説明

活性炭およびその製造方法

【課題】電気二重層キャパシタの電極材料、特に活物質として用いたとき、高出力、高エネルギー密度の電気二重層キャパシタを得ることが可能な、電極材料として好適な活性炭およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】2〜5nmφの細孔を有し、該細孔の細孔容積が0.2cc/g〜2.0cc/gの範囲にある活性炭において、更に充填材を全質量を基準として1〜30質量%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭に関し、さらに詳しくは特に電気二重層キャパシタの活物質として好適に用いることのできる電極材料として好適な活性炭に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、充放電サイクル特性や急速充電にも優れた小型バックアップ電源として電気二重層キャパシタが検討され、AV機器や通信機器におけるメモリーバックアップ用途を中心に1F以下の小型品が幅広い分野で用いられている。しかし、最近用途の広がりにつれて、より高容量、大電流が要求されるハイブリッド自動車、燃料電池車のモーター駆動、回生エネルギーの蓄電等に適したデバイスとして期待されるようになってきた。しかしながら、現状ではエネルギー密度、出力の観点から十分な電気二重層キャパシタが得られているとは言えず、さらなる改善が求められていた。
【0003】
上記の要求に対し、電極材料である炭素材料を改良する様々な検討がなされている。例えば、電気二重層キャパシタに用いられる電解質イオンは通常溶媒和された状態で1nm程度であることが知られており、電解質イオンを効率的に活性炭表面に蓄電するためには、2nm以上のメソ孔が有効と言われている。メソ孔を効率的に生成する方法として、例えば水蒸気賦活と薬品賦活を組み合わせる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この方法では賦活処理に多大の時間を有する、コスト高になるといった問題を有している。また、この方法で電気二重層キャパシタのエネルギー密度を向上させることは可能であるが、出力を向上させることは困難である。
【0005】
一般に、電気二重層キャパシタの出力を向上させる方法としては、活物質の粒子径を小さくする方法が提案されている。活物質の粒子径を小さくすることは出力向上につながるものの、その比表面積の増大により電解質を分解しやすいなどの欠点を有していた。また、この方法ではエネルギー密度を向上させることが困難であった。
【0006】
一方、電気二重層キャパシタの出力向上の別法として、電極の厚みを薄くする方法が提案されている。しかしながら、この方法においては、出力向上を果たすことができるものの、エネルギー密度が低下するといった問題を有していた。
【特許文献1】特許第3446339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記した従来技術では達成し得なかった、電気二重層キャパシタの電極材料、特に活物質として用いたとき、高出力、高エネルギー密度の電気二重層キャパシタを得ることが可能な、電極材料として好適な活性炭およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、
2〜5nmφの細孔を有し、該細孔の細孔容積が0.2cc/g〜2.0cc/gの範囲にある活性炭において、更に充填材を全質量を基準として1〜30質量%含有することを特徴とする活性炭によって達成される。
【0009】
更に本発明には、2〜5nmφの細孔容積が全細孔容積の40%以上であること、充填材が導電性を有すること、充填材が繊維状であること、繊維状充填材の径が0.5nm〜10μmであること、繊維状充填材の径が0.5nm〜10μmであること、活性炭が、焼成炭をガスおよび/または薬品により賦活されたものであること、ガスに水蒸気および/または二酸化炭素用いることを包含する。
【0010】
本発明の活性炭は、炭素前駆体と充填材とを質量比で99:1〜80:20の範囲となるように混合し、次いで300〜2000℃の条件下で焼成して焼成炭を得て、次いで賦活処理を施すことで製造される。
【0011】
本発明の製造方法では、炭素前駆体としてポリイミド、ポリベンゾアゾール、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、アラミドおよびピッチからなる群から選ばれること、充填材が導電材料、好ましくは、黒鉛ウィスカー、気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブなどの導電性炭素材料やチタン酸カリウムウィスカー、アルミナファイバー等の導電性無機材料であること、賦活処理をガスおよび/または薬品により行うことも包含する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の活性炭は、電解質を有意義に捕集できる2nm以上のメソ孔を有し、かつ従来の活性炭よりも優れた電気伝導性を有するので、従来困難であった高出力・高容量を兼ね備えた電気二重層キャパシタの電極材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の活性炭は、2〜5nmφの細孔を有し、該細孔の細孔容積が0.2cc/g〜2.0cc/gの範囲にある活性炭であり、更に充填材を全質量を基準として1〜30質量%含有する。電気二重層キャパシタに用いられる電解質イオンは、通常溶媒和された状態で1nm程度であることが知られている。このため、電解質イオンを効率的に活性炭表面に蓄電するためには、2nm以上のメソ孔が有効と言われている。本発明の活性炭は、2〜5nmφの細孔を有し、該細孔の細孔容積が0.2cc/g〜2.0cc/gの範囲にある。このため、電気二重層キャパシタの活物質として特に好適に用いることができる。細孔径が2nmφ未満であると、先に述べた如く電気二重層キャパシタに用いられる電解質イオンが、通常溶媒和された状態で1nm程度であることから、十分拡散・吸着することが出来ず好ましくない。一方、5nmφを超えると活性炭の比表面積が著しく低下し、その結果十分な容量を得ることができず好ましくない。また、本発明の活性炭は2〜5nmφの細孔容積が0.2cc/g〜2.0cc/gの範囲にある。2〜5nmφの細孔容積が0.2cc/g未満であると、電気二重層キャパシタの活物質として用いた場合、十分な容量を得ることができず好ましくない。一方、2.0cc/gを超えると活性炭のかさ密度が著しく低下し、結果として単位体積当たりに仕込める活性炭の量が著しく少なくなり、エネルギー密度の低下を引き起こし好ましくない。該細孔容積のより好ましい範囲は0.25cc/g〜1.8cc/gの範囲である。
【0014】
また本発明の活性炭は2〜5nmφの細孔容積が全細孔容積の40%以上であることが好ましい。先に述べたごとく、電気二重層キャパシタに用いられる電解質イオンは、通常溶媒和された状態で1nm程度であることが知られている。
【0015】
このため、電解質イオンを効率的に活性炭表面に蓄電するためには、2nm以上のメソ孔が有効と言われており、2〜5nmφの細孔容積が全細孔容積の40%以上であれば、電解質イオンの吸着を更に効率的に行うことができる。全細孔容積に対する2〜5nmφの細孔容積の比率としては45%以上が更に好ましく、特に50%以上が好ましい。
【0016】
なお、本発明の細孔径分布および細孔容積はユアサアイオニクス株式会社製のNOVA強化データ解析パッケージに付随したBJH法により算出した。細孔径分布、総細孔体積、平均細孔半径等の算出は脱離レグを解析することで実施した。
【0017】
本発明の活性炭は、充填材を全質量を基準として1〜30質量%含有することを最大の特徴とする。
充填材を含有することにより、2〜5nmφの細孔が著しく増加されたものとなる。活性炭の製造方法で後述するが、本発明の活性炭は炭素前駆体と充填材を特定の割合で混合し、次いで300〜2000℃の条件下で焼成して焼成炭を得て、次いで賦活処理を施すことで得られる。2〜5nmφの細孔を著しく増加させる理由は定かではないが、一つの理由として500〜2000℃の条件下で焼成して焼成炭を得る際に、炭素前駆体の収縮が進行する。この際、充填材の近傍でクラックが生じることが原因と推察される。導電性を有する充填材の添加により2〜5nmφの細孔が増加したことは、細孔径分布測定やX線の小角散乱が増加することで確認できる。
【0018】
充填材のもう一つの特徴は、活性炭の電気伝導性を著しく向上させることにある。活性炭の導電性の向上は、該活性炭を電気二重層キャパシタの活物質として用いた場合、出力の向上を実現する。充填材の添加により導電性が向上したことは、例えば炭素材料に一定の電圧を印加した状態で流れる電流値を見積もることで評価することができる。
【0019】
本発明では充填材を全質量を基準として1〜30質量%含有することが好ましい。充填材が全質量の1質量%未満であると、十分な電気伝導性を有する活性炭を製造できないばかりか、2〜5nmφの細孔が著しく低下し、その結果電気二重層キャパシタの活物質として用いた場合、出力と容量の低下を引き起こし好ましくない。一方、充填材の充填量が全質量の30質量%を超えると、活性炭の電気伝導性は向上するものの、容量剤となる質量が低下するため、結果として容量の低下を引き起こし好ましくない。
【0020】
充填材の充填量のより好ましい範囲は、全質量を基準として3〜15質量%である。充填材の充填量の算出方法は特に限定されるものでないが、例えば炭素材料と充填材の熱分解温度が異なることを利用する方法を例示することができる。具体的にはTGA(熱示差重量分析)を用い、窒素雰囲気中で活性炭を熱分解させた際、炭素材料と充填材の分解挙動を追跡することでその充填量を見積もる方法を例示することができる。
【0021】
本発明では充填材として導電性を有する繊維状物質を用いることが好ましい。繊維状である導電性充填材は、活性炭中において導電の点接触の割合を増加させる働きがある。このため、球状の導電性充填材に比べ極少量で導電性を発現させるといった特徴を有する。
【0022】
本発明で使用する繊維状物質の径(繊維径)としては0.5nm〜10μmであることが好ましい。繊維状物質の径(繊維径)が0.5nm未満であっても10μmを超えても、活性炭中での分散性が困難となり好ましくない。活性炭中で十分な分散性を有するためには、50nm〜1μmの範囲にあることが好ましい。
【0023】
また、本発明で使用する繊維状充填材のアスペクト比が2〜1000であることが好ましい。アスペクト比が2未満であると、極少量で十分な導電性を活性炭に持たせることが困難であり好ましくない。一方、1000を超えると活性炭中での分散性が著しく低下し、その結果活性炭の導電性を低下させるために好ましくない。繊維状充填材のアスペクト比のより好ましい範囲は3〜800である。
【0024】
本発明で使用する充填材としては、例えば黒鉛ウィスカー、気相成長法炭素繊維(例えば昭和電工株式会社製「VGCF」等)、カーボンナノチューブなどの導電性炭素材料やチタン酸カリウムウィスカー、アルミナファイバー等の無機材料などを例示するができる。
【0025】
本発明の活性炭は、炭素前駆体と充填材を特定の割合で混合し、次いで300〜2000℃の条件下で焼成して焼成炭を得て、次いで賦活処理を施すことで得られる。
賦活処理としては例えば塩化亜鉛や水酸化カリウムなどを用いる薬品賦活や水蒸気や二酸化炭素を用いる賦活などを例示することが出来る。薬品賦活は一般に2nm以上のメソ孔を空けることができるものの、得られた活性炭の純度が不十分であり、電気二重層キャパシタの電極剤として用いた場合、その耐久性を著しく低下させるといった問題を有していた。また、生産が非常に煩雑でありコストが高くなるといった問題点を有する。
【0026】
一方、水蒸気や二酸化炭素ガスを用いた賦活は容易であり生産コストを低く抑えることが可能であるが、メソ孔を空けることが困難であり2nm未満のミクロ孔が支配的となる。このため、結果として十分な電気二重層容量を得ることが出来ないといった問題を有していた。
【0027】
ところが、本発明の導電性を有する充填材を含有した活性炭は、先に述べた如く充填材の添加効果により2〜5nmφの細孔を有する。このため、本発明では水蒸気や二酸化炭素ガスを用いた賦活により、目的とする活性炭を容易に得ることが出来る。上記事柄から、生産性とコストの関係から水蒸気や二酸化炭素ガスを用いた賦活を採用するのが特に好ましい。
【0028】
本発明のもう一つの目的は、2〜5nmφの細孔を有し、該細孔の細孔容積が0.2cc/g〜2.0cc/gの範囲にあり、更に充填材を全質量を基準として1〜30質量%含有する活性炭の製造方法を提供することにある。
【0029】
本発明の活性炭は、炭素前駆体と充填材とを質量比で99:1〜80:20の範囲となるように混合し、次いで500〜2000℃の条件下で焼成して焼成炭を得て、次いで賦活処理を施すことで得ることができる。本発明で使用する炭素前駆体としては窒素雰囲気下、500℃まで焼成した際に、初期重量の40wt%以上が残存する炭素前駆体を用いるのが好ましい。上記条件で、残存量が初期重量の40%未満であると、炭素前駆体から充分な炭化率で活性炭を得ることができず、好ましくない。
【0030】
より好ましくは、初期重量の50wt%、さらには60%以上が残存するのが好ましい。上記条件を満たす炭素前駆体としては、具体的にはポリイミド、ポリベンゾアゾール、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、アラミドおよびピッチなどを例示することができる。
【0031】
また、導電性を有する充填材としては例えば黒鉛ウィスカー、気相成長法炭素繊維(例えば、昭和電工株式会社製「VGCF」)、カーボンナノチューブなどの導電性炭素材料やチタン酸カリウムウィスカー、アルミナファイバー等の無機材料などを例示することができる。
【0032】
本発明では上記炭素前駆体と充填材とを質量比で99:1〜80:20の範囲となるように混合する。炭素前駆体と充填材との混合比が99:1〜80:20の範囲を逸脱すると、目的とする充填材を全質量を基準として1〜30質量%含有する活性炭を得られないばかりか、電気二重層キャパシタの活物質として用いた場合、十分な容量と出力を得ることが出来ず好ましくない。
【0033】
炭素前駆体と充填材との混練は、特に制限されるものではないが、炭素前駆体が溶剤に溶解している場合には超音波処理が好ましく、炭素前駆体が熱可塑性である場合には例えば一軸式溶融混練押出機、二軸式溶融混練押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどを用いるのが好ましい。これらの中で良好にミクロ分散させるという目的から、同方向回転型二軸式溶融混練押出機が特に好ましい。
【0034】
本発明の製造方法では、炭素前駆体と充填材の混合物を、300〜2000℃の条件下で焼成して焼成炭を得た後、賦活処理を施すのが好ましい。炭素前駆体と充填材の混合物の焼成温度が300℃より低いと、最終的に得られる活性炭の電気伝導性が著しく低くなり、結果として高出力の電気二重層キャパシタ用活物質を得ることができず好ましくない。
【0035】
一方、焼成温度が2000℃を超えると、次行程の賦活処理において十分な比表面積を有する活性炭を得ることが出来ないためいずれも好ましくない。焼成温度としては、350〜1500℃さらには400〜1200℃であることが好ましい。本発明では、300〜2000℃の条件下で焼成して焼成炭に賦活処理を施すのが好ましい。
【0036】
賦活の方法としては、通常の賦活方法、水蒸気や二酸化炭素ガスによる賦活や薬品賦活あるいはこれら二つの方法を組み合わせた方法により製造することができる。
水蒸気または二酸化炭素による賦活の方法は、通常の粒状活性炭の賦活方法であり、水蒸気または二酸化炭素の存在下で700℃〜1500℃の温度で行なわれる。より好ましい温度範囲は、800℃〜1300℃である。
【0037】
賦活処理の時間としては、3〜180分間実施するのが良い。該賦活処理の時間が3分未満であると、比表面積が著しく低下し好ましくない。一方、180分より長時間であると、生産性の低下を引起こすだけでなく、炭化収率を著しく低下させるため好ましくない。
【0038】
薬品賦活としては、薬品を炭素材料と一緒に熱処理することで焼成炭を賦活する方法である。例えば、薬品賦活の一例としてアルカリ賦活を例示することができる。アルカリ賦活法とは、原料に水酸化アルカリや炭酸アルカリを含浸させ、所定の温度域まで等速昇温させることにより活性炭を得る手法である。アルカリ賦活で用いられる賦活剤としては、例えばKOH,NaOH等のアルカリ金属の水酸化物、Ba(OH)等のアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられるが、これらの中でもKOH、NaOHが好ましい。アルカリ賦活する時の条件は、用いる賦活剤により異なるため一概に言えないが、例えばKOHを用いた場合には温度400〜1000℃、好ましくは550〜900℃まで昇温する。アルカリ賦活の処理時間も昇温速度、処理温度に応じて適宜選定すればよいが、550〜900℃で1秒間〜数時間、好ましくは1秒間〜3時間であることが好ましい。
【0039】
賦活剤は通常水溶液の状態として用いられ、濃度としては0.1〜90wt%程度が採用される。賦活剤の水溶液濃度が0.1wt%未満であると、高比表面積の炭化多孔体を製造することができず好ましくない。また、90wt%を超えると、高比表面積の炭素材料を製造することができないだけでなく、炭化収率を低減させるため好ましくない。より好ましくは1〜50wt%である。
【0040】
上記の方法で得た活性炭の材料表面には、アルカリやアルカリ塩などが存在することがある。それゆえ、水洗、乾燥などの処理を行っても良い。本発明では、上記で述べた水蒸気/二酸化炭素賦活またはアルカリ賦活またはこれら二つの組み合わせを実施することで賦活処理を施してもよい。本発明では先に述べた如く充填材の添加効果により2〜5nmφの細孔を有する。このため、本発明では水蒸気や二酸化炭素ガスを用いた賦活により、目的とする活性炭を容易に得ることが出来る。上記事柄から、生産性とコストの関係から水蒸気や二酸化炭素ガスを用いた賦活を採用するのが特に好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明の方法をさらに詳しく具体的に説明する。ただしこれらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
本発明で得られた活性炭の比表面積はユアサアイオニクス株式会社製のNOVA1200を用いて評価した。また、メソ孔の確認は上記測定装置で評価した細孔径分布および理学電機株式会社製のRU−300による広角X線測定装置の小角散乱を見積もることで評価した。活性炭の電気伝導性は、DSCのアルミ測定セル(直径6mm、深さ4mmの円柱セル)に0.007gの活性炭を仕込み、ポテンシオスタットで2Vの電位が印加された4mmの銅板に活性炭を挟み込み、その際流れる電流値を見積もることで電気伝導性を評価した。本発明で使用した導電性を有する充填材の外形は株式会社日立製作所製の走査型電子顕微鏡S−2400観察により評価した。また、活性炭中の充填材の含有量は理学電機株式会社製の熱示差重量分析装置Thermo Plus8120を用い、5℃/分で450℃まで昇温後、60分間保持することで評価した。
【0042】
[実施例1]
炭素前駆体としてメソフェーズピッチAR−HP(三菱ガス化学株式会社製)95部と導電性を有する充填材として「デントールWK」WK200B(大塚化学株式会社製)5部を同方向二軸押出機(株式会社日本製鋼所製TEX30、バレル温度330℃、窒素気流下)で溶融混練して混合物を作成した。
【0043】
なお、「デントールWK」WK200Bを電子顕微鏡観察した結果、繊維径は500nm程度でありアスペクト比はおよそ30〜40程度であった。この混合物を窒素雰囲気下室温から700℃まで5時間かけて昇温し、700℃に到達してから1時間保持した。得られた焼成炭を900℃の炉に仕込み、100℃に沸騰した蒸留水に3L/分のNをバブリングさせ、蒸気圧分の水蒸気を導入して、30分間保持することで活性炭を得た。
【0044】
この活性炭2部と3mmのジルコニアボール100部を80cmのステンレス製装置に仕込み、200rpmで1時間遊星ミリング処理した。得られた活性炭の比表面積は1650m/gであった。また、細孔径分布の測定結果から、2nm未満の細孔容積は0.40cc/g、2〜5nmの細孔容積は全細孔容積の60%の0.62cc/gであった。
【0045】
熱示差重量分析の重量残量から活性炭の全質量に対して16質量%の充填材を含有していることがわかった。
また、DSCのアルミ測定セル(直径6mm、深さ4mmの円柱セル)に0.007gの活性炭を仕込み、ポテンシオスタットで2Vの電位が印加して、4mmの銅板に活性炭を挟み込んだところ150mAの電流値を確認した。
【0046】
[実施例2]
炭素前駆体としてメソフェーズピッチAR−HP(三菱ガス化学株式会社製)90部と導電性を有する充填材として気相成長法炭素繊維「VGCF」(昭和電工株式会社製)10部を同方向二軸押出機(株式会社日本製鋼所製TEX30、バレル温度330℃、窒素気流下)で溶融混練して混合物を作成した。なお、実験に使用した「VGCF」の電子顕微鏡観察の結果、繊維径は200nm程度であり分岐構造を有しており、分岐間のアスペクト比はおよそ30〜50程度であった。この混合物を窒素雰囲気下室温から700℃まで5時間かけて昇温して、700℃で1時間保持した。得られた焼成炭100部に400部の水酸化カリウムと5重量部のイソプロパノールと400部の蒸留水を加えて良くかき混ぜた後に、150℃で水分を飛ばして焼成炭を含むスラリー溶液を得た。このスラリー溶液を室温から800℃まで3時間で昇温して、同温度で1時間保持することで活性炭を得た。この活性炭2部と3mmのジルコニアボール100部を80cmのステンレス製装置に仕込み、200rpmで1時間遊星ミリング処理した。得られた活性炭の比表面積は1600m/gであった。また、細孔径分布の測定結果から、2nm未満の細孔容積は0.39cc/g、2〜5nmの細孔容積は全細孔容積の55%となる0.51cc/gであった。また、熱示唆重量分析の重量残量から活性炭の全質量に対して18質量%の充填材を含有していることがわかった。
【0047】
また、DSCのアルミ測定セル(直径6mm、深さ4mmの円柱セル)に0.007gの活性炭を仕込み、ポテンシオスタットで2Vの電位が印加して、4mmの銅板に活性炭を挟み込んだところ100mAの電流値を確認した。
【0048】
[実施例3]
炭素前駆体として60質量%のフェノール樹脂を含有したメタノール溶液(群栄化学工業株式会社製「レヂトップ」)100部と導電性を有する充填材として気相成長法炭素繊維「VGCF」(昭和電工株式会社製)3部を超音波中で3時間処理することで、「VGCF」が均一分散したフェノール樹脂含有メタノール溶液を作成した。
なお、実験に使用した「VGCF」の電子顕微鏡観察の結果、繊維径は200nm程度であり分岐構造を有しており、分岐間のアスペクト比はおよそ30〜50程度であった。この混合液を窒素雰囲気下室温から700℃まで5時間かけて昇温して、700℃で1時間保持した。
【0049】
得られた焼成炭を900℃の炉に仕込み、100℃に沸騰した蒸留水に3L/分のNをバブリングさせ、蒸気圧分の水蒸気を導入して、30分保持することで活性炭を得た。この活性炭2部と3mmのジルコニアボール100部を80cmのステンレス製装置に仕込み、200rpmで1時間遊星ミリング処理した。得られた活性炭の比表面積は1320m/gであった。また、細孔径分布の測定結果から、2nm未満の細孔容積は0.31cc/g、2〜5nmの細孔容積は全細孔容積の40%となる0.21cc/gであった。熱示差重量分析の重量残量から活性炭の全質量に対して25質量%の充填材を含有していることがわかった。
また、DSCのアルミ測定セル(直径6mm、深さ4mmの円柱セル)に0.007gの活性炭を仕込み、ポテンシオスタットで2Vの電位が印加して、4mmの銅板に活性炭を挟み込んだところ150mAの電流値を確認した。
【0050】
[比較例1]
実施例1において、「デントールWK」WK200B(大塚化学株式会社製)を用いなかったこと以外は同様の操作を行って活性炭を作成した。得られた活性炭の比表面積は1300m/gであった。また、細孔径分布の測定結果から、2nm未満の細孔容積は0.31cc/g、2〜5nmの細孔容積は全細孔容積の30%となる0.15cc/gであった。
DSCのアルミ測定セル(直径6mm、深さ4mmの円柱セル)に0.007gの活性炭を仕込み、ポテンシオスタットで2Vの電位が印加して、4mmの銅板に活性炭を挟み込んだところ0.1mAの電流値を確認した。
【0051】
[比較例2]
実施例3において、気相成長法炭素繊維「VGCF」(昭和電工株式会社製)を用いなかったこと以外は、同様の操作を行って活性炭を作成した。得られた活性炭の比表面積は1400m/gであった。また、細孔径分布の測定結果から、2nm未満の細孔容積は0.57cc/g、2〜5nmの細孔容積は全細孔容積の29%となる0.24cc/gであった。
DSCのアルミ測定セル(直径6mm、深さ4mmの円柱セル)に0.007gの活性炭を仕込み、ポテンシオスタットで2Vの電位が印加して、4mmの銅板に活性炭を挟み込んだところ0.1mAの電流値を確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2〜5nmφの細孔を有し、該細孔の細孔容積が0.2cc/g〜2.0cc/gの範囲にある活性炭において、更に充填材を全質量を基準として1〜30質量%含有することを特徴とする活性炭。
【請求項2】
2〜5nmφの細孔容積が全細孔容積の40%以上である、請求項1記載の活性炭。
【請求項3】
該充填材が導電性を有する繊維状物質である、請求項1記載の活性炭。
【請求項4】
該繊維状物質の径が0.5nm〜10μmである、請求項3記載の活性炭。
【請求項5】
該繊維状物質のアスペクト比が2〜1000である、請求項3記載の活性炭。
【請求項6】
炭素前駆体と充填材とを質量比で99:1〜80:20の範囲となるように混合し、次いで300〜2000℃の条件下で焼成して焼成炭を得、さらに賦活処理を施す、2〜5nmφの細孔を有し、該細孔の細孔容積が0.2cc/g〜2.0cc/gの範囲にあり、更に充填材を全質量を基準として1〜30質量%含有する、活性炭の製造方法。
【請求項7】
該炭素前駆体がポリイミド、ポリベンゾアゾール、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、アラミドおよびピッチからなる群から選ばれる少なくとも一種の高分子化合物を用いる、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
賦活処理を、焼成炭をガスおよび/または薬品により処理することで行う、請求項6記載の活性炭の製造方法。
【請求項9】
ガスが、水蒸気および/または二酸化炭素である、請求項8記載の活性炭の製造方法。
【請求項10】
充填材として、導電性材料を用いる、請求項6記載の製造方法。
【請求項11】
導電性材料が導電性炭素材料および/または導電性無機材料である、請求項10記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−321693(P2006−321693A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147892(P2005−147892)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】