説明

活性エネルギー線硬化性接着剤組成物とそれを用いた接着剤および光学ディスク装置

【課題】本発明は、難接着基材、例えばCOP、PPS、LCP、マグネシウム合金などに対して高い接着性を有する接着剤組成物及びそれを塗布、硬化させた耐久性に優れた光学部品を提供する。
【解決手段】 下記(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の特性を有する活性エネルギー線硬化性接着剤組成物、前記活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を含有する接着剤、並びにその接着剤を用いて製造される光学ディスク用記録再生装置。
(a)JIS K 5600−2−3に規定される方法で測定される、23℃における効果前の粘度が50Pa・s以下、
(b)硬化前後における体積収縮率が3体積%以下、
(c)硬化後の線膨張率が1,000ppm以下、
(d)JIS K7215に規定される方法で測定される硬化後のDuroD硬度が10〜70、
(e)シクロオレフィンポリマー接着体を用いた、JIS K 6850に規定される硬化後のせん断強度が0.5MPa以上。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物、該組成物を含有する接着剤、及び光ディスク用記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス技術及び光学技術の発達にともない、さまざまなオプトエレクトロニクス技術及び製品が隆盛を極めつつある。とくに近年、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)をさらに上回る記録密度を有するブルーレイディスク(BD)などの次世代型の光学ディスクを記録再生するための光学ディスク装置の普及が急速に進行している。
【0003】
通常、光ディスク装置は、記録媒体に記録された情報(光信号)を読み取る光ピックアップ装置を備えており、CDやDVDの場合、この光ピックアップ装置の組み立て固定には、プロセス性などの観点からUVなどの活性エネルギー線を用いて硬化させる接着剤が用いられている(特許文献1)。
【0004】
BDに関しても同様のプロセスが適用されるべきではあるが、BDの場合、発信される光信号がCDやDVDに比べて非常に微細であるため、装置の組み立てには非常に高い設計精度が要求される。したがってBDの光ピックアップ装置の組み立てには、組み立て時に位置ずれを起こさない、つまり硬化時における収縮が従来品よりも小さい接着剤が要求されている。
【0005】
また、光ピックアップ装置の基材は、レンズにはシクロオレフィンポリマー(COP)やガラスが、周辺材料(レンズホルダ、筐体など)にはポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)やマグネシウム合金が用いられることが多い。これらの材料、特にCOP、PPSやLCPは、ポリマー固有の表面エネルギーの問題で一般に接着が難しい場合が多く、接着剤にはこれらの基材に対する高い接着性が要求されることがある。
【0006】
以上のことから、光ディスク装置の接着固定に必要な接着剤には、低い硬化収縮性と目的の接着基材に対する高い接着性が要求されているといえる。
【特許文献1】特開2007−334999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光学ディスク装置の製造などに適した硬化収縮性を有し、さらに難接着基材、例えばCOP、PPS、LCP、マグネシウム合金などに対して高い接着性を有する接着剤組成物を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、発明者らが鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる活性エネルギー線硬化性接着剤組成物、該組成物を含有する接着剤、及び光ディスク用記録再生装置にかかる本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
(a)JIS K 5600−2−3に規定される方法で測定される、23℃における硬化前の粘度が50Pa・s以下、
(b)硬化前後における体積収縮率が3体積%以下、
(c)硬化後の線膨張率が1,000ppm以下、
(d)JIS K7215に規定される方法で測定される硬化後のDuroD硬度が10〜70、
(e)シクロオレフィンポリマー接着体を用いた、JIS K 6850に規定される硬化後のせん断強度が0.5MPa以上
であることを特徴とする、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物に関する。
【0010】
上記活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、
一般式(1):
−OC(O)C(R)=CH (1)
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表わす)で表される基を1分子当たり少なくとも1つ有するビニル系重合体
を含有するのが好ましい。
【0011】
また上記活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、さらに一般式(1):
−OC(O)C(R)=CH (1)
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表わす)で表される基を分子内に1個有する反応性モノマーを、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物全量の10重量%以上含有するのが好ましい。
【0012】
上記活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、さらに光ラジカル重合開始剤を含有するのが好ましい。また光カチオン重合開始剤を含有しないものが好ましい。
【0013】
また上記活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、さらに未反応性のフィラー成分を50重量%以上含有するのが好ましい。
【0014】
本発明は、上記活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を含有する接着剤にも関する
【0015】
上記接着剤は、光学部材用接着剤であるのが好ましい。また光ディスク用記録再生装置部材用接着剤であるのが好ましい。
【0016】
また本発明は、上記接着剤を用いて製造される光ディスク用記録再生装置にも関する。
【0017】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0018】
本発明の第一の態様は、
(a)JIS K 5600−2−3に規定される方法で測定される、23℃における硬化前の粘度が50Pa・s以下、
(b)硬化前後における体積収縮率が3体積%以下、
(c)硬化後の線膨張率が1,000ppm以下、
(d)JIS K7215に規定される方法で測定される硬化後のDuroD硬度が10〜70、
(e)シクロオレフィンポリマー接着体を用いた、JIS K 6850に規定される硬化後のせん断強度が0.5MPa以上
であることを特徴とする、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物に関する。
【0019】
<粘度>
本願明細書でいう粘度とは、硬化前の組成物の粘度であって、JIS K 5600−2−3に規定される方法で測定される、23℃での測定値を意味する。本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物の粘度は、50Pa・s以下である。50Pa・sより粘度が高くなると、樹脂の流動性又は塗工時の作業性が悪くなるため好ましくない。上記粘度は、45Pa・s以下であることが好ましく、40Pa・s以下であることがより好ましい。粘度の下限は特に限定されないが、0.1Pa・s以上であることが好ましい。
【0020】
<体積収縮率>
本願明細書でいう体積収縮率とは、23℃での接着剤組成物の硬化前後における比重の差より導かれる数値のことで、硬化による体積収縮の指標となる値である。具体的には、以下の式2より導かれる。
体積収縮率(%)=(dL−dS)/dS×100 (式2)
(式2において、dL:硬化前の組成物(液体)の比重、dS:硬化後の組成物(固体)の比重を表す。)
【0021】
式2に出てくる比重の測定方法について説明する。まず、硬化前の接着剤組成物の比重については、一般的に液体の比重を測定するのに用いられる、ガラス又はステンレス製の比重びん(ピクノメータ)を用いて測定することができる。また、浮きばかり(浮ひょう)を用いて測定することも可能である。試験方法は日本工業規格JIS K2249(原油及び石油製品の比重試験方法並びに比重・質量・容積換算表)又はJIS Z8804に規定されているとおりである。また、測定時の液温は23℃に調整して行う。
【0022】
硬化後の接着剤組成物の比重の測定方法としては、天秤又は比重計を用いて硬化物の空気中と水中における重量を測定しそれらの値より比重を算出するというアルキメデスの原理を採用した方法が一般的な方法として挙げられる。特に電子比重計・精密比重計と呼ばれる装置を用いると、精密に比重が測定できるため好ましい。この方法の他にもJIS Z8807に規定される方法で測定することができる。測定時の気温及び水温は23℃にして行う。
【0023】
本発明の接着剤組成物の硬化前後における体積収縮率は、3体積%以下である。体積収縮率が3体積%を超えると、被着体が本来接着されるべき位置より大きくずれてしまうため好ましくない。例えば光ディスク装置に当該接着剤組成物を塗工した場合、接着の位置ずれが大きいとレンズの光軸がずれて、光ディスク装置の所望の機能が得られなくなる場合があるため好ましくない。上記体積収縮率は、2.5体積%以下であることが好ましい。さらに−3〜3体積%であることがより好ましく、0〜3体積%であることが特に好ましい。
【0024】
<線膨張率>
本願明細書でいう線膨張率とは、硬化後の接着剤組成物のガラス転移温度以上の温度から200℃の範囲(例えば−100℃〜200℃)における、硬化物の長さの変化率のことであり、以下の式で表わすことができる。
α=ΔL/(L・Δ) (式3)
(式3において、α:線膨張係数(/K)、ΔL:硬化物の伸び、L:23℃における硬化物の長さ、ΔT:温度変化をあらわす。)
【0025】
上記線膨張率は、例えば熱量分析装置(TMA、機種;EXSTAR6000、セイコーエプソン製)を用いて、硬化物のTg以上温度領域での線膨張係数を測定することにより、求めることができる。
【0026】
本発明の接着剤組成物の硬化後の線膨張率は1,000ppm以下である。線膨張率が1,000ppmを超えると、被着体が本来接着されるべき位置より大きくずれてしまうため好ましくない。上記線膨張率は、好ましくは950ppmであり、より好ましくは800ppmである。
【0027】
<DuroD硬度>
本発明の接着剤組成物の硬化後の硬度はJIS K7215に規定される方法でDuroD硬度測定用デュロメータを用いて測定した場合、10〜70の範囲である。下限が10未満の場合、組成物が柔軟すぎて位置ずれを起こす可能性があるので好ましくない。また、上限が70を超える場合、組成物が硬すぎて被着体に衝撃などにより剥離方向に力がかかった場合、比較的簡単に界面破壊するおそれがあるので好ましくない。DuroD硬度について15〜65であることが好ましく、20〜60であることがより好ましい。
【0028】
DuroD硬度の測定機器としては、特に限定されないが、例えばASKER D硬度計(高分子計器社製)などを挙げることができる。
【0029】
<せん断強度>
本願明細書における接着剤組成物のせん断強度は、JIS K 6850に規定される硬化後のせん断強度であって、シクロオレフィンポリマー(COP)を試験片(被着体)として用いた場合の、破断強度をせん断面積で割った値を意味する。COPを試験片に用いる理由として主に2つの理由が挙げられる。1つはCOPが一般的に接着の困難なプラスチック基材であり、COPに対し高い接着力が得られれば、他の基材に対しても高い接着性があらわれると考えられるためである。もう1つは、COPがプラスチックレンズや透明基板材料として近年光学材料・電気電子部品材料としてしばしば用いられ、光ディスク装置にも適用される可能性が高い材料であり、COPに対する接着せん断強度を指標とすることで上記材料の接着剤としての能力をより実用的な基準で判断できるためである。
【0030】
COPとしては、シクロオレフィン(環状不飽和炭化水素)構造を有する化合物の重合構造又は重合反応によって環状構造が得られるような重合構造を含む重合体であれば特に限定はない。シクロオレフィン構造を有する化合物としては例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルネンなどが挙げられる。
【0031】
COPの商品化された材料としては、例えばZEONEX、ZEONOR(以上、日本ゼオン社製)、ARTON(JSR社製)、アペル(三井化学社製)、TOPAS(Topas Advanced Polymers社製)などがあげられ、これらを試験片として用いることが可能である。
【0032】
本発明におけるせん断強度は、0.5MPa以上である。0.5MPaに満たないと、接着強度が足りず衝撃などによって簡単に剥離が生じる場合があるため好ましくない。せん断強度は0.7MPa以上、10MPa以下が好ましく、0.8MPa以上、5MPa以下がより好ましい。
<光ラジカル重合開始剤>
本発明の接着剤組成物は活性エネルギー線によってさまざまな方法で硬化させることが可能であるが、特にプロセス性、安全性、コスト性などの観点から光ラジカル重合によって硬化反応が起こることが好ましい。光ラジカル重合機構による硬化反応は一般に光ラジカル重合開始剤を使用して反応を開始させる。従って、本発明の接着剤組成物は光ラジカル重合開始剤をさらに含有することが好ましい。
【0033】
上記光ラジカル重合開始剤について特に制限はないが、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、カンファーキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントン、3,9−ジクロロキサントン、3−クロロ−8−ノニルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ベンゾイル、ベンゾインメチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0034】
また、光ラジカル重合開始剤は商業的にも入手可能である。商業的に入手可能な光ラジカル重合開始剤のうち、代表的なものとしてはIrgacure651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、Irgacure184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン)、Darocur1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)、Irgacure2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、Irgacure127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン)、Darocur MBF(フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル)、Irgacure907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、Irgacure369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン)、Irgacure379(2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルフェニル)ブタン−1−オン)、Irgacure819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド)、Darocur TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイド)(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、KAYACURE BMS([4−(チルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン)、KAYACURE 2−EAQ(エチルアントラキノン)(以上日本化薬製)、BIPE(ベンゾインイソプロピルエーテル)、BIBE(ベンゾインイソブチルエーテル)、NBCA(10−ブチル−2−クロロアクリドン)(以上黒金化成製)、ESACURE KIP150シリーズ(オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}及びその混合物)(Lamberti製)などが挙げられる。
【0035】
これらの開始剤は1種類で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記光ラジカル重合開始剤の含有量としては、接着剤組成物のビニル系重合体及びモノマー成分の合計100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましく、0.02〜10重量部がより好ましい。
【0037】
<光カチオン重合開始剤>
次に光カチオン重合開始剤について説明する。本発明の接着剤組成物は光カチオン重合開始剤を含有しないものが好ましい。本願明細書において、光カチオン重合開始剤とは活性エネルギー線を照射することにより、カチオン活性物質を放出し、開始剤としてカチオン(酸)を発生させることができる化合物を意味する。光カチオン重合開始剤も光ラジカル重合開始剤と並んで光硬化性樹脂の硬化にしばしば用いられるが、硬化性がラジカル系に比べて悪く、活性種が酸であるため基材によっては腐食が生じる場合がある。そのため、本発明の接着剤組成物は光ラジカル重合開始剤を含有しないものが好ましい。
【0038】
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、スルホン酸誘導体、カルボン酸エステル類、オニウム塩類が挙げられる。本発明の接着剤組成物はこれらを含有しないものが好ましい。
【0039】
上記スルホン酸誘導体としては例えば、ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、トリフルオロメチルスルホネート誘導体などのイミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類、1−オキシ−2−ヒドロキシ−3−プロピルアルコールのスルホネート類、ピロガロールトリスルホネート類、ベンジルスルホネート類を挙げることができる。具体的には、ジフェニルジスルホン、ジトシルジスルホン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(クロルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシリルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)メタン、ベンゾイントシラート、1、2−ジフェニル−2−ヒドロキシプロピルトシラート、1、2−ジ(4−メチルメルカプトフェニル)−2−ヒドロキシプロピルトシラート、ピロガロールメチルスルホネート、ピロガロールエチルスルホネート、2,6−ジニトロフェニルメチルトシラート、オルト−ニトロフェニルメチルトシラート、パラ−ニトロフェニルトシラートなどを挙げることができる。
【0040】
上記カルボン酸エステルとしては1、8−ナフタレンジカルボン酸イミドメチルスルホネート、1、8−ナフタレンジカルボン酸イミドトシルスルホネート、1、8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメチルスルホネート、1、8−ナフタレンジカルボン酸イミドカンファースルホネート、コハク酸イミドフェニルスルホネート、コハク酸イミドトシルスルホネート、コハク酸イミドトリフルオロメチルスルホネート、コハク酸イミドカンファースルホネート、フタル酸イミドトリフルオロスルホネート、シス−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸イミドトリフルオロメチルスルホネートなどを挙げることができる。
【0041】
上記オニウム塩類としては、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF)、ヘキサクロルアンチモネート(SbCl)、テトラフェニルボレート、テトラキス(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロメチルフェニル)ボレート、過塩素酸イオン(ClO)、トリフルオロメタンスルフォン酸イオン(CFSO)、フルオロスルフォン酸イオン(FSO)、トルエンスルフォン酸イオン、トリニトロベンゼンスルフォン酸アニオン、トリニトロトルエンスルフォン酸アニオン等のアニオンを有するスルホニウム塩又はヨードニウム塩挙げられる。
【0042】
上記スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアシルネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオベンジル)ボレート、メチルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、メチルジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、ジメチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルナフチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリトイルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、アニシルジフェニルスルホニウムヘキサヘキサフルオルアンチモネート、4−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、4−クロロフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−フェノキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−エトキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−アセチルフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−アセチルフェニルジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、トリス(4−チオメトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(メトキシスルホニルフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(メトキシナフチル)メチルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジ(メトキシナフチル)メチルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、ジ(カルボメトキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(4−オクチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムテトラキス(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(ドデシルフェニル)スルホニウムテトラキス(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、4−アセトアミドフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−アセトアミドフェニルジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、ジメチルナフチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフルオロメチルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフルオロメチルジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、フェニルメチルベンジルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、10−メチルフェノキサチイニウムヘキサフルオロホスフェート、5−メチルチアントレニウムヘキサフルオロホスフェート、10−フェニル−9,9−ジメチルチオキサンテニウムヘキサフルオロホスフェート、10−フェニル−9−オキソチオキサンテニウムキサンテニウムテトラフルオロボレート、10−フェニル−9−オキソチオキサンテニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、5−メチル−10−オキソチアトレニウムテトラフルオロボレート、5−メチル−10−オキソチアトレニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、及び5−メチル−10,10−ジオキソチアトレニウムヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。
【0043】
上記ヨードニウム塩としては、(4−n−デシロキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウムトリフルオロスルホネート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメチルスルフォネート、ジ(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(ドデシルフェニル)ヨードニウムトリフラート、ジフェニルヨードニウムビスルフェート、4,4’−ジクロロジフェニルヨードニウムビスルフェート、4,4’−ジブロモジフェニルヨードニウムビスルフェート、3,3’−ジニトロジフェニルヨードニウムビスルフェート、4,4’−ジメチルジフェニルヨードニウムビスルフェート、4,4’−ビススクシンイミドジフェニルヨードニウムビスルフェート、3−ニトロジフェニルヨードニウムビスルフェート、4,4’−ジメトキシジフェニルヨードニウムビスルフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムテトラキス(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、米国特許第5,554,664号に開示されている(トリルクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(CHI−(SOCF、米国特許第5,514,728号明細書に開示されている(CI−B(C、及び米国特許第5,340,898号明細書に開示されているものなどが挙げられる。
【0044】
その他のオニウム塩としては、芳香族ジアゾニウム塩などが挙げられる。芳香族ジアゾニウム塩の具体例としては、p−メトキシベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロアンチモネートなどが挙げられる。
【0045】
<未反応性フィラー>
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物はさらに未反応性フィラーを組成物全体の50重量%以上含むものが好ましい。未反応性フィラーを組成物全体の50重量%以上含有することにより、硬化収縮性の樹脂成分濃度が希釈されるため組成物全体の体積収縮率を低下させることが可能である。含有量が50重量%に満たない場合、充分に体積収縮率を下げられないため好ましくない。本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、55重量%以上含有するものがより好ましく、60重量%以上含有するものが特に好ましい。
【0046】
未反応性フィラーとしては、特に限定はないが、例えば、木粉、パルプ、木綿チップ、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、グラファイト、ケイソウ土、白土、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラックのような補強性充填材;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、アルミナ、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、べんがら、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、亜鉛末、炭酸亜鉛及びシラスバルーンなどのような充填材;石綿、ガラス繊維及びガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバーなどのような繊維状充填材などが挙げられる。これらのうちでは無水ケイ酸、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルクなどが好ましい。また、低強度で伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛及びシラスバルーンなどから選ばれる充填材を含有することができる。これらの未反応性フィラーは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
<反応性モノマー成分>
本発明の接着剤組成物は、
一般式(1):
−OC(O)C(R)=CH (1)
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表わす)で表される基を分子内に1個有する反応性モノマーを接着剤組成物全重量の10重量%以上含有することが好ましい。接着剤組成物が上記反応性モノマーを10重量%以上含有する場合には、接着剤組成物の粘度が適度に低下し、さらにフィラー成分を添加しても所望の粘度を超える粘度にならないためである。上記反応性モノマーの使用量が10重量%に満たない場合、組成物の粘度が高くなり流動性又は作業性が悪くなるため好ましくない。反応性モノマーの含有量は、接着剤組成物全重量の15重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることが更に好ましい。
【0048】
上記Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基である。
【0049】
上記炭素数1〜20の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、ニトリル基などがあげられ、これらは水酸基などの置換基を有していてもよい。上記有機基の炭素数は、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜16である。
【0050】
上記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基など、炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基など、炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。
【0051】
の具体例としては、例えば−H、−CH、−CHCH、−(CHCH(nは2〜19の整数を表わす)、−C、−CHOH、−CNなどがあげられ、好ましくは−H、−CHである。
【0052】
特に限定されないが、上記反応性モノマーの好ましい例としては、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジオキシエチルジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ターシャリーブチル−シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0053】
<樹脂成分>
本発明の接着剤組成物は樹脂成分として、一般式(1):
−OC(O)C(R)=CH (1)
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表わす)
で表される基((メタ)アクリロイル系基)を、1分子当たり少なくとも1つ有するビニル系重合体を含有するのが、接着性、硬化性、耐熱性、耐候性及び低粘性などの観点から好ましい。
【0054】
上記ビニル系重合体における(メタ)アクリロイル系基の数は、架橋させるという観点から1分子あたり2個以上であるのが好ましい。
【0055】
上記(メタ)アクリロイル系基は、架橋点間分子量を均一かつ大きくする、好ましくは架橋点間分子量を500〜100000にすることでゴム弾性が得られることから、上記ビニル系重合体の分子末端に存在するのが好ましい。
【0056】
上記(メタ)アクリロイル系基中のRは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表わす。
【0057】
上記炭素数1〜20の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、ニトリル基などがあげられ、これらは水酸基などの置換基を有していてもよい。上記有機基の炭素数は、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜16である。
【0058】
上記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが、炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが、炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。
【0059】
上記Rの具体例としては、例えば−H、−CH、−CHCH、−(CHCH(nは2〜19の整数を表わす)、−C、−CHOH、−CNなどがあげられ、好ましくは−H、−CHである。
【0060】
上記ビニル系重合体の主鎖を構成するビニル系モノマー単位には特に限定はなく、各種のビニル系モノマーであってもよい。具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどの(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩などの芳香族ビニル系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレンなどのアルケン類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコールなどが挙げられる。
【0061】
これらは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。なかでも、生成物の物性が良好である、などの点から、芳香族ビニル系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマーであり、さらに好ましくは、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、2−メトキシエチルアクリレートである。さらに、得られる硬化物の耐油性が良好である、などの観点から、主鎖を構成するビニル系モノマーは、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル及び2−メトキシエチルアクリレートから選ばれる少なくとも2つを含むことが特に好ましい。
【0062】
本発明においては、上記ビニル系重合体の重合においてこれらの好ましいモノマーを他の上記モノマーと共重合させてもよく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。
【0063】
上記ビニル系重合体の分子量分布(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比:Mw/Mn)には、特に限定はないが、1.8未満であることが、低粘度化の観点より好ましい。Mw/Mnは、より好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.6以下、特に好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.4以下、最も好ましくは1.3以下である。
【0064】
なお、本発明におけるGPC測定の際には、通常は、クロロホルム又はテトラヒドロフランを移動相として、ポリスチレンゲルカラムを使用し、分子量の値はポリスチレン換算値で求めている。
【0065】
上記ビニル系重合体の数平均分子量の下限は、好ましくは500、より好ましくは3,000であり、上限は、好ましくは100,000、より好ましくは40,000である。分子量が500未満であると、ビニル系重合体の本来の特性が発現されにくくなる傾向があり、100,000を超えると、粘度が高すぎてハンドリングが困難になりやすい傾向がある。
【0066】
上記ビニル系重合体の製法については特に限定はないが、一般的な重合法により製造することができる。ビニル系重合体は一般に、アニオン重合あるいはラジカル重合によって製造されるが、モノマーの汎用性あるいは制御の容易さからラジカル重合が好ましい。ラジカル重合の中でも、リビングラジカル重合あるいは連鎖移動剤を用いたラジカル重合によって製造されるのが好ましく、特にリビングラジカル重合が好ましい。
【0067】
<硬化方法>
本発明は活性エネルギー線硬化性接着剤組成物に関する。本願明細書でいう活性エネルギー線とは、例えば可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等を指す。とくに良好な硬化物を得る観点から、紫外線や電子線が活性エネルギー線として好ましい。
【0068】
活性エネルギー線により硬化させるために、本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、さらに光ラジカル重合開始剤を含有するのが好ましい。
【0069】
光ラジカル重合開始剤を含有する場合、本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、さらに必要に応じてハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、パラターシャリーブチルカテコールなどのごとき重合禁止剤類を含有することもできる。
【0070】
また、近赤外光重合開始剤として、近赤外光吸収性陽イオン染料をさらに含有してもよい。
【0071】
上記近赤外光吸収性陽イオン染料としては、650〜1500nmの領域の光エネルギーで励起するものが挙げられる。例えば特開平3−111402号公報、特開平5−194619号公報などに開示されている近赤外光吸収性陽イオン染料−ボレート陰イオン錯体などを含有するが好ましく、ホウ素系増感剤を共に含有するのがさらに好ましい。
【0072】
活性エネルギー線源には特に限定はないが、その光重合開始剤の性質に応じて、たとえば高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザーなどによる光及び電子線の照射などが挙げられる。
【0073】
<被着材>
本発明の組成物は従来の接着剤では強い接着性を与えることが困難であった難接着基材を被着体として用いる場合に適している。ここで言う難接着基材としては、例えば熱可塑性樹脂、ガラス、マグネシウム合金、アルミニウム合金などが挙げられる。
【0074】
熱可塑性樹脂の中でも特にエンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれるものは被接着性に乏しいことが多いため、本発明の組成物を用いることが好ましい。
【0075】
上記エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックとしては例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリシクロオレフィン(COP)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアセタール(POM)、変性ポリフェニレンエーテル(m‐PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF‐PET)、超高分子量ポリエチレン(UHMW‐PE)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、非晶性ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリメチルベンテン(TPX)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリアミド11,12(PA11,12)、ポリアミドMXD6(MXD6)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)などが挙げられる。
【0076】
中でも、PC、COP、PPS、LCP、PARなどは特に被接着性に乏しいことが多いため、本発明の組成物を用いることが好ましい。
【0077】
上記ガラスとしては、例えばソーダ石灰ガラス、クリスタルガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスなどが挙げられる。
【0078】
上記マグネシウム合金としては、例えばアルミニウムと亜鉛を微量成分として含むAZ合金、リチウムとアルミニウムを微量成分として含むLA合金などが挙げられる。
【0079】
上記アルミニウム合金としては、例えばジュラルミンなどが挙げられる。
【0080】
<用途>
近年、以下に述べる光学部材には、耐熱性、軽量性や透明性などの観点から上記難接着基材が用いられる場合が多い。したがって、本発明の接着剤組成物が光学部材の接着に好適に用いることができる。
【0081】
光学部材の接着とは、例えば光学部材同士の接合、光学部材の他基材への固定接着などのことである。光学部材としては例えば、DVDやBDなどの光学ディスク用記録再生装置に使用されるピックアップレンズ及びその周辺材料、記録再生用レーザーの周辺材料;デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクタ、イメージセンサ、携帯電話及びPHSなどに使用される撮像素子(CCD、CMOS)部のレンズ、レンズ周辺のフレキシブルプリント基板(FPC)、撮像素子周辺材料;光通信システム(光スイッチ、光コネクタ、光ファイバ、光導波路、受光素子、レーザー光源など)に使用される各種部材;発光ダイオード(LED)チップ;フラットパネルディスプレイ(FPD)に使用されるバックライト及びその周辺材料、LED、FPC;固体レーザーや半導体レーザーの周辺材料(レンズ、反射鏡、プリズム、光学フィルタ、シャッター、受光素子、波長板、偏光板など)などが挙げられる。ここでいう周辺材料とは、レンズ、レーザー、素子などに接する材料及びそれらの筐体のことを指す。
【0082】
また、DVDやBDなどの光学ディスク用記録再生装置においては、光学部材のみならずそれ以外の部材にも上述した難接着基材が用いられることが多い。本発明の接着剤組成物は、これら光学ディスク用記録再生装置の製造に好適に用いることができる。
【0083】
本発明の接着剤を用いるのが好適な光学ディスク用記録再生装置の部材の例としては、ピックアップ光学系及びその周辺材料、具体的にはピックアップ用対物レンズ、コリメータレンズ、シリンドリカルレンズ、プリズム、波長板、受光素子、反射鏡、ピックアップレンズホルダ、レンズ固定用フランジ、筐体など;アクチュエータ周辺材料、具体的にはマグネット、コイル、ヨーク、駆動用樹脂部品、筐体など;レーザー光源周辺材料、具体的にはレンズ、反射鏡、プリズム、光学フィルタ、シャッター、受光素子、波長板、偏光板など;ハードディスクドライブ(HDD)周辺材料、具体的にはスピンドルモータ用部材、(マグネット、コイル、ベアリング、シャフト、コネクタなど)、磁気ヘッドアクチュエータ用部材など;また、これらの部品用の筐体全般などが挙げられる。
【0084】
本発明の接着剤を用いて製造される上記光学ディスク用記録再生装置も本発明の一態様を構成する。
【発明の効果】
【0085】
本発明の難接着基材用接着剤組成物は、特定の粘度、特定の体積収縮率、特定の線膨張係数、特定の硬度及びシクロオレフィンポリマー被着体に対して特定のせん断強度を有するので、接着剤組成物が困難であった基材(COP、PPS、LCP、マグネシウム合金)に対する接着性が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
(製造例1、2)
各原料の使用量を表1に示す。
【0087】
(1)重合工程
アクリル酸エステル(予め混合されたアクリル酸エステル)を脱酸素した。攪拌機付ステンレス製反応容器の内部を脱酸素し、臭化第一銅、全アクリル酸エステルの一部(表1では初期仕込みモノマーとして記載)を仕込み、加熱攪拌した。アセトニトリル(表1では重合用アセトニトリルと記載)、開始剤としてジエチル2,5−ジブロモアジペート(DBAE)または2−ブロモブチル酸エチルを添加、混合し、混合液の温度を約80℃に調節した段階でペンタメチルジエチレントリアミン(以下、トリアミンと略す)を添加し、重合反応を開始した。残りのアクリル酸エステル(表1では追加モノマーとして記載)を逐次添加し、重合反応を進めた。重合途中、適宜トリアミンを追加し、重合速度を調整した。重合時に使用したトリアミンの総量を重合用トリアミンとして表1に示す。重合が進行すると重合熱により内温が上昇するので内温を約80℃〜約90℃に調整しながら重合を進行させた。
【0088】
(2)酸素処理工程
モノマー転化率(重合反応率)が約95%以上の時点で反応容器気相部に酸素‐窒素混合ガスを導入した。内温を約80℃〜約90℃に保ちながら反応液を数時間加熱攪拌して反応液中の重合触媒と酸素を接触させた。アセトニトリル及び未反応のモノマーを減圧脱揮して除去し、重合体を含有する濃縮物を得た。濃縮物は著しく着色していた。
【0089】
(3)第一粗精製
酢酸ブチルを重合体の希釈溶媒として使用した。重合体100kgに対して100〜150kg程度の酢酸ブチルで(2)の濃縮物を希釈し、ろ過助剤(ラジオライトR900、昭和化学工業製)および/または吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加した。反応容器気相部に酸素‐窒素混合ガスを導入した後、約80℃で数時間加熱攪拌した。不溶な触媒成分をろ過除去した。ろ液は重合触媒残渣によって着色および若干の濁りを有していた。
【0090】
(4)第二粗精製
ろ液を攪拌機付ステンレス製反応容器に仕込み、吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加した。気相部に酸素−窒素混合ガスを導入して約100℃で数時間加熱攪拌した後、吸着剤等の不溶成分をろ過除去した。ろ液はほとんど無色透明な清澄液であった。ろ液を濃縮し、ほぼ無色透明の重合体を得た。
【0091】
(5)(メタ)アクリロイル基導入工程
重合体100kgをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)約100kgに溶解し、アクリル酸カリウム(末端Br基に対して約2モル当量)、熱安定剤(H−TEMPO:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−n−オキシル)、吸着剤(キョーワード700SEN)、を添加し、約70℃で数時間加熱攪拌した。DMACを減圧留去し、重合体濃縮物を重合体100kgに対して約100kgのトルエンで希釈し、ろ過助剤を添加して固形分をろ別し、ろ液を濃縮し、末端にアクリロイル基を有する重合体[P1]を得た。得られた重合体の1分子あたりに導入されたアクリロイル基数、数平均分子量、分子量分布を併せて表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
(実施例1)
製造例1で得られた重合体[P1]33.3部、製造例2で得られた重合体[P2]にジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(商品名QM657;ローム&ハース製)24.65部、シクロヘキシルメタクリレート(商品名;ライトエステルCH、共栄社化学製)12.35部、接着性付与成分として、(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート(商品名;JPA514、城北化学製)0.9部、トリメトキシビニルシラン(商品名;SZ6300、東レ・ダウ・コーニング・シリコーン)3.1部、光ラジカル開始剤として1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニルケトン(商品名IRGACURE184;チバ・ジャパン製)3.7部、2ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名;DAROCUR1173、チバ・ジャパン製)、チキソ性付与成分として、微粒子シリカ(商品名;ASEROSIL#200、日本アエロジル製)1部を加え、2Lのプラネタリーミキサー(井上製作所製)で2時間混練した。その後、フィラー成分として平均粒径1.3〜2.0μmの球状シリカ(商品名;SOC5、アドマテック製)60部、平均粒径6μmの球状シリカ(商品名;FB301、電気化学工業製)180部を加え、16時間同ミキサーで混練して、硬化性接着剤組成物を得た。接着剤組成物の処方を表2に示す。
【0094】
得られた接着剤組成物の粘度23℃を測定した後、円筒型の型枠に流し込んで、積算光量6000mJ/cmでUV硬化させた。この硬化物を用いてDuroD硬度及び体積収縮率を測定した。さらに、シクロオレフィン(ゼオネックス、日本ゼオン製)とポリカーボネートとを基材とするせん断サンプルを照射条件6000mJ/cmでUV硬化させて作成し、せん断強度を測定した。結果を表3に示す。
【0095】
各測定条件を以下に示す。
【0096】
<粘度測定>
23℃条件で、BH型粘度、No.7ローターを用いて2rpm、20rpmの粘度を測定した。
【0097】
<DuroD硬度>
JIS K 7215に準拠して、接着剤硬化物の硬度を測定した。
【0098】
<体積収縮率>
体積収縮率は、以下の式で算出した。
[(硬化物比重−硬化前の接着剤の液比重)/硬化物比重]*100
【0099】
<せん断強度>
シクロオレフィンポリマー接着体を用い、JIS K 6850に準拠して接着剤硬化物の測定した。
【0100】
<線膨張率>
熱量分析装置(TMA、機種;EXSTAR6000、セイコーエプソン製)を用いて、硬化物のTg以上温度領域での線膨張係数を測定した。
【0101】
(実施例2〜3、比較例)
実施例1と同様の方法で、表2に示す処方の接着剤組成物を作成し、上記の物性を測定した。
結果を表3に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
表3に示す様に、実施例1〜3の接着剤組成物及び接着剤硬化物は、比較例と比べ請求項に記載している様に、低粘度、低体積収縮率、低線膨張率、適度なDuroD硬度、優れたシクロオレフィンポリマー接着性能のバランスに優れる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の難接着基材用接着剤組成物は、特定の粘度、特定の体積収縮率、特定の線膨張係数、特定の硬度及びシクロオレフィンポリマー被着体に対して特定のせん断強度を有する接着剤組成物が困難であった基材(COP、PPS、LCP、マグネシウム合金)に対する接着性が改善され、光学部材の接着剤用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)JIS K 5600−2−3に規定される方法で測定される、23℃における硬化前の粘度が50Pa・s以下、
(b)硬化前後における体積収縮率が3体積%以下、
(c)硬化後の線膨張率が1,000ppm以下、
(d)JIS K7215に規定される方法で測定される硬化後のDuroD硬度が10〜70、
(e)シクロオレフィンポリマー接着体を用いた、JIS K 6850に規定される硬化後のせん断強度が0.5MPa以上
であることを特徴とする、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、
一般式(1):
−OC(O)C(R)=CH (1)
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表わす)で表される基を1分子当たり少なくとも1つ有するビニル系重合体
を含有する、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
【請求項3】
さらに一般式(1):
−OC(O)C(R)=CH (1)
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表わす)で表される基を分子内に1個有する反応性モノマーを、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物全量の10重量%以上含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
【請求項4】
さらに光ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
【請求項5】
光カチオン重合開始剤を含有しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
【請求項6】
さらに未反応性のフィラー成分を50重量%以上含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を含有する接着剤。
【請求項8】
光学部材用接着剤である、請求項7に記載の接着剤。
【請求項9】
光ディスク用記録再生装置部材用接着剤である、請求項7または8に記載の接着剤。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の接着剤を用いて製造される光ディスク用記録再生装置。

【公開番号】特開2009−292981(P2009−292981A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149968(P2008−149968)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(000105305)ケミテック株式会社 (13)
【Fターム(参考)】