説明

活性エネルギー線硬化型インクジェットインク、インクジェット記録方法および印刷物

【課題】高湿環境下においても、優れた硬化性を示し、柔軟性に優れた画像を形成し得る活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びそれを用いたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】カチオン重合性化合物および光カチオン重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにおいて、該カチオン重合性化合物としてビニルエーテル基を反応基として有する化合物を50.0質量%以上含有し、かつ該光カチオン重合開始剤として特定の構造を有するスルホニウム塩、ヨードニウム塩から選ばれる少なくとも一種の光酸発生剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに関し、特に硬化時の環境による影響を低減し、硬化して形成された印字物の柔軟性の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は、簡便でかつ安価に画像を作成できるため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。
【0003】
この様なインクジェット記録方式で用いられるインクジェットインクとしては、印字後、光等の活性エネルギー線により硬化する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが次世代インクジェットインクとして注目されており、用途拡大の期待が大きいインクジェットインクである。
【0004】
この様な活性エネルギー線硬化型インクジェットインクとして、カチオン重合型のインクジェットインクが挙げられる。カチオン重合型のインクジェットインク組成物としては、オキセタン化合物、脂環式エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物を重合性化合物として用いたたものが広く知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0005】
これらに開示されるインクジェットインク組成物においては、脂環式エポキシ化合物の添加量を増やすことにより硬化感度を高めることが行われてきたが、これに伴い、インク粘度の上昇、硬化膜の柔軟性低下などの問題があった。
【0006】
一方、インクの粘度低下と硬化膜の柔軟性を得るという観点から、ビニルエーテル化合物が比較的低粘度で硬化感度が高いことから、ビニルエーテルを含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインクが、提案、開示されている(例えば、特許文献3、4参照。)。
【0007】
しかしながら、ビニルエーテル化合物を用いたインクは、高感度ではあるが、重合反応率が高く、形成された被膜の柔軟性が低いという問題があった。また、印字環境による影響が出やすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3014251号公報
【特許文献2】特許第3893833号公報
【特許文献3】特開2006−274052号公報
【特許文献4】特開2008−280460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高感度であり、形成された画像が柔軟性を有し、更には、環境による影響を低減した活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを提供すること、それを用いたインクジェット記録方法及び記録物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにビニルエーテル化合物を用い、特定の構造を有する光酸発生剤を開始剤として用いることにより、硬化物の柔軟性を向上することができ、更には高湿環境下における硬化性を損なうことなく、高感度化を達成することができた。オニウム塩構造の光酸発生剤は、結晶性が高く、硬化物を硬く脆くする方向にあるが、炭素数4以上の分岐状アルキル骨格を光酸発生剤に導入することで、光酸発生剤及びその光分解物の結晶性が下がり、むしろ可塑剤のように振舞うようになり、硬化物の柔軟性を向上させるものと考えられる。そして、高湿環境下における硬化性と、硬化物の柔軟性を兼ね備えることが可能になったものと推定される。
【0011】
上記課題は、本発明の下記の構成により解決することが出来た。
【0012】
1.カチオン重合性化合物および光カチオン重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクおいて、該カチオン重合性化合物としてビニルエーテル基を反応基として有する化合物を50.0質量%以上含有し、かつ、該光カチオン重合開始剤として下記一般式(1)、(2)または(3)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の光酸発生剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0013】
【化1】

【0014】
〔式中、R〜Rは水素原子、アルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、を表すか、又は、下記連結基(4)を介して、他のR〜Rと連結する構造でも良い。m、n、pは、0〜5の整数を表すが、m、n、pが同時に全て0を表すことはなく、少なくともいずれか一つは、1〜5の整数をとる。R〜Rのそれぞれは、同一でも同一でなくても良い。Xはアニオン残基を表す。さらに、一般式(1)において、R、R、Rの少なくとも1つは、少なくとも一つの炭素数4以上の分岐状アルキル構造を含有し、一般式(2)において、R、Rの少なくとも1つは、少なくとも一つの炭素数4以上の分岐状アルキル構造を含有し、一般式(3)において、R、R、Rの少なくとも1つは、少なくとも一つの炭素数4以上の分岐状アルキル構造を含有するものとする。
【0015】
連結基(4)−Y−
式中、Yは、単なる結合手、もしくは、NR、O、SまたはCOを表す。Rは水素原子、アルキル基又は芳香族基を表す。〕
2.前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに含まれる重合性化合物の平均LogP値が1.5以上3.5未満であることを特徴とする前記1に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0016】
3.ビニルエーテル基を反応基として有するカチオン重合性化合物が、脂肪族、脂環式又は芳香族の二官能ビニルエーテル化合物より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする前記2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0017】
4.(メタ)アクリロイル基を反応基として含有する重合性化合物が、全体の1以上50質量%未満含有することを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0018】
5.前記1から4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを、インクジェットノズルより記録媒体上に吐出し、次いで活性エネルギー線を照射して該活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを硬化させることを特徴とするインクジェット記録方法。
【0019】
6.前記5記載のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする印刷物。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、高湿環境下における硬化性を損なうことなく、硬化物の柔軟性を向上することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の構成を更に詳細に説明する。
【0023】
《カチオン重合性化合物》
一般に、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにおいては、カチオン重合性化合物としては、ビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、およびオキセタン化合物が用いられているが、本発明においては、カチオン重合性化合物として、少なくともビニルエーテル基を反応基として有する重合性化合物を、該インクジェットインク中に50質量%以上含有することを一つの特徴とする。
【0024】
本発明に係るビニルエーテル化合物は、下記一般式(VE)で表れる化合物であることが好ましい。
【0025】
一般式(VE)
−CH=CH−O−R−X
上記一般式(VE)において、Rは水素原子又は置換基を表し、Rは2価の連結基を表し、Xはヒドロキシ基又はハロゲン原子を表す。
【0026】
で表される置換基としては、例えば、炭素数が1〜10の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜11の芳香族基等が挙げられる。
【0027】
で表される連結基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキレン基、構造中にエーテル結合又はエステル結合により酸素原子を有する炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換あるいは未置換の芳香族基等が挙げられる。
【0028】
前記一般式(VE)で表されるビニルエーテル類の代表例としては、2−ビニロキシエタノール、2−(又は3−)ビニロキシプロパノール、2−(又は4−)ビニロキシブタノール、6−ビニロキシヘキサノール、2−(ビニロキシエトキシ)エタノール、2−(ビニロキシ−i−プロポキシ)プロパノール、2−(ビニロキシエトキシ)−i−プロパノール、2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エタノール、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等のヒドロキシ基含有ビニルエーテル類;1−クロロ−2−ビニロキシエタン、1−クロロ−3−ビニロキシプロパン、1−クロロ−4−ビニロキシブタン、1−クロロ−6−ビニロキシヘキサン、1−クロロ−2−(ビニロキシ−i−プロポキシ)エタン、1−クロロ−2−(ビニロキシエトキシ)プロパン、1−クロロ−2−(ビニロキシエトキシ)−i−プロパン、1−クロロ−2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エタン、1−クロロ−2−(ビニロキシポリエトキシ)エタン、1−クロロ−2−(ビニロキシポリ−i−プロポキシ)エタン等のハロゲン含有ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0029】
その他のビニルエーテル化合物の他の具体例を以下に示す。
【0030】
ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリ(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチルエステル、フェノールノボラック樹脂ビニルエーテル、クレゾールノボラック樹脂ビニルエーテル、エチレングリコールビス(2−ビニロキシポリエトキシ)エチルエーテル、エチレングリコールビス(2−ビニロキシポリ−i−プロポキシ)エチルエーテル、ジエチレングリコールビス(2−ビニロキシポリエトキシ)エチルエーテル、トリエチレングリコールビス(2−ビニロキシポリエトキシ)エチルエーテル、プロピレングリコールビス(2−ビニロキシポリエトキシ)エチルエーテル、ジプロピレングリコールビス(2−ビニロキシポリエトキシ)エチルエーテル、ブタンジオールビス(2−ビニロキシポリ−i−プロポキシ)エチルエーテル、ヘキサンジオールビス(2−ビニロキシポリエトキシ)エチルエーテル、シクロヘキサンジメタノールビス(2−ビニロキシポリ−i−プロポキシ)エチルエーテル、トリメチロールプロパントリ(2−ビニロキシポリエトキシ)エチルエーテル、1,1,1−トリ(4−ビニロキシフェニル)エタン、1−〔α−メチル−α−(4−ビニロキシフェニル)エチル〕−4−〔α,α−ビス(4−ビニロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1,3−ビス(4−ビニロキシフェニルスルホニルメチル)ベンゼン。
【0031】
以下に挙げるビニルエーテル化合物も好適に用いることができる。
【0032】
n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、オエンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル。
【0033】
上記以外にも、これまでに開示されている種々のビニルエーテル化合物を適用することが可能である。例えば、特許第3461501号公報に開示されている、分子内に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を含む化合物、特許第4037856号公報に開示されている少なくとも酸素原子を含む脂環骨格を持つビニルエーテル化合物、特開2005−015396号公報に開示されている脂環式骨格を有するビニルエーテル、特開2008−137974号公報に開示されている1−インダニルビニルエーテル、特開2008−150341号公報に開示されている4−アセトキシシクロヘキシルビニルエーテル等を挙げることができる。
【0034】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。中でもジエチレングリコールジビニルエーテルおよびトリエチレングリコールジビニルエーテルは、硬化性、種々の素材との相溶性、耐臭気性、安全性の点で優れており好ましい。ジエチレングリコールジビニルエーテルとトリエチレングリコールジビニルエーテルの合計は、重合性化合物全体に対して40質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは60質量%以上である。更に上記のその他のビニルエーテル化合物を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本発明において、ビニルエーテル化合物は、本発明のインクジェットインク中に50質量%以上含有することを特徴とする。より好ましくは、該インクジェットインク中に80質量%以上含有する。ビニルエーテル化合物の該インクジェットインク中の含有量が50質量%以上とすることにより、高い硬化性、特に低照度で薄膜を硬化する場合の硬化性を得ることができる。
【0036】
《光カチオン重合開始剤》
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクで用いることのできる光カチオン重合開始剤としては、前記一般式(1)〜(3)で表される光酸発生剤を用いることを特徴とする。
【0037】
本発明で用いることのできる、前記一般式(1)〜(3)で表される化合物の具体例を、以下に示す。
【0038】
【化2】

【0039】
【化3】

【0040】
【化4】

【0041】
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
【化12】

【0049】
【化13】

【0050】
【化14】

【0051】
本発明の上記、前記一般式(1)〜(3)で表される光酸発生剤と共に、本発明の効果を損なわない範囲で公知の光酸発生剤を併用しても良い。
【0052】
公知の光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。例えば、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C4−、PF、AsF、SbF、CFSO塩を挙げることができる。
【0053】
本発明及び公知の光酸発生剤は、前記、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、及び、Bull.Chem.Soc.Jpn.,42,312(1969)、J.Polym.Sci.,Poly.m.Chem.Ed.,17,2877(1979)、特開平11−80118号公報、特開2002−241474号公報、米国特許第4404459号明細書、米国特許第6031014号明細書、米国特許出願公開第2005/0064333号明細書、特表2005−501040号公報等に記載の公知の方法で合成できる。
【0054】
《(メタ)アクリロイル基含有の重合性化合物》
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクでは、重合性化合物としてラジカル重合性化合物を併用することが好ましい。本発明においては、ラジカル重合性化合物として、(メタ)アクリロイル基含有の重合性化合物を用いることが特に好ましく、添加量としては、1以上50質量%未満の範囲で用いることにより、硬化性を損ねずに柔軟性を改善することが出来る。更に好ましくは、20以上40質量%以下の範囲である。
【0055】
(メタ)アクリロイル基含有の重合性化合物としては、公知のあらゆる(メタ)アクリレートモノマー及びまたはオリゴマーを用いることができる。
【0056】
例えば、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可とう性アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート等の単官能モノマー、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の三官能以上の多官能モノマーが挙げられる。
【0057】
この他、重合性のオリゴマー類も、モノマー同様に配合可能である。重合性オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、直鎖アクリルオリゴマー等が挙げられる。
【0058】
《LogP値》
本発明でいうlogP値とは、水/オクタノール分配比率の対数値である。logP値は、フラグメント法、原子アプローチ法などにより計算により算出することができる。logP値を計算する代表的なソフトウエアとしては、CambridgeSoft社のChem Draw Ultra7.0が挙げられる。本発明に係る計算に使用されるハードウエアとしては、パーソナルコンピューターで十分高速に計算を実行できる。
【0059】
平均LogP値とは、複数の重合性化合物の組成比率と各々の化合物のLogP値を相加平均して算出する。
【0060】
以下にビニルエーテル系重合性モノマー化合物のLogP値を例示する。
【0061】
2EHAVE:2−エチルヘキシルビニルエーテル LogP値 3.57
CHDMVE:シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル LogP値 2.80
HDDV:1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル LogP値 2.50
BDVE:1,4−ブタンジオールジビニルエーテル LogP値 1.66
TEGDVE:トリエチレングリコールジビニルエーテル LogP値 0.79
HQVE:1,4−ジビニロキシベンゼン LogP値 2.90
DEGDVE:ジエチレングリコールジビニルエーテル LogP値 0.95
その他のカチオン重合性化合物
OXT−221:ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル
LogP値 1.47
(メタ)アクリロイル基含有化合物のLogP値を下記に示す。
【0062】
エチルアクリレート LogP値 1.33
n−ブチルアクリレート LogP値 2.38
イソブチルアクリレート LogP値 3.44
ヘキシルアクリレート LogP値 3.44
2−エチルヘキシルアクリレート LogP値 4.37
シクロヘキシルアクリレート LogP値 2.83
イソステアリルアクリレート LogP値 9.79
イソボニルアクリレート LogP値 4.66
テトラヒドロフルフリルアクリレート LogP値 1.22
ベンジルアクリレート LogP値 2.57
フェノキシエチルアクリレート LogP値 2.56
γ−ブチロラクトンアクリレート LogP値 −0.28
エチルカルビトールアクリレート LogP値 1.01
メトキシトリエチレングリコールアクリレート LogP値 0.49
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート LogP値 3.02
1,9−ノナンジオールジアクリレート LogP値 5.22
ネオペンチルグリコールジアクリレート LogP値 2.58
ジプロピレングリコールジアクリレート LogP値 2.04
トリプロピレングリコールジアクリレート LogP値 2.21
PEGDA#400:ポリエチレングリコール#400ジアクリレート
LogP値 1.23
ビスフェノールA、EO付加物ジアクリレート LogP値 5.95
テトラメチロールメタントリアクリレート LogP値 1.68
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク中におけるこれら重合性化合物の平均LogP値が1.5以上3.5未満であることが好ましい。LogP値を1.5以上とすることにより、高湿環境下でビニルエーテルの加水分解を防止し、硬化感度の低下を防止し、3.5以下とすることにより、メカニズムの詳細は定かではないが、硬化感度が高く、柔軟性も得ることができる。
【0063】
《着色剤》
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを着色する場合は、顔料を着色剤として用いることが好ましい。顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無色無機顔料又は有色有機顔料を使用することができる。有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系有機顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系有機顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系有機顔料;イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系有機顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系有機顔料;チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン系有機顔料;イソインドリンイエローなどのイソインドリン系有機顔料;その他の顔料として、フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0064】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)番号で以下に例示する。
【0065】
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、
C.I.ピグメントグリーン7、36、
C.I.ピグメントブラウン23、25、26、
上記顔料の中でも、キナクリドン系、フタロシアニン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、キノフタロン系、イソインドリン系有機顔料等は耐光性が優れているため好ましい。
【0066】
有機顔料は、レーザ散乱による測定値でインク中の平均粒径が10〜150nmの微細粒子であることが好ましい。顔料の平均粒径が10nm未満の場合は、粒径が小さくなることによる耐光性の低下が生じやすくなる傾向がある。また、150nmを超える場合は分散の安定維持が困難になりやすく、顔料の沈澱が生じ易くなるとともに、吐出安定性が低下し、サテライトと言われる微小のミストが発生する問題が起こりやすくなる傾向がある。ただし、酸化チタンの場合は白色度と隠蔽性を持たせるために平均粒径は150〜300nm、好ましくは180〜250nmとする。
【0067】
またインク中の顔料の最大粒径は、吐出安定性をより良好とする観点から、1.0μmを越えないよう、十分に分散あるいは、ろ過により粗大粒子を除くことが好ましい。
【0068】
有機顔料の微細化は、以下の方法で行うことができる。即ち、有機顔料、有機顔料の3質量倍以上の水溶性無機塩及び水溶性溶剤の少なくとも3成分から成る混合物を粘土状とし、ニーダー等で強く練り込んで微細化した後、水中に投入し、ハイスピードミキサー等で攪拌してスラリー状とする。次いで、スラリーの濾過と水洗を繰り返して、水溶性の無機塩及び水溶性の溶剤を、水性処理により除去する。微細化工程において、樹脂、顔料分散剤等を添加してもよい。
【0069】
水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は有機顔料の3〜20質量倍の範囲で用いるが、分散処理を行った後は、本発明で規定するハロゲンイオン含有量を達成するため、塩素イオン(ハロゲンイオン)を水洗処理により取り除く操作を行う。無機塩の量が3質量倍よりも少ないと、所望の大きさの処理顔料が得られず、又、20質量倍よりも多いと、後の工程における洗浄処理が多大であり、有機顔料の実質的な処理量が少なくなる。
【0070】
水溶性溶剤は、有機顔料と破砕助剤として用いられる水溶性無機塩との適度な粘土状態を作り、充分な破砕を効率よく行うために用いられ、水に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、混練時に温度が上昇して溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から沸点120〜250℃の高沸点の溶剤が好ましい。水溶性溶剤として、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(i−ペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0071】
また顔料はその表面に顔料分散剤との吸着を促進するために、酸性処理または塩基性処理、シナージスト、各種カップリング剤など、公知の技術により表面処理を行うことが分散安定性を確保するために好ましい。
【0072】
顔料は、十分な濃度及び十分な耐光性を得るため、インクジェットインク中に白色を除く色の場合1.5〜8質量%、酸化チタンを用いた白色インクの場合、10〜30質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0073】
《顔料分散剤》
顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート、顔料誘導体等を挙げることができる。
【0074】
具体例としては、BYK Chemie社製の「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が挙げられる。
【0075】
又、Efka CHEMICALS社製の「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」;共栄化学社製の「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」;楠本化成社製の「ディスパロンKS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」等が挙げられる。
【0076】
更には、花王社製の「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)」、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」;ゼネカ社製の「ソルスパーズ5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13240、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000、32000、7000」;日光ケミカル社製の「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」、味の素ファインテクノ製のアジスパー821、822、824等が挙げられる。
【0077】
これらの顔料分散剤は、顔料100に対し5〜70質量%、好ましくは10〜50質量%の範囲で含有させることが好ましい。5%以上とすることにより、分散安定性がより向上し、70%以下とすることにより吐出安定性がより良好となる。
【0078】
更に、これらの顔料分散剤は、0℃におけるカチオン重合性化合物全体へ5質量%以上の溶解性があることが好ましい。溶解性が5質量%以上であると、インクを0℃〜10℃程度の間で低温保存をしたときに、好ましくないポリマーゲルまたは顔料の軟凝集体が発生しにくくなり、インクの保存安定性と吐出安定性とが向上する。
【0079】
《ラジカル重合禁止剤》
本発明のインクでは、保存安定性の観点から、ラジカル重合禁止剤を添加するのが好ましい。本発明のビニルエーテルを主としたインクは、保存中に、熱や光の影響で発生したラジカルによりラジカル重合がおこる場合が考えられる。ラジカル重合禁止剤を本発明インクに使用することは、保存中に起きるラジカル重合を防ぐ効果がある反面、光カチオン重合の硬化は阻害しないことから、本発明のようなビニルエーテルを主とし硬化性に極めて優れたインクの光硬化を阻害せずに、インクの経時保存安定性だけを高めてくれる作用があることから非常に好ましい実施形態である。
【0080】
ラジカル重合禁止剤としては、フェノール系水酸基含有化合物、メトキノン(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、ハイドロキノン、4−メトキシ−1−ナフトール、ヒンダードアミン系酸化防止剤、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル フリーラジカル、N−オキシド化合物類、ピペリジン 1−オキシル フリーラジカル化合物類、ピロリジン 1−オキシル フリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、各種糖類、リン酸系酸化防止剤、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体、ジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンの重縮合物、フェノチアジン、などが挙げられる。
【0081】
ラジカル重合禁止剤としては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
【0082】
フェノール性化合物としては、例えば、次の化合物である:フェノール、アルキルフェノール、例えば、o−、m−又はp−クレゾール(メチルフェノール)、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェノール、又は2,2′−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−メチルフェノール)、4,4′−オキシジフェニル、3,4−メチレンジオキシジフェノール(ゴマ油)、3,4−ジメチルフェノール、ベンズカテキン(1,2−ジヒドロキシベンゾール)、2−(1′−メチルシクロヘキシ−1′−イル)−4,6−ジメチルフェノール、2−又は4−(1′−フェニルエチ−1′−イル)フェノール、2−t−ブチル−6−メチルフェノール、2,4,6−トリス−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール[CAS−Nr.11066−49−2]、オクチルフェノール[CAS−Nr.140−66−9]、2,6−ジメチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールF、ビスフェノールS、3,3′,5,5′−テトラブロモビスフェノールA、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、BASF Aktiengesellschaft のコレシン(Koresin)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、4−t−ブチルベンズカテキン、2−ヒドロキシベンジルアルコール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、6−イソプロピル−m−クレゾール、n−オクタデシル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾール、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル−イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート又はペンタエリスリット−テトラキス−[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6−ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノメチルフェノール、6−s−ブチル−2,4−ジニトロフェノール、Firma Ciba Spezialitaetenchemie のイルガノックス(Irganox)565、1010、1076、1141、1192、1222及び1425、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルエステル。3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヘキサデシルエステル、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクチルエステル、3−チア−1,5−ペンタンジオール−ビス−[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8−ジオキサ−1,11−ウンデカンジオール−ビス−[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8−ジオキサ−1,11−ウンデカンジオール−ビス−[(3′−t−ブチル−4′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)プロピオネート]、1,9−ノナンジオール−ビス−[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,7−ヘプタンジアミン−ビス[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド]、1,1−メタンジアミン−ビス[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド]、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、3−(3′,5′−ジメチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、ビス−(3−t−ブチル−5−エチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル)メタン、ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニ−1−イル)メタン、ビス−[3−(1′−メチルシクロヘキ−1′−イル)−5−メチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル]メタン、ビス−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニ−1−イル)メタン、1,1−ビス−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ2−メチルフェニ−1−イル)エタン、ビス−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニ−1−イル)スルフィド、ビス−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニ−1−イル)スルフィド、1,1−ビス−(3,4−ジメチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス−(5−t−ブチル−3−メチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル)ブタン、1,3,5−トリス−[1′−(3″,5″−ジ−t−ブチル−4″−ヒドロキシフェニ−1″−イル)メチ−1′−イル]−2,4,6−トリメチルベンゾール、1,1,4−トリス−(5′−t−ブチル−4′−ヒドロキシ−2′−メチルフェニ−1′−イル)ブタン及びt−ブチルカテコール、及びアミノフェノール、例えば、p−アミノフェノール、ニトロソフェノール、例えば、p−ニトロソフェノール、p−ニトロソ−o−クレゾール、アルコキシフェノール、例えば、2−メトキシフェノール(グアヤコール、ベンズカテキンモノメチルエーテル)、2−エトキシフェノール、2−イソプロポキシフェノール、4−メトキシフェノール(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、モノ−又はジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルアルコール、2,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンジルアルコール(シリンガアルコール)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4−ヒドロキシ−3−エトキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、3−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(イソバニリン)、1−((4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)エタノン(アセトバニリン))、オイゲノール、ジヒドロオイゲノール、イソオイゲノール、トコフェロール、例えば、α−、β−、γ−、δ−及びε−トコフェロール、トコール、α−トコフェロールヒドロキノン、及び2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ヒドロキシベンゾフラン(2,2−ジメチル−7−ヒドロキシクマラン)。
【0083】
また、キノン及びヒドロキノンとして、例えば、ヒドロキノン又はヒドロキノンモノメチルエーテル(4−メトキシフェノール)、メチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン4−メチルベンズカテキン、t−ブチルヒドロキノン、3−メチルベンズカテキン、ベンゾキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、4−エトキシフェノール、4−ブトキシフェノール、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、p−フェノキシフェノール、2−メチルヒドロキノン、テトラメチル−p−ベンゾキノン、ジエチル−1,4−シクロヘキサンジオン−2,5−ジカルボキシレート、フェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−3−ベンジル−p−ベンゾキノン、2−イソプロピル−5−メチル−p−ベンゾキノン(チモキノン)、2,6−ジイソプロピル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−3−ヒドロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジヒドロキシ−p−ベンゾキノン、エンベリン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、2−アミノ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ビスフェニルアミノ−1,4−ベンゾキノン、5,8−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2−アニリノ−1,4−ナフトキノン、アントラキノン、N,N−ジメチルインドアニリン、N,N−ジフェニル−p−ベンゾキノンジイミン、1,4−ベンゾキノンジオキシム、セルリグノン、3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメチルジフェノキノン、p−ロゾール酸(オーリン)、2,6−ジ−t−ブチル−4−ベンジリデン−ベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチル−アミルヒドロキノンが好適である。
【0084】
また、N−オキシル(ニトロキシル−又はN−オキシル−基、少なくとも1個の>N−O・−基を有する化合物)としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、BASF Aktiengesellschaft のウビヌル(Uvinul)4040P、4,4′,4″−トリス−(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル)ホスフィット、3−オキソ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジン−N−オキシル、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−メトキシピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−トリメチルシリルオキシピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−2−エチルヘキサノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−セバケート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−ステアレート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−ベンゾエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−(4−t−ブチル)ベンゾエート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)スクシネート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジペート、1,10−デカンジ酸−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルマロネート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)フタレート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)イソフタレート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)テレフタレート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ヘキサヒドロテレフタレート、N,N′−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジピンアミド、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カプロラクタム、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ドデシルスクシンイミド、2,4,6−トリス−[N−ブチル−N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)]トリアジン、N,N′−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ビス−ホルミル−1,6−ジアミノヘキサン、4,4′−エチレン−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン−3−オン)が好適である。
【0085】
芳香族アミン又はフェニレンジアミンとして、例えば、N,N−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−ジフェニルアミン、ニトロソジエチルアニリン、p−フェニレンジアミン、N,N′−ジアルキル−p−フェニレンジアミン(この際、アルキル基は同じ又は異なっていてよく、各々相互に無関係で、1〜4個の炭素原子を含み、直鎖又は分子鎖であってよい)、例えば、N,N′−ジ−イソブチル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、Firma Ciba Spezialitaetenchemie のイルガノックス5057、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン(BASF Aktiengesellschaft のケロビット(Kerobit)BPD)、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(Bayer AGのブルカノックス(Vulkanox)4010)、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、イミノジベンジル、N,N′−ジフェニルベンジジン、N−フェニルテトラアニリン、アクリドン、3−ヒドロキシジフェニルアミン、4−ヒドロキシジフェニルアミンが好適である。
【0086】
イミンとしては、例えば、メチルエチルイミン、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾキノンイミン、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾフェノンイミン、N,N−ジメチルインドアニリン、チオニン(7−アミノ−3−イミノ−3H−フェノチアジン)、メチレンバイオレット(7−ジメチルアミノ−3−フェニチアジノン)である。
【0087】
ラジカル重合禁止剤として有効なスルホンアミドは、例えば、N−メチル−4−トルオールスルホンアミド、N−t−ブチル−4−トルオールスルホンアミド、N−t−ブチル−N−オキシル−4−トルオールスルホンアミド、N,N′−ビス(4−スルファニルアミド)ピペリジン、3−{[5−(4−アミノベンゾイル)−2,4−ジメチルベンゾールスルホニル]エチルアミノ}−4−メチルベンゾールスルホン酸である。
【0088】
ラジカル重合禁止剤として有効なオキシムとしては、例えば、アルドキシム、ケトキシム又はアミドキシム、有利にジエチルケトキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、ベンズアルデヒドキシム、ベンジルジオキシム、ジメチルグリオキシム、2−ピリジンアルドキシム、サリチルアルドキシム、フェニル−2−ピリジルケトキシム、1,4−ベンゾキノンジオキシム、2,3−ブタンジオンジオキシム、2,3−ブタンジオンモノオキシム、9−フルオレノンオキシム、4−t−ブチル−シクロヘキサノンオキシム、N−エトキシ−アセチミド酸エチルエステル、2,4−ジメチル−3−ペンタノンオキシム、シクロドデカノンオキシム、4−ヘプタノンオキシム及びジ−2−フラニルエタンジオンジオイキシム又は他の脂肪族又は芳香族オキシム又はアルキル転移剤、例えば、アルキルハロゲニド、−トリフレート、−スルホネート、−トシレート、−カルボネート、−スルフェート、−ホスフェート等とのその反応生成物であってよい。
【0089】
ヒドロキシルアミンは、例えば、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン及びPCT/EP/03/03139の国際特許出願に記載されている化合物を挙げることができる。
【0090】
尿素誘導体として、例えば、尿素又はチオ尿素が好適である。
【0091】
燐含有化合物は、例えば、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィット、次亜燐酸、トリノニルホスフィット、トリエチルホスフィット又はジフェニルイソプロピルホスフィンである。
【0092】
硫黄含有化合物として、例えば、ジフェニルスルフィド、フェノチアジン及び硫黄含有天然物質、例えば、システインが好適である。
【0093】
テトラアザアンヌレン(TAA)をベースとする錯化剤は、例えば、Chem.Soc.Rev.1998,27,105−115に挙げられている、例えば、ジベンゾテトラアザ[14]環及びポルフィリンである。
【0094】
その他にも、炭酸、塩化、ジチオカルバミン酸、硫酸、サリチル酸、酢酸、ステアリン酸、エチルヘキサン酸等の各金属塩(銅、マンガン、セリウム、ニッケル、クロム等)を挙げることができる。
【0095】
また、Macromol.Rapid Commun.,28,1929(2007)に記載のビニルエーテル官能基を有するN−オキシル フリーラジカル化合物は、カチオン重合性機能とラジカル捕捉機能を同一分子内に併せ持つ構造であり、硬化性とインク保存性の観点から、本発明のインクに添加するのは好ましい。又、このビニルエーテル官能基を有するN−オキシル フリーラジカル化合物をカチオン重合して得られたポリマーは、側鎖にフリーラジカルを有する構造を持つ高分子であり、耐溶剤性、擦過性、耐候性といった硬化膜物性や、インク保存性の観点から、本発明のインクに添加することが好ましい。
【0096】
ラジカル重合禁止剤の添加量は、1.0〜5000μg/gインクであることが好ましく、10〜2000μg/gインクがより好ましい。1.0μg/gインク以上であれば、所望の保存安定性が得られ、インクの増粘やインクジェットノズルに対する撥液性を得ることができ、吐出安定性の観点で好ましい。また、5000μg/gインク以下であれば、重合開始剤の酸発生効率を損なうことがなく、高い硬化感度を維持することができる。
【0097】
《カチオン重合禁止剤》
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにおいては、カチオン重合禁止剤を添加することもできる。カチオン重合禁止剤としては、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物もしくは、アミン類を挙げることができる。
【0098】
アミンとして好ましくは、アルカノールアミン類、N,N−ジメチルアルキルアミン類、N,N−ジメチルアケニルアミン類、N,N−ジメチルアルキニルアミン類などであり、具体的には、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、2−アミノエタノール、2−メチルアミノエタノール、3−メチルアミノ−1−プロパノール、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオール、2−エチルアミノエタノール、4−エチルアミノ−1−ブタノール、4−(n−ブチルアミノ)−1−ブタノール、2−(t−ブチルアミノ)エタノール、N,N−ジメチルウンデカノール、N,N−ジメチルドデカノールアミン、N,N−ジメチルトリデカノールアミン、N,N−ジメチルテトラデカノールアミン、N,N−ジメチルペンタデカノールアミン、N,N−ジメチルノナデシルアミン、N,N−ジメチルイコシルアミン、N,N−ジメチルエイコシルアミン、N,N−ジメチルヘンイコシルアミン、N,N−ジメチルドコシルアミン、N,N−ジメチルトリコシルアミン、N,N−ジメチルテトラコシルアミン、N,N−ジメチルペンタコシルアミン、N,N−ジメチルペンタノールアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルヘプタノールアミン、N,N−ジメチルオクタノールアミン、N,N−ジメチルノナノールアミン、N,N−ジメチルデカノールアミン、N,N−ジメチルノニルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルトリデシルアミン、N,N−ジメチルテトラデシルアミン、N,N−ジメチルペンタデシルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチルヘプタデシルアミン、N,N−ジメチルオクタデシルアミンが挙げられる。これらの他にも、4級アンモニウム塩なども使用することができる。
【0099】
カチオン重合禁止剤の添加量は、50〜5000μg/gインクであることが好ましい。50μg/gインク以上であれば、所望の保存安定性が得られ、インクの増粘やインクジェットノズルに対する撥液性を得ることができ、吐出安定性の観点で好ましい。また、5000μg/gインク以下であれば、重合開始剤の酸発生効率を損なうことがなく、高い硬化感度を維持することができる。
【0100】
《インク物性》
本発明のインクの物性は、通常の硬化型インクジェットインクと同様の物性値を有することが好ましい。即ち、粘度は25℃において2〜50mPa・sで、シェアレート依存性ができるだけ小さく、表面張力は25℃において22〜35mN/mの範囲にあること、顔料粒子以外には平均粒径が1.0μmを超えるようなゲル状物質が無いこと、電導度は10μS/cm以下の電導度とし、ヘッド内部での電気的な腐食のないインクとすることが好ましい。コンティニュアスタイプにおいては、電解質による電導度の調整が必要であり、この場合には0.5mS/cm以上の電導度に調整する必要がある。
【0101】
加えて本発明のインクの物性として、更に好ましい形態は、毎分5℃の降下速度で25℃から−25℃の範囲でインクのDSC(示差走査熱量)測定を行ったとき、単位質量あたりの発熱量が10mJ/mg以上の発熱ピークを示さないことである。本発明の構成に従って素材の選定を行うことにより、DSC測定において一定量以上の発熱を抑えることができる。このような構成とすることにより、インクを低温で保存した場合においてもゲルの発生や、析出物の発生を抑えることができる。
【0102】
《ポリマーまたはオリゴマー》
本発明においては、ポリマーまたはオリゴマーを含有させるか、添加することもできる。具体的なポリマーまたはオリゴマーとしては、上述のカチオン重合性化合物のポリマーまたはオリゴマーのうち反応性基を持たないものの他に、ビニルエーテルと相溶性のあるポリウレタン系化合物、ポリ(メタ)アクリル酸(エステル)系化合物、ポリエステル系化合物、ポリスチレン系化合物、ポリ酢酸ビニル系化合物、ポリブタジエン系化合物、ポリブチラール系化合物、ポリエチレン系化合物、など、公知のポリマー類の中から、本発明に係るビニルエーテルを主体とした重合性化合物に対して溶解性が良好なものを使用することができる。
【0103】
ポリマーまたはオリゴマーは、−15℃においてカチオン重合性化合物全体へ5質量%以上の溶解性があり25℃における粘度が500mPa・s以上が好ましい。
【0104】
これらのポリマーまたはオリゴマー添加により、高周波数駆動においても連続しての吐出安定性に優れ、硬化膜の平滑性が高く、光沢と高い画像濃度が得られ、基材への密着性、柔軟性、耐候性に優れた画像を形成できるインクを得ることができる。これらの効果は、特に、活性エネルギー線の透過性が低いブラックインクやホワイトインクにおいて顕著に現れる。
【0105】
カチオン重合性化合物全体への溶解性を向上させるためには、少なくとも構成単位として、オキシエチレン基や、オキシプロピレン基などのエーテル構造を持たせることが好ましい。このような構造を持たせることによりビニルエーテルへの溶解性を向上させるとともに、光重合開始剤の溶解性も向上させることが可能となり、インクの保存性や硬化性を改善することができる。
【0106】
また、上記ポリマーまたはオリゴマーは、25℃における粘度が500mPa・s以上とすることが好ましい。これにより、高周波数駆動においても連続しての吐出安定性に優れ、硬化膜の平滑性が高く、光沢と高い画像濃度が得られ、基材への密着性、柔軟性、耐候性に優れたインクを得ることができる。上記ポリマーまたはオリゴマーの添加量は、その粘度と溶解性によって適宜設定されるが、好ましくはインク全質量の3〜30質量%、更に好ましくは5〜20質量%である。添加量が3質量%より少ないと上記の効果が得られにくく、30質量%より多いと吐出安定性や低温環境下におけるインクの保存安定性の向上効果を得にくくなる。
【0107】
《活性エネルギー線硬化型インクの調製方法》
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、活性エネルギー線硬化性化合物であるビニルエーテル化合物、顔料分散剤と共に、顔料をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。予め顔料高濃度の濃縮液を調製しておき、活性エネルギー線硬化性化合物で希釈することが好ましい。通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、このため、過剰な分散エネルギーが掛からず、多大な分散時間を必要としないので、インク成分の分散時の変質を招き難く、安定性に優れたインクが調製できる。調製されたインクは、孔径3μm以下、更には1μm以下のフィルターで濾過することが好ましい。
【0108】
《記録媒体》
本発明のインクジェット記録方法に用いる記録媒体としては、従来、各種の用途で使用されている広汎な合成樹脂が全て対象となり、具体的には、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等が挙げられ、これらの合成樹脂基材の厚みや形状は何ら限定されない。この他にも金属類、ガラス、印刷用紙なども使用できる。
【0109】
本発明のインクジェット記録方法で用いる記録媒体の一つであるポリ塩化ビニルの具体例としては、SOL−371G、SOL−373M、SOL−4701(以上、ビッグテクノス株式会社製)、光沢塩ビ(株式会社システムグラフィ社製)、KSM−VS、KSM−VST、KSM−VT(以上、株式会社きもと製)、J−CAL−HGX、J−CAL−YHG、J−CAL−WWWG(以上、株式会社共ショウ大阪製)、BUS MARK V400 F vinyl、LITEcal V−600F vinyl(以上、Flexcon社製)、FR2(Hanwha社製)LLBAU13713、LLSP20133(以上、桜井株式会社製)、P−370B、P−400M(以上、カンボウプラス株式会社製)、S02P、S12P、S13P、S14P、S22P、S24P、S34P、S27P(以上、Grafityp社製)、P−223RW、P−224RW、P−249ZW、P−284ZC(以上、リンテック株式会社製)、LKG−19、LPA−70、LPE−248、LPM−45、LTG−11、LTG−21(以上、株式会社新星社製)、MPI3023(株式会社トーヨーコーポレーション社製)、ナポレオングロス 光沢塩ビ(株式会社二樹エレクトロニクス社製)、JV−610、Y−114(以上、アイケーシー株式会社製)、NIJ−CAPVC、NIJ−SPVCGT(以上、ニチエ株式会社製)、3101/H12/P4、3104/H12/P4、3104/H12/P4S、9800/H12/P4、3100/H12/R2、3101/H12/R2、3104/H12/R2、1445/H14/P3、1438/One Way Vision(以上、Inetrcoat社製)、JT5129PM、JT5728P、JT5822P、JT5829P、JT5829R、JT5829PM、JT5829RM、JT5929PM(以上、Mactac社製)、MPI1005、MPI1900、MPI2000、MPI2001、MPI2002、MPI3000、MPI3021、MPI3500、MPI3501(以上、Avery社製)、AM−101G、AM−501G(以上、銀一株式会社製)、FR2(ハンファ・ジャパン株式会社製)、AY−15P、AY−60P、AY−80P、DBSP137GGH、DBSP137GGL(以上、株式会社インサイト社製)、SJT−V200F、SJT−V400F−1(以上、平岡織染株式会社製)、SPS−98、SPSM−98、SPSH−98、SVGL−137、SVGS−137、MD3−200、MD3−301M、MD5−100、MD5−101M、MD5−105(以上、Metamark社製)、640M、641G、641M、3105M、3105SG、3162G、3164G、3164M、3164XG、3164XM、3165G、3165SG、3165M、3169M、3451SG、3551G、3551M、3631、3641M、3651G、3651M、3651SG、3951G、3641M(以上、Orafol社製)、SVTL−HQ130(株式会社ラミーコーポレーション製)、SP300 GWF、SPCLEARAD vinyl(以上、Catalina社製)、RM−SJR(菱洋商事株式会社製)、Hi Lucky、New Lucky PVC(以上、LG社製)、SIY−110、SIY−310、SIY−320(以上、積水化学工業株式会社製)、PRINT MI Frontlit、PRINT XL Light weight banner(以上、Endutex社製)、RIJET 100、RIJET 145、RIJET165(以上、Ritrama社製)、NM−SG、NM−SM(日栄化工株式会社製)、LTO3GS(株式会社ルキオ社製)、イージープリント80、パフォーマンスプリント80(以上、ジェットグラフ株式会社製)、DSE 550、DSB 550、DSE 800G、DSE 802/137、V250WG、V300WG、V350WG(以上、Hexis社製)、Digital White 6005PE、6010PE(以上、Multifix社製)等が挙げられる。
【0110】
また、可塑剤を含有しない樹脂基材又は非吸収性の無機基材を構成要素とする記録媒体としては、下記の各種基材を構成要素として、1種類の基材単独で、又は複数の種類の基材を組み合わせて、使用をすることができる。
【0111】
本発明に用いられる可塑剤を含有しない樹脂基材としては、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、可塑剤を含有しない硬質ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂等が挙げられる。
【0112】
これらの樹脂は可塑剤を含有していないことが特徴であるが、その他の厚み、形状、色、軟化温度、硬さ等の諸特性について特に制限はない。
【0113】
本発明に用いられる記録媒体として好ましくは、ABS樹脂、PET樹脂、PC樹脂、POM樹脂、PA樹脂、PI樹脂、可塑剤を含有しない硬質PVC樹脂、アクリル樹脂、PE樹脂、PP樹脂である。さらに好ましくはABS樹脂、PET樹脂、PC樹脂、PA樹脂、可塑剤を含有しない硬質PVC樹脂、アクリル樹脂である。
【0114】
また、本発明に用いられる非吸収性の無機基材としては、例えば、ガラス板、鉄やアルミニウムなどの金属板、セラミック板等が挙げられる。これらの無機基材は表面にインク吸収性の層を有していないことが特徴である。これらの非吸収性の無機基材はその他の厚み、形状、色、軟化温度、硬さ等の諸特性について特に制限はない。
【0115】
《インクジェット記録方法》
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを吐出して画像形成を行う際に使用するインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。
【0116】
本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクをインクジェットノズルより記録媒体上に吐出して、次いで紫外線などの活性エネルギー線を照射してインクを硬化させる記録方法である。
【0117】
(インク着弾後の活性エネルギー線照射条件)
本発明のインクジェット記録方法においては、活性エネルギー線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜1.0秒の間に活性エネルギー線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜0.5秒である。
【0118】
高精細な画像を形成するためには、照射タイミングができるだけ早いことが好ましい。
【0119】
活性エネルギー線の照射方法は、特に限定されず、例えば、下記の方法で行うことができる。
【0120】
特開昭60−132767号に記載のヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査し、照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われ、さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化が完了する方法、あるいは米国特許第6,145,979号に記載の光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へ紫外線を照射する方法を挙げることができる。
【0121】
本発明のインクジェット記録方法においては、これらの何れの照射方法も用いることができる。
【0122】
また、活性エネルギー線の照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性エネルギー線を照射し、かつ、全印字終了後、さらに活性エネルギー線を照射する方法も好ましい態様の1つである。
【0123】
活性エネルギー線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0124】
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体上にインクが着弾し、活性エネルギー線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが、記録媒体のカール、皺、記録媒体の質感変化、などの面から好ましい。
【0125】
尚、ここでいう「総インク膜厚」とは、記録媒体に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0126】
(インクの加熱および吐出条件)
本発明のインクジェット記録方法においては、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを加熱した状態で、活性エネルギー線を照射することが、吐出安定性の面から、好ましい。
【0127】
加熱する温度としては、35〜100℃が好ましく、35〜80℃に保った状態で、活性エネルギー線を照射することが、吐出安定性の点でさらに好ましい。
【0128】
インクジェットインクを所定の温度に加熱、保温する方法として特に制限はないが、例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク等のインク供給系や、フィルター付き配管、ピエゾヘッド等を断熱して、パネルヒーター、リボンヒーター、保温水等により所定の温度に加熱する方法がある。
【0129】
インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃が好ましく、さらに設定温度±2℃が好ましく、特に設定温度±1℃が、吐出安定性の面から好ましい。
【0130】
各ノズルより吐出する液滴量としては、記録速度、画質の面から2〜20plであることが好ましい。
【0131】
次いで、本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について説明する。
【0132】
以下、記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。
【0133】
図1は記録装置の要部の構成を示す正面図である。
【0134】
記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。
【0135】
この記録装置1は、記録媒体Pの下にプラテン部5が設置されている。
【0136】
プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録媒体Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。
【0137】
その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0138】
記録媒体Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行う。
【0139】
ヘッドキャリッジ2は記録媒体Pの上側に設置され、記録媒体P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。
【0140】
ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0141】
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行っているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0142】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性エネルギー線硬化型インクジェットインク(例えばUV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録媒体Pに向けて吐出する。
【0143】
記録ヘッド3は記録媒体Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録媒体Pの他端まで移動するという走査の間に、記録媒体Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0144】
上記走査を適宜回数行い、1領域の着弾可能領域に向けて活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの吐出を行った後、搬送手段で記録媒体Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行いながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行う。
【0145】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段および搬送手段と連動して記録ヘッド3か活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを吐出することにより、記録媒体P上に活性エネルギー線硬化型インクジェットインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0146】
照射手段4は、例えば特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプおよび特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。
【0147】
ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザ、冷陰極管、熱陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、熱陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。
【0148】
特に波長254nmの紫外線を発光する低圧水銀ランプ、熱陰極管、冷陰極管および殺菌灯が滲み防止、ドット径制御を効率よく行うことができ好ましい。
【0149】
ブラックライトを照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0150】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0151】
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録媒体Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0152】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録媒体Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録媒体Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。
【0153】
又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にするとさらに好ましい。
【0154】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプまたはフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0155】
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【0156】
図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色のインクジェット記録ヘッド3を、記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
【0157】
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側、すなわち、記録媒体Pが搬送される方向のヘッドキャリッジ2の後部には、同じく記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、インク印字面全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。
【0158】
照明手段4に用いられる紫外線ランプは、図1に記載したのと同様のものを用いることができる。
【0159】
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2および照射手段4は固定され、記録媒体Pのみが、搬送されて、インク出射および硬化を行って画像形成を行う。
【実施例】
【0160】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0161】
実施例1
《インクの調製》
〔顔料分散体1の調製〕
顔料分散剤(ソルスパース24000GR、日本ルーブリゾール株式会社製)1.0部をトリエチレングリコールジビニルエーテル(TEGDVE)(BASFジャパン株式会社製)12部に溶解した後、顔料C.I.ピグメントブルー15:3 2.5部を添加し、0.5mmジルコニアビーズを67部加えて、ペイントシェーカー分散を4時間行い、顔料分散体1を得た。
【0162】
〔顔料分散体2の調製〕
顔料分散剤(ソルスパース24000GR、日本ルーブリゾール株式会社製)1.2部をトリエチレングリコールジビニルエーテル(BASFジャパン株式会社製)14部に溶解した後、顔料C.I.ピグメントイエロー150 3.0部を添加し、0.5mmジルコニアビーズを80部加えて、ペイントシェーカー分散を4時間行い、顔料分散体2を得た。
【0163】
〔顔料分散体3の調製〕
顔料分散剤(ソルスパース24000GR、日本ルーブリゾール株式会社製)1.6部をトリエチレングリコールジビニルエーテル(BASFジャパン株式会社製)19部に溶解した後、顔料C.I.ピグメントレッド122 4.0部を添加し、0.5mmジルコニアビーズを100部加えて、ペイントシェーカー分散を4時間行い、顔料分散体3を得た。
【0164】
〔顔料分散体4の調製〕
顔料分散剤(ソルスパース24000GR、日本ルーブリゾール株式会社製)3.2部をトリエチレングリコールジビニルエーテル(BASFジャパン株式会社製)40部に溶解した後、顔料酸化チタン 8.0部を添加し、0.5mmジルコニアビーズを215部加えて、ペイントシェーカー分散を4時間行い、顔料分散体4を得た。
【0165】
〔顔料分散体5の調製〕
顔料分散剤(ソルスパース24000GR、日本ルーブリゾール株式会社製)1.0部をトリエチレングリコールジビニルエーテル(BASFジャパン株式会社製)12部に溶解した後、顔料カーボンブラックCB1 2.5部を添加し、0.5mmジルコニアビーズを67部加えて、ペイントシェーカー分散を4時間行い、顔料分散体5を得た。
【0166】
〔インク1〜13の調製〕
次いで、表1に記載の組成になるように、上記調製した顔料分散体1と、各種重合性化合物、溶剤、各種カチオン重合開始剤、重合禁止剤、増感剤を所定量添加、溶解して、最後に0.85μmのメンブレンフィルターにてろ過して、インク1〜6、11〜13を調製した。表1に記載の組成になるように、上記調製した顔料分散体2と、各種重合性化合物、溶剤、各種カチオン重合開始剤、重合禁止剤、増感剤を所定量添加、溶解して、最後に0.85μmのメンブレンフィルターにてろ過して、インク7を調製した。表1に記載の組成になるように、上記調製した顔料分散体3と、各種重合性化合物、溶剤、各種カチオン重合開始剤、重合禁止剤、増感剤を所定量添加、溶解して、最後に0.85μmのメンブレンフィルターにてろ過して、インク8を調製した。表1に記載の組成になるように、上記調製した顔料分散体4と、各種重合性化合物、溶剤、各種カチオン重合開始剤、重合禁止剤、増感剤を所定量添加、溶解して、最後に0.85μmのメンブレンフィルターにてろ過して、インク9を調製した。表1に記載の組成になるように、上記調製した顔料分散体5と、各種重合成化合物、溶剤、各種カチオン重合開始剤、重合禁止剤、増感剤を所定量添加、溶解して、最後に0.85μmのメンブレンフィルターにてろ過して、インク10を調製した。
【0167】
尚、実施例表中の数値は添加質量%を表す。
【0168】
(顔料)
PY:C.I.ピグメントイエロー150(ランクセス株式会社製)
PR:C.I.ピグメントレッド122(大日精化工業株式会社製)
PB:C.I.ピグメントブルー15:3(大日精化工業株式会社製)
CB:カーボンブラックCB1(三菱化学株式会社製)
Ti:酸化チタンタイペークCR−50(石原産業株式会社製)
(光カチオン重合開始剤)
比較化合物1:トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(該例示化合物の合成法は、特開2006−104185号公報段落番号「0093」〜「0099」に記載されている方法と同様にして合成した。)
本発明の例示化合物TAS−1、6、8、38、41、43、DAI−3は、本明細書中に記載の引用文献に公知の方法で合成した。
【0169】
(重合禁止剤)
RS1:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンオキシルフリーラジカル
(溶媒)
PC:プロピレンカーボネート
(増感剤)
DEA:ジエトキシアントラセン
《インクの評価》
上記調製した各インクについて、下記の方法に従って各評価を行った。
【0170】
《形成画像の評価》
(高湿硬化性(1)の評価)
25℃、75%RHの環境下で、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、各インクを装填したコニカミノルタIJ社製のピエゾヘッド512SHを用いて膜厚7μmのベタ画像を印字し、200mW/cmの高圧水銀灯により200mJ/cmの光量を照射して、硬化膜を形成した。硬化直後の膜表面を触指し、表面タックの有無を確認し、下記の基準に従って硬化性の評価を行った。
【0171】
○:タックがまったく認められない
△:僅かにタックが認められるが、実用上問題ない
×:明らかなタックが認められる
(柔軟性の評価)
コニカミノルタIJ社製のピエゾヘッド512SH及び高圧水銀灯(200mJ/cm)を搭載したUVインクジェットプリンターに各インクを装填し、ターポリン基材上に200%のベタ画像を作製した後、25℃、55%RHの環境下で画像形成面の両端を保持して延伸し、硬化膜にクラックが入るまでの延伸率を求め、下記の基準に従って硬化膜柔軟性を評価した。
【0172】
◎:クラックが入るまでの延伸率が、180%以上
○:クラックが入るまでの延伸率が、150%以上、180%未満
△:クラックが入るまでの延伸率が、120%以上、150%未満
×:120%未満の延伸率において、クラックが発生する
【0173】
【表1】

【0174】
本発明の試料は、高湿時においても優れた硬化性を示し、得られた画像は優れた柔軟性を示すことが分かる。
【0175】
実施例2
《インクの調製》
〔顔料分散体6の調製〕
顔料分散剤(ソルスパース24000GR、日本ルーブリゾール株式会社製)1.0部をシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(CHDMVE)(BASFジャパン株式会社製)10部に溶解した後、顔料C.I.ピグメントブルー15:3 2.5部を添加し、0.5mmジルコニアビーズを67部加えて、ペイントシェーカー分散を4時間行い、顔料分散体6を得た。
【0176】
〔顔料分散体7の調製〕
顔料分散剤(ソルスパース24000GR、日本ルーブリゾール株式会社製)1.0部を1,4−ジビニロキシベンゼン(HQVE)(ダイセル化学工業株式会社製)5部、トリエチレングリコールジビニルエーテル(BASFジャパン株式会社製)5部に溶解した後、顔料C.I.ピグメントブルー15:3 2.5部を添加し、0.5mmジルコニアビーズを67部加えて、ペイントシェーカー分散を4時間行い、顔料分散体7を得た。
【0177】
〔顔料分散体8の調製〕
顔料分散剤(ソルスパース24000GR、日本ルーブリゾール株式会社製)1.0部を1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル(HDDV)(BASFジャパン株式会社製)10部に溶解した後、顔料C.I.ピグメントブルー15:3 2.5部を添加し、0.5mmジルコニアビーズを67部加えて、ペイントシェーカー分散を4時間行い、顔料分散体8を得た。
【0178】
〔顔料分散体9の調製〕
顔料分散剤(ソルスパース24000GR、日本ルーブリゾール株式会社製)1.0部を1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(BDVE)(BASFジャパン株式会社製)10部に溶解した後、顔料C.I.ピグメントブルー15:3 2.5部を添加し、0.5mmジルコニアビーズを67部加えて、ペイントシェーカー分散を4時間行い、顔料分散体9を得た。
【0179】
(光カチオン重合開始剤)
比較化合物2:UVI−6692(ダウ・ケミカル日本株式会社製、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェートと(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェートの8:2混合物の50%PC溶液)
〔インク14〜31の調製〕
次いで、表2、3に記載の組成になるように、上記調製した顔料分散体6と、各種重合性化合物、溶剤、各種カチオン重合開始剤、重合禁止剤、増感剤を所定量添加、溶解して、最後に0.85μmのメンブレンフィルターにてろ過して、インク14〜23、28〜31を調製した。表2、3に記載の組成になるように、上記調製した顔料分散体7と、各種重合成化合物、溶剤、各種カチオン重合開始剤、重合禁止剤、増感剤を所定量添加、溶解して、最後に0.85μmのメンブレンフィルターにてろ過して、インク24、25を調製した。表2、3に記載の組成になるように、上記調製した顔料分散体8と、各種重合成化合物、溶剤、各種カチオン重合開始剤、重合禁止剤、増感剤を所定量添加、溶解して、最後に0.85μmのメンブレンフィルターにてろ過して、インク26を調製した。表2、3に記載の組成になるように、上記調製した顔料分散体9と、各種重合成化合物、溶剤、各種カチオン重合開始剤、重合禁止剤、増感剤を所定量添加、溶解して、最後に0.85μmのメンブレンフィルターにてろ過して、インク27を調製した。
【0180】
《インクの評価》
《形成画像の評価》
形成画像の評価は、高湿硬化性(2)の評価は下記の方法に従って行い、柔軟性は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
【0181】
(高湿硬化性(2)の評価)
25℃、75%RHの環境下で、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、各インクを装填したコニカミノルタIJ社製のピエゾヘッド512SHを用いて膜厚7μmのベタ画像を印字し、高圧水銀灯の照度を100mW/cmになるように出力を下げ、200mJ/cmの光量を照射して、硬化膜を形成した。低照度、長時間露光となるため、環境影響がより出やすい、より厳しい評価となる。硬化直後の膜表面を触指し、表面タックの有無を確認し、下記の基準に従って硬化性の評価を行った。
【0182】
◎:タックが全く認められない
○:タックが極僅かに認められる
△:タックが認められるが、実用上問題ない
×:明らかなタックがあり、実用上支障がある
【0183】
【表2】

【0184】
【表3】

【0185】
高湿硬化性をより厳しい条件で評価したが、本発明の試料は優れた性能を示した。
【0186】
実施例3
《インクの調製》
実施例2の顔料分散体6を用いて、実施例2と同様にインク32〜38を調製し、実施例2と同様に評価した。
【0187】
結果を表4に示した。
【0188】
【表4】

【0189】
本発明の試料は、高湿時においても優れた硬化性を示し、得られた画像は優れた柔軟性を示すことが分かる。
【符号の説明】
【0190】
1 記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 記録ヘッド
31 インク吐出口
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
8 照射光源
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物および光カチオン重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクおいて、該カチオン重合性化合物としてビニルエーテル基を反応基として有する化合物を50.0質量%以上含有し、かつ、該光カチオン重合開始剤として下記一般式(1)、(2)または(3)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の光酸発生剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【化1】

〔式中、R〜Rは水素原子、アルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、を表すか、又は、下記連結基(4)を介して、他のR〜Rと連結する構造でも良い。m、n、pは、0〜5の整数を表すが、m、n、pが同時に全て0を表すことはなく、少なくともいずれか一つは、1〜5の整数をとる。R〜Rのそれぞれは、同一でも同一でなくても良い。Xはアニオン残基を表す。さらに、一般式(1)において、R、R、Rの少なくとも1つは、少なくとも一つの炭素数4以上の分岐状アルキル構造を含有し、一般式(2)において、R、Rの少なくとも1つは、少なくとも一つの炭素数4以上の分岐状アルキル構造を含有し、一般式(3)において、R、R、Rの少なくとも1つは、少なくとも一つの炭素数4以上の分岐状アルキル構造を含有するものとする。
連結基(4)−Y−
式中、Yは、単なる結合手、もしくは、NR、O、SまたはCOを表す。Rは水素原子、アルキル基又は芳香族基を表す。〕
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに含まれる重合性化合物の平均LogP値が1.5以上3.5未満であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【請求項3】
ビニルエーテル基を反応基として有するカチオン重合性化合物が、脂肪族、脂環式又は芳香族の二官能ビニルエーテル化合物より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【請求項4】
(メタ)アクリロイル基を反応基として含有する重合性化合物が、全体の1以上50質量%未満含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを、インクジェットノズルより記録媒体上に吐出し、次いで活性エネルギー線を照射して該活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを硬化させることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項6】
請求項5記載のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする印刷物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−140559(P2011−140559A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1833(P2010−1833)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】