説明

活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびその積層体

【課題】耐傷つき性、防塵性に優れたハードコート層が形成可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、ならびに当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成されたハードコート層を有することを特徴とする積層体を提供することである。
【解決手段】分子内に活性エネルギー線硬化性不飽和結合を有する化合物(A)、無機微粒子(B)、下記一般式(1)で示される化合物(C)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶、プラズマディスプレイ表面の反射防止フィルム、近赤外線吸収フィルムといった機能性光学フィルムや、記録および/または再生するのに用いられる光が薄膜カバー層を通して記録層に照射される方式の光ディスクなどの表面に傷つき防止性、帯電防止性を付与する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。さらには、当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成されたハードコート層を有することを特徴とする積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶やプラズマディスプレイ表面に用いられる機能性光学フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、トリアセチルセルロース(TAC)等の透明樹脂フィルムを支持体とし、単層あるいは多層の光学的機能層が形成される。こうした機能性光学フィルムには、光学的機能以外にも、その用途に応じて硬度、透明性、静電気による塵埃付着防止のために帯電防止性に優れた性能が要求される。
【0003】
また、近年のマルチメディア化に対応して、大容量のデータを高密度で記録し、かつ迅速に記録再生する光記録装置が注目されている。この光記録装置には、CD、レーザーディスクのようにディスク作製時に情報を予めディスク上にスタンピングし情報再生のみを可能とした再生専用型ディスクを再生するもの、CD−Rのように一度だけ記録を可能とした追記型ディスクを記録・再生するもの、光磁気記録方式や相変化記録方式を用いて何度でもデータの書き換え、消去を可能とした書換え型ディスクを再生・記録するものがある。これら光記録装置では、データの再生・記録はレーザー光をレンズで回折限界にまで絞り込んだ光スポットを用いて行われる。特に、DVDの4倍以上の記録容量を達成したBlu−ray Discのような高密度に情報を記録する媒体を使用するシステムでは、光源の短波長化や対物レンズの高NA化が進み、光の焦点距離は短くなり、NAが高いレンズほどボケや収差が発生しやすく、光ディスク面上の傷や埃は記録再生時のエラー発生の要因となるため、硬度、透明性、静電気による塵埃付着防止のために帯電防止性に優れた性能が要求される。
【0004】
こうした背景から、ハードコート層における傷つきや塵埃付着防止を目的に、シリカ微粒子や酸化スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズドープ酸化アンチモン(ATO)といった金属酸化物微粒子の添加、あるいは四級アンモニウム塩の添加などが行われている。
【0005】
しかし、前記無機微粒子を含むハードコート剤に用いる無機微粒子は、その表面を加水分解性有機珪素化合物で修飾するなどの、特別な処理をしない場合、塗液の保存安定性や、塗膜の耐擦傷性が十分でない。また、このような従来の有機珪素化合物による表面処理では、無機微粒子表面の反応点量によって処理量が制限されるため、分散性向上や、保持力の向上には限界があった。
【特許文献1】特開2003−196883号公報
【特許文献2】特開2005−126453号公報
【特許文献3】特開平4−325567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明における目的は、非常に優れた耐擦傷性を有する無機微粒子含有ハードコート層が形成可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、ならびに当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成されたハードコート層を有することを特徴とする積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、分子内に活性エネルギー線硬化性不飽和結合を有する化合物(A)、無機微粒子(B)、下記一般式(1)で示される化合物(C)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
一般式(1)
【0008】
【化1】

第2の発明は、無機微粒子(B)が、シリカ、アンチモン、インジウムおよびスズから選ばれる少なくとも1つの元素を有する無機酸化物であること特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
【0009】
第3の発明は、無機微粒子(B)が平均粒子径5〜100nmであり、20重量%〜80重量%含むことを特徴とする請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
【0010】
第4の発明は、化合物(C)が、重量平均分子量5,000〜100,000であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
【0011】
第5の発明は、化合物(C)を1〜30重量%含むことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
【0012】
第6の発明は、支持基材上に請求項1〜5いずれか記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成されたハードコート層を有することを特徴とする積層体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、耐傷つき性、防塵性に優れたハードコート層が形成可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、ならびに当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成されたハードコート層を有することを特徴とする積層体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の詳細を説明する。
【0015】
本発明における活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中、分子内に活性エネルギー線硬化性不飽和結合を有する化合物(A)としては、ラジカル重合系モノマーが用いられ、分子中にα,β−不飽和二重結合を有する2官能以上の多官能モノマーおよび/または単官能のモノマー、ビニル型モノマー、アリル型モノマー、アクリレート型もしくはメタクリレート型(以下、(メタ)アクリレート型という)モノマー等のラジカル重合系モノマーが挙げられる。また(メタ)アクリレート型モノマーは、α,β−不飽和二重結合以外の官能基を有する場合も有る。また、ラジカル重合系モノマーは、単独でも、または架橋密度を調整すべく2種類以上のモノマーを併用する事も可能である。
【0016】
(A)成分としては、これら比較的低分子量化合物、例えば分子量が1000未満のいわゆる狭義のモノマーの他、ある程度分子量の大きい、例えば重量平均分子量が1000以上10000未満のオリゴマー、プレポリマーも用いることが可能である。α,β−不飽和二重結合を有するオリゴマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化マレイン酸変性ポリブタジエン等が挙げられる。
【0017】
ビニル型モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、N−ビニルピロリドン、酢酸ビニル、N−ビニルホルムアルデヒド、N−ビニルカプロラクタム、アルキルビニルエーテル等が、アリル型モノマーとしては、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。
【0018】
単官能(メタ)アクリレートモノマーとして具体的には2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、クレゾール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレ−ト、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、コハク酸(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、及びこれらの誘導体、変性品等が挙げられる。
【0019】
多官能(メタ)アクリレートモノマーとして具体的には1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレ−ト、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びこれらの誘導体、変性品等が挙げられる。
【0020】
本発明における活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる無機微粒子(B)は二酸化シリカ、酸化アンチモン、酸化スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズドープ酸化アンチモン(ATO)といった金属酸化微粒子から選ばれる少なくとも1種類の微粒子からなり、平均粒子径5〜100nmの微粒子である。本発明における活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる無機微粒子(B)は組成物中の不揮発分100重量%に対して20重量%〜80重量%であることが好ましい。これらの無機微粒子は単独でも用いることができるし2種類以上を併用することも可能である。また、これらの無機微粒子は表面を加水分解性シラン化合物で修飾されているものを使用してもかまわない。
【0021】
本発明における化合物(C)は、一般式(1)で示される化合物である。式中R部位は、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する化合物であり、n≧0、重量分子量が5,000〜100,000である。
一般式(1)
【0022】
【化2】

本発明における活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物(C)は、加水分解性シラン化合物を加水分解させた後脱水縮合反応によりポリマー化させたものである。
【0023】
前記加水分解性シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの化合物は、要求性能に応じて1種、または2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
化合物(C)は、公知の方法、例えば、溶液重合で合成することができる。重合時の溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエチル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などの使用が可能である。溶媒は、2種以上を混合して用いてもよい。重合時の単量体の仕込み濃度は、80重量%以下が好ましい。
【0025】
また、加水分解反応の促進のため、酢酸を添加しても良い。
【0026】
この重合によって得られた化合物(C)を添加することにより、活性エネルギー線硬化後の樹脂組成物中における無機微粒子(B)の保持力が飛躍的に向上する。その結果、支持基材上に形成されたハードコート層をJIS−K7204記載のテーバー磨耗試験に代表されるような磨耗試験を行った際に、無機微粒子の乖離を防ぐことが出来、耐傷つき性の優れた積層体を提供することが出来る。
【0027】
化合物(C)の重量平均分子量は5,000〜100,000であることが好ましく、5,000未満では耐擦傷性改善効果が期待できず、100,000より大きいと、耐擦傷性が低下したり、化合物(A)との相溶性が得られない場合がある。
【0028】
本発明における活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物(C)は組成物中の不揮発分100重量%に対して1重量%〜30重量%が好ましい。これよりも少ないと十分な効果が得られず、また多いと塗膜の強度低下を引き起してしまう。
【0029】
本発明における活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤を含有することができる。たとえば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ゲンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独でも用いることができるし2種以上を適宜併用することもできる。またこれら光重合開始剤はアミン類などの光増感剤と組み合わせて使用することもできる。
【0030】
本発明における活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は有機溶剤を含有することができる。たとえば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−iso−プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸−iso−ブチル等のエステル類、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンシクロヘキサノン等のケトン類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキエタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のエーテル類、2−メトキシエチルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類が挙げられる。これらの有機溶剤は単独でも用いることができるし2種以上を混合して使用することもできる。
【0031】
本発明における活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、紫外線吸収剤、可塑剤、架橋剤、酸化防止剤、重合遅延剤、光安定剤(HALS)、レベリング剤等も適宜使用することができる。
【0032】
本発明における積層体を形成する支持基材としては、プラスチック、ガラス等が挙げられるが、透明性が高いことはもちろんのこと、コスト、取り扱いやすさという点で、プラスチックが挙げられる。具体的には、ポリエステル系、アクリル系、トリアセチルセルロース系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリオレフィン系、ポリシクロオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリカーボネート系、フェノール系、ウレタン系樹脂等から形成されたフィルムが挙げられ、物理的特性、光学特性、耐薬品性、環境負荷等の点からポリエステル系が好ましい。より具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。また、ポリエステル基材などに、更にアクリル系樹脂、共重合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂、活性エネルギー線硬化樹脂等の樹脂層を設けた基材を用いることができる。
【0033】
本発明における活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工する方法としては、バーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、ディッピング法などにより塗布することができる。また、乾燥工程は溶剤の有無により適宜行うことができる。
【0034】
本発明における活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化皮膜は、活性エネルギー線の照射により塗工したハードコート剤を架橋硬化させることによって形成される。前記活性エネルギー線としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線あるいは、通常20〜2000KeVの電子線加速器から取り出される電子線、α線、β線、γ線等を用いることができる。このようにして形成されるハードコート層は、通常0.1〜50μm、好ましくは0.5〜10μmの厚みとする。
【0035】
前記ハードコート剤組成物が有機溶剤を含んでいる場合には、前記ハードコート剤組成物を塗布して未硬化のハードコート層を形成した後、非反応性有機溶剤を加熱乾燥により除去し、その後、活性エネルギー線を照射して未硬化層を硬化して、ハードコート層を得る事ができる。
<実施例>
【0036】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、部、%は特に断りのない限り重量基準である。また、下記実施例および比較例に示す活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の性能評価は以下に示す方法で行い、結果を表1に示した。
【0037】
以下の各試験では、組成物をポリカーボネート基板上に厚さ約2ミクロンとなるようスピンコーターにより塗工した後、80℃にて3分間保持することによって希釈溶剤を揮発させ、120W/cmのメタルハライドランプにより、EIT社製UV光量計UV POWER PUCKによる測定で波長域315-380nmの積算光量が1000mJ/cm2となる条件で硬化し、ハードコート層を有する基板を得た。
「耐摩耗性」JIS−K7204に準じた試験方法により耐摩耗性を実施。試験部位の傷つき度合いを目視にて観察し、5段階評価にて判定した。判定基準は、5(優)⇔1(劣)とした。
「表面抵抗値」塗工表面の抵抗値測定は、三菱化学(株)製ハイレスターUPを用いて行った。
「密着性」サンプルの塗工物表面を鋭利なカッターナイフの刃先で約1mm角の碁盤目状の切れ込みを入れる。碁盤目は10×10のマス目とし、そこにニチバン(株)社製セロテープ(登録商標)を貼り合わせた後、強制的に引き剥がし、その時の表面状態を観察する。評価は、10×10=100マスのうち塗膜が剥がれずに残存したマス数で行った。
【0038】
[重合例1]
プロピレングリコールモノメチルエーテル500g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン225g、水22.5gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温し、そのまま2時間重合反応を行い重合体(A1)溶液を得た。得られた重合体A1のGPC測定による重量平均分子量は、スチレン換算で7,567であった。
[重合例2]
プロピレングリコールモノメチルエーテル500g、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン225g、水22.5gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温し、そのまま2時間重合反応を行い重合体(A2)溶液を得た。得られた重合体A2のGPC測定による重量平均分子量は、スチレン換算で7,138であった。
[重合例3]
プロピレングリコールモノメチルエーテル500g、ビニルトリエトキシシラン225g、水22.5gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温し、そのまま2時間重合反応を行い重合体(A3)溶液を得た。得られた重合体A3のGPC測定による重量平均分子量は、スチレン換算で5,797であった。
[重合例4]
プロピレングリコールモノメチルエーテル500g、アミノプロピルトリエトキシシラン225g、水22.5gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温し、そのまま2時間重合反応を行い重合体(A4)溶液を得た。得られた重合体A4のGPC測定による重量平均分子量は、スチレン換算で7,935であった。
[重合例5]
プロピレングリコールモノメチルエーテル500g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン225g、水22.5gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温し、そのまま2時間重合反応を行い重合体(A5)溶液を得た。得られた重合体A5のGPC測定による重量平均分子量は、スチレン換算で5,892であった。
【実施例1】
【0039】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート7部(日本化薬(株)製、商品名KAYARAD DPHA)、トリメチロールプロパントリアクリレート7.4部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl TMPTA)、ウレタンアクリレート3部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl 8804)、有機珪素化合物処理五酸化アンチモン超微粒子コロイド溶液50部(触媒化成工業(株)製、商品名 ELCOM)、重合体(A1)13.2部、IRGACURE184 2部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製光開始剤)、調整溶剤17.4部を混合撹拌しコート剤1を得る。
【実施例2】
【0040】
実施例1と同様にして重合体(A1)の代わりに重合体(A2)〜(A5)を各々用いてコート剤2〜5を得る。
【実施例3】
【0041】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10部(日本化薬(株)製、商品名KAYARAD DPHA)、トリプロピレングリコールジアクリレート4.9部(東亜合成(株)製、商品名 アロニックス M−220)、ウレタンアクリレート2.5部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl 8804)、シリカ微粒子コロイド溶液50部(日産化学(株)製、商品名PMA−ST)、重合体(A1)13.2部、IRGACURE184 2部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製光開始剤)、調整溶剤17.4部を混合撹拌しコート剤6を得る。
【実施例4】
【0042】
実施例6と同様にして重合体(A1)の代わりに重合体(A2)、(A3)を各々用いてコート剤7.8を得る。
【実施例5】
【0043】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート7部(日本化薬(株)製、商品名KAYARAD DPHA)、トリメチロールプロパントリアクリレート7.4部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl TMPTA)、ウレタンアクリレート3部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl 8804)、ATO微粒子スラリー50部(東洋インキ製造(株)製)、重合体(A1)13.2部、IRGACURE184 2部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製光開始剤)、調整溶剤17.4部を混合撹拌しコート剤9を得る。
【実施例6】
【0044】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート7部(日本化薬(株)製、商品名KAYARAD DPHA)、トリメチロールプロパントリアクリレート7.4部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl TMPTA)、ウレタンアクリレート3部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl 8804)、ITO微粒子スラリー50部(東洋インキ製造(株)製)、重合体(A1)13.2部、IRGACURE184 2部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製光開始剤)、調整溶剤17.4部を混合撹拌しコート剤10を得る。
【0045】
<比較例1>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート7部(日本化薬(株)製、商品名KAYARAD DPHA)、トリメチロールプロパントリアクリレート7.4部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl TMPTA)、ウレタンアクリレート3部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl 8804)、有機珪素化合物処理五酸化アンチモン超微粒子コロイド溶液50部(触媒化成工業(株)製、商品名 ELCOM)、IRGACURE184 2部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製光開始剤)、調整溶剤30.6部を混合撹拌しコート剤11を得る
【0046】
<比較例2>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート7部(日本化薬(株)製、商品名KAYARAD DPHA)、トリメチロールプロパントリアクリレート7.4部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl TMPTA)、ウレタンアクリレート3部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl 8804)、有機珪素化合物処理五酸化アンチモン超微粒子コロイド溶液50部(触媒化成工業(株)製、商品名 ELCOM)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン4部、IRGACURE184 2部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製光開始剤)、調整溶剤26.6部を混合撹拌しコート剤12を得る。
【0047】
<比較例3>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート7.3部(日本化薬(株)製、商品名KAYARAD DPHA)、有機珪素化合物処理五酸化アンチモン超微粒子コロイド溶液153.7部(触媒化成工業(株)製、商品名 ELCOM)、重合体(A1)140部、IRGACURE184 4.6部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製光開始剤)を混合撹拌しコート剤13を得る。
【0048】
<比較例4>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10部(日本化薬(株)製、商品名KAYARAD DPHA)、トリプロピレングリコールジアクリレート4.9部(東亜合成(株)製、商品名 アロニックス M−220)、ウレタンアクリレート2.5部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl 8804)、シリカ微粒子コロイド溶液50部(日産化学(株)製、商品名PMA−ST)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン4部、IRGACURE184 2部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製光開始剤)、調整溶剤26.6部を混合撹拌しコート剤14を得る。
【0049】
<比較例5>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート7部(日本化薬(株)製、商品名KAYARAD DPHA)、トリメチロールプロパントリアクリレート7.4部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl TMPTA)、ウレタンアクリレート3部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl 8804)、ATO微粒子スラリー50部(東洋インキ製造(株)製)、IRGACURE184 2部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製光開始剤)、調整溶剤30.6部を混合撹拌しコート剤15を得る。
【0050】
<比較例6>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート7部(日本化薬(株)製、商品名KAYARAD DPHA)、トリメチロールプロパントリアクリレート7.4部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl TMPTA)、ウレタンアクリレート3部(ダイセル・サイテック(株)製、商品名 Ebecryl 8804)、ITO微粒子スラリー50部(東洋インキ製造(株)製)、IRGACURE184 2部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製光開始剤)、調整溶剤30.6部を混合撹拌しコート剤16を得る。
【0051】
これら実施例および比較例に示す各コート剤の評価結果を表1に示す。表1より、コート剤1〜5は、化合物(C)を含まない有機珪素処理された5酸化アンチモンコート剤9に比べていずれのサンプルも優れた耐擦傷性を示すことがわかる。また、コート剤1とコート剤10の比較では、一般的なアルコキシシランにくらべて化合物(C)の優位性が確認される。コート剤1、12の比較から、化合物(C)が30%より多い場合には十分な耐擦傷性が得られないことが分かる。コート剤6〜8とコート剤12、コート剤9とコート剤15、コート剤10とコート剤16の比較から、無機微粒子の種類が変わっても同様の結果が得られることが分かる。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に活性エネルギー線硬化性不飽和結合を有する化合物(A)、無機微粒子(B)、下記一般式(1)で示される化合物(C)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
一般式(1)
【化1】

【請求項2】
無機微粒子(B)が、シリカ、アンチモン、インジウムおよびスズから選ばれる少なくとも1つの元素を有する無機酸化物であること特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
無機微粒子(B)が平均粒子径5〜100nmであり、20重量%〜80重量%含むことを特徴とする請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
化合物(C)が、重量平均分子量5,000〜100,000であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
化合物(C)を1〜30重量%含むことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
支持基材上に請求項1〜6いずれか記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成されたハードコート層を有することを特徴とする積層体。


【公開番号】特開2008−255180(P2008−255180A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97320(P2007−97320)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】