活動に基づく自動的神経性刺激変調
一実施形態は、活動を感知し、感知された活動に基づいて神経性刺激を自動的に制御する。また、一実施形態は、感知された活動を使用して、安静の期間および運動の期間を判定し、そして、安静中に神経性刺激を印加し、運動中に神経性刺激を撤回する。神経性刺激を提供するためのシステムについての一実施形態は、活動を感知し、活動を示す信号を提供する、活動モニタと、神経刺激装置とを備える。神経刺激装置は、神経性刺激療法を提供するように適合される神経性刺激信号を提供する、パルス発生器を含み、活動を示す信号を受信し、活動を示す信号に基づいて神経性刺激信号を変調して神経性刺激療法を変更する、変調器をさらに含む。他の実施形態は、本明細書において提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本願は、米国特許出願第11/558,083号(2006年11月9日出願)に基づく優先権を主張するものであり、この出願は、その全体を参考として本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本願は、概して、埋込型医療機器に関し、より具体的には、活動に基づいて神経性刺激を自動的に変調することに関する。
【背景技術】
【0003】
内科的治療法を送達するために、心臓刺激装置等の慢性電気刺激装置を埋め込むことが知られている。心臓刺激装置の実施例は、ペースメーカー等の埋込型心調律管理(CRM)機器、埋込型細動除去器(ICD)、ならびにペーシングおよび除細動機能を果たすことが可能な埋込型機器を含む。
【0004】
CRM機器は、心調律の障害を治療するために、選択された心腔に電気刺激を提供する埋込型機器である。埋込型ペースメーカーは、例えば、タイミングの合ったペーシングパルスで心臓のペースを保つCRM機器である。適切に機能すれば、ペースメーカーは、最小心拍数を実施することによって代謝要求を満たすために、適切な調律で自らペースを保つことができない心臓を補う。一部のCRM機器は、収縮を協調させるために、心臓の異なる領域に送達されるペーシングパルスを同期化する。協調した収縮は、十分な心拍出量を提供しながら、心臓が効率的に拍出することを可能にする。
【0005】
心不全とは、心臓機能が、末梢組織の代謝要求を満たすのに十分なレベルを下回り得る正常以下の心拍出量を引き起こす、臨床的症候群を指す。心不全は、付随する静脈および肺のうっ血によるうっ血性心不全(CHF)として現れる場合がある。心不全は、虚血性心疾患等の種々の病因によるものとなり得る。
【0006】
高血圧症は、心疾患および他の関連心臓共存疾患の原因である。高血圧症は、血管が収縮すると発生する。結果として、心臓がより激しく動き、より高い血圧で血流を維持し、それが心不全の一因となり得る。大部分の一般人口、ならびにペースメーカーまたは除細動器を埋め込まれた大部分の患者は、高血圧症に罹患している。血圧および高血圧症を低減することができれば、この集団にとって長期死亡率および生活の質を改善することができる。高血圧症に罹患している多くの患者は、生活様式の変化および血圧降下剤に関係する治療等の治療に反応しない。
【0007】
圧受容領域または分野は、血圧の変化等の圧力の変化を感知することが可能である。圧受容器領域は、本明細書では圧受容器と呼ばれ、概して、圧力変化の任意の感覚器を含む。例えば、圧受容器は、求心性神経を含み、さらに、内側からの圧力上昇に起因する壁の伸張に敏感であり、圧力を低減する傾向がある中枢性反射機構の受容器官として機能する、感覚神経終末を含む。圧反射は、負のフィードバックシステムとして機能し、圧受容器の刺激によって誘起される反射機構に関する。圧力上昇は血管を伸張させ、それは順に、血管壁中の圧受容器を活性化する。圧受容器の活性化は、動脈壁の内圧および伸張を通して自然に発生し、交感神経活動(SNA)の圧反射抑制および全身動脈圧の低減を引き起こす。圧受容器活動の増加は、末梢血管抵抗を減少させることによって血圧を低減する、SNAの低減を誘発する。
【0008】
圧受容器から通じる求心性神経幹を刺激するという一般概念が知られている。例えば、直接電気刺激が迷走神経および頸動脈洞に印加されている。研究は、頸動脈洞神経の電気刺激が実験的高血圧症の低減をもたらし、頸動脈洞圧受容器領域への直接電気刺激が自ら実験的高血圧症の反射性低減を引き起こすことを示している。
【0009】
そうでなければ生活様式の変化および血圧降下剤を伴う治療法に反応しない患者の高血圧症を治療し、場合により他の患者の薬物依存を低減するために、電気システムが提案されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本主題の種々の側面および実施形態は、神経性刺激を自動的に変調するために、活動に関する少なくとも1つのパラメータを使用する。本書は、神経性刺激の一実施例として、圧反射刺激について議論する。当業者であれば、本開示を熟読および理解することにより、活動に基づいて他の種類の神経性刺激を変調できることを理解するであろう。
【0011】
神経性刺激を提供するためのシステムのある実施形態は、活動を感知し、活動を示す信号を提供する、活動モニタと、神経刺激装置とを備える。神経刺激装置は、神経性刺激療法を提供するように構成される神経性刺激信号を提供する、パルス発生器を含み、活動を示す前記信号を受信し、活動を示す信号に基づいて神経性刺激信号を変調して神経性刺激療法を変更する、変調器をさらに含む。
【0012】
神経刺激装置のある実施形態は、神経性刺激療法を提供するように構成される神経性刺激信号を提供する、埋込型パルス発生器と、神経性刺激療法の強度を変更するように、活動を示す信号に基づいて神経性刺激信号を変調するための手段とを備える。
【0013】
神経性刺激を提供するための方法のある実施形態によれば、活動が感知され、感知された活動に基づいて神経性刺激が自動的に制御される。ある実施形態は、感知された活動を使用して、安静の期間および運動の期間を判定し、安静中に神経性刺激を印加し、運動中に神経性刺激を撤回する。
【0014】
この課題を解決するための手段は、本出願の教示の一部の概説であり、本主題の排他的または包括的な扱いとなることを目的としない。本主題についてのさらなる詳細は、発明を実施するための形態および添付の請求項にある。それぞれが限定的な意味で理解されるものではない、次の発明を実施するための形態を熟読および理解し、その一部を形成する図面を参照することによって、他の側面が当業者にとって明白となるであろう。本発明の範囲は、添付の請求項およびそれらの同等物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aおよび1Bは、末梢血管制御のための神経機構を図示する。
【図1B】図1Aおよび1Bは、末梢血管制御のための神経機構を図示する。
【図2A】図2A−2Cは、心臓を図示する。
【図2B】図2A−2Cは、心臓を図示する。
【図2C】図2A−2Cは、心臓を図示する。
【図3】図3は、頸動脈洞および大動脈弓の領域中の圧受容器および求心性神経を図示する。
【図4】図4は、肺動脈の中および周囲の圧受容器を図示する。
【図5】図5は、大動脈弓、動脈管索、および肺動脈幹中の圧受容器域を図示する。
【図6】図6は、圧反射が刺激された時の呼吸と血圧の既知の関係を図示する。
【図7】図7は、断続的頸動脈神経刺激の6ヶ月間の高血圧症イヌにおける、頸動脈神経刺激への血圧反応を図示する。
【図8】図8は、本主題の種々の実施形態による、埋込型医療機器(IMD)およびプログラマを含むシステムを図示する。
【図9】図9は、本主題の種々の実施形態による、図8のシステムで示されるような埋込型医療機器(IMD)を図示する。
【図10A】図10A−10Cは、本主題の種々の実施形態による、統合圧力センサ(IPS)を伴う圧受容器刺激リードを図示する。
【図10B】図10A−10Cは、本主題の種々の実施形態による、統合圧力センサ(IPS)を伴う圧受容器刺激リードを図示する。
【図10C】図10A−10Cは、本主題の種々の実施形態による、統合圧力センサ(IPS)を伴う圧受容器刺激リードを図示する。
【図11】図11は、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)部品および心調律管理(CRM)部品を有する、図8に示されるような埋込型医療機器(IMD)を図示する。
【図12】図12は、本主題の種々の実施形態による、プログラマ、埋込型神経刺激(NS)機器、および埋込型心調律管理(CRM)機器を含むシステムを図示する。
【図13】図13は、本主題の種々の実施形態による、図12のシステムで示されるような埋込型神経刺激(NS)機器を図示する。
【図14】図14は、本主題の種々の実施形態による、図12のシステムで示されるような埋込型心調律管理(CRM)機器を図示する。
【図15】図15は、本主題の種々の実施形態による、図8および12のシステムで図示されるようなプログラマ、または埋込型医療機器と通信する他の外部機器を図示する。
【図16A】図16A−16Dは、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)機器からの電気刺激と心調律管理(CRM)機器による感知との間の干渉を防ぐシステムおよび方法を図示する。
【図16B】図16A−16Dは、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)機器からの電気刺激と心調律管理(CRM)機器による感知との間の干渉を防ぐシステムおよび方法を図示する。
【図16C】図16A−16Dは、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)機器からの電気刺激と心調律管理(CRM)機器による感知との間の干渉を防ぐシステムおよび方法を図示する。
【図16D】図16A−16Dは、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)機器からの電気刺激と心調律管理(CRM)機器による感知との間の干渉を防ぐシステムおよび方法を図示する。
【図17】図17は、本主題の種々の実施形態による、圧反射刺激等の神経性刺激を変調するシステムを図示する。
【図18A】図18A−18Eは、本主題の種々の実施形態による、活動パラメータに基づいて圧受容器刺激等の神経性刺激を変調するための方法を図示する。
【図18B】図18A−18Eは、本主題の種々の実施形態による、活動パラメータに基づいて圧受容器刺激等の神経性刺激を変調するための方法を図示する。
【図18C】図18A−18Eは、本主題の種々の実施形態による、活動パラメータに基づいて圧受容器刺激等の神経性刺激を変調するための方法を図示する。
【図18D】図18A−18Eは、本主題の種々の実施形態による、活動パラメータに基づいて圧受容器刺激等の神経性刺激を変調するための方法を図示する。
【図18E】図18A−18Eは、本主題の種々の実施形態による、活動パラメータに基づいて圧受容器刺激等の神経性刺激を変調するための方法を図示する。
【図19A】図19A−19Bは、本主題の種々の実施形態による、呼吸パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。
【図19B】図19A−19Bは、本主題の種々の実施形態による、呼吸パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。
【図20A】図20A−20Eは、概日リズムを図示する。
【図20B】図20A−20Eは、概日リズムを図示する。
【図20C】図20A−20Eは、概日リズムを図示する。
【図20D】図20A−20Eは、概日リズムを図示する。
【図20E】図20A−20Eは、概日リズムを図示する。
【図21】図21は、本主題の種々の実施形態による、概日リズムに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。
【図22A】図22A−22Bは、本主題の種々の実施形態による、心拍出量パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。
【図22B】図22A−22Bは、本主題の種々の実施形態による、心拍出量パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。
【図23】図23は、本主題の種々の実施形態による、硬化を逆再形成するように圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。
【図24A】図24A−24Bは、本主題の種々の実施形態による、心筋梗塞を検出し、検出した心筋梗塞に応じて圧力ペーシングを行うシステムおよび方法を図示する。
【図24B】図24A−24Bは、本主題の種々の実施形態による、心筋梗塞を検出し、検出した心筋梗塞に応じて圧力ペーシングを行うシステムおよび方法を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本主題の次の発明を実施するための形態は、例証として、本主題を実行することができる具体的な側面および実施形態を示す、添付図面を参照する。当業者が本主題を実践することが可能となるように、これらの実施形態を十分に詳細に説明する。他の実施形態を利用してもよく、かつ本主題の範囲を逸脱しない限り、構造的、理論的、および電気的な変更を行ってもよい。本開示における「ある」、「1つの」、または「種々の」実施形態に対する言及は、必ずしも同じ実施形態を指さず、そのような言及は、2つ以上の実施形態を検討する。したがって、次の発明を実施するための形態は、限定的な意味で理解されるものではなく、範囲は、添付の請求項のみによって、そのような請求項が享受できる法的同等物の全範囲とともに、定義される。
【0017】
(高血圧症、圧反射、心不全、および心臓再造形)
読者が本開示を理解することを補助するために、高血圧症および圧受容器に関する生理機能の簡潔な考察を提供する。この簡潔な考察は、高血圧症、自律神経系、および圧反射を紹介する。
【0018】
高血圧症は、心疾患および他の関連する心臓共存疾患の原因である。高血圧症は、概して、心臓血管損傷または他の有害な結果を誘発する可能性があるレベルへの全身動脈血圧の一過性のまたは持続的な上昇等の、高い血圧に関する。高血圧症は、140mmHg以上の収縮期血圧、または90mmHg以上の拡張期血圧として任意に定義されている。高血圧症は、血管が収縮すると発生する。結果として、心臓がより激しく動き、より高い血圧で血流を維持する。制御されていない高血圧症の結果は、網膜血管疾患および発作、左心室肥大および不全、心筋梗塞、解離性動脈瘤、ならびに腎血管性疾患を含むが、それらに限定されない。
【0019】
自律神経系(ANS)が「不随意」器官を調節する一方で、随意(骨格)筋の収縮は、体性運動神経によって制御される。不随意器官の例は、呼吸器官および消化器官を含み、また、血管および心臓も含む。しばしば、ANSは、不随意の反射的な方法で機能して、例えば、腺を調節し、皮膚、目、胃、腸、および膀胱の筋肉を調節し、心筋および血管の周囲の筋肉を調節する。
【0020】
ANSは、交感神経系および副交感神経系を含む。交感神経系は、緊張時および緊急時に対する「闘争または逃走反応」と連携している。いくつかある作用の中で、特に、「闘争または逃走反応」は、血圧および心拍数を増加させて骨格筋血流量を増加させ、消化を減少させて、「闘争または逃走」に対するエネルギーを提供する。副交感神経系は、弛緩および「安静または消化反応」と連携し、それはいくつかある作用の中で特に、血圧および心拍数を減少させ、消化を増加させてエネルギーを節約する。ANSは、正常な内部機能を維持し、体性神経系と連動する。
【0021】
種々の実施形態は、血管拡張および血管収縮を含む、心拍数および血圧に対してANSが及ぼす作用に言及する。心拍および力は、交感神経系が刺激されると増加させられ、交感神経系が抑制される(副交感神経系が刺激される)と減少させられる。図1Aおよび1Bは、末梢血管制御のための神経機構を図示する。図1Aは概して、血管運動神経中枢への求心性神経を図示する。求心性神経は、神経中枢に向かってインパルスを伝える。血管運動神経中枢は、血管を拡張および収縮して血管のサイズを制御する神経に関する。図1Bは概して、血管運動神経中枢からの遠心性神経を図示する。遠心性神経は、神経中枢から離れる方向にインパルスを伝える。
【0022】
交感神経系および副交感神経系を刺激すると、心拍数および血圧以外の作用を及ぼすことができる。例えば、交感神経系を刺激すると、瞳孔を拡張し、唾液および粘液の産生を低減し、気管支筋を弛緩し、胃の不随意収縮(蠕動)の連続波および胃の運動性を低減し、肝臓によるグリコーゲンのグルコースへの変換を増加し、腎臓による尿分泌を減少し、膀胱の壁を弛緩して括約筋を閉じる。副交感神経系を刺激する(交感神経系を抑制する)と、瞳孔を収縮し、唾液および粘液の産生を増加し、気管支筋を収縮し、胃および大腸における分泌物および運動性を増加し、小腸における消化を増加し、尿分泌を増加し、膀胱の壁を収縮して括約筋を弛緩する。交感神経系および副交感神経系と関連する機能は多く、互いに複雑に統合することができる。したがって、1つの生理系で血管拡張等の所望の反応を達成する、交感神経系および/副交感神経系の無差別刺激はまた、他の生理系で望ましくない反応をもたらす場合がある。
【0023】
圧反射は、圧受容器の刺激によって誘起される反射である。圧受容器は、心耳、心臓脂肪体、大静脈、大動脈弓、および頸動脈洞の壁の中の感覚神経終末等の、圧力変化の任意の感覚器を含み、それは、内側からの圧力上昇に起因する壁の伸張に敏感であり、その圧力を低減する傾向がある中枢性反射機構の受容器官として機能する。加えて、圧反射経路は、感覚神経終末から通じる、迷走神経、大動脈神経、および頸動脈神経等の求心性神経幹を含む。圧反射刺激は、交感神経活動を抑制し(副交感神経系を刺激する)、末梢血管抵抗および心筋収縮能を減少させることによって全身動脈圧を減少させる。圧受容器は、動脈壁の内圧および伸張によって自然に刺激される。
【0024】
本主題の一部の側面は、神経系を無差別に刺激することの望ましくない作用を低減しながら、所望の反応(例えば、高血圧症の低減)を刺激する目的で、求心性神経幹を刺激するよりもむしろ、動脈壁の中の特定神経終末を局所的に刺激する。例えば、一部の実施形態においては、肺動脈中の圧受容器部位を刺激する。本主題の一部の実施形態は、大動脈、心腔、および心臓の脂肪体の中の圧受容器部位または神経終末のいずれかを刺激するステップを伴い、本主題の一部の実施形態は、迷走神経、頸動脈神経、および大動脈神経等の求心性神経幹を刺激するステップを伴う。一部の実施形態は、カフ電極を使用して求心性神経幹を刺激し、一部の実施形態は、神経に最も近い血管中に配置される血管内リードを使用して求心性神経幹を刺激するために、電気刺激が血管壁を通過して求心性神経幹を刺激する。
【0025】
図2A−2Cは、心臓を図示する。図2Aに図示されるように、心臓201は、上大静脈202、大動脈弓203、および肺動脈204を含み、図3−5の図解との文脈上の関係を提供することに有用である。下記でさらに詳細に論じられるように、肺動脈204は、圧受容器を含む。リードは、心臓ペースメーカーリードと同様に、末梢静脈を通り、三尖弁を通り、心臓の右心室の中へと(図中で明示せず)、血管内に挿入されて、右心室から肺動脈弁を通って肺動脈の中へ進み続けることが可能である。肺動脈および大動脈の一部は、互いに近接している。種々の実施形態は、肺動脈に血管内で配置されるリードを使用して、大動脈中の圧受容器を刺激する。したがって、本主題の種々の側面によれば、圧反射は、肺動脈の中へ血管内に挿入される少なくとも1つの電極によって、肺動脈の中または周囲において刺激される。あるいは、圧力感知性能があるか、またはない、無線刺激機器が、カテーテルを介して肺動脈の中に配置されてもよい。刺激および/または刺激のためのエネルギーの制御は、超音波、電磁、またはそれらの組み合わせを介して、別の埋込型または外部機器によって供給されてもよい。本主題の側面は、圧反射刺激装置を肺動脈の中の血管内に埋め込む、比較的非侵襲性の外科技術を提供する。
【0026】
図2B−2Cは、それぞれ心臓の右側および左側を図示し、圧受容器部位として機能する神経終末を有する心臓脂肪体をさらに図示する。図2Bは、右心房267、右心室268、洞房結節269、上大静脈202、下大静脈270、大動脈271、右肺静脈272、右肺動脈273を図示する。図2Bはまた、上大静脈と大動脈との間の心臓脂肪体274も図示する。心臓脂肪体274中の圧受容器神経終末は、一部の実施形態では、脂肪体にねじ込まれる電極を使用して刺激され、一部の実施形態では、例えば、右肺動脈または上大静脈等の血管中の脂肪体に近接して配置される血管内供給リードを使用して刺激される。図2Cは、左心房275、左心室276、右心房267、右心室268、上大静脈202、下大静脈270、大動脈271、右肺静脈272、左肺静脈277、右肺動脈273、および冠状静脈洞278を図示する。図2Cはまた、右心静脈の最も近くに位置する心臓脂肪体279、ならびに下大静脈および左心房の最も近くに位置する心臓脂肪体280も図示する。脂肪体279中の圧受容器神経終末は、一部の実施形態では、脂肪体279にねじ込まれる電極を使用して刺激され、一部の実施形態では、例えば、右肺動脈273または右肺静脈272等の血管中の脂肪体に近接して配置される血管内供給リードを使用して刺激される。脂肪体280中の圧受容器は、一部の実施形態では、脂肪体にねじ込まれる電極を使用して刺激され、一部の実施形態では、例えば、下大静脈270または冠状静脈洞等の血管中の脂肪体に近接して配置される血管内供給リード、または左心房275中のリードを使用して刺激される。
【0027】
図3は、頸動脈洞305、大動脈弓303、および肺動脈304の領域中の圧受容器を図示する。大動脈弓303および肺動脈304は、図2Aに関して以前に図示した。図3に図示されるように、迷走神経306は、大動脈弓303中、頸動脈洞305中、および総頸動脈310中の圧受容器として機能する、感覚神経終末307を延在し、提供する。舌咽神経308は、頸動脈洞305中の圧受容器として機能する神経終末309を提供する。これらの神経終末307および309は、例えば、内部からの圧力上昇に起因する壁の伸張に敏感である。これらの神経終末の活性化は、圧力を低減する。図中に図示されていないものの、心臓の脂肪体ならびに心房および心室も、圧受容器を含む。カフは、迷走神経等の求心性神経幹の周囲に配置されており、圧受容器から血管運動神経中枢に通って、圧反射を刺激する。本主題の種々の実施形態によれば、求心性神経に最も近い血管中に配置されるカフまたは血管内供給リードを使用して、求心性神経幹を刺激することができる。
【0028】
図4は、肺動脈404の中および周囲の圧受容器を図示する。上大静脈402および大動脈弓403も図示される。図示されるように、肺動脈404は、色の濃い領域によって概して示されるような、多数の圧受容器411を含む。その上、一群の密集した圧受容器が、動脈管索412の付着部の近傍に位置している。図4はまた、心臓の右心室413、および肺動脈404から右心室413を分離する肺動脈弁414も図示する。本主題の種々の実施形態によれば、リードが、末梢静脈を通して挿入され、三尖弁を通って右心室の中へ、そして右心室413から肺動脈弁414を通って肺動脈404の中へ通されて、肺動脈の中および/または周囲の圧受容器を刺激する。種々の実施形態では、例えば、リードは、動脈管索412の近傍の一群の圧受容器を刺激するように配置される。図5は、動脈管索および肺動脈幹504近傍の、大動脈弓503中の圧受容器域512を図示する。一部の実施形態は、肺動脈にリードを配置して、大動脈および/または2B−2Cに図示されるような脂肪体中の圧受容器部位を刺激する。
【0029】
図6は、左大動脈神経が刺激された時の呼吸615と血圧616の既知の関係を図示する。617において神経が刺激されると、血圧616は低下し、呼吸615は、呼吸波形のより高い周波数および振幅によって図示されるように、より速く、かつより深くなる。呼吸および血圧は、刺激が除去された後、約1〜2分後に刺激前の状態に戻るように思われる。本主題の種々の実施形態は、血圧に対する代理パラメータとして呼吸を使用することによって、この呼吸と血圧の関係を使用する。
【0030】
図7は、断続的な頸動脈神経刺激の6ヶ月間の高血圧症イヌにおける、頸動脈神経刺激に対する既知の血圧反応を図示する。図は、刺激したイヌ718の血圧が、同様に高血圧を有する対照イヌ719の血圧よりも有意に低いことを図示する。したがって、断続的刺激は、圧反射を誘起して高血圧を低減することが可能である。
【0031】
心不全とは、心臓機能が、末梢組織の代謝要求を満たすのに十分なレベルを下回り得る正常以下の心拍出量を引き起こす、臨床的症候群を指す。心不全は、付随する静脈および肺のうっ血によるうっ血性心不全(CHF)として現れる場合がある。心不全は、虚血性心疾患等の種々の病因によるものとなり得る。
【0032】
心不全患者には、LV機能障害および死亡率の増加と関連する自律平衡の低減がある。交感神経系および副交感神経系の変調には、心不全およびMI後患者における再造形および死亡を防ぐ潜在的な臨床的有益性がある。直接電気刺激は、圧反射を活性化することができ、交感神経活動の低減を誘発し、血管抵抗を減少させることによって血圧を低減する。交感神経抑制および副交感神経活性は、おそらく急性虚血心筋の側副かん流を増加させ、心筋障害を減少させることによって、心筋梗塞後の不整脈脆弱性の低減と関連している。
【0033】
心筋梗塞(MI)または心拍出量の減少の他の原因の後に、構造、生化学、神経ホルモン、および電気生理学的因子を伴う、心室の複雑な再造形過程が発生する。心室再造形は、心室の拡張期充満圧を増加させる、いわゆる後方不全により、心拍出量を増加させるように作用する、生理学的代償機構によって誘起され、それにより、いわゆる前負荷(すなわち、心臓拡張期の終わりに、心室中の血液の量によって心室が伸張される程度)を増加させる。前負荷の増加は、フランク−スターリングの原則として知られる現象である、心臓収縮期中の1回拍出量の増加を引き起こす。しかしながら、ある期間にわたって前負荷の増加により心室が伸張されると、心室は拡張する。心室容積の拡大は、所与の収縮期圧における心室壁応力の増加を引き起こす。心室によって行われる圧力−体積作業の増加とともに、このことは心室筋の肥大に対する刺激の役割を果たす。拡張の不利点は、正常な残存心筋に課せられる余分な作業負荷、および肥大に対する刺激を表す壁張力の増加(ラプラスの法則)である。肥大が増加した張力に適合するのに十分ではない場合、さらなる進行性拡張を引き起こす悪循環が後に続いて起こる。
【0034】
心臓が拡張し始めるにつれて、ホルモン分泌および交感神経放電に反応する、血管運動中枢神経系の制御中枢に、求心性圧受容器および心肺受容器信号が送信される。最終的に、心室再造形に関与する細胞構造の有害な変化の主な原因となるのは、血行動態的な交感神経系およびホルモンの変調の組み合わせ(アンギオテンシン変換酵素(ACE)活性の有無等)である。肥大を引き起こす持続的応力は、心筋細胞のアポトーシス(すなわち、プログラム細胞死)、および心臓機能のさらなる低下を引き起こす最終的な壁の菲薄化を誘発する。したがって、心室拡張および肥大は、最初は代償性であり、かつ心拍出量を増加させる場合があるものの、この過程は、最終的には収縮および拡張(代償不全)両方の機能障害をもたらす。心室再造形の程度は、MI後および心不全患者における死亡率の増加と正の相関があることが示されている。
【0035】
(刺激システム)
本主題の種々の実施形態は、神経刺激(NS)(例えば、圧反射刺激)機器または部品に関する。神経性刺激は、神経連絡を刺激する、または神経連絡を抑制するために使用することができる。神経連絡を刺激する神経性刺激の一実施例は、低周波数信号(例えば、約20Hzから50Hzまでの範囲内)である。神経連絡を抑制する神経性刺激の一実施例は、高周波数信号(例えば、約120Hzから150Hzまでの範囲内)である。所定の場所に配置される刺激電極を使用して、所望の神経標的に電気刺激パルスを印加する他の実施形態を含む、神経連絡を刺激および抑制するための他の方法が提案されている。加えて、神経を刺激する際に使用するために、超音波、光、または磁気エネルギー等の他のエネルギーの種類が提案されている。本主題の種々の実施形態によれば、交感神経標的は、腓骨神経、脊髄中の交感神経柱、および心臓節後交感神経ニューロンを含むが、それらに限定されない。本主題の種々の実施形態によれば、副交感神経神経標的は、迷走神経、圧受容器、および心臓脂肪体を含むが、それらに限定されない。
【0036】
神経刺激装置の実施例は、高血圧症を治療するために使用される血圧降下(AHT)機器またはAHT部品、抗再造形療法を提供する神経刺激装置、および同等物を含む。本主題の種々の実施形態は、独立型の埋込型圧受容器刺激システムを含み、NSおよび心調律管理(CRM)部品を統合した埋込型機器を含み、少なくとも1つの埋込型NS機器と、無線で、または埋込型機器を接続するワイヤリードを介してのいずれかで、互いに通信することが可能な埋込型CRM機器とを伴うシステムを含む。同じ機器または別個の機器のいずれかで行われるNSおよびCRM機能を統合すると、NS療法および心臓療法が共に知的に(intelligently)機能することを可能にすることによって、これらの治療法の側面を改善する。
【0037】
図8は、本主題の種々の実施形態による、埋込型医療機器(IMD)821およびプログラマ822を含むシステム820を図示する。IMD821の種々の実施形態は、神経刺激装置機能のみを含み、種々の実施形態は、NS機能およびCRM機能の組み合わせを含む。神経刺激装置の一部の実施形態は、AHT機能を提供する。プログラマ822およびIMD821は、データおよび命令を無線で伝達することが可能である。種々の実施形態では、例えば、プログラマ822およびIMD821は、データおよび命令を無線で伝達するためにテレメトリコイルを使用する。したがって、IMD821によって提供されるプログラムした治療を調整するためにプログラマを使用することができ、IMDは、例えば、無線テレメトリを使用して、機器データ(バッテリおよびリード抵抗等)および治療データ(感知および刺激データ等)をプログラマに報告することができる。種々の実施形態によれば、IMD821は、圧受容器を刺激してAHT療法等のNS療法を提供する。IMD821の種々の実施形態は、心臓ペースメーカーリードと同様に右心室を通して供給され、さらに肺動脈の中へ供給されるリードを使用して、肺動脈中の圧受容器を刺激する。種々の実施形態によれば、IMD821は、ANS活動を感知するセンサを含む。閉ループ制御システムでフィードバックを行うために、そのようなセンサを使用することができる。例えば、種々の実施形態は、ANS活動を示す、呼吸および血圧等の代理パラメータを感知する。種々の実施形態は、心拍数、分時換気量、動作センサ、および同等物等の活動センサを含む。種々の実施形態によれば、IMDは、圧受容器を刺激する、および/またはANS活動を感知する性能に加えて、ペーシングおよび除細動等の心臓刺激性能をさらに含む。
【0038】
図9は、本主題の種々の実施形態による、図8のシステム820において示されるIMD821等の埋込型医療機器(IMD)921を図示する。図示したIMD921は、NS機能を果たす。図示したIMD921の一部の実施形態は、AHT機能を果たすため、埋込型AHT機器を図示する。図示した機器921は、制御器回路923およびメモリ924を含む。制御器回路923は、ハードウェア、ソフトウェア、ならびにハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを使用して実装されることが可能である。例えば、種々の実施形態によれば、制御器回路923は、メモリ924に埋め込まれた命令を実行して、AHT療法等のNS療法と関連する機能を果たすための、プロセッサを含む。例えば、図示した機器921は、プログラマあるいは別の外部または内部機器と通信するための使用に対する、トランシーバ925および関連回路をさらに含む。種々の実施形態は、無線通信性能を有する。例えば、一部のトランシーバの実施形態は、プログラマあるいは別の外部または内部機器と無線通信するために、テレメトリコイルを使用する。
【0039】
図示した機器921は、神経刺激装置回路926をさらに含む。機器921の種々の実施形態はまた、センサ回路927も含む。1つ以上のリードは、センサ回路927および刺激装置回路926に接続されることが可能である。神経刺激装置回路926は、1つ以上の刺激電極を通して、所望の神経標的(例えば、圧反射部位または他の神経標的)に電気刺激パルスを印加するために使用される。センサ回路927は、ANS神経活動および/または血圧、呼吸、および同等物等の代理パラメータを検出および処理して、ANS活動を判定するために使用される。
【0040】
種々の実施形態によれば、刺激装置回路926は、刺激パルスの振幅928、刺激パルスの周波数929、パルスのバースト周波数930または負荷サイクル、およびパルスの波の形態931といったパルスの特徴のうちのいずれか1つ、または2つ以上の任意の組み合わせを設定するモジュールを含む。波の形態の例は、方形波、三角波、正弦波、および自然発生の圧反射刺激を示すような白色雑音を模倣する所望の調和成分を伴う波を含む。
【0041】
図10A−10Cは、本主題の種々の実施形態による、統合圧力センサ(IPS)を伴う圧受容器刺激リードを図示する。一定の縮尺で描かれていないものの、これらの図示したリード1032A、1032B、および1032Cは、圧受容器刺激装置電極1034を伴うIPS1033を含んで、血圧の変化、および圧受容器刺激の作用を監視する。これらのリードの実例は、本主題の他の側面および実施形態を制限するものとして解釈すべきではない。例えば、種々の実施形態では、血圧を感知するために、微小電子機械システム(MEMS)技術が使用される。一部のセンサ実施形態は、膜の変位に基づいて血圧を判定する。
【0042】
図10A−10Cは、リード上のIPSを図示する。一部の実施形態は、IMDまたはNS機器にIPSを埋め込む。たとえ刺激装置およびセンサが別個のリードまたは場所に位置していても、刺激装置およびセンサ機能を統合することができる。
【0043】
図10Aに図示されるリード1032Aは、遠位に配置した圧受容器刺激装置電極1034およびIPS1033を含む。このリードは、例えば、肺動脈、大動脈弓、動脈管索、冠状静脈洞、心房および心室、および/または心臓脂肪体中の圧受容器部位等の圧受容器部位を刺激するように、血管内導入されることが可能である。
【0044】
図10Bに図示されるリード1032Bは、先端電極1035、第1のリング電極1036、第2のリング電極1034、およびIPS1033を含む。このリードは、心腔の中に、またはその最も近くに血管内挿入され、さらに、電極1035、1036、および1034のうちの少なくともいくつかが、心臓のペースを合わせる、あるいは心臓を刺激するために使用されることが可能であり、かつ電極のうちの少なくともいくつかが、少なくとも1つの圧受容器部位を刺激することが可能であるように、圧受容器部位の最も近くに配置されてもよい。IPS1033は、血圧を感知するために使用される。種々の実施形態では、IPSは、刺激のために選択された圧受容器部位に最も近い血管における血圧を感知するために使用される。
【0045】
図10Cに図示されるリード1032Cは、遠位に配置した圧受容器刺激装置電極1034、IPS1033、およびリング電極1036を含む。このリード1032Cは、例えば、右心房および右心室の中へ、次いで肺動脈弁を通って肺動脈の中へ血管内挿入されてもよい。機器のプログラミングによっては、電極1036は、右心室内で発生してもよい活動等の心臓活動のペースを合わせる、および/または感知するために使用することができ、電極1034およびIPS1033は、肺動脈の中または周囲の圧受容器の近傍に位置して、直接的にまたは代理パラメータを通して間接的に、のいずれかで、圧反射活動を刺激および感知する。
【0046】
したがって、本主題の種々の実施形態は、IPSを使用して圧受容器刺激を自動的に変調する、埋込型NS機器を提供する。圧力センサをリードに統合することは、刺激に対する局所化されたフィードバックを提供する。この局所的な感知は、フィードバック制御を改善する。例えば、統合センサは、標的が連続してオーバーシュートされないように、圧反射の慣性を補うために使用することができる。種々の実施形態によれば、機器は、平均動脈圧、収縮期圧、拡張期圧、および同等物等の圧力パラメータを監視する。例えば、平均動脈圧が増加するか、またはプログラム可能な標的圧力を上回ったままであると、機器は、増加した割合で圧受容器を刺激し、血圧を低減して高血圧症を制御する。平均動脈圧が標的圧力に向かって減少するにつれて、機器は、圧受容器刺激を低減することによって反応する。種々の実施形態では、アルゴリズムが現在の代謝状態(心臓要求)を考慮に入れ、それにしたがって神経性刺激を調整する。IPSを有するNS機器は、圧受容器刺激を自動的に変調することができ、それは、埋込型NS機器が患者の高血圧症のレベルを判定し、適切なレベルの治療を送達することによって反応することを可能にする。しかしながら、閉ループフィードバック制御を提供するために、NSまたは神経刺激機器に存在しないセンサを含む、他のセンサを使用できることに留意する。
【0047】
図11は、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)部品1137および心調律管理(CRM)部品1138を有する、図8の821においてに示されるような埋込型医療機器(IMD)1121を図示する。図示した機器1121は、制御器1123およびメモリ1124を含む。種々の実施形態によれば、制御器1123は、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを含んで、圧受容器刺激およびCRMの機能を果たす。例えば、本開示で論じられる、プログラムした治療の適用は、メモリに埋め込まれるコンピュータ可読命令として格納され、プロセッサによって実行されることが可能である。種々の実施形態によれば、制御器1123は、プロセッサを含んで、メモリに埋め込まれた命令を実行し、圧受容器刺激およびCRMの機能を果たす。図示した機器1121は、プログラマあるいは別の外部または内部機器と通信するための使用に対する、トランシーバ1125および関連回路をさらに含む。種々の実施形態は、テレメトリコイルを含む。
【0048】
CRM療法部分1138は、制御器の制御下にある部品を含んで、心臓を刺激し、および/または1つ以上の電極を使用して心臓信号を感知する。CRM療法部分は、電極を通して電気信号を提供して心臓を刺激するための使用に対する、パルス発生器1139を含み、さらに、感知回路1140を含んで、感知された心臓信号を検出および処理する。インターフェース1141は概して、制御器1123とパルス発生器1139および感知回路1140との間で通信するための使用に対して図示されている。3つの電極が、CRM療法を提供するための使用の一実施例として図示されている。しかしながら、本主題は、特定数の電極部位に限定されない。各電極は、独自のパルス発生器および感知回路を含んでもよい。しかしながら、本主題はそのように限定されない。複数の電極を用いて機能するように、信号パルス発生および感知機能を多重化することができる。
【0049】
NS療法部分1137は、制御器の制御下にある部品を含んで、圧受容器を刺激し、および/または、神経活動と関連するANSパラメータ、または血圧および呼吸等のANSパラメータの代理を感知する。3つのインターフェース1142が、ANS療法を提供するための使用に対して図示されている。しかしながら、本主題は、特定数のインターフェースに、あるいは任意の特定刺激または感知機能に限定されない。パルス発生器1143は、圧受容器部位を刺激するための使用に対して、電極に電気パルスを提供するために使用される。種々の実施形態によれば、パルス発生器は、刺激パルスの振幅、刺激パルスの周波数、パルスのバースト周波数、および、方形波、三角波、正弦波、ならびに白色雑音または他の信号を模倣する所望の調和成分を伴う波等のパルスの形態を設定し、かつ一部の実施形態では変更する、回路を含む。感知回路1144は、神経活動、血圧、呼吸、および同等物のセンサ等のセンサから、信号を検出および処理するために使用される。インターフェース1142は概して、制御器1123とパルス発生器1143および感知回路1144との間で通信するための使用に対して図示されている。各インターフェースは、例えば、別個のリードを制御するために使用してもよい。NS療法部分の種々の実施形態は、パルス発生器のみを含み、圧受容器を刺激する。例えば、NS療法部分は、AHT療法を提供する。
【0050】
本主題のある側面は、定常的に埋め込んだ刺激システムに関し、この刺激システムは、血圧を監視し、かつ圧受容器を刺激して圧受容器反射を活性化し、血管運動神経中枢からの交感神経放電を抑制することによって、高血圧症を治療するように特別に設計されている。圧受容器は、頸動脈洞および大動脈弓等の種々の解剖学的場所に位置する。他の圧受容器の場所は、動脈管索を含む肺動脈、ならびに心房および心室内の部位を含む。種々の実施形態では、システムは、ペースメーカー/除細動器または他の電気刺激システムに統合される。システムの部品は、高周波数パルス発生器、血圧または他の関連する生理学的パラメータを監視するセンサ、圧受容器に電気刺激を印加するリード、刺激を付与するのに適切な時間を判定するアルゴリズム、ならびに表示および患者管理のためのデータを操作するアルゴリズムを含む。
【0051】
種々の実施形態は、患者にAHT療法等の電気的に媒介されるNS療法を送達しようとするシステムに関する。種々の実施形態は、「独立型」パルス発生器を、肺動脈の中等の心臓付近の圧受容器を直接刺激する、低侵襲性の単極リードと組み合わせる。この実施形態は、専門医の技能を欠く一般診療医がそれを埋め込むことができるようなものである。種々の実施形態は、血圧を示すパラメータを感知することができる、単純な埋め込みシステムを組み込む。このシステムは、所望の生活の質を維持するように、治療出力(波形の振幅、周波数等)を調整する。種々の実施形態では、埋め込みシステムは、パルス発生機器およびリードシステムを含み、その刺激電極は、経静脈埋込技術を使用して、心内膜圧受容器組織の近傍に配置される。別の実施形態は、NS療法を従来の徐脈性不整脈、頻脈性不整脈、および/またはうっ血性心不全(CHF)療法と組み合わせるシステムを含む。一部の実施形態は、機器ヘッダから出現し、改良された従来のパルス発生システムから離間する、追加の「圧受容器リード」を使用する。別の実施形態では、従来のCRMリードは、圧受容器部位の近傍に自然に配置される、近位電極を組み込むように修正される。これらのリードにより、遠位電極はCRM療法を提供し、近位電極は圧受容器を刺激する。
【0052】
これらの実施形態によるシステムは、部分的に成功した治療戦略を増強させるために使用することができる。一実施例として、望ましくない副作用は、一部の医薬品の使用を制限する場合がある。薬剤投与量の低減とのこれらの実施形態によるシステムの組み合わせは、特に有益であってもよい。
【0053】
種々の実施形態によれば、リードおよびリード上の電極は、電極がパルスを適切に伝送し、かつ、心臓から信号を感知することを可能にする態様で心臓に対して、および圧反射を刺激するように圧受容器に対して、物理的に配設される。多数のリード、および1つのリードにつき多数の電極があってもよいため、1つまたは複数の特定電極を使用するように構成をプログラムすることができる。種々の実施形態によれば、圧反射は、求心性神経幹を刺激することによって刺激される。
【0054】
図12は、本主題の種々の実施形態による、プログラマ1222、埋込型の神経刺激(NS)機器1237、および埋込型の心調律管理(CRM)機器1238を含むシステム1220を図示する。種々の側面は、AHT機器等のNS機器1237とCRM機器1238または他の心臓刺激装置との間で通信するための方法を伴う。種々の実施形態では、この通信は、機器1237または1238の一方が、他方の機器から受信されたデータに基づいて、より適切な治療(すなわち、より適切なNS療法またはCRM療法)を送達することを可能にする。一部の実施形態は、オンデマンド通信を提供する。種々の実施形態では、この通信は、機器1237および1238のそれぞれが、他方の機器から受信されたデータに基づいて、より適切な治療(すなわち、より適切なNS療法およびCRM療法)を送達することを可能にする。図示したNS機器1237およびCRM機器1238は、互いに無線通信することが可能であり、プログラマは、NSならびにCRM機器1237および1238の少なくとも一方と無線通信することが可能である。例えば、種々の実施形態は、互いにデータおよび命令を無線で伝達するために、テレメトリコイルを使用する。種々の実施形態では、データおよび/またはエネルギーの通信は超音波手段による。
【0055】
一部の実施形態では、NS機器1237は、圧反射を刺激してNS療法を提供し、直接的に、またはANS活動を示す呼吸および血圧等の代理パラメータを使用して、ANS活動を感知する。CRM機器1238は、ペーシングおよび徐細動性能等の心臓刺激性能を含む。NSとCRM機器1237および1238との間で無線通信を提供するよりもむしろ、種々の実施形態は、NS機器1237とCRM機器1238との間で通信する使用に対する、血管内供給リード等の通信ケーブルまたはワイヤを提供する。
【0056】
図13は、本主題の種々の実施形態による、図12のシステムの1237において示されるような埋込型神経刺激(NS)機器1337を図示する。図14は、本主題の種々の実施形態による、図12のシステムの1238において示されるような埋込型心調律管理(CRM)機器1438を図示する。NS機器1337に対する部品の機能は、図9および11(NS機器1137)に関して以前に論じ、CRM機器1238に対する部品の機能は、図11(CRM機器1138)に関して以前に論じた。簡単にするため、NSおよびCRMの機能に関するこれらの考察をここでは反復しない。NSおよびCRMの機器の種々の実施形態は、無線トランシーバ1325および1425をそれぞれ含んで、互いに無線通信する。NSおよびCRM機器の種々の実施形態は、テレメトリコイルまたは超音波変換器を含んで、互いに無線通信する。
【0057】
種々の実施形態によれば、例えば、NS機器は、テレメトリコイルを装備し、それとCRM機器との間でデータが交換されることを可能にし、心拍数、分時換気量、心房興奮、心室興奮、および心イベント等の電気生理学的パラメータに基づいて、NS機器が治療を修正することを可能にする。また、CRM機器は、平均動脈圧、収縮期および拡張期圧、および圧受容器刺激率等の、NS機器から受信されたデータに基づいて治療法を修正する。
【0058】
一部のNS機器の実施形態は、既存のCRM機器と共に患者に埋め込まれることが可能であるため、CRM機器によって収集される生理学的データを受信することによって、NS機器の機能性が強化される。2つ以上の埋め込み機器の機能性は、埋め込み機器間の通信性能を提供することによって強化される。種々の実施形態では、機能性は、互いに無線通信するように機器を設計することによって、さらに強化される。
【0059】
図15は、本主題の種々の実施形態による、図8および12のシステムで図示されるプログラマ822および1222等のプログラマ1522、または埋込型医療機器1237および/または1238と通信する他の外部機器を図示する。別の外部機器の一実施例は、形態情報端末(PDA)、または高度患者管理(APM)システムにおけるパーソナルラップトップおよびデスクトップコンピュータを含む。図示した機器1522は、制御器回路1545およびメモリ1546を含む。制御器回路1545は、ハードウェア、ソフトウェア、ならびにハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを使用して、実装されることが可能である。例えば、種々の実施形態によれば、制御器回路1545は、プロセッサを含んで、メモリ1546に埋め込まれた命令を実行し、データの伝達および/または埋込型機器への命令のプログラムを含む、多数の機能を果たす。図示した機器1522は、埋込型機器と通信するための使用に対する、トランシーバ1547および関連回路をさらに含む。種々の実施形態は、無線通信性能を有する。例えば、トランシーバ1547および関連回路の種々の実施形態は、埋込型機器と無線通信するための使用に対するテレメトリコイルを含む。図示した機器1522は、ディスプレイ1548、キーボードまたはマウス/ポインタ等の入出力(I/O)機器1549、および通信網上等で他の機器と通信するための使用に対する通信インターフェース1550をさらに含む。
【0060】
(プログラムした治療の適用)
システムのNSおよび/またはCRMの機能は、2つの別個で異なる埋込型機器に埋め込まれていても、または部品として1つの埋込型機器に組み込まれていても、NSおよび/またはCRM治療または治療の各部を行うための過程を含む。一部の実施形態では、NS療法は、AHT療法を提供する。一部の実施形態では、神経性刺激療法は、心室再造形を予防および/または治療する。
【0061】
自律神経系の活動は、MIの結果として、または心不全により発生する、心室再造形の少なくとも部分的に原因となる。再造形は、例えば、ACE阻害剤およびベータ遮断薬の使用による薬理学的介入によって影響され得ることが実証されている。しかしながら、薬理学的治療には、副作用の危険性があり、また、正確な方法で薬剤の作用を変調することは困難である。薬物療法に関する別の問題は、患者の服薬不履行である。本主題の実施形態は、抗再造形療法またはARTと呼ばれる、自律神経活動を変調する電気刺激手段を採用する。再造形制御療法(RCT)とも呼ばれる、心室再同期ペーシングと併せて送達されると、自律神経活動のそのような変調は、心臓再造形を逆転または予防するように相乗的に作用する。
【0062】
虚血後の増加した交感神経系活動は、しばしば、エピネフリンおよびノルエピネフリンへの心筋の増加した暴露をもたらす。これらのカテコールアミンは、心筋死および線維化につながる、筋細胞内の細胞内経路を活性化する。副交感神経(迷走神経)の刺激は、この作用を抑制する。種々の実施形態によれば、本主題は、心不全患者におけるCRTに加えて、迷走心臓神経を選択的に活性化して、さらなる再造形および不整脈原性から心筋を保護する。CRTに加えて、迷走心臓神経を刺激することの他の潜在的有益性は、心筋梗塞後の炎症反応の低減、および除細動のための電気刺激閾値の低減を含む。例えば、心室頻脈が感知されると、迷走神経刺激が印加され、次いで、除細動ショックが印加される。迷走神経刺激は、除細動ショックがより少ないエネルギーにおいて印加されることを可能にする。また、副交感神経刺激は、不整脈を終結させるか、あるいは抗不整脈治療の有効性を増加させてもよい。
【0063】
例えば、メモリに埋め込まれたコンピュータ可読命令を実行するプロセッサによって、処置を行うことができる。治療法は、種々の処置および機能を有する多数の用途を含み、その一部を下記で識別し、論じる。本主題の一部の実施形態は、下記の処置および機能のうちの2つ以上の組み合わせを含むため、これらの治療法の処置および機能は、必ずしも相互排他的ではない。
【0064】
(正確に信号を感知する神経性刺激の説明)
図16A−16Dは、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)機器からの電気刺激と心調律管理(CRM)機器による感知との間の干渉を防ぐシステムおよび方法を図示する。神経性刺激は、信号を感知する能力を改善し、心イベントの検出と関連する偽陽性を排除するように関与する。NS機器は、一部の実施形態ではAHT機器を含む。例えば、NS機器は、一部の実施形態によれば、CRM機器が圧反射刺激に非意図的に反応しないように、通信し、圧反射刺激を予防するか、あるいは補う。一部の実施形態は、圧反射刺激を心臓における適切な屈折と自動的に同期化する。例えば、一部のシステムは、肺動脈の中または周囲の圧受容器の刺激を心房興奮と自動的に同期化する。したがって、圧反射刺激が心臓および心臓の電気的活性化を検出するCRMセンサの近傍で生成された時でさえも、CRM機器の機能は、圧反射刺激によって生成される遠方界の雑音を検出することによって、悪影響を受けない。
【0065】
図16Aは概して、NS機能1651(NS機器または統合NS/CRM機器中のNS部品によって実行され得るような)、CRM機能1652(CRM機器または統合NS/CRM機器中のCRM部品によって実行され得るような)、およびNS機能とCRM機能との間で通信する性能1653を含む、システム1654を図示する。図示した通信は、双方向の無線通信である。しかしながら、本主題は、一方向の通信も検討し、さらに、有線通信を検討する。加えて、本主題は、機器または別個の埋込型機器において通信信号が送信および受信されるように、NSおよびCRM機能1651および1652を単一の埋込型機器に統合することができることを検討する。神経性刺激の一部としての圧反射刺激が具体的に論じられているものの、本主題のこの側面はまた、センサによって検出可能であり、かつ他の電気刺激装置から生成される意図しない干渉を予防するか、またはそれに関与する、あるいはそれを補うように適用可能である。
【0066】
図16Bは、種々の実施形態による、CRM機能が圧反射刺激に非意図的に反応しない過程を図示する。図16Bは、圧受容器が電気的に刺激されている時に、NS機器または部品1651が警告を送信するか、あるいはCRM機器または部品に通知する過程を図示する。図示した実施形態では、NS機器/部品は、1655において、圧反射刺激等の電気刺激が印加されるかどうかを判定する。電気刺激が印加される場合、NS機器または部品1651は、1656において、警告1657を送信するか、あるいは電気刺激をCRM機器または部品1652に知らせる。1658において、電気刺激は、NS機器/部品によって印加される。1659において、感知するステップを含むCRM療法が行われる。1660において、CRM機器/部品は、警告1657がNS機器/部品から受信されたかどうかを判定する。警告が受信されると、検出閾値を引き上げ、ブラックアウトまたはブランキングウィンドウを提供し、あるいはNS機器または部品における電気刺激がCRM機器/部品によってイベントとして誤って解釈されることを防ぐように、1661においてイベント検出アルゴリズムが修正される。
【0067】
図16Cは、種々の実施形態による、CRM機能が圧反射刺激に非意図的に反応しない過程を図示する。CRM機器/部品1652は、1662において、心臓の不応期を判定する。1663において、不応期が発生している、または予測可能な時間量後に発生することが予期される場合、不応性に対応する有効化1664が、NS機器/部品1651に提供される。AHT機器/部品1651は、1655において電気刺激が望ましいかどうかを判定する。望ましい時は、有効化信号1664によって制御されるように、1666において、AHT機器/部品が不応期中に電気刺激を印加する。図16Dは、心臓の1667における不応期および圧反射刺激1668を図示し、さらに、圧反射刺激が不応期に印加されることを図示する。
【0068】
不応期は、絶対不応期および相対不応期の両方を含む。心臓組織は、絶対不応期中に刺激されることが可能である。絶対不応期中の必要な刺激閾値は、基本的に無限である。相対不応期は、絶対不応期の後に発生する。相対不応期中、心臓組織が再分極し始め、刺激閾値は、最初に非常に高く、相対不応期の終わりまでに正常刺激閾値まで低下する。したがって、種々の実施形態によれば、絶対不応期中、または神経性刺激が心臓組織を捕獲することを防止するために十分高い刺激閾値に対応する相対不応期の一部の間のいずれかに、神経刺激装置が神経性刺激を印加する
本主題の種々の実施形態は、心房興奮を感知し、肺動脈刺激を心房不応期に限定して、近くの心房組織の意図しない刺激を予防する方法に関する。埋込型圧受容器刺激機器は、心房感知リードで心房興奮を監視する。肺動脈中のリードは、血管壁中の圧受容器を刺激する。しかしながら、これらの圧受容器を連続して刺激する代わりに、肺動脈中の圧受容器の刺激は、心房不応期中に発生して近くの心房心筋を捕獲することを回避し、内因性心房レートおよび興奮を維持する。本主題の種々の実施形態は、肺動脈壁中の圧受容器を刺激するための埋込型機器を心房感知のための性能と組み合わせる。種々の実施形態は、心臓脂肪体中の圧受容器、心腔中の圧受容器、および/または求心性神経を刺激する。
【0069】
図17は、本主題の種々の実施形態による、神経性刺激(例えば、圧反射刺激)を変調するシステムを図示する。図示したシステムは、肺動脈の中および周囲の圧受容器を刺激する刺激装置等の神経刺激装置1751を含む。刺激装置は、独立型NS機器に、または例えば、統合NS/CRM機器にNS部品として含むことができる。図示した刺激装置1751は、印加した神経性刺激を選択的に増加および減少させるための使用に対する変調器1769を含む。種々の実施形態によれば、変調器1769は、刺激パルスの振幅を変更するモジュール1770、刺激パルスの周波数を変更するモジュール1771、および刺激パルスのバースト周波数を変更するモジュール1772といったモジュールのうちのいずれか1つを含む。
【0070】
種々の実施形態によれば、刺激回路は、刺激特徴のうちのいずれか1つ、または任意の組み合わせを設定または調整するように構成される。刺激特徴の実施例は、刺激信号の振幅、周波数、極性、および波の形態を含む。波の形態の実施例は、方形波、三角波、正弦波、および自然発生圧反射刺激を示すような白色雑音を模倣する所望の調和成分を伴う波を含む。神経性刺激回路の一部の実施形態は、所定の振幅、形態、パルス幅、および極性を伴う刺激信号を生成するように構成され、さらに、制御信号に反応して、振幅、波の形態、パルス幅、および極性のうちの少なくとも1つを修正するように構成される。神経性刺激回路の一部の実施形態は、所定の周波数を伴う刺激信号を生成するように構成され、さらに、制御器からの制御信号に反応して刺激信号の周波数を修正するように構成される。
【0071】
刺激回路によって送達される神経性刺激は、メモリに格納された刺激スケジュール等の刺激命令を使用して、プログラムすることができる。神経性刺激は、所定の周波数における一連の刺激パルスである、刺激バーストで送達することができる。刺激バーストは、バースト継続時間およびバースト間隔によって特徴付けることができる。バースト継続時間は、バーストが続く時間の長さである。バースト間隔は、連続バーストの開始の間の時間によって識別することができる。バーストのプログラムしたパターンは、バースト継続時間およびバースト間隔の任意の組み合わせを含むことができる。1つのバースト継続時間およびバースト間隔を伴う単純なバーストパターンは、プログラムした期間にわたって周期的に継続することができるか、または、より複雑なスケジュールに従うことができる。バーストのプログラムしたパターンは、複数のバースト継続時間およびバースト間隔のシーケンスから成り、より複雑となり得る。バーストのプログラムしたパターンは、一定の時間にわたる神経性刺激オンおよび一定の時間にわたる神経性刺激オフの反復サイクルを指す、負荷サイクルによって特徴付けることができる。負荷サイクルは、オン時間およびサイクル時間によって指定され、したがって、オン時間/サイクル時間の単位を有することができる。例えば、オン/オフサイクルが1分ごとに反復し、負荷サイクルのオン時間が10秒である場合は、負荷サイクルは毎分10秒である。オン/オフサイクルが1時間ごとに反復し、オン時間が5分である場合は、負荷サイクルは毎時間5分である。一部の実施形態によれば、神経性刺激は、刺激信号の各パルスを開始することによって制御される。一部の実施形態では、制御器回路は、刺激信号パルス列を開始し、その場合、刺激信号は、所定の周波数およびバースト継続時間における一連のパルスを生成することによって、制御器回路からのコマンドに反応する。パルス列の所定の周波数およびバースト継続時間は、プログラム可能となり得る。パルス列中のパルスのパターンは、1つのバースト継続時間およびバースト間隔を伴う単純バーストパターンとなり得るか、または複数のバースト継続時間およびバースト間隔を伴うより複雑なバーストパターンに従うことができる。一部の実施形態では、神経性刺激セッションの開始および終結が制御される。神経性刺激セッションのバースト継続時間は、プログラム可能となり得る。神経性刺激セッションは、1つ以上の感知されたパラメータ、または神経性刺激を停止することが望ましいと判定される任意の他の状態によって生成されてもよいような、中断信号に反応して、終結されてもよい。
【0072】
システムの種々の実施形態は、生理学的活動モニタ1773、有害事象検出器1774、呼吸モニタ1775、および所望レベルの神経性刺激を適切に印加するように刺激装置1751の変調器1769を制御することが可能な概日リズムテンプレート1776のうちのいずれか1つ、または任意の組み合わせを含む。これらの1773、1774、1775、および1776のそれぞれは、神経性刺激信号を変調する方法と関連する。種々の実施形態によれば、システムは、生理学的活動(1773)、有害事象(1774)、呼吸(1775)、概日リズム(1776)、生理学的活動(1773)および有害事象(1774)、生理学的活動(1773)および呼吸(1775)、生理学的活動(1773)および概日リズム(1776)、有害事象(1774)および呼吸(1775)、有害事象(1774)および概日リズム(1776)、呼吸(1775)および概日リズム(1776)、生理学的活動(1773)、有害事象(1774)および呼吸(1775)、生理学的活動(1773)、有害事象(1774)および概日リズム(1776)、生理学的活動(1773)、呼吸(1775)および概日リズム(1776)、有害事象(1774)、呼吸(1775)および概日リズム(1776)、ならびに生理学的活動(1773)、有害事象(1774)、呼吸(1775)および概日リズム(1776)といった、パラメータまたはパラメータの組み合わせに基づいて神経性刺激信号を変調する手段を含む。
【0073】
刺激は、種々の神経標的に印加することができる。例えば、刺激は、神経幹に近接して配置されるカフ電極または血管内供給リードを使用して、迷走神経等の求心性神経幹に印加することができる。刺激は、例えば、静脈内供給リードを使用して、肺動脈、大動脈弓、および頸動脈洞に位置するような圧反射標的に印加することができる。刺激は、静脈内供給リードを使用して、または脂肪体に電極をねじ込むことによって、心臓脂肪体に位置するANS部位に印加することができる。生理学的活動検出器1773の実施形態は、例えば、心拍数モニタ1777A、分時換気量モニタ1777B、動作モニタ1777C、1回拍出量モニタ1777D、呼吸数モニタ1777E、1回換気量モニタ1777F、交感神経活動のセンサ等の神経活動モニタ1777G、血圧モニタ1777H、および心拍出量モニタ1777Iのうちのいずれか1つ、または任意の組み合わせを含む。心拍出量モニタは、心拍数および1回拍出量(例えば、心拍出量は、心拍数および1回拍出量の積に等しい)を使用して判定することができる。動作モニタの例は、加速度計または圧電性結晶等の加速度を検出するセンサを含む。他の動作センサ、例えば、筋肉の動き(例えば、脚の動き)を検出する筋電図法(EMG)センサを使用する動作センサ、および動きを検出するグローバルポジショニングシステム(GPS)を使用するセンサが使用されてもよい。GPS技術は、自動推進の動き(例えば、自動車、飛行機、船、および電車での移動)に関与する適切なアルゴリズムを含む。呼吸モニタ1775の実施形態は、1回換気量モニタ1780および分時換気量モジュール1781のうちのいずれか1つ、または任意の組み合わせを含む。例えば、分時換気量を判定するために経胸腔インピーダンスを使用することができ、例えば、心拍数を判定するために心臓インピーダンスおよびECGを使用することができる。概日リズムテンプレート1776の実施形態は、特注で生成したテンプレート1782および事前にプログラムしたテンプレート1783のうちのいずれか1つ、または組み合わせを含む。これらの実施形態は、図18A−18C、19A−19B、20A−20B、21A−21E、22、および23A−23Cに関して、下記でさらに詳細に論じる。概日リズムテンプレートは、AHT療法、無呼吸療法、心筋梗塞後療法、心不全療法、および他の治療法等の種々の神経性刺激療法を提供するために使用することができる。
【0074】
(収縮間隔に基づく神経性刺激(例えば、圧反射刺激)の変調)
交感神経系または副交感神経系の活性化は、ある収縮間隔、主として、心室内の感知された電気的活動(例えば、「R」波の感知)と血液の心室駆出の開始との間の時間間隔である、前駆出期(PEP)を変えることが知られている。PEPは、肺動脈圧センサを使用して、感知された電気的事象から肺動脈の圧力増加の開始まで測定されてもよいか、または、右心室に位置するか、または左心室に及ぶ電極を使用して、駆出中の心室容積の減少を伴う心内インピーダンスの増加の開始まで測定されてもよい。例えば加速度計で測定される心拍数または身体活動によって判定されるような安静時に、神経性刺激は、事前にプログラムした範囲でPEPを維持するように変調される。PEPの突然の減少は、運動または情緒的ストレスと関連する交感神経の緊張の増加を示す。この状態は、代謝要求を満たすために必要な心拍数および心収縮性の増加を可能にする、神経性刺激を減少させるために使用されてもよい。同様に、PEPの後の劇的な延長は、増加した代謝要求の終了の印となる。この時、神経性刺激による血圧の制御が再開し得る。
【0075】
(活動に基づく神経性刺激(例えば、圧反射刺激)の変調)
本主題は、心拍数、分時換気量、加速度、およびそれらの組み合わせによって判定できるような活動に基づいて、神経性刺激(例えば、圧反射刺激)を自動的に変調する方法を記載する。例えば、圧受容器を電気的に刺激するための機器の機能性は、代謝要求が比較的低い時の安静中に、少なくとも比較的高い圧力ペーシング率で印加し、代謝要求が増加するにつれて、身体運動中に圧力ペーシングを次第に少なくすることによって、強化される。活動の指数は、圧受容器の電気刺激を自動的に変調するために使用され、埋込型神経性刺激機器(例えば、血圧降下機器)が代謝要求の変化に反応することを可能にする。種々の実施形態によれば、ペースメーカー、AICD、またはCRT機器等のCRM機器もまた、神経性刺激リードを有する。機器は、例えば、混合センサを使用して、既存の方法を通して活動を監視する。混合センサは、加速度および分時換気量等のパラメータを測定する2つのセンサを含む。混合センサの出力は、複合パラメータを表す。AHT療法、抗再造形療法、および同等物等の種々の神経性刺激療法は、本開示内で論じられるような2つ以上の感知されたパラメータに由来する、複合パラメータを使用する。安静(より低い活動)時に、機器は、より高い比率で神経性刺激を送達し、血圧を低減して高血圧症を制御する。活動が増加するにつれて、機器は、神経性刺激を一時的に低減または停止することによって反応する。これは、血圧および心拍出量の一時的増加をもたらし、身体が増加した代謝要求に反応することを可能にする。例えば、一部の実施形態は、安静中に圧反射刺激を提供し、運動中に圧反射刺激を撤回して運動への正常な血圧反応に適合する。活動を判定するために、圧力変換器を使用することができる。その上、活動は、比率適応型ペーシングを駆動するために使用される、または使用されてきたセンサを使用して、感知することができる。そのようなセンサの例は、身体の動き、心拍数、QT間隔、呼吸数、経胸腔インピーダンス、1回換気量、分時換気量、体位、脳波図(EEG)、皮下ECGを含む心電図(ECG)、眼電図(EOG)、筋電図(EMG)、筋緊張、体温、パルス酸素濃度、時刻、および心内インピーダンスからの前駆出間隔を検出するセンサを含む。
【0076】
心臓活動モニタの種々の実施形態は、動脈パラメータ、収縮期圧と拡張期圧との差異によって判定される脈圧、収縮末期圧(収縮期の終わりの圧力)、および拡張末期圧(拡張期の終わりの圧力)等の、少なくとも1つの圧力パラメータを検出するセンサを含む。心臓活動モニタの種々の実施形態は、1回拍出量モニタを含む。心拍数および圧力は、1回拍出量を導出するために使用することができる。心臓活動モニタの種々の実施形態は、心臓活動を判定するために少なくとも1つの電位図測定を使用する。そのような電位図測定の実施例は、R−R間隔、P−R間隔、およびQT間隔を含む。心臓活動モニタの種々の実施形態は、心臓活動を判定するために少なくとも1つの心電図(ECG)測定を使用する。
【0077】
図18A−18Eは、本主題の種々の実施形態による、心臓活動パラメータに基づいて神経性刺激(例えば、圧反射刺激)を変調するための方法を図示する。心臓活動は、CRM機器、NS機器、またはNS/CRM性能を伴う埋込型機器によって判定することができる。心臓活動に基づいて神経性刺激(例えば、圧反射刺激)を変調するための第1の過程1884Aを図18Aに図示する。1885Aにおいて、活動レベルが判定される。種々の実施形態によれば、活動レベルの判定は、心拍数、分時換気量、動作(例えば、加速度)、または心拍数、分時換気量、および動作の任意の組み合わせに基づく。図示した過程では、活動レベルは、2つの定義されたレベルを有する(例えば、HIおよびLO)。一部の実施形態では、LOレベルは、活動を含まない。活動レベルがHIであるか、またはLOであるかが判定される。1886Aにおいて、判定した活動レベルに基づいて、刺激レベルが設定される。例えば、活動レベルがHIであると判定された場合にLO刺激レベルが設定され、活動レベルがLOであると判定された場合にHI刺激レベルが設定される。
【0078】
心臓活動に基づいて神経性刺激(例えば、圧反射刺激)を変調するための第2の過程1884Bを図18Bに図示する。1885Bにおいて、活動レベルが判定される。種々の実施形態によれば、活動レベルの判定は、心拍数、分時換気量、動作(例えば、加速度)、または心拍数、分時換気量、および運動の任意の組み合わせに基づく。図示した過程では、活動レベルは、3つ以上の定義されたレベルまたはn個の定義されたレベルを有する。図示したn個のレベルに割り当てられる標識は、最低活動レベルに対するレベル1、最低活動レベルから2番目に対するレベル2、最低活動レベルから3番目に対するレベル3等を含む。レベルnは、最高活動レベルに対応する。活動レベルがレベル1であるか、レベル2であるか、またはレベルnであるかが判定される。1886Bにおいて、判定した活動レベルに基づいて、神経性刺激レベルが設定される。利用可能な刺激レベルは、n個のレベルを含み、その場合、レベル1は最低刺激レベルに対応し、レベル2は最低刺激レベルから2番目に対応し、レベル3は最低刺激レベルから3番目に対応する等である。レベルnは、最高刺激レベルに対応する。種々の実施形態によれば、選択した神経性刺激レベルは、判定した活動レベルに逆相関する。例えば、活動レベルが最高レベル(レベルn)であると判定された場合には、刺激レベルは、最低レベル(レベル1)に設定される。活動レベルが第2の最高レベル(レベルn−1)であると判定された場合には、刺激レベルは、第2の最低レベル(レベル2)に設定される。活動レベルが第2の最低レベル(レベル2)であると判定された場合には、刺激レベルは、第2の最高レベル(レベルn−1)に設定される。活動レベルが最低レベル(レベル1)であると判定された場合には、刺激レベルは、最高刺激レベル(レベルn)に設定される。この実施形態は、活動レベルを刺激レベルに機能的にマップする、つまり、活動を神経性刺激強度にマップする。
【0079】
活動に基づいて神経性刺激(例えば、圧反射刺激)を変調するための別の過程1884Cを図18Cに図示する。図示した過程では、少なくとも1つの感知または収集した活動パラメータが少なくとも1つの参照パラメータと比較され、比較の結果に基づいて神経性刺激強度が変調される。1887において、収集した活動パラメータが標的活動パラメータと比較される。神経性刺激強度は、比較の結果に基づいて変調される。例えば、収集した活動が参照活動パラメータより低い場合、神経性刺激は、1888において増加させられる。取得した活動が参照活動パラメータより高い場合、神経性刺激は、1889において減少される。取得した活動が参照活動パラメータに等しいか、またはほぼ等しい場合、神経性刺激強度に調整は行われない。種々の実施形態は、感知または収集した活動と参照との差異を判定し、差異に基づいて神経性刺激強度を調整する。一部の実施形態によれば、神経性刺激強度の調整は、感知または収集した活動と参照との差異に比例する。例えば、差異がxである場合、神経性刺激強度は、xの関数(例えば、強度=f(x))として増加される(正比例する)か、または減少(反比例する)させられるかのいずれかであり、その場合、xは、感知または収集した活動と参照との差異である。活動の差異xを神経性刺激強度にマップする関数は、線形関数として、または非線形関数として実施されてもよい。加えて、関数は、数式から計算するか、またはルックアップテーブルとして実施することができる。差異が2xである場合、神経性刺激強度は、xの関数(例えば、強度=f(2x))として増加させられるか、または減少させられるかのいずれかである。差異が1/2(x)である時、神経性刺激強度は、xの関数(例えば、強度=f(0.5x))として増加させられるか、または減少させられるかのいずれかである。活動参照レベルは、動的に調整することができる。限定ではなく一例として、活動参照レベルは、一定の期間(例えば、5〜60分)にわたる平均活動として計算することができる。参照レベルの動態的調整は、神経性刺激レベルが、何らかの遡及的期間と比較して、平均活動レベルの一過性の変化に比例して調整されることを可能にする。
【0080】
活動に基づいて神経性刺激を変調するための過程1884Dの実施形態を図18Dに図示する。1801において図示されるように、検出または監視した活動が閾値を上回るかどうかが判定される。種々の実施形態によれば、活動レベルの判定は、心拍数、分時換気量、加速度、または心拍数、分時換気量、加速度の任意の組み合わせに基づく。活動を判定するために、圧力センサを使用することができる。種々の実施形態によれば、活動を判定するために、比率適応ペーシングを駆動するために使用することができるセンサを使用することができる。そのようなセンサの実施例は、本書で以前に提供した。活動が閾値を上回る場合、神経性刺激は、1802において印加されず、活動が閾値を上回らない場合、神経性刺激は、1803において印加される。この実施形態では、活動が所定の閾値を上回らない場合にしか神経性刺激が印加されないため、したがって、活動判定は、神経性刺激療法の有効化として機能することができる。
【0081】
活動に基づいて神経性刺激を変調するための過程1884Eの実施形態を図18Eに図示する。感知された活動は、生理学的反応と関連する。例えば、心拍数が運動の期間中に増加することが適切である。図示されるように、神経性刺激が1804において印加される。神経性刺激は、血圧降下(AHT)または抗再造形療法等の治療法の一部となり得る。活動が1805において決定されるように所定閾値を上回る場合、神経性刺激パラメータは、1806において、感知された活動と関連する生理学的反応に対する神経性刺激の作用を軽減(低減または回避する)値に調整される。したがって、例えば、過程は、運動への適切な生理学的反応を可能にする。
【0082】
本主題のある側面は、1回換気量または分時換気量によって判定されるような呼吸に基づいて、圧受容器刺激の強度を自動的に変調する方法に関する。連続的圧受容器刺激を印加する代わりに、NS機器は、血圧に対する代理として呼吸を使用して、高血圧症のレベルを監視し、適切なレベルの治療を送達して、機器が治療のレベルを変調することを可能にする。本主題は、1回換気量および分時換気量を判定するため、および圧受容器刺激を自動的に変調するために、インピーダンス等の呼吸の指数を使用する。したがって、埋込型NS機器は、患者の高血圧症のレベルを判定し、適切なレベルの治療を送達することによって反応することが可能である。種々の実施形態では、埋込型NS機器は、1回換気量または分時換気量を測定するセンサを含有する。例えば、種々の実施形態は、経胸腔インピーダンスを測定して呼吸数を取得する。一部の実施形態では、機器は、CRM機器からこのデータを受信する。NS機器は、これらの呼吸パラメータを周期的に監視する。呼吸が減少するか、またはプログラム可能な標的を下回ったままであると、機器は、増加した比率で圧受容器を刺激し、血圧を低減して高血圧症を制御する。平均動脈圧が標的圧力に向かって減少するにつれて、機器は、圧受容器刺激を低減することによって反応する。このようにして、AHT機器は、適切なレベルの治療を連続して送達する。
【0083】
図19A−19Bは、本主題の種々の実施形態による、呼吸パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。呼吸パラメータは、CRM機器、NS機器、またはNS/CRM性能を伴う埋込型機器によって判定することができる。呼吸パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法の一実施形態を、図19Aの1910Aにおいて図示する。呼吸レベルが1911において判定され、判定した呼吸レベルに基づいて圧受容器刺激レベルが1912において設定される。種々の実施形態によれば、所望の圧力ペーシングレベルが1913において調節する。例えば、一実施形態は、1914において収集したパラメータを標的パラメータと比較する。圧力ペーシングは、収集したパラメータの標的パラメータとの比較に基づいて、1915において増加するか、1916において減少することができる。
【0084】
呼吸パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法の一実施形態を、図19Bの1910Bにおいて図示する。1916において、圧反射刺激過程に対するアルゴリズムを誘起する、圧反射イベントトリガが発生する。1917において、呼吸が標的パラメータと比較される。圧反射刺激は、呼吸が標的を下回る場合に1918において増加され、呼吸が標的を上回る場合に1919において減少される。種々の実施形態によれば、刺激は、呼吸がブランキングウィンドウ内にある場合には変更されない。種々の実施形態は、印加した刺激および圧反射反応を安定化させるヒステリシス効果を提供するためにメモリを使用する。加えて、種々の実施形態では、時刻または活動レベル等の種々の因子に基づいて、呼吸標的が治療中に修正される。1920において、例えば、感知されたパラメータまたはイベント中断の受信に基づいて、圧反射療法アルゴリズムを続けるかどうかが判定される。圧反射アルゴリズムを続ける場合には、過程は、呼吸が再び標的パラメータと比較される1917に戻り、さもなければ、圧反射アルゴリズムは、1921において中止される。
【0085】
(概日リズムに基づく神経性刺激(例えば、圧反射刺激)の変調)
本主題のある側面は、24時間の期間にわたって発生する血圧の自然変動を模倣するよう、高血圧症患者の圧反射を刺激するための方法に関する。高血圧症の反射低減は、動脈圧の内因性変動を変えずに、長期的圧受容器刺激中に達成される。種々の実施形態によれば、埋込型機器は、例えば、短い高周波数バースト(約20〜150Hzの範囲内の周波数を伴う方形波)を使用して、頸動脈洞、肺動脈、または大動脈弓中の圧受容器を刺激するように設計される。一部の実施形態は、カフ電極で、頸動脈洞神経、大動脈神経、または迷走神経を直接刺激する。しかしながら、バーストは一定の比率で発生しない。むしろ、刺激周波数、振幅、および/またはバースト周波数は、日中に昇降して、自然な概日リズムを模倣する。
【0086】
したがって、NS機器の種々の実施形態は、正常な個人および高血圧症の個人の両方で発生する動脈圧の自然変動に関与する。平均動脈圧の活動関連変化は別として、被験者はまた、24時間サイクルに対する圧力の一貫した変動も呈する。周期的な圧受容器刺激を提供する機器は、内因性概日リズムを模倣し、このリズムを乱さずに、交感神経経の反射抑制および全身血圧の低減を可能にする。本主題は、内因性概日リズムを乱さずに平均動脈圧を低減するために圧受容器刺激周波数/振幅を変動させる、ペーシングプロトコルを提供する。
【0087】
図20A−20Eは、概日リズムを図示する。図20Aは、正午から正午までの24時間の平均動脈圧と関連する概日リズムを図示し、図20Bは、正午から正午までの24時間の心拍数と関連する概日リズムを図示し、図20Cは、正午から正午までの24時間の1回拍出量の変化率(SV%)と関連する概日リズムを図示し、図20Dは、正午から正午までの24時間の心拍出量(CO)の変化率と関連する概日リズムを図示し、図20Eは、正午から正午までの24時間の血管拡張の指数である、全末梢血管抵抗の変化率(TPR%)と関連する概日リズムを図示する。種々の実施形態は、絶対値をグラフにし、種々の実施形態は、パーセント値をグラフにする。これらの図中、枠で囲んだ部分は、およそ午後10時から午前7時までの夜の時間を表し、したがって、安静または睡眠時間を表す。例えば、図20Aおよび20Bを参照して、平均動脈圧および心拍数の両方が安静の期間中に低下させられることが明白である。より高い血圧および心拍数は、安静に悪影響を及ぼし得る。加えて、日中のより低い血圧および心拍数は、個人のエネルギーのレベルに悪影響を及ぼし得る。
【0088】
本主題の種々の実施形態は、多数の被験者に対する概日リズムに適合することを目的としている、事前にプログラムしたテンプレートを使用して、圧反射刺激を変調する。本主題の種々の実施形態は、被験者に適合するようにカスタマイズされたテンプレートを生成する。
【0089】
図21は、カスタマイズされた概日リズムテンプレートを使用する、本主題の種々の実施形態による、概日リズムに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。図示した方法2122は、2123において、高血圧症に関するパラメータを感知し、記録する。そのようなパラメータの実施例は、心拍数および平均動脈圧を含む。2124において、これらの記録したパラメータに基づいて概日リズムテンプレートが生成される。2125において、2124で生成された概日リズムテンプレートを使用して、圧反射刺激が変調される。
【0090】
上記の実施形態は、概日リズムに基づく圧受容器刺激の変調を指す。神経性刺激は、一般に、概日リズムに基づいて変調することができる。例えば、低い活動の時間(患者が安静にしていると予期される時)を概算するために、クロックを使用することができる。神経性刺激は、予期される安静時間中に増加され、他の時にオフにされるか、または低減される。一部の実施形態では、活動モニタは、概日リズムテンプレートを生成し、それは次いで、神経性刺激スケジュールに適用される。種々の実施形態によれば、概日リズムは、神経性刺激を調整するための規則を変調して、1日の1つの期間中に神経性刺激強度をより積極的に調整し、1日の別の期間中にはあまり積極的に調整しない。例えば、1日の第1の期間中に、より強い神経性刺激レベル(例えば、レベル3および4)を所与の活動レベル(例えば、レベルn−1およびn)にマップすることができ、1日の第2の期間中に、あまり強くない神経性刺激レベル(例えば、レベル1および2)を所与の活動レベル(例えば、レベルn−1およびn)にマップすることができる。感知された活動と参照の差異xの関数として神経性刺激強度を比例的に調整する、一部の実施形態では、1日の第1の期間中に、あまり強くない関数(f1(x))を使用することができ、1日の第2の期間中に、より強い関数(f2(x))を使用することができる。例えば、一部の実施形態は、日中に増加した活動で神経性刺激強度をより積極的に低減するが、夜間に増加した活動で神経性刺激をあまり積極的に低減しない。
【0091】
(所望の心拍出量を提供する神経性刺激(例えば、圧反射刺激)の変調)
本主題のある側面は、圧反射を刺激することによって全身血圧を低減するNS療法を提供し、さらに、心拍数制御のために心臓ペーシングリードを使用して心臓ペーシング療法を提供する、埋込型医療機器に関する。圧反射刺激および心臓ペーシングは、提携して発生し、心拍出量を犠牲にすることなく、血圧が低下されることを可能にする。
【0092】
種々の実施形態によれば、圧反射刺激装置は、別個の埋込型CRM機器と通信し、既存のペーシングリードを使用する。種々の実施形態では、圧反射刺激は、血管壁の中またはそれに隣接して配置される電極により、肺動脈、頸動脈洞、または大動脈弓中の圧受容器を通して発生する。種々の実施形態では、大動脈神経、頸動脈洞神経、または迷走神経等の求心性神経は、カフ電極で直接刺激される。
【0093】
圧反射刺激は、血管拡張を迅速にもたらし、全身血圧を減少させる。心拍出量の同時減少を補うために、圧反射刺激中にペーシング率が増加される。本主題は、血圧が圧反射刺激を通して徐々に低下されることを可能にする一方で、圧反射刺激を心臓ペーシングと組み合わせることによって、そうでなければそのような刺激を伴う、心拍出量の低下を回避し、埋込型機器が血圧制御中に心拍出量を維持することを可能にする。
【0094】
図22A−Bは、本主題の種々の実施形態による、心拍出量パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。図22Aは、心拍出量パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための一実施形態を図示する。図示した過程2226Aでは、2227において圧反射刺激が印加されているかどうかが判定される。圧反射刺激が印加されていない場合、本主題は、もしあれば、2228において、適切なペーシング率で適切なペーシング療法を実施する。圧反射刺激が印加されていない場合、本主題は、2229において、より高いペーシング率でペーシング療法を実施して心拍出量を維持する。
【0095】
図22Bは、心拍出量パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための一実施形態を図示する。図示した過程2226Bでは、2230において圧反射刺激が印加され、2231において心拍出量が十分であるかどうかが判定される。心拍出量が十分ではないと判定されると、2232において、十分な心拍出量を維持するようにペーシング率が増加させられる。
【0096】
種々の実施形態によれば、心拍出量を維持するように、圧反射刺激中に所定の因子によって既存のペーシング率が増加させられる。種々の実施形態では、心拍出量を維持するように、圧反射刺激中にあるペーシング率が開始される。所望の心拍出量を提供するように圧反射刺激を変調するステップは、心房および心室心拍数制御、AV遅延制御、再同期、および多重部位刺激とともに実施することができる。あるいは、1回拍出量は、右心室腔内の電極を使用する右心室インピーダンスによって、または左心室腔内または左心室腔に及ぶ電極を使用する左心室インピーダンスによって、監視されてもよく、ペーシング率は、固定心拍出量を維持するために神経性刺激の印加を使用して、増加されてもよい。
【0097】
(硬化過程を再形成する圧反射刺激の変調)
本主題の側面は、埋込型NS機器によって使用される、不応性高血圧症患者の全身血圧を低下させる、圧反射刺激のための方法を伴う。圧反射刺激アルゴリズムは、圧反射刺激を徐々に増加させて、プログラム可能な標的に向けて血圧をゆっくりと調整する。このアルゴリズムは、通常は圧力低下作用を減衰させる、一定の増加したレベルの圧反射刺激に中枢神経系が適応することを防ぐ。また、血圧変化の漸進的性質は、全身血圧および心拍出量の急変を伴わずに、患者が治療により良く耐えることを可能にする。
【0098】
本主題は、増加した圧反射刺激への中枢神経系の適応を防ぐように、患者に存在した以前の高血圧状態によって誘起される、動脈硬化過程の逆転を可能にする時間で血圧レベルをゆっくりと減少させるように、および圧受容器刺激中の心拍出量減少を防ぐように設計されている、特定のアルゴリズムまたは過程を提供する。時間とともに、動脈系が、以前に存在した高血圧症によって開始された硬化過程を再形成することが予期される。平均/中央血圧のゆっくりとした進行性低下は、逆再造形を介して、この硬化過程のゆっくりとした逆転を可能にする。血圧は、過程において心拍出量を低下させることなく低減されるため、望ましくない患者の症状を回避する。
【0099】
種々の実施形態では、機器は、血管壁の中またはそれに隣接して配置される電極により、肺動脈、頸動脈洞、または大動脈弓中の圧受容器を刺激する。種々の実施形態では、大動脈神経、頸動脈洞神経、または迷走神経等の求心性神経は、カフ電極で直接刺激される。刺激した圧反射は、血管拡張を迅速にもたらし、全身血圧を減少させる。しかしながら、一定の上昇したレベルで圧反射を刺激するよりもむしろ、本主題の機器は、例えば、最初にわずかに増加したレベルで刺激し、次いで、数週間または数ヶ月の期間にわたって刺激を徐々に増加させる。変化率は、現在の動脈圧および標的動脈圧に基づいて機器によって判定される。種々の実施形態では、システムは、心拍出量の直接的または間接的な測定に基づいて変化率を判定し、圧力の減少が、減少した心拍出量の犠牲において発生していないことを確実にする。種々の実施形態では、圧反射刺激率は一定ではないが、神経連絡分布をより綿密に模倣する白色雑音型分布を有する。神経連絡分布を模倣することによって、圧反射が刺激に対してより反応するため、圧反射を刺激するための閾値を低下させることが期待される。
【0100】
図23は、本主題の種々の実施形態による、硬化を逆再形成させるように圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。2333において、圧反射イベントトリガが発生する。このトリガは、AHT機器の起動を含む、圧反射刺激を開始する任意のイベントを含む。2334において、硬化過程を逆再形成するために、血圧を標的圧力まで徐々に低下させる所定の変化率によって、圧反射刺激を増加させるようにアルゴリズムが実施される。2335において、圧反射療法アルゴリズムを続けるかどうかが判定される。アルゴリズムは、例えば、イベント中断、感知されたパラメータ、および/または標的血圧の到達に基づいて、2336において中止されてもよい。2337において、心拍出量が容認可能であるかどうかが判定される。心拍出量が容認可能ではない場合、2338において、圧反射の変化率は、心拍出量に基づいて修正される。
【0101】
(心筋梗塞を治療する圧反射刺激)
心筋梗塞後、梗塞領域中の筋細胞は死んで、機能的心筋とは異なる機械的および弾性特性を有する、瘢痕組織に代替される。経時的に、この梗塞領域は菲薄化および拡大し得て、心臓全体にわたって心筋ストレスの再配分を引き起こす。最終的に、この過程は、高応力下の領域中の機械的機能の低下、および心不全につながる。高応力下の領域は、高「負荷」であると呼ばれ、応力の低減は、「無負荷」と称される。急性心筋梗塞を治療して、心筋損傷を予防または低減する機器が望ましい。
【0102】
本主題のある側面は、心臓の電気的活動を監視する、埋込型機器に関する。心筋梗塞の検出時に、機器は、血管壁の中またはそれに隣接する圧受容器を刺激することによって、および/または圧受容性神経を直接刺激することによって、圧反射を電気的に刺激する。増加した圧反射刺激は、低減した圧反射感度を補い、心筋梗塞後の患者の臨床予後を改善する。埋込型機器(例えば、CRM機器)は、心臓の電気的活動を監視する。心筋梗塞の検出時に、機器は圧反射を刺激する。機器の一部の実施形態は、血管壁の中またはそれに隣接して配置される電極により、肺動脈、頸動脈洞、または大動脈弓中の圧受容器を刺激する。種々の実施形態では、大動脈神経等の求心性神経は、カフ電極で直接、または求心性神経の近傍に静脈内配置されるリードで刺激される。頸動脈洞神経または迷走神経等の求心性神経は、カフ電極で直接、または求心性神経の近傍に静脈内配置されるリードで刺激される。種々の実施形態では、心臓脂肪体は、脂肪体にねじ込まれる電極、あるいは脂肪体に最も近い血管または心腔に静脈内供給されるリードを使用して、刺激される。
【0103】
圧反射刺激は、血管拡張を迅速にもたらし、全身血圧を減少させる。このことは、低減した圧反射感度を補い、心筋梗塞を低減する。種々の実施形態によれば、適切なレベルの刺激が送達されることを確実にするように、圧反射刺激中に全身血圧または代理パラメータが監視される。本主題の一部の側面および実施形態は、圧反射刺激を提供して心筋梗塞後の虚血性障害を予防する。
【0104】
図24A−24Bは、本主題の種々の実施形態による、心筋梗塞を検出し、検出した心筋梗塞に応じて圧力ペーシングを行うシステムおよび方法を図示する。図24Aは、心筋梗塞検出器2439および圧反射または圧受容器刺激装置2440を含むシステムを図示する。心筋梗塞は、例えば、心電図を使用して検出することができる。例えば、テンプレートを心電図と比較して、心筋梗塞を判定することができる。別の例は、ST部分の上昇の変化を検出して、心筋梗塞を検出する。種々の実施形態では、検出器2439および刺激装置2440は、例えば、AHT機器またはCRM機器等の単一埋込型機器に統合される。種々の実施形態では、検出器2439および刺激装置2440は、互いに通信するように構成される別個の埋込型機器において実装される。
【0105】
図24Bは、本主題の種々の実施形態による、心筋梗塞を検出し、検出した心筋梗塞に応じて圧力ペーシングを行うシステムおよび方法を図示する。2441において、心筋梗塞が発生したかどうかが判定される。心筋梗塞が発生したと判定されると、2442において圧反射が刺激される。例えば、種々の実施形態では、肺動脈の中または周囲の圧受容器は、右心房および肺動脈弁を通って肺動脈の中へ供給されるリードを使用して、刺激される。他の実施形態は、他の圧受容器部位および圧受容性神経を刺激する。一部の実施形態は、2443において、全身血圧または代理パラメータを監視し、2444において、この監視に基づいて刺激が調整されるべきかどうかを判定する。刺激が調整される場合、圧反射刺激は、2445において変調される。変調の実施例は、刺激の振幅、周波数、バースト周波数、および/または波形を変更するステップを含む。
【0106】
圧反射刺激等の神経性刺激は、心筋梗塞後に無負荷にするために使用することができる。種々の実施形態は、NS機器のフィードバック制御システム内の、虚血センサ等の急性心筋梗塞検出センサを使用する。しかしながら、心筋梗塞検出センサは必要とされない。例えば、刺激リードは、心筋梗塞後に埋め込むことができる。種々の実施形態では、刺激リードは、右心房を通って肺動脈の中へ埋め込まれ、肺動脈の中および周囲の圧受容器を刺激する。種々の実施形態は、求心性神経を刺激する刺激カフまたはリード、心臓脂肪体を刺激する電極ネジまたはリード、および本開示の他の場所で提供されるような他の圧受容器を刺激するリードを埋め込む。
【0107】
高負荷領域の電気的な事前励起は、この領域にかかる負荷を低減する。この事前励起は、最終的に心臓の有害な再造形につながる、交感神経活性および大域的応力の増加をもたらす心拍出量を、有意に低減してもよい。この過程は、この反射の影響を低減するために、増加した神経性刺激によって回避されてもよい。したがって、事前励起中の副交感神経系の活性化は、電気的な事前励起によって、無負荷の望ましくない副作用を予防し得る。
【0108】
当業者であれば、本明細書に示され、記載されるモジュールおよび他の回路は、ソフトウェア、ハードウェア、ならびにソフトウェアおよびハードウェアの組み合わせを使用して実装できることを理解するであろう。そのようなものとして、モジュールという用語は、ソフトウェア実装、ハードウェア実装、ならびにソフトウェア実装とハードウェア実装とを包含することを目的とする。
【0109】
本開示で図示される方法は、本主題の範囲内の他の方法を除くことを目的としない。当業者であれば、本開示を熟読および理解することによって、本主題の範囲内の他の方法を理解するであろう。上記で示した実施形態、および図示した実施形態の各部は、必ずしも相互に排他的ではない。これらの実施形態、またはそれらの各部は、組み合わせることができる。例えば、種々の実施形態は、図示した過程のうちの2つ以上を組み合わせる。2つ以上の感知パラメータは、所望の神経性刺激(NS)または血圧降下(AHT)療法を提供するために使用される複合パラメータに組み合わせることができる。種々の実施形態では、上記で提供される方法は、搬送波または伝搬信号に埋め込まれるコンピュータデータ信号として実施され、それは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに各方法を行わせる、一連の命令を表す。種々の実施形態では、上記で提供される方法は、プロセッサに各方法を行うように指示することが可能な、コンピュータアクセス可能媒体上に含有される一式の命令として実施される。種々の実施形態では、媒体は、磁気媒体、電子媒体、または光学媒体である。
【0110】
具体的実施形態を本明細書で図示および説明したが、同じ目的を達成するように計算される任意の配設が、示される具体的実施形態に代替されてもよいことが、当業者によって十分理解されるであろう。本願は、本主題の適応型または変化型を対象とすることを目的とする。上記の説明は、限定的ではなく、例示的となることを目的とすることが理解される。上記の実施形態の組み合わせ、ならびに他の実施形態での上記の実施形態の各部の組み合わせは、上記の説明を再検討することによって、当業者に明白となるであろう。本主題の範囲は、添付の請求項を参照して、そのような請求項が享受できる同等物の全範囲とともに、決定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本願は、米国特許出願第11/558,083号(2006年11月9日出願)に基づく優先権を主張するものであり、この出願は、その全体を参考として本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本願は、概して、埋込型医療機器に関し、より具体的には、活動に基づいて神経性刺激を自動的に変調することに関する。
【背景技術】
【0003】
内科的治療法を送達するために、心臓刺激装置等の慢性電気刺激装置を埋め込むことが知られている。心臓刺激装置の実施例は、ペースメーカー等の埋込型心調律管理(CRM)機器、埋込型細動除去器(ICD)、ならびにペーシングおよび除細動機能を果たすことが可能な埋込型機器を含む。
【0004】
CRM機器は、心調律の障害を治療するために、選択された心腔に電気刺激を提供する埋込型機器である。埋込型ペースメーカーは、例えば、タイミングの合ったペーシングパルスで心臓のペースを保つCRM機器である。適切に機能すれば、ペースメーカーは、最小心拍数を実施することによって代謝要求を満たすために、適切な調律で自らペースを保つことができない心臓を補う。一部のCRM機器は、収縮を協調させるために、心臓の異なる領域に送達されるペーシングパルスを同期化する。協調した収縮は、十分な心拍出量を提供しながら、心臓が効率的に拍出することを可能にする。
【0005】
心不全とは、心臓機能が、末梢組織の代謝要求を満たすのに十分なレベルを下回り得る正常以下の心拍出量を引き起こす、臨床的症候群を指す。心不全は、付随する静脈および肺のうっ血によるうっ血性心不全(CHF)として現れる場合がある。心不全は、虚血性心疾患等の種々の病因によるものとなり得る。
【0006】
高血圧症は、心疾患および他の関連心臓共存疾患の原因である。高血圧症は、血管が収縮すると発生する。結果として、心臓がより激しく動き、より高い血圧で血流を維持し、それが心不全の一因となり得る。大部分の一般人口、ならびにペースメーカーまたは除細動器を埋め込まれた大部分の患者は、高血圧症に罹患している。血圧および高血圧症を低減することができれば、この集団にとって長期死亡率および生活の質を改善することができる。高血圧症に罹患している多くの患者は、生活様式の変化および血圧降下剤に関係する治療等の治療に反応しない。
【0007】
圧受容領域または分野は、血圧の変化等の圧力の変化を感知することが可能である。圧受容器領域は、本明細書では圧受容器と呼ばれ、概して、圧力変化の任意の感覚器を含む。例えば、圧受容器は、求心性神経を含み、さらに、内側からの圧力上昇に起因する壁の伸張に敏感であり、圧力を低減する傾向がある中枢性反射機構の受容器官として機能する、感覚神経終末を含む。圧反射は、負のフィードバックシステムとして機能し、圧受容器の刺激によって誘起される反射機構に関する。圧力上昇は血管を伸張させ、それは順に、血管壁中の圧受容器を活性化する。圧受容器の活性化は、動脈壁の内圧および伸張を通して自然に発生し、交感神経活動(SNA)の圧反射抑制および全身動脈圧の低減を引き起こす。圧受容器活動の増加は、末梢血管抵抗を減少させることによって血圧を低減する、SNAの低減を誘発する。
【0008】
圧受容器から通じる求心性神経幹を刺激するという一般概念が知られている。例えば、直接電気刺激が迷走神経および頸動脈洞に印加されている。研究は、頸動脈洞神経の電気刺激が実験的高血圧症の低減をもたらし、頸動脈洞圧受容器領域への直接電気刺激が自ら実験的高血圧症の反射性低減を引き起こすことを示している。
【0009】
そうでなければ生活様式の変化および血圧降下剤を伴う治療法に反応しない患者の高血圧症を治療し、場合により他の患者の薬物依存を低減するために、電気システムが提案されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本主題の種々の側面および実施形態は、神経性刺激を自動的に変調するために、活動に関する少なくとも1つのパラメータを使用する。本書は、神経性刺激の一実施例として、圧反射刺激について議論する。当業者であれば、本開示を熟読および理解することにより、活動に基づいて他の種類の神経性刺激を変調できることを理解するであろう。
【0011】
神経性刺激を提供するためのシステムのある実施形態は、活動を感知し、活動を示す信号を提供する、活動モニタと、神経刺激装置とを備える。神経刺激装置は、神経性刺激療法を提供するように構成される神経性刺激信号を提供する、パルス発生器を含み、活動を示す前記信号を受信し、活動を示す信号に基づいて神経性刺激信号を変調して神経性刺激療法を変更する、変調器をさらに含む。
【0012】
神経刺激装置のある実施形態は、神経性刺激療法を提供するように構成される神経性刺激信号を提供する、埋込型パルス発生器と、神経性刺激療法の強度を変更するように、活動を示す信号に基づいて神経性刺激信号を変調するための手段とを備える。
【0013】
神経性刺激を提供するための方法のある実施形態によれば、活動が感知され、感知された活動に基づいて神経性刺激が自動的に制御される。ある実施形態は、感知された活動を使用して、安静の期間および運動の期間を判定し、安静中に神経性刺激を印加し、運動中に神経性刺激を撤回する。
【0014】
この課題を解決するための手段は、本出願の教示の一部の概説であり、本主題の排他的または包括的な扱いとなることを目的としない。本主題についてのさらなる詳細は、発明を実施するための形態および添付の請求項にある。それぞれが限定的な意味で理解されるものではない、次の発明を実施するための形態を熟読および理解し、その一部を形成する図面を参照することによって、他の側面が当業者にとって明白となるであろう。本発明の範囲は、添付の請求項およびそれらの同等物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aおよび1Bは、末梢血管制御のための神経機構を図示する。
【図1B】図1Aおよび1Bは、末梢血管制御のための神経機構を図示する。
【図2A】図2A−2Cは、心臓を図示する。
【図2B】図2A−2Cは、心臓を図示する。
【図2C】図2A−2Cは、心臓を図示する。
【図3】図3は、頸動脈洞および大動脈弓の領域中の圧受容器および求心性神経を図示する。
【図4】図4は、肺動脈の中および周囲の圧受容器を図示する。
【図5】図5は、大動脈弓、動脈管索、および肺動脈幹中の圧受容器域を図示する。
【図6】図6は、圧反射が刺激された時の呼吸と血圧の既知の関係を図示する。
【図7】図7は、断続的頸動脈神経刺激の6ヶ月間の高血圧症イヌにおける、頸動脈神経刺激への血圧反応を図示する。
【図8】図8は、本主題の種々の実施形態による、埋込型医療機器(IMD)およびプログラマを含むシステムを図示する。
【図9】図9は、本主題の種々の実施形態による、図8のシステムで示されるような埋込型医療機器(IMD)を図示する。
【図10A】図10A−10Cは、本主題の種々の実施形態による、統合圧力センサ(IPS)を伴う圧受容器刺激リードを図示する。
【図10B】図10A−10Cは、本主題の種々の実施形態による、統合圧力センサ(IPS)を伴う圧受容器刺激リードを図示する。
【図10C】図10A−10Cは、本主題の種々の実施形態による、統合圧力センサ(IPS)を伴う圧受容器刺激リードを図示する。
【図11】図11は、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)部品および心調律管理(CRM)部品を有する、図8に示されるような埋込型医療機器(IMD)を図示する。
【図12】図12は、本主題の種々の実施形態による、プログラマ、埋込型神経刺激(NS)機器、および埋込型心調律管理(CRM)機器を含むシステムを図示する。
【図13】図13は、本主題の種々の実施形態による、図12のシステムで示されるような埋込型神経刺激(NS)機器を図示する。
【図14】図14は、本主題の種々の実施形態による、図12のシステムで示されるような埋込型心調律管理(CRM)機器を図示する。
【図15】図15は、本主題の種々の実施形態による、図8および12のシステムで図示されるようなプログラマ、または埋込型医療機器と通信する他の外部機器を図示する。
【図16A】図16A−16Dは、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)機器からの電気刺激と心調律管理(CRM)機器による感知との間の干渉を防ぐシステムおよび方法を図示する。
【図16B】図16A−16Dは、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)機器からの電気刺激と心調律管理(CRM)機器による感知との間の干渉を防ぐシステムおよび方法を図示する。
【図16C】図16A−16Dは、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)機器からの電気刺激と心調律管理(CRM)機器による感知との間の干渉を防ぐシステムおよび方法を図示する。
【図16D】図16A−16Dは、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)機器からの電気刺激と心調律管理(CRM)機器による感知との間の干渉を防ぐシステムおよび方法を図示する。
【図17】図17は、本主題の種々の実施形態による、圧反射刺激等の神経性刺激を変調するシステムを図示する。
【図18A】図18A−18Eは、本主題の種々の実施形態による、活動パラメータに基づいて圧受容器刺激等の神経性刺激を変調するための方法を図示する。
【図18B】図18A−18Eは、本主題の種々の実施形態による、活動パラメータに基づいて圧受容器刺激等の神経性刺激を変調するための方法を図示する。
【図18C】図18A−18Eは、本主題の種々の実施形態による、活動パラメータに基づいて圧受容器刺激等の神経性刺激を変調するための方法を図示する。
【図18D】図18A−18Eは、本主題の種々の実施形態による、活動パラメータに基づいて圧受容器刺激等の神経性刺激を変調するための方法を図示する。
【図18E】図18A−18Eは、本主題の種々の実施形態による、活動パラメータに基づいて圧受容器刺激等の神経性刺激を変調するための方法を図示する。
【図19A】図19A−19Bは、本主題の種々の実施形態による、呼吸パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。
【図19B】図19A−19Bは、本主題の種々の実施形態による、呼吸パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。
【図20A】図20A−20Eは、概日リズムを図示する。
【図20B】図20A−20Eは、概日リズムを図示する。
【図20C】図20A−20Eは、概日リズムを図示する。
【図20D】図20A−20Eは、概日リズムを図示する。
【図20E】図20A−20Eは、概日リズムを図示する。
【図21】図21は、本主題の種々の実施形態による、概日リズムに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。
【図22A】図22A−22Bは、本主題の種々の実施形態による、心拍出量パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。
【図22B】図22A−22Bは、本主題の種々の実施形態による、心拍出量パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。
【図23】図23は、本主題の種々の実施形態による、硬化を逆再形成するように圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。
【図24A】図24A−24Bは、本主題の種々の実施形態による、心筋梗塞を検出し、検出した心筋梗塞に応じて圧力ペーシングを行うシステムおよび方法を図示する。
【図24B】図24A−24Bは、本主題の種々の実施形態による、心筋梗塞を検出し、検出した心筋梗塞に応じて圧力ペーシングを行うシステムおよび方法を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本主題の次の発明を実施するための形態は、例証として、本主題を実行することができる具体的な側面および実施形態を示す、添付図面を参照する。当業者が本主題を実践することが可能となるように、これらの実施形態を十分に詳細に説明する。他の実施形態を利用してもよく、かつ本主題の範囲を逸脱しない限り、構造的、理論的、および電気的な変更を行ってもよい。本開示における「ある」、「1つの」、または「種々の」実施形態に対する言及は、必ずしも同じ実施形態を指さず、そのような言及は、2つ以上の実施形態を検討する。したがって、次の発明を実施するための形態は、限定的な意味で理解されるものではなく、範囲は、添付の請求項のみによって、そのような請求項が享受できる法的同等物の全範囲とともに、定義される。
【0017】
(高血圧症、圧反射、心不全、および心臓再造形)
読者が本開示を理解することを補助するために、高血圧症および圧受容器に関する生理機能の簡潔な考察を提供する。この簡潔な考察は、高血圧症、自律神経系、および圧反射を紹介する。
【0018】
高血圧症は、心疾患および他の関連する心臓共存疾患の原因である。高血圧症は、概して、心臓血管損傷または他の有害な結果を誘発する可能性があるレベルへの全身動脈血圧の一過性のまたは持続的な上昇等の、高い血圧に関する。高血圧症は、140mmHg以上の収縮期血圧、または90mmHg以上の拡張期血圧として任意に定義されている。高血圧症は、血管が収縮すると発生する。結果として、心臓がより激しく動き、より高い血圧で血流を維持する。制御されていない高血圧症の結果は、網膜血管疾患および発作、左心室肥大および不全、心筋梗塞、解離性動脈瘤、ならびに腎血管性疾患を含むが、それらに限定されない。
【0019】
自律神経系(ANS)が「不随意」器官を調節する一方で、随意(骨格)筋の収縮は、体性運動神経によって制御される。不随意器官の例は、呼吸器官および消化器官を含み、また、血管および心臓も含む。しばしば、ANSは、不随意の反射的な方法で機能して、例えば、腺を調節し、皮膚、目、胃、腸、および膀胱の筋肉を調節し、心筋および血管の周囲の筋肉を調節する。
【0020】
ANSは、交感神経系および副交感神経系を含む。交感神経系は、緊張時および緊急時に対する「闘争または逃走反応」と連携している。いくつかある作用の中で、特に、「闘争または逃走反応」は、血圧および心拍数を増加させて骨格筋血流量を増加させ、消化を減少させて、「闘争または逃走」に対するエネルギーを提供する。副交感神経系は、弛緩および「安静または消化反応」と連携し、それはいくつかある作用の中で特に、血圧および心拍数を減少させ、消化を増加させてエネルギーを節約する。ANSは、正常な内部機能を維持し、体性神経系と連動する。
【0021】
種々の実施形態は、血管拡張および血管収縮を含む、心拍数および血圧に対してANSが及ぼす作用に言及する。心拍および力は、交感神経系が刺激されると増加させられ、交感神経系が抑制される(副交感神経系が刺激される)と減少させられる。図1Aおよび1Bは、末梢血管制御のための神経機構を図示する。図1Aは概して、血管運動神経中枢への求心性神経を図示する。求心性神経は、神経中枢に向かってインパルスを伝える。血管運動神経中枢は、血管を拡張および収縮して血管のサイズを制御する神経に関する。図1Bは概して、血管運動神経中枢からの遠心性神経を図示する。遠心性神経は、神経中枢から離れる方向にインパルスを伝える。
【0022】
交感神経系および副交感神経系を刺激すると、心拍数および血圧以外の作用を及ぼすことができる。例えば、交感神経系を刺激すると、瞳孔を拡張し、唾液および粘液の産生を低減し、気管支筋を弛緩し、胃の不随意収縮(蠕動)の連続波および胃の運動性を低減し、肝臓によるグリコーゲンのグルコースへの変換を増加し、腎臓による尿分泌を減少し、膀胱の壁を弛緩して括約筋を閉じる。副交感神経系を刺激する(交感神経系を抑制する)と、瞳孔を収縮し、唾液および粘液の産生を増加し、気管支筋を収縮し、胃および大腸における分泌物および運動性を増加し、小腸における消化を増加し、尿分泌を増加し、膀胱の壁を収縮して括約筋を弛緩する。交感神経系および副交感神経系と関連する機能は多く、互いに複雑に統合することができる。したがって、1つの生理系で血管拡張等の所望の反応を達成する、交感神経系および/副交感神経系の無差別刺激はまた、他の生理系で望ましくない反応をもたらす場合がある。
【0023】
圧反射は、圧受容器の刺激によって誘起される反射である。圧受容器は、心耳、心臓脂肪体、大静脈、大動脈弓、および頸動脈洞の壁の中の感覚神経終末等の、圧力変化の任意の感覚器を含み、それは、内側からの圧力上昇に起因する壁の伸張に敏感であり、その圧力を低減する傾向がある中枢性反射機構の受容器官として機能する。加えて、圧反射経路は、感覚神経終末から通じる、迷走神経、大動脈神経、および頸動脈神経等の求心性神経幹を含む。圧反射刺激は、交感神経活動を抑制し(副交感神経系を刺激する)、末梢血管抵抗および心筋収縮能を減少させることによって全身動脈圧を減少させる。圧受容器は、動脈壁の内圧および伸張によって自然に刺激される。
【0024】
本主題の一部の側面は、神経系を無差別に刺激することの望ましくない作用を低減しながら、所望の反応(例えば、高血圧症の低減)を刺激する目的で、求心性神経幹を刺激するよりもむしろ、動脈壁の中の特定神経終末を局所的に刺激する。例えば、一部の実施形態においては、肺動脈中の圧受容器部位を刺激する。本主題の一部の実施形態は、大動脈、心腔、および心臓の脂肪体の中の圧受容器部位または神経終末のいずれかを刺激するステップを伴い、本主題の一部の実施形態は、迷走神経、頸動脈神経、および大動脈神経等の求心性神経幹を刺激するステップを伴う。一部の実施形態は、カフ電極を使用して求心性神経幹を刺激し、一部の実施形態は、神経に最も近い血管中に配置される血管内リードを使用して求心性神経幹を刺激するために、電気刺激が血管壁を通過して求心性神経幹を刺激する。
【0025】
図2A−2Cは、心臓を図示する。図2Aに図示されるように、心臓201は、上大静脈202、大動脈弓203、および肺動脈204を含み、図3−5の図解との文脈上の関係を提供することに有用である。下記でさらに詳細に論じられるように、肺動脈204は、圧受容器を含む。リードは、心臓ペースメーカーリードと同様に、末梢静脈を通り、三尖弁を通り、心臓の右心室の中へと(図中で明示せず)、血管内に挿入されて、右心室から肺動脈弁を通って肺動脈の中へ進み続けることが可能である。肺動脈および大動脈の一部は、互いに近接している。種々の実施形態は、肺動脈に血管内で配置されるリードを使用して、大動脈中の圧受容器を刺激する。したがって、本主題の種々の側面によれば、圧反射は、肺動脈の中へ血管内に挿入される少なくとも1つの電極によって、肺動脈の中または周囲において刺激される。あるいは、圧力感知性能があるか、またはない、無線刺激機器が、カテーテルを介して肺動脈の中に配置されてもよい。刺激および/または刺激のためのエネルギーの制御は、超音波、電磁、またはそれらの組み合わせを介して、別の埋込型または外部機器によって供給されてもよい。本主題の側面は、圧反射刺激装置を肺動脈の中の血管内に埋め込む、比較的非侵襲性の外科技術を提供する。
【0026】
図2B−2Cは、それぞれ心臓の右側および左側を図示し、圧受容器部位として機能する神経終末を有する心臓脂肪体をさらに図示する。図2Bは、右心房267、右心室268、洞房結節269、上大静脈202、下大静脈270、大動脈271、右肺静脈272、右肺動脈273を図示する。図2Bはまた、上大静脈と大動脈との間の心臓脂肪体274も図示する。心臓脂肪体274中の圧受容器神経終末は、一部の実施形態では、脂肪体にねじ込まれる電極を使用して刺激され、一部の実施形態では、例えば、右肺動脈または上大静脈等の血管中の脂肪体に近接して配置される血管内供給リードを使用して刺激される。図2Cは、左心房275、左心室276、右心房267、右心室268、上大静脈202、下大静脈270、大動脈271、右肺静脈272、左肺静脈277、右肺動脈273、および冠状静脈洞278を図示する。図2Cはまた、右心静脈の最も近くに位置する心臓脂肪体279、ならびに下大静脈および左心房の最も近くに位置する心臓脂肪体280も図示する。脂肪体279中の圧受容器神経終末は、一部の実施形態では、脂肪体279にねじ込まれる電極を使用して刺激され、一部の実施形態では、例えば、右肺動脈273または右肺静脈272等の血管中の脂肪体に近接して配置される血管内供給リードを使用して刺激される。脂肪体280中の圧受容器は、一部の実施形態では、脂肪体にねじ込まれる電極を使用して刺激され、一部の実施形態では、例えば、下大静脈270または冠状静脈洞等の血管中の脂肪体に近接して配置される血管内供給リード、または左心房275中のリードを使用して刺激される。
【0027】
図3は、頸動脈洞305、大動脈弓303、および肺動脈304の領域中の圧受容器を図示する。大動脈弓303および肺動脈304は、図2Aに関して以前に図示した。図3に図示されるように、迷走神経306は、大動脈弓303中、頸動脈洞305中、および総頸動脈310中の圧受容器として機能する、感覚神経終末307を延在し、提供する。舌咽神経308は、頸動脈洞305中の圧受容器として機能する神経終末309を提供する。これらの神経終末307および309は、例えば、内部からの圧力上昇に起因する壁の伸張に敏感である。これらの神経終末の活性化は、圧力を低減する。図中に図示されていないものの、心臓の脂肪体ならびに心房および心室も、圧受容器を含む。カフは、迷走神経等の求心性神経幹の周囲に配置されており、圧受容器から血管運動神経中枢に通って、圧反射を刺激する。本主題の種々の実施形態によれば、求心性神経に最も近い血管中に配置されるカフまたは血管内供給リードを使用して、求心性神経幹を刺激することができる。
【0028】
図4は、肺動脈404の中および周囲の圧受容器を図示する。上大静脈402および大動脈弓403も図示される。図示されるように、肺動脈404は、色の濃い領域によって概して示されるような、多数の圧受容器411を含む。その上、一群の密集した圧受容器が、動脈管索412の付着部の近傍に位置している。図4はまた、心臓の右心室413、および肺動脈404から右心室413を分離する肺動脈弁414も図示する。本主題の種々の実施形態によれば、リードが、末梢静脈を通して挿入され、三尖弁を通って右心室の中へ、そして右心室413から肺動脈弁414を通って肺動脈404の中へ通されて、肺動脈の中および/または周囲の圧受容器を刺激する。種々の実施形態では、例えば、リードは、動脈管索412の近傍の一群の圧受容器を刺激するように配置される。図5は、動脈管索および肺動脈幹504近傍の、大動脈弓503中の圧受容器域512を図示する。一部の実施形態は、肺動脈にリードを配置して、大動脈および/または2B−2Cに図示されるような脂肪体中の圧受容器部位を刺激する。
【0029】
図6は、左大動脈神経が刺激された時の呼吸615と血圧616の既知の関係を図示する。617において神経が刺激されると、血圧616は低下し、呼吸615は、呼吸波形のより高い周波数および振幅によって図示されるように、より速く、かつより深くなる。呼吸および血圧は、刺激が除去された後、約1〜2分後に刺激前の状態に戻るように思われる。本主題の種々の実施形態は、血圧に対する代理パラメータとして呼吸を使用することによって、この呼吸と血圧の関係を使用する。
【0030】
図7は、断続的な頸動脈神経刺激の6ヶ月間の高血圧症イヌにおける、頸動脈神経刺激に対する既知の血圧反応を図示する。図は、刺激したイヌ718の血圧が、同様に高血圧を有する対照イヌ719の血圧よりも有意に低いことを図示する。したがって、断続的刺激は、圧反射を誘起して高血圧を低減することが可能である。
【0031】
心不全とは、心臓機能が、末梢組織の代謝要求を満たすのに十分なレベルを下回り得る正常以下の心拍出量を引き起こす、臨床的症候群を指す。心不全は、付随する静脈および肺のうっ血によるうっ血性心不全(CHF)として現れる場合がある。心不全は、虚血性心疾患等の種々の病因によるものとなり得る。
【0032】
心不全患者には、LV機能障害および死亡率の増加と関連する自律平衡の低減がある。交感神経系および副交感神経系の変調には、心不全およびMI後患者における再造形および死亡を防ぐ潜在的な臨床的有益性がある。直接電気刺激は、圧反射を活性化することができ、交感神経活動の低減を誘発し、血管抵抗を減少させることによって血圧を低減する。交感神経抑制および副交感神経活性は、おそらく急性虚血心筋の側副かん流を増加させ、心筋障害を減少させることによって、心筋梗塞後の不整脈脆弱性の低減と関連している。
【0033】
心筋梗塞(MI)または心拍出量の減少の他の原因の後に、構造、生化学、神経ホルモン、および電気生理学的因子を伴う、心室の複雑な再造形過程が発生する。心室再造形は、心室の拡張期充満圧を増加させる、いわゆる後方不全により、心拍出量を増加させるように作用する、生理学的代償機構によって誘起され、それにより、いわゆる前負荷(すなわち、心臓拡張期の終わりに、心室中の血液の量によって心室が伸張される程度)を増加させる。前負荷の増加は、フランク−スターリングの原則として知られる現象である、心臓収縮期中の1回拍出量の増加を引き起こす。しかしながら、ある期間にわたって前負荷の増加により心室が伸張されると、心室は拡張する。心室容積の拡大は、所与の収縮期圧における心室壁応力の増加を引き起こす。心室によって行われる圧力−体積作業の増加とともに、このことは心室筋の肥大に対する刺激の役割を果たす。拡張の不利点は、正常な残存心筋に課せられる余分な作業負荷、および肥大に対する刺激を表す壁張力の増加(ラプラスの法則)である。肥大が増加した張力に適合するのに十分ではない場合、さらなる進行性拡張を引き起こす悪循環が後に続いて起こる。
【0034】
心臓が拡張し始めるにつれて、ホルモン分泌および交感神経放電に反応する、血管運動中枢神経系の制御中枢に、求心性圧受容器および心肺受容器信号が送信される。最終的に、心室再造形に関与する細胞構造の有害な変化の主な原因となるのは、血行動態的な交感神経系およびホルモンの変調の組み合わせ(アンギオテンシン変換酵素(ACE)活性の有無等)である。肥大を引き起こす持続的応力は、心筋細胞のアポトーシス(すなわち、プログラム細胞死)、および心臓機能のさらなる低下を引き起こす最終的な壁の菲薄化を誘発する。したがって、心室拡張および肥大は、最初は代償性であり、かつ心拍出量を増加させる場合があるものの、この過程は、最終的には収縮および拡張(代償不全)両方の機能障害をもたらす。心室再造形の程度は、MI後および心不全患者における死亡率の増加と正の相関があることが示されている。
【0035】
(刺激システム)
本主題の種々の実施形態は、神経刺激(NS)(例えば、圧反射刺激)機器または部品に関する。神経性刺激は、神経連絡を刺激する、または神経連絡を抑制するために使用することができる。神経連絡を刺激する神経性刺激の一実施例は、低周波数信号(例えば、約20Hzから50Hzまでの範囲内)である。神経連絡を抑制する神経性刺激の一実施例は、高周波数信号(例えば、約120Hzから150Hzまでの範囲内)である。所定の場所に配置される刺激電極を使用して、所望の神経標的に電気刺激パルスを印加する他の実施形態を含む、神経連絡を刺激および抑制するための他の方法が提案されている。加えて、神経を刺激する際に使用するために、超音波、光、または磁気エネルギー等の他のエネルギーの種類が提案されている。本主題の種々の実施形態によれば、交感神経標的は、腓骨神経、脊髄中の交感神経柱、および心臓節後交感神経ニューロンを含むが、それらに限定されない。本主題の種々の実施形態によれば、副交感神経神経標的は、迷走神経、圧受容器、および心臓脂肪体を含むが、それらに限定されない。
【0036】
神経刺激装置の実施例は、高血圧症を治療するために使用される血圧降下(AHT)機器またはAHT部品、抗再造形療法を提供する神経刺激装置、および同等物を含む。本主題の種々の実施形態は、独立型の埋込型圧受容器刺激システムを含み、NSおよび心調律管理(CRM)部品を統合した埋込型機器を含み、少なくとも1つの埋込型NS機器と、無線で、または埋込型機器を接続するワイヤリードを介してのいずれかで、互いに通信することが可能な埋込型CRM機器とを伴うシステムを含む。同じ機器または別個の機器のいずれかで行われるNSおよびCRM機能を統合すると、NS療法および心臓療法が共に知的に(intelligently)機能することを可能にすることによって、これらの治療法の側面を改善する。
【0037】
図8は、本主題の種々の実施形態による、埋込型医療機器(IMD)821およびプログラマ822を含むシステム820を図示する。IMD821の種々の実施形態は、神経刺激装置機能のみを含み、種々の実施形態は、NS機能およびCRM機能の組み合わせを含む。神経刺激装置の一部の実施形態は、AHT機能を提供する。プログラマ822およびIMD821は、データおよび命令を無線で伝達することが可能である。種々の実施形態では、例えば、プログラマ822およびIMD821は、データおよび命令を無線で伝達するためにテレメトリコイルを使用する。したがって、IMD821によって提供されるプログラムした治療を調整するためにプログラマを使用することができ、IMDは、例えば、無線テレメトリを使用して、機器データ(バッテリおよびリード抵抗等)および治療データ(感知および刺激データ等)をプログラマに報告することができる。種々の実施形態によれば、IMD821は、圧受容器を刺激してAHT療法等のNS療法を提供する。IMD821の種々の実施形態は、心臓ペースメーカーリードと同様に右心室を通して供給され、さらに肺動脈の中へ供給されるリードを使用して、肺動脈中の圧受容器を刺激する。種々の実施形態によれば、IMD821は、ANS活動を感知するセンサを含む。閉ループ制御システムでフィードバックを行うために、そのようなセンサを使用することができる。例えば、種々の実施形態は、ANS活動を示す、呼吸および血圧等の代理パラメータを感知する。種々の実施形態は、心拍数、分時換気量、動作センサ、および同等物等の活動センサを含む。種々の実施形態によれば、IMDは、圧受容器を刺激する、および/またはANS活動を感知する性能に加えて、ペーシングおよび除細動等の心臓刺激性能をさらに含む。
【0038】
図9は、本主題の種々の実施形態による、図8のシステム820において示されるIMD821等の埋込型医療機器(IMD)921を図示する。図示したIMD921は、NS機能を果たす。図示したIMD921の一部の実施形態は、AHT機能を果たすため、埋込型AHT機器を図示する。図示した機器921は、制御器回路923およびメモリ924を含む。制御器回路923は、ハードウェア、ソフトウェア、ならびにハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを使用して実装されることが可能である。例えば、種々の実施形態によれば、制御器回路923は、メモリ924に埋め込まれた命令を実行して、AHT療法等のNS療法と関連する機能を果たすための、プロセッサを含む。例えば、図示した機器921は、プログラマあるいは別の外部または内部機器と通信するための使用に対する、トランシーバ925および関連回路をさらに含む。種々の実施形態は、無線通信性能を有する。例えば、一部のトランシーバの実施形態は、プログラマあるいは別の外部または内部機器と無線通信するために、テレメトリコイルを使用する。
【0039】
図示した機器921は、神経刺激装置回路926をさらに含む。機器921の種々の実施形態はまた、センサ回路927も含む。1つ以上のリードは、センサ回路927および刺激装置回路926に接続されることが可能である。神経刺激装置回路926は、1つ以上の刺激電極を通して、所望の神経標的(例えば、圧反射部位または他の神経標的)に電気刺激パルスを印加するために使用される。センサ回路927は、ANS神経活動および/または血圧、呼吸、および同等物等の代理パラメータを検出および処理して、ANS活動を判定するために使用される。
【0040】
種々の実施形態によれば、刺激装置回路926は、刺激パルスの振幅928、刺激パルスの周波数929、パルスのバースト周波数930または負荷サイクル、およびパルスの波の形態931といったパルスの特徴のうちのいずれか1つ、または2つ以上の任意の組み合わせを設定するモジュールを含む。波の形態の例は、方形波、三角波、正弦波、および自然発生の圧反射刺激を示すような白色雑音を模倣する所望の調和成分を伴う波を含む。
【0041】
図10A−10Cは、本主題の種々の実施形態による、統合圧力センサ(IPS)を伴う圧受容器刺激リードを図示する。一定の縮尺で描かれていないものの、これらの図示したリード1032A、1032B、および1032Cは、圧受容器刺激装置電極1034を伴うIPS1033を含んで、血圧の変化、および圧受容器刺激の作用を監視する。これらのリードの実例は、本主題の他の側面および実施形態を制限するものとして解釈すべきではない。例えば、種々の実施形態では、血圧を感知するために、微小電子機械システム(MEMS)技術が使用される。一部のセンサ実施形態は、膜の変位に基づいて血圧を判定する。
【0042】
図10A−10Cは、リード上のIPSを図示する。一部の実施形態は、IMDまたはNS機器にIPSを埋め込む。たとえ刺激装置およびセンサが別個のリードまたは場所に位置していても、刺激装置およびセンサ機能を統合することができる。
【0043】
図10Aに図示されるリード1032Aは、遠位に配置した圧受容器刺激装置電極1034およびIPS1033を含む。このリードは、例えば、肺動脈、大動脈弓、動脈管索、冠状静脈洞、心房および心室、および/または心臓脂肪体中の圧受容器部位等の圧受容器部位を刺激するように、血管内導入されることが可能である。
【0044】
図10Bに図示されるリード1032Bは、先端電極1035、第1のリング電極1036、第2のリング電極1034、およびIPS1033を含む。このリードは、心腔の中に、またはその最も近くに血管内挿入され、さらに、電極1035、1036、および1034のうちの少なくともいくつかが、心臓のペースを合わせる、あるいは心臓を刺激するために使用されることが可能であり、かつ電極のうちの少なくともいくつかが、少なくとも1つの圧受容器部位を刺激することが可能であるように、圧受容器部位の最も近くに配置されてもよい。IPS1033は、血圧を感知するために使用される。種々の実施形態では、IPSは、刺激のために選択された圧受容器部位に最も近い血管における血圧を感知するために使用される。
【0045】
図10Cに図示されるリード1032Cは、遠位に配置した圧受容器刺激装置電極1034、IPS1033、およびリング電極1036を含む。このリード1032Cは、例えば、右心房および右心室の中へ、次いで肺動脈弁を通って肺動脈の中へ血管内挿入されてもよい。機器のプログラミングによっては、電極1036は、右心室内で発生してもよい活動等の心臓活動のペースを合わせる、および/または感知するために使用することができ、電極1034およびIPS1033は、肺動脈の中または周囲の圧受容器の近傍に位置して、直接的にまたは代理パラメータを通して間接的に、のいずれかで、圧反射活動を刺激および感知する。
【0046】
したがって、本主題の種々の実施形態は、IPSを使用して圧受容器刺激を自動的に変調する、埋込型NS機器を提供する。圧力センサをリードに統合することは、刺激に対する局所化されたフィードバックを提供する。この局所的な感知は、フィードバック制御を改善する。例えば、統合センサは、標的が連続してオーバーシュートされないように、圧反射の慣性を補うために使用することができる。種々の実施形態によれば、機器は、平均動脈圧、収縮期圧、拡張期圧、および同等物等の圧力パラメータを監視する。例えば、平均動脈圧が増加するか、またはプログラム可能な標的圧力を上回ったままであると、機器は、増加した割合で圧受容器を刺激し、血圧を低減して高血圧症を制御する。平均動脈圧が標的圧力に向かって減少するにつれて、機器は、圧受容器刺激を低減することによって反応する。種々の実施形態では、アルゴリズムが現在の代謝状態(心臓要求)を考慮に入れ、それにしたがって神経性刺激を調整する。IPSを有するNS機器は、圧受容器刺激を自動的に変調することができ、それは、埋込型NS機器が患者の高血圧症のレベルを判定し、適切なレベルの治療を送達することによって反応することを可能にする。しかしながら、閉ループフィードバック制御を提供するために、NSまたは神経刺激機器に存在しないセンサを含む、他のセンサを使用できることに留意する。
【0047】
図11は、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)部品1137および心調律管理(CRM)部品1138を有する、図8の821においてに示されるような埋込型医療機器(IMD)1121を図示する。図示した機器1121は、制御器1123およびメモリ1124を含む。種々の実施形態によれば、制御器1123は、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを含んで、圧受容器刺激およびCRMの機能を果たす。例えば、本開示で論じられる、プログラムした治療の適用は、メモリに埋め込まれるコンピュータ可読命令として格納され、プロセッサによって実行されることが可能である。種々の実施形態によれば、制御器1123は、プロセッサを含んで、メモリに埋め込まれた命令を実行し、圧受容器刺激およびCRMの機能を果たす。図示した機器1121は、プログラマあるいは別の外部または内部機器と通信するための使用に対する、トランシーバ1125および関連回路をさらに含む。種々の実施形態は、テレメトリコイルを含む。
【0048】
CRM療法部分1138は、制御器の制御下にある部品を含んで、心臓を刺激し、および/または1つ以上の電極を使用して心臓信号を感知する。CRM療法部分は、電極を通して電気信号を提供して心臓を刺激するための使用に対する、パルス発生器1139を含み、さらに、感知回路1140を含んで、感知された心臓信号を検出および処理する。インターフェース1141は概して、制御器1123とパルス発生器1139および感知回路1140との間で通信するための使用に対して図示されている。3つの電極が、CRM療法を提供するための使用の一実施例として図示されている。しかしながら、本主題は、特定数の電極部位に限定されない。各電極は、独自のパルス発生器および感知回路を含んでもよい。しかしながら、本主題はそのように限定されない。複数の電極を用いて機能するように、信号パルス発生および感知機能を多重化することができる。
【0049】
NS療法部分1137は、制御器の制御下にある部品を含んで、圧受容器を刺激し、および/または、神経活動と関連するANSパラメータ、または血圧および呼吸等のANSパラメータの代理を感知する。3つのインターフェース1142が、ANS療法を提供するための使用に対して図示されている。しかしながら、本主題は、特定数のインターフェースに、あるいは任意の特定刺激または感知機能に限定されない。パルス発生器1143は、圧受容器部位を刺激するための使用に対して、電極に電気パルスを提供するために使用される。種々の実施形態によれば、パルス発生器は、刺激パルスの振幅、刺激パルスの周波数、パルスのバースト周波数、および、方形波、三角波、正弦波、ならびに白色雑音または他の信号を模倣する所望の調和成分を伴う波等のパルスの形態を設定し、かつ一部の実施形態では変更する、回路を含む。感知回路1144は、神経活動、血圧、呼吸、および同等物のセンサ等のセンサから、信号を検出および処理するために使用される。インターフェース1142は概して、制御器1123とパルス発生器1143および感知回路1144との間で通信するための使用に対して図示されている。各インターフェースは、例えば、別個のリードを制御するために使用してもよい。NS療法部分の種々の実施形態は、パルス発生器のみを含み、圧受容器を刺激する。例えば、NS療法部分は、AHT療法を提供する。
【0050】
本主題のある側面は、定常的に埋め込んだ刺激システムに関し、この刺激システムは、血圧を監視し、かつ圧受容器を刺激して圧受容器反射を活性化し、血管運動神経中枢からの交感神経放電を抑制することによって、高血圧症を治療するように特別に設計されている。圧受容器は、頸動脈洞および大動脈弓等の種々の解剖学的場所に位置する。他の圧受容器の場所は、動脈管索を含む肺動脈、ならびに心房および心室内の部位を含む。種々の実施形態では、システムは、ペースメーカー/除細動器または他の電気刺激システムに統合される。システムの部品は、高周波数パルス発生器、血圧または他の関連する生理学的パラメータを監視するセンサ、圧受容器に電気刺激を印加するリード、刺激を付与するのに適切な時間を判定するアルゴリズム、ならびに表示および患者管理のためのデータを操作するアルゴリズムを含む。
【0051】
種々の実施形態は、患者にAHT療法等の電気的に媒介されるNS療法を送達しようとするシステムに関する。種々の実施形態は、「独立型」パルス発生器を、肺動脈の中等の心臓付近の圧受容器を直接刺激する、低侵襲性の単極リードと組み合わせる。この実施形態は、専門医の技能を欠く一般診療医がそれを埋め込むことができるようなものである。種々の実施形態は、血圧を示すパラメータを感知することができる、単純な埋め込みシステムを組み込む。このシステムは、所望の生活の質を維持するように、治療出力(波形の振幅、周波数等)を調整する。種々の実施形態では、埋め込みシステムは、パルス発生機器およびリードシステムを含み、その刺激電極は、経静脈埋込技術を使用して、心内膜圧受容器組織の近傍に配置される。別の実施形態は、NS療法を従来の徐脈性不整脈、頻脈性不整脈、および/またはうっ血性心不全(CHF)療法と組み合わせるシステムを含む。一部の実施形態は、機器ヘッダから出現し、改良された従来のパルス発生システムから離間する、追加の「圧受容器リード」を使用する。別の実施形態では、従来のCRMリードは、圧受容器部位の近傍に自然に配置される、近位電極を組み込むように修正される。これらのリードにより、遠位電極はCRM療法を提供し、近位電極は圧受容器を刺激する。
【0052】
これらの実施形態によるシステムは、部分的に成功した治療戦略を増強させるために使用することができる。一実施例として、望ましくない副作用は、一部の医薬品の使用を制限する場合がある。薬剤投与量の低減とのこれらの実施形態によるシステムの組み合わせは、特に有益であってもよい。
【0053】
種々の実施形態によれば、リードおよびリード上の電極は、電極がパルスを適切に伝送し、かつ、心臓から信号を感知することを可能にする態様で心臓に対して、および圧反射を刺激するように圧受容器に対して、物理的に配設される。多数のリード、および1つのリードにつき多数の電極があってもよいため、1つまたは複数の特定電極を使用するように構成をプログラムすることができる。種々の実施形態によれば、圧反射は、求心性神経幹を刺激することによって刺激される。
【0054】
図12は、本主題の種々の実施形態による、プログラマ1222、埋込型の神経刺激(NS)機器1237、および埋込型の心調律管理(CRM)機器1238を含むシステム1220を図示する。種々の側面は、AHT機器等のNS機器1237とCRM機器1238または他の心臓刺激装置との間で通信するための方法を伴う。種々の実施形態では、この通信は、機器1237または1238の一方が、他方の機器から受信されたデータに基づいて、より適切な治療(すなわち、より適切なNS療法またはCRM療法)を送達することを可能にする。一部の実施形態は、オンデマンド通信を提供する。種々の実施形態では、この通信は、機器1237および1238のそれぞれが、他方の機器から受信されたデータに基づいて、より適切な治療(すなわち、より適切なNS療法およびCRM療法)を送達することを可能にする。図示したNS機器1237およびCRM機器1238は、互いに無線通信することが可能であり、プログラマは、NSならびにCRM機器1237および1238の少なくとも一方と無線通信することが可能である。例えば、種々の実施形態は、互いにデータおよび命令を無線で伝達するために、テレメトリコイルを使用する。種々の実施形態では、データおよび/またはエネルギーの通信は超音波手段による。
【0055】
一部の実施形態では、NS機器1237は、圧反射を刺激してNS療法を提供し、直接的に、またはANS活動を示す呼吸および血圧等の代理パラメータを使用して、ANS活動を感知する。CRM機器1238は、ペーシングおよび徐細動性能等の心臓刺激性能を含む。NSとCRM機器1237および1238との間で無線通信を提供するよりもむしろ、種々の実施形態は、NS機器1237とCRM機器1238との間で通信する使用に対する、血管内供給リード等の通信ケーブルまたはワイヤを提供する。
【0056】
図13は、本主題の種々の実施形態による、図12のシステムの1237において示されるような埋込型神経刺激(NS)機器1337を図示する。図14は、本主題の種々の実施形態による、図12のシステムの1238において示されるような埋込型心調律管理(CRM)機器1438を図示する。NS機器1337に対する部品の機能は、図9および11(NS機器1137)に関して以前に論じ、CRM機器1238に対する部品の機能は、図11(CRM機器1138)に関して以前に論じた。簡単にするため、NSおよびCRMの機能に関するこれらの考察をここでは反復しない。NSおよびCRMの機器の種々の実施形態は、無線トランシーバ1325および1425をそれぞれ含んで、互いに無線通信する。NSおよびCRM機器の種々の実施形態は、テレメトリコイルまたは超音波変換器を含んで、互いに無線通信する。
【0057】
種々の実施形態によれば、例えば、NS機器は、テレメトリコイルを装備し、それとCRM機器との間でデータが交換されることを可能にし、心拍数、分時換気量、心房興奮、心室興奮、および心イベント等の電気生理学的パラメータに基づいて、NS機器が治療を修正することを可能にする。また、CRM機器は、平均動脈圧、収縮期および拡張期圧、および圧受容器刺激率等の、NS機器から受信されたデータに基づいて治療法を修正する。
【0058】
一部のNS機器の実施形態は、既存のCRM機器と共に患者に埋め込まれることが可能であるため、CRM機器によって収集される生理学的データを受信することによって、NS機器の機能性が強化される。2つ以上の埋め込み機器の機能性は、埋め込み機器間の通信性能を提供することによって強化される。種々の実施形態では、機能性は、互いに無線通信するように機器を設計することによって、さらに強化される。
【0059】
図15は、本主題の種々の実施形態による、図8および12のシステムで図示されるプログラマ822および1222等のプログラマ1522、または埋込型医療機器1237および/または1238と通信する他の外部機器を図示する。別の外部機器の一実施例は、形態情報端末(PDA)、または高度患者管理(APM)システムにおけるパーソナルラップトップおよびデスクトップコンピュータを含む。図示した機器1522は、制御器回路1545およびメモリ1546を含む。制御器回路1545は、ハードウェア、ソフトウェア、ならびにハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを使用して、実装されることが可能である。例えば、種々の実施形態によれば、制御器回路1545は、プロセッサを含んで、メモリ1546に埋め込まれた命令を実行し、データの伝達および/または埋込型機器への命令のプログラムを含む、多数の機能を果たす。図示した機器1522は、埋込型機器と通信するための使用に対する、トランシーバ1547および関連回路をさらに含む。種々の実施形態は、無線通信性能を有する。例えば、トランシーバ1547および関連回路の種々の実施形態は、埋込型機器と無線通信するための使用に対するテレメトリコイルを含む。図示した機器1522は、ディスプレイ1548、キーボードまたはマウス/ポインタ等の入出力(I/O)機器1549、および通信網上等で他の機器と通信するための使用に対する通信インターフェース1550をさらに含む。
【0060】
(プログラムした治療の適用)
システムのNSおよび/またはCRMの機能は、2つの別個で異なる埋込型機器に埋め込まれていても、または部品として1つの埋込型機器に組み込まれていても、NSおよび/またはCRM治療または治療の各部を行うための過程を含む。一部の実施形態では、NS療法は、AHT療法を提供する。一部の実施形態では、神経性刺激療法は、心室再造形を予防および/または治療する。
【0061】
自律神経系の活動は、MIの結果として、または心不全により発生する、心室再造形の少なくとも部分的に原因となる。再造形は、例えば、ACE阻害剤およびベータ遮断薬の使用による薬理学的介入によって影響され得ることが実証されている。しかしながら、薬理学的治療には、副作用の危険性があり、また、正確な方法で薬剤の作用を変調することは困難である。薬物療法に関する別の問題は、患者の服薬不履行である。本主題の実施形態は、抗再造形療法またはARTと呼ばれる、自律神経活動を変調する電気刺激手段を採用する。再造形制御療法(RCT)とも呼ばれる、心室再同期ペーシングと併せて送達されると、自律神経活動のそのような変調は、心臓再造形を逆転または予防するように相乗的に作用する。
【0062】
虚血後の増加した交感神経系活動は、しばしば、エピネフリンおよびノルエピネフリンへの心筋の増加した暴露をもたらす。これらのカテコールアミンは、心筋死および線維化につながる、筋細胞内の細胞内経路を活性化する。副交感神経(迷走神経)の刺激は、この作用を抑制する。種々の実施形態によれば、本主題は、心不全患者におけるCRTに加えて、迷走心臓神経を選択的に活性化して、さらなる再造形および不整脈原性から心筋を保護する。CRTに加えて、迷走心臓神経を刺激することの他の潜在的有益性は、心筋梗塞後の炎症反応の低減、および除細動のための電気刺激閾値の低減を含む。例えば、心室頻脈が感知されると、迷走神経刺激が印加され、次いで、除細動ショックが印加される。迷走神経刺激は、除細動ショックがより少ないエネルギーにおいて印加されることを可能にする。また、副交感神経刺激は、不整脈を終結させるか、あるいは抗不整脈治療の有効性を増加させてもよい。
【0063】
例えば、メモリに埋め込まれたコンピュータ可読命令を実行するプロセッサによって、処置を行うことができる。治療法は、種々の処置および機能を有する多数の用途を含み、その一部を下記で識別し、論じる。本主題の一部の実施形態は、下記の処置および機能のうちの2つ以上の組み合わせを含むため、これらの治療法の処置および機能は、必ずしも相互排他的ではない。
【0064】
(正確に信号を感知する神経性刺激の説明)
図16A−16Dは、本主題の種々の実施形態による、神経刺激(NS)機器からの電気刺激と心調律管理(CRM)機器による感知との間の干渉を防ぐシステムおよび方法を図示する。神経性刺激は、信号を感知する能力を改善し、心イベントの検出と関連する偽陽性を排除するように関与する。NS機器は、一部の実施形態ではAHT機器を含む。例えば、NS機器は、一部の実施形態によれば、CRM機器が圧反射刺激に非意図的に反応しないように、通信し、圧反射刺激を予防するか、あるいは補う。一部の実施形態は、圧反射刺激を心臓における適切な屈折と自動的に同期化する。例えば、一部のシステムは、肺動脈の中または周囲の圧受容器の刺激を心房興奮と自動的に同期化する。したがって、圧反射刺激が心臓および心臓の電気的活性化を検出するCRMセンサの近傍で生成された時でさえも、CRM機器の機能は、圧反射刺激によって生成される遠方界の雑音を検出することによって、悪影響を受けない。
【0065】
図16Aは概して、NS機能1651(NS機器または統合NS/CRM機器中のNS部品によって実行され得るような)、CRM機能1652(CRM機器または統合NS/CRM機器中のCRM部品によって実行され得るような)、およびNS機能とCRM機能との間で通信する性能1653を含む、システム1654を図示する。図示した通信は、双方向の無線通信である。しかしながら、本主題は、一方向の通信も検討し、さらに、有線通信を検討する。加えて、本主題は、機器または別個の埋込型機器において通信信号が送信および受信されるように、NSおよびCRM機能1651および1652を単一の埋込型機器に統合することができることを検討する。神経性刺激の一部としての圧反射刺激が具体的に論じられているものの、本主題のこの側面はまた、センサによって検出可能であり、かつ他の電気刺激装置から生成される意図しない干渉を予防するか、またはそれに関与する、あるいはそれを補うように適用可能である。
【0066】
図16Bは、種々の実施形態による、CRM機能が圧反射刺激に非意図的に反応しない過程を図示する。図16Bは、圧受容器が電気的に刺激されている時に、NS機器または部品1651が警告を送信するか、あるいはCRM機器または部品に通知する過程を図示する。図示した実施形態では、NS機器/部品は、1655において、圧反射刺激等の電気刺激が印加されるかどうかを判定する。電気刺激が印加される場合、NS機器または部品1651は、1656において、警告1657を送信するか、あるいは電気刺激をCRM機器または部品1652に知らせる。1658において、電気刺激は、NS機器/部品によって印加される。1659において、感知するステップを含むCRM療法が行われる。1660において、CRM機器/部品は、警告1657がNS機器/部品から受信されたかどうかを判定する。警告が受信されると、検出閾値を引き上げ、ブラックアウトまたはブランキングウィンドウを提供し、あるいはNS機器または部品における電気刺激がCRM機器/部品によってイベントとして誤って解釈されることを防ぐように、1661においてイベント検出アルゴリズムが修正される。
【0067】
図16Cは、種々の実施形態による、CRM機能が圧反射刺激に非意図的に反応しない過程を図示する。CRM機器/部品1652は、1662において、心臓の不応期を判定する。1663において、不応期が発生している、または予測可能な時間量後に発生することが予期される場合、不応性に対応する有効化1664が、NS機器/部品1651に提供される。AHT機器/部品1651は、1655において電気刺激が望ましいかどうかを判定する。望ましい時は、有効化信号1664によって制御されるように、1666において、AHT機器/部品が不応期中に電気刺激を印加する。図16Dは、心臓の1667における不応期および圧反射刺激1668を図示し、さらに、圧反射刺激が不応期に印加されることを図示する。
【0068】
不応期は、絶対不応期および相対不応期の両方を含む。心臓組織は、絶対不応期中に刺激されることが可能である。絶対不応期中の必要な刺激閾値は、基本的に無限である。相対不応期は、絶対不応期の後に発生する。相対不応期中、心臓組織が再分極し始め、刺激閾値は、最初に非常に高く、相対不応期の終わりまでに正常刺激閾値まで低下する。したがって、種々の実施形態によれば、絶対不応期中、または神経性刺激が心臓組織を捕獲することを防止するために十分高い刺激閾値に対応する相対不応期の一部の間のいずれかに、神経刺激装置が神経性刺激を印加する
本主題の種々の実施形態は、心房興奮を感知し、肺動脈刺激を心房不応期に限定して、近くの心房組織の意図しない刺激を予防する方法に関する。埋込型圧受容器刺激機器は、心房感知リードで心房興奮を監視する。肺動脈中のリードは、血管壁中の圧受容器を刺激する。しかしながら、これらの圧受容器を連続して刺激する代わりに、肺動脈中の圧受容器の刺激は、心房不応期中に発生して近くの心房心筋を捕獲することを回避し、内因性心房レートおよび興奮を維持する。本主題の種々の実施形態は、肺動脈壁中の圧受容器を刺激するための埋込型機器を心房感知のための性能と組み合わせる。種々の実施形態は、心臓脂肪体中の圧受容器、心腔中の圧受容器、および/または求心性神経を刺激する。
【0069】
図17は、本主題の種々の実施形態による、神経性刺激(例えば、圧反射刺激)を変調するシステムを図示する。図示したシステムは、肺動脈の中および周囲の圧受容器を刺激する刺激装置等の神経刺激装置1751を含む。刺激装置は、独立型NS機器に、または例えば、統合NS/CRM機器にNS部品として含むことができる。図示した刺激装置1751は、印加した神経性刺激を選択的に増加および減少させるための使用に対する変調器1769を含む。種々の実施形態によれば、変調器1769は、刺激パルスの振幅を変更するモジュール1770、刺激パルスの周波数を変更するモジュール1771、および刺激パルスのバースト周波数を変更するモジュール1772といったモジュールのうちのいずれか1つを含む。
【0070】
種々の実施形態によれば、刺激回路は、刺激特徴のうちのいずれか1つ、または任意の組み合わせを設定または調整するように構成される。刺激特徴の実施例は、刺激信号の振幅、周波数、極性、および波の形態を含む。波の形態の実施例は、方形波、三角波、正弦波、および自然発生圧反射刺激を示すような白色雑音を模倣する所望の調和成分を伴う波を含む。神経性刺激回路の一部の実施形態は、所定の振幅、形態、パルス幅、および極性を伴う刺激信号を生成するように構成され、さらに、制御信号に反応して、振幅、波の形態、パルス幅、および極性のうちの少なくとも1つを修正するように構成される。神経性刺激回路の一部の実施形態は、所定の周波数を伴う刺激信号を生成するように構成され、さらに、制御器からの制御信号に反応して刺激信号の周波数を修正するように構成される。
【0071】
刺激回路によって送達される神経性刺激は、メモリに格納された刺激スケジュール等の刺激命令を使用して、プログラムすることができる。神経性刺激は、所定の周波数における一連の刺激パルスである、刺激バーストで送達することができる。刺激バーストは、バースト継続時間およびバースト間隔によって特徴付けることができる。バースト継続時間は、バーストが続く時間の長さである。バースト間隔は、連続バーストの開始の間の時間によって識別することができる。バーストのプログラムしたパターンは、バースト継続時間およびバースト間隔の任意の組み合わせを含むことができる。1つのバースト継続時間およびバースト間隔を伴う単純なバーストパターンは、プログラムした期間にわたって周期的に継続することができるか、または、より複雑なスケジュールに従うことができる。バーストのプログラムしたパターンは、複数のバースト継続時間およびバースト間隔のシーケンスから成り、より複雑となり得る。バーストのプログラムしたパターンは、一定の時間にわたる神経性刺激オンおよび一定の時間にわたる神経性刺激オフの反復サイクルを指す、負荷サイクルによって特徴付けることができる。負荷サイクルは、オン時間およびサイクル時間によって指定され、したがって、オン時間/サイクル時間の単位を有することができる。例えば、オン/オフサイクルが1分ごとに反復し、負荷サイクルのオン時間が10秒である場合は、負荷サイクルは毎分10秒である。オン/オフサイクルが1時間ごとに反復し、オン時間が5分である場合は、負荷サイクルは毎時間5分である。一部の実施形態によれば、神経性刺激は、刺激信号の各パルスを開始することによって制御される。一部の実施形態では、制御器回路は、刺激信号パルス列を開始し、その場合、刺激信号は、所定の周波数およびバースト継続時間における一連のパルスを生成することによって、制御器回路からのコマンドに反応する。パルス列の所定の周波数およびバースト継続時間は、プログラム可能となり得る。パルス列中のパルスのパターンは、1つのバースト継続時間およびバースト間隔を伴う単純バーストパターンとなり得るか、または複数のバースト継続時間およびバースト間隔を伴うより複雑なバーストパターンに従うことができる。一部の実施形態では、神経性刺激セッションの開始および終結が制御される。神経性刺激セッションのバースト継続時間は、プログラム可能となり得る。神経性刺激セッションは、1つ以上の感知されたパラメータ、または神経性刺激を停止することが望ましいと判定される任意の他の状態によって生成されてもよいような、中断信号に反応して、終結されてもよい。
【0072】
システムの種々の実施形態は、生理学的活動モニタ1773、有害事象検出器1774、呼吸モニタ1775、および所望レベルの神経性刺激を適切に印加するように刺激装置1751の変調器1769を制御することが可能な概日リズムテンプレート1776のうちのいずれか1つ、または任意の組み合わせを含む。これらの1773、1774、1775、および1776のそれぞれは、神経性刺激信号を変調する方法と関連する。種々の実施形態によれば、システムは、生理学的活動(1773)、有害事象(1774)、呼吸(1775)、概日リズム(1776)、生理学的活動(1773)および有害事象(1774)、生理学的活動(1773)および呼吸(1775)、生理学的活動(1773)および概日リズム(1776)、有害事象(1774)および呼吸(1775)、有害事象(1774)および概日リズム(1776)、呼吸(1775)および概日リズム(1776)、生理学的活動(1773)、有害事象(1774)および呼吸(1775)、生理学的活動(1773)、有害事象(1774)および概日リズム(1776)、生理学的活動(1773)、呼吸(1775)および概日リズム(1776)、有害事象(1774)、呼吸(1775)および概日リズム(1776)、ならびに生理学的活動(1773)、有害事象(1774)、呼吸(1775)および概日リズム(1776)といった、パラメータまたはパラメータの組み合わせに基づいて神経性刺激信号を変調する手段を含む。
【0073】
刺激は、種々の神経標的に印加することができる。例えば、刺激は、神経幹に近接して配置されるカフ電極または血管内供給リードを使用して、迷走神経等の求心性神経幹に印加することができる。刺激は、例えば、静脈内供給リードを使用して、肺動脈、大動脈弓、および頸動脈洞に位置するような圧反射標的に印加することができる。刺激は、静脈内供給リードを使用して、または脂肪体に電極をねじ込むことによって、心臓脂肪体に位置するANS部位に印加することができる。生理学的活動検出器1773の実施形態は、例えば、心拍数モニタ1777A、分時換気量モニタ1777B、動作モニタ1777C、1回拍出量モニタ1777D、呼吸数モニタ1777E、1回換気量モニタ1777F、交感神経活動のセンサ等の神経活動モニタ1777G、血圧モニタ1777H、および心拍出量モニタ1777Iのうちのいずれか1つ、または任意の組み合わせを含む。心拍出量モニタは、心拍数および1回拍出量(例えば、心拍出量は、心拍数および1回拍出量の積に等しい)を使用して判定することができる。動作モニタの例は、加速度計または圧電性結晶等の加速度を検出するセンサを含む。他の動作センサ、例えば、筋肉の動き(例えば、脚の動き)を検出する筋電図法(EMG)センサを使用する動作センサ、および動きを検出するグローバルポジショニングシステム(GPS)を使用するセンサが使用されてもよい。GPS技術は、自動推進の動き(例えば、自動車、飛行機、船、および電車での移動)に関与する適切なアルゴリズムを含む。呼吸モニタ1775の実施形態は、1回換気量モニタ1780および分時換気量モジュール1781のうちのいずれか1つ、または任意の組み合わせを含む。例えば、分時換気量を判定するために経胸腔インピーダンスを使用することができ、例えば、心拍数を判定するために心臓インピーダンスおよびECGを使用することができる。概日リズムテンプレート1776の実施形態は、特注で生成したテンプレート1782および事前にプログラムしたテンプレート1783のうちのいずれか1つ、または組み合わせを含む。これらの実施形態は、図18A−18C、19A−19B、20A−20B、21A−21E、22、および23A−23Cに関して、下記でさらに詳細に論じる。概日リズムテンプレートは、AHT療法、無呼吸療法、心筋梗塞後療法、心不全療法、および他の治療法等の種々の神経性刺激療法を提供するために使用することができる。
【0074】
(収縮間隔に基づく神経性刺激(例えば、圧反射刺激)の変調)
交感神経系または副交感神経系の活性化は、ある収縮間隔、主として、心室内の感知された電気的活動(例えば、「R」波の感知)と血液の心室駆出の開始との間の時間間隔である、前駆出期(PEP)を変えることが知られている。PEPは、肺動脈圧センサを使用して、感知された電気的事象から肺動脈の圧力増加の開始まで測定されてもよいか、または、右心室に位置するか、または左心室に及ぶ電極を使用して、駆出中の心室容積の減少を伴う心内インピーダンスの増加の開始まで測定されてもよい。例えば加速度計で測定される心拍数または身体活動によって判定されるような安静時に、神経性刺激は、事前にプログラムした範囲でPEPを維持するように変調される。PEPの突然の減少は、運動または情緒的ストレスと関連する交感神経の緊張の増加を示す。この状態は、代謝要求を満たすために必要な心拍数および心収縮性の増加を可能にする、神経性刺激を減少させるために使用されてもよい。同様に、PEPの後の劇的な延長は、増加した代謝要求の終了の印となる。この時、神経性刺激による血圧の制御が再開し得る。
【0075】
(活動に基づく神経性刺激(例えば、圧反射刺激)の変調)
本主題は、心拍数、分時換気量、加速度、およびそれらの組み合わせによって判定できるような活動に基づいて、神経性刺激(例えば、圧反射刺激)を自動的に変調する方法を記載する。例えば、圧受容器を電気的に刺激するための機器の機能性は、代謝要求が比較的低い時の安静中に、少なくとも比較的高い圧力ペーシング率で印加し、代謝要求が増加するにつれて、身体運動中に圧力ペーシングを次第に少なくすることによって、強化される。活動の指数は、圧受容器の電気刺激を自動的に変調するために使用され、埋込型神経性刺激機器(例えば、血圧降下機器)が代謝要求の変化に反応することを可能にする。種々の実施形態によれば、ペースメーカー、AICD、またはCRT機器等のCRM機器もまた、神経性刺激リードを有する。機器は、例えば、混合センサを使用して、既存の方法を通して活動を監視する。混合センサは、加速度および分時換気量等のパラメータを測定する2つのセンサを含む。混合センサの出力は、複合パラメータを表す。AHT療法、抗再造形療法、および同等物等の種々の神経性刺激療法は、本開示内で論じられるような2つ以上の感知されたパラメータに由来する、複合パラメータを使用する。安静(より低い活動)時に、機器は、より高い比率で神経性刺激を送達し、血圧を低減して高血圧症を制御する。活動が増加するにつれて、機器は、神経性刺激を一時的に低減または停止することによって反応する。これは、血圧および心拍出量の一時的増加をもたらし、身体が増加した代謝要求に反応することを可能にする。例えば、一部の実施形態は、安静中に圧反射刺激を提供し、運動中に圧反射刺激を撤回して運動への正常な血圧反応に適合する。活動を判定するために、圧力変換器を使用することができる。その上、活動は、比率適応型ペーシングを駆動するために使用される、または使用されてきたセンサを使用して、感知することができる。そのようなセンサの例は、身体の動き、心拍数、QT間隔、呼吸数、経胸腔インピーダンス、1回換気量、分時換気量、体位、脳波図(EEG)、皮下ECGを含む心電図(ECG)、眼電図(EOG)、筋電図(EMG)、筋緊張、体温、パルス酸素濃度、時刻、および心内インピーダンスからの前駆出間隔を検出するセンサを含む。
【0076】
心臓活動モニタの種々の実施形態は、動脈パラメータ、収縮期圧と拡張期圧との差異によって判定される脈圧、収縮末期圧(収縮期の終わりの圧力)、および拡張末期圧(拡張期の終わりの圧力)等の、少なくとも1つの圧力パラメータを検出するセンサを含む。心臓活動モニタの種々の実施形態は、1回拍出量モニタを含む。心拍数および圧力は、1回拍出量を導出するために使用することができる。心臓活動モニタの種々の実施形態は、心臓活動を判定するために少なくとも1つの電位図測定を使用する。そのような電位図測定の実施例は、R−R間隔、P−R間隔、およびQT間隔を含む。心臓活動モニタの種々の実施形態は、心臓活動を判定するために少なくとも1つの心電図(ECG)測定を使用する。
【0077】
図18A−18Eは、本主題の種々の実施形態による、心臓活動パラメータに基づいて神経性刺激(例えば、圧反射刺激)を変調するための方法を図示する。心臓活動は、CRM機器、NS機器、またはNS/CRM性能を伴う埋込型機器によって判定することができる。心臓活動に基づいて神経性刺激(例えば、圧反射刺激)を変調するための第1の過程1884Aを図18Aに図示する。1885Aにおいて、活動レベルが判定される。種々の実施形態によれば、活動レベルの判定は、心拍数、分時換気量、動作(例えば、加速度)、または心拍数、分時換気量、および動作の任意の組み合わせに基づく。図示した過程では、活動レベルは、2つの定義されたレベルを有する(例えば、HIおよびLO)。一部の実施形態では、LOレベルは、活動を含まない。活動レベルがHIであるか、またはLOであるかが判定される。1886Aにおいて、判定した活動レベルに基づいて、刺激レベルが設定される。例えば、活動レベルがHIであると判定された場合にLO刺激レベルが設定され、活動レベルがLOであると判定された場合にHI刺激レベルが設定される。
【0078】
心臓活動に基づいて神経性刺激(例えば、圧反射刺激)を変調するための第2の過程1884Bを図18Bに図示する。1885Bにおいて、活動レベルが判定される。種々の実施形態によれば、活動レベルの判定は、心拍数、分時換気量、動作(例えば、加速度)、または心拍数、分時換気量、および運動の任意の組み合わせに基づく。図示した過程では、活動レベルは、3つ以上の定義されたレベルまたはn個の定義されたレベルを有する。図示したn個のレベルに割り当てられる標識は、最低活動レベルに対するレベル1、最低活動レベルから2番目に対するレベル2、最低活動レベルから3番目に対するレベル3等を含む。レベルnは、最高活動レベルに対応する。活動レベルがレベル1であるか、レベル2であるか、またはレベルnであるかが判定される。1886Bにおいて、判定した活動レベルに基づいて、神経性刺激レベルが設定される。利用可能な刺激レベルは、n個のレベルを含み、その場合、レベル1は最低刺激レベルに対応し、レベル2は最低刺激レベルから2番目に対応し、レベル3は最低刺激レベルから3番目に対応する等である。レベルnは、最高刺激レベルに対応する。種々の実施形態によれば、選択した神経性刺激レベルは、判定した活動レベルに逆相関する。例えば、活動レベルが最高レベル(レベルn)であると判定された場合には、刺激レベルは、最低レベル(レベル1)に設定される。活動レベルが第2の最高レベル(レベルn−1)であると判定された場合には、刺激レベルは、第2の最低レベル(レベル2)に設定される。活動レベルが第2の最低レベル(レベル2)であると判定された場合には、刺激レベルは、第2の最高レベル(レベルn−1)に設定される。活動レベルが最低レベル(レベル1)であると判定された場合には、刺激レベルは、最高刺激レベル(レベルn)に設定される。この実施形態は、活動レベルを刺激レベルに機能的にマップする、つまり、活動を神経性刺激強度にマップする。
【0079】
活動に基づいて神経性刺激(例えば、圧反射刺激)を変調するための別の過程1884Cを図18Cに図示する。図示した過程では、少なくとも1つの感知または収集した活動パラメータが少なくとも1つの参照パラメータと比較され、比較の結果に基づいて神経性刺激強度が変調される。1887において、収集した活動パラメータが標的活動パラメータと比較される。神経性刺激強度は、比較の結果に基づいて変調される。例えば、収集した活動が参照活動パラメータより低い場合、神経性刺激は、1888において増加させられる。取得した活動が参照活動パラメータより高い場合、神経性刺激は、1889において減少される。取得した活動が参照活動パラメータに等しいか、またはほぼ等しい場合、神経性刺激強度に調整は行われない。種々の実施形態は、感知または収集した活動と参照との差異を判定し、差異に基づいて神経性刺激強度を調整する。一部の実施形態によれば、神経性刺激強度の調整は、感知または収集した活動と参照との差異に比例する。例えば、差異がxである場合、神経性刺激強度は、xの関数(例えば、強度=f(x))として増加される(正比例する)か、または減少(反比例する)させられるかのいずれかであり、その場合、xは、感知または収集した活動と参照との差異である。活動の差異xを神経性刺激強度にマップする関数は、線形関数として、または非線形関数として実施されてもよい。加えて、関数は、数式から計算するか、またはルックアップテーブルとして実施することができる。差異が2xである場合、神経性刺激強度は、xの関数(例えば、強度=f(2x))として増加させられるか、または減少させられるかのいずれかである。差異が1/2(x)である時、神経性刺激強度は、xの関数(例えば、強度=f(0.5x))として増加させられるか、または減少させられるかのいずれかである。活動参照レベルは、動的に調整することができる。限定ではなく一例として、活動参照レベルは、一定の期間(例えば、5〜60分)にわたる平均活動として計算することができる。参照レベルの動態的調整は、神経性刺激レベルが、何らかの遡及的期間と比較して、平均活動レベルの一過性の変化に比例して調整されることを可能にする。
【0080】
活動に基づいて神経性刺激を変調するための過程1884Dの実施形態を図18Dに図示する。1801において図示されるように、検出または監視した活動が閾値を上回るかどうかが判定される。種々の実施形態によれば、活動レベルの判定は、心拍数、分時換気量、加速度、または心拍数、分時換気量、加速度の任意の組み合わせに基づく。活動を判定するために、圧力センサを使用することができる。種々の実施形態によれば、活動を判定するために、比率適応ペーシングを駆動するために使用することができるセンサを使用することができる。そのようなセンサの実施例は、本書で以前に提供した。活動が閾値を上回る場合、神経性刺激は、1802において印加されず、活動が閾値を上回らない場合、神経性刺激は、1803において印加される。この実施形態では、活動が所定の閾値を上回らない場合にしか神経性刺激が印加されないため、したがって、活動判定は、神経性刺激療法の有効化として機能することができる。
【0081】
活動に基づいて神経性刺激を変調するための過程1884Eの実施形態を図18Eに図示する。感知された活動は、生理学的反応と関連する。例えば、心拍数が運動の期間中に増加することが適切である。図示されるように、神経性刺激が1804において印加される。神経性刺激は、血圧降下(AHT)または抗再造形療法等の治療法の一部となり得る。活動が1805において決定されるように所定閾値を上回る場合、神経性刺激パラメータは、1806において、感知された活動と関連する生理学的反応に対する神経性刺激の作用を軽減(低減または回避する)値に調整される。したがって、例えば、過程は、運動への適切な生理学的反応を可能にする。
【0082】
本主題のある側面は、1回換気量または分時換気量によって判定されるような呼吸に基づいて、圧受容器刺激の強度を自動的に変調する方法に関する。連続的圧受容器刺激を印加する代わりに、NS機器は、血圧に対する代理として呼吸を使用して、高血圧症のレベルを監視し、適切なレベルの治療を送達して、機器が治療のレベルを変調することを可能にする。本主題は、1回換気量および分時換気量を判定するため、および圧受容器刺激を自動的に変調するために、インピーダンス等の呼吸の指数を使用する。したがって、埋込型NS機器は、患者の高血圧症のレベルを判定し、適切なレベルの治療を送達することによって反応することが可能である。種々の実施形態では、埋込型NS機器は、1回換気量または分時換気量を測定するセンサを含有する。例えば、種々の実施形態は、経胸腔インピーダンスを測定して呼吸数を取得する。一部の実施形態では、機器は、CRM機器からこのデータを受信する。NS機器は、これらの呼吸パラメータを周期的に監視する。呼吸が減少するか、またはプログラム可能な標的を下回ったままであると、機器は、増加した比率で圧受容器を刺激し、血圧を低減して高血圧症を制御する。平均動脈圧が標的圧力に向かって減少するにつれて、機器は、圧受容器刺激を低減することによって反応する。このようにして、AHT機器は、適切なレベルの治療を連続して送達する。
【0083】
図19A−19Bは、本主題の種々の実施形態による、呼吸パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。呼吸パラメータは、CRM機器、NS機器、またはNS/CRM性能を伴う埋込型機器によって判定することができる。呼吸パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法の一実施形態を、図19Aの1910Aにおいて図示する。呼吸レベルが1911において判定され、判定した呼吸レベルに基づいて圧受容器刺激レベルが1912において設定される。種々の実施形態によれば、所望の圧力ペーシングレベルが1913において調節する。例えば、一実施形態は、1914において収集したパラメータを標的パラメータと比較する。圧力ペーシングは、収集したパラメータの標的パラメータとの比較に基づいて、1915において増加するか、1916において減少することができる。
【0084】
呼吸パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法の一実施形態を、図19Bの1910Bにおいて図示する。1916において、圧反射刺激過程に対するアルゴリズムを誘起する、圧反射イベントトリガが発生する。1917において、呼吸が標的パラメータと比較される。圧反射刺激は、呼吸が標的を下回る場合に1918において増加され、呼吸が標的を上回る場合に1919において減少される。種々の実施形態によれば、刺激は、呼吸がブランキングウィンドウ内にある場合には変更されない。種々の実施形態は、印加した刺激および圧反射反応を安定化させるヒステリシス効果を提供するためにメモリを使用する。加えて、種々の実施形態では、時刻または活動レベル等の種々の因子に基づいて、呼吸標的が治療中に修正される。1920において、例えば、感知されたパラメータまたはイベント中断の受信に基づいて、圧反射療法アルゴリズムを続けるかどうかが判定される。圧反射アルゴリズムを続ける場合には、過程は、呼吸が再び標的パラメータと比較される1917に戻り、さもなければ、圧反射アルゴリズムは、1921において中止される。
【0085】
(概日リズムに基づく神経性刺激(例えば、圧反射刺激)の変調)
本主題のある側面は、24時間の期間にわたって発生する血圧の自然変動を模倣するよう、高血圧症患者の圧反射を刺激するための方法に関する。高血圧症の反射低減は、動脈圧の内因性変動を変えずに、長期的圧受容器刺激中に達成される。種々の実施形態によれば、埋込型機器は、例えば、短い高周波数バースト(約20〜150Hzの範囲内の周波数を伴う方形波)を使用して、頸動脈洞、肺動脈、または大動脈弓中の圧受容器を刺激するように設計される。一部の実施形態は、カフ電極で、頸動脈洞神経、大動脈神経、または迷走神経を直接刺激する。しかしながら、バーストは一定の比率で発生しない。むしろ、刺激周波数、振幅、および/またはバースト周波数は、日中に昇降して、自然な概日リズムを模倣する。
【0086】
したがって、NS機器の種々の実施形態は、正常な個人および高血圧症の個人の両方で発生する動脈圧の自然変動に関与する。平均動脈圧の活動関連変化は別として、被験者はまた、24時間サイクルに対する圧力の一貫した変動も呈する。周期的な圧受容器刺激を提供する機器は、内因性概日リズムを模倣し、このリズムを乱さずに、交感神経経の反射抑制および全身血圧の低減を可能にする。本主題は、内因性概日リズムを乱さずに平均動脈圧を低減するために圧受容器刺激周波数/振幅を変動させる、ペーシングプロトコルを提供する。
【0087】
図20A−20Eは、概日リズムを図示する。図20Aは、正午から正午までの24時間の平均動脈圧と関連する概日リズムを図示し、図20Bは、正午から正午までの24時間の心拍数と関連する概日リズムを図示し、図20Cは、正午から正午までの24時間の1回拍出量の変化率(SV%)と関連する概日リズムを図示し、図20Dは、正午から正午までの24時間の心拍出量(CO)の変化率と関連する概日リズムを図示し、図20Eは、正午から正午までの24時間の血管拡張の指数である、全末梢血管抵抗の変化率(TPR%)と関連する概日リズムを図示する。種々の実施形態は、絶対値をグラフにし、種々の実施形態は、パーセント値をグラフにする。これらの図中、枠で囲んだ部分は、およそ午後10時から午前7時までの夜の時間を表し、したがって、安静または睡眠時間を表す。例えば、図20Aおよび20Bを参照して、平均動脈圧および心拍数の両方が安静の期間中に低下させられることが明白である。より高い血圧および心拍数は、安静に悪影響を及ぼし得る。加えて、日中のより低い血圧および心拍数は、個人のエネルギーのレベルに悪影響を及ぼし得る。
【0088】
本主題の種々の実施形態は、多数の被験者に対する概日リズムに適合することを目的としている、事前にプログラムしたテンプレートを使用して、圧反射刺激を変調する。本主題の種々の実施形態は、被験者に適合するようにカスタマイズされたテンプレートを生成する。
【0089】
図21は、カスタマイズされた概日リズムテンプレートを使用する、本主題の種々の実施形態による、概日リズムに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。図示した方法2122は、2123において、高血圧症に関するパラメータを感知し、記録する。そのようなパラメータの実施例は、心拍数および平均動脈圧を含む。2124において、これらの記録したパラメータに基づいて概日リズムテンプレートが生成される。2125において、2124で生成された概日リズムテンプレートを使用して、圧反射刺激が変調される。
【0090】
上記の実施形態は、概日リズムに基づく圧受容器刺激の変調を指す。神経性刺激は、一般に、概日リズムに基づいて変調することができる。例えば、低い活動の時間(患者が安静にしていると予期される時)を概算するために、クロックを使用することができる。神経性刺激は、予期される安静時間中に増加され、他の時にオフにされるか、または低減される。一部の実施形態では、活動モニタは、概日リズムテンプレートを生成し、それは次いで、神経性刺激スケジュールに適用される。種々の実施形態によれば、概日リズムは、神経性刺激を調整するための規則を変調して、1日の1つの期間中に神経性刺激強度をより積極的に調整し、1日の別の期間中にはあまり積極的に調整しない。例えば、1日の第1の期間中に、より強い神経性刺激レベル(例えば、レベル3および4)を所与の活動レベル(例えば、レベルn−1およびn)にマップすることができ、1日の第2の期間中に、あまり強くない神経性刺激レベル(例えば、レベル1および2)を所与の活動レベル(例えば、レベルn−1およびn)にマップすることができる。感知された活動と参照の差異xの関数として神経性刺激強度を比例的に調整する、一部の実施形態では、1日の第1の期間中に、あまり強くない関数(f1(x))を使用することができ、1日の第2の期間中に、より強い関数(f2(x))を使用することができる。例えば、一部の実施形態は、日中に増加した活動で神経性刺激強度をより積極的に低減するが、夜間に増加した活動で神経性刺激をあまり積極的に低減しない。
【0091】
(所望の心拍出量を提供する神経性刺激(例えば、圧反射刺激)の変調)
本主題のある側面は、圧反射を刺激することによって全身血圧を低減するNS療法を提供し、さらに、心拍数制御のために心臓ペーシングリードを使用して心臓ペーシング療法を提供する、埋込型医療機器に関する。圧反射刺激および心臓ペーシングは、提携して発生し、心拍出量を犠牲にすることなく、血圧が低下されることを可能にする。
【0092】
種々の実施形態によれば、圧反射刺激装置は、別個の埋込型CRM機器と通信し、既存のペーシングリードを使用する。種々の実施形態では、圧反射刺激は、血管壁の中またはそれに隣接して配置される電極により、肺動脈、頸動脈洞、または大動脈弓中の圧受容器を通して発生する。種々の実施形態では、大動脈神経、頸動脈洞神経、または迷走神経等の求心性神経は、カフ電極で直接刺激される。
【0093】
圧反射刺激は、血管拡張を迅速にもたらし、全身血圧を減少させる。心拍出量の同時減少を補うために、圧反射刺激中にペーシング率が増加される。本主題は、血圧が圧反射刺激を通して徐々に低下されることを可能にする一方で、圧反射刺激を心臓ペーシングと組み合わせることによって、そうでなければそのような刺激を伴う、心拍出量の低下を回避し、埋込型機器が血圧制御中に心拍出量を維持することを可能にする。
【0094】
図22A−Bは、本主題の種々の実施形態による、心拍出量パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。図22Aは、心拍出量パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための一実施形態を図示する。図示した過程2226Aでは、2227において圧反射刺激が印加されているかどうかが判定される。圧反射刺激が印加されていない場合、本主題は、もしあれば、2228において、適切なペーシング率で適切なペーシング療法を実施する。圧反射刺激が印加されていない場合、本主題は、2229において、より高いペーシング率でペーシング療法を実施して心拍出量を維持する。
【0095】
図22Bは、心拍出量パラメータに基づいて圧受容器刺激を変調するための一実施形態を図示する。図示した過程2226Bでは、2230において圧反射刺激が印加され、2231において心拍出量が十分であるかどうかが判定される。心拍出量が十分ではないと判定されると、2232において、十分な心拍出量を維持するようにペーシング率が増加させられる。
【0096】
種々の実施形態によれば、心拍出量を維持するように、圧反射刺激中に所定の因子によって既存のペーシング率が増加させられる。種々の実施形態では、心拍出量を維持するように、圧反射刺激中にあるペーシング率が開始される。所望の心拍出量を提供するように圧反射刺激を変調するステップは、心房および心室心拍数制御、AV遅延制御、再同期、および多重部位刺激とともに実施することができる。あるいは、1回拍出量は、右心室腔内の電極を使用する右心室インピーダンスによって、または左心室腔内または左心室腔に及ぶ電極を使用する左心室インピーダンスによって、監視されてもよく、ペーシング率は、固定心拍出量を維持するために神経性刺激の印加を使用して、増加されてもよい。
【0097】
(硬化過程を再形成する圧反射刺激の変調)
本主題の側面は、埋込型NS機器によって使用される、不応性高血圧症患者の全身血圧を低下させる、圧反射刺激のための方法を伴う。圧反射刺激アルゴリズムは、圧反射刺激を徐々に増加させて、プログラム可能な標的に向けて血圧をゆっくりと調整する。このアルゴリズムは、通常は圧力低下作用を減衰させる、一定の増加したレベルの圧反射刺激に中枢神経系が適応することを防ぐ。また、血圧変化の漸進的性質は、全身血圧および心拍出量の急変を伴わずに、患者が治療により良く耐えることを可能にする。
【0098】
本主題は、増加した圧反射刺激への中枢神経系の適応を防ぐように、患者に存在した以前の高血圧状態によって誘起される、動脈硬化過程の逆転を可能にする時間で血圧レベルをゆっくりと減少させるように、および圧受容器刺激中の心拍出量減少を防ぐように設計されている、特定のアルゴリズムまたは過程を提供する。時間とともに、動脈系が、以前に存在した高血圧症によって開始された硬化過程を再形成することが予期される。平均/中央血圧のゆっくりとした進行性低下は、逆再造形を介して、この硬化過程のゆっくりとした逆転を可能にする。血圧は、過程において心拍出量を低下させることなく低減されるため、望ましくない患者の症状を回避する。
【0099】
種々の実施形態では、機器は、血管壁の中またはそれに隣接して配置される電極により、肺動脈、頸動脈洞、または大動脈弓中の圧受容器を刺激する。種々の実施形態では、大動脈神経、頸動脈洞神経、または迷走神経等の求心性神経は、カフ電極で直接刺激される。刺激した圧反射は、血管拡張を迅速にもたらし、全身血圧を減少させる。しかしながら、一定の上昇したレベルで圧反射を刺激するよりもむしろ、本主題の機器は、例えば、最初にわずかに増加したレベルで刺激し、次いで、数週間または数ヶ月の期間にわたって刺激を徐々に増加させる。変化率は、現在の動脈圧および標的動脈圧に基づいて機器によって判定される。種々の実施形態では、システムは、心拍出量の直接的または間接的な測定に基づいて変化率を判定し、圧力の減少が、減少した心拍出量の犠牲において発生していないことを確実にする。種々の実施形態では、圧反射刺激率は一定ではないが、神経連絡分布をより綿密に模倣する白色雑音型分布を有する。神経連絡分布を模倣することによって、圧反射が刺激に対してより反応するため、圧反射を刺激するための閾値を低下させることが期待される。
【0100】
図23は、本主題の種々の実施形態による、硬化を逆再形成させるように圧受容器刺激を変調するための方法を図示する。2333において、圧反射イベントトリガが発生する。このトリガは、AHT機器の起動を含む、圧反射刺激を開始する任意のイベントを含む。2334において、硬化過程を逆再形成するために、血圧を標的圧力まで徐々に低下させる所定の変化率によって、圧反射刺激を増加させるようにアルゴリズムが実施される。2335において、圧反射療法アルゴリズムを続けるかどうかが判定される。アルゴリズムは、例えば、イベント中断、感知されたパラメータ、および/または標的血圧の到達に基づいて、2336において中止されてもよい。2337において、心拍出量が容認可能であるかどうかが判定される。心拍出量が容認可能ではない場合、2338において、圧反射の変化率は、心拍出量に基づいて修正される。
【0101】
(心筋梗塞を治療する圧反射刺激)
心筋梗塞後、梗塞領域中の筋細胞は死んで、機能的心筋とは異なる機械的および弾性特性を有する、瘢痕組織に代替される。経時的に、この梗塞領域は菲薄化および拡大し得て、心臓全体にわたって心筋ストレスの再配分を引き起こす。最終的に、この過程は、高応力下の領域中の機械的機能の低下、および心不全につながる。高応力下の領域は、高「負荷」であると呼ばれ、応力の低減は、「無負荷」と称される。急性心筋梗塞を治療して、心筋損傷を予防または低減する機器が望ましい。
【0102】
本主題のある側面は、心臓の電気的活動を監視する、埋込型機器に関する。心筋梗塞の検出時に、機器は、血管壁の中またはそれに隣接する圧受容器を刺激することによって、および/または圧受容性神経を直接刺激することによって、圧反射を電気的に刺激する。増加した圧反射刺激は、低減した圧反射感度を補い、心筋梗塞後の患者の臨床予後を改善する。埋込型機器(例えば、CRM機器)は、心臓の電気的活動を監視する。心筋梗塞の検出時に、機器は圧反射を刺激する。機器の一部の実施形態は、血管壁の中またはそれに隣接して配置される電極により、肺動脈、頸動脈洞、または大動脈弓中の圧受容器を刺激する。種々の実施形態では、大動脈神経等の求心性神経は、カフ電極で直接、または求心性神経の近傍に静脈内配置されるリードで刺激される。頸動脈洞神経または迷走神経等の求心性神経は、カフ電極で直接、または求心性神経の近傍に静脈内配置されるリードで刺激される。種々の実施形態では、心臓脂肪体は、脂肪体にねじ込まれる電極、あるいは脂肪体に最も近い血管または心腔に静脈内供給されるリードを使用して、刺激される。
【0103】
圧反射刺激は、血管拡張を迅速にもたらし、全身血圧を減少させる。このことは、低減した圧反射感度を補い、心筋梗塞を低減する。種々の実施形態によれば、適切なレベルの刺激が送達されることを確実にするように、圧反射刺激中に全身血圧または代理パラメータが監視される。本主題の一部の側面および実施形態は、圧反射刺激を提供して心筋梗塞後の虚血性障害を予防する。
【0104】
図24A−24Bは、本主題の種々の実施形態による、心筋梗塞を検出し、検出した心筋梗塞に応じて圧力ペーシングを行うシステムおよび方法を図示する。図24Aは、心筋梗塞検出器2439および圧反射または圧受容器刺激装置2440を含むシステムを図示する。心筋梗塞は、例えば、心電図を使用して検出することができる。例えば、テンプレートを心電図と比較して、心筋梗塞を判定することができる。別の例は、ST部分の上昇の変化を検出して、心筋梗塞を検出する。種々の実施形態では、検出器2439および刺激装置2440は、例えば、AHT機器またはCRM機器等の単一埋込型機器に統合される。種々の実施形態では、検出器2439および刺激装置2440は、互いに通信するように構成される別個の埋込型機器において実装される。
【0105】
図24Bは、本主題の種々の実施形態による、心筋梗塞を検出し、検出した心筋梗塞に応じて圧力ペーシングを行うシステムおよび方法を図示する。2441において、心筋梗塞が発生したかどうかが判定される。心筋梗塞が発生したと判定されると、2442において圧反射が刺激される。例えば、種々の実施形態では、肺動脈の中または周囲の圧受容器は、右心房および肺動脈弁を通って肺動脈の中へ供給されるリードを使用して、刺激される。他の実施形態は、他の圧受容器部位および圧受容性神経を刺激する。一部の実施形態は、2443において、全身血圧または代理パラメータを監視し、2444において、この監視に基づいて刺激が調整されるべきかどうかを判定する。刺激が調整される場合、圧反射刺激は、2445において変調される。変調の実施例は、刺激の振幅、周波数、バースト周波数、および/または波形を変更するステップを含む。
【0106】
圧反射刺激等の神経性刺激は、心筋梗塞後に無負荷にするために使用することができる。種々の実施形態は、NS機器のフィードバック制御システム内の、虚血センサ等の急性心筋梗塞検出センサを使用する。しかしながら、心筋梗塞検出センサは必要とされない。例えば、刺激リードは、心筋梗塞後に埋め込むことができる。種々の実施形態では、刺激リードは、右心房を通って肺動脈の中へ埋め込まれ、肺動脈の中および周囲の圧受容器を刺激する。種々の実施形態は、求心性神経を刺激する刺激カフまたはリード、心臓脂肪体を刺激する電極ネジまたはリード、および本開示の他の場所で提供されるような他の圧受容器を刺激するリードを埋め込む。
【0107】
高負荷領域の電気的な事前励起は、この領域にかかる負荷を低減する。この事前励起は、最終的に心臓の有害な再造形につながる、交感神経活性および大域的応力の増加をもたらす心拍出量を、有意に低減してもよい。この過程は、この反射の影響を低減するために、増加した神経性刺激によって回避されてもよい。したがって、事前励起中の副交感神経系の活性化は、電気的な事前励起によって、無負荷の望ましくない副作用を予防し得る。
【0108】
当業者であれば、本明細書に示され、記載されるモジュールおよび他の回路は、ソフトウェア、ハードウェア、ならびにソフトウェアおよびハードウェアの組み合わせを使用して実装できることを理解するであろう。そのようなものとして、モジュールという用語は、ソフトウェア実装、ハードウェア実装、ならびにソフトウェア実装とハードウェア実装とを包含することを目的とする。
【0109】
本開示で図示される方法は、本主題の範囲内の他の方法を除くことを目的としない。当業者であれば、本開示を熟読および理解することによって、本主題の範囲内の他の方法を理解するであろう。上記で示した実施形態、および図示した実施形態の各部は、必ずしも相互に排他的ではない。これらの実施形態、またはそれらの各部は、組み合わせることができる。例えば、種々の実施形態は、図示した過程のうちの2つ以上を組み合わせる。2つ以上の感知パラメータは、所望の神経性刺激(NS)または血圧降下(AHT)療法を提供するために使用される複合パラメータに組み合わせることができる。種々の実施形態では、上記で提供される方法は、搬送波または伝搬信号に埋め込まれるコンピュータデータ信号として実施され、それは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに各方法を行わせる、一連の命令を表す。種々の実施形態では、上記で提供される方法は、プロセッサに各方法を行うように指示することが可能な、コンピュータアクセス可能媒体上に含有される一式の命令として実施される。種々の実施形態では、媒体は、磁気媒体、電子媒体、または光学媒体である。
【0110】
具体的実施形態を本明細書で図示および説明したが、同じ目的を達成するように計算される任意の配設が、示される具体的実施形態に代替されてもよいことが、当業者によって十分理解されるであろう。本願は、本主題の適応型または変化型を対象とすることを目的とする。上記の説明は、限定的ではなく、例示的となることを目的とすることが理解される。上記の実施形態の組み合わせ、ならびに他の実施形態での上記の実施形態の各部の組み合わせは、上記の説明を再検討することによって、当業者に明白となるであろう。本主題の範囲は、添付の請求項を参照して、そのような請求項が享受できる同等物の全範囲とともに、決定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経性刺激を提供するシステムであって、
活動を感知し、該活動を示す信号を提供する、活動モニタと、
神経刺激装置であって、
神経性刺激療法を提供するように適合される神経性刺激信号を提供する、パルス発生器と、
該活動を示す該信号を受信し、該活動を示す該信号に基づいて該神経性刺激信号を変調して該神経性刺激療法を変更する、変調器と
を含む、神経刺激装置と
を備える、システム。
【請求項2】
前記活動モニタは、安静と運動とを区別するための、少なくとも1つの信号を提供するように適合され、前記パルス発生器と前記変調器とは、恊働して、前記神経性刺激信号を提供することによって安静に反応するように、かつ該神経性刺激信号を撤回することによって運動に反応するように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記活動を示す前記信号は、活動レベルを示す信号を含み、前記変調器は、該活動レベルに基づいて神経性刺激レベルを設定するように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記変調器は、少なくとも1つの感知された活動パラメータを少なくとも1つの参照パラメータと比較し、該比較の結果に基づいて前記神経性刺激信号を変調するように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記変調器は、前記少なくとも1つの参照パラメータと前記少なくとも1つの感知された活動パラメータの差異を判定し、該差異に基づいて前記神経性刺激を変調するように適合される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記変調器は、前記差異に比例して前記神経性刺激の強度を変更するように適合される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記変調器は、一定の期間にわたる感知された活動に基づいて、前記少なくとも1つの参照パラメータを動的に調整するように適合される、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記パルス発生器と前記変調器とは、前記感知された活動が閾値を下回るときに、前記神経性刺激信号を提供し、該感知された活動が該閾値を上回るときに、該神経性刺激信号を与えずにおくように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記感知された活動は、意図的でない生理学的反応と関連し、前記パルス発生器と前記変調器とは、前記神経性刺激を調整して該意図的でない反応を軽減するように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記刺激信号は、振幅を有し、前記変調器は、前記活動を示す前記信号に基づいて該振幅を変調する変調器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記刺激信号は、周波数を有し、前記変調器は、前記活動を示す前記信号に基づいて該周波数を変調する変調器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記パルス発生器は、神経性刺激パルス列を生成するように適合され、前記変調器は、神経性刺激パルス列の継続時間を変更する変調器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記活動モニタは、心拍数センサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記活動モニタは、呼吸モニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記呼吸モニタは、分時換気量モニタを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記呼吸モニタは、呼吸数モニタを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記活動モニタは、動作モニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記動作モニタは、加速度計を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記動作モニタは、筋肉の動きを評価するために筋電図法(EMG)を使用するように適合される、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記動作モニタは、グローバルポジショニングシステム(GPS)技術を使用するように適合される、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記活動モニタは、1回拍出量モニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記活動モニタは、1回呼吸量モニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記活動モニタは、神経活動のモニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記活動モニタは、心拍出量のモニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
前記活動モニタは、少なくとも1つの血圧パラメータを感知するセンサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
前記少なくとも1つの血圧パラメータは、平均動脈圧、脈圧、収縮末期圧、または拡張末期圧を含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記活動モニタは、少なくとも1つの電位図測定値を測定するモニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
埋込型医療機器をさらに備え、該埋込型医療機器は、前記活動モニタおよび前記神経刺激装置を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
埋込型神経刺激(NS)機器と、埋込型心臓刺激装置とをさらに備え、該埋込型NS機器は、前記神経刺激装置を含み、該埋込型心臓刺激装置は、前記活動モニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項30】
前記変調器は、概日リズムに基づいて、および前記活動を示す前記信号に基づいて、前記神経性刺激信号を変調して前記神経性刺激療法を変更するように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記変調器は、日中は、増加した活動によって神経性刺激強度をより積極的に低減するが、夜間は、増加した活動によって神経性刺激をあまり積極的に低減しないように適合される、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
神経刺激装置であって、
神経性刺激療法を提供するように適合される神経性刺激信号を提供する、埋込型パルス発生器と、
該神経性刺激療法の強度を変更するために、活動を示す信号に基づいて該神経性刺激信号を変調する、手段と
を備える、装置。
【請求項33】
前記神経性刺激信号を変調する前記手段は、活動レベルを検出する手段と、該活動レベルに基づいて該神経性刺激信号を変調する手段とを含む、請求項32に記載の神経刺激装置。
【請求項34】
前記神経性刺激信号を変調する前記手段は、前記活動を示す信号が閾値未満である場合にだけ神経性刺激を印加する手段を含む、請求項32に記載の神経刺激装置。
【請求項35】
前記神経性刺激信号を変調する前記手段は、概日リズムに基づいて、および前記活動を示す信号に基づいて、該神経性刺激信号を変調する手段を含む、請求項32に記載の神経刺激装置。
【請求項1】
神経性刺激を提供するシステムであって、
活動を感知し、該活動を示す信号を提供する、活動モニタと、
神経刺激装置であって、
神経性刺激療法を提供するように適合される神経性刺激信号を提供する、パルス発生器と、
該活動を示す該信号を受信し、該活動を示す該信号に基づいて該神経性刺激信号を変調して該神経性刺激療法を変更する、変調器と
を含む、神経刺激装置と
を備える、システム。
【請求項2】
前記活動モニタは、安静と運動とを区別するための、少なくとも1つの信号を提供するように適合され、前記パルス発生器と前記変調器とは、恊働して、前記神経性刺激信号を提供することによって安静に反応するように、かつ該神経性刺激信号を撤回することによって運動に反応するように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記活動を示す前記信号は、活動レベルを示す信号を含み、前記変調器は、該活動レベルに基づいて神経性刺激レベルを設定するように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記変調器は、少なくとも1つの感知された活動パラメータを少なくとも1つの参照パラメータと比較し、該比較の結果に基づいて前記神経性刺激信号を変調するように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記変調器は、前記少なくとも1つの参照パラメータと前記少なくとも1つの感知された活動パラメータの差異を判定し、該差異に基づいて前記神経性刺激を変調するように適合される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記変調器は、前記差異に比例して前記神経性刺激の強度を変更するように適合される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記変調器は、一定の期間にわたる感知された活動に基づいて、前記少なくとも1つの参照パラメータを動的に調整するように適合される、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記パルス発生器と前記変調器とは、前記感知された活動が閾値を下回るときに、前記神経性刺激信号を提供し、該感知された活動が該閾値を上回るときに、該神経性刺激信号を与えずにおくように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記感知された活動は、意図的でない生理学的反応と関連し、前記パルス発生器と前記変調器とは、前記神経性刺激を調整して該意図的でない反応を軽減するように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記刺激信号は、振幅を有し、前記変調器は、前記活動を示す前記信号に基づいて該振幅を変調する変調器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記刺激信号は、周波数を有し、前記変調器は、前記活動を示す前記信号に基づいて該周波数を変調する変調器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記パルス発生器は、神経性刺激パルス列を生成するように適合され、前記変調器は、神経性刺激パルス列の継続時間を変更する変調器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記活動モニタは、心拍数センサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記活動モニタは、呼吸モニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記呼吸モニタは、分時換気量モニタを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記呼吸モニタは、呼吸数モニタを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記活動モニタは、動作モニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記動作モニタは、加速度計を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記動作モニタは、筋肉の動きを評価するために筋電図法(EMG)を使用するように適合される、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記動作モニタは、グローバルポジショニングシステム(GPS)技術を使用するように適合される、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記活動モニタは、1回拍出量モニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記活動モニタは、1回呼吸量モニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記活動モニタは、神経活動のモニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記活動モニタは、心拍出量のモニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
前記活動モニタは、少なくとも1つの血圧パラメータを感知するセンサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
前記少なくとも1つの血圧パラメータは、平均動脈圧、脈圧、収縮末期圧、または拡張末期圧を含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記活動モニタは、少なくとも1つの電位図測定値を測定するモニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
埋込型医療機器をさらに備え、該埋込型医療機器は、前記活動モニタおよび前記神経刺激装置を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
埋込型神経刺激(NS)機器と、埋込型心臓刺激装置とをさらに備え、該埋込型NS機器は、前記神経刺激装置を含み、該埋込型心臓刺激装置は、前記活動モニタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項30】
前記変調器は、概日リズムに基づいて、および前記活動を示す前記信号に基づいて、前記神経性刺激信号を変調して前記神経性刺激療法を変更するように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記変調器は、日中は、増加した活動によって神経性刺激強度をより積極的に低減するが、夜間は、増加した活動によって神経性刺激をあまり積極的に低減しないように適合される、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
神経刺激装置であって、
神経性刺激療法を提供するように適合される神経性刺激信号を提供する、埋込型パルス発生器と、
該神経性刺激療法の強度を変更するために、活動を示す信号に基づいて該神経性刺激信号を変調する、手段と
を備える、装置。
【請求項33】
前記神経性刺激信号を変調する前記手段は、活動レベルを検出する手段と、該活動レベルに基づいて該神経性刺激信号を変調する手段とを含む、請求項32に記載の神経刺激装置。
【請求項34】
前記神経性刺激信号を変調する前記手段は、前記活動を示す信号が閾値未満である場合にだけ神経性刺激を印加する手段を含む、請求項32に記載の神経刺激装置。
【請求項35】
前記神経性刺激信号を変調する前記手段は、概日リズムに基づいて、および前記活動を示す信号に基づいて、該神経性刺激信号を変調する手段を含む、請求項32に記載の神経刺激装置。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図18E】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図20E】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図18E】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図20E】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【公表番号】特表2010−508969(P2010−508969A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536265(P2009−536265)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/023288
【国際公開番号】WO2008/063396
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/023288
【国際公開番号】WO2008/063396
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
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