説明

流体ディスペンサ

液状または粉末状の流体を投与する流体ディスペンサであって、前記ディスペンサは、少なくとも1つの変形可能な駆動壁(2)と投与開口部(14)とを備えた貯蔵器(17)を有し、前記ディスペンサはフレーム(10)を形作る本体(1)を有し、前記フレームの厚みは、定められた容積の内接空間(Vi)を作るように規定されており、前記駆動壁(2)は前記フレーム(10)の上を延び、変形することで貯蔵器の容積を小さくし、さらに、内接空間の中に進むことが可能であり、前記ディスペンサは、貯蔵器の最大容積を規定する休止形状にまで駆動壁(2)を押し戻す戻しバネ手段(16)を有し、特徴となるのは、バネ手段(16)が本体(1)に一体的に形成されていることである、という前記ディスペンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液状または粉末状の流体を投与する流体ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関する流体ディスペンサは、1つ以上の変形可能な駆動壁と投与開口部とを備えた貯蔵器を有する。そうして、駆動壁を押下すると、貯蔵器の内部容積が小さくなり、投与開口部経由で流体が送り出される。その種のディスペンサは、香水、化粧品、さらには医薬品の分野で、液体や粉末の投与に利用可能である。
従来技術においても、貯蔵器の一部分が有する変形性能を利用して貯蔵器に格納されている流体に圧力をかけ、それによって投与開口部から流体を送り出す、という種類のディスペンサは数多く存在する。例えば、特許文書:FR 2 791 645号公報を参照することができるが、これには、2枚の可撓性シートが周縁部全体にわたって接合されて貯蔵器を形作っている、という形のディスペンサが開示されている。また、好ましい構成として、硬い投与部品が2枚のシートの間に挿入されるが、投与開口部は当該投与部品に形成するのが効果的である。それに加えて、2枚のシートの間にバネを配置し、弾性戻し機能を実施させることにしてもよい。当該文書においては、バネが最大限圧縮された状態にある間、投与開口部を密封する、という構成まで設けられている。これにより得られる流体ディスペンサは、特に平らで薄く、例えば雑誌に無料サンプルとして入れることができる。
【0003】
こうした従来技術のディスペンサに関する問題点は、バネが最大限に圧縮された状態が比較的長い期間(すなわち製造時から使用までの間)続く、という点にある。経験によれば、プラスチック素材で作られたバネの場合、最大限圧縮された形に保持された状態である程度の時間が経過すると、もう緩めることができない状態になってしまう。これは、プラスチック素材が、時間経過と共にクリープする傾向を有するためである。別の形として、バネを金属製とした場合は、投与対象の流体が長期間にわたって金属と接触することになる。投与対象の流体によっては、これは、不都合あるいは有害にさえなる場合がある。従って、こうした種類のディスペンサの戻しバネには、間違いなく問題が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術に関する上記の問題点を解消することであり、そのために、比較的平らで薄いディスペンサであって、それが有するバネ手段も、横置きされた状態でディスペンサに圧力がかかっても、圧縮の程度が非常に軽い、あるいは圧縮されない、というディスペンサを規定する。例えば、ディスペンサを雑誌に入れる場合、バネ手段が強く圧縮される危険性は排除しておかなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明が提供する流体ディスペンサは更に、フレームを形作る本体を有し、前記フレームの厚みは、定められた容積の内接空間を作るように規定されており、前記駆動壁は前記フレームの上を延び、変形することで貯蔵器の容積を小さくし、さらに、内接空間の中に進むことが可能である。
【発明の効果】
【0006】
こうした構成により、ディスペンサが2つのほぼ平らな面の間に入れられて、前記2つの面に圧力が加わった場合でも、貯蔵器の動作容積が、フレームの厚みで規定される内接容積を下回るまで小さくなる危険性はない。
また、本発明では、ディスペンサは、貯蔵器の最大容積を規定する休止形状にまで駆動壁を押し戻す戻しバネ手段を備えている。そうして、効果的なのは、それ自体がすでに本体を形成している本体に、一体化した形でバネ手段が形成されていることである。本体については、例えば、プラスチック素材から作ることもできる。
【0007】
また、本発明の効果的な特徴として、バネ手段は前記フレームの内部で延びている。また、休止位置において、バネ手段は前記内接空間の内部で延びている、としてもよい。ただし、変形例では、休止位置におけるバネ手段は、前記内接空間の外部を延びている。バネ手段が内接空間の内側を延びている場合、そして休止位置にある場合、バネ手段から駆動壁に圧力が加わることはない。壁が押下されて初めて、バネ手段は駆動壁を休止位置に戻す働きをする。その反対に、バネ手段が内接空間の外側を延びている場合、バネ手段は休止位置においてすら駆動壁に圧力を加える。このことの結果として、駆動壁は、バネ手段が壁と接触する位置で膨らんだ状態となる。
【0008】
また、実際的な実施の形態においては、バネ手段は、前記フレームを横切る形で延びる、1枚以上の可撓性ブレードを有する、としてもよい。また、例えば、フレームは、約2mmから4mmの範囲で一定の厚みを有すること、としてもよい。
さらに、実際的な実施の形態として、ディスペンサは2つの駆動壁を更に有し、当該駆動壁は、前記フレームのそれぞれの側に耐漏洩様態で固定された2枚の可撓性シートに形作られていること、としてもよい。
【0009】
また、別の特徴として、フレームは実質的に変形しない。このようにすれば、戻しバネ機能は完全にバネ手段が実現することとなり、フレームは関与しない。
また、実際的な実施の形態として、フレームは実質的にリングの形となっている。
さらに、1つの特徴として、投与開口部はフレームに形成されており、その位置はフレームの周縁面とするのが効果的であること、とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明については、これ以降の部分で、本発明の実施の形態を非限定的な例として示す添付図面を参照しながら、さらに詳しく説明していく。
ここで本発明の説明に用いる流体ディスペンサは、3つの構成要素、すなわち、本体1と2枚の可撓性シートとから成る。また、任意の構成として、ディスペンサが更に多孔性素材の部品を有することにしてもよい。
【0011】
本体1はフレーム10を有し、当該フレームについては、非変形性とするのが好ましく、閉じたループを形成している。ここに示す例でのフレームはほぼ円形であるが、多角形(例えば、3角形、4角形、5角形、6角形など)とすることもできる。フレーム10には投与ヘッド13が形成されており、当該ヘッドはフレームに一体化されている。図面に示す例では、ヘッド13によってフレーム10は円形ではなくなっており、滴に似た外観が与えられている。ただし、ヘッド13はフレーム10の一部で、これに一体化されていると考えられる。こうして、本例でのフレーム10には、ほぼ円筒状となった周縁面11が形作られている。また、フレーム10にはさらに、ほぼ平らでありながら環状の形をした2つのエッジ12が形作られている。例えば、各エッジ12には接着用ビード121を設け、当該ビードには、フレーム10の周囲全体にわたって延びる突起(projection)が形成されている、という形にしてもよい。この構成は図2に見られる。投与ヘッド13には投与開口部14が形作られており、当該開口部が、フレームの内側とフレームの外側との間の連絡を確立する。投与開口部は周縁面11に開いている。これは、図3、4を見ればより明らかである。加えて、投与ヘッド13には、任意の構成として、挿入部材用リセス15が形成されており、当該リセスは任意の構成として、多孔性素材の部品3を収容することを目的としている。なお、部品3については、効果的な構成として、リセス15に力嵌めで挿入されるように設計された挿入用付属物34を備えた形状にしてもよい。これにより、多孔性素材の部品3は、付属物34からフレーム11の内部に自由に延びて本体31が形成される形となるが、本体31についても、当然のことながら多孔性素材で作られている。多孔性素材の部品3の目的は、液体状または粉末状の流体を吸入またはしみ込ませて、いつでも投与開口部14に流体が供給されるようにすることである。当然のことながら、用途によっては、こうした多孔性素材の部品3は省くことができる。具体的には、粉末状の流体の場合である。
【0012】
フレーム11の厚みは、周縁壁11の高さに対応する形で規定される。本発明に関して用いられている例では、厚みは、フレーム11の周囲全体にわたって一定となっている。しかし、前記厚みを局所的に変化させることも考えられる。本体10は、少なくともフレーム11の厚み方向では変形しない。言い換えれば、フレーム11の厚みは、強い圧力を受けた場合ですら、減ったり変化したりすることはありえない。逆に、フレーム11は、その幅方向には変形させることができ、それによって、ループまたはリングはわずかに変形する。ただし、リングについても非変形とするのが好ましい。こうした構成により、フレーム11は内接内部空間を形作っており、その容積Viは、フレーム11内部の面積にフレーム11の厚みを乗じた結果に等しい。これは、2つの完全に平らな面にはさまれた状態でのフレームの容積に相当する。フレームの厚みは変化もせず減りもしないので、前記内接空間の容積Viは一定であり、予め規定されている。
【0013】
また、本体10には、一体化した形で戻しバネ手段を形成してもよい。ここに示す例での戻しバネ手段は、フレーム11の内部を横切って延びる2枚の可撓性ブレードの形となっている。2枚のブレード16については、図4に示すように、全体が空間Viの内側に収まる形(inscribed)としてもよい。ただし、変形例として、図5に示すように、ブレード16が少なくとも部分的には空間Viの外を延びる、という形にしてもよい。
【0014】
本発明における本体1は、フレーム11のそれぞれの側に耐漏洩様態で設置、固定された、2枚の可撓性シートと組み合わされている。2枚のシートについては、それぞれが周縁部において、フレーム11の2つのエッジ12に形成された接着ビード121のいずれかに熱シール接着するのが好ましい。実際には、先ず一方のシートをフレーム11に接着して容器を形成する。そこから、容器内に流体を入れることができる。その後は、もう一方のシートを接着して容器を密封するだけでよく、それによって貯蔵器17は完成する。図4、5を見れば容易に理解できるが、内接空間の容積Viと貯蔵器17の内部容積とは一致しない。図4では、ディスペンサが休止位置にある時、容積Viと貯蔵器17の内部容積とは等しくなっている。その反対に、シート2が押さえられて接触する状態になると直ちに、ブレード16が変形して貯蔵器17の内部容積は小さくなり、そうして、内接空間容積Viを下回る状態となる。図5では、貯蔵器17の内部容積は、休止位置における内接空間容積Viよりも大きくなっており、これは、休止位置ではブレード16が空間Viの外に出ているからである。貯蔵器17の容積が空間Viの容積と等しくなるのは例えば、ディスペンサが2つの平らな面の間に置かれることで、ブレード16に対し、これらを空間Viの内部に押し戻す力が働いた場合のみである。この状態は、ブレード16が部分的に圧力を受ける点を除いて、図4に示す形状の場合と同様である。
【0015】
いずれの場合においても、ブレード16が空間Viの内部に収まっているか否かに関わらず、内接空間の容積が一定で決められた値となるディスペンサが得られる。従って、容積Vi以下の量の流体を容器17に充填するのであれば、ディスペンサが、雑誌に挿入されて積み重ねられるなどの形で2つの平らな面の間に置かれる状態になっても、流体が過度の圧力を受けないことが保証される。さらには、バネ手段16が過度に圧縮されないことも保証される。従って、ディスペンサが製造から長期間経た後に使用される場合であっても、バネ手段の正しい動作が保証される。当然のことながら、ディスペンサの使用時、貯蔵器17の容積は容積Viよりも小さくなる。シート2が変形可能であり、ブレード16は可撓性だからである。また、ブレード16が、シート2とほぼ同じ面を延び、それらがいずれかの側に押し当てられている、という形状に達することも可能である。しかしながら、シート2に加えられる圧力が解放されると直ちに、ブレード16が緩む際の作用によって、それらはほぼ休止位置に戻る。
【0016】
本発明によれば、非常に薄く平らであって、しかも変形せず、さらに、任意の構成であるバネ手段は保管中に圧縮しておく必要がない、というディスペンサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の流体ディスペンサを示す斜視図である。
【図2】図1に示すディスペンサの分解図である。
【図3】図1に示すディスペンサの水平方向断面図である。
【図4】図1に示すディスペンサの垂直方向断面図である。
【図5】図4と同様の図であり、本発明のディスペンサの変形例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状または粉末状の流体を投与する流体ディスペンサであって、
前記ディスペンサは、少なくとも1つの変形可能な駆動壁(2)と投与開口部(14)とを備えた貯蔵器(17)を有し、
前記ディスペンサはフレーム(10)を形作る本体(1)を有し、前記フレームの厚みは、定められた容積の内接空間(Vi)を作るように規定されており、
前記駆動壁(2)は前記フレーム(10)の上を延び、変形することで貯蔵器の容積を小さくし、さらに、内接空間の中に進むことが可能であり、
前記ディスペンサは、貯蔵器の最大容積を規定する休止形状にまで駆動壁(2)を押し戻す戻しバネ手段(16)を有し、
特徴となるのは、
バネ手段(16)が本体(1)に一体的に形成されていることである、
という前記ディスペンサ。
【請求項2】
バネ手段(16)は前記フレーム(10)の内部で延びていること、
を特徴とする請求項1に記載のディスペンサ。
【請求項3】
休止位置において、バネ手段(16)は前記内接空間(Vi)の内部で延びていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のディスペンサ。
【請求項4】
休止位置において、バネ手段(16)は前記内接空間(Vi)の外部を延びていること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のディスペンサ。
【請求項5】
バネ手段は、前記フレーム(10)を横切る形で延びる、1枚以上の可撓性ブレード(16)を有すること、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のディスペンサ。
【請求項6】
フレーム(10)は、約2mmから4mmの範囲で一定の厚みを有すること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のディスペンサ。
【請求項7】
2つの駆動壁を更に有し、当該駆動壁は、前記フレーム(10)のそれぞれの側に耐漏洩様態で固定された2枚の可撓性シート(2)に形作られていること、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のディスペンサ。
【請求項8】
フレーム(10)は実質的に変形しないこと、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のディスペンサ。
【請求項9】
フレームは実質的にリングの形となっていること、
を特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のディスペンサ。
【請求項10】
投与開口部(14)はフレーム(10)に形成されており、その位置はフレームの周縁面(11)とするのが効果的であること、
を特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−502054(P2006−502054A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542547(P2004−542547)
【出願日】平成15年10月6日(2003.10.6)
【国際出願番号】PCT/FR2003/002922
【国際公開番号】WO2004/033341
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(502343252)バルワー エス.アー.エス. (144)
【Fターム(参考)】