説明

流れセンサ校正方法および装置

ミクロな液体の流れセンサを校正する装置および方法であって、流れセンサ中の液体の流れが停止され、流れセンサから第1の値が読み取られ、次いで液体が流れセンサを通して第1および第2の選択された速度で連続的にポンプ輸送され、流速の流れセンサからの読み取り値が各速度について取られる装置及び方法である。この読み取り値は、実際の流速を決定するために多項式で使用される。その実際の流速はセンサを校正するために使用される。流れセンサは、校正方法を実行し、センサの実際の流速を決定し、ポンプの流速を適切に調節するようにプログラムされたコンピュータに接続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィー、質量分光測定法、および他の分析方法で使用される流速センサを校正する方法および装置に関する。より詳細には、本発明は、マイクロ/ナノ・フロー・クロマトグラフィー、質量分光測定方法、および他の分析方法で使用される超低流速液体センサの校正に役立つ方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
少量の生物学的試料に対する感度のよい高スループットの分析を要求する分析方法およびシステムが開発されてきた。そのような分析は、圧力が数桁の範囲で変動する、分速約1ナノリットル(nL)から分速約5マイクロリットル(μL)の範囲における液体流速の正確な制御をしばしば必要とする。このような分析の用途には、特に、ナノ規模の液体クロマトグラフィー(ナノ−LC)、質量分光測定法(MS)、またはキャピラリー電気泳動法(CE)が含まれる。これらのミクロな液体の用途は、通常、分速数十ナノリットルから分速数マイクロリットルもの低い液体流速を利用する。超低流速を正確に達成し維持するためのシステムの設計は困難な仕事であり、いくつかの潜在的な問題を伴う。
【非特許文献1】1988年Cambridge University Press出版、William H.Press著、「Numerical Recipes in C:The Art of Scientific Computing」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなミクロな液体の技術に影響を与える1つの問題は、システム圧力の変化に応じて圧力を高めたり低めたりするために、従来の超低流速の用途に使用されるシステムの様々な構成要素の感受性に起因するものである。圧力変化に対するこの構成要素の調節は、しばしば、従来のミクロな液体システムおよび用途で望ましい流速を達成する前にかなりの遅延時間をもたらし、さらにそのようなシステムおよび用途における精密な流速調節を妨げる場合がある。
【0004】
そのような従来のミクロな液体システムおよび用途に関する他の根強い問題は、空気またはその他のガスがそのようなシステムの流れ経路に不注意に混入された場合に発生する。これらの圧縮可能なガスが上記用途のために従来のシステムの流れ経路に存在する場合、気泡の圧縮と膨張により所望の流速を達成することが困難になる。
【0005】
多くの従来のミクロな液体システムでは、液体の流速は、例えばピストンまたはシリンジ・プランジャを使用し、制御された速度で液体を移動させることにより、ポンプ内で設定される。このような従来のシステムで所望の流速を得るために、予め設定された制御システムを使用し、固定速度でポンプの移動部品が動かされる。このような従来のシステムは、液体を排出するために使用される駆動システムの機構構成の不正確さから生じた望ましくない流速変動をしばしば示す。従来の親ねじ式システムでは、例えば、ねじが一回転する間にねじの特性が周期的に変化し、また他のタイプの機構的誤りの中でもねじに沿ったねじ山の間隔が不正確であるために、不正確さが生じることがしばしばである。
【0006】
所望の流速を達成し維持する際のこれらの困難を克服するためには、システムが予め設定された制御システムに対してフィードバック・ループを使用することにより不正確さを補償することを可能にする従来の流れセンサを使用することができる。
【0007】
ミクロな液体の分析に使用される多くの従来の流れセンサ、例えばSensirion社(スイス、チューリッヒ)から市販のSLG1430センサなどは、液体の流れに対する非線形応答を有する。そのような流れセンサの場合、流速の増加に応答したセンサは多項式を近似するが、この際、等式の順番および定数は、流れセンサ設計、監視中の液体、および作動中の流速範囲などの変数に依存する。
【0008】
フィードバック・ループにより従来のシステムで精密な超低流速を測定し維持するためにこのような従来の流れセンサを使用するには、センサを通過すべき溶剤に対してセンサを校正する必要がある。従来の校正方法は、通常、所与の溶剤に対する異なる流速でのセンサ応答のリストを用意しておく必要がある。特定の溶剤が使用される場合、実際の流速は、そのセンサ応答を、その特定のセンサと溶剤の組合せに対してなされた反復的な観察から収集された表になった校正値と比較することにより得られる。所与のセンサと溶剤に対する校正曲線は、従来の校正方法などの経験的データから最良の曲線に校正データを適合させることにより得られる。
【0009】
この従来の校正表方法での主要な問題は、システムを通過すべきいかなる溶液混合物に対してもデータ値を収集する必要があるということである。多数の溶剤に対してこれを行うことは、多大な時間と労力を必要とする場合がある。さらに、信頼できる運用のためには、このデータは、正確な流速基準を使用して収集する必要がある。しばしば、従来のミクロの液体システムは、多様な特性を有する異なる溶液を送るために使用され、これら様々な溶液に対して従来のシステムを校正することは、しばしば時間と労力を消費するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一連の固定速度でセンサを通してある量の液体をポンプ輸送することにより液体流れセンサを校正する方法を提供する。流速は、制御された速度で移動部品(displacing element)を移動させることにより、そしてバルブを使用することにより最初に決定され、システム出力が低圧力オリフィスまたは管類の一部を通して分配することを可能にする。システムは、校正手順中は低圧力でポンプ輸送しているので、構成要素の圧縮性または飛沫同伴されたガスポケットにも関わらず、このシステムの反応はすみやかである。親ねじドライブを使用する流体システムでは、流れセンサ応答は、ポンプの親ねじの完全な一回転に対して測定された流速を平均化することにより決定される。これにより、周期的な親ねじ由来の流速ノイズを最低限に抑える。
【0011】
流速センサ応答は、多項式へのあてはめの程度に依存して、いくつかの異なる流速に対して決定される。一実施形態では、センサ応答は、次のような一般的な等式を使用して近似される。
y=ax2+bx+c
ここで、yはセンサ応答であり、xは実際の流速であり、aは第1の二次定数、bは第2の二次定数、cはセンサ応答が流速のない状態で測定された等式の切片である。この実施形態では、これら定数は、3つの個別のポンプ注入速度でセンサ応答と実際の流速とを測定することにより決定することができる。
【0012】
流れセンサを分析システムの作動中に校正することのできる別の実施形態では、実際の流速は、実根を使用する
【数1】

を使用して、二次方程式の値を求めることにより実際の流速が決定される。この実施形態では、xは測定された流れセンサ応答から決定される。
【0013】
さらに別の実施形態では、定数を決定するために多項式の次数を拡大し、より多くの校正データ・ポイントを使用することにより、センサを、より大きな流速範囲にわたり同様の一般的な方法で校正することができる。
【0014】
本発明の目的は、周期的な流速変動のあるシステムにおいて流れセンサの正確な校正を可能にする方法および装置を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、閉じ込められたガスまたはシステム構成要素の圧縮の潜在的影響を最低限に抑えることにより、流れセンサの正確な校正を可能にする方法および装置を提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、広範な流速にわたり所与の液体で使用するための流れセンサの正確な校正を可能にする方法および装置を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、分析システムの作動中に流れセンサの正確な校正を可能し、それによりオペレータが所望の流速を得ることを可能にする方法および装置を提供することである。
【0018】
本発明の目的は、従来の方法よりもさらに素早くかつ容易に、特定の液体に対してオペレータが流れセンサを校正することを精確かつ正確に可能にする方法を提供することである。
【0019】
本発明の目的は、実験的データの表を作成するかまたは使用することを必要とせずに、オペレータが液体に対して流れセンサを校正することを可能にする方法を提供することである。
【0020】
本発明の目的は、安価な機械駆動のポンプ・システムを使用して、正確な流れ制御を可能にする方法を提供することである。
【0021】
本発明の目的は、液体を少量しか消費せずに流れセンサの迅速な現場校正を可能にする方法を提供することである。
【0022】
本発明のこれらおよび他の目的および利点は、以下の詳細な説明から明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1を参照すると、液体制御システムの構成要素が示されている。当業者には、本発明の方法および装置は、クロマトグラフィー、質量分光測定法、キャピラリー電気泳動法、または他の分析的な用途およびシステムで使用することができることが理解されよう。図1に示すように、液体制御システムのこの特定の実施形態には、複数のポートを有する選択バルブ4が含まれる。バルブ4の1つのポート4aは、流れセンサ2の第1サイドに液体接続部を有する。流れセンサ2の第2サイドは、ポンプ1の入力および出力ポートへの液体接続部を有する。当業者には、バルブ4、センサ2、およびポンプ1のために、いくつかの従来の選択バルブ、流れセンサ、およびポンプのいずれか1つを使用することができることが理解されよう。最高の結果を得るには、Sapphier Engineering社(米国、マサチューセッツ州、Pocasset)製の市販の100μlの正排出ポンプと、Sensirion社(スイス、チューリッヒ)製の市販の流れセンサSLG1430と、Upchurch Scientific社(米国、ワシントン州、Oak Harbor)製の市販のV−485選択バルブとを使用することが好ましい。
【0024】
図1に示したように、ポンプ1はコントローラ3に電気的に接続されており、コントローラはドライバ5に電気的に接続されている。コントローラ3は、センサ2にも電気的に接続されている。コントローラ3は、本発明の方法の工程を実行するようにコンピュータ・ソフトウェアに予めプログラムすることができる。最良の結果を得るには、Intelligent Motion System社(米国、コネチカット州、Marlborough)製の市販のドライバMICROLYNX(登録商標)である、ドライバ5を使用することが好ましい。コントローラ3は、Microchip Technologies社(米国、アリゾナ州、Chandler)製の市販の、シリアル通信およびデジタル入出力接続を有する事前プログラムPIC 18F452マイクロコントローラから構成されることが好ましい。コントローラ3は、本来は、コンピュータ・プログラムを内蔵した特定用途ICである。このコンピュータ・プログラムは、コントローラ3とシステムが以下に詳述する工程を実行することを可能にするよう書き込まれていることが好ましい。
【0025】
さらに図1を参照すると、バルブ4の出力ポートの少なくとも1つが廃棄物容器7と液体で連絡する。バルブ4の別のポートは、校正のために検討されるべき対象の液体(しばしば溶剤と呼ばれる)を貯蔵する貯蔵槽8と液体で連絡する。バルブ4のポート4dは、下流の分析システム6の入力と接続した液体中にある。当業者には、複数の分析システムのうちのいずれかは、クロマトグラフィーまたは質量分光測定システムを含む、下流の分析システムを表すことを理解されたい。
【0026】
コントローラ3は、バルブ4に電気的に接続されており、バルブ4の位置を制御する。当業者には、複数の分析システムまたは装置のいずれかを、選ばれた選択バルブ上の他の未使用ポートに取り付けることができることが理解されよう。
【0027】
次に図2を参照すると、本発明の方法の工程が流れ図に従って説明されている(参照しやすくするために、図1に示した構成要素と同じ番号を使用した)。校正のサイクルを開始する前に、過剰に閉じ込めた空気または他のガスを除去するために、システムをまずパージし、呼び水を入れると有益である。したがって、工程100は、選択バルブ4を介して貯蔵槽8からポンプ1(図1)を充填するものである。次に、ポンプ1は、バルブ4を介して廃棄物容器にポンプ1内の液体を排出することにより濯がれる110。次いでポンプ1は、目的とする液体で再充填される120。工程100、110および120は、一括して排出/導入サイクルとみなすことができる。
【0028】
さらに図2を参照すると、次に校正のサイクルが説明されている。工程130で、オペレータは、ある量の液体を、センサ2を通してバルブ4により廃棄物容器までポンプ輸送する。工程130中には、システムにごくわずかな圧力がかかる。オペレータは、工程140でポンプ1と、センサ2中の液体の流れとを停止する。センサ2が感知した流れの変化の速度が最低限に抑えられると、流れセンサは、工程145で、この値を出力し、それをコントローラ3に送信する。工程145でコントローラ3に送信されたこの値は、二次方程式の等式y=ax2+bx+cの定数cとみなされる(または、コントローラが三次または他の等式を解くようにプログラムされている場合は、この値は等式中のy交点に相当する等式の定数とみなされる)。
【0029】
次の工程150中で、オペレータは、液体が廃棄物容器までセンサ2中を事前選択された速度、例えば分速2マイクロリットルで流れるように、その液体をポンプ輸送するためにポンプ1を起動する。流速は、ポンプ1のピストンを駆動する親ねじのねじ山の間隔に基づいてポンプ1のピストンが移動する、直線距離を知ることにより決定することができる。ポンプ1のピストンの断面積も知られている。したがって、親ねじ(または、場合によっては親ねじナット)一回転分の単位時間で移動される液体の量は、周知または既に決定されている。最良の結果を得るには、校正工程150は、ミクロの液体システム内にごくわずかな背圧しかかからず、したがってシステム内のいかなる構成要素のいかなる弾性も校正上は重要でなくなるように、廃棄のために流される液体の排出によってのみ実行されるべきである。事前選択された第1の流速に達すると、センサ2は、工程155で、第2の平均化された値をコントローラ3に送信する。この平均化された値は、ポンプ機構の周期的ノイズの全周期に対して流れセンサ応答を平均化することにより決定される。親ねじで駆動するポンプの場合、流速は親ねじの完全な1回転ごとに平均化される。
【0030】
図2をさらに参照すると、工程160で、オペレータは、第2の事前選択された速度、例えば分速4マイクロリットルで液体が廃棄物容器までセンサ2中を流れるように、その液体をポンプ輸送するようポンプ1を設定する。上記のように、流速は、ポンプ1のピストンの親ねじで移動される距離の長さと、ポンプ1のピストンの面積とを知ることにより正確に決定することができる。工程165で、第2の事前選択された流速に達すると、センサ2は第3の値をコントローラ3に送信する。この平均化された値は、ポンプ機構の周期的ノイズの全周期に対する流れセンサ応答を平均化することにより決定される。親ねじで駆動するポンプの場合、流速はその親ねじの完全な1回転に対して平均化される。
【0031】
解くべき等式の最も高い次数nの場合、n+1の異なる流速に応答するセンサ2を測定し、決定することが好ましい。測定された流れセンサ2応答及び対応するセンサ2排出応答に対する液体の周知のポンプ輸送速度を使用することにより、オペレータは工程170で、二次方程式(また、使用されるべき等式が第2よりも高い次数を有する場合の他の定数)のための定数a、bおよびcを決定することができる。あるいは、コントローラ3は、定数の値を決定する170用に予めプログラムすることができる。
【0032】
センサ2が本発明に従って校正された場合、システムは、次のようにオペレータにより使用されることができる。すなわち、オペレータは、工程180で、例えばシステム作動中に流れセンサ2の出力を読むことができる。センサ2により出力されたこの流速値は、予めプログラムされたコントローラ3により自動的に決定することもできる。コントローラ3は、工程190で、センサ2が測定し、コントローラ3に送信された流速の変化の増分値に応じて、ドライバ5に適切な信号を送信するよう予めプログラムすることができる。ドライバ5は、工程195で、システムのオペレータが設定した流速を維持するためにセンサ2が受信した信号に基づいてポンプ1の排出を調節する。
【0033】
図示しないが(コントローラを除けば)、当業者には、予めプログラムされたコンピュータをコントローラ3として使用することができることを理解されたい。当業者には、そのようなコンピュータは、センサ2から受信した値を、ポンプの寸法に基づいて流速を決定するための情報と共に受信し、記憶するよう簡単にプログラムすることができることが理解されよう。プログラムされたコンピュータは、定数a、bおよびc(または、解かれるべき特別な等式に基づく他の値)を自動的に計算するように設定され、次いでそれらの値をオペレータが使用するように出力する。同様に、コンピュータ(コントローラ3以外は図示せず)は、コンピュータが、作動中にセンサ2が決定した流速に対応する更新された信号を受信し、コンピュータ(コントローラ3以外は図示せず)は、プログラムされた命令により適切ならば、オペレータがシステム1の作動のために選択した流速を得るようポンプ1を調節するために信号をドライバ5に送信するように、そのような定数で予めプログラムすることができる。当業者には、そのようなコンピュータ・プログラムは、コンピュータのハード・ドライブ(コントローラ3以外は図示せず)、またはディスク、CDROM、DVD、EEPROM、ASIC、ドライブごと、または不揮発性メモリを有する他の電子記憶装置に記憶することができることが理解されよう。
【0034】
次に図3を参照すると、本発明の一実施形態を評価するために使用される実験的なシステム301が示されている。図3で、システム301は、(システム301で溶剤混合物を充填し、これを排出するための)高圧力正排出ポンプ310、インライン非侵入性流れセンサ315、4方向選択バルブ320を含む。システム301は、システム301で背圧にも関わらず所望の値に対して正確な流速を維持する。システム301は、ポンプ310からの排出流速を選択された値に留めるようにポンプ310のピストン速度を調節するために、流れセンサ315からの出力信号を使用することができる。図3に示すように、実験的なシステム301は、流れセンサ315と液体で連絡する、溶剤のソース322も含む。流れセンサ315は、順次、液体を廃棄物容器324と注入バルブ330の両方と連絡することができるように接続されている。注入バルブは、サンプル・シリンジ332および第2の廃棄物容器334と液体で連絡する。さらに、注入バルブ330は、カラム・オーブン345内に収納されたカラム340の第1の端部と液体で連絡する。カラム・オーブン345は、カラム340の温度を35.0℃±0.05℃に維持するために使用される。カラム340の第2の端部は、検出器350と液体で連絡する。この実験のために、本発明者は、注入バルブ330には(ワシントン州、Oak HarborのUpchurch Scientificから市販の)V−485 NANOPEAK注入バルブを使用し、カラム340には内径75μmの15センチメートルのナノ・カラム(オランダ国、アムステルダムのLC Packingsから市販のPEPMAP C18カラム)を使用し、検出器350には(これもまた、オランダ国、アムステルダムのLC Packingsから市販の)ULTIMATE UV検出器を使用した。
【0035】
指定時刻に行われる注入ルーチンを使用して、75%のアセトニトリル/水に溶解されたナフタリン、フッ素、ビフェニル、およびウラシルからなる混合物の多数の5nLプラグがカラム340に反復的に注入された。検体が、検出器350を使用して250nmでの吸光度により検出された。すべての実験データが、アナログ/デジタル回路と、上記方法を実行する予めプログラムされたコンピュータ・ソフトウェアを使用して1.6Hzで収集された。収集されたデータを図4にグラフで示す。図4に示すように、カラム340に加えられる様々な増加する流速に対するシステム流れセンサ排出(50nL/分から700nL/分の範囲で)は、システム流れセンサが、700nL/分(3,000psiの圧力)で12秒の立ち上がり時間の90%を占有することを示しており、50nL/分の排出流速で約1nL/分のRMS流速ノイズを表示する。
【0036】
次に図5を参照すると、本発明の別の代替形態の流れ図が示されている。工程500で、システムは、本発明の方法を開始する。工程501で、システムは、流れセンサが既に校正されたか否かを確認する。これは、コンピュータ・メモリに記憶された値のフラグまたは状態を確認することにより行うことができる。工程501で流れセンサが校正されたと決定された場合、次の工程は、工程505で流れセンサからデータ値を読み取ることである。この工程505は、解くべき多項式の定数を計算するために必要なデータ値を得るために必要となる回数だけ反復される。等式が次数nの等式である場合、少なくともn+1のデータ値を測定すべきである。例えば、流れセンサが、二次式の非線形応答を有すると分かっている場合、プログラムは等式y=ax2+bx+cを解くために、少なくとも3つのデータ値を測定することが必要である。同様に、流れセンサの応答をモデル化するために使用される等式が三次方程式である場合、少なくとも4つのデータ値を流れセンサから読み取るべきである。
【0037】
さらに図5を参照すると、定数を計算し、多項式を解くために流れセンサが測定したデータ値を使用することができるように、工程505で読み取られたデータ値が予めプログラムされたコンピュータ(図5には示さず)に提供される。工程510で、コンピュータは、等式を解くことにより、システムの実際の流速に対する値を計算した。次に工程515で、コンピュータは、メモリから要求された流速を読み取る。この値は、システムをセットアップする際にオペレータが入力することができる。工程520で、コンピュータは、事前選択された流速を達成するために必要なポンプ速度を、所望の流速に対して実際の流速値と記憶された値とに基づいて計算する。工程525で、コンピュータは、ポンプを工程520で決定された要求される速度で作動させるようポンプ・ドライバに信号を送る。工程530で、システムは、ユーザまたはオペレータが新しい流速を入力したか否かを確認する。入力していない場合、次の工程は、新しい校正が必要か否かを決定することである。当然ながら、オペレータは、経過時間に基づき、またはいくつかの他の選択された間隔若しくは発生したイベントの後で、校正することを選ぶことができる。必要でない場合、次の工程は、工程505を反復し、上記周期を継続することである。ユーザが新しい流速を入力している場合、システムは、図5に示すように、工程550でまずその新しい値をコンピュータ・メモリに記憶する。システムは、次いで工程540で新しい校正が要求されているか否かを確認する。
【0038】
さらに図5を参照すると、工程540で、コンピュータが新しい校正が必要とされていると判定した場合、コンピュータは次いで以下の工程を実行する。まず、コンピュータは、工程560で、少なくとも1つのバルブ・ポートに連絡している液体を廃棄物容器に移すために、バルブ(図5には示さない)に信号を送る。次に工程561で、コンピュータは、ポンプを停止するために信号を送る。工程562で、データ値が流れセンサから読み取られる。これは単一のデータ読み取り値であってよいが、それぞれがコンピュータ・メモリに記憶され、次いで平均化されるような、流れセンサの読み取り値からとられた複数の読み取り値であることが好ましい。工程562でこの平均値が得られると、工程563で、コンピュータは、事前選択された第1の速度でポンプを作動させるための信号を送る。工程564で、複数の値が流れセンサから読み取られ、コンピュータ・メモリに記憶され、それらの値の平均値が決定される。次に工程565で、コンピュータは、ポンプを第2の事前選択された速度で作動させるための信号をポンプに送る。工程566で、流れセンサの複数の読み取り値が読みとられ、コンピュータ・メモリに記憶され、平均値が決定される。工程567で、コンピュータは、工程562、564、および566で決定された平均値に対する値をコンピュータ・メモリに記憶する。工程568で、コンピュータは、ポンプを停止するために信号を送る。コンピュータは、流れセンサに対応する多項式のための定数を、最小二乗法アルゴリズム(「最良二乗フィット」と呼ばれる場合がある)または類似のアルゴリズムを使用して計算する。これら定数が計算され、等式が解かれた場合、コンピュータは、新しく要求された流速の入力に基づいて、等式にそれらの値を使用することができ、工程569で新しい校正が完了する。工程569で新しい校正が完了すると、コンピュータは、工程505まで戻り、流れセンサから流速の値を読み取ることにより各工程の作動を反復することができる。
【0039】
次に図6を参照すると、本発明の別の実施例からのデータがグラフで提供される。図6では流速FRが示されており、測定された圧力Pも示されている。図6は、圧力Pが本発明の方法を使用してシステムで流速を変更するために迅速に調節されることを示している。
【0040】
次に図7Aから7Sを参照すると、本発明の一実施形態によるコンピュータ・プログラムのソース・コードが提供されている。図7Aから7Sに示したソース・コードを、上記のように、本発明の方法の各工程の一部または全てを実施するために使用することができる。
【0041】
当業者には、本発明の方法は、ポンプの親ねじのように、機構上のソースからのノイズを減衰するために使用できることが明らかになろう。これは、親ねじが完全に1回転する間に流れセンサから得られた値を平均化することにより行うことができる。例えば、ポンプを作動させるためにステッピング・モータ(図示せず)が使用される場合、親ねじの完全な1回転に相当する工程数を決定することができる。例えば、上記実施例で使用されるシステムでは、ステッピング・モータ(図示せず)は完全な1回転につき200工程を有し、親ねじの完全な1回転で5μLの液体がポンプ輸送される。1.56Hzの速度で、
コンピュータは、分速94データを得ることができ、これらデータの全てをコンピュータのメモリに記憶し、次いで平均化することができる。この平均化により、ねじ山のサイズなどにより親ねじの機構上のばらつきに起因し得るばらつきを除去する。当業者には、この方法は、ノイズ・ソースの全期間にわたり得られたデータ値を平均化し、周期的ノイズ(すなわち、様々な機構上の特徴によるデータの変動)を生じさせるいかなる機構上のポンプでも校正するために使用することができ、そのようにしてユーザが親ねじ以外のドライブ機構でポンプなどからのノイズを校正できるようにすることが理解されよう。
【0042】
Scivex Confluent Nano Fluidic Moduleのための一冊のユーザ・ガイド−100μLバージョンが、付属資料Aとして本明細書に付加され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。この付属資料Aは、例えば、上記のように多項式の解を計算するために流れセンサにより測定された値を使用し、次いで、あるならば事前選択された流速を得るためになす必要のあるポンプの作動に対する調節を決定するために計算された値を使用する、予めプログラムされたコンピュータが制御するポンプの作動などで、本発明の校正方法および装置の使用に関するさらなる詳細および情報を提供する。
【0043】
当業者には、本発明の方法を使用して得られるデータ・ポイントを、他の補間アルゴリズム、例えば三次スプラインを実行するために使用することができることが理解されよう。このような技術には、本明細書に参照として組み込まれた、1988年Cambridge University Press出版、William H.Press著、「Numerical Recipes in C:The Art of Scientific Computing」という書籍に記載された技術が含まれる。当業者には、本発明の方法を他の機器および溶液の組合せと共に使用できることも理解されよう。例えば、2成分勾配系としては、2つのポンプ(図示せず)とT連結(図示せず)を使用して混合された2つの溶液(図示せず)とを使用したシステムを使用することができる。
【0044】
本発明の上記の説明は、好ましい実施形態の説明であり、本発明の請求の範囲を限定するものとみなされるべきではない。当業者には、本発明の趣旨および本発明の請求の範囲を逸脱せずに、特定の構成要素、溶液、サンプル・サイズ、流速などを使用する際に変更がなされる場合があることが理解されよう。
【0045】
〔付属資料A〕












































【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による流体システムの構成要素の概略図である。
【図2】本発明による方法の各工程を示す流れ図である。
【図3】本発明の方法のテスト例を提供するために使用されるシステムの概略図である。
【図4】本発明の一実施例で収集されたデータを示すグラフである。
【図5】本発明の別の実施例を示す流れ図である。
【図6】本発明の別の実施例で収集されたデータを示すグラフである。
【図7A】本発明によるソース・コードの例を示す図である。
【図7B】図7Aの続きである。
【図7C】図7Bの続きである。
【図7D】図7Cの続きである。
【図7E】図7DAの続きである。
【図7F】図7Eの続きである。
【図7G】図7Fの続きである。
【図7H】図7Gの続きである。
【図7I】図7Hの続きである。
【図7J】図7Iの続きである。
【図7K】図7Jの続きである。
【図7L】図7Kの続きである。
【図7M】図7Lの続きである。
【図7N】図7Mの続きである。
【図7O】図7Nの続きである。
【図7P】図7Oの続きである。
【図7Q】図7Pの続きである。
【図7R】図7Qの続きである。
【図7S】図7Rの続きである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロな液体の流れセンサを通過する液体をポンプ輸送する工程と、
液体の流れを停止し、流速に対して上記流れセンサから第1の値を決定する工程と、
流れの第1の事前選択された速度で上記センサを通して上記液体をポンプ輸送し、流れの上記第1の事前選択された速度に対応する上記センサにより出力された第2の値を決定する工程と、
流れの第2の事前選択された速度でセンサを通して上記液体をポンプ輸送し、流れの上記第2の事前選択された速度に対応する上記センサにより出力された第3の値を決定する工程と、
対応する第1、第2および第3の値に基づいて、二次式y=ax2+bx+cでそれぞれ定数c、b、およびaを計算する工程と、
c、b、およびaに対して計算された値に基づいて上記センサを校正する工程と
を含むミクロな液体の流れセンサを校正する方法。
【請求項2】
流れセンサが熱アネモミティ・センサ(anemomity sensor)を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体が、テトラヒドロフラン、メタノール、水、エタノール、ジメチルスルホキシド、およびアセトニトリルからなるグループから選択された1つを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
液体をポンプ輸送するために使用される1つのポンプに最初の濯ぎの工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
流れセンサを通して液体をポンプ輸送する工程が、バルブを通して廃棄物容器に液体をポンプ輸送することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
公知の流速を有するポンプを提供する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1、第2、および第3の値をセンサからコンピュータに送信する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
計算する工程が、コンピュータ・プログラムに従ってコンピュータにより実行される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
選択された液体でポンプを濯ぐ工程と、
ミクロな液体の流れセンサを通過する液体をポンプ輸送する工程と、
ポンプを停止する工程と、
センサにより決定された液体の流れのための第1の値をコンピュータに送信する工程と、
第1の選択された流速で上記流れセンサを通して上記液体をポンプ輸送する工程と、
第1の流速で上記センサにより決定された液体の流れのための第2の値を上記コンピュータに送信する工程と、
第2の選択された流速で上記流れセンサを通して上記液体をポンプ輸送する工程と、
第2の流速で上記センサにより決定された液体の流れのための第3の値を上記コンピュータに送信する工程と、
第3の選択された流速で上記流れセンサを通して上記液体をポンプ輸送する工程と、
第3の流速で上記センサにより決定された液体の流れのための第4の値を上記コンピュータに送信する工程と、
第1、第2、第3および第4の値に基づいて等式y=ax3+bx2+cx+dで定数a、b、cおよびdに対する値を計算する工程と、
等式により流速xを決定する工程と
を含むミクロな液体の流れセンサを校正する方法。
【請求項10】
第1の流速が、分速約−1000マイクロリットルから分速約+1000マイクロリットルの間である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第2の流速は、分速約−5000マイクロリットルから分速約+5000マイクロリットルの間である請求項9に記載の方法。
【請求項12】
命令を実行中のコンピュータに、ミクロな液体の流れセンサから第1の流速に対する第1の値を受信して、それをメモリに記憶し、上記流れセンサから第2の流速に対する第2の値を受信して、それをメモリに記憶し、上記流れセンサから第3の流速に対する第3の値を受信して、それをメモリに記憶し、上記流れセンサの校正のために上記第1、第2および第3の値に対応する定数a、bおよびcに対する値を計算し、作動中に上記流れセンサから流速に対する作動値を受信して、それをメモリに記憶し、上記作動流速値に対応する実際の流速を計算し、その計算した実際の流速に基づいてポンプ速度を調節するよう指示する、プログラム命令を有するコンピュータ・ソフトウェアを含んだ電子記憶装置を含む製品。
【請求項13】
製品がハードディスクを含む請求項12に記載の製品。
【請求項14】
製品がCDROMを含む請求項12に記載の製品。
【請求項15】
製品が、不揮発性コンピュータ・メモリ・デバイスを含む請求項12に記載の製品。
【請求項16】
プログラム命令が、定数a、bおよびcに対して計算された値を使用して計算された流速に応じてポンプの流速を調節するようコンピュータにさらに指示する請求項12に記載の製品。
【請求項17】
ミクロな液体の流れセンサを通過する液体をポンプ輸送する工程と、
液体の流れを停止し、上記流れセンサからの流速に対する第1の値を決定する工程と、
(n+1)の事前選択された流速で上記センサを通して上記液体をポンプ輸送し、上記事前選択された速度ごとに上記流れセンサからの流速に対応する値を決定する工程と、
最高の次数をnとして多項式のnの定数を計算する工程と、
nの定数に対して計算された値に基づいて上記センサを校正する工程と
を含む流れセンサを校正する方法。
【請求項18】
nが3に等しい請求項17に記載の方法。
【請求項19】
nの定数の値が等式y=ax2+bx+cを使用して計算される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
nが4に等しい請求項17に記載の方法。
【請求項21】
nの定数の値が等式y=ax3+bx2+cx+dを使用して計算される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
nの定数の値が最小二乗法アルゴリズムを決定することにより計算される請求項17に記載の方法。
【請求項23】
(n+1)の事前選択された流速でシステム中の液体をポンプ輸送し、流れセンサからの各流速に対応する値を決定する工程と、
nを最高の次数として多項式のnの定数を計算する工程と、
流れセンサから流速を測定する工程と、
多項式を使用して測定された流速に対応する実際の流速を計算する工程と、
計算された実際の流速に基づいてポンプ速度を調節する工程と
を含む流れセンサと液体で連絡するポンプを含むミクロな液体の液体クロマトグラフィー・システムの流速を制御する方法。
【請求項24】
nが3に等しい請求項23に記載の方法。
【請求項25】
nの定数の値は等式y=ax2+bx+cを使用して計算される請求項23に記載の方法。
【請求項26】
nの定数の値が最小二乗法アルゴリズムを使用して計算される請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図7I】
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【図7J】
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【図7K】
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【図7L】
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【図7M】
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【図7N】
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【図7O】
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【図7P】
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【図7Q】
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【図7R】
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【図7S】
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【公表番号】特表2008−500553(P2008−500553A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527481(P2007−527481)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/017762
【国際公開番号】WO2005/114227
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505338475)アップチャーチ・サイエンティフィック・インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】