説明

活魚水槽装置

【課題】 本発明は、水槽内の底部に存在する汚泥と、水槽内の水の水面に浮遊する汚泥とを泡沫分離槽に集めて効率よく除去し、水質の浄化を図ることを課題とする。
【解決手段】水槽2と、該水槽内連通された泡沫分離槽3と、泡沫分離槽で処理された水をろ過するろ過槽4と、ろ過した水を再び水槽に循環させる循環ポンプ槽5と、循環する水を殺菌する殺菌槽6とを備えている。しかも、前記水槽と泡沫分離槽とは、隔壁31で区画されており、該隔壁の下部には、前記水槽と泡沫分離槽とを連通し且つ前記水槽内の下水を泡沫分離槽内に導入する開口32が形成されるとともに、前記隔壁の上部には、前記水槽内の上水を泡沫分離槽内に流す上水取装置37が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活魚水槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の活魚水槽装置は、活魚等を入れる水槽と、該水槽内に連通された泡沫分離槽と、泡沫分離槽で処理された水をろ過するろ過槽と、ろ過した水を再び水槽に循環させる循環ポンプ槽と、水を殺菌する殺菌槽とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
活魚水槽装置の水槽に貯留されている海水は、餌の食べ残しや活魚等の排泄物等の汚泥を除去する必要がある。そこで、前記特許文献1の活魚水槽装置は、水槽の底部に設けられた吸引用の目皿から海水が取水され、泡沫分離槽に送水される。そして、この水槽の底部から送水される海水とともに汚泥も泡沫分離槽に入る構成である。
【特許文献1】実用新案登録第3107060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の活魚水槽装置は、水槽の底部に沈む固形状の汚泥は、海水とともに吸引用の目皿から排出されるが、海水よりも比重の小さい汚泥は、水槽の底部から外部に排出できないため、水面を浮遊し泡状態の浮遊物となって蓄積される欠点がある。このため、従来では、作業者が人為的にその浮遊物を除去していた。
【0005】
本発明は、水槽内の底部に存在する汚泥と、水槽内の水面に浮遊する汚泥とを泡沫分離槽に集めて効率よく除去し、水質の浄化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、その特徴は、水槽と、該水槽内に連通された泡沫分離槽と、該泡沫分離槽で処理された水をろ過するろ過槽と、ろ過した水を再び水槽に循環させる循環ポンプ槽と、循環する水を殺菌する殺菌槽とを備えた活魚水槽装置において、前記水槽と前記泡沫分離槽とは、隔壁で区画されており、該隔壁の下部には、前記水槽と泡沫分離槽とを連通し且つ前記水槽内の底水を泡沫分離槽内に流入させる開口が形成されるとともに、前記隔壁の上部には、前記水槽内の上水を泡沫分離槽内に流入させる上水取装置が設けられたことにある。
【0007】
前記本発明の活魚水槽装置の水槽内の底水は、開口を介して泡沫分離槽に流入する。このとき、水槽の底部に沈んでいた汚泥も底水とともに泡沫分離槽に入る。また、水槽内の上水は、上水取装置により泡沫分離槽に吸水されるため、水の水面に浮遊する汚泥は、上水とともに泡沫分離槽に入る。
【0008】
泡沫分離槽は、底水とともに流入した汚泥と、上水とともに流入した汚泥とを気泡で吸着し、浮遊する気泡を外部に排出する。泡沫分離槽で分離されなかった汚泥は、海水とともにろ過槽に入り、ろ過槽でろ過される。
【0009】
本発明の活魚水槽装置の前記上水取装置は、前記隔壁の上部に形成した開口部に、水面を浮遊するフロートがアームを介して揺動自在に設けられてなるものである。かかる装置は、フロートが水槽内の水面高さに応じて上下に移動することにより、汚泥の泡と上水とを泡沫分離槽に優先的に吸い込むことができる。また、フロートがアームを介して揺動自在に設けられるという簡単な構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、水槽内の底水と上水とを泡沫分離槽に取り入れることにより、水槽底部の汚泥と水槽内の水面に浮遊する汚泥とを、一箇所で効率よく処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る活魚水槽装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1〜図9は、本発明の一実施の形態を示す。
【0012】
図7〜図9において、活魚水槽装置1は、生きた魚等を数日間一時的にストックさせておくもので、平面視矩形状を呈するとともに断熱性を有する水槽装置本体7を備えている。水槽装置本体7は、前後側壁11、12と、左右側壁13、14と、底壁15とからなる。この水槽装置本体7は、水槽2、泡沫分離槽3、ろ過槽4、ポンプ槽5および殺菌槽6に区画されている。なお、泡沫分離槽3、ろ過槽4、ポンプ槽5および殺菌槽6は、水槽装置本体7の長手方向の一方側(図7に示す右側)に配置されており、水処理槽を構成している。
【0013】
水槽2と泡沫分離槽3とは、図1、図2、図6および図7に示すように水槽装置本体7の前後側壁11、12間にわたって設けられた隔壁31で区画されており、その隔壁31の下部には、水槽2と泡沫分離槽3と連通する開口(下水流出スリット)32が形成されている。従って、水槽2内の海水は、この下水流出スリット32を介して泡沫分離槽3内に流入するようになっている。なお、この下水流出スリット32は、水槽装置本体7の前側壁11の近傍に形成されている。
【0014】
泡沫分離槽3の上部には、図1に示すように泡沫分離カバー30が設けられ、泡沫分離カバー30の一方が泡沫分離槽3内に向けて傾斜しており、泡沫分離槽3内に貯留されている海水内に望むようになっている。泡沫分離槽3の底部には、泡沫分離分散器34が設けられている。泡沫分離分散器34は、水槽装置本体7に架設された機械台8に設置されたエアーポンプ(ブロワー)33により、空気を送り微細な気泡を発生させるものである。
【0015】
泡沫分離カバー30には、泡沫分離分散器34により発生し泡沫分離槽3の上部に蓄積された汚泥の気泡35を外部に流出させる汚泥排出管36が連結されている。
【0016】
隔壁31の上部には、水槽2内の上水を泡沫分離槽3に流入させる上水取装置37が設けられている。この上水取装置37は、図1および図4に示すように、隔壁31の上部を切り欠いて形成した開口38部に取り付けられる取付体37bと、この取付体37bに一対のアーム39を介して揺動自在に設けられたフロート37aとから構成されている。
【0017】
取付体37bは、左右一対の側壁37c、37cと、両方の側壁37c、37cの一端を連結する基壁37dとからなる。基壁37dには、海水が通過する開口37eが形成されている。フロート37aは、円柱状を呈しており、両方の側壁37c、37c間に位置するとともに、その端面が側壁37c、37cに近接する長さに設定されている。
【0018】
アーム39は、海水の流れる下流側に向けてかつ上下方向に揺動するように、その一端が取付体37bに連結され、他端がフロート37aの両端部に連結されている。そして、このフロート37aが水槽2内の水面高さに応じて上下に移動することにより、汚泥の泡と上水を泡沫分離槽3に優先的に吸い込むことができる。
【0019】
フロート37aは、浮力により水面近傍を浮遊するようになっており、水位が変化しても、上水を常時吸水することができる。このように、水槽2内の底水と上水とを泡沫分離槽3に取り入れることにより、一箇所で最終的に効率よく処理することができる。
【0020】
泡沫分離槽3とろ過槽4とは、水槽装置本体7の前後側壁11、12間にわたって設けられた隔壁40で区画されている。隔壁40には、泡沫分離槽3とろ過槽4とを連通するろ過槽流入口41が形成されている。
【0021】
ろ過槽4は、その内部の下方に通水する各種形状の通孔を設けた多孔板42が敷設されている。この多孔板42の上面には、砂等の各種のろ材43が積層して収容されている。また、隔壁40には、図3および図6に示す如く、ろ過槽流入口41に連通する筒状体44がろ過槽4内に望むように設けられ、この筒状体44には、袋状に形成されたフィルター45の口部45aが、着脱自在に取り付けられている。このフィルター45はろ材43の上面に設けられている。
【0022】
ろ過槽4の底部と多孔板42との間で形成される空間47が、隣接するポンプ槽5に連通されており、ろ材43でろ過された海水は、空間47を流れてポンプ槽5に流入するようになっている。また、空間47内には、洗浄用空気配管46が設けられ、この洗浄用空気配管46は、前記ブロワー33または別途設置される図示省略の専用ブロワーから圧送される空気により、ろ材43を浮遊させて洗浄するものである。
【0023】
ポンプ槽5には、その内部に海水を吸上げる縦型の軸流ポンプからなる循環ポンプ50が設けられている。また、機械台8には、クラー51およびヒーター(図示省略)の少なくとも一方が設置されている。
【0024】
機械台8には、ブロワー33、循環ポンプ50およびクラー51(またはヒーター)を制御する制御装置55が設けられている。そして、ポンプ槽5内の海水は、クラー51により冷却されるか、あるいはヒーターにより加熱されて設定水温を維持するように制御されている。循環ポンプ50の流出口部51は、UV殺菌槽6に向かって延設配管されており、ポンプ槽5内の海水は、循環ポンプ50によりUV殺菌槽6に流入するようになっている。
【0025】
殺菌槽6には、図5に示すようにUVランプ60を備えた殺菌装置61が設けられている。殺菌槽6は、前記隔壁31で水槽2と区画されているとともに、長尺状の送水管20を介して前記水槽2と連通されている。
【0026】
送水管20は、後側壁12の内面上部でかつ水槽装置本体7の長手方向に沿って取り付けられている。なお、送水管20の高さ位置は、特に限定されるものではないが、水槽2内に貯留された海水に浸漬する高さに設定する。
【0027】
送水管20の一端は殺菌槽6と連通するとともに、他端は左側壁14に当接または接近して閉塞されており、水槽2の長手方向(左右方向)の全長にわたって送水路が構成されている。送水管20の他端部には、図7に示すように排水口21が形成され、この排水口21は、前記下水流出スリット32に対して水槽2の平面視略対角線上に設けられている。また、排水口21は海水の上部に位置し、下水流出スリット32は、海水の底部に位置するため、水槽2内の海水を効果的に対流させることができる。
【0028】
本実施の形態の活魚水槽装置1は、以上の構成からなり、次にその装置の作用について説明する。
【0029】
先ず、循環ポンプ50を始動してポンプ槽5内の海水を殺菌槽6に注入する。このポンプ槽5内の海水は、クラー51またはヒーターにより、設定水温(例えば略18℃)に冷却または加熱され維持されている。
【0030】
殺菌槽6の内部において流水中に浮遊するバクテリア、細菌及びその他の微生物を効率的に死滅させ処理する。処理され且つ設定水温に維持された海水は殺菌槽6の上部より送水管20に流入する。この送水管20は、断熱性を有する水槽2内の海水に浸漬されていることから、外気温度の影響を受けることはなく、熱ロスのおそれがない。
【0031】
送水管20を通った海水は、排出口21から水槽2内に排出される。水槽2内の海水は、水槽2の底部にある下水流出スリット32を介して泡沫分離槽3に流入する。このとき、水槽2の底部に沈んでいる汚泥も海水とともに泡沫分離槽3に流入することとなる。また、上水取装置37により水槽2の水面の汚泥の泡35aと上水が、優先的に泡沫分離槽3に吸い込まれる。
【0032】
泡沫分離槽3において、泡沫分離分散器34により気泡が発生し、底水とともに流入した汚泥と、上水とともに流入した汚泥とを気泡で吸着し水面に浮遊させる。泡沫分離槽3の上部に蓄積された汚泥の気泡35を汚泥排出管36が外部に流出させる。
【0033】
泡沫分離槽3内の海水に混在する大きい汚泥は、泡沫分離分散器34から発生する気泡により海水の略中間を浮遊し、筒状体44を通過してフィルター45によって排除される。この汚泥が排除された海水は、次のろ過槽4の上部より、内部のろ材43及び多孔板42にろ過され、ポンプ槽5に流入する。設定水温に制御された海水は、再びろ過工程、殺菌工程を経て循環する。
【0034】
以上のように、本実施の形態に係る活魚水槽装置1は、水槽2内の底水と上水とを泡沫分離槽に取り入れることにより、水槽2内の汚泥を泡沫分離槽3の一箇所で効率よく最終的に処理することができる。
【0035】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではない。水槽には、海水以外に通常の水であってもよく、水槽2に入れられる魚等の種類により適宜決定される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態に係る活魚水槽装置の断面側面図である。
【図2】図1におけるB−B線断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る活魚水槽装置の要部の概略を示す平面図である。
【図4】上水取装置の斜視図である。
【図5】図8におけるA−A線断面図である。
【図6】図1におけるC−C線断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る活魚水槽装置の全体概略平面図である。
【図8】同活魚水槽装置の全体概略正面図である。
【図9】同活魚水槽装置の全体概略側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 活魚水槽システム
2 水槽
3 泡沫分離槽
4 ろ過槽
5 ポンプ槽
6 殺菌槽
7 水槽装置本体
20 送水管
31 隔壁
32 下水流出スリット(開口)
37 上水取装置
37a フロート
39 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽と、該水槽内に連通された泡沫分離槽と、該泡沫分離槽で処理された水をろ過するろ過槽と、ろ過した水を再び水槽に循環させる循環ポンプ槽と、循環する水を殺菌する殺菌槽とを備えた活魚水槽装置において、
前記水槽と前記泡沫分離槽とは、隔壁で区画されており、該隔壁の下部には、前記水槽と泡沫分離槽とを連通し且つ前記水槽内の底水を泡沫分離槽内に流入させる開口が形成されるとともに、前記隔壁の上部には、前記水槽内の上水を泡沫分離槽内に流入させる上水取装置が設けられたことを特徴とする活魚水槽装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の活魚水槽装置において、前記上水取装置は、前記隔壁の上部に形成した開口部に、水面を浮遊するフロートがアームを介して揺動自在に設けられてなる活魚水槽装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−11191(P2009−11191A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174046(P2007−174046)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】