説明

洗車方法及び洗車装置

【課題】各洗車処理場等で生じる油分、泥、砂、界面活性剤等を含有する洗車廃水を、天然素材を用いた濾過装置により処理する、環境に優しく、処理方法が簡便で、処理効果が優れた洗車方法及び洗車装置を提供する。
【解決手段】濾過に供する原料水が、その少なくとも一部に、洗車廃水を、プレコート式濾過器15、及び/又は、バッグフィルター33を含んで構成される濾過器により、予備的に濾過した水を含むものであることを特徴とする洗車方法。予備濾過器15のフィルター表面にプレコートさせ、洗車廃水を予備濾過器で濾過し、得られる予備濾過水として高度濾過器24に供し、高度濾過器24により得られた純水で洗車する。プレコート式予備濾過器15の濾過装置の濾過水の一部は濾過助剤と混合してスラリーを形成し、且つ、該予備濾過器の濾過水の一部又は該濾過水の一部と加圧空気の導入により該予備濾過器を逆洗にかけてケーク膜除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両を、純水を用いて洗車することを特徴とする洗車方法及び洗車装置に関する。
本発明に係る洗車方法及び洗車装置を使用することにより、洗車の際に洗剤使用量を低減でき又は、洗剤を使用しないことを可能とし、洗車後に車体に付着する水滴が顕著に減少し、更に、洗車廃水(洗車排水)による下水や環境の汚染を低減し、異臭発生を防止することができる。
さらに、洗車装置や洗車場から発生した油分(機械油、ピッチ、ワックス等)、界面活性剤(洗剤等)、土砂(泥、砂等)等を含有する洗車廃水を、濾過装置により処理・リサイクルした純水を用いて洗車することを特徴とする洗車方法及び洗車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水資源の有効利用への関心がますます高まっている現在、水の再利用技術への期待が大きくなっている。
洗車場においては、大量の水道水を利用しており、その廃水(排水)を充分処理しないまま下水道に廃出(排出)しているため、洗車における節水への要望および水質汚染への懸念が高まっている。
【0003】
そこで、洗車廃水を処理し、その処理水を洗車用水として再利用することにより、上記課題を解決しようとする試みがなされてきた。
洗車廃水処理等の方法としては、特許文献1〜9に記載された砂濾過装置、凝集沈殿処理、生物処理、オゾン処理、電気分解処理、中空糸膜分離等の方法による洗車廃水の処理方法が知られている。
しかしながら、これらの方法では、使用する装置が大きく、広い設置場所を確保する必要があるだけでなく、処理時間がかかり、このため処理コストが高い等の問題があった。
【0004】
また、特許文献10〜12には、洗車廃水処理のコンパクト化の方法が記載されているが、いずれの方法においても、凝集沈殿処理、中空糸膜分離等の方法が用いられるため、処理コストが高く、かつ廃棄物処理量が多い等の問題があった。
【0005】
さらに、上記方池においては、タンク内での水の貯留によって細菌が発生するため、特に夏期において水から異臭が発生し、周囲の住民からの苦情が発生するという問題があった。
このような異臭発生の防止方法として、特許文献13には、銀とその他の金属混合体からなる防臭浄化手段が知られているが、これらの金属は高価であるうえに、その処理に問題があった。
【特許文献1】特開2000−127913号公報
【特許文献2】特開2001−4025616号公報
【特許文献3】特開2002−361049号公報
【特許文献4】特開2003−327093号公報
【特許文献5】特開2005−074295号公報
【特許文献6】特開2004−0660376号公報
【特許文献7】特開2003−305489号公報
【特許文献8】特開平09−271798号公報
【特許文献9】特開平11−207376号公報
【特許文献10】特開2003−326105号公報
【特許文献11】特開2006−028339号公報
【特許文献12】特開2005−074294号公報
【特許文献13】特開2005−296764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、以下に示すとおり、環境に優しく、且つ、洗車効果に優れた洗車方法及び洗車装置を提供することにある。
【0007】
第1の解決課題は、洗車の際の洗剤使用量を低減し、又は、洗剤を全く使用しないことを可能とする洗車方法及び洗車装置を提供することである。
【0008】
第2の解決課題は、洗車後に車体に付着する水滴を顕著に減少させることにより、作業工数を低減した洗車方法及び洗車装置を提供することである。
【0009】
第3の解決課題は、洗車廃水(洗車排水)による下水や環境の汚染を低減することを可能とする洗車方法及び洗車装置を提供することである。
【0010】
第4の解決課題は、洗車廃水(洗車排水)による異臭発生を防止することを可能とする洗車方法及び洗車装置を提供することである。
【0011】
第5の解決課題は、洗車装置又は洗車場から発生した油分(機械油、ピッチ、ワックス等)、界面活性剤(洗剤等)、土砂(泥、砂等)等を含有する洗車廃水を、有効活用して高度処理してリサイクルした水を用いた洗車方法及び洗車装置を提供することである。
【0012】
第6の解決課題は、コンパクト、操作が容易、且つ、構造が単純な洗車方法及び洗車装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願に係る発明は、[特許請求の範囲]の[請求項1]〜[請求項20]に記載した事項により特定される。
【0014】
[特許請求の範囲]
[請求項1] 純水により車体を洗うことを特徴とする洗車方法において、
純水が、電気伝導率0.055〜15μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車方法。
[請求項2] 純水により車体を洗うことを特徴とする洗車方法において、
純水が、電気伝導率0.055〜10μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車方法。
[請求項3] 純水により車体を洗うことを特徴とする洗車方法において、
純水が、電気伝導率0.055〜1μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車方法。
[請求項4] 純水により車体を洗うことを特徴とする洗車方法において、
純水が、電気伝導率0.055〜0.5μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車方法。
[請求項5] 純水が、精密濾過膜(MF)、限外濾過膜(UF)、及び、逆浸透膜(RO)よりなる群から選択された少なくとも1種の濾過膜により、原料水を濾過して得られたものであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載した洗車方法。
[請求項6] 濾過に供する原料水が、プレコート式濾過器、及び/又は、バッグフィルターを含んで構成される濾過器により、予備的に濾過されたものであることを特徴とする請求項5に記載した洗車方法。
[請求項7] 濾過に供する原料水が、その少なくとも一部に、洗車廃水を、プレコート式濾過器、及び/又は、バッグフィルターを含んで構成される濾過器により、予備的に濾過した水を含むものであることを特徴とする、請求項6に記載した洗車方法。
[請求項8] プレコート式濾過器が、スプリングフィルター、及び/又は、ディスクフィルターを含んで構成される濾過器であることを特徴とする請求項6又は7に記載した洗車方法。
[請求項9] プレコート式濾過器が、珪藻土粒子と活性炭粒子を含んでなる濾過助剤をプレコートに使用するものであることを特徴とする、請求項6乃至8の何れかに記載した洗車方法。
[請求項10] 請求項1乃至9の何れかに記載した仕上げ洗車方法。
[請求項11] 純水により車体を洗う機構を含んでなる洗車装置において、
純水が、電気伝導率0.055〜15μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車装置。
[請求項12] 純水により車体を洗う機構を含んでなる洗車装置において、
純水が、電気伝導率0.055〜10μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車装置。
[請求項13] 純水により車体を洗う機構を含んでなる洗車装置において、
純水が、電気伝導率0.055〜1μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車装置。
[請求項14] 純水により車体を洗う機構を含んでなる洗車装置において、
純水が、電気伝導率0.055〜0.5μS/cm(25℃)を有する純水であることを特徴とする洗車装置。
[請求項15] 純水が、精密濾過膜(MF)、限外濾過膜(UF)、及び、逆浸透膜(RO)よりなる群から選択された少なくとも1種の濾過膜により、原料水を濾過して得られたものであることを特徴とする請求項11乃至14の何れかに記載した洗車装置。
[請求項16] 濾過に供する原料水が、プレコート式濾過器、及び/又は、バッグフィルターを含んで構成される濾過器により、予備的に濾過されたものであることを特徴とする請求項15に記載した洗車装置。
[請求項17] 濾過に供する原料水が、その少なくとも一部に、洗車廃水を、プレコート式濾過器、及び/又は、バッグフィルターを含んで構成される濾過器により、予備的に濾過した水を含むものであることを特徴とする、請求項16に記載した洗車装置。
[請求項18] プレコート式濾過器が、スプリングフィルター、及び/又は、ディスクフィルターを含んで構成される濾過器であることを特徴とする請求項16又は17に記載した洗車装置。
[請求項19] プレコート式濾過器が、珪藻土粒子と活性炭粒子を含んでなる濾過助剤をプレコートに使用するものであることを特徴とする、請求項16乃至18の何れかに記載した洗車装置。
[請求項20] 請求項11乃至19の何れかに記載した仕上げ洗車装置。
【発明の効果】
【0015】
以下に示す本発明の効果を奏することにより、環境に優しく、且つ、洗車効果に優れた洗車方法及び洗車装置を提供することができる。
【0016】
第1の発明の効果は、本願発明に係る洗車方法及び洗車装置を使用することにより、洗車の際の洗剤使用量を低減し、又は、洗剤を全く使用しないことを可能とすることである。
【0017】
第2の発明の効果は、本願発明に係る洗車方法及び洗車装置を使用することにより、洗車後に車体に付着する水滴を顕著に減少させることにより、作業工数を低減することを可能とすることである。
【0018】
第3の発明の効果は、本願発明に係る洗車方法及び洗車装置を使用することにより、洗車廃水(洗車排水)による下水や環境の汚染を低減することを可能とすることである。
【0019】
第4の発明の効果は、本願発明に係る洗車方法及び洗車装置を使用することにより、洗車廃水(洗車排水)による異臭発生を防止することを可能とすることである。
【0020】
第5の発明の効果は、本願発明に係る洗車方法及び洗車装置を使用することにより、洗車装置又は洗車場から発生した油分(機械油、ピッチ、ワックス等)、界面活性剤(洗剤等)、土砂(泥、砂等)等を含有する洗車廃水を、有効活用して高度処理してリサイクルした水を用いることができることである。
【0021】
第6の発明の効果は、本願発明に係る洗車方法及び洗車装置を使用することにより、コンパクト、操作が容易、且つ、構造が単純な洗車方法及び洗車装置を提供することができることである。
【0022】
本発明によれば、濾過助剤を用いて一次濾過を行なっているので、泥、砂等の固形分はもちろんのこと、界面活性剤、その他の有機物が除去できる。このため、長時間にわたって連続的に循環使用しても腐敗等の問題はなく臭気は発生しない。また、仕上水は水道水ではなく、高度処理した循環水を使用することで、最初のプレコート用助剤(濾過助剤)の分散時にのみ水道水を使用する以外は、新鮮な水(例えば、水道水)の使用必要ないので、水道水の節約になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
つぎに、図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【0024】
すなわち、図1は、本発明による洗車廃水の処理方法およびその装置を説明するための全体構成を示すフローシートである。
【0025】
なお、本発明より洗浄されるべき「車体」とは、乗用車、バス、トラック等の自動車、オートバイ等の二輪自動車、電車、汽車等の車両を包含するが、以下において、一般的な乗用車を例にとって説明する。
【0026】
(1)原水循環系の運転
本発明による洗車廃水処理(リサイクル)装置は、洗浄されるべき車体(自動車等の車両)1を純水シャワー器2からノズル3等を介して供給される純水により洗浄されたのち、該廃水(排水)は廃水(排水)収集器4に収集され、ついで貯水ピット5に貯蔵される。
該貯水ピット5内の洗車廃水(原水)6は、ここで洗車時に混入してくる油分、泥、砂、界面活性剤等を含んでいるので、沈降(泥、砂等の固形分)および油水分離(油分等)される。
なお、本発明の洗車廃水処理装置における処理対象としては、洗車廃水のみでもよく、また油水分離槽に貯溜されている洗車廃水を含む雑排水でもよい。
ついで、これらの不純物をある程度除去された洗車廃水6は、原水ポンプP1を経由して原水タンク8に送られ、余剰の洗車廃水6は、溢流させて導管9により貯水ピット5に循環される。
【0027】
(2)プレコート式濾過器系の運転
プレコート式濾過器の運転方法を図2〜図6に示した。
プレコートタンク10には、例えば、最初だけは水道水等の清浄な水が導管11を経て供給される。
また、定常、定態に達すれば、該プレコートタンク10には、後述する純水タンク12からの純粋13が、逆洗ポンプP3および導管14を経てプレコートタンク(濾過助剤分散液槽)10に供給される。
さらに、該プレコートタンク10には、後述する予備濾過器(プレコート式濾過器)15から導管16、17を経て濾過水が供給される。
そして、このプレコートタンク10には、濾過助剤供給器(プレコート剤自動供給装置)18より導管19を経て濾過助剤(プレコート剤)が供給される。
該濾過助剤(プレコート剤)は、珪藻土、ゼオライト(沸石)、麦飯石、医王石、活性白土、セルロース、活性炭、木炭、竹炭等の吸着剤よりなる濾過助剤であり、通常、平均粒径10〜150μm、好ましくは20〜60μmの粉末状物である。
すなわち、平均粒径が20μm未満では、吸着力は高いが、フィルターの間隙を通してしまい、プレコートされ難いからである。
一方、平均粒径が60μmを越えると、吸着力が低くなり、プレコートは充分できるが、目づまりが早くなるからである。
これらのプレコート剤としては、種々の吸着剤の組合わせが考えられるが、これらのうち珪藻土、ゼオライト等の鉱物系吸着剤と活性炭等の炭素系吸着剤との組合わせがより好ましく、特に珪藻土と活性炭との組合わせが好ましい。
天然吸着剤と炭質材との質量比は、9:1〜5:5であり、好ましくは8:2〜7:3である。
すなわち、該質量比が9:1未満では活性炭による有機物等の吸着、分解効果が低下し、一方、該質量比が7:3を超えると、活性炭による目づまりが発生しやすいからである。
該プレコート剤は、前記のように粉末状吸着剤よりなる濾過助剤であり、これらの粉末は、プレコートタンク10内に収容されている前記水と混合されてスラリーとなる。
【0028】
(3)予備濾過器系の運転
前記原水タンク8より導管20を経て送られてくる洗車廃水(被処理原水)は、導管21より送られてくるスラリーと混合さて、濾過ポンプP2の作用により導管21を経て予備濾過器(プレコート式濾過器)15に送られて来る。
該予備濾過器(プレコート式濾過器)15における渡通水の一部は、前記のように、導管16、17を経てプレコートタンク10に循環される。
該予備濾過器(プレコート式濾過器)15としては、原水とともに供給されるスラリー中の濾過助剤を濾別できるものであれば、いずれも使用できる。
このような予備濾過器15としては、例えば、ディスクフィルター、スプリングフィルター等の濾過装置がある。
このような予備濾過器(プレコート式濾過器)15に供給されたスラリーは、濾過助剤が濾別されて、その濾過水の一部は、前記のように、導管16、17を経てプレコートタンク10に循環され、導管22を経て第2の濾過装置33へ供給され、その濾過水(予備濾過水)は導管23を経て高度濾過器24へ供給され、さらにその濾過水は純水となって、導管24を経て純水タンク12に供給される。
そして、この純水タンク12内の純水(仕上水)13は高純度であるので、導管26を経て送水ポンプP4により純水シャワー器に送られてノズル3より噴射して車体1が洗浄される。
純水タンク(仕上水タンク)12および洗浄水タンク28においては、各純水(仕上水)13および洗浄水29は、余剰水は溢流されて、それぞれ導管31および32より導管9を経て、貯水ピット5へ循環される。
予備濾過器(プレコート式濾過器)15としては、前記のとおり、種々のタイプのものがあるが、好適にはディスクフィルター、スプリングフィルター等があり、特にディスクフィルターが好ましい。
ここに、ディスクフィルターとは、例えば、表面にエッジ部および溝部を交互に有するドーナツ状ディスクを積層して筒状ハウジング内に収納し、該ハウジングとディスク積層体との間で濾過助剤とともに濾過するもので、濾過助剤はディスク積層体の外側に堆積し、濾過水はディスク積層体内の空間に濾別され、その上部または下部より抜き出されて、導管16により排出されるものである。
ディスクフィルターとしては、具体的には、スピンクリン(SPIN KLIN(AR KAL FILTRATION SYSTEMS社製 自動逆洗濾過システム)等がある。
このような濾過助剤の作用により原水中の不純物、特に有機物やその他の界面活性剤(洗剤)が吸着されているので、これらの不純物は、該濾過助剤に吸着される。
したがって、該原水からは除去され、濾過水中には実質的に存在しなくなる。
また、これらの不純物、特に有機物が除去されるので、長期間にわたって処理水を循環使用しても、水の腐敗はなく、臭気発生の問題は完全になくなる。
【0029】
(4)予備濾過器系の運転
予備濾過器(プレコート式濾過器)15より排出される濾過水の一部は、前記のとおり洗浄水タンク28へ送られるが、残りの一部は、前記のように、導管22を経て予備濾過器(バッグフィルター式濾過器)33へ供給される。
この予備濾過器(バッグフィルター式濾過器)33としては、予備濾過器(プレコート式濾過器)15ではなお捕集し得なかった濾過水(予備濾過水、二次処理水)中の微粒子を捕集するためのものであり、例えばバッグフィルター等が用いられている。
しかして、そのメッシュサイズは0.01〜1μm、好ましくは0.2〜0.5μmである。
このように濾過された予備濾過水は、そのまま高度濾過器へ供給したり、洗車に使用することもできるが、導管23を経て高度濾過器24に送り、さらに微粒子状不純物を除去する。これにより濾過水の純度は、さらに向上する。高度濾過器24は、逆浸透膜(RO)、限外濾過膜(UF)、及び、精密濾過膜(MF)からなる群から選択された少なくとも一種を用いる。
上記の高度濾過器24で処理した純水は、予備濾過に比べ処理コストはやや高いが、仕上水のみに利用されるので、処理量が少なく、フィルターまたは膜の使用寿命が長く、処理コストを低減することができる。上記の各処理水は、前洗浄水タンク、仕上水タンクにそれぞれ貯水される。
水の腐敗を防ぐため、上記の有機物の除去、水の循環の他に、例えば、医王石、ゼオライト、麦飯石などの天然鉱物のいずれのもの、またはそれらを混合したものを上記の一部またはすべてのタンクに入れてもよい。
添加量は、水100リットルにつき2kg程度、好ましくは5kgとする。
その粒径は特に定められていない。
また、添加方法として、直接タンク内に投入してもよいし、網等に入れてタンク内に投入してもよい。
【0030】
(5)予備濾過器系におけるプレコート式濾過器の逆洗
(a)エアー逆洗
コンプレサ34から導管35、36を経て制御弁37を切換えて予備濾過器(プレコート式濾過器)15(内の積層ディスク内)に加圧空気を送り込み、その外部に付着しているケーキを離脱させ、導管38を経て廃水(排水)処理タンク39に送られる。
(b)水逆洗
純水タンク12から逆洗ポンプP3および導管14、36を経て制御弁37を切換えてエアー逆洗の場合と同様に仕上水を第1の濾過装置15に送り、その外部に付着しているケーキを離脱され、導管38を経て廃水(排水)処理タンク39に送られる。
廃水(排水)処理タンク39に収容された汚泥は、汚泥受槽40に送られる。
該廃水(排水)処理タンク39内のスラリーは、その上澄液を導管9を経て貯水ピットに循環してもよい。同様に、汚泥受槽40の濾過水も貯水ピットに戻してもよい。
なお、前記逆洗工程は(a)エアー逆洗を行なったのちに(b)水逆洗を行なってもよいし、あるいは(a)エアーと水とを混合して逆洗を行なってもよい。
【0031】
(6)予備濾過器(バッグフィルター)系の逆洗
仕上水タンク12内の仕上水をポンプP3および導管14を経て高度濾過器24において逆洗をかけ、その逆洗水は、導管41、9を経て貯水ピットに循環される。
【実施例】
【0032】
次に、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
(1)各貯水タンクの容量
各貯水タンクの容量は下記の通りである。
【0034】
貯水ピット 200リットル
原水タンク 500リットル
プレコートタンク 100リットル
洗浄水タンク 500リットル
仕上水タンク 500リットル
【0035】
(2)一次処理条件
ディスクフィルター濾過装置:ディスクフィルターはポリプロピレン製で、濾過精度は55μmのものを用いた。
プレコート剤の混合比及び添加量:プレコート剤として、珪藻土および活性炭を用いた。
珪藻土は600メッシュのものを用い、活性炭は100メッシュのものを用いた。
2種類のプレコート剤の混合比(質量)は、珪藻土:活性炭=7:3である。
上記のプレコート剤の1回分の合計添加量は、100g以上とした。
【0036】
(3)二次処理条件
バッグフィルター処理条件:1μmのバッグフィルターを用いた。
FM処理条件:濾過精度は、0.3μmのものを用いた。流入水の流量を45リットル /minに設定した。
【0037】
(4)分析項目の選択
分析項目として、外観、臭気、pH、電気伝導率、色度、SS (浮遊物質)、ヘキサン抽出物質(油分)およびCOD(MN)(有機物)を用いた。
【0038】
(5)分析対象試料の準備
分析対象試料として、原水、ディスクフィルター濾過水(洗浄水)およびMF膜処理水(佳上水)を採取し、分析した。
【0039】
(6)処理水の評価
原水および処理水の分析結果を表1に示す。また、比較のため、洗車用水基準値及び下水排除基準値を表の右に併記した。ディスクフィルタ一波過水時、無臭、透明で、油分および有機物はほぼなくなった。分析結果より、前洗浄水、または、仕上水として再利用するには適正な水質となった。
【0040】
[表1]
━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ 結 果 ┃ 基 準
━━━━━━╋━━━┳━━━━━┳━━━━━╋━━━━━┳━━━━━┳━━━━━
水質項目 ┃原水 ┃前洗浄水 ┃仕上水 ┃洗車(1)┃洗車(2)┃ 下水

┃ ┃(※a) ┃(※b) ┃(※1) ┃(※2) ┃(※3)
━━━━━━╋━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
外観(−) ┃白濁 ┃無色透明 ┃無色透明 ┃ − ┃ − ┃ −
━━━━━━╋━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
臭気(−) ┃油臭 ┃ 無臭 ┃無臭 ┃ − ┃ − ┃ −
━━━━━━╋━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
pH(−) ┃6.8┃ 8.2 ┃ 7.8 ┃6.5〜 ┃5.8〜 ┃ 5〜9

┃ ┃ ┃ ┃ 9.0┃ 8.6┃
━━━━━━╋━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
電気伝導率 ┃209┃ 206 ┃ 188 ┃ − ┃ − ┃ −
[μS/cm] ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
━━━━━━╋━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
濁度[度] ┃ 30┃ 0.6 ┃0.1未満┃ 5以下┃ 10以下┃ −
━━━━━━╋━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
色度[度] ┃ 46┃ 0.5 ┃0.1未満┃ 30以下┃ 30以下┃ −
━━━━━━╋━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
浮遊物質 ┃ 22┃ 1未満 ┃ 1未満 ┃ 5以下┃ − ┃600以下
[mg/l]┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
━━━━━━╋━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
ヘキサン抽出┃ 20┃ 1未満 ┃ 1未満 ┃ − ┃ − ┃ 5以下
物質(※4)┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
[mg/l]┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
━━━━━━╋━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
CODMn ┃ 20┃ 1未満 ┃ 1未満 ┃20以下 ┃ − ┃ −
(※b) ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
━━━━━━┻━━━┻━━━━━┻━━━━━┻━━━━━┻━━━━━┻━━━━━
【0041】
[凡例]
※a 前洗浄水・・・ディスクフィルター処理水
※b 仕上水・・・MF膜処理水
※1 洗車(1)・・・洗車用水基準(東京都首都整備局)
※2 洗車(2)・・・洗車用水基準(日本水道協会)
※3 下水・・・日本下水排出基準
※4 ヘキサン抽出物質・・・ヘキサン抽出物質は鉱油類含有量の基準
※c CODMn・・・『CODMn』の文字表記のうち、『COD』は通常フォントであり、『Mn』は下付4分の1フォント
【0042】
(実施例2)
ホンダ・アコード(排気量2500cc、ガンメタリック塗装)を洗車に供した。水道水で洗車した場合、ボンネット上全面に水滴数が23±6個できた。一方、電気伝導率10μS/cm(25℃)の純水で同様の条件で洗車したところ、ボンネット上全面にできる水滴数が2±2個できた。純水による洗車の効果は顕著であった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る洗車方法及び洗車装置の好ましい形態の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る洗車方法及び洗車装置において使用するプレコート式濾過器の運転についての説明図である。
【図3】本発明に係る洗車方法及び洗車装置において使用するプレコート式濾過器の運転についての説明図である。
【図4】本発明に係る洗車方法及び洗車装置において使用するプレコート式濾過器の運転についての説明図である。
【図5】本発明に係る洗車方法及び洗車装置において使用するプレコート式濾過器の運転についての説明図である。
【図6】本発明に係る洗車方法及び洗車装置において使用するプレコート式濾過器の運転についての説明図である。
【図7】本発明に係る洗車方法及び洗車装置において使用するプレコート式濾過器の運転についての説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1・・・車体
2・・・純水シャワー器(洗車機)
3・・・洗車ノズル
5・・・貯水ピット
8・・・原水タンク
10・・・プレコートタンク(濾過助剤分散液槽)
12・・・純水タンク(仕上水タンク)
15・・・予備濾過器(プレコート式濾過器)
18・・・濾過助剤供給器(プレコート剤自動供給装置)
24・・・高度濾過器
28・・・洗浄水タンク
33・・・予備濾過器(バッグフィルター式濾過器)
34・・・コンプレッサ
39・・・廃水(排水)処理タンク、
40・・・汚泥受槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水により車体を洗うことを特徴とする洗車方法において、
純水が、電気伝導率0.055〜15μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車方法。
【請求項2】
純水により車体を洗うことを特徴とする洗車方法において、
純水が、電気伝導率0.055〜10μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車方法。
【請求項3】
純水により車体を洗うことを特徴とする洗車方法において、
純水が、電気伝導率0.055〜1μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車方法。
【請求項4】
純水により車体を洗うことを特徴とする洗車方法において、
純水が、電気伝導率0.055〜0.5μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車方法。
【請求項5】
純水が、精密濾過膜(MF)、限外濾過膜(UF)、及び、逆浸透膜(RO)よりなる群から選択された少なくとも1種の濾過膜により、原料水を濾過して得られたものであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載した洗車方法。
【請求項6】
濾過に供する原料水が、プレコート式濾過器、及び/又は、バッグフィルターを含んで構成される濾過器により、予備的に濾過されたものであることを特徴とする請求項5に記載した洗車方法。
【請求項7】
濾過に供する原料水が、その少なくとも一部に、洗車廃水を、プレコート式濾過器、及び/又は、バッグフィルターを含んで構成される濾過器により、予備的に濾過した水を含むものであることを特徴とする、請求項6に記載した洗車方法。
【請求項8】
プレコート式濾過器が、スプリングフィルター、及び/又は、ディスクフィルターを含んで構成される濾過器であることを特徴とする請求項6又は7に記載した洗車方法。
【請求項9】
プレコート式濾過器が、珪藻土粒子と活性炭粒子を含んでなる濾過助剤をプレコートに使用するものであることを特徴とする、請求項6乃至8の何れかに記載した洗車方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載した仕上げ洗車方法。
【請求項11】
純水により車体を洗う機構を含んでなる洗車装置において、
純水が、電気伝導率0.055〜15μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車装置。
【請求項12】
純水により車体を洗う機構を含んでなる洗車装置において、
純水が、電気伝導率0.055〜10μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車装置。
【請求項13】
純水により車体を洗う機構を含んでなる洗車装置において、
純水が、電気伝導率0.055〜1μS/cm(25℃)を有する純水
であることを特徴とする洗車装置。
【請求項14】
純水により車体を洗う機構を含んでなる洗車装置において、
純水が、電気伝導率0.055〜0.5μS/cm(25℃)を有する純水であることを特徴とする洗車装置。
【請求項15】
純水が、精密濾過膜(MF)、限外濾過膜(UF)、及び、逆浸透膜(RO)よりなる群から選択された少なくとも1種の濾過膜により、原料水を濾過して得られたものであることを特徴とする請求項11乃至14の何れかに記載した洗車装置。
【請求項16】
濾過に供する原料水が、プレコート式濾過器、及び/又は、バッグフィルターを含んで構成される濾過器により、予備的に濾過されたものであることを特徴とする請求項15に記載した洗車装置。
【請求項17】
濾過に供する原料水が、その少なくとも一部に、洗車廃水を、プレコート式濾過器、及び/又は、バッグフィルターを含んで構成される濾過器により、予備的に濾過した水を含むものであることを特徴とする、請求項16に記載した洗車装置。
【請求項18】
プレコート式濾過器が、スプリングフィルター、及び/又は、ディスクフィルターを含んで構成される濾過器であることを特徴とする請求項16又は17に記載した洗車装置。
【請求項19】
プレコート式濾過器が、珪藻土粒子と活性炭粒子を含んでなる濾過助剤をプレコートに使用するものであることを特徴とする、請求項16乃至18の何れかに記載した洗車装置。
【請求項20】
請求項11乃至19の何れかに記載した仕上げ洗車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−260429(P2010−260429A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112190(P2009−112190)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(594199407)株式会社オスモ (10)
【Fターム(参考)】