説明

津波用シェルター

【課題】自由漂流中の姿勢をより安定させることができる津波用シェルターを提供する。
【解決手段】津波到来時にその流れに乗って自由漂流する津波用シェルター1は、内部に避難室を有する中空状の球体2と、前記自由漂流している状態で球体2の外周底部から下方に突出するとともに、その突出端側に錘32を有する突出体3とを備えている。突出体は、筒状に形成されているとともに内部空間の軸方向一端部が前記球体の避難室に連通している突出本体部31と、前記突出本体部の側周面に設けられているとともに前記内部空間に避難者が出入りするための扉部33とを有していることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波が発生したときに避難する津波用シェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、津波が発生したときに避難するシェルターとして、津波の流れに乗って自由漂流するシェルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のシェルターは、自由漂流中に障害物に衝突したときに破損しにくいように、略球体状に形成されている。そして、シェルター内の底部には、自由漂流中の姿勢を安定させるために、錘となるバラスト水を収容する水タンクが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−322939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の前記シェルターは、その内部に錘となる水タンクが形成されているため、シェルターの重心位置は、その全体形状である球体の中心から近い位置に配置されている。このため、前記シェルターは、自由漂流中に障害物に衝突したときにバランスを崩しやすく、シェルター内の天地が逆さまになるように回転することがある。この場合には、シェルター内の避難者は、パニック状態に陥って正常な判断をすることができなくなる危険性がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、自由漂流中の姿勢をより安定させることができる津波用シェルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の津波用シェルターは、津波到来時にその流れに乗って自由漂流する津波用シェルターであって、内部に避難室を有する中空状の球体と、前記自由漂流している状態で前記球体の外周底部から下方に突出するとともに、その突出端側に錘を有する突出体と、を備えていることを特徴としている。
【0006】
本発明によれば、自由漂流している状態で避難室を有する球体の外周底部から下方に突出するとともに、その突出端側に錘を有する突出体を備えているため、津波用シェルターの重心位置を、球体の中心から下方に離反させることができる。これにより、津波用シェルターが自由漂流中に障害物に衝突しても、球体内の避難室の天地が逆さまになるように当該球体が回転するのを抑制することができる。したがって、従来の球体内部に錘が配置される場合に比べて、安定した状態で津波用シェルターを自由漂流させることができる。
【0007】
また、前記突出体は、筒状に形成されているとともに内部空間の軸方向一端部が前記球体の避難室に連通している突出本体部と、前記突出本体部の側周面に設けられているとともに前記内部空間に避難者が出入りするための扉部とを有していることが好ましい。
この場合、球体の中心から錘を離反させるための突出本体部を、避難者が出入りするための部材として兼用することができるため、津波用シェルターの構成を簡略化でき、その製造コストを低減することができる。
【0008】
また、前記津波用シェルターは、地面上に横倒しにされた状態で、当該地面と前記球体と前記突出体との間に、前記避難室内の避難者が前記扉部を開けて外部へ脱出可能な大きさの空間が形成されていることが好ましい。
この場合、自由漂流している津波用シェルターが、津波が引いて地面上に横倒しにされた状態で着地したときに、扉部が地面と対向する位置に配置されていても、球体内の避難者が前記空間を利用して外部へ脱出することができる。
【0009】
また、前記津波用シェルターは、地面上に横倒しにされた状態で、前記球体と前記突出本体部とが接地した二点接地状態となることが好ましい。この場合、球体のみが一点接地する場合に比べて、津波用シェルターを安定した状態で接地させることができる。
【0010】
また、前記津波用シェルターは、前記球体が、前記二点接地状態を維持しながら前記突出本体部とともに回転可能であることが好ましい。この場合、津波用シェルターが地面上に横倒しにされた状態で、球体とともに突出本体部を回転させることにより、突出本体部の側周面に設けられた扉部を内部空間に出入りし易い位置へ移動させることができる。
【0011】
また、前記突出本体部の側周面には、その軸線と平行な軸線回りに前記扉部を回動可能に支持するヒンジが設けられていることが好ましい。この場合、筒状に形成された突出本体部の側周面に対して、扉部を簡単な構造で回動可能に支持することができる。
【0012】
また、前記津波用シェルターは、前記球体の避難室と前記突出本体部の内部空間との連通を遮蔽する遮蔽部材をさらに備えていることが好ましい。この場合、自由漂流中に突出本体部の内部空間が扉部等を介して浸水したときに、球体の避難室と突出本体部の内部空間との連通を遮蔽部材により遮蔽することにより、避難室が浸水するのを抑制することができる。
【0013】
また、前記突出体は、前記錘が着脱可能に取り付けられている突出本体部を有していることが好ましい。この場合、津波用シェルターを運搬する際に、錘を突出本体部から取り外すことで、津波用シェルターの運搬作業が容易となる。
【0014】
また、前記錘は、複数に分割された分割錘からなり、前記各分割錘が、前記突出本体部に対して着脱可能に取り付けられていることが好ましい。この場合、突出本体部に対して分割錘を着脱することで、錘全体の重量を調整することができる。
【0015】
また、前記突出体は、有底筒状に形成された突出本体部を有し、前記突出本体部内にバラスト水が充填されるバラスト室が形成されていることが好ましい。この場合、球体の中心から錘を離反させるための突出本体部を、バラスト水を充填するバラスト室として兼用することができるため、津波用シェルターの構成を簡略化でき、その製造コストを低減することができる。
【0016】
また、前記バラスト室に充填されたバラスト水は、前記錘を兼ねていることが好ましい。この場合、津波用シェルターの構成をさらに簡略化でき、その製造コストを低減することができる。
【0017】
また、前記突出本体部は、前記球体の材質よりも比重の大きい材質で形成されていることが好ましい。この場合、突出本体部の重量によって、津波用シェルターの重心位置を、球体の中心からさらに下方に離反させることができる。
【0018】
また、前記突出本体部は、前記球体に対して着脱可能に取り付けられていることが好ましい。この場合、津波用シェルターを運搬する際に、突出本体部を球体から取り外すことで、津波用シェルターを大きく2つに分割することができるので、津波用シェルターの運搬作業が容易となる。
【0019】
また、前記錘は、津波到来時にその流れによって前記突出体が地面上を引きずられながら離陸する程度の重さに設定されていることが好ましい。この場合、津波到来時に、突出本体部が地面上を引きずられながら離陸することにより、津波用シェルターに対して離陸方向に作用する加速度を低減することもできる。
【0020】
また、前記球体には複数の窓部が設けられていることが好ましい。この場合、球体内の避難室から窓部を介して外部の様子を視認することができるため、津波用シェルターから外部へ脱出するタイミングを容易に判断することができる。
【0021】
また、前記津波用シェルターは、不使用時に前記球体が転がり難い状態で当該球体又は前記突出体を支持する架台をさらに備えていることが好ましい。この場合、不使用時に架台によって球体又は突出体を安定した状態で支持することができる。
【0022】
また、本発明の津波用シェルターは、津波到来時にその流れに乗って自由漂流する津波用シェルターであって、内部に避難室を有する中空状の複数の球体と、前記自由漂流している状態で前記各球体の外周底部から下方に突出するとともに、その突出端側に錘を有する突出体と、前記各球体を一体的に連結する連結部材と、を備えていることを特徴としている。
本発明によれば、複数の球体同士を連結部材により連結する簡単な構造で、避難者の収容人数を増加させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の津波用シェルターによれば、自由漂流中に障害物に衝突しても、球体内の避難室の天地が逆さまになるように当該球体が回転するのを抑制することができるため、従来の球体内部に錘が配置される場合に比べて、安定した状態で津波用シェルターを自由漂流させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る津波用シェルターの側面図である。
【図2】上記津波用シェルターの平面図である。
【図3】図1のA−A矢視断面図である。
【図4】図2のB−B矢視断面図である。
【図5】呼吸装置の概略構成を示す断面図である。
【図6】図1のC−C矢視断面図である。
【図7】遮蔽部材を示す斜視図である。
【図8】津波用シェルターを地面上に横倒しにした状態を示す側面図である。
【図9】津波到来時における津波用シェルターの動きを示す説明図である。
【図10】(a)は本発明の第2の実施形態に係る津波用シェルターを示す平面図であり、(b)はその津波用シェルターの側面図である。
【図11】(a)は本発明の第3の実施形態に係る津波用シェルターを示す平面図であり、(b)はその津波用シェルターの側面図である。
【図12】(a)は本発明の第4の実施形態に係る津波用シェルターを示す平面図であり、(b)はその津波用シェルターの側面図である。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る津波用シェルターを示す断面図である。
【図14】本発明の第6の実施形態に係る津波用シェルターを示す側面図である。
【図15】本発明の第7の実施形態に係る津波用シェルターを示す側面図である。
【図16】(a)は本発明の第8の実施形態に係る津波用シェルターを示す背面図であり、(b)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る津波用シェルターの側面図であり、図2は津波用シェルターの平面図である。本実施形態の津波用シェルター1は、津波到来時にその流れに乗って自由漂流するものであり、図1は、津波用シェルター1が自由漂流している状態を示している。図1及び図2において、この津波用シェルター1は、中空状の球体2と、自由漂流している状態で球体2の外周底部から下方に突出する筒状の突出体3とを備えている。
【0026】
図3の図1のA−A矢視断面図である。図3において、前記球体2は、FRP(繊維強化プラスチック)製の複数(本実施形態では3枚)の板部材21を組み合わせて球状に形成されている。具体的には、各板部材21は、平面視において球体2を周方向均等に三分割する大きさに形成されている。隣り合う2枚の板部材21は、各板部材21の両端部において内側に折り曲げ形成された折曲部21a同士を、合成ゴム製のシール部材22を挟んで突き合わせた状態で、図示しないボルト・ナットにより連結固定されている。その連結固定部分は、図示しない化粧カバーにより覆われている。
【0027】
各板部材21は、球体2全体を補強するために、球体2の経線方向に延びる複数の第1補強部21bと、球体2の緯線方向に延びる複数の第2補強部21cとを有している。第1及び第2補強部21b,21cは、例えば断面矩形状の角パイプからなり、各板部材21の外壁側に突出しないように、各板部材21の内壁側に突出するように固定されている。なお、第1及び第2補強部21b,21cは、角パイプ以外にアングル材やハット材等を用いてもよい。また、第1及び第2補強部21b,21cは、球体2が自由漂流中に障害物等をすり抜けることができる程度に、各板部材21の外壁側に突出していてもよい。
【0028】
図4は図2のB−B矢視断面図である。図4において、球体2の内部の下側には床面23が設けられており、その上側には避難室2aが形成されている。また、床面23の下側には食料や飲料水等を貯蔵する貯蔵室2bが形成されている。床面23の中央部には避難室2aと貯蔵室2bとを連通する連通孔23aが形成されている。避難室2aには、避難者が着座する複数の座席24や、避難者が把持する複数のポール25が板部材21の内壁に固定されている。各座席24には、例えば4点式のシートベルト(図示省略)が設けられている。球体2は、その外径が1000〜2000mm(本実施形態では約2000mm)、避難室2aには1〜6人(本実施形態では約6人)の避難者を収容することができるようになっている。
【0029】
球体2の上部には、自由漂流中に球体2の外部へ脱出するための非常脱出口2cが開口形成されている。この非常脱出口2cは、球体2の上部に回動可能に設けられたハッチ蓋26により開閉されるようになっている。ハッチ蓋26は、図2及び図4に示すように、非常脱出口2cを開閉する円形の蓋本体26aと、この蓋本体26aの外側に回転可能に設けられた外ハンドル26bと、蓋本体26aの内側に回転可能に設けられた内ハンドル26cとを備えている。
【0030】
外ハンドル26b及び内ハンドル26cは、蓋本体26aを非常脱出口2cを閉鎖した状態でロック及びロック解除するものであり、外ハンドル26bは球体2の外側から、内ハンドル26cは球体2の内側である避難室2aからそれぞれロック操作及びロック解除操作を行うことができる。球体2の上部には、ハッチ蓋26が自由漂流中に障害物と干渉して破損するのを防止する防護枠27が突設されている。この防護枠27は、図2に示すように、平面視においてハッチ蓋26の外周に沿って環状に形成されている。
【0031】
図1及び図2において、球体2の上側には、複数(本実施形態では3個)の吊り上げ部材5が突設されており、この吊り上げ部材5にクレーン等のフックを引っ掛けることにより、津波用シェルター1を吊り上げて移動させることができるようになっている。これにより、津波用シェルター1を例えば図示しないトラックの荷台上に積み込んで移動させることができる。
【0032】
また、球体2の上側には、複数(本実施形態では6個)の窓部28が設けられている。この窓部28は、ポリカーボネート樹脂や強化ガラス板等の透明板材からなり、避難室2a内の避難者が球体2の外側を視認することができるようになっている。また、球体2の窓部28よりも上側には、複数の(本実施形態では12個)の通気口29が形成されている。本実施形態の通気口29は、直径が約16mmに設定されている。
【0033】
前記複数の通気口29の一部には、避難室2a内が酸欠状態になるのを防止する呼吸装置6が接続されている。図5は、この呼吸装置6の概略構成を示す断面図である。図5において、呼吸装置6は、避難室2a内の避難者が呼吸する際に、球体2の外側から吸気するとともに、球体2の外側へ呼気を排出するためのものであり、第1吸気管6aと、除水部6bと、第2吸気管6cと、マウスピース6dと、排気管6eとを備えている。
【0034】
前記第1吸気管6aは、一端が球体2の前記通気口29に接続され、他端が除水部6b内に挿通されている。除水部6bは、有底筒状に形成されており、球体2の板部材21の内壁に固定されている。除水部6bの内部には、前記通気口29から第1吸気管6aを介して外気とともに海水等の水分が取り込まれた場合に、その水分を取り除いて溜めておくことができる。除水部6b内に溜まった水分は、除水部6bの底部から下方に延びるドレン6fの途中部に設けられたバルブ6gを開放することにより、排水することができる。
【0035】
前記第2吸気管6cは、一端が除水部6bの上端に接続されており、他端がマウスピース6dに接続されている。また、排気管6eは、一端がマウスピース6dに接続され、他端が球体2の他の通気口29に接続されている。マウスピース6dは、第2吸気管6cからの吸気のみを可能とし、排気管6eへの排気のみを可能とする構造になっている。
【0036】
上記構成により、避難室2a内の避難者がマウスピース6dを口に銜えることにより、球体2の外側の空気を一の通気口29、第1吸気管6a、除水部6b、第2吸気管6cを介して吸気することができ、排気管6eを介して他の通気口29から球体2の外側へ呼気を排出することができる。したがって、避難者は、避難室2a内の空気を使用することなく呼吸することができるため、避難室2a内が自由漂流中に密室状態となった場合に、避難者が酸欠状態になるのを防止することができる。
【0037】
なお、呼吸装置6は、外気を吸気しているが、球体2内に酸素ボンベ(図示省略)を予め積んでおき、この酸素ボンベから吸気するようにしてもよい。この場合、前記酸素ボンベ内のエアを、呼吸装置6を介さずに避難室2a内に放出することもできるため、マウスピース6dを装着することができない乳幼児等の避難者も、酸欠状態を回避しながら呼吸することができる。
【0038】
図6は、図1のC−C矢視断面図である。図1及び図6において、前記突出体3は、円筒状に形成された突出本体部31と、この突出本体部31内の底部(突出端側)に設けられた錘32と、突出本体部31の側周面に設けられている扉部33とを有している。前記突出本体部31は、FRP製の複数(本実施形態では3枚)の板部材31aを組み合わせて有底円筒状に形成されている。具体的には、各板部材31aの両端部において内側に折り曲げ形成された折曲部31a1同士を、合成ゴム製のシール部材31bを挟んで突き合わせた状態で、図示しないボルト・ナットとにより固定することにより、隣り合う板部材31a同士が連結されている。その連結部分は、図示しない化粧カバーにより覆われている。
【0039】
本実施形態の突出本体部31は、その外径が球体2の外径の約1/3の長さとなるように、約700mmに設定されている。また、突出本体部31の各板部材31aは、球体2の各板部材21とともに一体形成されており、両板部材21,31aの板厚は、いずれも船舶に用いられるFRP製の板部材と同様に、9〜10mmに設定されている。なお、各板部材21,31aは、球体2を三分割するように形成されているが、二分割又は四分割以上するように形成されていてもよい。
【0040】
図4において、前記突出本体部31は、その内部空間31cの上端部(軸方向一端部)が、球体2の底部に開口形成された連通口2d及び貯蔵室2bを介して避難室2aに連通している。突出本体部31の内部には、その内部空間31cと球体2の避難室2aとの間で昇降するためのステップ31dが、板部材31aの内壁の周方向2箇所にそれぞれ固定されている。
【0041】
突出本体部31の底部は球面状に形成されており、その内部には前記錘32が図示しないボルトにより固定されている。この錘32の重さは、図1に示すように、自由漂流中における津波用シェルター1の吃水線Wから球体2の最底部までの高さHが、球体2の外径の約4/10の長さとなるように設定されている。本実施形態では、前記高さHは約800mmに設定されている。また、錘32の重さは、後述するように、津波到来時にその流れによって突出本体部31が地面上を引きずられながら離陸(図9(e)参照)する程度の重さに設定されているのが好ましい。
【0042】
図1において、前記扉部33は、津波が到達する前に津波用シェルター1に避難する際に、又は津波が引いて津波用シェルター1が地面に接地した際に、突出本体部31の内部空間31cに避難者が出入りするためのものである。この扉部33は、突出本体部31の側周面に開口形成された出入口31eを開閉するために、複数(本実施形態では3個)のヒンジ34を介して突出本体部31に回動可能に設けられている。前記ヒンジ34は、突出本体部31の側周面に設けられ、突出本体部31の軸線X1と平行な軸線Y回りに扉部33を回動可能に支持している。なお、前記軸線X1は、球体2の鉛直方向の中心線でもある。
【0043】
図6において、扉部33は、FRP製の板材によって突出本体部31の曲率と略同一の曲率で湾曲形成されており、その基端部及び先端部の各内面には、合成ゴム製のシール部材33a,33bがそれぞれ固定されている。これらのシール部材33a,33bは、扉部33が出入口31eを閉鎖したときに、板部材31aの出入口31eの縁部に内側へ凹むように形成された窪み部(リセス)31a2の外壁にそれぞれ当接するようになっている。そして、この状態での水密性能を高めるために、扉部33は図示しない固縛手段により突出本体部31に固縛される。これにより、突出本体部31の内部空間31cに海水等が浸入するのを防止することができる。また、扉部33が前記窪み部31a2に当接することにより、扉部33が突出本体部31の外側に突出することがないため、自由漂流中に扉部33が障害物に衝突して破損するのを抑制することができる。
【0044】
扉部33の先端部側には内側に凹んだ窪み部33cが形成されており、この窪み部33cに扉部33を開閉操作するための取手33dが取り付けられている。これにより、取手33dが扉部33の外側に突出することがないため、自由漂流中に取手33dが障害物に衝突して破損するのを抑制することができる。
【0045】
津波用シェルター1は、図4に示すように、球体2の避難室2aと突出本体部31の内部空間31cとの連通を遮蔽する遮蔽部材7をさらに備えている。図7は、遮蔽部材7を示す斜視図である。図7(a)において、遮蔽部材7は、球体2の貯蔵室2b内に配置されており、環状に形成された上下一対の第1フランジ部7a及び第2フランジ部7bと、両端部が第1及び第2フランジ部7a,7bにそれぞれ接続された円筒状のシート部7cとを有している。
【0046】
図4において、第1及び第2フランジ部7a,7bは金属板からなり、第2フランジ部7bは、突出本体部31の上端部に固定されている。また、第1フランジ部7aは、その外径が前記床面23の連通孔23aの直径よりも小さく形成されており、前記連通孔23aを介して貯蔵室2bと避難室2aとの間で上下移動可能となっている。
【0047】
図7において、前記シート部7cは、軟質ビニールやケブラー繊維等の防水性を有する材料により布状に形成されており、図7(a)に示すように筒状に伸ばした状態では、球体2の避難室2aと突出本体部31の内部空間31cとを連通することができる。そして、この状態から、第1フランジ部7aを図7(a)の矢印D方向に回転させながら鉛直下方に移動させると、図7(b)に示すように、シート部7cが捩られた状態となってその円形の内部空間を閉塞し、避難室2aと内部空間31cとの連通を遮蔽することができる。
【0048】
前記遮蔽部材7は、図7(b)の前記連通を遮蔽した状態で、第1フランジ部7aと第2フランジ部7bとを連結固定する固定部7dを有している。この固定部7dは、第2フランジ部7bに上下回動可能に支持された複数(本実施形態では4個)のネジ部7d1と、各ネジ部7d1の先端部に螺着された複数のナット部7d2とを有している。図7(b)の状態において、前記ネジ部7d1を上方回動させて第1フランジ部7aの外周側に形成された切欠溝7a1に嵌め込み、この状態でナット部7d2を締め付けることにより、第1フランジ部7aと第2フランジ部7bとを連結固定することができる。これにより、第1フランジ部7aの上下移動が規制される。
【0049】
図8は、津波用シェルター1を地面上に横倒しにした状態を示す側面図である。本実施形態の津波用シェルター1は、図8に示すように、不使用時は地面上に横倒しにした状態で保管されている。この状態において、津波用シェルター1は、球体2の外周部のE点と、突出本体部31の底部のF点とが接地した二点接地状態となっている。これにより、球体2及び突出本体部31は、球体2の中心線X1と地面とが交差するG点を中心として、二点接地状態を維持しながら突出本体部31とともに水平方向に回転可能となっている。
【0050】
したがって、避難者が扉部33を開けて出入口31eから出入りする際には、球体2及び突出本体部31を上記のように回転させることにより、突出本体部31の側周面に設けられた扉部33を、内部空間31cに出入りし易い位置へ移動させることができる。また、避難者が球体2のハッチ蓋26を開けて避難室2aに出入りする際には、球体2及び突出本体部31を上記のように回転させることにより、ハッチ蓋26を開閉し易い位置へ移動させることができる。
【0051】
さらに、図9(a)及び(b)に示すように、津波が到来したときに、球体2の中心線X1が津波の進行方向Zに対して直交する方向に向いている場合には、津波の流れによって球体2が前記G点を中心として約90度回転することにより、図9(c)及び(d)に示すように、前記中心線X1が津波の進行方向Zと同一方向に向くため、津波用シェルター1をスムーズに離陸させことができる。その際、津波用シェルター1は、図9(e)に示すように、突出本体部31が地面上を引きずられながら徐々に離陸するため、離陸方向に作用する加速度を低減することもできる。また、津波が引いて水位が低下すると、突出本体部31が地面上を引きずられながら徐々に着陸するため、着陸方向に作用する加速度も低減することができるとともに、津波シェルター1が引き波によって遠方へ流されるのを抑制することもできる。
【0052】
図8において、津波用シェルター1が地面に横倒しにされた状態で、当該地面と球体2と突出体3との間には、図8のハッチングで示すように、空間Sが形成されている。このため、自由漂流している津波用シェルター1が、津波が引いて図8に示すように地面上に横倒しにされた状態で着地したときに、扉部33が地面と対向するように図8の下側を向いた位置に配置されていても、球体2の避難室2a内にいる避難者が突出本体部31の内部空間31cから前記空間Sを利用して扉部33を開けて外部へ脱出することができる。その際、ハッチ蓋26を開けて外部へ脱出することもできるため、避難者は扉部33及びハッチ蓋26のうちの脱出が容易な方を適宜選択することができる。
【0053】
以上のように構成された本実施形態の津波用シェルター1によれば、自由漂流している状態で避難室2aを有する球体2の外周底部から下方に突出するとともに、その突出端側に錘32を有する突出体3を備えているため、津波用シェルター1の重心位置を、球体2の中心から下方に離反させることができる。これにより、津波用シェルター1が自由漂流中に障害物に衝突しても、球体2内の避難室2aの天地が逆さまになるように当該球体2が回転するのを抑制することができる。したがって、従来の球体2内部に錘が配置される場合に比べて、安定した状態で津波用シェルター1を自由漂流させることができる。また、球体2と突出体3とを一体形成しているため、製造コストを低減することができる。
【0054】
また、球体2の中心から錘32を離反させるための突出本体部31を、避難者が出入りするための部材として兼用することができるため、津波用シェルター1の構成を簡略化でき、その製造コストを低減することができる。
【0055】
また、地面上に横倒しにされた状態で、地面と球体2と突出体3との間に、避難者が突出本体部31の内部空間31cから扉部33を開けて外部へ脱出可能な大きさの空間Sが形成されているため、自由漂流している津波用シェルター1が、津波が引いて地面上に横倒しにされた状態で着地したときに、扉部33が地面と対向する位置に配置されていても、球体2の避難室2a内の避難者が前記空間Sを利用して外部へ脱出することができる。
【0056】
また、津波用シェルター1が地面上に横倒しにされた状態で、球体2と突出本体部31とが接地する二点接地状態となるため、球体2のみが一点接地する場合に比べて、津波用シェルター1を安定した状態で接地させることができる。
【0057】
また、球体2が前記二点接地状態を維持しながら突出本体部31とともに回転可能であるため、津波用シェルター1が地面上に横倒しにされた状態で、球体2とともに突出本体部31を回転させることにより、突出本体部31の側周面に設けられた扉部33を内部空間31cに出入りし易い位置へ移動させることができる。
【0058】
また、突出本体部31の側周面には、その軸線X1と平行な軸線Y回りに扉部33を回動可能に支持するヒンジ34が設けられているため、筒状に形成された突出本体部31の側周面に対して、扉部33を簡単な構造で回動可能に支持することができる。
【0059】
また、津波用シェルター1は、球体2の避難室2aと突出本体部31の内部空間31cとの連通を遮蔽する遮蔽部材7を備えているため、自由漂流中に突出本体部31の内部空間31cが扉部33等を介して浸水したときに、前記避難室2aと内部空間31cとの連通を遮蔽部材7により遮蔽することにより、避難室2aが浸水するのを抑制することができる。
【0060】
また、球体2には複数の窓部28が設けられているため、球体2内の避難室2aから窓部28を介して外部の様子を視認することができる。これにより、津波用シェルター1から外部へ脱出するタイミングを容易に判断することができる。
【0061】
図10の(a)は本発明の第2の実施形態に係る津波用シェルターを示す平面図であり、(b)はその津波用シェルターの側面図である。図10(a)及び(b)において、本実施形態の津波用シェルター1は、不使用時に球体2が転がり難い状態で当該球体2を支持する架台11を備えている。この架台11は、突出体3を球体2の下方に垂下させた状態で球体2を支持するものであり、平面視においてC形に形成された支持部11aと、この支持部11aから地面に向かって延びる複数(本実施形態では3本)の脚部11bとを有している。
【0062】
前記支持部11aは、その内径が突出体3の外径よりも大きく、かつ球体2の外径よりも小さく形成されており、支持部11a内に突出体3を挿通した状態で、球体2の下部に当接することにより、当該球体2を下方から支持するようになっている。前記脚部11bは、前記支持部11aの外周部に周方向等間隔に固定されており、その鉛直方向の高さは、津波シェルター1の突出本体部31の底部が地面に接地しないように、突出体3の高さよりも長く形成されている。なお、突出本体部31の底部は、地面に設置したジャッキ等により地面から離反させるようにしてもよい。
【0063】
以上、本実施形態の津波用シェルター1によれば、不使用時に架台11によって球体2を安定した状態で支持することができる。また、津波シェルター1の突出本体部31は地面上に接地することがないため、地面に溜まった雨水等により突出本体部31が腐食するのを抑制することができる。
【0064】
図11の(a)は本発明の第3の実施形態に係る津波用シェルターを示す平面図であり、(b)はその津波用シェルターの側面図である。図11(a)及び(b)において、本実施形態の津波用シェルター14は、第1の実施形態の津波用シェルター1を2個連結したものであり、10人の避難者を収容することができるようになっている。津波用シェルター14には、2個の球体2を連結する連結索(連結部材)15を備えている。
【0065】
この連結索15は、複数のロープを用いてハシゴ状に形成されており、両球体2を跨いで巻き付けられている。具体的には、この連結索15は、無端状に形成された一対の主索15aと、両主索15aに掛け渡されるとともに周方向等間隔に配置された複数の補助索15bと、主索15aを締め込む締め込み索15cとによって構成されている。前記主索15aは、両球体2をその鉛直方向に延びる中心線X1が平行になるように隣接配置させた状態で、両球体2の水平方向に延びる中心線X2と平行に、両球体2を跨ぐように巻き付けられている。前記締め込み索15cは、上記のように巻き付けられた主索15aを両球体2の間で締め込むことにより、両球体2を強固に連結するようになっている。
【0066】
本実施形態の津波用シェルター14によれば、2個の球体2同士を連結索15により連結する簡単な構造で、避難者の収容人数を増加させることができる。また、不使用時には、連結索15による両球体2の連結を解除することにより、津波用シェルター14の各構成部材をトラックの荷台上に搭載できる大きさに分解することができるため、津波用シェルター14の搬送を容易に行うことができる。
【0067】
図12の(a)は本発明の第4の実施形態に係る津波用シェルターを示す平面図であり、(b)はその津波用シェルターの側面図である。図12(a)及び(b)において、本実施形態の津波用シェルター18は、第1の実施形態の津波用シェルター1を3個連結したものであり、15人の避難者を収容することができるようになっている。津波用シェルター18には、第3の実施形態における連結索15を用いて、3個の球体2を各中心線X1が各球体2の上方で交差するように互いに隣接配置させた状態で、図示のように連結するようになっている。
【0068】
本実施形態の津波用シェルター18によれば、3個の球体2同士を連結索15により連結する簡単な構造で、避難者の収容人数をさらに増加させることができる。また、不使用時には、連結索15による球体2同士の連結を解除することにより、津波用シェルター18の各構成部材をトラックの荷台上に搭載できる大きさに分解することができるため、津波用シェルター18の搬送を容易に行うことができる。さらに、津波用シェルター18は、図12(b)の状態で自立するため、不使用時に支持するための架台が不要になる。
【0069】
図13は、本発明の第5の実施形態に係る津波用シェルターを示す断面図である。図13において、本実施形態の津波用シェルター1は、第1の実施形態の津波用シェルター1の変形例を示すものであり、第1の実施形態の津波用シェルター1よりも製造コストを低減するために、球体2内の構成及び突出体3の構成を簡略化している。具体的には、本実施形態の津波用シェルター1は、球体2と、この球体2に対して着脱可能に取り付けられた突出体3とを備えており、避難者は球体2のハッチ蓋26を開閉することにより球体2内に出入りするようになっている。
【0070】
球体2は、第1の実施形態と同様に、FRP(繊維強化プラスチック)製の複数(本実施形態では3枚)の板部材21を組み合わせて球状に形成されている。球体2の内部には、床面23の上側に避難室2aが形成され、床面23の下側にバラスト水が充填される第1バラスト室2eが形成されている。避難室2a内には、避難者が床面23上に座った状態で腰が浮かないように支持する腰ベルト41が床面23に設けられている。また、避難室2a内には、床面23上に座った避難者が把持する複数のポール25が、図13の上下方向に対して傾斜した状態で、板部材21の内壁に固定されている。
【0071】
さらに、避難室2a内には、避難者が床面23上に座った状態で、例えば避難者の頭部や胴部をその左右両側から挟み込んで保護するためのプロテクタ(図示省略)が、板部材21の内壁に取り付けられている。球体2の外径は、運搬時にトラックの荷台上に球体2を積み込めるように、その荷台の幅寸法以下に設定されているのが好ましい。本実施形態の球体2の外径は、軽トラックの荷台上に球体2を積み込めるように、約1400mmに設定されており、避難室2aには3人の避難者を収容することができるようになっている。
【0072】
突出体3は、球体2に対して着脱可能に取り付けられた突出本体部31と、この突出本体部31の底部31fに外側に露出した状態で着脱可能に取り付けられた錘32とを有している。突出本体部31の材質は、球体2の材質(FRP)よりも比重の大きい材質で形成されていることが好ましい。本実施形態における突出本体部31は、その材質が鉄からなり、例えばSUS430の鉄クロム板を用いて有底円筒状に形成されている。突出本体部31は、その開口側端部に球体2の外周底部の形状に合わせて椀状に形成された取付部31gを有しており、この取付部31gは、球体2の外周底部に沿わせた状態で、複数の取付ボルト42によって球体2に固定されている。前記取付部31gは、複数のリブ31hによって補強されている。
【0073】
突出本体部31の内部空間31cは、バラスト水が充填される第2バラスト室とされており、突出本体部31の側周面には第2バラスト室31cにバラスト水を注入及び排出するための貫通孔31iが厚さ方向に貫通して形成されている。この貫通孔31iには、当該貫通孔31iを開閉するプラグ(図示省略)が設けられている。本実施形態の突出本体部31は、その外径が球体2の外径の約1/3の長さに設定され、軸方向の長さが700〜750mmに設定されている。
【0074】
錘32は、複数に分割された分割錘32aによって構成されている。各分割錘32aは、例えば鉄板によって円板状に形成されており、各分割錘32aを図13の上下方向に積層することにより、全体として半球状に形成されている。このように錘32は、全体として半球状に形成されているため、突出本体部31の外側に設けられていても、自由漂流中に障害物に引っ掛かるのを抑制することができる。
【0075】
突出本体部31の底部31fには、固定ボルト43のねじ部43bが外側(図13の下側)に突出した状態で、当該固定ボルト43の頭部43aが溶接等により固定されている。固定ボルト43のねじ部43bには、各分割錘32aの中心部に貫通形成された挿通孔32a1が挿通された状態で、ナット44が締め付けられている。これにより、ナット44を緩めてねじ部43bから取り外すことで、各分割錘32aを突出本体部31に対して容易に着脱することができる。本実施形態のその他の構成については第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0076】
本実施形態の津波用シェルター1によれば、錘32が突出本体部31に対して着脱可能に取り付けられているため、津波用シェルター1を運搬する際に、錘32を突出本体部31から取り外すことで、津波用シェルター1の運搬作業が容易となる。
また、錘32は、複数に分割された分割錘32aからなり、各分割錘32aが、突出本体部31に対して着脱可能に取り付けられているため、突出本体部31に対して分割錘32aを着脱することにより、錘32全体の重量を調整することができる。
【0077】
また、突出本体部31内にバラスト水が充填される第2バラスト室31cが形成されているため、球体2の中心から錘32を離反させるための突出本体部31を、バラスト水が充填されるバラスト室として兼用することができるため、津波用シェルター1の構成を簡略化でき、その製造コストを低減することができる。
また、突出本体部31が、球体2の材質よりも比重の大きい材質で形成されているため、突出本体部31の重量によって、津波用シェルター1の重心位置を、球体2の中心からさらに下方に離反させることができる。
また、突出本体部31は、球体2に対して着脱可能に取り付けられているため、津波用シェルター1を運搬する際に、突出本体部31を球体2から取り外して分割することにより、津波用シェルター1の運搬作業が容易となる。
【0078】
図14は、本発明の第6の実施形態に係る津波用シェルターを示す断面図である。図14において、本実施形態の津波用シェルター1は、第5の実施形態の津波用シェルター1の変形例を示すものであり、突出体3内の第2バラスト室31cに充填されたバラスト水(図14のハッチング部)が、錘32を兼ねている。したがって、バラスト水の充填量を調整することで、錘32の重量を調整することができる。本実施形態のその他の構成については第5の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0079】
本実施形態の津波用シェルター1によれば、突出体3内の第2バラスト室31cに充填されたバラスト水が、錘32を兼ねているため、津波用シェルター1の構成をさらに簡略化でき、その製造コストを低減することができる。
【0080】
図15は、本発明の第7の実施形態に係る津波用シェルターを示す断面図である。図15において、本実施形態の津波用シェルター1は、第5の実施形態の津波用シェルター1の変形例を示すものであり、突出体3の突出本体部31及び錘32の構成が異なる点で、第5の実施形態と相違する。本実施形態の突出本体部31は、円柱状に形成された中実体31jと、中実体31jの軸方向一端部に固定された取付部31gとを有している。中実体31jの材質は、球体2の材質(FRP)よりも比重の大きい材質である鉄からなり、その外径は球体2の外径の1/3以下の長さ(本実施形態では約100mm)となるように設定されている。
【0081】
中実体31jの軸方向他端部には、複数に分割された分割錘32aによって構成された錘32が着脱可能に取り付けられている。各分割錘32aは、例えば鉄板によって円板状に形成されており、各分割錘32aを図15の上下方向に積層することにより、全体として扁平球状に形成されている。このように錘32は、全体として扁平球状に形成されているため、自由漂流中に障害物に引っ掛かるのを抑制することができる。
【0082】
各分割錘32aの中心部には、突出本体部31の中実体31jに挿通される挿通孔32a1が貫通形成されており、中実体31jに挿通された各分割錘32aは、一対のストッパピン61,62によって中実体31jに固定されている。各ストッパピン61,62は、中実体31jに挿通された錘32の上側及び下側において、中実体31jの径方向に貫通形成されたピン孔31kに着脱可能に挿通されている。これにより、下側のストッパピン62をピン孔31kから取り外すことで、各分割錘32aを突出本体部31に対して容易に着脱することができる。本実施形態のその他の構成については第5の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0083】
本実施形態の津波用シェルター1によれば、突出本体部31は中実体31jを有しているため、その加工を容易に行うことができる。したがって、津波用シェルター1の製造コストをさらに低減することができる。
【0084】
図16の(a)は本発明の第8の実施形態に係る津波用シェルターを示す背面図であり、(b)はその側面図である。図16(a)及び(b)において、本実施形態の津波用シェルター1は、第2の実施形態の津波用シェルター1の変形例を示すものであり、架台11の構成が異なる点で、第2の実施形態と相違する。本実施形態の架台11は、不使用時に津波用シェルター1を地面上に横倒しにした状態で突出体3を支持するものであり、地面上に載置された架台本体11cと、この架台本体11cに突設された一対の規制部11dとによって構成されている。
【0085】
架台本体11cは、例えば側面視において台形状に形成された矩形体からなり、その上面に突出本体部31の側周面が載置されている。架台本体11cの高さは、その上面に突出本体部31が載置された状態で、軸線X1が略水平となるように設定されている。各規制部11dは、架台本体11cの上面において図16(a)の左右両端部にそれぞれ突設されており、両規制部11dの間に突出本体部31が載置されている。これにより、突出本体部31が規制部11dに当接することにより、突出本体部31が架台本体11cの上面から図16(a)の左右両側に転がり落ちるのを規制することができる。その結果、球体2が地面上を転がるのを抑制することができる。
【0086】
本実施形態の津波用シェルター1によれば、不使用時に球体2が転がり難い状態で突出体3を支持する架台11を備えているため、不使用時に架台11によって安定した状態で支持することができる。また、不使用時に津波用シェルター1は地面上に横倒しにされた状態であるため、球体2のハッチ蓋26を地面から低い位置で開閉することができる。したがって、球体2内への出入りを容易に行うことができる。特に、本実施形態の架台11は、上述の第5〜第7の実施形態に示すように、突出体3に扉部を有しない場合であって、かつ球体2のハッチ蓋26を開閉して球体2内に出入りする場合に有効である。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の突出本体部31は、円筒状に形成されているが、角筒状に形成されていてもよい。また、第3及び第4の実施形態における連結部材は、ロープ(連結索15)により構成されているが、ワイヤやチェーン等の他の部材により構成されていてもよい。また、第4の実施形態では、3個の球体2を環状に配置した状態で連結しているが、各球体2を第3の実施形態のように直列に連結してもよい。また、連結部材は、球体2を3個まで連結するようになっているが、球体2を4個以上連結するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1,14,18 津波用シェルター
2 球体
2a 避難室
3 突出体
7 遮蔽部材
11 架台
15 連結索(連結部材)
28 窓部
31 突出本体部
31c 内部空間
32 錘
32a 分割錘
33 扉部
34 ヒンジ
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
津波到来時にその流れに乗って自由漂流する津波用シェルターであって、
内部に避難室を有する中空状の球体と、
前記自由漂流している状態で前記球体の外周底部から下方に突出するとともに、その突出端側に錘を有する突出体と、を備えていることを特徴とする津波用シェルター。
【請求項2】
前記突出体は、筒状に形成されているとともに内部空間の軸方向一端部が前記球体の避難室に連通している突出本体部と、前記突出本体部の側周面に設けられているとともに前記内部空間に避難者が出入りするための扉部とを有している請求項1に記載の津波用シェルター。
【請求項3】
地面上に横倒しにされた状態で、当該地面と前記球体と前記突出体との間に、前記避難室内の避難者が前記扉部を開けて外部へ脱出可能な大きさの空間が形成されている請求項2に記載の津波用シェルター。
【請求項4】
地面上に横倒しにされた状態で、前記球体と前記突出本体部とが接地した二点接地状態となる請求項2又は3に記載の津波用シェルター。
【請求項5】
前記球体が、前記二点接地状態を維持しながら前記突出本体部とともに回転可能である請求項4に記載の津波用シェルター。
【請求項6】
前記突出本体部の側周面には、その軸線と平行な軸線回りに前記扉部を回動可能に支持するヒンジが設けられている請求項2〜5のいずれか一項に記載の津波用シェルター。
【請求項7】
前記球体の避難室と前記突出本体部の内部空間との連通を遮蔽する遮蔽部材をさらに備えている請求項2〜6のいずれか一項に記載の津波用シェルター。
【請求項8】
前記突出体は、前記錘が着脱可能に取り付けられている突出本体部を有している請求項1に記載の津波用シェルター。
【請求項9】
前記錘は、複数に分割された分割錘からなり、
前記各分割錘が、前記突出本体部に対して着脱可能に取り付けられている請求項8に記載の津波用シェルター。
【請求項10】
前記突出体は、有底筒状に形成された突出本体部を有し、
前記突出本体部内にバラスト水が充填されるバラスト室が形成されている請求項1に記載の津波用シェルター。
【請求項11】
前記バラスト室に充填されたバラスト水が、前記錘を兼ねている請求項10に記載の津波用シェルター。
【請求項12】
前記突出本体部が、前記球体の材質よりも比重の大きい材質で形成されている請求項2〜11のいずれか一項に記載の津波用シェルター。
【請求項13】
前記突出本体部は、前記球体に対して着脱可能に取り付けられている請求項2〜12のいずれか一項に記載の津波用シェルター。
【請求項14】
前記錘は、津波到来時にその流れによって前記突出体が地面上を引きずられながら離陸する程度の重さに設定されている請求項1〜13のいずれか一項に記載の津波用シェルター。
【請求項15】
前記球体には複数の窓部が設けられている請求項1〜14のいずれか一項に記載の津波用シェルター。
【請求項16】
不使用時に前記球体が転がり難い状態で当該球体又は前記突出体を支持する架台をさらに備えている請求項1〜15のいずれか一項に記載の津波用シェルター。
【請求項17】
津波到来時にその流れに乗って自由漂流する津波用シェルターであって、
内部に避難室を有する中空状の複数の球体と、
前記自由漂流している状態で前記各球体の外周底部から下方に突出するとともに、その突出端側に錘を有する突出体と、
前記各球体を一体的に連結する連結部材と、を備えていることを特徴とする津波用シェルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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