説明

活性光線硬化型インク組成物、画像形成方法およびインクジェット記録装置

【課題】本発明の目的は、様々な印字環境下においても、文字品質に優れ、色混じり、硬化皺の発生がなく、高精細な画像を常に安定して記録することができる活性光線硬化型インク組成物、とそれを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することである。
【解決手段】重合性化合物と光開始剤を含有する活性光線硬化型インク組成物において、該活性光線硬化型インク組成物が該重合性化合物として、グリシジル基を有する化合物を30質量%以上、70質量%以下含有することを特徴とする活性光線硬化型インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あらゆる記録材料に、様々な印字環境下においても高精細な画像を安定に再現できる活性光線硬化型インク組成物、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作製出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御する記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てが揃って初めて達成されている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップが問題となる。そこで、専用紙と異なる被転写媒体へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後紫外線(UV)光により架橋させるUVインクジェット方式などである。
【0004】
中でも、UVインクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつあり、例えば、特開平6−200204号、特表2000−504778号において、紫外線硬化型インクジェットインクが開示されている。
【0005】
しかしながら、これらのインクを用いたとしても、記録材料の種類や作業環境によって、着弾後のドット径が大きく変化してしまい、様々な記録材料に対して、高精細な画像を形成することは不可能である。
【0006】
また紫外線硬化型インクジェット用インクとして、カチオン重合性化合物を用いたインクが開示されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0007】
このカチオン重合性化合物を用いたインクは、酸素阻害作用を受けることはないが、分子レベルの水分(湿度)の影響を受けやすいといった問題があり、種々の記録材料に対する密着性等、十分強固な画像形成が出来ないという問題があった。
【特許文献1】特開2002−60484号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開2004−66949号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特開2005−320508号公報(特許請求の範囲、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、様々な印字環境下においても、文字品質に優れ、色混じり、硬化皺の発生がなく、高精細な画像を常に安定して記録することができる活性光線硬化型インク組成物、とそれを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.重合性化合物と光開始剤とを含有する活性光線硬化型インク組成物において、該活性光線硬化型インク組成物が該重合性化合物として、グリシジル基を有する化合物を30質量%以上、70質量%以下含有することを特徴とする活性光線硬化型インク組成物。
2.前記グリシジル基を有する化合物が、単官能グリシジル基を有する化合物であることを特徴とする1に記載の活性光線硬化型インク組成物。
3.前記グリシジル基を有する化合物が、芳香族グリシジル化合物であることを特徴とする1または2に記載の活性光線硬化型インク組成物。
4.前記グリシジル基を有する化合物の25℃における粘度が1〜40mPa・sであることを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物。
5.前記活性光線硬化型インク組成物が、前記重合性化合物として、さらにオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする1〜4のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物。
6.前記光開始剤が、オニウム塩であることを特徴とする1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物。
7.前記オニウム塩が、スルホニウム塩であることを特徴とする1〜6のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物。
8.前記スルホニウム塩が、活性光線照射によりベンゼンを発生することを特徴とする1〜7のいずれか1項に記載の記載の活性光線硬化型インク組成物。
9.前記スルホニウム塩が、分子量700以下であることを特徴とする1〜8のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物。
10.インクジェット記録ヘッドより、1〜9のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物を記録材料上に噴射し、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インク組成物が着弾した後、0.001〜1.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
11.ノズルを有するインクジェット記録ヘッドより、1〜9のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物を記録材料上に噴射し、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット記録ヘッドの該ノズルより吐出するインク液滴量が、2〜20plであることを特徴とする画像形成方法。
12.インクジェット記録ヘッドより、1〜9のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物を記録材料上に噴射し、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式のインクジェット記録ヘッドより、該活性光線硬化型インク組成物を噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
13.10〜12のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、活性光線硬化型インク組成物及びインクジェット記録ヘッドを35〜100℃に加熱した後、前記インクジェット記録ヘッドより該活性光線硬化型インク組成物を吐出する機構を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、様々な印字環境下においても、文字品質に優れ、色混じり、硬化皺の発生がなく、高精細な画像を常に安定して記録することができる活性光線硬化型インク組成物、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、重合性化合物と光開始剤を含有する活性光線硬化型インク組成物(以下、単に本発明のインクともいう)において、該重合性化合物として、グリシジル基を有する化合物を30質量%以上、70質量%以下含有する活性光線硬化型インク組成物を用いて形成した画像が、飛躍的に種々の記録材料に対して安定強固な硬化画像が形成でき、吐出安定性および硬化環境(温度、湿度)によらず良好な画像形成ができることを見出した。
【0013】
従来、種々のエポキシ基を有する化合物を含有する活性光線硬化型インク組成物が用いられてきた。しかし、これらのインク組成物は、光重合性組成物の種類や環境(例えば、温度、湿度)により硬化性が変動しやすく、また、吐出が不安定になるという問題も有り、該インク組成物を用いたインクジェット記録により、高精細で強固な画像を形成することは不可能であった。
【0014】
また、グリシジル基を有する化合物を用いた活性光線硬化型インク組成物も知られているが、本発明に係る、グリシジル基を有する化合物の含有量および組成を有する活性光線硬化型インク組成物は知られていない。
【0015】
(重合性化合物)
本発明においては、重合性化合物として、グリシジル基を有する化合物をインク組成物中い30質量%以上、70質量%以下含有させることにより、形成した画像の硬化トラブルの発生がなく、更に吐出安定性に優れたインクジェット画像形成方法が得られる。
【0016】
また、重合性化合物として単官能グリシジル基を含有することにより、インクジェット記録において重要な特性とされる吐出安定性がより良好となり、かつ硬化環境に左右されず、種々の記録材料上に再現性よく高画質かつ強固な画像を形成することができる。
【0017】
また本発明においては、重合性化合物として、芳香族グリシジル基を有する化合物をインク組成物中に30質量%以上、70質量%以下含有させることが吐出安定性、文字品質の面から好ましく、特に単官能芳香族グリシジル基を有する化合物をインク組成物中に30質量%以上、70質量%以下含有させることが好ましい。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
はじめに、本発明に係るグリシジル基を有する化合物について説明する。
【0020】
本発明に係るグリシジル基を有する化合物は、グリシジル基を1つ以上有する有機化合物であり、例えば水酸基を有する化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって製造することができる。
【0021】
水酸基を有する化合物としては、例えばブチルフェノール、1,6−ヘキサンジオール等があげられ、これらとエピクロルヒドリンとの反応によってモノグリシジルエーテル又はポリグリシジルエーテルが得られる。
【0022】
本発明に係る単官能とは、グリシジル基を1つ有することをいい、芳香族グリシジル基とは、芳香族基を有するグリシジル基を有する化合物をいう。
【0023】
本発明に係るグリシジル基を有する化合物としては、単官能であるものが好ましく、また芳香族基を有する化合物が好ましく特に単官能で、芳香族基を有する化合物が吐出安定性、画像品質の面から特に好ましい。これらの中でもさらに、25℃における粘度が1〜40mPa・sである化合物が好ましい。
【0024】
本発明に係る、グリシジル基を有する化合物の例示化合物を以下に記載する。
【0025】
【化1】

【0026】
本発明においては、グリシジル基を末端ではなく内部に有するエポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドを含有することもできる。
【0027】
エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライドにエポキシ基を導入したものであれば、特に制限はなく用いられる。
【0028】
エポキシ化脂肪酸エステルとしては、オレイン酸エステルをエポキシ化して製造されたもので、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が用いられる。また、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、同様に、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等が用いられる。市販されているエポキシ化された植物油としては、例えば、新日本理化株式会社製サンソサイザーE−4030、ATOFINA Chemical社製 Vf7170、Vf7190、Vf5075、Vf4050、Vf7010、Vf9010、Vf9040、Vf7040等が挙げられる。
【0029】
また、本発明においては、更なる硬化性及び吐出安定性の向上のために、少なくとも1種の脂環式エポキシドを含有することが好ましい。
【0030】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロヘキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0031】
本発明の活性光線硬化型インク組成物においては、重合性化合物として、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を含むことが好ましい。
【0032】
本発明で用いることのできるオキセタン化合物としては、オキセタン環を有する化合物のことであり、特開2001−220526号、同2001−310937号等に開示されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。
【0033】
更に、本発明の活性光線硬化型インク組成物は、ビニルエーテル化合物を含有することが好ましく、公知のビニルエーテル化合物を用いることができる。
【0034】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0035】
本発明の活性光線硬化型インク組成物の好ましい構成としては、グリシジル基を有する化合物を30〜70質量%、オキセタン化合物を5〜60質量%、脂環式エポキシドを5〜30質量%、ビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有する構成が挙げられる。
【0036】
(光開始剤)
本発明係る光開始剤は、活性光線の照射により活性光線硬化型インク組成物の硬化を開始しうる化合物であり、オニウム塩が好ましく用いられる。
【0037】
オニウム塩の例示化合物としては、例えば、THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN Vol.71 No.11, 1998年、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)等に記載の光酸発生剤と同様、公知の方法にて容易に合成することができる。
【0038】
オニウム塩としては、吐出安定性向上の観点から、スルホニウム塩であることが好ましい。
【0039】
また、光開始剤としては、logPow(Pow:1−オクタノールと水との間の分配係数)が1.0以上のオニウム塩が好ましい。
【0040】
また、スルホニウム塩が、活性光線照射後にベンゼンを発生することが好ましく、さらに分子量700以下であることが好ましい。
【0041】
本発明においては、更なる硬化性の向上のため、増感剤を併用することが好ましい。
【0042】
増感剤としては、置換基として水酸基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基またはアルコキシ基を少なくとも1つ有する多環芳香族化合物、カルバゾール誘導体及びチオキサントン誘導体から選ばれる少なくとも1種であり、かつ330nmよりも長波長に紫外線スペクトル吸収を有する増感剤が好ましく用いられる。
【0043】
多環芳香族化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体が好ましい。置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1〜18のものが好ましく、特に炭素数1〜8のものが好ましい。アラルキルオキシ基としては、炭素数7〜10のものが好ましく、特に炭素数7〜8のベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基が好ましい。
【0044】
増感剤を例示すると、カルバゾール、N−エチルカルバゾール、N−ビニルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、1−ナフトール、2−ナフトール、1−メトキシナフタレン、1−ステアリルオキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、2−ドデシルオキシナフタレン、4−メトキシ−1−ナフトール、グリシジル−1−ナフチルエーテル、2−(2−ナフトキシ)エチルビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジメトキシナフタレン、1,1′−チオビス(2−ナフトール)、1,1′−ビ−2−ナフトール、1,5−ナフチルジグリシジルエーテル、2,7−ジ(2−ビニルオキシエチル)ナフチルエーテル、4−メトキシ−1−ナフトール、ESN−175(新日鉄化学社製のエポキシ樹脂)またはそのシリーズ、ナフトール誘導体とホルマリンとの縮合体等のナフタレン誘導体、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9−メトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジエトキシアントラセン、9−エトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、9−イソプロポキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、9−ベンジルオキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、9−(α−メチルベンジルオキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(2−カルボキシエトキシ)アントラセン等のアントラセン誘導体、1,4−ジメトキシクリセン、1,4−ジエトキシクリセン、1,4−ジプロポキシクリセン、1,4−ジベンジルオキシクリセン、1,4−ジ−α−メチルベンジルオキシクリセン等のクリセン誘導体、9−ヒドロキシフェナントレン、9,10−ジメトキシフェナントレン、9,10−ジエトキシフェナントレン等のフェナントレン誘導体などを挙げることができる。これら誘導体の中でも、特に、炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していても良い9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体が好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0045】
また、チオキサントン誘導体としては、例えば、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン2−クロロチオキサントン等を挙げることができる。
【0046】
本発明においては、更なる吐出安定性の向上のため、塩基性化合物を併用することが好ましい。
【0047】
塩基性化合物を含有することで、吐出安定性が良好となるばかりでなく、低湿下においても硬化収縮による皺の発生が抑制される。塩基性化合物としては、公知のあらゆるものを用いることができるが、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが挙げられる。
【0048】
塩基性アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のアルコラート(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等)が挙げられる。
【0049】
塩基性アルカリ土類金属化合物としては、同様に、アルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ金属のアルコラート(例えば、マグネシウムメトキシド等)が挙げられる。
【0050】
塩基性有機化合物としては、アミンならびにキノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物などが挙げられるが、これらの中でも、光重合成モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、2−メチルアミノエタノール、トリイソプロパノールアミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0051】
塩基性化合物を存在させる際のその濃度は、重合性化合物の総量に対して10〜1000質量ppm、特に20〜500質量ppmの範囲であることが好ましい。なお、塩基性化合物は単独で使用しても複数を併用して使用してもよい。
【0052】
本発明の活性光線硬化型インク組成物には、上述の活性光線硬化型組成物と共に、各種公知の染料及び/または顔料を含有することが好ましいが、特に顔料を含有することが好ましい。
【0053】
本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
C.I Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、81、83、87、95、109、42、 C.I Pigment Orange−16、36、38、 C.I Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、144、146、185、101、 C.I Pigment Violet−19、23、 C.I Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、60、27、29、 C.I Pigment Green−7、36、 C.I Pigment White−6、18、21、 C.I Pigment Black−7、
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。
【0055】
また、顔料の分散を行う際に、分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としてはAvecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。
【0056】
これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明の活性光線硬化型インクでは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。
【0057】
溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0058】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。本発明のインクにおいては、色材を含有する場合、色材濃度としては、インク全体の1質量%乃至10質量%であることが好ましい。
【0059】
本発明のインクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。また、ラジカル重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0060】
本発明のインクは、25℃における粘度が7〜50mPa・sであることが、硬化環境(温度・湿度)に関係なく吐出が安定し、良好な硬化性を得るために好ましい。
【0061】
本発明の画像形成方法で用いることのできる記録材料としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0062】
これら各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは、素材の特性により大きく異なり、記録材料によってはインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録材料に良好な高精細な画像を形成できる。
【0063】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録材料のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録材料を使用する方が有利である。
【0064】
次に、本発明の画像形成方法について説明する。
【0065】
本発明の画像形成方法においては、上記のインクをインクジェット記録方式により記録材料上に吐出、描画し、次いで紫外線などの活性光線を照射してインクを硬化させる方法が好ましい。
【0066】
(インク着弾後の光照射条件)
本発明の画像形成方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜1.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜0.5秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
【0067】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることが出来る。
【0068】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、かつ、全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0069】
従来、UVインクジェット方式では、インク着弾後のドット広がり、滲みを抑制のために、光源の総消費電力が1kW・hrを超える高照度の光源が用いられるのが通常であった。しかしながら、これらの光源を用いると、特に、シュリンクラベルなどへの印字では、記録材料の収縮があまりにも大きく、実質上使用出来ないのが現状であった。
【0070】
本発明では、1時間あたりの消費電力が1kW以下の光源を用いても、高精細な画像を形成出来、且つ、記録材料の収縮も実用上許容レベル内に収められる。1時間あたりの消費電力が1kW未満の光源の例としては、蛍光管、冷陰極管、LEDなどがあるが、これらに限定されない。
【0071】
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明では、記録材料上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが好ましい。スクリーン印刷分野の活性光線硬化型インクジェット記録では、総インク膜厚が25μmを越えているのが現状であるが、記録材料が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装印刷分野では、前述した記録材料のカール・皺の問題でだけでなく、印刷物全体のこし・質感が変わってしまうという問題が有るため、過剰な膜厚のインク吐出は好ましくない。
【0072】
尚、ここで「総インク膜厚」とは記録材料に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0073】
(インクの加熱及び吐出条件)
本発明の画像記録方法においては、活性光線硬化型インクを加熱した状態で、活性光線を照射することが好ましい。
【0074】
その一つの方法として、インクジェット記録ヘッド及びインクを35〜100℃に加熱し、加熱した状態でインクを記録材料上に噴射することが、吐出安定性の点で好ましい。
【0075】
また、本発明の方法として、インクジェット記録ヘッド及びインクをそれぞれ35〜80℃に加熱した状態で、インクジェット記録ヘッドよりインクを噴射し、更にインクが記録材料上に着弾した後も、35〜80℃に保った状態で、活性光線を照射することが、吐出安定性の点で好ましい。
【0076】
本発明において、インクジェット記録ヘッド及びインクを所定の温度に加熱、保温する方法として特に制限はないが、例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク等のインク供給系や、フィルター付き配管、ピエゾヘッド等を断熱して、パネルヒーター、リボンヒーター、保温水等により所定の温度に加温する方法がある。
【0077】
また、インクが記録材料上に着弾した後、所定の温度に保つ方法としては、例えば、記録材料の保持部にパネルヒーターを組み込む方法や、記録材料搬送部を囲って、温風等で加熱する方法を挙げることができる。
【0078】
活性光線硬化型インクは、温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらその温度を一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0079】
また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜20plであることが好ましい。本来、高精細画像を形成するためには、液滴量がこの範囲であることが必要であるが、この液滴量で吐出する場合、前述した吐出安定性が特に厳しくなる。本発明によれば、インクの液滴量が2〜20plのような小液滴量で吐出を行っても吐出安定性は向上し、高精細画像が安定して形成出来る。
【0080】
次いで、本発明のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について説明する。
【0081】
以下、本発明の記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、図面の記録装置はあくまでも本発明の記録装置の一態様であり、本発明の記録装置はこの図面に限定されない。
【0082】
図1は本発明の記録装置の要部の構成を示す正面図である。記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録材料Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録材料Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0083】
記録材料Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行う。
【0084】
ヘッドキャリッジ2は記録材料Pの上側に設置され、記録材料P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0085】
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行っているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0086】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インク(例えばUV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録材料Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるUVインクは色材、重合性モノマー、開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0087】
記録ヘッド3は記録材料Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録材料Pの他端まで移動するという走査の間に、記録材料Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0088】
上記走査を適宜回数行い、1領域の着弾可能領域に向けてUVインクの吐出を行った後、搬送手段で記録材料Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行いながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行う。
【0089】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3からUVインクを吐出することにより、記録材料P上にUVインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0090】
照射手段4は特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、冷陰極管、熱陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、熱陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。特に波長254nmの紫外線を発光する低圧水銀ランプ、熱陰極管、冷陰極管及び殺菌灯が滲み防止、ドット径制御を効率よく行うことができ好ましい。ブラックライトを照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0091】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0092】
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録材料Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0093】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録材料Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録材料Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0094】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプ又はフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0095】
本発明のインクは、非常に吐出安定性が優れており、ラインヘッドタイプの記録装置を用いて画像形成する場合に、特に有効である。
【0096】
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【0097】
図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色のインクジェット記録ヘッド3を、記録材料Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
【0098】
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側、すなわち、記録材料Pが搬送される方向のヘッドキャリッジ2の後部には、同じく記録材料Pの全幅をカバーするようにして、インク印字面全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。照明手段4に用いられる紫外線ランプは、図1に記載したのと同様のものを用いることができる。
【0099】
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2及び照射手段4は固定され、記録材料Pのみが、搬送されて、インク出射及び硬化を行って画像形成を行う。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0101】
《インク組成物セットの調製》
下記の方法に従って、表1〜6に記載の組成からなるインク組成物セット1〜6および、1C、2Cを調製した。
【0102】
分散剤(PB822、味の素ファインテクノ社製)を3質量部と、表1〜6に記載の各重合性化合物をステンレスビーカーに入れ、60℃のホットプレート上で加熱しながら1時間かけて撹拌、混合して溶解させた。次いで、この溶液に表1〜6に記載の色材を添加した後、直径1mmのジルコニアビーズ200gと共にポリ瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて2時間分散処理を行った。次いで、ジルコニアビーズを取り除き、各光開始剤、増感剤、塩基性化合物、界面活性剤等の各種添加剤を表1〜6に記載の組み合わせで添加し、これをプリンター目詰まり防止のため0.8μmメンブランフィルターで濾過して、インク組成物セット1〜6を調製した。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

【0106】
【表4】

【0107】
【表5】

【0108】
【表6】

【0109】
表1〜6に記載の各インクと各化合物、表示の詳細は、以下の通りである。
【0110】
K:濃ブラックインク
C:濃シアンインク
M:濃マゼンタインク
Y:濃イエローインク
W:ホワイトインク
Lk:淡ブラックインク
Lc:淡シアンインク
Lm:淡マゼンタインク
Ly:淡イエローインク
色材1:C.I.pigment Black 7
色材2:C.I.pigment Blue 15:3
色材3:C.I.pigment Red 57:1
色材4:C.I.pigment Yellow 13
色材5:酸化チタン(アナターゼ型、平均粒径0.20μm)
〔重合性化合物〕
〈グリシジル基を有する化合物〉
以下に実施例で用いた前記例示化合物の番号およびそれに対応する製品を記す。
【0111】
EP−1:EX−146(粘度20mPa・s/25℃、ナガセケムテックス社製)
EP−2:EPICLON 520(粘度16mPa・s/25℃、大日本インキ化学工業社製)
EP−3:エポゴーセーBP(粘度16mPa・s/25℃、四日市合成社製)
EP−4:EPICLON EXA−4880(粘度30mPa・s/25℃、大日本インキ化学工業社製)
EP−5:EX−212(粘度20mPa・s/25℃、ナガセケムテックス社製)
EP−6:EX−121(粘度4mPa・s/25℃、ナガセケムテックス社製)
EP−15:AOE−X68(粘度6mPa・s/25℃、ダイセル化学社製)
〈脂環式エポキシド〉
C2021P:セロキサイド2021P(ダイセル化学社製)
【0112】
【化2】

【0113】
〈その他エポキシド〉
E−4030:サンソサイザー(新日本理化社製)
〈ビニルエーテル〉
【0114】
【化3】

【0115】
〈オキセタン〉
OXT−221:二官能オキセタン(東亞合成社製)
OXT−212:単官能オキセタン(東亞合成社製)
OXT−101:単官能オキセタンアルコール(東亞合成社製)
〈光開始剤〉
SP−1:CPI−100P(トリアリルスルホニウム塩のプロピレンカーボネート50%溶液、サンアプロ社製)
【0116】
【化4】

【0117】
(logPow=3.04、分子量=371〜616)
SP−2:UVI6992(トリアリルスルホニウム塩のプロピレンカーボネート50%溶液、ダウ社製)
【0118】
【化5】

【0119】
(logPow=4.09、分子量=846)
SP−3:TAG382(フェナシル型スルホニウム塩、東洋インキ社製)
【0120】
【化6】

【0121】
(logPow=2.61、分子量=860)
〈塩基性化合物〉
N−1:2−メチルアミノエタノール
N−2:オクタデシルアミン
N−3:トリイソプロパノールアミン
N−4:オクタデシルアミン
〈界面活性剤〉
KF351:側鎖ポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業社製)
X−22−4272:両末端ポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業社製)
〈増感剤〉
DEA:ジエトキシアントラセン
〈分散剤〉
PB822:味の素ファインテクノ社製
《インクジェット画像形成方法》
ピエゾ型インクジェットノズルを備えた図1に記載の構成からなるインクジェット記録装置に、上記調製した各インク組成物セット1〜3、1C、2Cを装填し、表7に記載の各表面エネルギーを有する巾600mm、長さ500mの長尺の各記録材料へ、下記の画像記録を連続して行った。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加温を行った。ピエゾヘッドは、2〜15plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動して、各インクを連続吐出した。各インクが着弾した後、キャリッジ両脇のランプユニットにより、瞬時(着弾後0.5秒未満)に表7に記載の各照射光源より紫外線照射してインクを硬化した。画像記録後に、総インク膜厚を測定したところ、2.3〜13μmの範囲であった。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0122】
次いで、図2に記載のラインヘッド方式のインクジェット記録装置を用い、インク組成物セット4〜6を用いて、同様にして各画像を形成した。また、プラテン部にヒートプレートを設け、各記録材料表面が40℃となるようにヒートプレート温度を調整した。
【0123】
上記2つの方式により、10℃、20%RH(相対湿度)の環境下、23℃、50%RHの環境下及び27℃、80%RHの環境下の3条件で印字を行った。
【0124】
なお、使用した照射光源は、高圧水銀ランプVZero085(INTEGRATION)である。
【0125】
また、各記録材料の略称の詳細は、以下の通りである。
【0126】
OPP(ユポFS):oriented polypropylene(ユポFS)
PET:polyethylene terephthalate
PVC:polyvinyl chioride
《インクジェット記録画像の評価》
上記画像形成方法で記録した各画像について、下記の各評価を行った。
【0127】
〔文字品質の評価〕
Y、M、C、K各色インクを用いて、目標濃度で6ポイントMS明朝体文字を印字し、文字のガサツキをルーペで拡大評価し、下記の基準に則り文字品質の評価を行った。
【0128】
◎:ガサツキなし
○:僅かにガサツキが見える
△:ガサツキが見えるが、文字として判別でき、ギリギリ使えるレベル
×:ガサツキがひどく、文字がかすれていて使えないレベル
〔色混じり(滲み、皺)の評価〕
720dpiで、Y、M、C、K各色1dotが隣り合うように印字し、隣り合う各色dotをルーペで拡大し、滲みの程度を目視観察し、下記の基準に則り色混じりの評価を行った。
【0129】
◎:隣り合うdot形状が真円を保ち、滲みの発生がない
○:隣り合うdot形状はほぼ真円を保ち、ほとんど滲みの発生がない
△:隣り合うdotが少し滲んでいてdot形状が少しくずれているが、ギリギリ使えるレベル
×:隣り合うdotが滲んで混じりあっており、また、重なり部に皺の発生が認められ、使用に耐えない品質である
〔密着性〕
上記作製した印字画像について、全く印字面に傷を付けない試料と、JIS K 5400に準拠して、印字面上に1mm間隔で、縦、横に11本の切れ目を入れ、1mm角の碁盤目を100個作った試料を作製し、各印字面上にセロテープ(登録商標)を貼り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれずに残った印字画像あるいは碁盤目の状況について、下記の基準により評価した。25℃・45%RHで硬化した試料を使用した。
【0130】
○:碁盤目テストでも、印字画像の剥がれが全く認められない
△:碁盤目テストでは若干のインク剥がれが認められるが、インク面に傷を付けなければ剥がれは殆ど認められない
×:両条件共に、簡単にセロテープ(登録商標)での剥がれが認められる。
【0131】
〔吐出安定性〕
未処理のインクジェット用インク組成物およびポリプロピレン製ボトルに入れて70℃で7日間保存した強制劣化処理済みのインクジェット用インク組成物のそれぞれを、インクジェット画像形成方法に従って、インクジェット ノズルより30分間連続して吐出させ、各インクジェットノズルからの射出状態を目視観察し、下記の基準に従って吐出安定性の評価を行った。
【0132】
○:30分連続出射しても、ノズル欠が発生しない
△:30分連続出射でノズル欠がはじないが、わずかにサテライトが発生する
×:30分連続出射で、数カ所以上のノズルでノズル欠が発生する
以上により得られた各評価結果を、表7に示す。
【0133】
【表7】

【0134】
表7より明らかなように、本発明に係る構成からなる活性光線硬化型組成物を用いることにより、比較例に対し、様々な印字環境下においても、あらゆる記録材料に対して、文字品質が優れ、色混じり(滲み、皺)の発生もない高精細な画像を記録することができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0136】
1 インクジェット記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 インクジェット記録ヘッド
31 インク吐出口
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
P 記録材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と光開始剤とを含有する活性光線硬化型インク組成物において、該活性光線硬化型インク組成物が該重合性化合物として、グリシジル基を有する化合物を30質量%以上、70質量%以下含有することを特徴とする活性光線硬化型インク組成物。
【請求項2】
前記グリシジル基を有する化合物が、単官能グリシジル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の活性光線硬化型インク組成物。
【請求項3】
前記グリシジル基を有する化合物が、芳香族グリシジル化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の活性光線硬化型インク組成物。
【請求項4】
前記グリシジル基を有する化合物の25℃における粘度が1〜40mPa・sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物。
【請求項5】
前記活性光線硬化型インク組成物が、前記重合性化合物として、さらにオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物。
【請求項6】
前記光開始剤が、オニウム塩であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物。
【請求項7】
前記オニウム塩が、スルホニウム塩であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物。
【請求項8】
前記スルホニウム塩が、活性光線照射によりベンゼンを発生することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の記載の活性光線硬化型インク組成物。
【請求項9】
前記スルホニウム塩が、分子量700以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物。
【請求項10】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜9のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物を記録材料上に噴射し、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インク組成物が着弾した後、0.001〜1.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
ノズルを有するインクジェット記録ヘッドより、請求項1〜9のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物を記録材料上に噴射し、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット記録ヘッドの該ノズルより吐出するインク液滴量が、2〜20plであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜9のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インク組成物を記録材料上に噴射し、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式のインクジェット記録ヘッドより、該活性光線硬化型インク組成物を噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、活性光線硬化型インク組成物及びインクジェット記録ヘッドを35〜100℃に加熱した後、前記インクジェット記録ヘッドより該活性光線硬化型インク組成物を吐出する機構を有することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−108235(P2009−108235A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283258(P2007−283258)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】