったりしなくても、洗いの時間又はすすぎの回数を設定可能な洗濯乾燥機を提供できる。コース調整時の操作が容易になるため、特に、目が不自由な使用者や高齢者でも、好みの仕上がりに洗濯でき、洗濯物に合わせた運転により省エネ・節水することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】洗濯乾燥機の外観図である。
【図2】発明の一実施の形態である洗濯乾燥機を縦断面して示す模式図である。
【図3】洗濯乾燥機の音声認識に関する構造部品を表した外観図である。
【図4】音声認識の仕組みを説明するチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態である洗濯乾燥機の外観図、図2は本発明の一実施の形態である洗濯乾燥機を縦断面して示す模式図である。
【0015】
1は、外郭を構成する四角筒状の外枠である。2は、洗濯兼脱水槽であり、その周壁に通水および通風のための小穴2aを有し、その上縁部に流体バランサー3を備え、底部の内側には回転自在に撹拌翼4を設置する。撹拌翼4は、通水および通風のための小穴4aを有する。5は、前記洗濯兼脱水槽2を内包する外槽であり、底部の外側には駆動装置6を鋼板製の取り付けベース7によって取り付け、外枠1の上端部の四隅部に係止した4本の防振支持装置8によって外槽5を四方から均等に吊り下げることにより該外枠1の中心部に懸垂するように支持する。
【0016】
駆動装置6は、駆動電動機と電動操作クラッチ機構と遊星歯車減速機構を内蔵し、洗濯兼脱水槽2を静止させた状態で撹拌翼4を回転させ(撹拌モード)、洗濯兼脱水槽2と撹拌翼4をそれぞれ反対方向に回転させ(洗濯モード)、洗濯兼脱水槽2と撹拌翼4を一体的に同一方向に回転(脱水・乾燥モード)させるような選択的な駆動機能を有する。
【0017】
外側衣類投入口9aを形成したトップカバー9は、外枠1の上部開口を覆うように該開口端縁に嵌め込み、フロントパネル10およびバックパネル11と共に取り付けねじによって外枠1に取り付ける。
【0018】
トップカバー9とフロントパネル10の間に形成される前部収納部であるフロントパネルボックス12には、電源スイッチ13と入力スイッチ群および表示素子群を備えた操作パネル14と、外槽5内の水位に応じた水位信号を発生する水位センサ15と、コントロールユニット16を内蔵する。これらは、制御装置を構成する。
【0019】
トップカバー9とバックパネル11の間に形成される後部収納部であるバックパネルボックス17には、後述する洗濯水給水手段を横並びにして内蔵する。
【0020】
洗濯水給水手段は、入水側を水栓接続口18に接続し、出水側を注水口19に接続した主給水電磁弁20によって構成する。
【0021】
注水口19は、トップカバー9の底と外槽5の外槽上カバー28の後部を貫通して洗濯兼脱水槽2の上部開口内に向けて開口する。この注水口19は、トップカバー9の底と外槽上カバー28の間には可撓管19aを介在させる。
【0022】
温風循環乾燥手段は、外槽5の下部の側壁に形成した吸い出し口5aから該外槽5の後側の外壁面に沿って垂直状態で上向きに伸びるように形成して前記吸い出し口5aから浸入した洗濯水を堰き止める除湿風路部である水冷除湿ダクト23と、この水冷除湿ダクト23内の上部に位置して該ダクト内に冷却水を供給する水冷除湿手段である冷却散水部24と、洗濯工程における外槽5の水位よりも高い位置で折り返して該外槽5の外壁面に沿って該外槽5の下側に向かって垂直に伸びる下降風路部である下降風路ダクト25と、外槽5の下側の空間に配置されて前記下降風路ダクト25から吸い込み口に空気を吸い込んで循環空気を生成する循環ファン26と、この循環ファン26の吹き出し口から外槽5の外壁面に沿って上方向に垂直状態に伸びる上昇風路部である上昇風路ダクト27と、外槽5の上端部に取り付けた外槽上カバー28上に設置されて前記上昇風路ダクト27から送り込まれる循環空気を加熱する加熱手段であるヒータ(PTCヒータ)29を内蔵し、加熱した循環空気を洗濯兼脱水槽2内に向けて吹き込む吹き込み口30を備える。
【0023】
循環風路を構成する前記水冷除湿ダクト23、下降風路ダクト25および上昇風路ダクト27は、外槽5の後側の外壁面に該外槽5の周方向に並べてその一部を該外槽5と一体成形して実装し、これらの外側を覆う裏側蓋1aは、外側に膨出する形状に構成してねじ止めする。
【0024】
また、下降風路ダクト25内には湿度センサ40と第1温度センサ41を設置し、吹き込み口30、ヒータ29の下流側の風路内には第2温度センサ42を設置する。水冷除湿ダクト23内で水冷除湿された循環空気の湿度と温度を精度良く検出するためには、水冷除湿された循環空気が良く混合されて均一になった後に前記湿度センサ40と第1温度センサ41に触れさせるのが良く、従って、湿度センサ40と第1温度センサ41は、水冷除湿ダクト23から遠く離れた下降風路ダクト25の下部または循環ファン26の吸い込み口ケーシング26cに設置する。更に、湿度センサ40と第1温度センサ41は、保守作業に便利なように、裏側蓋1aを外したときに露出するような設置位置とする。
【0025】
トップカバー9に形成した外側衣類投入口9aは、2つ折り(山折り)に開くようにヒンジ31aによってトップカバー9に取り付けた外蓋31によって開閉自在に覆い、外槽5の上端に取り付けた外槽上カバー28に形成した内側衣類投入口28aは、ヒンジ32aによって外槽上カバー28に取り付けた内蓋32によって開閉自在に覆うように構成する。
【0026】
外槽5の底に形成した排水口5bは、排水電磁弁33を介して排水ホース34に接続する。エアートラップ5cは、エアーチューブ35を介して前記水位センサ15に接続する。外枠1の下端縁には、四隅に脚36を取り付けた合成樹脂で成形されたベース37を装着する。
【0027】
そして、43は音声入力手段を構成するマイクロホンで、44の制御手段にて判断される。音声認識の判断方法は、図4のように、音響分析部45にて分析を行い音声認識に役立つ情報に変換し、認識デコーダ46にて出力を行う。また、認識デコーダ46では、音響分析にてデータ化された音響モデル47を用いて、各コースの調整内容を記録した辞書48と、使用者の口語による指示に対応するためのルールグラマ49にて洗濯機のコースに関する内容だと音声認識し、結果をスピーカ50にて出力する。また、制御手段44は、認識した結果によって、既定のコース内容から指示された音声の認識結果と、センサで検知した洗濯物の布の量や質に合わせて、洗い・すすぎ・脱水の時間や回数を変更する。
【0028】
以下に本実施例の動作について説明する。
【0029】
使用者は洗濯兼脱水槽2内に洗濯物を投入し、コースの調整を行いたい場合、音声認識開始ボタン51を押して指示を行う。例えば「標準コースのやさしめ」と声を発すると、制御手段44によって指示内容を判定し、スピーカ50より「標準コースのやさしめ」と音声出力する。指示したものと違う出力があった場合や、訂正したい場合は、再度音声認識開始ボタン51を押して声を発する。そして、問題がないようであれば、通常のスタートボタン52を押す。
【0030】
その後、洗剤量や布の量・質などをセンサにて感知し通常の設定コースでの洗い・すすぎ・脱水時間を、操作パネル14にあるLEDランプの点滅にて表示するが、その数秒後に、指示内容に合わせて各工程の数字点灯位置を変更する。そうすることで、デフォルトのコースから指示によって変更されたことを確認し、また表示用に別部品を使用しないことから部品点数削減及び見た目の煩雑さを防ぐことができる。
【0031】
なお、上述の指示内容では「標準コースのやさしめ」としているが、その他備え付けの各コースにも対応し、また調整内容も洗い・すすぎ・脱水それぞれまとめて指示することも可能である。このとき、辞書48では「やさしめ」や「念入り」といった調整具合を表現する指示を認識する語彙を多く持っている。ゆえに、制御手段44が有する辞書は相応の情報量を持っている。また、ルールグラマ49に則り指示方法はマニュアル化されており、規定の調整内容の単語を選んで使うこととなる。
【符号の説明】
【0032】
1 外枠
2 洗濯兼脱水槽
4 撹拌翼
5 外槽
5a 吸い出し口
6 駆動装置
16 コントロールユニット
19 注水口
20 主給水電磁弁
21 洗剤溶解容器
22,22a 補助給水電磁弁
23 水冷除湿ダクト
24 冷却散水部
25 下降風路ダクト
26 循環ファン
27 上昇風路ダクト
28 外槽上カバー
29 ヒータ
38 溢水パイプ
39 緊急排水構造
40 湿度センサ
41 第1温度センサ
42 第2温度センサ
43 マイクロホン
44 制御手段
45 音響分析部
46 認識デコーダ
47 音響モデル
48 辞書
49 ルールグラマ
50 スピーカ
51 音声認識開始ボタン
52 スタートボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠と、この外枠内に弾性的に支持した外槽と、この外槽内に回転可能に設置され、洗濯物を収容する洗濯槽と、この洗濯槽の内側底部に回転可能に設置されたパルセータと、このパルセータおよび前記洗濯槽を回転駆動するモータと、空気を加熱するヒータと、このヒータで加熱した空気を送風機によって前記洗濯槽内に温風を送りながら前記洗濯槽および/またはパルセータを回転させて前記洗濯物を撹拌する動作を繰り返して前記洗濯物を乾燥させる乾燥工程を実行する洗濯乾燥機において、使用者の発する音声が入力される音声入力手段と、この音声入力手段に入力された音声を認識する音声認識手段と、この音声認識手段で認識した結果に応じて洗いの時間又はすすぎの回数を設定する制御手段を備えた洗濯乾燥機。
【請求項2】
請求項1において、洗濯物の量を測定する測定手段と、洗濯物の質を測定する測定手段を有し、これらの測定手段で測定した結果、及び、前記音声認識手段で認識した結果に応じて、前記制御手段が洗いの時間又はすすぎの回数を設定することを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項3】
請求項1において、前記音声認識手段で認識した結果を出力する音声出力手段を備えたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項4】
請求項3において、前記音声認識手段で認識した結果に応じて洗いの時間又はすすぎの回数を設定した場合に、その内容を前記音声出力手段で出力することを特徴とする洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−70831(P2013−70831A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211791(P2011−211791)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】