説明

活性成分含有硬膏用包装

【課題】本発明は経皮治療システムを包装するための包装用積層体の形態の包装に関する。
【解決手段】この包装は、少なくともシール性層3とバリア層2を含み、シール性の層には連続した不粘着層4を備える。また、不粘着層4としてシリコーン膜またはシリコーン層を備え、10μmより小さい、好ましくは5μmより小さい厚さを有し、スプレー塗布により製造され、乾燥した形態で存在する。また、シール性層3、不粘着層4、バリア層に加えて、さらなる層1を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質パッチ、特に経皮治療システム用のパッキング材料およびパックに関する。本発明はさらに、このようなパッキング材料およびこのようなパックを製造するための方法、および、本発明のパッキング材料を用いた活性物質パッチを包装するための方法を包含する。
経皮治療システム(TTS)は活性物質または薬剤を含んだパッチであり、そういうものとして市場に導入された。皮膚を介して長時間にわたり薬理学的な活性物質の制御可能な放出を提供する能力のために、それらは、他の薬剤形態に対し様々な利点を有している。
【背景技術】
【0002】
TTSは一般的に、皮膚への付着を可能にするために意図された、感圧接着層を有している。貯蔵中および皮膚への適用の前は、これらの層は、その接着する側を、取り外し可能な保護層で被覆されている。しかしながら、「コールドフロー」の結果として、この層は、特に側エッジ領域において、貯蔵期間中、そしてわずかに上昇した温度においてはかなりの程度、少量の感圧接着材料の発生を予防することまたは完全に予防することができない。これの1つの結果は、TTSがそれらを包む包装の内側に貼り付き、それが今度は包装からの取り外し操作を複雑にし、そして、それがTTSを破壊し得ることであり得る。これは避けられる費用を発生させるのみならず、また、それらの薬剤形態の使用者の間での受け入れを損なう。
【0003】
TTSに好適な包装へのさらなる要求は、それらの環境への放出を防がなければならない揮発性成分、例えば揮発性の活性成分または賦形剤を、TTSがまた含み得るという事実から発生する。同様に、TTSの成分と包装材料との間の反応を排除する必要があり、そしてその逆もまたしかりである。
これらの理由により、TTSは通常、二重の積層から構成されるシールバッグ(sealed bag)として知られるものに包装されている。該積層は、少なくとも2つの、しかし一般的には3つ以上の層を有する。
【0004】
一般に、内側に面する層はシール性(sealable)である。TTSの包装において、エッジのシールを熱を用いて行ない、上部および下部シーリング積層のシール層の間にほぼ均一な接着をもたらすことが極めて一般的である。代替的な可能性は、原則として、コールドシール(cold sealing)であり、例えば水分、溶剤またはその他の接触助剤、例えば知られたコールドシール組成物を用いる。
【0005】
その中のいくつかは揮発性である活性物質または他の成分の損失に対する、要求された不浸透性を実現する目的で、TTSを包装するために用いる従来の包装は、さらにバリア層を備えている。一般的に、これはシール層の次に最内の層である。バリア層は、原則として、例えばポリエチレンテレフタレートなどの拡散型(diffusion-type)ポリマー材料が好適であり得るが、例えば連続した金属層(通常はアルミニウム)で構成されていてもよい。
【0006】
さらに、包装には、例えば紙またはポリマー膜で構成されてもよい、一般的に外側に付着したさらなる層が提供されてもよい。これらの層は、例えば、増強された印刷適性のためであり、引き裂くことによる望まない破壊に対する安全(小児の安全)のためであり、または、美的で魅力的なデザインのためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術から知られているパックの1つの不利益は、パック内に存在するTTSの、パックまたはパッキング材料の内側への完全なまたは部分的な貼り付きを防ぐデバイスが全く欠如していたことである。これは、多くのTTSまたは活性物質パッチが、それらの組成または成分のために、特に感受性が高く、そして、パッキング材料に貼り付く傾向にある事実があるために、問題である。
【0008】
パックの内側への貼り付きは、原則として、内側にシリコーンコーティングを施すことにより防ぐことができるということは事実である。しかしながら、シリコーンはシール性ではないので、製造プロセス中、シールを意図しているパッキング材料のエッジがシリコーン処理されないように保証することが必要である。言い換えれば、これらのパッキング材料には、部分的な、非連続なシリコーン処理しか提供されていない。一方で、これはシリコーンのないエッジを製造する対応する製造プロセスを要求し、もう一方で、TTSを包装するとき、シールされるべきパッキング材料の不粘着性にコートされた領域上に正確に位置決めすることが必要となってくる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この問題を解決するために、本発明は、請求項1の導入部分において特定された一般的特徴を有する包装用積層体の形態のパッキング材料について、シール性の内側層に連続した不粘着コーティングを提供することを提案する。
これは、好ましくは、シール性層に、不粘着コーティングとしてシリコーン膜またはシリコーン層を、例えばシリコーン膜の形態で提供することにより達成される。記載の対策の結果は、シール性層に不粘着性の(または粘着防止性の)表面を与えるということである。不粘着性にコートされた層がシール性であり続けるためには、シリコーン層の厚さは、可能な限り小さくなければならない。驚くべきことに、このようにコートされたシール性層のシールが可能であることが見出された。ただし、シリコーン層の厚さは10μmより大きくなく、好ましくは5μmより小さい。
【0010】
請求項1によると、本発明のパッキング材料は少なくとも2つの層、シール性層および不透性バリア層、を含む包装用積層体を含む。包装用積層体の「シール性層」(シール層とも呼ばれる)は、それから製造されたパックの内壁を形成する層である。この内壁の不粘着性、すなわち、粘着防止性コーティングは、パック内に存在するTTSがパックの内壁に粘着する危険性を軽減する。もし、それにもかかわらず、例えば長期の貯蔵または上昇した温度の結果として、任意のわずかな粘着が生じた場合でも、不粘着性コーティングにより、TTSを破壊せずにはがすことが大いに容易になる。
【0011】
シール層の連続した、つまり、全域の不粘着性コーティングはまた、部分的にしかシリコーン処理しない従来技術のパッキング材料に比べ、特にTTSをパッキング材料の不粘着性にコートした領域上に正確に位置を合わせることが重要でないという事実に鑑みて、製造および包装方法を簡素化する。
【0012】
本発明のパッキング材料のバリア層は、パックするTTSの最適な保護を保証するために、ガス、空気、水蒸気および/または水分に実質的に不透性である。このようなバリア層を製造するために好適な材料、およびシール性層を製造するために好適な材料は、基本的に当業者に知られている。
バリア層及び不粘着性にコートされたシール性層のほかに、包装用積層体の形態の本発明のパッキング材料は、追加の層をさらにまた含んでもよいが、不粘着性内層は常にパックの内壁を形成する。
【0013】
包装用積層体の形態の本発明のパッキング材料の代表的な態様は、図1に描かれている。
図1において、(1)は積層の1つまたは2つ以上の外層を、(2)はバリア層を、(3)はシール層を、そして(4)はシール層に適用する不粘着層または不粘着膜を示す。
【0014】
本発明のパッキング材料は様々な方法で製造することができる。基本的に前記包装用積層体は多層積層を製造するための一般的な方法によって製造することができる。一般的に、当該方法は連続的である。
1つの好ましい製造方法はシール層を製造するために使用した原料物質を事前に作製したバリア層または中間基材に、剪断、溶剤または熱を用いて塗布することを想定している。これは、様々な知られた塗布技術によって実現することができる。
【0015】
適切な場合には乾燥の後で、シリコーンまたはシリコーン含有溶液を事前に作製したシール層にスプレー法により、または異なる塗布方法を用いて塗布し、該シール層上に不粘着膜または不粘着層を形成する。シリコーンまたはシリコーン含有溶液を前記方法で、包装用積層体の形態の層複合体中に存在するシール層の表面に塗布することも同様に可能である。シリコーン含有溶液が塗布された後に、製造されたシリコーン層中またはシリコーン膜中に存在する溶剤は、好ましくは乾燥により除去される。
【0016】
上記の中間的基材は、シール層と不粘着層の間に位置するさらなる膜を含む。
シリコーンは、1成分シリコーン溶液、2成分シリコーン溶液、シリコーンオイルおよび/または他のポリマー(例えば、ポリブチレン、ポリイソブチレン)とブレンドされたシリコーン含有溶液の形態で使用してもよい。さらに、シリコーンの代わりに、他の不粘着ポリマー、例えばフルオロエチレンポリマーを使用することが可能である。
形成された不粘着層は、好ましくは10μmより小さい厚さを有する。5μmより小さい厚さが特に好ましい。
【0017】
本発明のパッキング材料によってTTSを包装するために、個別化されたTTSをそれぞれ、TTSがシール性層の不粘着性表面の間に位置するように、2つの包装用積層体の間に導入する。次に、包装用積層体のエッジ領域をシールする。その結果、シールバッグが形成され、その内部にTTSがあり、その内部−TTSと接触していてもよい−に不粘着性の表面が提供される。
【0018】
本発明は、TTSまたは活性物質パッチのパッキングに限定されない。本発明の包装用積層体または本発明のパックは、むしろまた、同様の特性を有する他の製品をパッキングするために有利に使用することもできる。これらは、特に、貯蔵期間中、恐らく、上昇した周囲温度の影響の下で、表面粘着性を生じる傾向があるか、または、表面に粘着性成分を生ぜしめる傾向がある製品を含む。これらは、医療製品または薬剤形態物ばかりでなく、また、化粧または衛生製品、そしてまた、食品を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】包装用積層体の形態の本発明のパッキング材料の代表的な態様を示した図である。
【0020】
本発明は図1により図解される。
例により描かれているのは、多層性包装用積層体の形態の本発明のパッキング材料であり、層は断面で示してある。
(1)は、パッキング材料の形態の積層の1つまたは2つ以上の外層を示す。この目的に好適な材料は、例えば、紙、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレン膜である。
【0021】
(2)は、実質的に水蒸気に不透性のバリア層を示す。例えばアルミホイルが、この層に好適である。
(3)は、シール層を示す。好適な原料物質の例は、ポリウレタン、サーリン(Surlyn:登録商標)、PE、PAN、およびバレックス(Barex:登録商標)である。
(4)は、シール層に塗布された不粘着層または不粘着膜を示す。これは、好ましくは、連続したシリコーン膜またはシリコーン層で、厚さが好ましくは5μmより小さいものである。
【0022】
示した積層の裏面、すなわち、層(1)は、シールされた後にシールバッグの外側を形成し、一方シール層(4)は、本発明のパックの内側に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮治療システムをパッキングするための包装用積層体形状のパッキング材料であって、少なくともシール性層とバリア層を含み、該シール性層には連続した不粘着層を具備する、前記パッキング材料。
【請求項2】
シール性層に、不粘着層としてシリコーン膜またはシリコーン層を具備する、請求項1に記載のパッキング材料。
【請求項3】
不粘着層が10μmより小さい、好ましくは5μmより小さい厚さを有する、請求項1または2に記載のパッキング材料。
【請求項4】
不粘着層がスプレー塗布により製造される、請求項1〜3のいずれかに記載のパッキング材料。
【請求項5】
不粘着層が乾燥した形態で存在する、請求項1〜4のいずれかに記載のパッキング材料。
【請求項6】
包装用積層体が、シール性層、不粘着層および不透性バリア層に加えて、さらなる層を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のパッキング材料。
【請求項7】
2層の包装用積層体を気密エッジシールすることにより製造された、経皮治療システムのためのパックであって、包装用積層体のシール性層に、好ましくはシリコーン膜またはシリコーン層の形態の不粘着層が提供されている、前記パック。
【請求項8】
包装用積層体が、請求項1〜6のいずれかに記載のパッキング材料である、請求項7に記載のパック。
【請求項9】
経皮治療システムのためのパッキング材料を製造するための方法であって、ここで連続したプロセスによって、少なくとも1つのシール性層と1つの不透性バリア層が製造され、該方法がシール性層に不粘着コーティングを提供することを含む、前記方法。
【請求項10】
シール層を製造するために用いられた原料物質を、剪断、溶剤または熱を使用して、事前に作成したバリア層に塗布する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
シール性層にシリコーン膜またはシリコーン層が、好ましくはスプレー塗布によって提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
シリコーン層またはシリコーン膜が乾燥している、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
経皮治療システムをパッキングするための方法であって、TTSが上下に位置する2つの包装用積層体の間にシールされ、請求項1〜6のいずれかに記載の包装用積層体を使用すること含み、そして、シール層の不粘着表面が包装されたTTSに対向するようにシールすることを含む、前記方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−188137(P2010−188137A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52730(P2010−52730)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【分割の表示】特願2001−561525(P2001−561525)の分割
【原出願日】平成13年2月10日(2001.2.10)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】