説明

活性光線硬化型インクジェット記録用メディアおよび記録方法

【課題】発色性が高く、高精細で画像鮮鋭性に優れた活性光線硬化型インクジェット記録用メディアおよび活性光線硬化型インクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】インク保持層が下記(A)又は(B)の化合物の少なくとも1種を含有する非吸収性層であることを特徴とする活性光線硬化型インクジェット記録用メディアおよびこれを用いた記録方法。
(A)ソープフリー重合によるアクリル系樹脂
(B)フッ素系樹脂撥水撥油剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性光線硬化型インク組成物を用いてインクジェット方式で印字した後、活性光線により該インク組成物を硬化させる記録方法に用いる、非吸収性基材の少なくとも片面にインク保持層を塗設した記録用メディアおよび記録方法に関し、詳しくは、発色性が高く、高精細で画像鮮鋭性に優れた活性光線硬化型インクジェット記録用メディアおよび記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット方式は安価に高精細な画像を印字できるため、比較的小サイズの写真出力がメインであるホーム用途で飛躍的な広がりを見せた。この高精細な印字品質はインクジェットプリンターの高精細化とこれにマッチした専用メディアとの組み合わせで達成されてきた。
【0003】
一方、他の方式に比べて容易に大サイズ化が可能であるというもう一つの特徴から、インクジェット記録方式はサイン&ディスプレイ、看板、印刷用途等のビジネス用途でも応用されている。このようなビジネス用途においては、非常に多種多様なメディアへの印刷が必要であるため、例えば、室温で固形のワックスインクを用いる相変化型インクジェット方式、有機溶剤を主体に含有したインクをメディアに溶解含浸させ、熱や風で強制的に乾燥させる溶剤系インクジェット方式、紫外線硬化型インクを用いメディア上に印字されたインクを活性光線として紫外線(UV)により重合させるUV硬化型インクジェット方式のような、メディアに依存しないインクジェット方式が使用されることが多い。
【0004】
このようなメディアに依存しないインクジェット方式の中でも、比較的擦過に弱い相変化型インクジェット方式や、溶剤臭がきつい溶剤系インクジェット方式と比較して、前記したUV硬化型インクジェット方式に代表される活性光線硬化型インクジェット方式は、速乾性、臭気、耐候性が良好で、さらには近年LEDのUV照射装置によりエネルギー効率もより優位になってきたことより注目されつつある。このような活性光線硬化型インクジェット方式は、例えば、特開2004−358769号公報(特許文献1)、特開2005−153193号公報(特許文献2)にはUVLEDを用いたUV硬化型インクジェットプリンターが、特開2004−34543号公報(特許文献3)にはカチオン硬化型の活性エネルギー線硬化型インクが、特開2009−227822号公報(特許文献4)にはマイクロカプセル化した紫外線硬化型樹脂エマルジョンを含むインク等が開示されている。
【0005】
このような活性線硬化型インクジェット方式のインクでは、顔料色材と重合開始剤の他、重合性モノマー成分がメインであるため、顔料色材の分散安定性が比較的悪く、さらにインクジェットヘッドが閉塞し易いため、600dpi〜1200dpi程度の解像度しかなく、前述したホーム用途のプリンター程の高解像度なプリンターはなかったが、近年、プリンターの進化により、1200dpiを超える高解像度の活性光線硬化型インクジェットプリンターが発売されてきており、以前よりは高精細な印字品質が得られるようになってきた。
【0006】
しかしながら、インクが活性光線により重合する重合性モノマー成分が主体であるため表面張力が低く、非吸収性メディア上に保持された場合、高解像度で印字しても印字後のインクドットが著しく広がってしまい、高精細で画像鮮鋭性の良好な印字品質が得られない問題があった。
【0007】
油性インクや水性インクを用いたインクジェット記録用メディアの印字後のインクドットを制御する方法としては、特開平08−300808号公報(特許文献5)、特開平10−114141号公報(特許文献6)、特開2004−291437号公報(特許文献7)、特開2007−182019号公報(特許文献8)に、インク吸収層にシリコーン樹脂やフッ素樹脂の撥水剤やサイズ剤を含有することが開示されている。
【0008】
しかしながら、これら公報は印字されたインクをすべて塗設されたインク吸収層や紙基材で吸収することが前提の記録用メディアであり、活性光線硬化型インクジェット方式でこのような記録用メディアに印字した場合、透明性の低いインク吸収層や紙層内にインクが浸透、硬化してしまい発色性が低下したり、前述した低いインク表面張力が故にインク吸収層や紙層内へのインク浸透時にドットが広がってしまい、所望の発色性と画像鮮鋭性の両立が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−358769号公報
【特許文献2】特開2005−153193号公報
【特許文献3】特開2004−34543号公報
【特許文献4】特開2009−227822号公報
【特許文献5】特開平08−300808号公報
【特許文献6】特開平10−114141号公報
【特許文献7】特開2004−291437号公報
【特許文献8】特開2007−182019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、活性光線硬化型インク組成物を用いてインクジェット方式で印字した後、活性光線により該インク組成物を硬化させる記録方法に用いる、非吸収性基材の少なくとも片面にインク保持層を塗設した記録用メディアおよび記録方法に関し、発色性が高く、高精細で画像鮮鋭性に優れた活性光線硬化型インクジェット記録用メディアおよび記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は以下の発明により達成される。
(1)活性光線硬化型インク組成物を用いてインクジェット方式で印字した後、活性光線により該インク組成物を硬化させる記録方法に用いる、非吸収性基材の少なくとも片面にインク保持層を塗設した記録用メディアであって、該インク保持層が下記(A)又は(B)の化合物の少なくとも1種を含有する非吸収性層であることを特徴とする活性光線硬化型インクジェット記録用メディア。
(A)ソープフリー重合により得られるアクリル系樹脂
(B)フッ素系樹脂撥水撥油剤
(2)上記化合物が、水溶性フッ素樹脂撥水撥油剤であることを特徴とする上記(1)に記載の活性光線硬化型インクジェット記録用メディア。
(3)上記(1)および(2)記載の活性光線硬化型インクジェット記録用メディアの非吸収性のインク保持層に、インクジェット方式により活性光線硬化型インク組成物を印字した後、活性光線により該インク組成物を硬化させることを特徴とする活性光線硬化型インクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により発色性が高く、高精細で画像鮮鋭性に優れた活性光線硬化型インクジェット記録用メディアおよび記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明における活性光線硬化型インクジェット記録用メディアは、非吸収性基材の少なくとも片面にインク保持層を有する。該インク保持層はインクジェット方式によって印字された活性光線硬化型インク組成物を層内に吸収する層ではなく表面に保持する非吸収性層であり、後述する本発明に必須である非吸収性基材上に設けることにより、記録用メディアとして活性光線硬化型インク組成物を吸収せず保持する。これにより記録メディア表面で保持された活性光線硬化型インク組成物が活性光線により硬化されて定着することで高い発色性が得られる。
【0015】
本発明のインク保持層は(A)ソープフリー重合により得られるアクリル系樹脂又は(B)フッ素系樹脂撥水撥油剤の化合物の少なくとも1種を含有する非吸収性層である。このようなインク保持層を設けることにより、表面張力が低い活性光線硬化型インク組成物でも、インク保持層に印字され保持された時に高い接触角を維持できるため、非常に高い画像鮮鋭性を得ることができる。インク保持層が前記した(A)又は(B)の化合物を含まない場合、画像鮮鋭性が低下する。なお、非吸収性層とは、インク組成物が実質的にインク保持層へ吸収されず、インク組成物がインク保持層上に保持される層であることを意味し、具体的にはインク保持層内への吸水量が片面で1.0g/m以下であることを意味する。なお、非吸収性基材とインク保持層との間に下塗り層が存在する場合には、インク保持層と下塗り層の双方の吸水量の和が1.0g/m以下であることを意味する。
【0016】
本発明におけるインク保持層内への吸水量は、非吸収性基材にインク保持層を設けた活性光線硬化型インクジェット記録用メディアを、10cm×10cm等の任意の大きさに断裁し、20℃のイオン交換水に1分含浸させインク保持層面や裏面に吸収せず付着している水分を濾紙で拭った後と含浸前のメディアの質量差より算出することができる。
【0017】
上記(A)又は(B)の化合物のインク保持層への添加量は、好ましくはインク保持層の全固形分に対し20質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
【0018】
本発明における(A)のアクリル系樹脂を製造する際に利用されるソープフリー重合とは、非水溶性高分子の重合反応時の乳化剤として、一般的に用いられる分子量が1000以下の低分子量体の界面活性剤ではなく、後述する水溶性高分子化合物を使って乳化重合したもので、ソープレスとも称されるものである。この水溶性高分子化合物は非水溶性高分子の保護コロイド又は共重合成分として非水溶性高分子を親水性化する。かかるソープフリー重合により得られる乳化重合物は、界面活性剤を使用した乳化重合物より、乾燥皮膜の疎水性が高く、高い接触角を維持することができ、高い画像鮮鋭性が得られる。
【0019】
上記水溶性高分子化合物としては、アニオン性水溶性高分子化合物、カチオン性水溶性高分子化合物、ノニオン性水溶性高分子化合物が使用できるが、重合時の安定性が優れているという点でアニオン性水溶性高分子化合物、カチオン性水溶性高分子化合物が好ましい。
【0020】
本発明で使用できるアニオン性水溶性高分子化合物の具体例としては、硫酸基変性ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウム、ポリアスパラギン酸ナトリウム、ポリ乳酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸アンモニウムなどが挙げられ、特にスルホン酸基変性ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースが好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせても用いてもよい。
【0021】
本発明で使用できるカチオン性水溶性高分子化合物の具体例としては、アミノ基変性ポリビニルアルコール、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、カチオン化ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられ、特にアミノ基変性ポリビニルアルコール、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドが好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせても用いてもよい。
【0022】
本発明で使用できるノニオン性水溶性高分子化合物の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられ、特にポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせても用いてもよい。
【0023】
上記水溶性高分子化合物の分子量は、5000以上が好ましく、より好ましくは20000以上である。使用量は、少なすぎると粒子の分散安定性が悪いために重合後の重合体粒子の凝集物が生じてしまう一方、多すぎると重合体粒子の吸湿性が大きくなる原因となるので、重合性モノマー100質量部に対して、0.01〜1.0質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましい。
【0024】
本発明における(A)の化合物のソープフリー重合により得られるアクリル系樹脂としては、アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートを主要な成分として含有するものであり、さらにこれらの成分が30〜90モル%で、かつ官能基を有するビニル単量体成分を70〜10モル%を共重合したものが好ましい。
【0025】
アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートのアルキル基の例としては、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0026】
アルキルアクリレートあるいはアルキルメタクリレートと共重合する官能基を有するビニル系単量体は、反応性官能基、自己重合性官能基、親水性基などの官能基を有する化合物類が使用できる。
【0027】
ビニル系単量体の具体的例としては、(1)アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩あるいは無水マレイン酸、(2)ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、これらのスルホン酸のナトリウムなどの金属塩、アンモニウム塩、(3)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド、ウレイドビニルエーテル、β−ウレイドイソブチルビニルエーテル、ウレイドエチルアクリレート、(4)ジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、それらのアミノ基をメチロール化したり4級化したもの、(5)β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート、β−ヒドロキシビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、(6)グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0028】
さらに本発明に用いるソープフリーにより得られるアクリル系樹脂は、上記以外に次に示すような化合物を共重合成分として併用してもよい。すなわち、アクリロニトリル、スチレン類、ブチルビニルエーテル、マレイン酸モノあるいはジアルキルエステル、フマル酸モノあるいはジアルキルエステル、イタコン酸モノあるいはジアルキルエステル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0029】
ソープフリー重合に用いる重合開始剤としては、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2′−アゾビス[2−[N−(4−クロロフェニル)アミジン]プロパン]二塩酸塩、2,2′−アゾビス[2−(N−ベンジルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2′−アゾビス[2−(N−アリルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2′−アゾビス[2−[N−(2−ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン]二塩酸塩等があり、これらの1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0030】
(B)の化合物のフッ素系樹脂撥水撥油剤としては、固体表面の表面エネルギーを著しく低下させ、高度の撥油・撥水性を発現する、パーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキル基等を含むフッ素樹脂であることが好ましい。具体的にはパーフルオロアルキル基やパーフルオロポリエーテル基を含有するアクリルモノマーと、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレート等のモノマーと共重合したアクリル系樹脂やパーフルオロアルキル基を含有するウレタン系樹脂等が挙げられ、界面活性剤により乳化重合させた水性エマルジョンや、親水性基を分子内に導入した水溶性あるいは水分散性のものである。かかる親水性基としては、カルボキシル基、水酸基、アミド基もしくは置換アミド基、アミノ基等が挙げられる。
【0031】
市販されているフッ素系樹脂撥水撥油剤の代表的なものとしては、アサヒガードAG−E061、AG−E081、AG−E082、AG−E092、AG−E400、AG−E500D、AG−E060があり、AGC化学品カンパニー旭硝子株式会社が製造し、明星化学工業株式会社が販売している。またユニダインTG−5521、TG−5601、TG8711、TG−470B、TG−500S、TG−580、TG−581、TG−658、TG−9011が、ダイキン工業株式会社より販売されている。
【0032】
上記した(A)および(B)の化合物の中でも、水溶性フッ素樹脂撥水撥油剤が、本発明の活性光線硬化型インク組成物の接触角を高くし本発明の画像鮮鋭性向上効果がさらに高くなるために特に好ましい。
【0033】
インク保持層には、上記(A)又は(B)の化合物の他に、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、デキストラン、デキストリン、カラギーナン、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等の親水性バインダーを単独又は2種類以上併用することも可能である。
【0034】
本発明においては、インク保持層に親水性バインダーを含有する際には、インク保持層の吸水量が1.0g/m以下になるよう硬膜剤を含有し親水性バインダーによる吸水量を抑制することが好ましい。硬膜剤の添加量は、好ましくは親水性バインダーに対し0.5〜10.0質量%であり、さらに好ましくは2.0〜10.0質量%である。
【0035】
また本発明の効果が損なわれない範囲で、インク保持層には公知の有機微粒子、無機微粒子、帯電防止剤、色剤等を適宜用いることができる。
【0036】
インク保持層の塗布量は、非吸収性基材面を完全に被覆でき、吸水量を1.0g/m以下にすることができれば特に制限はないが、好ましくは0.05〜8g/m、さらに好ましくは0.05〜3g/mである。インク保持層の塗布量が多くなるとカール性が悪化するため好ましくない。吸収性基材を使用した場合やインク吸収層の上にインク保持層を塗布した場合、本発明のインク保持層と同等の吸水量を得るためには、基材面やインク吸収層を完全に被覆する必要があり、この場合、非常に多くのインク受理層の塗布量が必要となり、カール性が著しく悪化するため好ましくない。
【0037】
本発明において、インク保持層を設ける際の塗布方法は特に限定されないが、スライドビードコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、グラビアコーター等の塗布装置を単独および組み合わせて使用できる。
【0038】
本発明の非吸収性基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、ゴム類、紙と樹脂フィルムを貼り合わせたもの、基紙の両面にポリオレフィン樹脂層を被覆したポリオレフィン樹脂被覆紙、熱によりシュリンク可能な樹脂フィルム、金属類、ガラス類等の活性光線硬化型インク組成物を吸収しない基材を適宜使用することができる。これらの非吸収性基材の厚みは特に制限がなく、プリンターで印字可能なものであれば適宜使用できる。
【0039】
非吸収性基材のインク保持層が塗設される側には、基材とインク保持層との接着性とインク保持層の塗布性の観点より下塗り層を設けるのが好ましい。この下塗り層は、インク保持層が塗設される前に、予め非吸収性基材の表面に塗布乾燥されたものである。この下塗り層は、皮膜形成可能なポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、デキストラン、デキストリン、カラギーナン、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等の親水性ポリマーや、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂ラテックス等を主体に含有する。これら下塗り層の付着量は、10〜500mg/mが好ましく、20〜300mg/mがより好ましい。下塗り層の塗布方法は特に制限はなく、公知の塗布方法を適宜使用できる。
【0040】
本発明における、活性光線硬化型インクジェット記録用メディアは、前述したサイン&ディスプレイ、看板、印刷用途等に好適に用いられるが、透明PET基材を使用したものは、例えば特開平11−10826号公報に記載されているような凹版、凸版、平版等の製版用版下フィルムとしても使用できる。またインクジェット印字を行った後、非画像部の不感脂化処理を行い平版印刷版原版として使用することも可能である。このような不感脂化処理に用いる処理液としては、例えば特開平5−289341号公報、特開平7−56349号公報、特公昭45−29001号公報、特公昭61−28987号公報等に記載される無機微粒子を含有する処理液や、特公昭56−41992号公報に記載されるコロイド状微粒子と吸湿性ポリオールを含有する処理液等が挙げられる。これら処理液の版面への付与は、脱脂綿等に該処理液を含浸させて版面にくまなく与えるハンドエッチングを行う方法、一定量の該処理液をバーコーターにて塗布する方法、該処理液を貯留させた液浴に浸漬させてロール対により余剰の処理液を絞液するようなエッチングコンバーターを用いる方法等が適用できる。
【0041】
製版用版下フィルムとして使用する場合は、透過濃度が高く画像鮮鋭性の良好であるため、該製版用版下フィルムを使用して印刷版を作製し印刷用紙に印刷した時に高い画像鮮鋭性の最終印刷物が得られる。また、平版印刷版原版として使用する場合は、これを用いて印刷用紙に印刷した時に高い画像鮮鋭性の最終印刷物が得られる。
【0042】
本発明における活性光線硬化型インク組成物としては、少なくとも重合開始剤、重合性化合物、および色剤を含んで組成されており、γ線、β線、電子線、可視光線、赤外線、紫外線(UV)等の活性光線の照射により重合開始剤が触媒として作用することに伴い重合性化合物の重合反応によって硬化・定着する性質を有する。活性光線の中でも紫外線(UV)が反応性や安全性の観点より好適に用いられる。
【0043】
活性光線硬化型インク組成物には、ラジカル重合開始剤とラジカル重合性化合物によるラジカル重合系インク組成物と、カチオン重合開始剤(光酸発生剤)とカチオン重合性化合物によるカチオン重合系インク組成物に大別されるが、その双方の活性光線硬化型インク組成物を単独又は組み合わせて本発明に適応可能である。
【0044】
ラジカル重合開始剤としては、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びにアルキルアミン化合物等の公知の化合物が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて使用することができる。
【0045】
カチオン重合開始剤としては、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C塩、PF塩、AsF塩、SbF塩、CFSO塩、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、および鉄アレン錯体等の化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される公知の化合物を用いることができる。
【0046】
本発明におけるこれら重合開始剤は単独又は組み合わせて使用することができる。これらのラジカル重合開始剤は、重合性化合物100質量部に対して好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部の範囲で活性光線硬化型インク組成物中に含有する。
【0047】
ラジカル重合性化合物としては、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等を適宜使用できる。またこれらを単独もしくは組み合わせて使用することができる。
【0048】
ラジカル重合性化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸およびそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等の公知のラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0049】
カチオン重合性化合物としては、カチオン重合開始剤(光酸発生剤)から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、例えば、特開平6−9714号公報、特開2001−31892号公報、特開2001−40068号公報、特開2001−55507号公報、特開2001−310938号公報、特開2001−310937号公報、特開2001−220526号公報などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などの公知の光カチオン重合性モノマーを使用することができる。
【0050】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、脂肪族エポキシドなどが挙げられ、芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0051】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロヘキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
【0052】
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0053】
本発明における色材としては特に制限はないが、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能せず活性放射線による硬化反応の感度を低下させず、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料色剤および油溶性染料色剤が好ましく、公知の色剤から適宜選択して使用することができる。また、本発明においては、特開2009−227822号公報に記載されているマイクロカプセル化顔料色剤も使用可能である。これらの色剤は、単独又は組み合わせて使用が可能であり、重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.1〜15質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部の範囲で活性光線硬化型インク組成物中に含有する。
【0054】
本発明の活性光線硬化型インク組成物には、前記の重合開始剤、重合性化合物、色材の他に、必要に応じて、重合開始剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる等の作用を有する公知の増感剤、保存性を高めるための重合禁止剤、界面活性剤、マット剤、粘性調整のための有機溶剤等を含有することができる。
【0055】
本発明に用いる活性光線硬化型インクジェット記録装置としては、特に制限はなく市販のインクジェット記録装置が使用できるが、解像度が1200dpiを超える高解像度の記録装置において本発明の効果が顕著に得られる。本発明に用いる活性光線硬化型インクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性光線源を有することが好ましい。インク供給系は、例えば、本発明の上記インク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。
【0056】
活性光線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等や、紫外線光硬化型インクジェットには、水銀ランプ、メタルハライドランプ、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)を用いることが可能である。特に紫外線源を要する場合、UV−LEDおよびUV−LDを使用することが環境面から好ましい。
【0057】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。なお、部とは固形分あるいは実質成分の質量部を表す。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
<非吸収性基材の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)の1:1混合物をカナディアンスタンダードフリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤とアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5質量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1質量%、カチオン化澱粉を対パルプ2質量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5質量%添加し、水で希釈して0.2質量%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、乾燥調湿して支持体の基紙とした。抄造した基紙の印字面側に密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン樹脂に対して、10質量%のアナターゼ型二酸化チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ30μmになるように押出し、微粗面加工されたクーリングロールで冷却しながら、インク保持層塗布面側の樹脂被覆層を設けた。反対面側には密度0.962g/cmの高密度ポリエチレン樹脂70部と密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン樹脂30部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ25μmになるようにクーリングロールで冷却しながら樹脂被覆層を設けた。
【0059】
上記耐水性支持体のインク保持層塗布面側に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/mとなるように塗布乾燥して実施例1の非吸収性基材を作製した。
【0060】
<下塗り層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0061】
上記非吸収性基材に下記組成のインク保持層塗布液1を固形分量が0.8g/mになるようにスライドビード塗布装置で塗布し、5℃30秒間冷却後、40℃10%RHで乾燥終了点まで乾燥して実施例1の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0062】
<インク保持層塗布液1>
ソープフリー重合アクリル系樹脂(DIC(株)製、SFC−571) 60部
アルカリ処理ゼラチン(新田ゼラチン(株)製) 40部
エポキシ系架橋剤(ナガセ化成(株)製、デナコールEX−521) 3部
固形分濃度が5質量%になるように水で調整した。
【0063】
(実施例2)
実施例1のインク保持層塗布液1を下記インク保持層塗布液2に変更する以外は、実施例1と同様にして実施例2の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0064】
<インク保持層塗布液2>
ソープフリー重合アクリル系樹脂((株)イーテック製、AE986E) 60部
アルカリ処理ゼラチン(新田ゼラチン(株)製) 40部
エポキシ系架橋剤(ナガセ化成(株)製、デナコールEX−521) 3部
固形分濃度が5質量%になるように水で調整した。
【0065】
(実施例3)
実施例1のインク保持層塗布液1を下記インク保持層塗布液3に変更する以外は、実施例1と同様にして実施例3の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0066】
<インク保持層塗布液3>
フッ素系樹脂撥水撥油剤(カチオン界面活性剤で乳化。旭硝子(株)製、AGE082)
60部
アルカリ処理ゼラチン(新田ゼラチン(株)製) 40部
エポキシ系架橋剤(ナガセ化成(株)製、デナコールEX−521) 3部
固形分濃度が5質量%になるように水で調整した。
【0067】
(実施例4)
実施例1のインク保持層塗布液1を下記インク保持層塗布液4に変更する以外は、実施例1と同様にして実施例4の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0068】
<インク保持層塗布液4>
フッ素系樹脂撥水撥油剤(水溶性タイプ。旭硝子(株)製、AGE060) 60部
アルカリ処理ゼラチン(新田ゼラチン(株)製) 40部
エポキシ系架橋剤(ナガセ化成(株)製、デナコールEX−521) 3部
固形分濃度が5質量%になるように水で調整した。
【0069】
(実施例5)
実施例4のインク保持層塗布量を2.0g/mに変更する以外は、実施例4と同様にして実施例5の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0070】
(実施例6)
実施例4の非吸収性基材を、易接着処理を施した厚さ150μmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルムに変更する以外は、実施例4と同様にして実施例6の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0071】
(実施例7)
実施例4の非吸収性基材を、易接着処理を施した厚さ200μmの塩ビフィルムに変更する以外は、実施例4と同様にして実施例7の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0072】
(実施例8)
実施例1の非吸収性基材を、易接着処理を施した厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルムに変更する以外は、実施例1と同様にして実施例8の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0073】
(実施例9)
実施例4の非吸収性基材を、易接着処理を施した厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルムに変更する以外は、実施例4と同様にして実施例9の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0074】
(実施例10)
実施例1のインク保持層塗布液1を下記インク保持層塗布液5に変更する以外は、実施例1と同様にして実施例10の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0075】
<インク保持層塗布液5>
フッ素系樹脂撥水撥油剤(水溶性タイプ。旭硝子(株)製、AGE060) 40部
アルカリ処理ゼラチン(新田ゼラチン(株)製) 60部
エポキシ系架橋剤(ナガセ化成(株)製、デナコールEX−521) 3部
固形分濃度が5質量%になるように水で調整した。
【0076】
(比較例1)
実施例1の非吸収性基材を、そのまま比較例1の活性光線硬化型インクジェット記録メディアとした。
【0077】
(比較例2)
実施例1のインク保持層塗布液1を下記インク保持層塗布液6に変更する以外は、実施例1と同様にして比較例2の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0078】
<インク保持層塗布液6>
アルカリ処理ゼラチン(新田ゼラチン(株)製) 100部
エポキシ系架橋剤(ナガセ化成(株)製、デナコールEX−521) 8部
固形分濃度が5質量%になるように水で調整した。
【0079】
(比較例3)
実施例1のインク保持層塗布液1を下記インク保持層塗布液7に変更する以外は、実施例1と同様にして比較例3の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0080】
<インク保持層塗布液7>
アクリル系樹脂(アニオン界面活性剤で乳化。(株)イーテック製、AE610H)
60部
アルカリ処理ゼラチン(新田ゼラチン(株)製) 40部
エポキシ系架橋剤(ナガセ化成(株)製、デナコールEX−521) 3部
固形分濃度が5質量%になるように水で調整した。
【0081】
(比較例4)
実施例1のインク保持層塗布液1を下記インク保持層塗布液8に変更する以外は、実施例1と同様にして比較例4の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0082】
<インク保持層塗布液8>
ソープフリー重合ウレタン系樹脂(DIC(株)製、AP20) 60部
アルカリ処理ゼラチン(新田ゼラチン(株)製) 40部
エポキシ系架橋剤(ナガセ化成(株)製、デナコールEX−521) 3部
固形分濃度が5質量%になるように水で調整した。
【0083】
(比較例5)
実施例1の非吸収性基材に下記インク吸収層塗布液を固形分量が3.0g/mになるようにスライドビード塗布装置で塗布し、5℃30秒間冷却後、40℃10%RHで乾燥終了点まで乾燥した。その後インク吸収層上に下記インク保持層塗布液9を固形分量が60mg/mになるようにグラビア塗布装置で塗布し、50℃の加熱空気を吹き付けて乾燥して比較例5の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0084】
<顔料分散液>
水にジメチルジアリルアルミニウムクロライドホモポリマー(分子量:9000)3部と気相法シリカ(平均一次粒子径7nm、比表面積300m/g)100部を添加し予備分散液を作製した後、高圧ホモジナイザーで処理して、固形分濃度20質量%の気相法シリカ分散液1を作製した。なお、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置での測定による気相法シリカの平均二次粒子径は80nmであった。
【0085】
<インク吸収層塗布液>
顔料分散液 103部
ホウ酸 5部
ポリビニルアルコール 23部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
固形分濃度が12質量%になるように水で調整した。
【0086】
<インク保持層塗布液9>
水 92.2部
変性エタノール 5部
ソープフリー重合アクリル系樹脂(DIC(株)製、SFC−571) 2.8部
【0087】
(比較例6)
比較例5のインク吸収層塗布液の固形分量を20g/mに変更する以外は比較例5と同様にして、比較例6の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0088】
(比較例7)
実施例1の非吸収性基材を、実施例1のポリエチレン樹脂組成物を被覆する前の基紙(吸収性基材)に変更する以外は実施例1と同様にして、比較例7の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0089】
(比較例8)
実施例9のインク保持層塗布液4を前記インク保持層塗液7に変更する以外は、実施例1と同様にして比較例8の活性光線硬化型インクジェット記録メディアを作製した。
【0090】
<インク保持層の吸水量>
上記のようにして作製した活性光線硬化型インクジェット記録メディアそれぞれについて、10cm×10cmのサイズに断裁し、20℃のイオン交換水に1分含浸させインク保持層面や裏面に吸収せず付着している水分を濾紙で拭った後と含浸前のメディア質量差よりインク保持層の吸水量を算出した。なお、比較例7は吸水性基材を使用していることより、インク保持層面の反対面を予め粘着テープにてラミネートすることで反対面からの吸水量を排除して測定した。この結果を表1に示す。
【0091】
上記のようにして作製した活性光線硬化型インクジェット記録メディアそれぞれについて、紫外線硬化型インク組成物を用いたUVインクジェットプリンター(ローランドディージー株式会社製、LEC−330)を用いて、1440dpiの高解像度で画像を印字し紫外線照射により硬化させて以下の項目を評価した。
【0092】
<発色性>
前記プリンターを用いて、赤、青、緑、黒インクで印字、硬化させたベタ画像の発色性を下記の基準で目視評価した。この結果を表1に示す。
○:非常に発色性が高い。
△:○に対して発色性がやや劣る。
×:△に対してさらに発色性が劣り問題となるレベル。
【0093】
<画像鮮鋭性>
前記プリンターを用いて、赤、青、緑、黒インクで印字、硬化させた2、4、6、8ポイントの文字および0.1mmのライン&スペース画像の鮮鋭性を下記の基準で目視評価した。この結果を表1に示す。
◎:非常に文字、画像の鮮鋭性が高い。○と比較すると明らかに良好。
○:文字、画像の鮮鋭性が高い。
△:○に対して文字、画像の鮮鋭性がやや劣る。
×:△に対してさらに文字、画像の鮮鋭性が劣る。
【0094】
【表1】

【0095】
表1の結果から、本発明により、発色性が高く、高精細で画像鮮鋭性に優れた活性光線硬化型インクジェット記録用メディアの得られることが判る。
【0096】
実施例8、9および比較例8の記録メディアに、前記プリンターを用いて同ベタ、文字、ライン&スペース画像を印字、硬化させ、印刷版用版下フィルムを得た。この印刷版用版下フィルムを用いて、PS版(富士フイルム株式会社製、Advanced VS)に密着露光し、プロセッサー(富士フイルム株式会社製、PS−1310VIIB)で現像液(富士フイルム株式会社製、DP−7)を用いて現像処理して平版印刷版を作製した。その後、印刷機はHAMADA DU34II(ハマダ印刷機械株式会社製オフセット印刷機)を使用し、インクはニューチャンピオンFグロス墨85N(DIC株式会社製)、給湿液はSLM−OD(三菱製紙株式会社製給湿液)の3質量%水溶液を使用し、印刷開始前にSLM−OD30(三菱製紙株式会社製エッチング液)の25質量%水溶液を使用し版面をくまなく拭き与えた後、印刷用コート紙(三菱製紙株式会社製、パールコート)に印刷を行った。その結果、実施例8、9は比較例8より高い画像鮮鋭性を有する最終印刷物が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性光線硬化型インク組成物を用いてインクジェット方式で印字した後、活性光線により該インク組成物を硬化させる記録方法に用いる、非吸収性基材の少なくとも片面にインク保持層を塗設した記録用メディアであって、該インク保持層が下記(A)又は(B)の化合物の少なくとも1種を含有する非吸収性層であることを特徴とする活性光線硬化型インクジェット記録用メディア。
(A)ソープフリー重合によるアクリル系樹脂
(B)フッ素系樹脂撥水撥油剤
【請求項2】
前記化合物が、水溶性フッ素樹脂撥水撥油剤であることを特徴とする請求項1に記載の活性光線硬化型インクジェット記録用メディア。
【請求項3】
請求項1および請求項2記載の活性光線硬化型インクジェット記録用メディアの非吸収性のインク保持層に、インクジェット方式により活性光線硬化型インク組成物を印字した後、活性光線により該インク組成物を硬化させることを特徴とする活性光線硬化型インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2012−934(P2012−934A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140314(P2010−140314)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】