説明

活性エネルギー線硬化性組成物

【課題】 水との接触角を下げ、水と濡れ易い被膜を形成することができ、且つ高温条件下に放置された場合であっても、その前後において水の接触角の変化が少ない被膜を形成することが可能な活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 式(1)
【化9】


で表される化合物(a)と、同一分子内にカルボキシル基及び活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物(b)とを反応させて得られるエステル化合物(I)、
又は
前記式1で表される化合物(a)と、ポリイソシアネート化合物(c)と、同一分子内に水酸基及び活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物(d)とを反応させて得られるウレタン化合物(II)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水との接触角を下げ、水と濡れ易くすることにより、例えば、透明なガラスやプラスチック表面の防曇性を向上させるための活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
親水性のポリオキシエチレンエーテル鎖を有するポリマーを塗布し、基材表面の接触角を下げて水滴の付着を防止する事が行われている。或いはポリオキシエチレン鎖とアクリロイル基を持つオリゴマーを含むUV硬化型組成物を防曇性材料として用いた例がある。そのような技術の一例として、両親媒性化合物として繰り返し数6〜20のポリエチレングリコール鎖を有する化合物を使用する技術がある(例えば、特許文献1参照)。当該技術では、具体的な化合物として、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい化合物として用いられている。
【0003】
また、表面硬度に優れ、防曇性及びその持続性に優れる硬化塗膜を形成することが可能な防曇性組成物として、プロペニル基又は(メタ)アリル基を有する反応性界面活性剤を含有してなる可視光又は活性エネルギー線硬化型防曇性組成物が開示されている(例えば、特許文献2、及び特許文献3参照)。
【0004】
ところで、防曇性材料が使用される用途としては、種々のものがある。中でも、自動車のヘッドライトカバーやテールライトカバーが雨や霧等により濡れて、ライトの光量が減殺されるのを防ぐためにカバー用の透明プラスチックの外面に防曇性材料の被膜を設けることがある。また、場合によってはライト部に浸入した水分によりライトカバーの内側が曇るのを防止するため、カバーの内面に防曇性材料の被膜を設けることもある。このような用途においては、ライトの発光時に発する熱によりライトカバーが長時間加熱されることがあり、ここに用いられる防曇性材料には、長時間高温状態になった後でも所期の濡れ性を保持しうることが要求される。また、潜水用のゴーグル、スキー用、登山用、ドライバー用など人間の体温で暖められた水分が曇りを生ずることがある。真夏の船上、海岸などに置かれる可能性の高い潜水用ゴーグルなどは高温下に曝される可能性が高く、同様に長時間高温下に置かれても防曇性能が劣化しない事が求められる。冷暖房の熱交換機に用いられているアルミフィンも水滴がアルミフィン表面に留まり凍結して冷房能力が下がることがあるためフィン表面の接触角が低い状態を保つ必要がある。アルミフィンは冷房時に於いては低温の熱媒により冷やされるが、暖房時は反対に熱媒によって過熱され、高温の状態に置かれる。従って、ここに於いても長時間高温状態になった後でも所期の濡れ性を保持しうることが要求される。
【0005】
しかしながら、前記の従来技術で提案されている材料では、長時間加熱されると水との接触角が大きくなり、加熱後の塗膜表面に水滴が付着し、その水滴に因って曇りを生じてしまう。
【0006】
【特許文献1】特開2000−319406(特許請求の範囲、第34段落、実施例)
【特許文献2】特開平11−116892(特許請求の範囲、第3段落、実施例)
【特許文献3】特開平11−140109(特許請求の範囲、第3段落、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、水との接触角を下げ、水と濡れ易い被膜を形成することができ、且つ高温条件下に放置された場合であっても、その前後において水の接触角の変化が少ない被膜を形成することが可能な活性エネルギー線硬化性組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記課題を解決した活性エネルギー線硬化性組成物の硬化皮膜を表面に設けた自動車用ライトカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、炭素−炭素三重結合を分子骨格中に有し、且つ疎水鎖と親水性の分子鎖を有する特定の構造の反応性界面活性剤を含有する活性エネルギー線硬化性組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、式(1)
【0009】
【化1】

(式中、R及びRは各々独立的に、水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜30のアルキル基を表し、R及びRは各々独立的に、水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、X及びZは各々独立的に、水素原子又は-Y-OH(式中、Yはポリオキシアルキレン構造の基を表す。)を表すが、R、R、R及びRのすべてが同時に水素原子となることはない。)で表される化合物(a)と、
同一分子内にカルボキシル基及び活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物(b)とを
反応させて得られるエステル化合物(I)、
又は
前記式(1)で表される化合物(a)と、
ポリイソシアネート化合物(c)と、
同一分子内に水酸基及び活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物(d)とを
反応させて得られるウレタン化合物(II)、
を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記の活性エネルギー線硬化性組成物からなる硬化塗膜であって、水との接触角が35°以下であることを特徴とする硬化塗膜を提供するものである。
【0011】
更に、本発明は、上記の活性エネルギー線硬化性組成物からなる硬化塗膜により表面を被覆した自動車用ライトカバーを提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
前記式(1)で表される化合物(a)を分子骨格中に有する反応性界面活性剤を含有することにより、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物からなる硬化皮膜は、水との接触角が低いばかりでなく、高温条件下に長時間放置された場合であっても水に対して優れた濡れ性を示す。したがって、例えば、自動車のヘッドライトカバーやテールライトカバーのように、ライトの熱により繰り返し加熱される材料に使用するための防曇材料として優れた効果を発揮する。また、自動車用ライトカバー以外の用途として、潜水用ゴーグルや、熱交換機のアルミフィンなどが用途として挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に使用するエステル化合物(I)及びウレタン化合物(II)について、詳細に説明する。
【0014】
エステル化合物(I)は、前記式(1)で表される化合物(a)と、同一分子内にカルボキシル基及び活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物(b)とを反応させて得られる化合物である。
【0015】
前記式(1)で表される化合物(a)としては、式(1)の範囲内であれば特に支障なく使用することができるが、下記式(2)、(3)、(4)又は(5)で表される化合物であることが好ましい。
【0016】
【化2】

(式中、R及びRは各々独立的に、分岐鎖を有していても良い炭素数1〜30のアルキル基であり、R及びRは各々独立的に、-CH3又は-C2H5を表す。)
【0017】
【化3】

(式中、R及びRは各々独立的に、分岐鎖を有していても良い炭素数1〜30のアルキル基であり、R及びRは各々独立的に、-CH3又は-C2H5を表し、nは5〜50の整数を表す。)
【0018】
【化4】

(式中、R及びRは各々独立的に、分岐鎖を有していても良い炭素数1〜30のアルキル基であり、R及びRは各々独立的に、-CH3又は-C2H5を表し、Yは、-(C2H4O)-及び-(C3H6O)m-(式中、m及びnはそれぞれ独立的に2〜48の整数を表し、m+nは5〜50である。)で表される構造の基がブロック上に連なった構造を有する基を表す。)
【0019】
【化5】

(式中、R及びRは各々独立的に、分岐鎖を有していても良い炭素数1〜30のアルキル基であり、R及びRは各々独立的に、-CH3又は-C2H5を表し、Yは、-(C2H4O)-及び-(C4H8O)m-(式中、m及びnはそれぞれ独立的に2〜48の整数を表し、m+nは5〜50である。)で表される構造の基がブロック上に連なった構造を有する基を表す。)
【0020】
上記式(2)、(3)、(4)又は(5)で表される化合物の中で、R及びRは各々独立的に、分岐鎖を有していても良い炭素数1〜20のアルキル基であることがより好ましく、分岐鎖を有していても良い炭素数1〜10のアルキル基であることが特に好ましい。また、R及びRは-CH3であることが特に好ましい。更に、式(3)におけるnは8〜40であることがより好ましく、式(4)及び式(5)におけるm+nも8〜40であることがより好ましい。加えて、式(4)及び式(5)における-(C3H6O)m-(ポリオキシプロピレン鎖)、-(C4H8O)m-(ポリオキシテトラメチレン鎖)は疎水基として働くので、-(C2H4O)-(ポリオキシエチレンエーテル鎖)の1/2以下の繰り返し単位数であることが好ましく(n≧2m)、1/3以下であることがより好ましい(n≧3m)。また、n≧5であることが好ましい。なお、上記式(3)、(4)又は(5)で表される化合物における、同一分子内の2つのポリオキシアルキレン鎖の長さは異なっていても良い。但し、オキシアルキレンの付加数は上記の範囲内であることが好ましい。
【0021】
また、上記式(2)で表される化合物の具体例としては、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールなどが挙げられる。
【0022】
同一分子内にカルボキシル基及び活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物(b)としては公知の化合物を使用することができるが、具体的には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸を使用することがより好ましい。化合物(a)と化合物(b)を反応させてエステル化合物(I)を製造する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、直接エステル化する方法、化合物(b)のカルボキシル基を低級アルコールによりエステル化した後にエステル交換する方法、化合物(b)をハロゲン化アシル化合物として、化合物(a)と反応させる方法、等がある。なお、本明細書中で(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタクリル酸のことであり、アクリル酸またはメタクリル酸の誘導体についても同様である。
【0023】
ウレタン化合物(II)は、前記式(1)で表される化合物(a)と、ポリイソシアネート化合物(c)と、同一分子内に水酸基及び活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物(d)とを反応させて得られる化合物である。
【0024】
ポリイソシアネート化合物(c)としては公知の化合物を使用することができるが、具体的には、1,6ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート(リジントリイソシアネート、前記脂肪族ジイソシアネートの三量体、低分子トリオールと前記脂肪族イソシアネートのアダクト体)、イソホロンジイソシアネート、水添4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4−ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、脂環族トリイソシアネート(前記脂環族ジイソシアネートの三量体、低分子トリオールと前記脂環族イソシアネートのアダクト体)、キシリレンジイソシアネート、芳香脂肪族トリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートの三量体、低分子トリオールと前記芳香脂肪族イソシアネートのアダクト体)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、芳香族トリイソシアネート(トリフェニルメタントリイソシアネート、前記芳香族ジイソシアネートの三量体、低分子トリオールと前記芳香属イソシアネートのアダクト体)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネート等がある。その他、市販品としては、コスモネートLL(三井化学(株)製:カルボジイミド化した4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物)、或いは、カルボジライトV−05(日清紡(株)製:ポリカルボジイミド基を有する末端脂肪属イソシアネート化合物)等のカルボジイミド基を有するイソシアネート化合物類、などが挙げられる。上記の二種類以上のイソシアネート化合物を混合して用いることが出来る。
【0025】
同一分子内に水酸基及び活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物(d)としては、水酸基と(メタ)アクリロイル基を同一分子内に有する化合物が挙げられる。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート或いは、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ライトエステルG−201P(共栄社化学(株)製)の如きモノヒドロキシアクリルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のモノヒドロキシトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のモノヒドロキシペンタアクリレート類、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等のジヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、及びこれらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン或いはεカプロラクトンを付加重合した化合物等が挙げられる。
【0026】
更に、化合物(d)として下記生成物(A)及び生成物(B)をあげることができる。
(A)下記(α)と、(β)又は(γ)とをマイケル付加反応した生成物
(α)トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレート
(β)ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン等のジアルカノールアミン
(γ)メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、メチルプロパノールアミン等のモノアルキルモノアルカノールアミン
或いは、
(B)下記(δ)と、(ε)とを反応させて得られる生成物
(δ)イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の反応性の異なる二つのイソシアネート基を持つジイソシアネート類と、モノヒドロキシモノアクリレート、モノヒドロキシジ(メタ)アクリレート等との反応によって得られるハーフウレタン又は2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMOI昭和電工製)等の分子内に(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基と(ε)上記ジアルカノールアミン類又は上記モノアルキルモノアルカノールアミン類の窒素に直接繋がっている活性水素との反応物が挙げられる。
更に、同一分子内に水酸基及びアリル基の2重結合を有する化合物(d)としては、アリルアルコール(2プロペン−1−オール)、アリルヒドロキシエチルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等のアリルアルコール類を挙げることが出来る。
更には、同一分子内に水酸基及び活性エネルギー線硬化性マレイミド基、或いはフタルイミド基の2重結合を有する化合物(d)としては、特開平11―124404で公開されている方法により得られるN-ヒドロキシメチルマレイミド、N-ヒドロキシエチルマレイミド、2,3,4,5テトラヒドロ無水フタル酸と,モノエタノールアミン、nプロパノールアミン、ブタノールアミン等のモノアルカノールアミンとの脱水縮合反応で得られるN-ヒドロキシアルキル2,3,4,5テトラヒドロフタルイミドを挙げることができる。
【0027】
本発明では、ウレタン化合物(II)を製造する際に、更に、炭素−炭素三重結合構造を有しない5個以上のオキシエチレンエーテルの繰り返し単位を有するポリオキシエチレンエーテル鎖を分子内に持つ親水性ポリオール類(e)、乃至は必要に応じて非親水性ポリオール(f)を加えて製造したウレタン化合物(II-2)を用いることもできる。
【0028】
炭素−炭素三重結合構造を有しない5個以上のオキシエチレンエーテルの繰り返し単位を有するポリオキシエチレンエーテル鎖を分子内に持つポリオール類(e)としては、例えば、ジオールにエチレンオキサイドを付加したポリオキシエチレンエーテルジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのポリオールにエチレンオキサイドを付加したポリオキシエチレンエーテルポリオールであり、ポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキシテトラメチレンエーテルなどのポリマーポリオールのエチレンオキサイド付加物などの親水性ポリマーポリオール等を挙げることが出来る。
【0029】
非親水性ポリオール(f)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキシルジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ひまし油変性ジオール、ひまし油変性ポリオール等をあげることが出来る。
【0030】
ウレタン化合物(II)は、前記式(I)の化合物(a)に由来する水酸基の総モル比(OH-a)とポリイソシアネート化合物(c)に由来するイソシアネート基の総モル比(NCO-c)が、
(OH-a)<(NCO-c)
となるように反応させ、その後、同一分子内に水酸基及び活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物(b)を、化合物(b)に由来する水酸基の総モル数(OH-b)が、
(NCO-c)−(OH-a)=(OH-b)となるように反応することによって得る事ができる。
【0031】
ウレタン化合物(II-2)は、前記式(I)の化合物(a)に由来する水酸基の総モル比(OH-a)、ポリイソシアネート化合物(c)に由来するイソシアネート基の総モル比(NCO-c)、親水性ポリオール類(e)に由来する水酸基の総モル比(OH-e)、必要に応じて添加する非親水性ポリオール(f)に由来する水酸基の総モル比(OH-f)が、
[(OH-a)+(OH-e)+(OH-f)]<(NCO-c)
となるように反応させ、その後、同一分子内に水酸基及び活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物(b)を、化合物(b)に由来する水酸基の総モル数(OH-b)が、
(NCO-c)−[(OH-a)+(OH-e)+(OH-f)]=(OH-b)となるように反応することによって得る事ができる。
【0032】
ポリウレタン(II)の製造方法において(c)/(a)は任意の割合をとり得るがイソシアネート基末端の反応物の平均分子量を調整するという意味合いからは2〜1の中の任意の割合をとることが好ましい。
(a)+(b)/(c)に於いても任意の割合をとり得るが、分子内にイソシアネート基を残存させる。或いは活性水素を有する基と活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物を系内に残存させる。という目的以外では、前記したように(a)+(b)=(c)即ち、(a)+(b)/(c)=1付近が好ましい。
【0033】
また、ポリウレタン(II-2)の製造方法において(c)/(a+e+f)は任意の割合をとり得るがイソシアネート基末端の反応物の平均分子量を調整するという意味合いからは2〜1の中の任意の割合をとることが好ましい。
(a+e+f)+(b)/(c)に於いても任意の割合をとり得るが、分子内にイソシアネート基を残存させる。或いは活性水素を有する基と活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物を系内に残存させる。という目的以外では、前記したように(a+e+f)+(b)=(c)即ち、(a+e+f)+(b)/(c)=1付近が好ましい。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、上記のエステル化合物(I)、ウレタン化合物(II)及びウレタン化合物(II-2)以外に公知の活性エネルギー線硬化性化合物を含有させることができる。そのような化合物としては、ラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーがあるが、具体的には以下の化合物がある。
【0035】
ラジカル重合性モノマーとしては、単官能の(メタ)アクリレートとして、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
また、多官能の(メタ)アクリレートとして、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
更に、ラジカル重合性オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等がある。
【0038】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には光重合開始剤を使用することができる。光重合開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が好適に用いられ、また、これら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を併用しても良いし、さらには、水素引き抜き型光重合開始剤であるベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等も併用できる。ラジカル性の光重合開始剤の使用量は、活性エネルギー線硬化性組成物の全体に対して、2質量%〜10質量%の範囲で含有することが好ましい。
【0039】
また、増感剤を使用することができ、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前述のラジカル重合性成分と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、上記光重合開始剤や増感剤は、活性エネルギー線硬化性組成物への溶解性に優れ、活性エネルギー線の透過を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0040】
更に、必要に応じて、他の添加剤を使用することができ、例えば、熱重合開始剤、無機フィラー、有機フィラー、ワックス、熱重合禁止剤、可塑剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等の酸化防止剤、およびエポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等のシランカップリング剤、界面活性剤、表面硬化性向上助剤、塗膜平滑性向上助剤などの公知の添加剤等を添加することができる。
【0041】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化皮膜は水との接触角が35°以下であることが好ましい。また、水との接触角が30°以下であることがより好ましく、25°以下であることが特に好ましい。水の接触角を35°以下にするためには、上記のエステル化合物(I)、ウレタン化合物(II)及びウレタン化合物(II-2)を活性エネルギー線硬化性組成物全体に対して、少なくとも15重量%以上含有させることが好ましい。中でも、20重量%以上含有させることがより好ましく、25重量%以上含有させることが特に好ましい。
【実施例】
【0042】
(合成例1)
還流冷却管、デカンター(水分分離器)、及び空気導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、アクリル酸を41部、トルエンを494部、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール 1モルに対して、エチレンオキサイドを平均30モル付加して得られる化合物(下記式(6)の化合物)を352部、及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール 1モルに対して、エチレンオキサイドを平均10モル付加して得られる化合物(下記式(7)の化合物)101部、メトキノン3部を加えて125℃迄昇温し、昇温後1時間にp−トルエンスルホン酸を3部加える。同温度にて反応し、2時間毎に、更にp−トルエンスルホン酸を3部づつ加えて8時間反応した。分液ロートに反応物を移し、過剰のアクリル酸を重炭酸ソーダ水溶液で中和して、更に飽和食塩水を500部加えて、2度以上洗浄する。メトキノン0.3部を加え、減圧蒸留にてトルエンを留去し、下記式(6)の化合物のアクリレートと下記式(7)の化合物のアクリレ−トの混合物「A−1」を得た。
【0043】
【化6】

(式中、h及びiは各々独立的に、0又は正の整数であり、h+iの平均値は30である。)
【0044】
【化7】

(式中、j及びkは各々独立的に、0又は正の整数であり、j+kの平均値は10である。)
【0045】
(合成例2)
還流冷却管、及び窒素導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを233部、上記式(7)の化合物を140部、上記式(6)の化合物を489部加えて65℃迄昇温し、昇温後30分にジブチル錫ラウリレートを0.1部加える。1.5時間同温度にて反応し、更に75℃まで昇温してNCO%が4.7以下まで反応したら、2−ヒドロキシエチルアクリレート136部、メトキノン0.3部、ジブチル錫ラウリレート0.5部を加え、窒素導入管を空気導入管に換えて、75℃にてNCO%が0.1%以下まで反応を続けて上記式(6)の化合物のウレタンアクリレートと上記式(7)の化合物のウレタンアクリレ−トの混合物「UA−1」を得た。
【0046】
(合成例3)
還流冷却管、及び窒素導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、ポリエチレングリコールPEG−1000を268部、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを148部、イソホロンジイソシアネート149部、上記式(7)の化合物を268部加えて65℃迄昇温し、30分後にジブチル錫ラウリレートを0.01部加える。1.5時間同温度にて反応し、75℃まで昇温してNCO%が7.4以下まで反応したら、2−ヒドロキシエチルアクリレート165部、メトキノン0.3部、ジブチル錫ラウリレートを0.31部を加え、窒素導入管を空気導入管に換えて、75℃にてNCO%が0.1%以下まで反応を続けて上記式(7)の化合物のウレタンアクリレ−ト「UA−2」を得た。
【0047】
(比較合成例1)
還流冷却管、及び窒素導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、ポリエチレングリコールPEG−1000を591部、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを130部、イソホロンジイソシアネート131部を加えて73℃まで昇温してNCO%が6.3%以下まで反応したら2−ヒドロキシエチルアクリレート145部、メトキノン0.3部、ジブチル錫ラウリレートを0.3部を加え、窒素導入管を空気導入管に換えて、73℃にてNCO%が0.1%以下まで反応を続けて、ウレタンアクリレート「UA−H1」を得た。
【0048】
合成例A-1、UA-1、UA-2及び比較合成例UA-H1を用いて表1及び表2の組成物を調整した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】


モノマー1:NKエステルA-TMP-3CL(新中村化学製)
モノマー2:ペンタエリスリトールトリアクリレート
オリゴマー紫光UV3000B(日本合成化学(株)製)
開始剤−1:ダロキュア1173(チバ・スペシャリティケミカルズ製)
開始剤−2:イルガキュア184(チバ・スペシャリティケミカルズ製)
【0051】
(UV硬化塗膜の作製)
塗布:厚さ1mmのポリカーボネート板上にスピンコーターにて乾燥塗膜が7〜8μmとなるように回転数を調整して、各実施例及び各比較例の組成物を塗布した。
乾燥:60℃にて10分間、乾燥機により上記塗膜を乾燥した。
硬化:120Wのコールドミラーメタルハライドランプを使用して、空気中で2J/cmのエネルギー強度となるように紫外線を照射することにより乾燥後の上記塗膜を硬化させ、試験片を作製した。
【0052】
(高温試験)
作製した上記試験片を重ならないようウィケット等で立てかけて、内部温度が130℃に調整された乾燥機に10日間放置し、その前後における試験片表面の接触角を測定した。
接触角の測定は、協和科学(株)社製の「協和接触角計CA−D」にて25℃に於いて行った。
【0053】
実施例1〜実施例6の組成物及び比較例1〜比較例3の組成物を用いて、自動車用ヘッドライトカバー(ポリカーボネート製)の外面に7〜8μmの膜厚の硬化皮膜を設けた。これをヘッドライト部に取り付け、10日間の点灯試験を行い、点灯試験前後における水に対する濡れ性を目視観察した。その結果、実施例の組成物の硬化皮膜を設けたヘッドライトカバーは、初期の濡れ性を保持しており、点灯試験後もカバー表面に水滴が発生しなかったが、比較例の組成物による硬化皮膜を設けたカバーは点灯試験後の濡れ性が劣り、カバーの全面に水滴が発生し、ヘッドライトの照射光量が減殺された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

(式中、R及びRは各々独立的に、水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜30のアルキル基を表し、R及びRは各々独立的に、水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、X及びZは各々独立的に、水素原子又は-Y-OH(式中、Yはポリオキシアルキレン構造の基を表す。)を表すが、R、R、R及びRのすべてが同時に水素原子となることはない。)で表される化合物(a)と、
同一分子内にカルボキシル基及び活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物(b)とを
反応させて得られるエステル化合物(I)、
又は
前記式(1)で表される化合物(a)と、
ポリイソシアネート化合物(c)と、
同一分子内に水酸基及び活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物(d)とを
反応させて得られるウレタン化合物(II)、
を含有する活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
前記式(1)中、R及びRが各々独立的に、分岐鎖を有していても良い炭素数1〜30のアルキル基であり、R及びRが各々独立的に、-CH3又は-C2H5であり、X及びZが、-(C2H4O)-H(式中、nは5〜50の整数を表す。)である請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記式(1)中、R及びRが各々独立的に、分岐鎖を有していても良い炭素数1〜30のアルキル基であり、R及びRが各々独立的に、-CH3又は-C2H5であり、X及びZが、-Y1-OH(式中、Yは、-(C2H4O)-及び-(C3H6O)m-(式中、m及びnはそれぞれ独立的に2〜48の整数を表し、m+nは5〜50である。)で表される構造の基がブロック上に連なった構造を有する基を表す。))である請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
前記式(1)中、R及びRが各々独立的に、分岐鎖を有していても良い炭素数1〜30のアルキル基であり、R及びRが各々独立的に、-CH3又は-C2H5であり、X及びZが、-Y2-OH(式中、Yは、-(C2H4O)-及び-(C4H8O)m-(式中、m及びnはそれぞれ独立的に2〜48の整数を表し、m+nは5〜50である。)で表される構造の基がブロック上に連なった構造を有する基を表す。)である請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物からなる硬化塗膜であって、水との接触角が35°以下であることを特徴とする硬化塗膜。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物からなる硬化塗膜により表面を被覆した自動車用ライトカバー。

【公開番号】特開2006−22180(P2006−22180A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200466(P2004−200466)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】