説明

活性酸素消去剤、ラジカル消去剤及び酸化的細胞障害抑制剤

【課題】安全性の高い天然抽出物を有効成分とする活性酸素消去剤、ラジカル消去剤及び酸化的細胞障害抑制剤を提供する。
【解決手段】本発明の活性酸素消去剤、ラジカル消去剤又は酸化的細胞障害抑制剤に、キウイの摘果果実からの抽出物を含有せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性酸素消去剤、ラジカル消去剤及び酸化的細胞障害抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に生体成分を酸化させる要因として、活性酸素が注目されており、その生体への悪影響が問題となっている。活性酸素は、生体細胞内のエネルギー代謝過程で生じるものであり、活性酸素としては、スーパーオキサイド(すなわち酸素分子の一電子還元で生じるスーパーオキシドアニオン:・O)、過酸化水素(H)、ヒドロキシラジカル(・OH)及び一重項酸素()等が挙げられる。これらの活性酸素は、食細胞の殺菌機構にとって必須であり、ウィルスや癌細胞の除去に重要な働きを果たしている。
【0003】
しかしながら、活性酸素の過剰な生成は、生体内の膜や組織を構成する生体内分子を攻撃し、各種疾患を誘発する。通常、生体内で生産され、他の活性酸素の出発物質ともなっているスーパーオキサイドは、細胞内に含まれているスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)の触媒作用により逐次消去されているが、スーパーオキサイドの産生が過剰である場合、又はSODの作用が低下している場合には、スーパーオキサイドの消去が不十分となり、スーパーオキサイド濃度が高くなり、これが関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、しわ、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等を引き起こす。
【0004】
特に、皮膚は、紫外線等の環境因子の刺激を直接受けることから、スーパーオキサイドが生成しやすい器官であるため、スーパーオキサイド濃度の上昇により、例えば、コラーゲン等の生体組織を分解し、変性し又は架橋したり、油脂類を酸化して細胞に障害を与える過酸化脂質を生成したりすると考えられており、活性酸素によって引き起こされる障害が、皮膚のしわ形成や皮膚の弾力低下等の老化の原因になるものと考えられている。したがって、活性酸素や生体内ラジカルの生成を阻害・抑制することにより、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化や、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等の活性酸素が関与する各種障害を予防、治療又は改善できるものと考えられる。
【0005】
また、活性酸素は、炎症、過酸化脂質の生成、種々の酵素の失活及びDNAの損傷等を引き起こすことが知られており、これら酸化的細胞障害は、肌荒れ、しわ形成、皮膚の弾力性低下等の皮膚老化の原因の一つと考えられている。
【0006】
そこで、活性酸素消去物質、ラジカル消去物質等を安全性の点で有利な天然物から得る試みがなされており、このような作用を有するものとして、アブラナ科ブラシカ属植物からの抽出物(特許文献1参照)等が知られている。また、活性酸素に起因して生じる酸化的細胞障害を抑制し得るものとして、セイヨウクロタネソウ、コオウレン、ウォーターヒソップからの抽出物(特許文献2参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−81848号公報
【特許文献2】特開2009−227598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、安全性の高い天然抽出物から活性酸素消去作用、ラジカル消去作用及び酸化的細胞障害抑制作用を有するものを見出し、それを有効成分とする活性酸素消去剤、ラジカル消去剤及び酸化的細胞障害抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の活性酸素消去剤、ラジカル消去剤又は酸化的細胞障害抑制剤は、キウイの摘果果実からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0010】
本発明において「キウイの摘果果実」とは、キウイ果実の栽培過程において、栽培されるキウイ果実の糖度及び大きさを所望の範囲に増大させることを目的として間引かれる(剪定される)果実のことを意味し、具体的には、糖度が3.0〜7.0%、好ましくは4.0〜5.5%であって、かつ大きさ(長径)が1〜4cm、好ましくは2〜3cmであるキウイの果実のことを意味する。
【0011】
また、本発明において「酸化的細胞障害」とは、活性酸素に起因して生じる細胞障害、特に炎症、過酸化脂質生成、種々の酵素の失活、DNA損傷等の酸化障害を意味し、皮膚組織障害等の組織障害も含まれる。なお、活性酸素によって障害が生じる細胞としては、活性酸素によって障害が生じる生体細胞である限り特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、天然物であるキウイの摘果果実からの抽出物を有効成分として含有し、安全性の高い活性酸素消去剤、ラジカル消去剤及び酸化的細胞障害抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態の活性酸素消去剤、ラジカル消去剤又は酸化的細胞障害抑制剤は、キウイ(学名:Actinidia chinensis Planch. (Actinidiaceae))の摘果果実からの抽出物を有効成分として含有する。
【0014】
ここで、本実施形態において「抽出物」には、キウイ(Actinidia chinensis Planch. (Actinidiaceae))の摘果果実を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0015】
キウイ(Actinidia chinensis Planch. (Actinidiaceae))は、マタタビ科マタタビ属に属する落葉つる性低木であり、その果実は日本各地で栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用するキウイの構成部位は摘果果実である。なお、本発明において抽出原料として使用し得るキウイ(Actinidia chinensis Planch. (Actinidiaceae))の栽培品種としては、特に限定されるものではないが、レインボーレッド、アップルキウイ、紅心、ゴールデンキング、ゼスプリゴールド、小林39、ビュアカントリー、ファーストエンペラー、ティアドロップ、紅鮮、グレープキウイ、さぬきゴールド、豊蜜等を好適に用いることができる。
【0016】
抽出原料として使用するキウイの摘果果実は、その糖度が3.0〜7.0%であって、かつ大きさ(長径)が1〜4cmのものであり、好ましくは糖度が4.0〜5.5%であって、かつ大きさ(長径)が2〜3cmのものである。
【0017】
キウイの摘果果実からの抽出物は、抽出原料を、粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。
【0018】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0019】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、酸性・アルカリ性イオン水、海洋深層水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0020】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0021】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水1容量部に対して低級脂肪族アルコール1〜100容量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水1容量部に対して低級脂肪族ケトン1〜100容量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水1容量部に対して多価アルコール1〜100容量部を混合することが好ましい。
【0022】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0023】
精製は、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等により行うことができる。得られた抽出液はそのままでも活性酸素消去剤、ラジカル消去剤又は酸化的細胞障害抑制剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
【0024】
キウイの摘果果実からの抽出物は、特有の匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚化粧料等に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。
【0025】
上記のようにして得られるキウイの摘果果実からの抽出物は、活性酸素消去作用、ラジカル消去作用又は酸化的細胞障害抑制作用を有しているため、それぞれの作用を利用して活性酸素消去剤、ラジカル消去剤又は酸化的細胞障害抑制剤の有効成分として用いることができる。
【0026】
また、後述する実施例から明らかなように、キウイの摘果果実からの抽出物は、表皮角化細胞増殖促進作用、プロフィラグリンmRNA発現促進作用又は紫外線照射による細胞障害抑制作用をも有しているため、それぞれの作用を利用して抗老化剤、表皮角化細胞増殖促進剤、プロフィラグリンmRNA発現促進剤又は紫外線照射による細胞障害抑制剤の有効成分として用いることもできる。
【0027】
上記各薬剤は、キウイの摘果果実からの抽出物のみからなるものであってもよいし、キウイの摘果果実からの抽出物を製剤化したものであってもよい。
【0028】
キウイの摘果果実からの抽出物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。また、キウイの摘果果実からの抽出物は、他の組成物(例えば、皮膚化粧料等)に配合して使用することができる。
【0029】
なお、本実施形態の活性酸素消去剤、ラジカル消去剤又は酸化的細胞障害抑制剤は、必要に応じて、活性酸素消去作用、ラジカル消去作用又は酸化的細胞障害抑制作用を有する他の天然抽出物等を配合して有効成分として用いることができる。
【0030】
本実施形態の活性酸素消去剤、ラジカル消去剤又は酸化的細胞障害抑制剤の投与方法としては、一般に経皮投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法(例えば、経口投与、経粘膜投与等)を適宜選択すればよい。
【0031】
また、本実施形態の活性酸素消去剤、ラジカル消去剤又は酸化的細胞障害抑制剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0032】
本実施形態の活性酸素消去剤は、キウイの摘果果実からの抽出物が有する活性酸素消去作用を通じて、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化や、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等の活性酸素が関与する各種障害を予防・改善することができる。ただし、本実施形態の活性酸素消去剤は、これらの用途以外にも活性酸素消去作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0033】
本実施形態のラジカル消去剤は、キウイの摘果果実からの抽出物が有するラジカル消去作用を通じて、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化や、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等の活性酸素(ラジカル)が関与する各種障害を予防・改善することができる。ただし、本実施形態のラジカル消去剤は、これらの用途以外にもラジカル消去作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0034】
本実施形態の酸化的細胞障害抑制剤は、キウイの摘果果実からの抽出物が有する酸化的細胞障害抑制作用を通じて、活性酸素に起因して生じる細胞障害を抑制することができ、この結果、肌荒れ、しわ形成、皮膚の弾力性低下等の皮膚の老化症状等を予防・改善することができる。ただし、本実施形態の酸化的細胞障害抑制剤は、これらの用途以外にも酸化的細胞障害抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0035】
キウイの摘果果実からの抽出物は、活性酸素消去作用、ラジカル消去作用又は酸化的細胞障害抑制作用を有しており、皮膚に適用した場合の使用感又は安全性に優れているため、皮膚化粧料に配合するのに好適である。
【0036】
この場合において、皮膚化粧料には、キウイの摘果果実からの抽出物をそのまま配合してもよいし、キウイの摘果果実からの抽出物から製剤化した活性酸素消去剤、ラジカル消去剤又は酸化的細胞障害抑制剤を配合してもよい。
【0037】
キウイの摘果果実からの抽出物、又は当該キウイの摘果果実からの抽出物から製剤化した活性酸素消去剤、ラジカル消去剤若しくは酸化的細胞障害抑制剤を配合することにより、皮膚化粧料に活性酸素消去作用、ラジカル消去作用又は酸化的細胞障害抑制作用を付与することができる。
【0038】
キウイの摘果果実からの抽出物等を配合し得る皮膚化粧料の種類は特に限定されるものではなく、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデーション等が挙げられる。
【0039】
キウイの摘果果実からの抽出物等を皮膚化粧料に配合する場合、その配合量は、皮膚化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、0.0005〜0.45質量%(固形分換算)であり、特に好適な配合率は、0.005〜0.05質量%(固形分換算)である。なお、後述する実施例において明らかなように、キウイの摘果果実からの抽出物は、キウイの完熟果実からの抽出物と比較して、より低濃度において活性酸素消去作用、ラジカル消去作用、酸化的細胞障害抑制作用、紫外線照射による細胞障害抑制作用、表皮角化細胞増殖促進作用、プロフィラグリンmRNA発現促進作用を奏し得ることから、キウイの摘果果実からの抽出物の皮膚化粧料における配合率を0.0005〜0.001質量%(固形分換算)と低濃度にしたとしても、皮膚化粧料に所望とする作用を付与することができる。
【0040】
上記皮膚化粧料は、キウイの摘果果実からの抽出物が有する活性酸素消去作用、ラジカル消去作用、酸化的細胞障害抑制作用、紫外線照射による細胞障害抑制作用、表皮角化細胞増殖促進作用又はプロフィラグリンmRNA発現促進作用を妨げない限り、通常の皮膚化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された上記成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた使用効果をもたらすことがある。
【0041】
上記皮膚化粧料は、高い安全性を有しており、かつ活性酸素消去作用、ラジカル消去作用、酸化的細胞障害抑制作用、紫外線照射による細胞障害抑制作用、表皮角化細胞増殖促進作用及びプロフィラグリンmRNA発現促進作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を通じて、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化や、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等の活性酸素が関与する各種障害、乾燥肌、肌荒れ等を予防、治療又は改善することができる。
【0042】
なお、本実施形態の活性酸素消去剤、ラジカル消去剤又は酸化的細胞障害抑制剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
【0044】
〔実施例1〕キウイ摘果果実抽出物の製造
キウイ(Actinidia chinensis Planch. (Actinidiaceae),レインボーレッド種)の摘果果実(糖度:4.3%,長径:2cm)の粉砕物200gに抽出溶媒(精製水)400mLを加え、30℃にて1時間加温抽出し、熱時濾過した。残渣についてさらに同様の抽出処理をした。得られた抽出液を合わせて減圧下で濃縮し、さらに乾燥してキウイ摘果果実抽出物5.5gを得た。
【0045】
〔比較例1〕キウイ果実抽出物の製造
キウイ(Actinidia chinensis Planch. (Actinidiaceae),レインボーレッド種)の完熟果実(糖度:13.4%,長径:5cm)の粉砕物200gを使用した以外は実施例1と同様にして、キウイ果実抽出物18.5gを得た。
【0046】
〔試験例1〕スーパーオキサイド消去作用試験(NBT法)
実施例1のキウイ摘果果実抽出物及び比較例1のキウイ果実抽出物について、以下のようにしてスーパーオキサイド消去作用を試験した。
【0047】
試験管に、0.05MのNaHCO緩衝液(pH10.2)を2.4mL、並びに3mMのキサンチン、3mMのEDTA、50μg/mLのウシ血清アルブミン溶液及び0.75mMのNBT(nitroblue tetrazolium)を0.1mLずつ加え、これに試料溶液(実施例1及び比較例1,試料濃度は下記表1を参照)0.1mLを添加し、25℃で10分間放置した。放置後、酵素溶液としてのキサンチンオキシダーゼ0.1mLを加えて素早く攪拌し、25℃で20分間反応させた。その後、6mMの塩化銅0.1mLを加えて反応を停止させて、波長560nmにおける吸光度を測定した。
【0048】
酵素溶液を添加しない場合についても、同様の操作と吸光度の測定を行い、さらに、試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。得られた結果から、下記式によりスーパーオキサイド消去率(%)を算出した。
【0049】
スーパーオキサイド消去率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
式中、Aは「酵素溶液添加・試料溶液添加時の吸光度」を表し、Bは「酵素溶液無添加・試料溶液添加時の吸光度」を表し、Cは「酵素溶液添加・試料溶液無添加時の吸光度」を表し、Dは「酵素溶液無添加・試料溶液無添加時の吸光度」を表す。
結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1に示すように、キウイ摘果果実抽出物(実施例1)は、特に高濃度(100μg/mL)において極めて優れたスーパーオキサイド消去作用(活性酸素消去作用)を有することが確認された。一方、キウイ果実抽出物(比較例1)は、スーパーオキサイド消去作用をほとんど示さなかった。また、キウイ摘果果実抽出物のスーパーオキサイド消去作用の強さは、抽出物(試料)濃度に依存して向上することから、スーパーオキサイド消去作用の程度は、キウイ摘果果実抽出物の濃度によって調節できることが確認された。
【0052】
〔試験例2〕ラジカル消去作用試験
実施例1のキウイ摘果果実抽出物及び比較例1のキウイ果実抽出物について、以下のようにしてラジカル消去作用を試験した。
【0053】
1.5×10−4MのDPPH(diphenyl-p-picrylhydrazyl)エタノール溶液3mLに試料溶液(実施例1及び比較例1,試料濃度は下記表2を参照)3mLを加え密栓した後、振り混ぜて30分間放置した。放置後、波長520nmにおける吸光度を測定した。コントロールとして、試料溶液の代わりに試料を溶解した溶媒のみを用いて同様の操作をして、波長520nmの吸光度を測定した。また、ブランクとして、エタノールに試料溶液3mLを加えた後、直ちに波長520nmの吸光度を測定した。得られた結果から、下記式によりラジカル消去率(%)を算出した。
【0054】
ラジカル消去率(%)={1−(B−C)/A}×100
式中、Aは「コントロールの吸光度」を表し、Bは「試料溶液添加時の吸光度」を表し、Cは「ブランクの吸光度」を表す。
結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2に示すように、キウイ摘果果実抽出物(実施例1)は、特に高濃度(200μg/mL)において優れたラジカル消去作用を有することが確認された。一方、キウイ果実抽出物(比較例1)は、ラジカル消去作用を示さなかった。また、キウイ摘果果実抽出物のラジカル消去作用の強さは、抽出物(試料)濃度に依存して向上することから、ラジカル消去作用の程度は、キウイ摘果果実抽出物の濃度によって調節できると考えられる。
【0057】
〔試験例3〕酸化的細胞障害抑制作用試験
実施例1のキウイ摘果果実抽出物及び比較例1のキウイ果実抽出物について、以下のようにして酸化的細胞障害抑制作用を試験した。
【0058】
40歳の健常人男性皮膚由来線維芽細胞(NBKN,研究同意を得て樹立したもの,継代数:13以下)を、10%FBS(Fetal Bovine Serum,JRHバイオサイエンス社製)を含むDMEM(Dulbecco's modified minimum essential medium,ギブコ社製)を用いて37℃、5%CO−95%airの条件下で培養した。
【0059】
プラスミドpGL2を滅菌水で31μg/mLに希釈し、60mmディッシュに移した後、ローズベンガル(関東化学社製,100μg/mL)を添加し、可視光線(キセノンランプ,ウシオ電機社製,370〜760nm,30cm)を10分間照射した。
【0060】
24ウェルプレートに細胞(2×10cells/ウェル)を播種し、18時間培養した。ローズベンガル添加又は非添加のプラスミド(0.2μg DNA/ウェル)に遺伝子導入剤(Qiagen社製)を添加し、37℃で24時間導入させた。培地交換後、試料溶液(実施例1及び比較例1,試料濃度は下記表3を参照)を添加し、さらに24時間培養した。
【0061】
細胞をPBS(−)(リン酸緩衝食塩水)で洗浄した後、滅菌水で5倍希釈した細胞溶解剤(東洋ビーネット社製,ピッカジーン,25mM Tris(7.5),2mM DTT,10%glycerol,1%Triton X−100)を50μL/ウェル添加した。その後、−80℃で30分保存し、室温で15分間放置することで細胞を融解させた。
【0062】
プレート攪拌(室温,15分)した後、スクレーバーで細胞溶解液を1.5mL遠心用チューブに回収し、遠心(15,000rpm,2分)した。上清20μL及び発光基質(東洋ビーネット社製,ピッカジーン,20mM Tricine/1.07mM (MgCO)4Mg(OH)・5HO/2.67mM MgSO/0.1mM EDTA/33.3mM DTT/270μM Coenzyme A/470μM luciferin/530μM ATP)100μLを添加し、室温で混和後、ルミノメーター(GENELIGHT55,マイクロテック・ニチオン社製)にセットし、560nmで測定した。
【0063】
酸化的細胞障害抑制率(%)は、ローズベンガル非添加に対するローズベンガル添加後のDNA修復によるルシフェラーゼ活性量を算出することにより求めた。
結果を表3に示す。
【0064】
【表3】

【0065】
表3に示すように、キウイ摘果果実抽出物(実施例1)は、キウイ果実抽出物(比較例1)に比して、優れた酸化的細胞障害抑制作用を有することが確認された。
【0066】
〔試験例4〕紫外線照射による細胞障害抑制作用試験
実施例1のキウイ摘果果実抽出物及び比較例1のキウイ果実抽出物について、以下のようにして紫外線照射による細胞障害抑制作用を試験した。
【0067】
40歳の健常人男性皮膚由来線維芽細胞(NBKN,研究同意を得て樹立したもの,継代数:13以下)を、10%FBS(Fetal Bovine Serum,JRHバイオサイエンス社製)を含むDMEM(Dulbecco's modified minimum essential medium,ギブコ社製)を用いて37℃、5%CO−95%airの条件下で培養した。
【0068】
プラスミドpGL2を滅菌水で31μg/mLに希釈し、60mmディッシュに移した後、氷上で紫外線を1500J/m照射した。
【0069】
24ウェルプレートに細胞(2×10cells/ウェル)を播種し、18時間培養した。紫外線照射又は未照射のプラスミド(0.2μg DNA/ウェル)に遺伝子導入剤(Qiagen社製)を添加し、37℃で24時間導入させた。培地交換後、試料溶液(実施例1及び比較例1,試料濃度は下記表4を参照)を添加し、さらに24時間培養した。
【0070】
細胞をPBS(−)(リン酸緩衝食塩水)で洗浄した後、滅菌水で5倍希釈した細胞溶解剤(東洋ビーネット社製,ピッカジーン,25mM Tris(7.5),2mM DTT,10%glycerol,1%Triton X−100)を50μL/ウェル添加した。その後、−80℃で30分保存し、室温で15分間放置することで細胞を融解させた。
【0071】
プレート攪拌(室温,15分)した後、スクレーバーで細胞溶解液を1.5mL遠心用チューブに回収し、遠心(15,000rpm,2分)した。上清20μL及び発光基質(東洋ビーネット社製,ピッカジーン,20mM Tricine/1.07mM (MgCO)4Mg(OH)・5HO/2.67mM MgSO/0.1mM EDTA/33.3mM DTT/270μM Coenzyme A/470μM luciferin/530μM ATP)100μLを添加し、室温で混和後、ルミノメーター(GENELIGHT55,マイクロテック・ニチオン社製)にセットし、560nmで測定した。
【0072】
紫外線照射による細胞障害抑制率(%)は、紫外線未照射に対する紫外線照射後のDNA修復によるルシフェラーゼ活性量を算出することにより求めた。
結果を表4に示す。
【0073】
【表4】

【0074】
表4に示すように、キウイ摘果果実抽出物(実施例1)は、キウイ果実抽出物(比較例1)に比して、優れた紫外線照射による細胞障害抑制作用を有することが確認された。
【0075】
〔試験例5〕表皮角化細胞増殖促進作用試験
実施例1のキウイ摘果果実抽出物及び比較例1のキウイ果実抽出物について、以下のようにして表皮角化細胞増殖促進作用を試験した。
【0076】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(normal human epidermal keratinocyte,NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.5×10cells/mLの細胞密度となるようにEpiLife-KG2で希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、EpiLife-KG2に溶解した試料溶液(実施例1及び比較例1,試料濃度は下記表5を参照)を各ウェルに100μLずつ添加し、3日間培養した。
【0077】
表皮角化細胞増殖促進作用は、MTTアッセイ法を用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、終濃度0.4mg/mLでPBS(−)に溶解したMTTを各ウェルに100μLずつ添加した。2時間培養した後、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。測定された各吸光度から、下記式により表皮角化細胞増殖促進率(%)を算出した。
【0078】
表皮角化細胞増殖促進率(%)=St/Ct×100
式中、Stは「試料溶液添加時の吸光度」を表し、Ctは「試料溶液無添加時の吸光度」を表す。
結果を表5に示す。
【0079】
【表5】

【0080】
表5に示すように、キウイ摘果果実抽出物(実施例1)は、キウイ果実抽出物(比較例1)に比して、優れた表皮角化細胞増殖促進作用を有することが確認された。
【0081】
〔試験例6〕プロフィラグリンmRNA発現促進作用試験
実施例1のキウイ摘果果実抽出物及び比較例1のキウイ果実抽出物について、以下のようにしてプロフィラグリンmRNA発現促進作用を試験した。
【0082】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(normal human epidermal keratinocyte,NHEK)を80cmフラスコで正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)において、37℃、5%CO−95%airの条件下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
【0083】
EpiLife-KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO−95%airの条件下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、EpiLife-KG2で必要濃度に溶解した試料溶液(実施例1及び比較例1,試料濃度は下記表6を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(NIPPON GENE社製,Cat.no.311-02501)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0084】
この総RNAを鋳型とし、プロフィラグリン及び内部標準であるGAPDH(glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase)のmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR Kit(Perfect Real Time,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT-PCR反応により行った。プロフィラグリンのmRNAの発現量は、試料無添加及び試料添加のそれぞれで培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、さらに試料無添加の補正値を100とした時の試料添加の補正値を算出した。得られた結果から、下記式によりプロフィラグリンmRNA発現上昇促進率(%)を算出した。
【0085】
プロフィラグリンmRNA発現上昇促進率(%)=A/B×100
式中Aは「試料添加時の補正値」を表し、Bは「試料無添加時の補正値」を表す。
結果を表6に示す。
【0086】
【表6】

【0087】
表6に示すように、キウイ摘果果実抽出物(実施例1)は、キウイ果実抽出物(比較例1)に比して、低濃度(12.5μg/mL)において極めて優れたプロフィラグリンmRNA発現促進作用を有することが確認された。すなわち、キウイ摘果果実抽出物は、低濃度(12.5μg/mL)において、皮膚の保湿機能の向上に関与するフィラグリンの前駆体であるプロフィラグリンの遺伝子発現を促進させることが判明した。
【0088】
上述した試験例1〜6から明らかなように、キウイの摘果果実からの抽出物には、キウイの完熟果実からの抽出物が有しない作用(スーパーオキサイド消去作用(活性酸素消去作用),ラジカル消去作用)を有し、又はそれが有する作用(酸化的細胞障害抑制作用、紫外線照射による細胞障害抑制作用、表皮角化細胞増殖促進作用,プロフィラグリンmRNA発現促進作用)であっても、顕著に優れた作用を有することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の活性酸素消去剤、ラジカル消去剤及び酸化的細胞障害抑制剤は、活性酸素種に起因する細胞障害等を含む各種障害の予防・改善に大きく貢献することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キウイの摘果果実からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする活性酸素消去剤。
【請求項2】
キウイの摘果果実からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするラジカル消去剤。
【請求項3】
キウイの摘果果実からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする酸化的細胞障害抑制剤。

【公開番号】特開2011−144113(P2011−144113A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4185(P2010−4185)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(300003525)株式会社ブルーム・クラシック (6)
【Fターム(参考)】