説明

活性物質の標的化送達用ナノ粒子

本発明はポリマベ−スナノ粒子と、前記ナノ粒子に非共有結合的に固定された第1の部分であって、当該第1の部分の少なくとも一部が前記ナノ粒子に埋め込んだ疎水性/親油性セグメントと、前記ナノ粒子の外側表面に露出したマレイミド化合物を具える第2の部分と、を具えるリンカを具える、送達システムに関する。一実施例によれば、この送達システムは、薬物を具える。本発明によるリンカの特別な例は、オクタデシル−4−(マレイミドメチル)シクロヘキサン−カルボン酸アミド(OMCCA)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送出媒体として使用する高分子ナノ粒子に関する。
【0002】
従来技術リスト
本発明の技術分野における現状を述べるのに適していると考えられる従来技術リストを下記に示す。
Takeshi Matsuya et al. Anal. Chem. 75: 6124-6132 (2003):
Terro Soukka et al. Clinical Chemistry 47(7): 1269-1278 (2001):
Terro Soukka et al. Anal. Chem. 73: 2254-2260 (2001);
Arai K. et al. Drug Des. Deliv. 2(2): 109-120 (1987);
Harma H. et al. Luminescence 15(6): 351-355 (2000);
Olivier JC. et al. Pharm. Res. 19(8): 1137-1143 (2002);
Oliver JC. NeuroRx. 2(1): 108-119 (2005);
Lu ZR. et al. Nature Biotechnology 17: 1101-1104 (1999);
Gref R. et al. Biomaterials 24(24): 4529-4337 (2003);
Nobs L. et al. Eur. J. Pharm. Biopharm. 58(3): 483-490 (2004);
Ezpeleta I. et al. Int. J. Pharm. 191(1): 25-32 (1999);
Lundberg BB, et al. Int. Pharm. Pharmacol. 51(10): 1099-105 (1999);
US2005/042298;
WO1987/07150;
WO2003/088950;
US6,221,397;
WO2005/077422
【0003】
発明の背景
薬物や遺伝子などの活性物質を組織に的中させる能力は、臨床治療における目標として最も求められているものの一つである。「能動ターゲッティング」という用語で呼ばれる一つのアプローチは、特定の細胞に的中させるための、コロイド表面への特定のリガンドの結合に関する。この結果、リガンドはターゲット部位上の表面エピトープまたはレセプタに選択的に結合する[Moghimi SM, et al. Pharmacol Rev. 53(2): 283-318(2001)]。
【0004】
もう一つのアプローチは、特に癌の治療用のモノクロナール抗体(MAb)の認可である[Allen TM. Nat. Rev Cancer. 2(10): 750-63 (2002)]。癌の治療にMAbを使用することが、正常細胞を節約しつつ癌細胞に的中させる手段として低減されている。MAbsは、リポゾーム(免疫リポゾームを形成するため)、エマルジョン(免疫エマルジョンを形成するため)、ナノ粒子(免疫ナノ粒子を形成するため)などのコロイド状キャリアに結合されている。これらの免疫結合体は、抗体によって確実に抗原部位に特別に認識するようにして、コロイド送達システムによる様々な細胞障害性作用物質を、アクセスしにくい病理学上の標的組織である過剰発現腫瘍抗原近くに放出する。
【0005】
免疫リポゾームについては、すでに述べられている[Park JW, et al. J Cont Rel. 74(1-3): 95-113(2001); Park JW et al. Clin Cancer Res. 8(4): 1172-81 (2002); Nam SM, et al. Oncol Res. 11(1): 9-16(1999)]。更に、ポリエチレングリコール(PEG)結合免疫結合性フラグメントを有する免疫リポゾームは、持続性循環時間と、生体内での標的固形腫瘍への高溢出とを顕在化させることが示されている[Maruyama K, et al. FEBS Lett. 413(1): 177-80(1997)]。しかしながら、これらは、物理化学的に不安定であることがわかった。更に、リポソームのこれらのキャリアは、ほとんどが、有意な投与量の親油性/疎水性の活性成分を組み込むことができず、生じうる臨床上の有効性が制限されることがわかっている。
【0006】
免疫エマルジョンについても記載がある。例えば、Lundberg BB et al.は、ポリ(エチレン グリコール)ベースのヘテロ二官能性結合剤を用いた抗B細胞リンパ腫モノクロナール抗体(LL2)の乳脂肪剤小球表面への結合と、この薬物キャリアとしての同結合剤の使用について述べている[Lundberg BB, et al. J Pharm Pharmacol. 51(10): 1099-105 (1999)]。更に、このような脂質性エマルジョンは、著しく低い水溶性を示す非常に親油性の高い薬剤のみしか組み込むことができない。無限希釈を行うときに潜在的な中程度に親油性の癌化学療法剤を油滴内に保持することの困難性が、これらの剤形の治療用途を制限している。例えば、パクリタキセルは、静脈注射の後脂質性エマルジョンから迅速に放出されることがわかっている[Lundberg BB. J Pharm Pharmacol. 49(1): 16-20(1977)]。
【0007】
油性エマルジョンの使用についての更なる研究には、正の水中油型エマルジョンの形成が含まれる。このエマルジョンは、自然な状態で油水界面にあるフリーNH基を提示する化合物と、この化合物がヘテロ二官能性リンカによって抗体に結合されている抗体とを具え、NH基が抗体のヒンジ領域においてSH基に結合している[Benita S. et al. International Patent Application Publication No. WO2005/077422]。
【0008】
過去数十年にわたって、有効な薬剤送達システムとして、生物分解可能で生体適合性のあるナノ粒子(NPs)の開発に多大な興味がもたれていた。従来のNPsは、細網内皮系(RES)によって静脈内(iv)投与後に迅速なクリアランスを行う。粒子表面に固定されて水性相を向いている、MWが2000Da乃至5000Daの範囲の親水性リニアポリエチレングリコール(PEG)分子が、立体安定性を与え、オプソニン化を防ぎ、RESによるNPsの生体内への取り込みをおこなう。これらのステルスNPsは、持続性のあるプラズマ循環時間を示している[Avgoustakis K, et al. Int J Pharm. 259(1-2): 115-27(2003); Li Y, et al. J Control Release. 71(2): 203-11 (2001); Matsumoto J, et al. Int J Pharm. 185(1): 93-101 (1999); Stolnik S, et al. Pharm Res. 11(12): 1800-8(1994)]。
【0009】
NPsは、ワクチン、ペプチド、たんぱく質、オリゴヌクレオチド、及び抗癌剤など、親水性があり、親油性が中程度の様々な薬物を包括することができる[Soppimath KS, J Control Release. 70(1-2): 1-20 (2001); Brigger I, et al. Adv Drug Deliv Rev. 54(5)]。NPsは、効力のある薬物の治療指標を改善しつつ、その副作用を穏やかに低減するのに好適な手段であるため、抗癌剤をNPsにカプセル化することは広く研究されている。NPsに含まれている強い抗癌剤のうち、ドキソルビシン[Soma CE, et al. J Control Release. 68(2): 283-9 (2000)]と、パクリタキセルNPs[Xu Z et al. Int J Pharm. 288(2): 361-8(2005); Dong Y, Feng SS. Biomaterials. 25(14): 2843-9(2004)]は、有望な結果を示している。
【0010】
臨床的な潜在能力が高いにもかかわらず、MAb(免疫ナノ粒子)を介してNPsを器官に命中させるというアプローチは、完全には開発されていない。悪性細胞中に過剰発現している抗原に対して、特定のリガンドを介して抗癌剤を装填したNPsを選択的に命中させる能力は、免疫ナノ粒子(免疫NPs)製剤の治療効果を改善するとともに、化学療法に関連する不利な副作用を低減することができるであろう。
【0011】
生物分解可能なNPsへのMAbの共有結合を取り扱った文献がいくつかあり、生体外および生体内実験を取り扱った文献もある[Nobs L, et al. J Pharm Sci. 93(8): 1980-92 (2004)]。これらの文献の一つでは、抗トランスフェリン受容体MAbがペグ化されたポリ(乳酸)NPsに結合している[Olivier JC, et al. Pharm Res. 19(8): 1137-43(2002)]。その他の文献は、ビオチン−アビジン相互作用を介したMAbのポリ(乳酸)NPsへの結合を示している[Nobs L, et al. Int J Pharm. 250(2): 327-37 (2003); Nobs L, et al. Eur J Pharm Biopharm. 58(3): 483-90(2004)]。
【0012】
発明の概要
本発明は、抗体などの標的物質をポリマベースナノ粒子(好ましくは治療用活性物質を具える粒子)に結合させる単純なアプローチの開発に基づくものであり、標的物質を粒子形成ポリマに結合させる事前試薬を必要としない。このことは、粒子のポリママトリックスに非共有結合している親油性部分と、続くステップで標的物質を結合することができるマレイミド化合物を具える第2の部分とを有する二官能性リンカの使用によって達成される。この新規なアプローチによれば、異なる各標的物質に、異なるナノ粒子成分を調整する必要がなくなり、必要に応じて様々な標的物質に単純にリンカを結合させることで様々な標的システムを作るのに使用することができる「ユニバーサル」なナノ粒子リンカ(細胞毒性薬などの活性物質を伴う)を形成することが可能である。
【0013】
したがって、第1の態様によれば、本発明は:
(i)ポリマナノ粒子と;
(ii)前記ナノ粒子に非共有結合した第1の部分であって、当該第1の部分の少なくとも一部が前記ナノ粒子に埋め込まれている疎水性セグメントを具える第1の部分と;前記ナノ粒子の外表面に露出したマレイミド化合物を具える第2の部分と;を具えるリンカ;
を具える送達システムを提供する。
【0014】
このナノ粒子は、好ましくは、当該粒子に担持された薬剤などの活性物質と、前記粒子に埋め込んだ、浸透させた、あるいはカプセル化した、または前記粒子の表面に吸収させた、造影剤、及び造影剤との組み合わせを具える。
【0015】
上記ナノ粒子リンカは、このリンカが標的物質と共有結合するのに適しているため、続く最終標的製品の製造に使用することができる。
【0016】
一の好ましい実施例によれば、このナノ粒子は、各々が前記マレイミド化合物に共有結合した一又はそれ以上の標的物質を具える。
【0017】
本発明は、また、本発明の送達システムを具える組成物を提供する。一の実施例によれば、この組成物は薬学的に許容可能なキャリアを具える。その他の実施例によれば、この組成物は、前記ナノ粒子に担持された活性物質を具える。
【0018】
本発明は、疾病または疾患を治療するまたは防止する方法を提供するものであり、この方法は、治療を必要とする対象と、ある量の送達システムであって、当該量が前記疾病または疾患を治療するまたは防止するのに有効な量である送達システムを提供するステップを具える。
【0019】
更に、本発明は、対象身体内で標的細胞または標的組織を撮像する方法を提供する方法であって、当該方法が;
(a)本発明の送達システムを伴う前記対象を提供するステップと、造影剤を担持するステップであって、前記送達システムを前記標的セルまたは標的組織に効果的に的中させるために、前記ナノ粒子が一又はそれ以上の標的物質と結合されているステップと;
(b)前記身体内の前記造影剤を撮像するステップと;
を具える。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、一またはそれ以上の標的物質を、一又はそれ以上の薬物装填ナノ粒子へワンステップ結合させる新規なプロセスに基づく、薬物送達治療の改良を提供することを目的としている。特に、本発明は、選択した標的物質に順次結合することができるユニバーサルナノ粒子リンカ(選択的に薬物と組み合わせた)の調整が可能であり、従って、異なる各標的物質用に特別なナノ粒子を設計する必要がない。本発明による設計ナノ粒子によれば、二面メンブレイン低抗体密度を示す標的細胞をより良好に識別することができる。
【0021】
したがって、本発明は、ポリマナノ粒子と、当該ナノ粒子に非共有結合した第1の部分であって、当該第1の部分の少なくとも一部が前記ナノ粒子に埋め込まれた疎水性セグメントと;前記ナノ粒子の外側表面に露出したマレイミド化合物を具える第2の部分と;を具えるリンカと、を具える送達システムを提供する。
【0022】
マレイミドは、以下の一般式(I)に示すような、2,5-pyrroledione骨格を有する一群の有機化合物である。
【0023】
マレイミドは、航空宇宙産業における先端複合材料から合成における試薬としての使用にいたるまで、幅広い用途に使用されている。例えば、航空宇宙産業では、熱安定性が良好で、バックボーンが硬い材料が必要とされるが、双方共ビスマレイミドによって提供される。いくつかの用途では、ポリシロキサンやホスホン酸塩などの様々なリンカがこのビスマレイミドに結合して、ビスマレイミド、その他からできるポリマの強度を上げている。
【0024】
マレイミドは、表面にたんぱく質を付着させる柔軟結合分子としてしばしば用いられるポリエチレングリコール鎖にも結合することがある。この二重結合は、システインに見られるチオール基に容易に反応して、安定した炭素−硫黄結合を形成する。ポリエチレン鎖の他端をビーズあるいは固相支持体に付着させることによって、チオール基を有していなければ、溶液中のその他の分子からたんぱく質を容易に分離することができる。
【0025】
本発明のコンテキストにおいて、マレイミドはリンカに結合されて、ポリマナノ粒子に非共有結合で組み込まれ、このマレイミド−リンカとナノ粒子との組み合わせが様々な活性物質用に対する送達システムプラットフォームを提供する。
【0026】
ここで「送達ナノ粒子」の用語と交換可能に用いることができる「送達システム」の用語は、リンカと結合されたときの粒径が、1マイクロメータ以下、好ましくは50−1000nmの範囲、より好ましくは200−300nmである生理学的に受容可能であるポリマナノ粒子を意味する。このナノ粒子は、一又はそれ以上のポリマでできたマトリックス構造を有することが好ましいが、「ナノ粒子」の用語は、コア−シェル構造を有するナノ粒子を意味することもあり、粒子のシェルが活性物質を担持する内部空間(例えば、油相)を有するポリマでできているか、このポリマとの組み合わせである。後者の製剤は、例えば、油混和性薬物の送達に適用することができる。
【0027】
更に、ナノ粒子は、ポリマ以外の物質で形成することができるが、この粒子は本質的にポリマベースである、あるいは少なくとも外側表面がポリマベースであると考えられる。したがって、本発明のコンテキストにおける「ナノ粒子」の用語は、リポソームまたはエマルジョンの形は排除している。
【0028】
ここで使用されている「ポリマ粒子」、「ポリマナノ粒子」あるいは「粒子形成ポリマ」の用語は、適切な条件下で、ナノ粒子を形成することができる、生分解性で、好ましくは、生体適合性があるポリマを意味し、限定されることなく、ナノスフェアまたはナノカプセルを含む。ナノスフェア(ポリマ球状マトリックスとして定義される)と、ナノカプセル(固有のウオールポリマで囲まれた小さな油中子として定義される)は、ここに記載された送達プラットフォームで得ることができ、使用することができるいくつかの形状にすぎない。好ましい実施例によれば、粒子の少なくとも外側壁がその大多数において一またはそれ以上のポリマを具えることが好ましい。したがって、粒子が油相コアを具えている場合、後者はポリマベースの壁の中にカプセル化される。この分野では、様々な生分解性ポリマを利用可能であり、これらのポリマを本発明に適用することができる。ナノ粒子製剤に広く使用されている、認可された、生分解性で、生体適合性があり、安全なポリマが、Gilding DK et al.によって記載されている[Gilding DK et al. Polymer 20: 1459-1464 (1979)]。
【0029】
粒子形成生分解性ポリマの非限定的な例は、限定されるものではないが、ポリヒドロキシ酪酸;ポリヒドロキシバレリアン酸;ポリカプロラクトン;ポリエステルアミド;ポリシアノアクリレート;ポリ(アミノ酸);ポリカーボネート;ポリ無水物;及びこれらの混合物などのポリエステルである。
【0030】
好ましくは、このポリマは、ポリ乳酸(ポリラクチド)、ポリラクチド−ポリグリコライド、ポリグリコライド、コポリ(ラクチド−グリコライド)、ポリエチレンコグリコール−ラクチド(PEG−PLA)、及びこれらのいずれかの混合物から選択される。
【0031】
この送達システムの更なる成分は、ナノ粒子に非共有結合的に固定した第1の部分と、ナノ粒子の外側面に露出したマレイミド化合物を具える第2の部分を具えるリンカである。第1の部分は、第1の部分の少なくとも一部がナノ粒子の表面に埋め込まれた疎水性セグメントを具えるように構成されている。
【0032】
ここで使用されている「固定」の用語は、リンカと粒子の間に安定した関係を得るように、粒子の外側面を通ってリンカの第1の部分の少なくとも一部を貫通することをいう。この固定は、ポリマと同様の物理的特徴を有するリンカの第1の部分において部分(moiety)(ここでは、「固定部分」という)を組み込むことによって達成することができる。化学の分野の当業者には、粒子を実質的に作っている物質と適合するように固定部分を選択する方法がわかであろう。例えば、粒子マトリックスを形成するのに疎水性ポリマを用いる場合、固定部分の好ましい選択は、疎水性部分及び/又は親油性部分である。換言すると、この固定部分は、好ましくはポリマと適合可能であり、及び、結局は組み込んだ薬物と適合可能でなくてはならない。
【0033】
固定部分と粒子の間の結合は、ポリママトリックスまたはポリマウオールに対する(後者は、ナノカプセルの場合)アンカの機械的な固定(例えば、埋め込みによる)によるものが好ましい。この機械的固定は、ポリマの固化プロセス間にリンカと組み合わせてポリマを用いる場合に、粒子の形成時に得ることができる。ポリマが粒子の形状に固化すると、リンカの固定部分を捕捉して、本発明の結果物としての送達システムを形成する。
【0034】
本発明のコンテキストにおけるリンカは、両親媒性分子、すなわち、疎水性/親油性部分(アンカを提供する)と、疎水性部分の一部を形成するマレイミド化合物を有する分子である。以下において、「親油性」の用語が用いられるときは常に、疎水性/親油性部分がナノ粒子を形成するポリマと適合する限り、疎水性の用語と交換可能であると理解することができる。従って、親油性部分は、同様に疎水性部分とすることができる。いくつかの実施例によれば、親油性/疎水性部分は、炭化水素または炭化水素の骨格に少なくとも8つの炭素原子を具える脂質を具える。例示的な範囲は、C−C30の炭素原子である。親油性部分は、飽和あるいは不飽和炭化水素、直鎖、枝分かれ鎖、または環状であっても良い。
【0035】
リンカは、ナノ粒子表面に組み込むことができる一又はそれ以上のアンカを有していても良い。例えば、二重アンカは、下記の表1に示す、1,2-ジステマロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール)2000]を具える、二つの親油性部分を含むリンカの使用によって達成できる。このリンカは、
【0036】
このリンカは、標的物質(下記に開示する)が結合する第2の部分も有する。標的物質の結合は、共有結合によることが好ましいが、時には、非共有結合も可能である。共有結合は、化学反応基の疎水性部分、本発明ではマレイミドに含有させることによって達成される。マレイミドは、標的物質のチオール基で安定チオ−エーテルリンケージを形成することができる。
【0037】
いくつかの実施例によれば、リンカは、以下の一般式(I)を有する:

ここで、Yは、ヘテロ原子、C−C20アルキレンまたはアルケニレン、C−C20シクロアルキレンまたはシクロアルケニレン、C−C20アルキレン−シクロアルキキレン、をあらわし、ここで、前記アルキレンまたはアルケニレン中の炭素原子の一つがヘテロ原子で置換される;
Xは、-C(O)-R1, -C(O)-NH-R1, -C(O)-O-C(O)-R1, C(O)NH-R2-R1, または-C(O)-NH-R2-C(O)-NH-R1 から選択された部分を含むカルボニルであり、ここで、Rは,炭化水素または少なくとも8個の炭素を具える脂質であり、Rは疎水性ポリマである。
【0038】
このような実施例によれば、Rは、脂質を表し;Rは疎水性ポリマを現す。一の実施例では、この脂質は、モノまたはジアシルグリセロール、リン脂質、スフィンゴ脂質、スフィンゴリン脂質、または脂肪酸から選択される。
【0039】
は、ポリマナノ粒子マトリックスと適合性があるべきであり、親油性でなくてはならない。本実施例では、Yは、アルキレン−シクロヘキサンであることが好ましい。
【0040】
疎水性ポリマはいずれかの表面改質ポリマであってもよい。表面改質剤として通常使用されるポリマには、限定されることなく:ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸、ポリ乳酸(ポリラクチドとも言う)、ポリグリコール酸(ポリグリコライドとも言う)、アポリ乳酸−ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン、ポリエチロキサゾリン、ポリヒドロキシエチロキサゾリン、ポリヒドロキシプロピロキサゾリン、ポリアスパルトアミド、ポリヒドロキシプロピル メタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロースあるいはヒドロキシエチルセルロースなどの派生セルロースが含まれる。このポリマは、ホモポリマとして、あるいはブロック状またはランダムなコポリマとして用いることができる。
【0041】
好ましくは、疎水性ポリマはポリエチレングリコール(PEG)である。PEG部分は、好ましくは、約750Da乃至約20,000Daの分子量を有する。より好ましくは、この分子量は、約750Da乃至約12,000Daであり、最も好ましくは、約2,000Da乃至約5,000Daである。
【0042】
好ましくは、ポリエチレングリコールは、モノメトキシポリエチレングリコール(モノメトキシまたは標準ペグ)である。したがって、本発明によって用いられる好ましい脂質ポリマは、ステアリルアミン−モノメトキシポリ(エチレングリコール)(SA−mPEG)である。
【0043】
代替的に、疎水性ポリマは、図1Bに概略的に示すように、例えば、mPEG−ポリラクチドなど、粒子を形成しているポリマに共有結合していても良い。
【0044】
本発明の一の特定の実施例は、式(I)の化合物に関し、ここで、Yは、式-CH2-C6H10-Xを有するアルキレン−シクロアルキキレンであり、Xは、式-C(O)-NH-R1を有する部分を含むカルボニルであり、ここで、Rは脂肪酸である。
【0045】
本発明のもう一つの特別な実施例は、式(I)の化合物に関するものであり、リンカが、オクタデシル−4−(マレイミドメチル)シクロヘキサン−カルボキシル酸(OMCCA);N−1ステアリル−マレイミド(SM);スクシニミジル オレイン塩酸;1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレン グリコール)2000];及びこれらの混合物(表1)から選択されたものである。
【0046】
適用可能なリンカの化学構造を、以下の表1に示す。
(表1)リンカの化学名及び構造

【0047】
本発明の好ましいリンカの一つであるOMCCAは、以下のスキーム1によって合成することができる。

【0048】
スクシニミジル オレイン塩酸は、シグマ社(米国、モンタナ州所在のSigma Chemical社)から商業的に入手可能であり;1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレン グリコール)2000]は、AVANTI Polar Lipids Inc.社(米国、アラバマ州、アラバスタ所在のAvanti Polar Lipids社)から商業的に入手可能である。
【0049】
本発明の送達システムは、標的化送達システム、すなわち、標的物質に付着させた送達システム、の形で提供することができる。時に、標的物質が抗体またはその結合フラグメントである場合、本発明の標的化送達システムは、「免疫ナノ粒子」と呼ばれる。
【0050】
標的物質は、結合カップルの一方の員と考えられ、このカップルの他方の員は、細胞、すなわち本発明の送達システムが選択的に/好ましく送達されるべき組織上の標的であると考えられる。ここで使用されている「結合カップル」の用語は、互いに対して特異的に結合(親和)できる二つの物質を意味する。非限定的な結合カップルの例には、当業者に知られている、ビオチン−アビジン、抗原−抗体、受容体−リガンド、オリゴヌクレオチド−相補オリゴヌクレオチド、糖−レクチンが含まれる。
【0051】
標的物質は、標的ポリマまたはオリゴマであってもよい。ポリマ(及びその免疫学機能的フラグメント)の非限定的な例は、アミノ酸ポリマ(例えば、抗体、抗原、グリコプロテイン)、核酸ポリマ(例えば、免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、センス及びアンチセンス、干渉RNA(iRNA)その他、またはグリコプロテイン(例えばレクチン)などのサッカライドポリマを具える。
【0052】
上述したとおり、上述の標的物質のいずれのフラグメントも、標的に対する特異的結合特性を維持する限り、本発明に使用することができる。標的物質が抗体(以下の定義を参照)である場合、後者は、IgG,IgM,IgD,IgA、及びポリクロナル抗体またはモノクロナル抗体を含むIgG抗体のいずれか一つである。この抗体のフラグメントは、例えば、Fc部分のない抗体、単鎖抗体、実質的に可変である抗体の抗原結合ドメインのみからなるフラグメント、その他といった、抗体の抗原結合ドメインを具える。
【0053】
いくつかの実施例によれば、標的物質は、葉酸またはチアミンなどの低分子量化合物である。例えば、チアミンは、ポリマナノ粒子に固定されたリンカに結合することができ;このように形成したナノ粒子は、高度発現チアミン受容体を有する組織に特異的に的中する。このような標的細胞は、がん細胞を含む。
【0054】
いくつかの好ましい実施例では、この標的物質はリンカを介して粒子に結合したたんぱく質である。免疫ナノ粒子を考えるとき、標的物質は、好ましくは、リンカの共有結合を介して粒子に結合した抗体である(このリンカは、粒子に非共有結合的に付着している)。結合カップルの他方の員は、この抗体が特異的に結合する抗原である。上述したとおり、標的物質は、抗体の免疫学的フラグメントであっても良い。
【0055】
本発明のコンテキストにおいて、「抗体」の用語は、天然源由来、組み換え由来、あるいはこの分野で公知の合成手段を使用することによる、実質的に無傷の免疫グロブリンを意味しており、これらはすべて抗原決定基を結合することができる抗体である。この抗体は、例えばポリクロナール抗体、モノクロナール抗体、単鎖抗体、軽鎖抗体、重鎖抗体、二重特異性抗体、またはヒト化抗体を含め、様々な形で存在することができ;同様に、これらのいずれかの免疫学的フラグメントであってもよい[Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY; Harlow et al. (1989), Antibodies: A Laboratory manual, Cold Spring Harbor, New York; Houston et al. (1988), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883; Bird et al. (1988), Science 242: 423-426]。
【0056】
ここで使用されているように、「免疫学的フラグメント」の用語は、抗原決定基に結合可能な抗体の機能的フラグメントを意味する。好適な免疫学的フラグメントは、例えば、免疫グロブリン軽鎖(「軽鎖」)の相補性決定領域(CDR)、免疫グロブリン重鎖(「重鎖」)のCDR、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域、軽鎖、重鎖、Fdフラグメント、及びFv、単鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、F(ab),及びF(ab’)など、軽鎖及び重鎖の双方の実質的な全可変領域を具える免疫学的フラグメントであっても良い。
【0057】
本発明の好ましい実施例によれば、抗体はモノクロナール抗体(MAb)である。この抗体は、天然タンパクまたは遺伝子組み換え製品(すなわち、組み替え抗体)、あるいは、合成品に対して生産された抗体であってもよい。
【0058】
本発明によって使用できるMAbの非限定的な例は、ベバシズマブ、オマリズマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ(全て、Genentech Inc.社)AMB8LK(フランス、MAT Evry社)、ムロモナブ−CD3(Johnson & Johnson社)、アブシキシマブ(Centocor社)、リツキシマブ(Biogen-IDEC)、バシリキシマブ(Novartis社)、インフリキシマブ(Centrocor社)、セツキシマブ(Imclone Systems社)、ダクリズマブ(Protein Design Labs社)、パリビズマブ(MedImmune社)、アレムツズマブ(Millenium/INEX社)、ゲムツズマブ オゾガマイシン(Wyeth社)、イブリツモマブ ツキセタン(Biogen-UDEC社)、トシツモマブ−I131(Corixa社)、及び、アダリムマブ(Abbot社)である。
【0059】
より好ましくは、MAbはトラスツズマブである。トラスツズマブは、HER/neu腫瘍抗原に対して高い親和性を持つMAbであり、後者は、前立腺癌細胞内などの悪性細胞に過剰発現する。したがって、本発明の一実施例によれば、この送達システムを、HER/neu腫瘍抗原が存在する細胞に細胞毒性物質を送達するのに使用することができる。
【0060】
いくつかの実施例によれば、NPsは、異なる結合特性(例えば異なる結合特異性)を有する二つの抗体を担持している。単一のナノ粒子上の二つの異なる抗体のこの構造は、二つの抗体が互いに対して近傍にナノ粒子によって、比較的単純、かつ安価に、真の二重特異性単分子に科学的に結合するあるいは遺伝子組み換えを行う必要なく配置されている、「機能的二重特異性状」抗体構造をつくった。
【0061】
このコンテキストでは、二重特異性抗体(diabody)も使用することができる。二重特異性抗体は、小さい二値クラスの二重特異性抗体フラグメントであり、バクテリア(大腸菌)およびイースト(ピチア酵母(Pichia pastoris))内に機能的な形状で、高い産生をもって発現できる。二重特異性抗体は、ペプチドリンカによって結合された同じポリペプチド鎖(VH−VL)に、軽鎖可変ドメイン(VL)に結合された重鎖可変ドメイン(VH)を具える。このリンカは、同じ鎖上の二つのドメイン間で対になるには短すぎる。これは、別の鎖の相補ドメインと無理に対によって、二つの機能的抗原結合部位を有する二量体分子のアッセンブリを促進する。二重特異性抗体を構築するには、二つの鎖VHA−VLBとVHB−VLAをつくるために抗体Aと抗体BのV−ドメインが融合する。各鎖は、抗原に結合するには不活性であるが、他の鎖と対になるときに抗体A及びBの機能的抗原結合部位を再生する。
【0062】
本発明のナノ粒子は、様々な方法で作ることができる。たとえば、ポリマ界面蒸着法(polymer interfacial deposition method)、溶媒蒸発、スプレィ乾燥、液滴形成、界面重合、及び当業者に公知のその他の方法で作ることができる。
【0063】
好ましくは、本発明のナノ粒子は、Fessi H. et al.によって記載されているポリマ界面蒸着法で作成される[Fessi H. et al. Int. J. Pharm. 1989; 55: R1-R4]。本発明のナノ粒子は、米国特許第5,049,322号、及び、第5,118,528号に開示されているように作成することもできる。
【0064】
Fessi H. et al.の手順によれば、ポリマを形成している粒子を、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリルなどの水混和性有機溶剤に溶かす。この有機相を含むポリマに、上記に定義したリンカを加える。次いで、結果物の有機相を、界面活性剤を含む水性相に加え、分散させた後、900rpmで1時間混合し、減圧下で蒸発させて、ナノ粒子を形成する。次いで、この粒子を燐酸干渉生理食塩水(PBS)などの適切な緩衝剤で洗浄する。有機相は、有機溶剤の組み合わせと共にその他の界面活性剤を具えており、本発明の送達システムによって担持する活性物質の溶解を容易にする。同様に、水性相は、Fessi et al.によって記載されているような界面活性剤の組み合わせを含んでいても良い。
【0065】
ここに示すように、送達粒子は、好ましくは、一またはそれ以上の活性物質を担持している。このため、乾燥活性物質を、リンカを加える前に、あるいはリンカと共に、有機相に加える。
【0066】
ナノ粒子の形成できるようにするために、ポリマと活性物質(組み込まれていれば)は、好ましくは、有機相中で可溶であり、水性相中で不溶でなくてはならないが、有機溶剤と水性相は、混和性でなくてはならない。
【0067】
上述の3つの成分、すなわち、粒子形成ポリマと、活性物質と、リンカを単に混合することによって、ある量のリンカが粒子の表面に露出される。この量は、粒子表面の標的物質に化学的に結合させるのに十分である。したがって、粒子(活性物質が装填されている)を形成するためには、標的物質は、粒子の表面に露出したリンカの反応基と交差反応させるのに好適な条件を提供することによって、化学的に結合される。
【0068】
図1A乃至1Cは、本発明のいくつかの実施例による送達粒子の概略を示す図である。図1Aは、外側表面(12)に、外側表面を通って粒子に固定した第1の部分(16)と、外側表面に露出した第2の部分(18)を有するリンカ(14)を有する送達粒子(10)を示す。標的物質(20)は第2の部分に化学的に結合している。この特別な図において、リンカはOMCCAであり、粒子に固定した親油性部分と、表面に露出したマレイミド部分を有する。マレイミドは、例えば、標的物質にフリーチロル基を有する硫化ブリッジなどの形成を介して標的物質に化学的に結合されている。図1Bは、図1Aと同じ送達粒子であるが、薬物送出賦形剤の分野の応業者には自明であるとりわけ身体内での粒子の循環時間を増やす、PEGなどの疎水基(22)を表面に有する送出粒子を示す。図1Cは、図1Bと同じ送達粒子を示すが、薬物(24)が粒子の内部マトリックス(26)内に埋め込まれていることを示す。
【0069】
図1A−1Cは、リンカの第1の部分が粒子内に完全に埋め込まれていることを示しているが、この部分は粒子マトリックス内に部分的に封入されていてもよく、あるいはコアの中に封入またはカプセル化されていても良い。必要条件は、固定が実質的に安定している、すなわち、リンカが粒子から脱落しないことだけである。
【0070】
本発明の送達粒子によって担持できる活性物質は様々である。担持は、ポリママトリックス内への活性物質の埋め込み(活性物質のクラスタまたは非クラスタ)、粒子表面における吸収、粒子の内部スペース中の活性物質の分散、粒子を形成しているポリマ内での活性物質の溶解、ナノ粒子、その他の油性コア内へのカプセル化、その他、当業者に知られている方法によって達成することができる。
【0071】
活性物質は、薬物(治療薬あるいは予防薬)、または、診断(造影)剤であってもよい。以下の非限定的なリストは、本発明の粒子内に入れることが可能なクラスの薬物と化合物である:鎮痛薬、麻酔薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗不整脈剤、抗喘息剤、抗生物質(ペニシリンを含む)、抗がん剤(タキソールを含む)、抗凝血剤、抗鬱剤、抗糖尿病薬、抗癲癇薬、抗ヒスタミン剤、IS鎮咳役、降圧剤、抗ムスカリン剤、抗抗酸菌剤、抗腫瘍剤、抗酸化剤、解熱剤、免疫抑制剤、免疫賦活薬、抗甲状腺薬、抗ウイルス剤、抗不安沈静剤(睡眠薬と神経安定剤)、収斂剤、静菌剤、ベータアドレナリン受容体遮断薬、血液製剤及び代用品、気管支拡張剤、緩衝剤、強心剤、化学療法剤、造影剤、コルチンステロイド、咳抑制剤(去痰剤と粘液溶解薬)、診断用薬、診断画像用薬、利尿剤、ドーパミン作動薬(抗パーキンソン剤)、フリーラジカル除去薬、成長因子、止血剤、免疫薬、脂質調整薬、筋弛緩剤、たんぱく質、ペプチドとポリペプチド、副交感神経興奮剤、副甲状腺カルシトニンとジホスホネート、プロスクグランジン、放射性医薬品、ホルモン、性ホルモン(ステロイドを含む)、持続放出型結合剤、抗アレルギィ剤、興奮剤と食欲抑制剤、ステロイド、交感神経様作用薬、甲状腺剤、ワクチン、血管拡張剤、及びキサンチン。
【0072】
エアロゾル剤形で投与すべき活性物質は、好ましくは、たんぱく質、ペプチド、気管支拡張剤、副腎皮質ステロイド、エラスターゼ抑制剤、鎮痛剤、抗真菌剤、膿胞性繊維症治療薬、喘息治療薬、気腫治療薬、呼吸困難症候群治療薬、慢性気管支炎治療薬、慢性閉塞性肺疾患治療薬、臓器移植拒絶反応治療薬、結核及びその他の肺の感染症治療薬、真菌感染症治療薬、後天性免疫不全症候群に関連する呼吸器疾患治療薬、腫瘍薬剤、制吐剤、鎮痛剤、及び心血管作動薬からなる群から選択される。
【0073】
抗癌性活性物質は、好ましくは、アルキル化剤、代謝拮抗物質、天然産物、ホルモン及び拮抗薬、及び放射線増感剤などの混合型薬剤から選択される。アルキル化剤の例には:(1)例えば、クロルメチン、クロルアムブチル(chlorambucile)、メルファラン、ウラムスチン、マンノムスチン、エキストラムスチンホスフェート(extramustinephoshate)、メクロルエ−タミン酸化物、シクロホスファミド、イフォスファミド、トリフォスファミド、などの、ビス−(2クロロエチル)−アミン基を有するアルキル化剤;(2)例えば、トレタミン、チオテパ、トリアジクオン、及びマイトマイシンなどの置換アジリジン基を有するアルキル化剤;(3)例えば、ブスルファン、ピポスルファン、及びピポスルファムなどの、アルキルスルフォネート型アルキル化剤;(4)例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、あるいは、ストレプトゾトシンなどの、アルキル化 N−アルキル− N−ニトロソ尿素誘導体;及び(5)ミトブロニトール(mitobronitole)、ダカルバジン及びプロカルバジン型のアルキル化剤が含まれる。
【0074】
抗肥満薬の例には:(1)例えば、メトトレキサートなどの葉酸類似体;(2)例えば、フルオロウラシル、フロクスウリジン、テガフール、シタラビン、イドクスウリジン、フルシトシンなどのピリミジン類似体;(3)例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、アザチオプリン、チアミプリン、ビダラビン、ペントスタチン、プロマイシンなどのプリン誘導体;が含まれる。
【0075】
天然産物の例には:(1)例えば、ビンプラスチンやビンクリスチンなどのビンカ アルカロイド;(2)例えば、エトポシドやテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;(3)例えば、アドリアマイシン、ダウノマイシン、ドクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトラマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシンなどの抗生物質;(4)例えば、エル−アスパラギナーゼなどの酵素;(5)例えば、アルファ−インターフェロンなどの生物反応修飾物質;(6)カンプトセシン;(7)タクソール;及び(8)レチノイド酸などのレチノイド;が含まれる。
【0076】
ホルモン及び抑制因子の例には:(1)例えば、プレドニゾンなどの副腎皮質;(2)例えば、カプリル塩酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロールなどのプロゲスチン;(3)例えば、ジエチルスチルベストロールや、エチニル エストラジオールなどのエストロゲン;(4)例えば、タモキフェンなどの抗エストロゲン;(5)例えば、プロピオン酸テストステロンや、フルオキシメステロンなどのアンドロゲン;(6)例えば、フルタミドなどの抗アンドロゲン;(7)例えば、ロイプロリドなどのゴナドトロピン放出ホルモン類似体;が含まれる。混合型薬剤の例には:(1)例えば、1,2,4-ベンゾートアジン-3-アミン 1,4-二酸化物(SR4889)や、1,2,4-ベンゾトリアジン 7-アミン 1,4-二酸化物(WIN59075)などの放射線増感剤;(2)例えば、シスプラチンや、カルボプラチンなどの白金配位複合体;(3)例えば、ミトキサントロンなどのアントラセンジオン;(4)例えば、ヒドロキシウレアなどの置換尿素;(5)例えば、ミトタンやアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤;が含まれる。
【0077】
更に、抗癌剤は、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、スルファサラジン、メトキサレン、サリドマイドなどの免疫抑制剤であっても良い。
【0078】
鎮痛活性物質には、例えば、NSAIDやCOX−2阻害剤が含まれる。本発明の粒子に配合することができる例示的なNSAIDSは、限定するものではないが、好適な非酸性化合物および酸性化合物が含まれる。好適な非酸性化合物には、例えば、ナブメトン、チアラミド、プロクアゾン、ブファキサマック、フラミゾール、エピラゾール、チノリジン、チメガジン、ダプリンが含まれる。好適な酸性化合物には、例えば、カルボン酸や、エノール酸が含まれる。好適なカルボン酸NSAIDsには、例えば:(1)例えば、アスピリン、ジフルニサル、ベノリレート、フォスフォザールなどのサリチル酸及びそのエステル;(2)例えば、ジクロフェナク、アルクロフェナク、フェンクロフェナクなどを含むフェニル酢酸などの酢酸;(3)エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、フェンチアザク、チロミソールなどのカルボ−及び複素環酢酸;(4)カルプロフェン、フェンブレン(fenbulen)、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、オキサプロジン、スプロフェン、チアプロフェン酸、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、インドプロフェン、ピルプロフェンなどのプロピン酸;及び(5)フルテナム酸(flutenamic)、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ニフルミン酸などのフェナム酸;が含まれる。好適なエノール酸NSAIDsには、例えば:(1)オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、アパゾン、フェプラゾンなどのピラゾロン;及び(2)ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム、テノキシカムなどのオキシカム;が含まれる。
【0079】
例示的なCOX−2阻害剤には、限定するものではないが、セレコキシブ(SC-58635, CELEBREX, Pharmacia/Searle & Co.社)、ロフェコキシブ(MK 966, L-74873 1, VIOXX, Merck & Co.社)、メロキシカム(MOBIC@, co-marketed by Abbott Laboratories, シカゴ、イリノイ州、及び Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals社)、バルデコキシブ(BEXTRA@, G.D. Searle & Co.社)、パレコキシブ(G.D. Searle & Co.社)、エトリコキシブ(MK-6663; Merck社)、SC−236(化学名 4-[5-(4-クロロフェニル)-3-; (トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-l-yl)] ベンゼンスルホンアミド; G.D. Searle & Co.社、スコーキー、イリノイ州);NS−398(N-(2-シクロヘキシルオキシ-4-ニトロフェニル)メタン スルホンアミド; Taisho Parmaceutical Co., Ltd.社、 日本);SC−58125(メチルスルホンスピロ(2.4)hept-5-ene I; i Pharmacia/Searle & Co.社);SC−57666(Pharmacia/Searle & Co.社);SC−558(Pharmacia/Searle & Co.社);SC−560(Pharmacia/Searle & Co.社);エトドラク(Lodine, Wyeth-Ayerst Laboratories, Inc.社);DFU(5,5- ジメチル-3- (3-フルオロフェニル)-4-(4- i メチルスルホニル)フェニル 2(5H)-フラノン);モンテルカスト(MK-476)、L−745337((5 メタンスルホンアミド-6-(2,4- ジフルオロチオフェニル)- 1;インダノン)、L−761066、L−761000,L−748780(全てMerck & Co.社);DUP−697(5-ブロモ-2-(4-フルオロフェニル)-3-(4(メチルスルホニル)フェニル; DuPont Merck Pharmaceutical Co.社);PGV 20229(1-(7- tertブチル-2,3-ジヒドロ-3,3-ジメチルベンゾ(b)フラン-5-yl)-4-シクロプロピルブタン-1-1 one; Procter; & Gamble Pharmaceuticals社);イグラチモド(T-614; 3-フォルミルアミノ-7- ] メチルスルフォニルアミド-6-フェノキシ- 4H-1- ベンゾピラン-4-one; Toyama Corp.社、日本);BF 389(Biofor社、米国);CL 1004(PD 136095)、PD 136005、PD 142893、PD 138387、及びPD 145065(全てParke-Davis/Warner-Lambert Co.社);フルルビプロフェン(ANSAID; Pharmacia & Upjohn社);ナブメトン(FELAFEN; SmithKline Beecham, plc社);フロスリド(CGP 28238; Novartix/Ciba Geigy社);ピロキシカム(FELDANE; Pfizer社);ジクロフェナク(VOLTAREN及びCATAFLAM, Novartis社);ルミラコシキブ(COX-189; Novartis社);D 1367(Celltech Chiroscience, plc社);R 807(3 ベンゾイルジフルオロメタンスルフォンアニリド、ジフルミドン);JTE−522(Japan Tabacco社、日本);FK−3311(4’-アセチル-2’(2,4-ジフルオロフェノキシ)メタンスルホンアニリド)、FK 867、FR 140423、及びFR 115068(全て、Fujisawa社、日本); GR 253035(Glaxo Wellcome社); RWJ 63556(Johnson & Johnson社);RWJ 20485(Johnson & Johnson社);ZK 38997(Schering社);S 2474((E)-(5)- (3,5-di-tert ブチル-4- ヒドロキシベンジリデン)-2-エチル- 1,2-イソチアゾリジン- 1, 1 –ジオキシインドメタシン; I Shionogi & Co., Ltd.社、日本);RS 57067、RS 104897などのゾメピラック類似体(Hoffmann La Roche社);RS 104894(Hoffmann La Roche社);SC 41930(Monsanto社); プランルカスト(SB 205312, Ono-1078, ONON, ULTAIR@; SmithKline Beecham社);SB 209670(SmithKline Beecham社);及びAPHS(硫化ヘプチニル(hyptinylsulfide))を含む。
【0080】
これらのクラスの薬物及び診断薬剤の記載、及び各クラス内のスピーシーズリストは、Martindale, The Extra Pharmacopoeia, 第29版(The Pharmaceutical Press, London, 1989)に見ることができる。これは、本願に全体的に引用されている。この薬物及び診断薬剤は、商業的に入手可能及び/又はこの分野で知られている技術を用いて配合することができる。
【0081】
本発明の実施において好適に使用することができる水難溶性薬物は、限定するものではないが、アルプラゾラム、アミオダロン、アムロジピン、アステミゾール、アテノロール、アザチオプリン、アゼラチン(axelatine)、ベクロメタゾン、ブデソニド、ブプレノルフィン、ブタルビタール、カルバマゼピン、カルビドパ、セフォタキシム、セファレキシン、コレスチラミン、シプロフロキサシン、シサプリド、シスプラチン、クラリスロマイシン、クロナゼパム、cクロザピン、シクロスポリン、ジアゼパム、ジクロフェナクナトリウム、ジゴキシン、ジピンダモール(dipyndamole)、ジバルプレックス、ドブタミン、ドキサゾシン、エナラプリル、エストラジオール、エトドラク、エトポシド、ファモチジン、フェロジピン、クエン酸フェンタニル、フェキソフェナジン、フィナステライド、フルコナゾール、フルニソリド、フルルビプロフェン、フルボキサミン、フロセミド、グリピジド、グリブリド、イブプロフェン、イソソルビド、二硝酸塩、イソトレチノイン、イスラジピン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ラモトリジン、ランソプラゾール、ロペラミド、ロラタジン、ロラゼパム、ロバスタイン、メドロキシプロゲステロン、目フェナム酸、メテルプレドニゾロン、ミダゾラム、モメタゾン、ナブメトン、ナプロキセン、ニセルゴリン、ニフェヂピン、ノルフロキサシン、オメプラゾール、パクリタキセル、フェニトイン、ピロキシカム、キナプリル、ラミプリル、リスペリドン、セルトラリン、シンバスタチン、スリンダク、テルビナフィン、テルフェナジン、トリアムシノロン、バルプロ酸、ゾルピデム、又は上述の薬剤のいずれかの薬学的受容可能な塩を含む。
【0082】
診断薬剤も、本発明の送達粒子を用いて送達することができる。診断薬剤は、単独で、あるいは上述した薬物の一又はそれ以上と組み合わせて投与することができる。診断薬剤は、様々な技術によってラベル化することができる。診断薬剤は、放射線ラベル化化合物、蛍光ラベル化化合物、酵素ラベル化化合物であっても良く、及び/又は、磁気化合物、または、X線、超音波、磁気共鳴撮像(MRI)、コンピュータ断層撮影法(CT)あるいはX線透視法、などの技術を用いて検出できるその他の物質を含んでいても良い。
【0083】
好ましい実施例によれば、本発明の送達システムによって送達すべき活性物質は、細胞障害性薬物(抗腫瘍剤)である。ここに例示する細胞障害性作用物質は、ドセタキセル、パクリタキセル、及びパルミチン酸パクリタキセルである。特別な細胞障害性作用物質は、ドセタキセル(DCTX)であり、これは、ホルモン治療抵抗性前立腺癌(HRPC)に対する好ましい選択薬剤として知られている。
【0084】
いくつかのケースでは、送達粒子が一以上の活性物質を具えていても良いことは自明である。更に、この粒子は、活性物質、及びその好適な補助剤、すなわち、主たる活性物質の作用を容易にするまたは修正する成分と共に装填することができる。例えば、免疫療法においては、この補助剤は、ワクチン製剤に含まれる物質であり、ワクチンの免疫刺激特性を強化または修正する。別の例によれば、この粒子は、多薬剤抵抗性(MDR)阻害剤と薬物の組み合わせを具え、薬剤の作用を増強する。このような組み合わせは、例えば、シクロスポリンA(CsA)に対するMDRを阻害するものとして知られているベラパミルを含むものであっても良い。
【0085】
更に、標的物質も治療または診断上の利点を有することがある。したがって、いくつかの実施例では、この粒子は主活性物質として標的物質のみを含んでいても良く、あるいは、標的物質に加えて、粒子マトリックスまたはコアに埋め込んだ活性薬剤を含むものであっても良い。標的物質が活性有効成分としても作用する例は、以下に特に例示するトラスツズマブである。
【0086】
本発明の免疫ナノ粒子は、特定の受容体または抗原に選択的に結合することができ、所望の部位に活性物質を放出することができるので、有利である。特定の受容体または抗体への標的物質の結合は、内因性受容体媒介経細胞輸送システムと飲食細胞運動システムを用いて、粒子の生体バリヤを超えたナノ粒子の移行をトリガする。このことは、標的物質がない場合の免疫粒子の調整の治療上の効果を改善すると共に、活性物質に伴う有害な副作用を低減するであろう。
【0087】
ナノ粒子は、細網内皮系(RES)によるIV投与の後、迅速に取り除かれる。RESによるナノ粒子の取り込みを阻害するために、ナノ粒子は疎水性ポリマで表面を修飾しても良い。粒子を形成しているポリマへの疎水性ポリマの付着は、共有結合型、あるいは非共有結合型の付着であっても良いが、粒子の表面に固定されたリンカへの共有結合の形成を介して行われることが好ましい。リンカは、標的物質が結合されたリンカと同じものであってもよく、別のものであっても良い。疎水性ポリマ鎖の最外側表面コーティングは、生体内での血流寿命が長い粒子を提供するのに有効である。
【0088】
一実施例によれば、疎水性ポリマは、脂質に結合して、したがって、脂質部分が粒子表面に固定しているリポポリマを形成する。
【0089】
本発明の送達システムは、例えば、標的部位(細胞または組織)へ活性有効成分を標的化送達する、治療または診断用に利用することができる。従って、本発明は、本発明の送達システムを具える薬学的組成を提供するものでもある。一の実施例によれば、この薬学的組成は、疾病または疾患の治療または予防のためのものであり、この送達システムは生理学的及び薬学的に需要可能なキャリアと組み合わされている。
【0090】
ここで使用される「治療または予防」の用語は、疾病に関連する所望しない症状の回復、このような症状が生じる前にこの症状の発現を防止する、この疾病の進行を遅らせる、症状の悪化を遅らせる、疾病の緩解期間の開始を早める、疾病の進行性慢性期に生じる回復不能のダメージを遅らせる、この進行性慢性期の開始を遅らせる、重傷度を減らすまたは疾病を治癒させる、生存率あるいはより迅速な回復を改善する、または、上述したものが発生している疾病形状または上述したものの二またはそれ以上の組み合わせを防止するのに有効な送達システム内にある量の活性物質を投与することを意味する。
【0091】
この実施例による「有効量」の用語は、疾病あるいは疾患を治療するのに十分な所定の治療レジメにある送達粒子に埋め込んだ活性物質の量である。例えば、癌を治療する場合に、例えば、細胞障害性薬物である活性物質の量は、例えば、原発性腫瘍の成長を阻止する、転移性腫瘍の発生率を低下させる、あるいは、個々に現れる転移性腫瘍の数の低下、または、癌に関連する死亡率を低下させる、であろう薬物を装填した送達粒子の量である。代替的に、薬剤装填送達システムが癌の予防に投与される場合、有効量は、治療した個々における原発性腫瘍の発生を阻害するまたは低減するのに十分な粒子の量である。従って、ここに言う目的のための薬学的に「有効な量」は、この分野で公知のこのような考慮を行って決定される。この量は、限定するものではないが、生存率の改善またはより迅速な回復、あるいは、症状の改善と除去及び当業者に自明な手段として選択されるその他の指標を含めて改善を達成するのに有効でなくてはならない。この量は、例えば、治療を受ける患者のタイプ、年齢、性別、身長及び体重、治療を受ける状態、症状の進行または緩解、投与ルート、及び送達する活性物質のタイプに依存する。
【0092】
有効量は、通常、適切に設計された臨床試験(投薬量範囲の検討)において決定され、この分野の当業者は、有効量を決定するためのこのような治験を適切に実行する方法を知っている。一般的に知られているように、有効量は、投与モード、ポリマ及びナノ粒子を形成するその他の成分のタイプ、活性物質の反応性、対応する結合員に対する標的物質のタイプと結合性、送達システムの身体内における分散プロファイル、ナノ粒子から放出された後の身体内における活性物質の半減期などの様々な薬理学的パラメータ、所望しない副作用、もしあれば、治療対象の年齢及び性などのファクタ、その他に依存する。
【0093】
この場合、治療目的のために、本発明の薬物装填送達粒子は、一日1回の投与(例えば、累積的有効量を作るために)、一日数回の投与、数日に1回の投与、その他において、時間を延ばして投与を行い、神経システムへのダメージを防止するようにしてもよい。
【0094】
上述したとおり、本発明のナノ粒子は、一又はそれ以上の薬学的に需要可能なキャリアと共に投与することができる。キャリアの特性と選択は、特定の活性物質、特定のナノ粒子、また、この組成物を投与する特定の方法によって部分的に決まる。したがって、本発明の送達システムの好適な製剤は、限定するものではないが、経口、鼻腔、非経口(皮下、静脈、筋肉、腹腔)、直腸、肺(例えば、吸入)、及び経膣投与を含み、広く多様である。本発明の送達システムの投与ルートは非経口投与であることが好ましい。
【0095】
非経口投与に好ましい製剤は、限定するものではないが、抗酸化剤、緩衝剤、制菌剤、及びこの製剤を意図した受け手の血液と等張にする溶質を含む水性及び非水性の無菌等張注射液、及び、懸濁剤、溶解剤、増粘剤、安定化剤、保存剤を含む水性及び非水性滅菌懸濁液を含む。ナノ粒子は、滅菌液、あるいは、水、食塩水、水性ブドウ糖及び関連する糖溶液、エタノール、イソプロパノール、ヘキサデシルアルコールなどのアルコール、プロピレングリコールあるいはポリエチレングリコールなどのグリコール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールなどのグリコールケタール、ポリ(エチレングリコール)400などのエーテル、オイル、脂肪酸、脂肪酸エステルまたはグリセライド、または、石鹸または洗剤などの薬学的に需要可能な界面活性剤入りまたはなしのアセチル化脂肪酸グリセライド、ペクチン、カルボマ、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースなどの懸濁剤、または乳化剤、及び、その他の薬学的補助剤などの、薬学的キャリア中の生理学的に需要可能な希釈剤に投与することができる。
【0096】
当業者は、効果的投与量の活性物質をオーバータイムで送達するために、活性物質の適切な濃度、投与量及びルートを当業者は容易に決めることができる。また、本発明のナノ粒子を用いた治療レジメ及び適切な投与を、とりわけ、封入したまたはカプセル化した活性物質の放出の制御レベルに依存して、決めることができる。
【0097】
上記の事項を考慮すると、本発明は、本発明の有効量の薬物装填送達システムを、必要な対象に投与する疾病または疾患の治療方法を提供するものでもある。
【0098】
本発明の送達システムで治療することができる症状のタイプは、様々であり、当業者には自明である。この症状の非限定的なリストには、癌、関節リウマチなどの炎症症状(炎症または自己免疫性症状)を伴う症状、神経変性疾患、感染症、内分泌疾患(例えば、一次性または二次性副腎皮質不全;先天性副腎過形成、癌に関連する過カルシウム血症、非化膿性甲状腺炎);膠原病(例えば、天然痘水泡性皮膚炎、重症の紅斑、マルチヘルペス状フォルム(スチーブン− 重症脂漏性 ジョンソンシンドローム)、皮膚炎、剥脱性皮膚炎、乾癬、筋状息肉症);皮膚疾患、アレルギィ症状(例えば、気管支喘息、薬物アレルギィ、接触性皮膚炎反応、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹性トランスフージョン、血清病反応、季節性または多年性鼻炎、急性非伝染性アレルギィ性鼻炎、咽頭浮腫);眼病(例えば、眼部帯状疱疹、交感性眼炎虹彩炎、虹彩毛様体炎、前上葉区脈絡網膜炎、拡散後部ブドウ膜炎、アレルギィ性結膜炎及び脈絡膜炎、角膜縁視神経炎潰瘍、角膜炎、などの目に関する重症の急性及び慢性アレルイギィ性及び炎症プロセス);呼吸器疾患(呼吸器性サルコイドーシス、レフレル症候群、嚥下肺炎、結核);血液疾患(例えば、後天性(自己免疫性)溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、後発性血小板減少症、赤芽球減少症(RBC貧血症)、後天性(赤血球)再生不良性貧血);及び、水腫状態;腫瘍性疾患;神経系の病的状態(例えば、多発性硬化症)が含まれる。
【0099】
一の実施例によれば、本発明は、標的細胞に抗癌剤(例えば、ドセタキセルとパルミチン酸パクリタキセル)を装填した好適なMAbs送達システムによって、標的化による癌の治療方法を提供するものである。
【0100】
本発明は更に、対象の身体内の標的細胞または標的組織を撮像する方法に関するものであり、当該方法は:
(a)前記対象に造影剤を担持した本発明の送達システムを提供するステップであって、ナノ粒子が一またはそれ以上の標的物質に結合して、前記標的細胞または標的組織に対して前記送出システムを的中させるステップと;
(b)前記身体内の前記造影剤を撮像するステップと;
を具える。
【0101】
上述したとおり、本発明の送達システムは、造影剤(撮像剤)と治療薬剤の組み合わせを具えていても良い。したがって、本発明の標的化システムを使用することで、二重の効果が達成され、これによって、薬物の送達も撮像することができる。
【0102】
造影剤を装填した本発明の送達デバイスは、医療診断で通常用いられる様々な撮像技術に用いることができる。このような技術には、限定するものではないが、X線(コンピュータトモグラフィ(CT)、X線体軸断層撮影(CATスキャン)、超音波、γシンチグラフィ、またはMRI撮像を含む。
【0103】
造影剤は、撮像技術の分野において知られているあらゆる造影剤であっても良い。一例には、限定するものではないが、クマリン−6、リピオドール(ヨウ素濃度38%のポピーシードオイルの脂肪酸のエチルエステル)などのガドリニウム誘導体ヨード化油、イオプロミド、イオパミドールなどの非イオン性造影媒体が含まれる。
【0104】
本発明は、薬学的及び診断上の組成物に関して詳細に説明されているが、本発明には、その他の用途の、及びその他の形式の送達システムを使用することが含まれると解すべきことは明らかである。
【0105】
明細書及び特許請求の範囲に使用されている不定冠詞及び定冠詞は、コンテキストが明らかに述べていない限り、単数と複数の両方を意味する。例えば、「an antibody」の用語は、一またはそれ以上の異なる抗体を含み、「a contrasting agent」の用語は、一またはそれ以上の造影剤を含む。
【0106】
更に、ここで使用されている、「具える(comprising)」の用語は、送達システムが記載の要素を含むが、その他を排除するものではないことを意味する。「事実上含む(consisting essentially of)」の用語は、記載の要素を含むが、治療または撮像手順における事実上有意なものを有するその他の要素は排除する送達システムを定義するのに使用される。したがって、「から成る(consisting of)」は、その他の要素の微量元素以上のものは排除することを意味する。これらの移行用語の各々で規定される実施例は、本発明の範囲内にある。
【0107】
更に、すべての数値、例えば、デバイスの層を構成する要素の量または範囲を参照する場合の数値は、記載した値から最大20%、ときに最大10%変動(+)または(−)する概算である。常にではないが例示的に記載されている場合でも、すべての数値の記載は、「約」という用語がついていると理解すべきである。
【0108】
特定の例の記載
例1−クロスリンカ(OMCCA)合成
オクタデシル-4-(マレイドメチル)シクロヘキサン-カルボン酸アミド(OMCCA)の合成のために、スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC Perce社 米国、イリノイ州)100mgと、ステアリルアミン(SA, Sigma Chemical社、米国、モンタナ州)80mgを、8mlのクロロフォルムと、トリエチルアミン(Reidel-de-Haen, Sigma-Aldrich Cemie GmbH社、シュテインハイム、ドイツ)41ulに溶解させ、反応液を50℃で、4時間インキュベートした。1%の塩化水素でこの溶液を3回洗浄し、減圧下でクロロフォルムを蒸発させた。生成物を一晩乾燥させ、重量を測った。収率は約90%であり、H−NMR(Mercury VX300, Varian, Inc.社、米国カリフォルニア州)、IR(Vector 22, Bruker Optics Inc. 社、米国、マサチューセッツ州)、及びLC−MS(Finnigan LCQDuo, ThermoQuest社、米国、ニューヨーク州)によってリンカの形成が、確認された。
【0109】
H−NMR、IR、及び LC−MSの分析
H−NMR(CDCL中のOMCCAの):ピーク:0.008, 0.849, 0.893, 1.009, 1.245, 1.450, 1.577, 2.157, 2.160, 2.167, 2.173, 2.178, 2.181, 3.349, 3.372, 6.692, 7.257ppm
IR: ピーク:626.89, 695.63, 722.35, 834.46, 899.52, 910.59, 934.79, 1045.94, 1120.05, 1163.30, 1214.60, 1260.82, 1362.15, 1408.40, 1431.38, 1468.04, 1541.02, 1629.86, 1701.35, 2850.80, 2923.84, 3087.43, 3318.81, 3453.91 cm-1
LC−MS: ピーク:490.17, 491.26
【0110】
NMRとIRのスペクトラムの分析は、リンカOMCCAの形成を確認するものであるが、LC−MSのスペクトルは、490g/molである生成物の分子量を実証するものである。
【0111】
例2−ポリマの合成
(A)PEG−PLAの合成と特性
PEG−PLA(5:20)を、Bazile D. et al.[Bazile D, et al. J Pharm Sci, 84: 493-498(1995)]に記載されているような良く知られた手順に従って合成した。簡単に言えば、分子量5000のメトキシポリエチレングリコール(Sigma-Aldrich Chemie GmbH社、シュタインハイム、ドイツ)12gを、D, L-ラクチド(Purasob, Purac社、ゴリンヘム、オランダ)12gと、135℃の乾燥した条件で、2時間混合した。
【0112】
ポリマを、H−NMR(Mercury VX 300、Varian, Inc.社、米国、カリフォルニア州)と、示差走査熱量計(STARe, Mettler Toledo社、米国、オハイオ州)によって分析した。
【0113】
ジブロックポリエチレングリコール(分子量5000)とポリ乳酸(分子量20000)ポリマ(PEG−PLA5:20)を、上述したとおり合成した。ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)は、分子量20000と多分散指数1.47を示した。このポリマをH−NRMと、示差走査熱量計(DSC)によって分析した。
【0114】
H−NMR及びDSC分析
1H−NMR(PEG−PLA(5:20)の):ピーク:-0.010, -0.008, -0.001, 1.206, 1.543, 1.560, 1.567, 1.581, 1.591, 3.641, 5.136, 5.145, 5.159, 5.169, 5.182, 5.192, 5.207, 5.215, 5.231, 7.256
DSC(PEG−PLA(5:20)3.98mg)
ピーク1:インテグラル−118.88mJ、開始28.70℃、ピーク43.24℃、加熱率10℃/分
ピーク2:インテグラル−1234.12mJ、開始237.54℃、ピーク273.98℃、加熱率10℃/分
【0115】
NMRとDSCスペクトラムの分析は、ジブロックポリマの形成を明確に示す。PEGがPLAに共有結合的に付着していることを推論することができる。
【0116】
(B)ポリ乳酸及びポリ(エチレングリコール−co−乳酸)の合成
ポリマ:ポリ乳酸(PLA)とポリ(エチレングリコール−co−乳酸)(mPEG−PLA)を、触媒(4)として第一スズ1−ヘキサノン酸エチルの存在下で開環重合法を用いて合成した。PLAを合成する場合、共触媒として、D,L−乳酸(30g)とベンジルアルコール(32mg)を250mlの乾燥トルエンに溶かし、一方、mPEG−PLAの合成の場合、メトキシポリエチレングリコール(mPEG、MW5000)1.5gを共触媒として使用し、すでに30gのD,L−乳酸を含む250mlの乾燥トルエンに加えた。還流混合物をディーンスターク装置で4時間攪拌して、水を共沸除去した。残りの水を除去した後、第一スズ1−ヘキサノン酸エチル(245mg)を加えた。次いで、混合物を135℃で4時間加熱した。粗ポリマを塩化メチレンに溶かし、4リットルの冷たいプロピルエーテル/石油エーテル混合物(3:2)の中に2回沈殿させた。特性を決定する前に、ポリマを真空乾燥させた。コポリマの合成は、次のスキーム2に記載されている。


ポリ乳酸及びポリ(エチレングリコール−co−乳酸)の特性
【0117】
このコポリマを、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)システムによって特性決定した。このシステムは、2410屈折率検出器(Waters社、マサチューセッツ州、ミルフォールド)付のWaters 1515 定組成高性能エキタイクロマトグラフィ(HPLC)ポンプと、20μlループ付Rheodyne社(カリフォルニア州、コタチ)製噴射弁からなる。リニアStyrogel HRカラム(Waters社、マサチューセッツ州)を介して、1mL/分の流量で、クロロホルムでサンプルを溶出した。分子量は、BREEZEバージョン3.2(著作権2000、Waters Corporation社のコンピュータプログラム)を用いて、分子量レンジ54-277.7KDaのポリスチレン標準(Polyscience社、ペンシルバニア州、ワーリントン)を基準にして決定した。熱分析は、亜鉛(Zn)及びインジウム(In)標準でキャリブレートした、Mettler TA4000-DSC示差走査熱量計(Mettler-Toledo社、シュバルツゼンバッハ、スイス)で、窒素雰囲気下で20℃/分の加熱率で、決定した。H−NMRスペクトル(CDCl3中)は、内部標準としてTMSを用いて、Varian 300MHz スペクトロメータ(Varian Inc.社、パロアルト、米国、カリフォルニア州)に記録した。
【0118】
分子量が20000−146000の範囲のポリマが得られた。PLA及びmPEG−PLAポリマの基本化学構造が、これらの組成に合致する1H−NMRスペクトルによって確認された。1.55ppmで重なっている二重線は、D−及びL−乳酸の繰り返しユニットでなるメチル基が原因である。5.2ppmで重なる三重線は、乳酸CH基に対応する。mPEG−PLAスペクトルを分析すると、3.65ppmでピークが検出された。これは、mPEGのメチレン基に合致する。
【0119】
サーモグラフから得たデータ(表1を参照)によれば、PEG:PLA20のみが、43.2℃で融点熱事象が発現する結晶ドメインを示した。観察された結晶ドメインは、おそらく、ガラス転移温度T(表1参照)のみを示す、PLA40000、mPEG−PLA100000及びPLA100000のサーモグラフ中に融点事象がないことによってわかるように、mPEG−PLA20000コポリマ鎖中の結晶PEG5000の顕著な存在に関連する。実際、表1にあるように、40000乃至100000のPLA鎖が増えると共に、Tが高くなっている。高次のmPEG鎖が結晶特性を誘発する一方で、非結晶状態を示すPLA鎖の次数がより低いことは、よく知られている。PEGが消費されるときのmPEG-PLA中のPLA鎖のこの増加が、コポリマの非結晶特性を増加させ、次いで、Tが上がる。
【0120】
(表1)合成ポリマの物理特性

分子量はGPCによって決定した。ガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)はDSCによって決定した。Mnは、分子量の数平均であり、Mwは分子量の重量平均である。
【0121】
(A)ナノ粒子(NPs)の調整と特性決定
NP’sの調整
PLAナノ粒子を、Fessi H et al.[Fessi H, et al. Int. J. Pharm. 55: R1-R4(1989)]に記載されているナノ粒子−ポリマ界面蒸着法によって準備した。簡単に述べると、ポリマPLA(Boehringer Ingelheim社から購入したポリ乳酸、30KDa)88mgとコポリマPEG−PLA38mg、5:20(分子量5000のポリエチレングリコールと、分子量20000のポリ乳酸)を、水溶性有機溶剤であるアセトン20mlに溶かした。この有機相に対して、薬剤ドセタキセル10mgを加えた。抗体を結合させるために、この有機相にリンカOMCCA20mgを加えた。結果物としての有機相を、次いで、界面活性剤(Macrogol 15 ヒドロキシステアレート)として、Solutol(登録商標)HS15(BASF社、ルードウイッヒシャーフェン、ドイツ)100mgを含有する水相50mlへ加えた。この分散液を900rpmで、1時間以上混合して、次いで、減圧下で20mlまで蒸発させた。NPsを、ビバスピン300KDaカットオフを用いて燐酸緩衝食塩水で5−6回洗浄した。球形ポリマ状の、ナノメートル(100−500nm)粒子が、この条件の下で自然発生的に形成された。
【0122】
(表2)リンカ(OMCCA)含有製剤

(a)SolutolR HS 15 (0.5% w/v): Macrogol 15 ヒドロキシステアレートを水に溶かして濃度0.5%とした。
【0123】
薬物取り込みの効力
薬物カプセル化(取り込み)の効力は、Kontron Instruments(Watford社、英国)325ポンプと、227nmに調整したKontron Instruments 332検出器、及びKontron Instruments 360自動サンプラからなるHPLCシステムを用いて決定した。LichroCART (Merck Darmstadt社、ドイツ) C18 (250*4 mm, 5um)カラムによって分離した。移動相は、1ml/分の流量の水中の50%のアセトニトリルであった。ドセタキセルの滞留時間は10分であった。
【0124】
ナノ粒子の特性決定
(1)粒子サイズの分析
平均径と粒子サイズ分布の測定を、25℃でALV非観血式後方散乱高性能粒子寸法測定器(ALV-NIBS HPPS, ランゲン、ドイツ)を用いて、水(屈折率:1.332;粘度:0.894543)を希釈液として行った。波長632nmのレーザビームを用いた。感度レンジは0.5nm乃至5μmであった。
【0125】
(2)界面動電位の測定
二重に蒸留したNPs/免疫NPsの界面動電位を、Malvernゼータ電位測定装置(Malvern社、英国)を用いて測定した。
【0126】
(3)TEMを用いた形態学的評価
免疫NPsの形態学的評価は、金標識ヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories米国、ペンシルバニア州)を用いて、透過型電子顕微鏡(TEM)で行った。
【0127】
ブランクのトラスツズマブ免疫NPs(活性成分を含まない)を金標識ヤギ抗ヒトIgGでインキュベートし、2%、pH6.4のリンタングステン酸で陰性染色した。
【0128】
結果
薬物取り込みの効果
ナノ粒子中及び免疫ナノ粒子中の細胞障害性薬物ドセタキセル(DCTX)のカプセル化効率を、HPLCによって測定したところ、それぞれ、100%と49%であることがわかった。DCTXを装填したNPsの理論上の薬物含有量である、7.4%、w/w(PLA:PEG−PLA:DCTXの初期重量比; 88:38:10)が、DCTX免疫ナノ粒子の薬物含有量である、3.3%、w/w(PLA:PEG−PLA:DCTX:OMCCAの初期重量比;88:38:10:20)より有意に高かった。DCTX含有物におけるこの顕著な差異は、ポリママトリックス中のリンカの存在に関連するかもしれない。ナノ粒子形成中に、このリンカは、おそらく、DCTXと競合して、その取り込み限度を7.4から3.3%に減らす。
【0129】
粒子サイズの分析
様々なNPsの平均サイズ及び粒子サイズ分布を、ALV法を用いて測定した。ブランクNPs(活性成分を含まない)の平均径は、60nmであり、一方、ブランクの免疫NPs(活性成分を含まない)と、DCTX装填免疫NPsの径は、それぞれ、150nmと180nmであった。NPsのこの顕著な径の増加は、リンカの存在に関連している。リンカは、おそらくより大きいNPsを形成する水相へのアセトンの拡散を低減する。
【0130】
界面動電位の測定
ブランクNPsの界面動電位は−18mVであり、抗体結合NPsの界面動電位は−7mVに減った(図2)。この界面動電位の減少は、pH7.4のトラスツズマブの正電荷に関連する。なぜなら、この等電点は9だからである。
【0131】
TEMを用いた形態学的評価
図3A−3Bに記載した結果から、各金黒スポットは、ナノ粒子表面に付着した一のトランスツズマブ分子を表すことがわかる。MAbは、リンカによってナノ粒子の表面に効率的に結合し、反応状態は、二次抗体へのMabの初期の親和性に影響しないことが推測された。
【0132】
(B)標的部分との結合
チオール基を生成するための抗体の修飾
MAb上のチオール基を、2-イミノチオレーン試薬 [トラウトの試薬、 Sigma-Aldrich Chemi GmbH社、シュタインハイム、ドイツ、Traut RR, et al. Biochemistry. 12(17): 3266-73(1973)]を用いて増やした。トラウトの試薬を、精製トランスツズマブと共に、30:1のモル比で、45分間インキュベートした。トラウトで修飾したMAbを、HiTrap脱塩コラム(Amersham Bioscience社、ウプサラ、スエーデン)で分離した。修飾MAbを含む画分を、280nmのUVで測定した。フリーチオール基を、5,5’-ジチオ-ビス(2-ニトロベンゾイック酸)(エルマンの試薬、Sigma-Aldrich Chemie GmbH社、シュタインハイム、ドイツ)を用いて、412nmの吸光度の変化をモニタすることによって測定した。トラウトの試薬と反応させると、mAbが反応スルフヒドリルを有する。これは、OMCCAなどのマレイミド基を支えるスルフヒドリル反応架橋試薬との結合プロトコルに用いルことができる。以下のスキーム(3)は、低減した抗体とリンカのマレイミド基との間の可能な結合反応を示す。
【0133】

【0134】
共役反応
ポリマPLA88mg(ポリ乳酸、30KDm コポリマPEG−PLA38mg、5:20と、薬物ドセタキセル0又は10mgと、DCTXナノ粒子のブランクナノ粒子146mgまたは156mgの総量と同等の、クロスリンカOMCCA20mg)(PLA:PEG−PLA:DCTX:OMCCA; 88:38:0/10:20)を、0.1Nの水酸化ナトリウムでpH6.5に調整し、トラウト修飾トラスツズマブ(最終濃度1mg/ml)で、夜通し、4℃で、連続的に攪拌して、窒素雰囲気下でインキュベートした。非反応マレイミド基は、2-メルカプトエタノール(Pierce社、米国、イリノイ州)で30分間インキュベートする間にブロックされた。非結合抗体と2-メルカプトエタノールは、Sepharose CL−4Bコラム(Amersham Bioscience社、ウプサラ、スエーデン)で、ゲルフィルタレーションによって免疫ナノ粒子から分離した。BCAプロテインアッセィ(ビシンコニン酸プロテインアッセィ)(Pierce社、米国、イリノイ州)によって、 [Smith P.K., et al. Anal. Biochem. 150: 76-85(1985)] に記載されているように結合効率を評価した。
【0135】
様々な量の結合抗体を有する免疫ナノ粒子を調整するために、トラウト修飾トラスツズマブのマレイミド活性化粒子に対する初期比率を変化させた。実際に調査した比率は、MAb26mgに対してブランクNPs146mg又はDCTX NPs156mgであった。
【0136】
最終的な免疫ナノ粒子の形態学的評価を、金標識ヤギ抗ヒトIgG(JacksonImmunoResearch Laboratories、米国、ペンシルバニア州)を用いて、透過型電子顕微鏡で行った。
【0137】
ナノ粒子の最終的な薬物含有量は、以下の通り評価した。まず、最終体積20mlのコロイド分散液を、30000ダルトンカットオフ(ザルトリウス、ゲッティンゲン、ドイツ)のビバスピンを用いて限外濾過を行い、2−3mlの澄んだ限外濾過液を得た。限外濾過液中のDCTXの濃度は、HPLCによって測定する。次いで、コロイド分散液の残り全てを凍結乾燥させ、重量を測定して、ナノ粒子中の薬物含有量の最終計算を行うべく全DCTX含有量の分析にかけた。様々な初期薬物増加率を試験して、最適処方を同定する。更に、コロイド分散液中に生じ得る微量の薬物結晶もモニタされる。
【0138】
ブランクナノ粒子へのトラスツマブの吸収
この測定の目的は、トラスツマブ分子がブランクナノ粒子、すなわち、表面に固定されたリンカを含まないナノ粒子に物理的に吸収されるかどうかを評価するためのものである。このため、トラスツマブ7.5mg/ml溶液100μl(1mg)を、ブランクの正及び負に荷電したナノ粒子水性分散液であって、トータルで125mgのナノ粒子を含む水性分散液1mlと室温で1時間以上混合した。この混合液(750μl)を、30mlのPBSで5回洗浄し、希釈した分散液を遠心分離(4000rpm、30分)を用いて、ビバスピン300KDaカットオフを通して濾過して、吸収されなかったMAb分子を除去した。
【0139】
PCAプロテインアッセィを用いてタンパク質の濃度を測定し、ナノ粒子上澄み液中のMAb分子の存在を検出した。
【0140】
結果
SH基の測定
修飾MAbのスルフヒドリル基の数を、エルマンの試薬を用いて、標準としてのシステアミンと比較して決定した。無傷トラスツズマブとトラウトで修飾トラスツズマブを、0.1M EDTA pH8を含有するPBS緩衝液で希釈し、エルマンの試薬でインキュベートした。未処理トラスツズマブ中の1.4に比べて、MAb当たりのトラウトで修飾したトラスツズマブSH基の測定値は31.5であった。
【0141】
結合効率の測定
NPsに結合したMAbの量を、BCAプ7ロテインアッセィを用いて測定した。NPsを、50℃で、0.1Nの水酸化ナトリウムで分解して、アッセイ試薬でインキュベートした。免疫NPs(薬物DCTXを含まない)と、免疫DCTXに装填したNPsの結合効率は、それぞれ71%と77%であった。
【0142】
ブランクナノ粒子へのトラスツズマブの吸収
正及び負の調剤のための分離を行う前後のトラスツズマブの量の比率は、それぞれ、4.2%と2.7%であった。
【0143】
これらの結果は、PBSによる連続的な洗浄の後は、ナノ粒子にMAb分子の吸着がなかったことを確認しており、従って、ナノ粒子を含むリンカへのMAbの結合は、おそらく共有結合によって仲介される。なぜなら、免疫ナノ粒子を調整する間の連続洗浄と精製プロセスは全て同じ希釈度でPBSを用いて行われるからである。
【0144】
ビバスピン膜上のMAb吸収の欠如を、MAb水溶液を同じ実験条件にして、前回の実験で確認し、上澄み液と限外濾過液中のMAb濃度が同じであることが解った。
【0145】
(C)細胞培養試験
HER−2/neu過剰発現測定
HER−2/neu過剰発現を、乳癌細胞株:SK−BR−3中で、及び、前立腺癌細胞株:LNCaP中で評価した。SK−BR−3細胞を、カバースリップ上で半密集するまで成長させた。細胞は新しい4%のパラフォルムアルデヒドを用いて10分間固定化し、洗浄して、5%のBSAで自己蛍光性をブロックした。無処理の、あるいはトラウトで修飾した(ウエルあたり400μl中0.1mg/l、0.05mg/l)、一次MAbで、4℃で細胞を一晩インキュベートした。細胞を洗浄して、FITC結合ヤギ−抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories、米国、ペンシルバニア州)の1:50希釈液で、室温で1時間インキュベートした。固定化した後、二次抗体を洗浄して蛍光顕微鏡または共焦点顕微鏡(Zeiss社, Axiovert 135M、オーバーコッヘン、ドイツ)のいずれかを用いて細胞を観察した。
【0146】
LNCaP細胞は、密集してからトリプシン処理を行い、試験管(試験管当たり10細胞)に移した。培養液を捨てて、新しい4%のパラフォルムアルデヒドを用いて10分間固定化した。細胞を洗浄して、5%のBSAで自己蛍光性をブロックした。細胞を洗浄して、何種類かのトラスツズマブ希釈液を用いて4℃で1時間インキュベートした。細胞を洗浄して、FITC結合ヤギ−抗ヒトIgG、1:100希釈液で、室温で1時間インキュベートした。二次抗体を洗浄して、流動細胞光度測定装置(FACScom, B&D)で分析した。
【0147】
結果
HER−2/neu過剰発現の測定
SK−BR−3(乳癌細胞)やLNCaP(前立腺癌細胞)などの様々な癌細胞株中のHER−2/neu過剰発現を測定するために、免疫染色とFACS分析を上述したとおりに行った。固定した細胞を、HER−2/neu過剰発現を検出するためにトラスツズマブでインキュベートした。トラスツズマブでインキュベートしなかったが、二次FITC結合ヤギ抗ヒトIgGでインキュベートした細胞をコントロールとして使用した。
【0148】
共焦点顕微鏡は、無処理の及びトラウトで修飾したトラスツズマブのSK−BR−3細胞への親和性を示す(図4A−4C)。図4Aから、トラスツズマブがないところでは蛍光がないことがわかり、一方、図4Bと4Cには、顕著な細胞表面の蛍光が見られ、細胞表面にHER−2が存在することをはっきりと示している。
【0149】
FACS分析図(図5)は、MAbの量の増加に伴うLNCaP細胞へのトラスツズマブの親和性の増加を示している。このデータは、HER−2/neuが細胞膜上で過剰発現していることを明確に示している。
【0150】
生体内結合視覚化
免疫ナノ粒子細胞結合の蛍光及び共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM)分析
FITC標識ヤギ抗−ヒトIgGでインキュベートした後、固定化SK−BR−3細胞をトラスツズマブ結合ナノ粒子製剤でインキュベートした。細胞を蛍光顕微鏡(結果は示さず)と共焦点顕微鏡(図6A−6B)を用いて調べた。免疫NPsの細胞表面への結合は、クロスリンカの濃度に比例していた。初期重量比PLA:OMCCA;50:10(図6B)のこの製剤によって誘発された蛍光は、初期重量比PLA:OMCCA;50:6(図6A)の製剤の蛍光より有意に高かった。これは、次いで生じるより高い密度のMAb、すなわち、BCAアッセイによって測定された、BのMAb濃度が150ug/mlであるのに対して、Aの濃度は40ugmlに過ぎないことによる。
【0151】
SK−BR−3細胞とLNCaP細胞を、カバースリップ上で半密集になるまで成長させた。細胞を4℃の媒体中で、様々な時間インターバルでNPsでインキュベートし、洗浄して、FITC標識ヤギ抗−ヒトIgG1:100の希釈液で、室温で1時間インキュベートした。二次抗体を洗浄して、グリセロールに固定して、蛍光顕微鏡と共焦点顕微鏡で観察した。
【0152】
共焦点顕微鏡写真が、図6A−6Bに示されており、細胞への結合が、PLA/OMCCA比50:10mg/mg(図6B)のリンカでトラスツズマブに結合したナノ粒子を含む製剤が、PLA/OMCCA比50:6mg/mg(図6A)を用いた同じ粒子に比べてより顕著であることが確認された。
【0153】
(D)MAbのばらつき
この研究の目的は、二つの異なるMAbが同じナノ粒子に結合できることを示すことである。このため、二つの異なるMAbsを用いた。トラスツズマブと、AMB8LKの抗H−フェリチンモノクロナール抗体(MAT、Evry社、フランスから購入)である。各MAbは、蛍光プローブが顕著に異なっていた。
【0154】
トラスツズマブのスルホローダミンB塩素酸標識化(赤色)
トラスツズマブ(1ml中21mg)を重炭酸ナトリウム0.165M緩衝液、pH9.4で洗浄した。DMF溶液中1mg/mlのスルホローダミンB塩素酸100μlを、MAb溶液に徐々に加えて、攪拌した。反応液を4℃で1時間インキュベートした。標識MAbをフリースルホローダミンB塩素酸から分離するために、PD10カラムを用いてPBS−EDTA pH7.2(1.8g NaHPO3(60mM)、4.35g NaCl(150mM)、0.93g EDTA(5Mm))で洗浄した。
【0155】
回収した標識MAbの最終体積は1850μlであった。溶液5μlを、1:200のPBS−EDTAで希釈して、サンプルを、波長280mn(タンパク質)と、570nm(スルホローダミンB塩素酸)で、UV分光光度計で読み取った。
1mg/mlIgG−1.4Aprotein
0.0464mg/ml IgG−0.065Aprotein
標識化度(DOL):
max*MW/[protein]*εdye=0.008*150000/0.04617*120000=0.2
【0156】
標識MAbを30Kフィルタエッペンドルフ(Pall)で1mlに濃縮し、876μl中18.4mgを6mgの2−メルカプトエチルアミドHCL(MEA)で37℃で1時間インキュベートした。MEAは、AKTAprime中で標識MAbから分離し、回収した体積は2800μlであった。各製剤を700μl中4.1mgのトラスツズマブでインキュベートした。
【0157】
AMB8LKのFITC標識化(緑色)
1ml中4.1mgのAMB8LKを重炭酸ナトリウム0.165M緩衝液pH9.4で洗浄した。DMF溶液中の10mg/mlのFITC50μlを、MAb溶液に徐々に加えて、攪拌した。反応液を4℃で1時間インキュベートした。標識MAbをフリーFITCから分離するために、PD10カラムを用いてPBS−EDTA pH7.2(1.8g NaHPO3(60mM)、4.35g NaCl(150mM)、0.93g EDTA(5Mm))で洗浄した。回収した標識MAbの最終体積は2400μlであった。溶液15μlを、1:67のPBS−EDTAで希釈して、サンプルを、波長280mn(タンパク質)と、492nm(FITC)で、UV分光光度計で読み取った。
1mg/mlIgG − 1.4Aprotein
0.0236mg/ml IgG − 0.033Aprotein
標識化度(DOL):
max*MW/[protein]*εdye=0.003*100000/0.0236*68000=4
【0158】
標識MAbを30Kフィルタエッペンドルフ(Pall)で1mlに濃縮し、345μl中1.4mgを6mgの2−メルカプトエチルアミドHCL(MEA)で37℃で1時間インキュベートした。MEAは、AKTAprime中で標識MAbから分離し、回収した体積は3200μlであった。MAb溶液を約350μlに濃縮した。製剤を1.4mgのAMB8LKでインキュベートした。
【0159】
製剤でのインキュベーション
30%PEG−PLA ナノ粒子3mlを標識トラスツズマブ4.1mgとAMB8LK1.4mgでインキュベートした。製剤を窒素雰囲気下、4℃で二晩インキュベートした。結合MAbからフリーMAbを分離するために、ナノ粒子を300Kビバスピンで3回洗浄した。
【0160】
製剤特性決定
結合効率
分離前と後の製剤のUV吸収を、UV分光光量計で読み取った。各ナノ粒子製剤50μlを、アセトニトリル1mlで希釈した。この結果物の比率が結合効率を表す(表2)。スルホローダミンB塩素酸標識トラスツズマブは570nmでの吸光度であり、FITC標識AMB8LKは492nmでの吸光度である。
【0161】
(表2)結合効率

(a)スルホロ−ダミン B クロリド酸標識 トラスツズマブ
(b)FITC標識 AMB8LK
【0162】
トラスツズマブの初期量の少なくとも21%と、AMB8LK抗体の初期量の少なくとも15%が同じナノ粒子に付着することが、上記表2に記載された結果から明らかである。二つの異なる抗体を結合して、同じナノ粒子上で異なる抗原を認識することが可能であることを示している。
【0163】
粒子サイズの分析
平均粒径を、ALV非観血式後方散乱高性能粒子寸法測定器を用いて測定したところ、平均粒径は313nmであった。
【0164】
ゼータ電位測定
分離前後のナノ粒子(3つの異なるサンプル中の)のゼータ電位を、二重に蒸留した水中で、Malvernゼータ電位測定装置(Malvern社、英国)を用いて測定した。
【0165】
(表3)分離前後のナノ粒子の電位

【0166】
蛍光顕微鏡は、粒子が緑色になったので(図示せず)、AMB8LKがナノ粒子の表面に結合したことを示した。トラスツズマブが同じ粒子に付着していても、これを視認することはできない。なぜならローダミンフィルタがないからである。
【0167】
蛍光顕微鏡は、トラスツズマブがナノ粒子表面(図示せず)に結合していることを示した。AMB8LKが同じ粒子に付着していても、これを視認することはできない。なぜならFITCフィルタがないからである。
【0168】
したがって、同じナノ粒子が、そのナノ粒子上の両抗体の存在を示すフィルタの色によって表示される色を誘発した。
【0169】
(E)ナノ粒子−抗体アッセンブリの特性決定
ナノ粒子抗体結合の安定性の研究
結合粒子の安定性を、温度の上昇、攪拌などの促進試験、および、長期保存評価を用いて生体内で調べた。
【0170】
以下の特性を調べた。平均粒径、分布、ゼータ電位、pH,及びHPLCを用いた薬物含有率。
【0171】
生体内薬物放出の動力学的評価
免疫ナノ粒子からの生体内薬物放出プロファイルは、低圧で限外濾過技術を用いて以下のとおり行われる。薬剤添加粒子(1−6mgの薬剤を含む)0.4mlを、放出媒体(シンク状態を維持している)100mlを含むAmicon8200 攪拌器(Amicon, Danvers社、米国、マサチューセッツ州)に直接入れる。所定の時間インターバルで、放出媒体をYM−100限外濾過膜(0.5bar以下)を通して、窒素ガスを用いて、低圧で濾過する。透明なろ液1mlのアリコートを分析して、HPLCを用いて薬物含有率を調べる。膜の吸収と除去は、薬物の水性濃度を正確に測定するために計数するべきであり、したがって、有効性の確認は限外濾過技術を使用する前に行われる。
【0172】
免疫ナノ粒子と細胞取り込み薬物の測定
SK−BR−3及びLNCaP細胞は、24個のウエルプレートで半密集状態まで成長させる。細胞を、クマリン−6標識ナノ粒子(ブランク粒子、DCTX装填NPs及びDCTX装填免疫NPs)で、37℃で、様々な時間インターバルをとってインキュベートした。励起波長485nm、及び発光波長520nmのFluoStar- Galaxy (BMG Labtechnologies社)で、プレートを蛍光測定する。各プレートにつき4回読み取りを行い、平均値を計算する。同じサンプルでインキュベートしていないウエルは、全蛍光に対する基準になる。
【0173】
薬物取り込みを定量化するために、密集させた後SK−BR−3及びLACaP細胞をトリプシン処理して、試験管に移す(試験管当たり10細胞)。細胞を洗浄して、5%のBSAで自己蛍光をブロックする。細胞をクマリン6標識ナノ粒子(ブランク粒子、DCTX装填NPs及びDCTX装填免疫NPs)で、様々な時間インターバルをとってインキュベートする。細胞を洗浄して、固定化し、流動細胞計測装置で分析する。
【0174】
薬力学的評価
放射能標識ポリマ[3H]-ポリ(乳酸)でできた様々な粒子製剤(ブランク粒子、DCTX装填NPs及びDCTX装填免疫NPs)を、健康なオスのBALB/cマウス(20−26g)の尾静脈に、5ml/kg注入する。注入の後、以下の時間インターバルで、動物をエーテルで麻酔した:5、10、30分、1、2、8、24、48、72時間、1、2週。次いで、血液を心臓から回収して、動物を犠牲にする。心臓、肺、肝臓、脾臓、すい臓、腎臓、乳腺、結腸、腸及び脳を切除して、食塩水ですすぐ。血液を遠心分離にかけて血漿を得る。各時間インターバルにつき、5匹の動物を使用した。様々な器官サンプルをプラスチックバイタルに保存して、分析を行うまで冷凍する(−80℃)。器官と血漿の放射活性を、液体シンチレーションカウンタを用いて測定し、体内分布を評価した。HPLCまたはLC−MSによって、ドセタキセルを測定する。
【0175】
薬品作用学モデル
PC−3.38ヒト前立腺癌細胞株を半密集に培養して、トリプシン処理を行い、PBSで洗浄した。オスのSCID/ベージュのマウス、8週齢に、ケタミン100mg/mlとキシラジン20mg/ml、85:15を筋肉注射して麻酔をかける。正中線下側腹部切開を行い、前立腺を露出させ、上述したように、腫瘍細胞(0.05mlのPBS中に5×10細胞)を前立腺に注入する[Honigmana A. et al. Mol Ther. 2001 Sep; 4(3):239-49]。
【0176】
蛍光発光遺伝子座は、ATPの存在下でルシフェリン酸化を触媒して光を発生する酵素をコード化して、冷却固体撮像素子(CCCD)カメラを用いて無傷動物の遺伝子発現の非侵襲的な視覚化を可能にする。ルシフェリンIPを投与すると、ルシフェリンがマウスやラットの様々な器官に到達して、検出可能に発光する[Caroline d. et al. Prostate. 59(3): 292-303 (2004)]。このような、生体発光撮像(BLI)を用いて、生体内でのルシフェラーゼ発現癌細胞の成長の非侵襲的モニタリングする。
【0177】
マウスを様々な治療群にランダムに振り分ける(一群当たり5−10マウス)。異なる粒子製剤(DCTX装填NPs及びDCTX装填免疫NPs)を注入する。各製剤と成分の固有の効果を評価するために、様々なナノ粒子の製剤と同じ投与において、市販のタキソテール(登録商標)も注入する。ドセタキセルは、前立腺癌用選択された薬剤であると考えられる。BLIで、1週間に一度腫瘍を測定する。腫瘍が完全に退行している場合の注入部位における腫瘍の組織病理学的検査と、様々な器官の総検査を行う。1週間に2回マウスの体重を量り、毒性を検査する。すべてのデータを、適切な統計分析を行う。更に、NPs製剤とタキソテール(登録商標)によってヒト補体を活性化する潜在性を、酵素リンク免疫吸着アッセイ(EIA)を用いて(Quidel Corporation社、米国、カリフォルニア州)評価する。
【0178】
例4
(A) 生体内研究用NP’sの作成
ポリマPLA(MW100,000)とmPEG−PLA(MW100,000)(2:1)を0.2%w/vツウイーン80を含むアセトン50ml(Sigma社、モンタナ、セントルイス)に溶かして、濃度0.6%w/vとした。薬剤装填用に、薬剤の0.08%w/vのパクリタキセル−パラミテート(pcpl)をポリマ混合物に加えて、有機相へ溶解させた。リンカOMCCA[オクタデシル-4-(マレイミドメチル)シクロヘキサン-カルボン酸]を、濃度0.04%w/vで有機相に組み入れた。この有機相を、0.25%w/vのSolutol(登録商標)HS15(BASF社、ルードウィッヒシャーフェン、ドイツ)を含む水相100mlに加えた。懸濁液を900rpmで1時間以上攪拌し、蒸発させて10mlに濃縮した。OMCCAを含む製剤をpH8.5に調整して、チオール化モノクロナール抗体(MAb)と共に窒素雰囲気下で、4℃で一晩インキュベートした。すべての製剤を0.1%のツウイーン80溶液(ビバスピン300、000MWCO、Vivascience, ストーンハウス、英国)100mlと共にダイアフィルタにかけ、1.2umのフィルタ(FP 30/1.2 CA、Schleicher & Schuell社、ダーセル、ドイツ)で濾過した。
【0179】
蛍光NPsの調整用に;濃度3×10−4%w/vのアセトンクマリン−6溶液(Sigma社、セントルイス、モンタナ州)を、水と混合する前に有機相に加えた。この特別な例のOMCCAを含有する製剤を、以下のチオール化MAbsでインキュベートした:AMB8LK(マウス抗H−フェリチン)、トラスツズマブ(ヒト抗HER−2)と、二種類のmAbsであるAMB8LKとトラスツズマブ(分子比1:1)の組み合わせ。
【0180】
放射能標識NPsの調整用に、[3H]-pcpl、13μCiを、0.02%w/vのpcplアセトン溶液と混合して有機相に加え(水と混合する前に)、上記製剤中のpcpl総用量を10mgとした。
【0181】
(B)薬物装填免疫ナノ粒子のPC−3.38細胞に対する親和性
トラスツズマブに結合したpcpl装填NPsを上述のとおり準備した。2mlの媒体(RPIM1640、Biological Industries社、 Beit Aemek, Israel)中のヒト前立腺癌細胞過剰発現HER−2(PC−3.38細胞300、000)を、12ウエルプレートのカバースライドに乗せて、37℃で、5%の二酸化炭素雰囲気中で24時間インキュベートして半密集にした。細胞を、4%のパラフォルムアルデヒド溶液(Fluka社、シュタインハイム、スイス)で固定化して、1%のBSA溶液(Sigma社、セントルイス、モンタナ州)で、室温でインキュベートした。BSA溶液を捨てた後、希釈した製剤(1:100)をこの細胞で4℃で2時間インキュベートした。細胞を冷たいPBS溶液(Biological industries社、 Beit Aemek, Israel)で3回洗浄し、次いで、FITC標識ヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories, 米国、ペンシルバニア州)でインキュベートした。冷たいPBS溶液で細胞を再度洗浄し、ガラススライドに固定して、Olympus 1X70共焦点レーザ走査顕微鏡(Olympus Co., Ltd. 東京、日本)で検査した。
【0182】
結果
モノクロナール抗体トラスツズマブに結合したpcpl免疫NPsは、図7A−7Dに示すように、PC−3.38細胞に過剰発現したHER2レセプタに対して親和性を示しており、結合プロセスが、トラスツズマブの元々の親和性結合に影響しないことを確認するものである。
【0183】
(C)蛍光製剤のPC-3.38細胞に対する生体内での取り込み
PC−3.38細胞(300,000細胞)を成長させて、12ウエルプレート上に半密集させた。NPsと免疫NPsをクマリン−6で標識化した。次いで、細胞を、1:1000に希釈した標識NPsと、トラスツズマブ免疫NPsで、1mlの培地に、37℃で、5%のCO2雰囲気中で、3時間以上インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、細胞を4%のPFAで固定し、グラススライドに装填して、CLSM(LSM410、Zeiss社、オーバークロッケン、ドイツ)で観察した。
【0184】
CLSMの観察は、細胞原形質及び細胞膜中の蛍光免疫ナノ粒子の存在が、普通の蛍光ナノ粒子(図8A)に比べて有意に増えている(図8B)ことを示している。
【0185】
(D)蛍光製剤の細胞株への結合
蛍光NPsと免疫NPsを上述のとおり準備した。これらの製剤の物理的特性を表4に示す。
【0186】
(表4)蛍光NPsと物理的特性

【0187】
(E)蛍光製剤の細胞株への結合
2mlの媒体(RPIM1640及びDMEM、それぞれ、Biological Industries社、 Beit Aemek, イスラエル)中のヒト前立腺癌細胞(300,000、PC−3.38、過剰発現H−フェリチン)及びヒトすい臓癌細胞(300,000、CAPAN−1、ヒトすい臓癌、過剰発現HER-2)を、12ウエルプレートのカバースライドに乗せて、37℃で、5%の二酸化炭素雰囲気中で24時間インキュベートして半密集にした。細胞を、4%のパラフォルムアルデヒド溶液(Fluka社、シュタインハイム、スイス)で固定化して、1%のBSA溶液(Sigma社、セントルイス、モンタナ州)で、室温でインキュベートした。BSA溶液を捨てた後、希釈した蛍光製剤(1:2000)をこの細胞と共に4℃で2時間インキュベートした。細胞を冷たいPBS溶液(Biological industries社、Beit Aemek, Israel)で3回洗浄し、ガラススライドに固定して、Olympus 1X70共焦点レーザ操作顕微鏡(Olympus Co., Ltd. 東京、日本)で検査した。
【0188】
結果
図9A乃至9Dに示すデータは、AMB8LKに結合した免疫NPs(図9B)またはトラスツズマブに結合した免疫NPs(図9C)、または1:1の比率のトラスツズマブとAMB8LKに結合した免疫NPs(図9D)を示し、AMB8LK免疫NPsは、特に、CAPAN-1中に過剰発現することが知られているH−フェリチンを認識し、トラスツズマブ免疫NPsは、HER-2受容体が過剰発現しないので、CAPAN-1を認識しなかった。しかし、組み合わせた免疫NPsをCAPAN−1細胞でインキュベートすると、NPsが細胞を認識して、AMB8LKの親和性が、トラスツズマブの存在と同じナノ粒子への結合によって影響を受けないことを明らかに示している。
【0189】
同じセットの免疫NPsを、HER−2受容体を過剰発現することが知られているPC3.38でインキュベートした。図10A乃至10Dに示すデータから、トラスツズマブ結合NPsがPC3.38細胞を認識する(図13B)ことが明らかである。驚いたことに、AMB8LK結合NPsも、PC3.38細胞を認識し(図13C)、これらの細胞がH−フェリチン抗原を過剰発現することを示している。
【0190】
(F)PC3.38細胞への放射線標識製剤の取り込み
培地中の細胞による放射能標識化製剤からの薬物の取り込みを、[H]−パクリタキセル−パルミテート([H]-pcpl)を含む溶液で、37℃で、3時間以上インキュベートした後、行った。2mlの媒質(RPMI1640)中のPC−3.38細胞(500,000)を12ウエルプレートに入れて、37℃で、24時間、5%の二酸化炭素雰囲気でインキュベートした。各ウエルにおいて、使用した初期放射線活性の総量が45μCiの [3H]-pcpl溶液、 [3H]-pcpl装填NPs、及びトラスツズマブに結合した[3H]-pcpl装填NPsであり、これは22μgのpcplと等価であった。37℃で、3時間、5%の二酸化炭素雰囲気でインキュベートした後、製剤を捨てて、細胞をPBSで3回洗浄した。細胞をトリプシン処理して、水酸化ナトリウム溶液で処理した。放射線活性を、Ultima-Goldシンチレーション混合物(Packard Instruments社、 米国、マサチューセッツ州、ボストン)中で、ベータカウンタ(Kontron Instruments社、ミラノ、イタリア)でモニタした。
【0191】
結果
図11に示すように、総放射線活性から取り込み率計算した。pcpl免疫NPsの取り込み率は、pcplNPs及びpcpl溶液の取り込み率より、顕著に高かった。これらの発見は、MAbsを用いた所望の組織への薬物装填コロイドキャリアの特定の標的化を確証するものである。
【0192】
(G)マウスの免疫NPsの動的薬理学及び生体分散
クレモフォールEL:エタノール溶液中の[3H]-pcplと、[3H]-pcpl装填NPsと、トラスツズマブに結合した[3H]-pcpl装填NPsの生体分散及び動的薬理学的プロファイルを、オスのBalb/Cマウス、8週齢で調べた。4匹のマウスを各群に振り分けた。この群では、pcpl7.5mg/kgの総投与量と同等である[3H]-pcplの0.225μCi放射線活性投与が、1回の大量瞬時投与で尾静脈に注入された。頚椎脱臼によって動物を犠牲にして、対象の組織(すなわち、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、血液及び血漿)を同定し、単純な外科的技術を用いて取り除いた。滅菌食塩水(0.9%塩化ナトリウム)1mlで洗浄した後、組織の重量を測定し、水溶性組織可溶化剤(Packard社、 グロニンゲン、オランダ)1mlでインキュベートし、組織を30%の過酸化水素溶液(Fluka社、シュタインハイム、スイス)で脱色した。放射線活性を、Ultima-Goldシンチレーション混合物(Packard Instruments社、 米国、マサチューセッツ州、ボストン)中で、ベータカウンタ(Kontron Instroments社、ミラノ、イタリア)でモニタした。対数直線グラフに、時間に対する[3H]-pcplの血中濃度をプロットし(図6)、薬剤の動的薬理学パラメータを、WinNonlin(登録商標)Professionalソフトウエア、バージョン4.0.1を用いて無隔壁分析によって更に調べ、結果を表5に示した。組織中の薬剤のパーセンテージを薬剤初期投与量からグラム組織に標準化するときの、対象組織中の[3H]-pcplの生体分布を、選択された時間インターバルで示す(図12A乃至12F)。
【0193】
結果
図12A乃至12F及び表5に示すデータは、pcpl NPsと免疫NPsの滞留時間が、pcpl溶液より、血液中においてより長いことを示している。両ナノ粒子送達システム共、循環における薬物放出の引き延ばしに成功しており、ナノ粒子の隠れた特性によって、pcplの本質的な動的薬理学プロファイルが隠れていた。実際、NP表面に位置するPEG部分によって誘発された立体障害が、NPsのオプソニン化を防げて、循環時間を引き延ばす。pcplNPsと免疫NPsのターミナル半減期がそれぞれ14.6時間と20時間であり;pcpl溶液によって誘発される半減期8.3時間より有意に長いことは興味深い。更に、免疫NPsは、NPsより高い半減期値を示した。これは、おそらく、NP表面にトラスツズマブが結合した結果である。巨大分子である抗体は、おそらく、いくらかの追加の立体障害を与え、表5に示すデータからわかるように、正常にペグ化したNPsに比較して滞留時間を長くする。pcplNPsと免疫NPsは共に、pcpl溶液の無限大でのAUC値に比較して、CmaxとAUC値を顕著に上げた(表5)。しかし、pcplNPsとpcpl免疫NPs間のCmaxとAUC値には差がなかった。
【0194】
(表5)[3H]-pcpl製剤の動的薬理学パラメータ

【0195】
図12A乃至12Fは、健康な動物における最大48時間までの様々な時間での3種の製剤の器官分布を示す図である。pcplNPsと免疫NPsが、細胞内皮系、主に肝臓と脾臓によって除去されることが明らかである。なぜなら、初期投与量の50%以上が注入後48時間で肝臓と脾臓の両方に達するからである。赤血球による選択的なNPsの取り込みは観察されない。なぜなら、血液と血漿の間にNPsのプロファイルに相違がないからである。
【0196】
腫瘍のあるマウスは、HER2受容体を過剰発現し、従って、上述したものと同じ分析を、SCID/ベージュマウス(すなわち、腫瘍のあるマウス)を用いて行うと、本発明の放射線標識標的NPsが腫瘍領域に蓄積されることがわかる。
【0197】
本発明は、好ましい実施例を参照して記載されているが、当業者は多くの代替例、変更例、及び変形例を本発明の精神と範囲から外れることなく行うことができると解される。従って、特許請求の範囲の精神と広い範囲内にあるこのような代替例、変更例、及び変形例を包含することを意図している。
【0198】
この明細書に記載されているすべての公開物、特許及び特許出願は、明細書中に全体的に参照されており、この公開物、特許、特許出願が、特別に及びここに、参照されていることを記載しているかのようである。
【図面の簡単な説明】
【0199】
本発明を理解し、実際に本発明がどのように実行されるのかを理解するために、添付図面を参照して非限定的な例としての好ましい実施例を説明する。
【図1A】図1Aは、本発明にかかる送達粒子の概略図である。リンカ(OMCCA)は、粒子に固定された第1の部分と、当該粒子の表面に露出し手抗体(Y)に結合されている第2の部分(マレイミド)を有する(図1A);送出粒子はさらに、ポリエチレングリコ−ルで修飾されたポリマ部分(図1B)を具え、ポリママトリックスに埋め込まれた薬物担持していてもよい(図1C)。
【図1B】図1Bは、本発明にかかる送達粒子の概略図である。リンカ(OMCCA)は、粒子に固定された第1の部分と、当該粒子の表面に露出し手抗体(Y)に結合されている第2の部分(マレイミド)を有する(図1A);送出粒子はさらに、ポリエチレングリコ−ルで修飾されたポリマ部分(図1B)を具え、ポリママトリックスに埋め込まれた薬物担持していてもよい(図1C)。
【図1C】図1Cは、本発明にかかる送達粒子の概略図である。リンカ(OMCCA)は、粒子に固定された第1の部分と、当該粒子の表面に露出し手抗体(Y)に結合されている第2の部分(マレイミド)を有する(図1A);送出粒子はさらに、ポリエチレングリコ−ルで修飾されたポリマ部分(図1B)を具え、ポリママトリックスに埋め込まれた薬物担持していてもよい(図1C)。
【図2】図2は、非結合粒子(ブランク)、トラスツズマブ結合粒子(免疫NPs)、トラスツズマブ結合及び薬物装填粒子(免疫DCTX NPs)のゼ−タ電位測定を示す三次元棒グラフである。
【図3A】図3Aは、12nmの金標識ヤギ抗ヒトIgGを用いて、200nm(図3A)と100nm(図3B)の2つのスケ−ルで撮像した、本発明にかかる抗体結合ナノ粒子の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【図3B】図3Bは、12nmの金標識ヤギ抗ヒトIgGを用いて、200nm(図3A)と100nm(図3B)の2つのスケ−ルで撮像した、本発明にかかる抗体結合ナノ粒子の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【図4A】図4Aは、FITC−結合抗ヒトIgGによって視覚化した、SK−BR−3細胞に結合したトラスツズマブのFITC画像であり、トラスツズマブなしで粒子をインキュベ−トした後(図4A);免疫粒子、すなわちトラスツズマブに結合させてインキュベ−トした後、(図4B);あるいはトラウト(Traut)修飾トラスツズマブ−結合ナノ粒子でインキュベ−トした後(図4C);の画像である。
【図4B】図4Bは、FITC−結合抗ヒトIgGによって視覚化した、SK−BR−3細胞に結合したトラスツズマブのFITC画像であり、トラスツズマブなしで粒子をインキュベ−トした後(図4A);免疫粒子、すなわちトラスツズマブに結合させてインキュベ−トした後、(図4B);あるいはトラウト(Traut)修飾トラスツズマブ−結合ナノ粒子でインキュベ−トした後(図4C);の画像である。
【図4C】図4Cは、FITC−結合抗ヒトIgGによって視覚化した、SK−BR−3細胞に結合したトラスツズマブのFITC画像であり、トラスツズマブなしで粒子をインキュベ−トした後(図4A);免疫粒子、すなわちトラスツズマブに結合させてインキュベ−トした後、(図4B);あるいはトラウト(Traut)修飾トラスツズマブ−結合ナノ粒子でインキュベ−トした後(図4C);の画像である。
【図5】図5は、まず、異なる量のトラスツズマブでインキュベ−トし、ついでFITC−結合抗ヒトIgGでインキュベ−トしたLNCaP細胞の、1ug、10ug、及び50ug、及びコントロ−ルについてのFACS分析を示す図である。
【図6A】図6Aは、PLA/OMCCA比50:6mg/mgのトラスツズマブ結合ナノ粒子でインキュベ−トしたSK−BR−3細胞(図6A);又は、PLA/OMCCA比50:10mg/mgのトラスツズマブ結合ナノ粒子でインキュベ−トしたSK−BR−3細胞(図6B);の共焦点顕微鏡写真を示す図である。
【図6B】図6Bは、PLA/OMCCA比50:6mg/mgのトラスツズマブ結合ナノ粒子でインキュベ−トしたSK−BR−3細胞(図6A);又は、PLA/OMCCA比50:10mg/mgのトラスツズマブ結合ナノ粒子でインキュベ−トしたSK−BR−3細胞(図6B);の共焦点顕微鏡写真を示す図である。
【図7】図7A乃至7Dは、明視野顕微鏡によって得た二つのバッチ(図7A−7B、第1及び第2のバッチ)と、蛍光顕微鏡によって得た二つのバッチ(図7C−7D、第1及び第2のバッチ)からの、パクリタキセル−パルミテ−ト装填トラスツズマブNPsのPC3.38への結合を示す画像である。
【図8】図8A及び8Bは、共焦点レ−ザスキャニング顕微鏡(CLSM)で測定したクマリン−6標識NPs(図8A)及びクマリン−6標識トラスツズマブ免疫NPs(図8B)のPC−3.38細胞による細胞取り込みを示す画像である。
【図9】図9A乃至9Dは、蛍光顕微鏡で測定した、クマリン−6標識NPs(図9A)、AMB8LK免疫NPs(図9B)、トラスツズマブ免疫NPs(図9C)、及び、トラスツズマブとAMB8LKに結合した免疫NPs(図9D)のCAPAN−1細胞による細胞取り込みを示す画像である。
【図10】図10A乃至10Dは、蛍光顕微鏡で測定した、クマリン−6標識NPs(図10A)、トラスツズマブ免疫NPs(図10B)、AMB8LK免疫NPs(図10C)、及び、トラスツズマブとAMB8LKに結合した免疫NPs(図10D)のPC−3.38細胞による細胞取り込みを示す画像である。
【図11】図11は、PC3.38細胞によるpcplの細胞取り込みを示す棒グラフであり、細胞が[H]−pcpl溶液(pcpl溶液);[H]−pcpl装填NPs(pcplNPs);及び、トラスツズマブに結合した[H]−pcpl装填NPs(pcpl免疫NPs)でインキュベ−トしたときの細胞取り込みを示す。値は、平均±SD、N=5である。
【図12A】図12は、異なる組織中で、溶液(pcpl溶液)の形で、NPs上に装填した(pcplNPs)、またはトラスツズマブに結合したNPs上に装填した取り込んだ(Cppl免疫NPs);グラム組織に標準化した表示組織に静脈注射を行った後の、血中pcpl濃度を示すグラフであり、静脈注射後5分(図12A);静脈注射後1時間(図12B);静脈注射後2時間(図12C);静脈注射後6時間(図12D);静脈注射後24時間(図12E)、及び静脈注射後48時間(図12F)の濃度を示す。値は平均±SD、N=4である。
【図12B】図12Bは、異なる組織中で、溶液(pcpl溶液)の形で、NPs上に装填した(pcplNPs)、またはトラスツズマブに結合したNPs上に装填した取り込んだ(Cppl免疫NPs);グラム組織に標準化した表示組織に静脈注射を行った後の、血中pcpl濃度を示すグラフであり、静脈注射後5分(図12A);静脈注射後1時間(図12B);静脈注射後2時間(図12C);静脈注射後6時間(図12D);静脈注射後24時間(図12E)、及び静脈注射後48時間(図12F)の濃度を示す。値は平均±SD、N=4である。
【図12C】図12Cは、異なる組織中で、溶液(pcpl溶液)の形で、NPs上に装填した(pcplNPs)、またはトラスツズマブに結合したNPs上に装填した取り込んだ(Cppl免疫NPs);グラム組織に標準化した表示組織に静脈注射を行った後の、血中pcpl濃度を示すグラフであり、静脈注射後5分(図12A);静脈注射後1時間(図12B);静脈注射後2時間(図12C);静脈注射後6時間(図12D);静脈注射後24時間(図12E)、及び静脈注射後48時間(図12F)の濃度を示す。値は平均±SD、N=4である。
【図12D】図12Dは、異なる組織中で、溶液(pcpl溶液)の形で、NPs上に装填した(pcplNPs)、またはトラスツズマブに結合したNPs上に装填した取り込んだ(Cppl免疫NPs);グラム組織に標準化した表示組織に静脈注射を行った後の、血中pcpl濃度を示すグラフであり、静脈注射後5分(図12A);静脈注射後1時間(図12B);静脈注射後2時間(図12C);静脈注射後6時間(図12D);静脈注射後24時間(図12E)、及び静脈注射後48時間(図12F)の濃度を示す。値は平均±SD、N=4である。
【図12E】図12Eは、異なる組織中で、溶液(pcpl溶液)の形で、NPs上に装填した(pcplNPs)、またはトラスツズマブに結合したNPs上に装填した取り込んだ(Cppl免疫NPs);グラム組織に標準化した表示組織に静脈注射を行った後の、血中pcpl濃度を示すグラフであり、静脈注射後5分(図12A);静脈注射後1時間(図12B);静脈注射後2時間(図12C);静脈注射後6時間(図12D);静脈注射後24時間(図12E)、及び静脈注射後48時間(図12F)の濃度を示す。値は平均±SD、N=4である。
【図12F】図12Fは、異なる組織中で、溶液(pcpl溶液)の形で、NPs上に装填した(pcplNPs)、またはトラスツズマブに結合したNPs上に装填した取り込んだ(Cppl免疫NPs);グラム組織に標準化した表示組織に静脈注射を行った後の、血中pcpl濃度を示すグラフであり、静脈注射後5分(図12A);静脈注射後1時間(図12B);静脈注射後2時間(図12C);静脈注射後6時間(図12D);静脈注射後24時間(図12E)、及び静脈注射後48時間(図12F)の濃度を示す。値は平均±SD、N=4である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送達システムにおいて:
(i)ポリマベースのナノ粒子と;
(ii)前記ナノ粒子に非共有結合的に固定された第1の部分であって、前記第1の部分の少なくとも一部が、前記ナノ粒子に埋め込んだ親油性セグメントを具える第1の部分と、前記ナノ粒子の外側表面に露出させたマレイミド化合物を具える第2の部分と、を具えるリンカと;
を具えることを特徴とする送達システム。
【請求項2】
請求項1に記載の送達システムにおいて、前記リンカが両親媒性分子であることを特徴とする送達システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の送達システムにおいて、前記親油性部分が炭化水素または少なくとも8個の炭素を具える脂質を具えることを特徴とする送達システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の送達システムにおいて、前記リンカが以下の一般式(I):

を有し、
ここで、Yはヘテロ原子、C1−C20アルキレンまたはアルケニレン、C−C20シクロアルキレンまたはシクロアルケニレン、C−C20アルキレン−シクロアルキキレンを表し、前記アルキレンまたはアルケニレンの炭素原子の一つがヘテロ原子と交換可能であり;
Xは、-C(O)-R1, -C(O)-NH-R1, -C(O)-O-C(O)-R1, C(O)NH-R2-R1, または -C(O)-NH-R2-C(O)-NH-R1から選択されたカルボニル含有部分を表し、ここで、Rは,炭化水素または少なくとも8つの炭素を具える脂質、及びRは,疎水性ポリマを表す、
ことを特徴とする送達システム。
【請求項5】
請求項4に記載の送達システムにおいて、前記Rが、モノまたはジアクリルグリコール、リン脂質、スフィンゴ脂質、スフィンゴリン脂質、または脂肪酸であることを特徴とする送達システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載の送達システムにおいて、前記Yがアルキレン−シクロヘキサンであることを特徴とする送達システム。
【請求項7】
請求項6に記載の送達システムにおいて、前記Yが、式 -CH2-C6H10- を有するアルキレン−シクロアルキキレン;Xが、式 -C(O)-NH-R1を有する部分を含むカルボニルであり、Rが脂肪酸であることを特徴とする送達システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の送達システムにおいて、前記リンカが、オクタデシル-4-(マレイミドメチル)シクロヘキサン-カルボン酸アミド (OMCCA); N-1 ステアリル-マレイミド (SM); スクシニミジルオレート; 1,2-ジエステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール) 2000]; 及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする送達システム。
【請求項9】
請求項6または7に記載の送達システムにおいて、前記リンカが、オクタデシル-4-(マレイミドメチル)シクロヘキサン-カルボン酸アミド (OMCCA)であることを特徴とする送達システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の送達システムが活性物質を具えることを特徴とする送達システム。
【請求項11】
請求項10に記載の送達システムにおいて、前記活性物質が前記粒子中に埋め込まれている、含侵している、あるいはカプセル化されている、または、前記粒子の表面に吸着されていることを特徴とする送達システム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の送達システムにおいて、前記ポリマが、ポリヒドロキシブチル酸、ポリヒドロキシバレル酸、ポリカプロラクトーン、ポリエステルアミド、ポリチアノアクリレート、ポリ(アミノ酸)、ポリカーボネート、ポリアンヒドライド、ポリアルキルシアノアクリレート、及びこれらの混合物から選択された生体分解性ポリエステルであることを特徴とする送達システム。
【請求項13】
請求項12に記載の送達システムにおいて、前記ポリエステルが、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコライド、ポリ乳酸−ポリグリコライド、ポリ(乳酸−co−グリコライド)、またはポリエチレングリコール−co−乳酸(PEG−PLA)であることを特徴とする送達システム。
【請求項14】
請求項4に記載の送達システムにおいて、前記疎水性ポリマが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸、ポリ乳酸(ポリラクチドとも言う)、ポリグリコール酸(ポリグリコライドとも言う)、アポリ乳酸−ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリアスパルトアミド、ポリヒドロキシプロピル メタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体セルロース、から選択されることを特徴とする送達システム。
【請求項15】
請求項14に記載の送達システムにおいて、前記疎水性ポリマが、平均分子量が2000乃至5000Daの間のPEGであることを特徴とする送達システム。
【請求項16】
請求項10乃至15のいずれか1項に記載の送達システムにおいて、前記活性物質が、薬物、造影剤、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする送達システム。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の送達システムが、一またはそれ以上の標的物質であって、各々が前記マレイミド化合物に共有結合している物質を具えることを特徴とする送達システム。
【請求項18】
請求項17に記載の送達システムにおいて、前記標的作用物質が、アミノ酸ベース、核酸ベース、またはサッカライドベースのポリマ及び、これらの組み合わせから選択されたポリマであることを特徴とする送達システム。
【請求項19】
請求項18に記載の送達システムにおいて、前記標的ポリマが、リガンド、抗体、抗原、グリコプロテインから選択されることを特徴とする送達システム。
【請求項20】
請求項17乃至19のいずれか1項に記載の送達システムにおいて、前記標的物質が低分子量リガンドであることを特徴とする送達システム。
【請求項21】
請求項19に記載の送達システムにおいて、前記抗体がモノ−またはポリ−クロナール抗体(MAb)であることを特徴とする送達システム。
【請求項22】
請求項21に記載の送達システムにおいて、前記MAbが天然、あるいは遺伝子操作抗体であることを特徴とする送達システム。
【請求項23】
請求項18または22に記載の送達システムが、少なくとも二つの抗体、または抗体フラグメントであって、それぞれが異なる結合特性を有する抗体または抗体フラグメントを具えることを特徴とする送達システム。
【請求項24】
請求項21乃至23のいずれか1項に記載の送達システムにおいて、前記遺伝子操作抗体がトラスツズマブ、AMB8LK、またはこれらの組み合わせであることを特徴とする送達システム。
【請求項25】
薬学的に許容可能なキャリアと組み合わせた請求項1乃至24のいずれか1項に記載の送達システムを具えることを特徴とする組成物。
【請求項26】
疾病または疾患を治療または防止する方法において、当該方法が:必要のある対象に、請求項1乃至24のいずれか1項に記載のある量の送達システム、または、請求項26に記載のある量の組成物を提供するステップであって、前記送達システムが、前記疾病または疾患を治療または防止に有効な量の薬剤を具えるステップ、を具えることを特徴とする方法。
【請求項27】
対象の身体内の標的細胞または標的組織を撮像する方法において、当該方法が:
(a)前記対象に請求項1乃至24のいずれか1項に記載の送達システムと共に造影剤を搬送するステップであって、前記ナノ粒子が一またはそれ以上の標的物質に結合されて、前記標的細胞または標的組織に前記送出システムを効率よく的中させるステップと;
(b)前記身体内の造影剤を撮像するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項25に記載の方法において、前記造影剤がクマリン−6を具えることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項25に記載の方法において、前記送達システムが前記粒子内に埋め込んだ薬物を具えることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法において、前記薬物が細胞障害薬剤であることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法において、前記細胞障害薬剤が、ドセタキセルと、パルミチン酸パクリタキセルから選択した抗癌剤であることを特徴とする方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【公表番号】特表2009−508936(P2009−508936A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531879(P2008−531879)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001098
【国際公開番号】WO2007/034479
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508084445)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー (1)
【Fターム(参考)】