説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物

【課題】 本発明は、活性エネルギー線の照射によって短時間での重合硬化が可能な樹脂組成物に関するものであり、その硬化物は高屈折率で透明性、耐薬品性、難燃性、密着性に優れ、主に光学部品や電子部品用途に有用な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 下記一般式(1)に示されるフェノール類化合物と1分子中に2個以上のグリシジル基をもつ複数の芳香環を含有するエポキシ樹脂との付加重合反応により得られる分子量2000以下でエポキシ当量が450〜900g/当量であるエポキシ化合物を経てさらに(メタ)アクリル酸を付加反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と、不飽和基含有化合物(B)、光重合開始剤(C)を配合してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる。
【化1】


(式中のXは水素原子又は臭素原子であり、p及びqは0〜4の範囲の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線の照射によって短時間での重合硬化が可能な樹脂組成物に関するものであり、その硬化物が、高屈折率で透明性、耐薬品性、難燃性、密着性に優れ、主に光学部品や電子部品用途に有用な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光学材料としての無機ガラスは、透明性に優れ、光学異方性が小さいなどの諸物性に優れていることから、透明性光学材料として幅広い分野で使用されている。しかしながら無機ガラスは重くて破損しやすいことや、加工して光学部品などを製造する際に生産性が悪い等の短所があり、無機ガラスに代わる素材として透明性有機高分子材料(光学用樹脂)の開発が盛んに行われてきた。
【0003】
透明性有機高分子材料(光学用樹脂)は近年高機能化、高品質化が進展したことで、この光学用樹脂材料を成形加工することにより光学部品となり、視力矯正用眼鏡レンズやCD、DVDなどの情報記録機器におけるピックアップレンズ、デジタルカメラなどの撮影機器用プラスチックレンズ等の用途分野で広く普及してきている。
【0004】
透明性有機高分子材料(光学用樹脂)としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート重合体(DAC)、ポリチオウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチレン共重合ポリマー、スチレン−アクリロニトリル共重合ポリマー、ポリシクロオレフィン等が知られている。
【0005】
これら透明性有機高分子材料(光学用樹脂)の中でもポリメチルメタクリレートは透明性に優れ、光学異方性が比較的小さく、かつ、成形性、耐候性などが良好である等々の特性を有し、代表的な光学用樹脂の一つとして広く用いられているが、このものは屈折率が低く、吸水率が高い等の欠点も有している。
【0006】
ジエチレングリコールビスアリルカーボネート重合体(DAC)は、モノマーであるジエチレングリコールビスアリルカーボネートをラジカル注型重合して得られる架橋高分子構造の熱硬化性樹脂であり、透明性、耐熱性が良好といった特徴を有しており、汎用の視力矯正用プラスチック眼鏡レンズ用途において最も多く使用されてきている。しかしながら、このものも屈折率が低いという欠点を有している。
【0007】
ポリチオウレタンは、ジイソシアネート化合物とポリチオール化合物との反応で得られる架橋高分子構造の熱硬化性樹脂であり、透明性、耐衝撃性に優れ、高屈折率などの特徴を有する極めて優れた光学用樹脂である。薄厚、軽量の高品質な視力矯正用プラスチック眼鏡レンズの用途で、現在、最も多く使用されているが、唯一、眼鏡レンズを製造する工程において熱重合成形時間に長時間を要する生産性面の改良の余地を残している。
【0008】
近年、これらの透明性有機高分子材料(光学用樹脂)よりもさらに高屈折率で活性エネルギー線の照射によって短時間での重合硬化が可能な高生産性な材料が検討されるようになってきており、種々の提案がなされてきている。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の光学部品及び電子部品に対する応用においては、高屈折率、透明性、耐薬品性、難燃性、密着性等の特性が要求される。
【0009】
一般に短時間での重合硬化が可能な高屈折率である材料を得ることは容易なことではないが、構造的に高屈折率な材料にする場合、分子構造中に芳香族環や不飽和基等のπ電子系の構造を導入する方法(特許文献1、2、3参照)や、フッ素原子以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子等の孤立電子対をもつ原子を導入する等の方法(特許文献4、5、6、7参照)が提案されてきている。
【特許文献1】特開昭63−248811号公報
【特許文献2】特開平9−40731号公報(段落番号[0038]〜[0051])
【特許文献3】特開平10−67977号公報(段落番号[0034]〜[0043])
【特許文献4】特開平5−65318号公報(段落番号[0019]〜[0029])
【特許文献5】特開2004−269814号公報(段落番号[0064]〜[0077])
【特許文献6】特開昭58−14449号公報
【特許文献7】特開昭60−51706号公報
【0010】
これらの方法により短時間での重合硬化が可能となるものの、分子構造中に芳香族環を導入する方法の場合、導入される芳香族環の数により効果的に屈折率を高くすることができるが、1分子中に芳香族環が多く入りすぎると、硬化物が黄変したり硬化物の比重が大きくなる等の欠点が生じる。また、不飽和基を多く導入する方法の場合、それほど効果的な屈折率の向上が期待できず、むしろ熱や光に対する安定性が悪く、可燃性という欠点がある。また、硫黄原子を導入する方法の場合、屈折率を高くする効果は大きいが、一般に樹脂そのものあるいは硬化物から臭気が生じやすい。リン原子を導入する方法の場合、リン原子の導入が多すぎると硬化物そのものが脆くなる等の問題を生じる欠点がある。フッ素原子以外のハロゲン原子を導入する方法の場合、効果的に屈折率を高くすることができ、難燃性にも優れているが、密着性に劣るという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、活性エネルギー線の照射によって短時間での重合硬化が可能であり、その硬化物が、高屈折率で透明性、耐薬品性、難燃性、密着性に優れた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、分子中にイオウ原子を有する特定のフェノール類化合物と複数の芳香環を含有するエポキシ樹脂とを反応させて得られる分子量2000以下でエポキシ当量が450〜900g/当量のエポキシ樹脂をベースとし、これに(メタ)アクリル酸を付加反応させてエポキシ(メタ)アクリレートとすることにより、従来の光学用樹脂や活性エネルギー線硬化型樹脂組成物では達成し得なかった高屈折率、透明性、耐薬品性、難燃性、密着性等の特性に優れたエポキシ(メタ)アクリレート化合物及び該エポキシ(メタ)アクリレート化合物を用いた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0013】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)に示されるフェノール類化合物と1分子中に2個以上のグリシジル基をもつ複数の芳香環を含有するエポキシ樹脂との反応により得られる分子量2000以下でエポキシ当量が450〜900g/当量であるエポキシ化合物を経てさらに(メタ)アクリル酸を付加反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と、不飽和基含有化合物(B)、光重合開始剤(C)を配合してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、高屈折率、透明性、耐薬品性、難燃性、密着性等の特性に優れることを見出し本発明に至った。
【化1】

(式中のXは水素原子又は臭素原子であり、p及びqは0〜4の範囲の整数を示す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、高屈折率、透明性、耐薬品性、難燃性、密着性等に優れている為、主に眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT用のプリズムレンズシート、非球面レンズ等のプラスチックレンズ等の光学部品や光ディスク、光ファイバー、光導波路等のオプトエレクトロニクス向け用途等の電子部品への応用が可能であり、また、印刷インキ、塗料、コーティング剤、接着剤等にも使用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における一般式(1)に示されるフェノール類化合物と1分子中に2個以上のグリシジル基をもつ複数の芳香環を含有するエポキシ樹脂との付加重合反応により得られる分子量2000以下でエポキシ当量が450〜900g/当量であるエポキシ化合物を経てさらに(メタ)アクリル酸を付加反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と、不飽和基含有化合物(B)、光重合開始剤(C)を配合してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物について、以下に具体的に説明する。
【0016】
本発明におけるエポキシ(メタ)アクリレート(A)化合物は、一般式(1)に示されるフェノール類化合物と1分子中に2個以上のグリシジル基をもつ複数の芳香環を含有するエポキシ樹脂との付加重合反応により得られる分子量2000以下でエポキシ当量が450〜900g/当量であるエポキシ化合物をベースとし、これに(メタ)アクリル酸を付加反応させて得られる。
【0017】
一般式(1)に示されるフェノール類化合物としては、ビスフェノールS、臭素化ビスフェノールSが挙げられる。好ましくは臭素化ビスフェノールSであり、テトラブロモビスフェノールSが好ましい。
【0018】
1分子中に2個以上のグリシジル基と複数の芳香環を含有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック樹脂や臭素化クレゾールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンとの反応によって得られる臭素化ノボラック型エポキシ樹脂類等が挙げられる。好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールS型エポキシ樹脂である。1分子中に2個以上のグリシジル基と複数の芳香環を含有するエポキシ樹脂は、1種単独で用いても良く、必要に応じて2種以上併用しても良い。
【0019】
一般式(1)に示されるフェノール類化合物と1分子中に2個以上のグリシジル基と複数の芳香環を含有するエポキシ樹脂とを反応させて得られる分子量2000以下でエポキシ当量が450〜900g/当量のエポキシ化合物の製造方法としては、不活性ガス気流下または空気存在下で、触媒を添加し80〜200℃で0.5〜5時間反応させることにより製造できる。
【0020】
前述の製造方法により得られるエポキシ樹脂としては、分子量2000以下でエポキシ当量が450〜900g/当量の範囲にあるものが屈折率、難燃性等の良好な特性を発揮し密着性に優れる。より好ましくは、分子量が1500以下でエポキシ当量が500〜800g/当量の範囲にあるものが良い。分子量が2000を越えるかあるいはエポキシ当量が900g/当量を越えると、粘度が高くなりすぎて(メタ)アクリル酸を反応させる工程で取り扱いし難くなる。また、硬化性を悪化させるという欠点が生じる。エポキシ当量が450g/当量未満では、密着性が悪くなるので好ましくない。
【0021】
前述してきた方法で製造されるエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートの製造方法としては、不活性ガス気流下又は空気存在下で、公知のエステル化触媒、公知の重合禁止剤を添加し、90〜150℃で反応させることにより製造できる。また、局部加熱、ゲル化等を防ぐ、反応中の粘度を低くする目的で、後述の不飽和基含有化合物(B)を溶媒として使用することもできる。
【0022】
エポキシ樹脂のエポキシ当量と(メタ)アクリル酸のカルボキシル基との付加反応は、カルボン酸当量/エポキシ当量が0.95〜1.05の範囲で行うのが好ましい。好ましくは、若干(メタ)アクリル酸過剰で反応させることが、製造後にグリシジル基をできるだけ残存させることがない為、貯蔵安定性の面で優れる。0.95未満で付加反応を行うと、過剰のグリシジル基により、重合禁止剤の消費が起こり製造中にゲル化し易くなる。1.05以上では、(メタ)アクリル酸が製品中に残るために臭気が強く、また、光安定性が低下するので好ましくない。
【0023】
本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物の製造方法としては、この方法に限定されるものではなく、公知慣用な方法に従えばよいことは無論である。
【0024】
本発明における不飽和基含有化合物(B)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、p−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、p−フェニルフェニルオキシエチルオキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチルオキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールペンタおよびヘキサ(メタ)アクリレート、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルフィン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルフィン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)スルフィド、2,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシナフタレン等の2官能または多官能(メタ)アクリレート化合物、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、1−ビニルベンゼン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、N−ビニルピロリドン等のビニル化合物、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリル、ジアリルフタレート等のアリル化合物等を挙げることができる。
【0025】
不飽和基含有化合物(B)は、1種単独で用いても良く、必要に応じて2種以上併用しても良い。
【0026】
不飽和基含有化合物(B)の好適な使用量範囲としては、エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)100重量部に対して1〜100重量部が好ましい。より好ましくは、5〜70重量部である。さらに好ましくは、10〜50重量である。この範囲よりも少ない場合は、粘度が高く取扱い性が悪く、多い場合は屈折率が悪くなるので好ましくない。
【0027】
本発明における光重合開始剤(C)としては、活性エネルギー線の照射によってラジカルを発生する化合物であればよく、光重合開始剤として公知の各種化合物が使用される。
【0028】
光重合開始剤(C)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類、アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシンクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類、メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類、アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0029】
これらは、単独または2種以上を混合し使用しても良い。さらには、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の安息香酸誘導体等の光重合開始助剤を併用してもよい。
【0030】
光重合開始剤(C)の好適な使用量範囲としては、エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と不飽和基含有化合物(B)の総量100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましい。より好ましくは、1〜10重量部である。0.1重量部未満では活性エネルギー線の照射によって重合が進みにくく、よって、未硬化になり各特性が悪くなる傾向にある。10重量部を超える場合は、硬化物が着色し、透明性が低下するので好ましくない。
【0031】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を重合して得られる硬化物の室温(25℃)での屈折率は、1.58以上であることが好ましく。さらに好ましくは、1.585以上であり、さらに好ましくは1.59以上である。
【0032】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、取扱い性を向上させる目的で公知の有機溶剤を配合することができる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、あるいはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、あるいはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、或いはヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、あるいはブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルエチルケトン、カルビトールアセテート、イソプロピルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ソルベントナフサ等を挙げることができる。これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0033】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、その目的を著しく損なわない範囲で、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、熱重合開始剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤、着色剤(例えば、染料、顔料等)、無機フィラー、有機フィラー等を併用することができる。また、更なる屈折率向上を目的に酸化チタン、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化タンタル、酸化錫等の金属酸化物を使用することができる。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させるに用いる活性エネルギー線源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、気体レーザー、固体レーザー等の光源が利用でき、フィラーを含まない硬化には高圧水銀灯、フィラーを含む場合や厚膜の硬化にはメタルハライドランプが一般的に使用される。
【0035】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、高屈折率、透明性、耐薬品性、難燃性、密着性等に優れている為、光学部品や電子部品への応用が可能で、印刷インキ、塗料、コーティング剤、接着剤等にも使用が可能である。
【0036】
以下、本発明を、合成例、実施例、比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の記載例に制約されるものではない。
【0037】
<合成例1>
攪拌機、温度計、冷却器、不活性ガス導入管を装備した容量が500ミリリットルの4つ口のセパラブルフラスコにテトラブロモビスフェノールS(水酸基当量293)を148.3g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量184)を151.6g仕込んだ。不活性ガス気流を供給し、内温140〜170℃でリン系触媒を添加して2時間反応させた。得られたエポキシ樹脂は、分子量1950(ゲルパーミエーション・クロマトグラフィーで測定:標準ポリスチレン換算)、エポキシ当量880であった。この後、攪拌機、温度計、冷却器を装備した4つ口のセパラブルフラスコに、得られたエポキシ樹脂を96.4g、フェノキシエチルアクリレート28.9g、98%アクリル酸8.4g、重合禁止剤0.2g、酸化防止剤0.1g仕込んだ。空気存在下で、内温90〜100℃で4級アンモニウム塩触媒を0.32g添加して7時間反応させた。得られたエポキシアクリレートは、エポキシ当量30900、酸価(KOHmg/g)7であった。以下、これをエポキシアクリレート(a−1)という。
【0038】
<合成例2>
攪拌機、温度計、冷却器、不活性ガス導入管を装備した容量が500ミリリットルの4つ口のセパラブルフラスコにテトラブロモビスフェノールS(水酸基当量283)を49g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185)を143.9g、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量332)を57.1g仕込んだ。不活性ガス気流を供給し、内温120〜150℃でリン系触媒を添加して2時間反応させた。得られたエポキシ樹脂は、分子量1000(ゲルパーミエーション・クロマトグラフィーで測定:標準ポリスチレン換算)、エポキシ当量560であった。この後、攪拌機、温度計、冷却器を装備した4つ口のセパラブルフラスコに、得られたエポキシ樹脂を225.2g、97%アクリル酸30.0g、重合禁止剤0.47g、酸化防止剤0.23g仕込んだ。空気存在下で、内温90〜110℃で4級アンモニウム塩触媒を0.8g添加して7時間反応させた。得られたエポキシアクリレートは、エポキシ当量17560、酸価(KOHmg/g)1であった。以下、これをエポキシアクリレート(a−2)という。
【0039】
<比較合成例1>
攪拌機、温度計、冷却器、不活性ガス導入管を装備した容量が500ミリリットルの4つ口のセパラブルフラスコにテトラブロモビスフェノールS(水酸基当量283)を149.1g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185)を280.9g仕込んだ。不活性ガス気流を供給し、内温120〜140℃でリン系触媒を添加して2時間反応させた。得られたエポキシ樹脂は、分子量860(ゲルパーミエーション・クロマトグラフィーで測定:標準ポリスチレン換算)、エポキシ当量420であった。この後、攪拌機、温度計、冷却器を装備した4つ口のセパラブルフラスコに、得られたエポキシ樹脂を84.0g、フェノキシエチルアクリレート25.2g、98%アクリル酸14.8g、重合禁止剤0.19g、酸化防止剤0.09g仕込んだ。空気存在下で、内温90〜120℃で4級アンモニウム塩触媒を0.4g添加して7時間反応させた。得られたエポキシアクリレートは、エポキシ当量19400、酸価(KOHmg/g)2であった。以下、これをエポキシアクリレート(a−3)という。
【0040】
<実施例1〜4、比較例1〜2>
下記表1に記載の割合(値は重量部を表している。)で秤量した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、基材アルミニウム板上に膜圧が約200μmとなるようにバーコーターにて塗布し、塗膜表面に無色透明のPET樹脂フィルムをのせて塗膜表面と密着させた後、光源に高圧水銀灯((株)オーク製作所製,80W/cm)を用いて、積算光量1000mJ/cm(365nm)となるよう光照射(条件:室温空気中下、全波長照射)して得
られた塗膜について、下記の項目の評価試験を行った。
【0041】
<評価方法>
(1)屈折率(25℃):(株)アタゴ製のアッベ屈折率計(商品名:NAR−3T)で測定した。
(2)透明性:硬化膜を目視により観察し、不透明または白化した部分がないものを「○」、不透明または白化した部分があるものを「×」とした。
(3)耐薬品性:メチルエチルケトンを含浸させた脱脂綿で硬化物の表面を100回拭いた後、表面状態を目視により観察した。変化が見られないものを「○」、変化が見られるものを「×」と評価した。
(4)難燃性:硬化物(本評価に用いた硬化物は、下記表1に記載の割合で秤量した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、基材アルミニウム板上に膜厚が約800μmとなるようにバーコーターにて塗布して作製された塗膜を用いた)に自己消火性が非常に優れているもの(UL94の試験法に準拠して垂直燃焼試験を行いV-2以上)を「◎」、自己消火性が認められるものを「○」、自己消火性が認められないもの(可燃)を「×」と評価した。
(5)密着性:(本評価に用いた硬化物は、下記表1に記載の割合で秤量した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、基材銅板上に膜厚が約200μmとなるようにバーコーターにて塗布して作製された塗膜を用いた。)JIS-K5400に準じて評価し、塗膜の表面に1mm間隔で縦、横11本の切れ目を入れて100個の碁盤目を作る。セロハンテープをその表面に密着させた後、一気に剥がした時に、残存したマス目を評価した。(全く剥がれず良好なものを「○」、一部剥がれたものを「△」、全面剥がれて不良なものを「×」とした)。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、高屈折率、透明性、耐薬品性、難燃性、密着性等の特性に優れており、例えば、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT用のプリズムレンズシート、非球面レンズ等のプラスチックレンズ等の光学部品や光ディスク、光ファイバー、光導波路等のオプトエレクトロニクス向け用途等の電子部品への応用が可能で、印刷インキ、塗料、コーティング剤、接着剤等にも使用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)に示されるフェノール類化合物と1分子中に2個以上のグリシジル基をもつ複数の芳香環を含有するエポキシ樹脂との付加重合反応により得られる分子量2000以下でエポキシ当量が450〜900g/当量であるエポキシ化合物を経て、さらに(メタ)アクリル酸を付加反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)。
【化1】

(式中のXは水素原子又は臭素原子であり、p及びqは0〜4の範囲の整数を示す。)
【請求項2】
請求項1記載のエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と不飽和基含有化合物(B)及び光重合開始剤(C)を配合してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物で、該樹脂組成物を重合して得られる硬化物の室温(25℃)での屈折率が1.58以上の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−56048(P2007−56048A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239317(P2005−239317)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】