流体処理用多孔性粒状材料、セメント系組成物およびそれらの製造方法
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料が開示される。粒状材料はセメント系マトリクスまたは結合材および処理済のボーキサイト精製残留物または赤泥を含んで成る。粒状材料に存在する孔の少なくとも一部は開放セルまたは連続孔である。また、本発明は汚染流体を処理するための、多孔性材料を含む反応性透過性バリアの使用にも関する。汚染流体を処理するための多孔性粒状材料の製造方法および多孔性材料を使用した汚染流体の処理方法も開示される。更に、本発明は部分中和赤泥およびセメントを含むセメント系組成物に関し、部分中和赤泥は、カルシウム、マグネシウムまたはそれらの組合せによって付与される、炭酸カルシウム等量で単位リットルあたり少なくとも3.5ミリモルの全硬度を有する水と接触させることにより予備処理されている。セメント系組成物は建築および建設材料として有用である。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は流体中の1種以上の汚染物質の処理に関する。より詳細には、本発明は汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料およびそのような粒状材料の製造方法に関する。
【0002】
また、本発明はセメント系(またはセメント質)組成物にも関する。より詳細には、本発明は常套の流し込み(pouring)、ポンプ移送、グラウト注入および吹付け法を用いて製造および適用できるセメント系組成物であって、耐酸セメント系組成物、耐硫酸塩セメント系組成物、耐含塩ブライン(saline brine:または塩水)セメント系組成物、微粉状表面加工(textured)セメント系組成物、通気(aerated)または気泡(blown)セメント系組成物、およびテラコッタセメント系組成物などとしての用途に好都合なものに関する。また、本発明はそのような組成物の製造方法にも関する。
【0003】
発明の背景
酸性鉱排水(Acid mine drainage:AMD)は硫化物尾鉱が貯蔵された場所であればどこにおいても周知の問題であり、これは殆どの銅、鉛、亜鉛、ニッケルおよび銀の採掘および精錬作業、漂砂鉱床に関するもの以外の殆どの金回収作業、多くの石炭採掘および選鉱作業などに影響を及ぼすものである。人間活動が硫化鉱物を大気に曝すことを伴う場所であればどこにおいても、硫化物が生じた酸性水(微量金属含量が高いことが多い)を酸化させ得るために、環境を害する危険性が潜在的に存在する。これら微量金属は高い生態毒性を有することがあり、これらは環境に対して極めて有害である。鉱物回収作業による金属に富む酸性浸出液の形成および散逸を防止することは、近年の採掘作業に対する管理問題および採掘作業の廃止に付随する廃棄鉱床に対する主要な浄化問題を招く。AMDの制御は現在および従来の双方の鉱区にとって高くつく取り組みである。金属に富む酸性水を現在および従来の鉱区より放出することは、採掘および鉱石選鉱作業に伴う環境破壊の最たるものであると広く考えられている。
【0004】
同様に、多くの工業プロセスも金属に富む酸性水ストリーム(例えば製革、電気メッキ加工、肥料製造およびその他諸々)を生じ、これは排出または処分する前に処理することが必要である。多くの工業および廃棄物管理プロセスは、水と相互作用して酸を生じ得る化合物または成分を生じる臭気を含む排ガスも生じる。
【0005】
従って、上述したような酸性水および微量金属で汚染された水を大量に低コストで処理するために使用できる方法および組成物に対する需要が存在する。
【0006】
アルミナ(Al2O3)はバイエル(Bayer)法にて工業的に製造される。バイエル法は水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて、ボーキサイト鉱石中に存在するアルミナ鉱物を選択的に溶解させるものである。これによりアルミン酸ナトリウム溶液を生じ、この溶液からピュアなAl(OH)3が析出する。ボーキサイト鉱石の苛性ソーダ温浸(digestion)より得られる残留物(または残渣)は一般的に「赤泥」として知られている。ボーキサイト精製(または精製所)残留物または赤泥は高い鉄イオン含量を有し、pH値が約13.5という高い苛性度を有する。アルミナ製造においてこのような苛性度の高いボーキサイト精製残留物が大量に生じ、そしてこれを安全かつ経済的に処分するのは困難であり得る。
【0007】
ボーキサイト精製残留物に対する地球化学的研究は、極めて高い表面積/体積比および高い粒子荷電対質量比を有する粒子によりこれを制することを示している。またこのような研究は、アルカリ性を維持しつつも苛性ではないように低下したpHを有するボーキサイト精製残留物が酸を中和し、および新たな低溶解性鉱物を他の鉱物との共沈によりおよび他の鉱物中元素との同形置換により形成することによって多くの微量元素および他の化合物を結合させ得ることも示している。
【0008】
赤泥の望ましい酸中和および金属結合特性にもかかわらず、これは取扱いが困難で、高い水分含量を有するために運搬コストを実質的に増大させ、極めて低い透過性(または浸透性)を有し、乾燥させ物理的に破砕したときに微細な赤塵を形成する。このような制約は、遠隔地にある貯留水を処理する場合は深刻な障害とはならないが、流動している酸性水、金属に富む水、および人口集中部に近い領域の水ならびに排ガスを処理する能力に対しては悪影響を与える。これらは更に、中程度の透過性を維持することの必要な透過性反応バリアまたは静的水処理カラムもしくはタンクに赤泥を使用することにつき重大な制限を加える。赤泥は、ボーキサイト精製所から得られた形態では、微細赤泥粒子の下流にて生じ得る損失は許容できない程であるので、流動している水塊を処理するためにこれを使用できないことは明らかである。更に、微細赤泥粒子の粒子寸法が小さいために、多くの場合、これらは反応バリアに使用するのに適切でない。
【0009】
コンクリートは、最も基本的なものでは、砂、砂利(または骨材)およびセメントから成り、これらは水と組み合わされてトバモライトゲルの形成を促し、このゲルは酸化物をアルミン酸塩およびケイ酸塩に変えることによって砂および砂利(または骨材)を結合して固体の塊にする。普通ポルトランドセメント(OPC)では、セメント結合の4つの主成分はケイ酸三カルシウム(C3S)、ケイ酸二カルシウム(C2S)、アルミン酸三カルシウム(C3A)および鉄アルミン酸四カルシウム(C4AF)である。ハイアルミナセメントも、塩水(saline water)および高温に対する優れた耐性を提供するために使用されるが、これは一般的に強度が低く、より高価である。
【0010】
【表1】
【0011】
大量の赤泥がオーストラリアやその他の国にあるボーキサイト精製所より毎年生じており、苛性赤泥は特に長期間に亘る廃棄場所にて環境問題を潜在的に引き起こし得るため、これを処分する経済的に維持し得、かつ環境的に許容し得る方法が強く求められている。
【0012】
赤泥をセメント系組成物に利用する様々な試みがなされている。この点に関し、シング(Singh),Mは次の自身のMTech論文の第1章にて文献を概説している:題目「ヒンダルコ社の非苛性化泥およびフライアッシュからの安定化ブロックおよび特殊セメントの製造に関する研究(Studies on the Preparation of Stabilized blocks and Special Cements from Hindalco's Uncausticized Mud and Fly Ash)」、デパートメント・オブ・ケミカル・エンジニアリング・アンド・テクノロジー、インスティチュート・オブ・テクノロジー、バナラス・ヒンドゥー大学、バラナシ、インド(1995年5月)。しかしながら、この論文で概説されているいずれの刊行物にも本発明のセメント系組成物またはその製造方法は開示されていない。
【0013】
赤泥、セメントおよび砂を含有するレンガがジャマイカで製造されている。このレンガは約4.7MPaの圧縮強度を有することが分かった。
【0014】
仏国特許公報第2 760 003号は赤泥および石灰岩または他の酸化カルシウム含有材料を含む鉄に富むセメントクリンカーを開示している。このクリンカーはキルン内で1175℃〜1250℃の温度にて焼成したものであった。洗浄および非洗浄赤泥が用いられていた。またこの文献は上記クリンカーから得られた水硬性セメントも開示している。更に、赤泥をベースとするセメントクリンカーから、これを石灰含有材料および追加の赤泥と混合して水硬性セメントおよびモルタルを製造することを開示している。水による洗浄および1175℃を超える温度(赤泥の所定の構成要素が分解する温度)への加熱を別としても、この文献は赤泥をセメント系組成物に導入する前に更に処理することを何ら開示していない。
【0015】
米国特許第5,456,553号は赤泥を、土壌の補強剤としての酸化鉄粉末および石灰と組み合わせて使用することを記載している。これはセメント系組成物の製造もコンクリートの製造も開示していない。
【0016】
米国特許第5,931,772号は脱水し、乾燥させ、および篩過した赤泥を廃棄材料と組み合わせて使用し、その後、ポゾラン材料(セメント、フライアッシュまたは石灰)と混合する組成物の製造を記載している。この特許は廃棄物を処理およびカプセル封入して、埋立物として処分するための化学的に比較的不活性な固体廃棄物とすることを記載している。使用した赤泥は中和されていなかった。
【0017】
米国特許第3,989,513号は鉄鉱石を高温で精錬するために、赤泥を酸化カルシウム材料および還元剤と混合することを記載している。この特許は赤泥をセメント系組成物に使用することを開示していない。
【0018】
カナディアン・ビルディング・ダイジェスト(http://irc.nrc-cnrc.gc.ca/cbd/cbd215e.html)は、ビトリファイド(またはガラス固化)赤泥をコンクリート骨材として使用することを示唆している。ビトリファイド赤泥は化学的に不活性であるので、ビトリファイド赤泥は赤泥と相異する。ビトリファイド赤泥は充填剤としてしか使用されていない。ビトリフィケーションにより赤泥の地球化学的反応性が除かれる。
【0019】
インターナショナル・リサーチ・デベロップメント・センター(1992年)http://web.idrc.ca/en/ev-2691-201-1-do_TOPIC.htmlは赤泥を他の廃棄物(フライアッシュを含む)と混合して建設用レンガを形成することを示唆していた。グランヴィル(Glanville),J.I.(1991年)、「ボーキサイト廃レンガ(ジャマイカ):評価レポート(Bauxite waste bricks (Jamaica): Evaluation Report)」、1991年6月、IDRC、オタワは赤泥および他の廃棄物でできたレンガを評価して、高ナトリウム含量が塩浸出および塩風解(これは赤泥レンガを用いて建設された構造体を弱体化する)を招くことを示した。これら刊行物は、レンガ構造物に使用した赤泥のナトリウム度(sodicity)または塩含量の低下について検討していなかった。
【0020】
ワグ(Wagh),A.S.およびドゥース(Douse),V.E.(1991年)、「バイエル法廃棄物のシリケート結合非焼成セラミック(Silicate bonded unsintered ceramic of Bayer process waste)」、ジャーナル・オブ・マテリアルズ・リサーチ、ピッツバーグ、ペンシルバニア:6(5) 1095〜1102はバイエル法廃棄物でできたシリケート結合セラミックをセラミック材料として使用することを記載したものである。この刊行物はセメントをポゾラン材料として赤泥と一緒に組み合わせて使用することも、赤泥を建設用材料として使用することも、赤泥を中和してナトリウム度を低下させて使用することも開示していない。
【0021】
発明の目的
本発明の目的は上述の不都合または需要の少なくとも1つに対処し、またはこれを改善することにある。
【0022】
発明の要旨
本発明の第1の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料であって、セメント系マトリクスおよびボーキサイト精製残留物を含む多孔性粒状材料が提供される。
【0023】
好都合には、粒状材料における孔の体積%は10%〜90%;20%〜80%;30%〜70%;40%〜60%;または45%〜55%からなる群より選択される範囲にある。適切には、粒状材料に在る孔の少なくとも一部は開放セル(open cell)または連続孔(interconnected pores:または相互接続した孔)であり得る。好ましくは、孔の少なくとも10%が開放セルまたは連続孔である。より好ましくは、粒状材料において開放セルまたは連続孔である孔の割合は10%〜100%;20%〜100%;30%〜100%;40%〜100%;50%〜100%;60%〜100%;70%〜100%;80%〜100%;および90%〜100%からなる群より選択される範囲にある。
【0024】
好都合には、粒状材料の孔は分布した孔寸法を有する。粒状材料の孔寸法は0.1〜2000μmの範囲にあり得る。孔は、100〜2000μmの範囲にある孔寸法を有するマクロ孔、10〜100μmの範囲にある孔寸法を有するメソ孔および0.1〜10μmの範囲にある孔寸法を有するミクロ孔より成り得る。マクロ子の少なくとも一部はメソ孔またはミクロ孔により連続しており、メソ孔の少なくとも一部はミクロ孔により連続している。
【0025】
本発明の第2の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、粒子がセメント系マトリクスおよびボーキサイト精製残留物を含む多孔性粒状材料が提供される。
【0026】
適切には、粒状材料は細礫(または砂粒)、ペレット、ブリケット(briquette)、押出物、砂利、玉石、ブロック、インターロッキングブロックおよびスラブからなる群より選択される形態で存在し得る。
【0027】
本発明の第3の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための反応性透過性バリア(reactive permeable barrier:または透過性反応壁)であって、第1もしくは第2の要旨またはこれら双方による多孔性粒状材料の透過性塊(permeable mass)を含んで成り、使用に際して多孔性粒状材料の透過性塊が汚染物質を含有する流体の流路に配置されるものが提供される。
【0028】
反応性透過性バリア(または壁)は地下反応性透過性バリアであってよい。他の態様においては、反応性透過性バリアはカラムまたはタンクなどの容器内に配置されていてよい。
【0029】
本発明の第4の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を形成するための組成物であって、組成物がボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を含み、セメント系結合材が第1もしくは第2の要旨またはそれら双方による多孔性粒状材料を形成するのに十分な量で存在する組成物が提供される。
【0030】
適切には、組成物を水性媒体中に混合する際に粒状材料内に孔を生じさせるために、孔発生剤が組成物中に含まれ得る。孔発生剤は過酸化水素、有機ポリマーおよび発泡剤からなる群より選択され得るが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の第5の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を製造する方法であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、方法は:
(a)ボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を水性媒体中で混合してスラリーを形成すること;
(b)スラリーを、セメント系マトリクスおよびボーキサイト精製残留物を有する多孔性粒状材料を形成するように規定された時間かつ規定された温度範囲内にて硬化させる(または養生する)こと
を含む方法が提供される。
【0032】
本発明の第6の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を製造する方法であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、方法は:
(a)ボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を水性媒体中で混合してスラリーを形成すること;
(b)スラリーを型内で硬化させて(または養生して)、セメント系マトリクスおよびボーキサイト精製残留物を有する多孔性粒状材料の凝集塊を形成すること
を含む方法が提供される。
【0033】
型は、多孔性粒状材料の凝集塊を細礫、ペレット、ブリケット、押出物、砂利、玉石、ブロック、インターロッキングブロックまたはスラブからなる群より選択される形態にて形成するように形作られていてよい。
【0034】
適切には、孔発生剤は粒状材料内に孔を生じさせるために孔発生剤を混合工程において添加してよい。孔発生剤は過酸化水素、有機ポリマー、発泡剤および空気などの気体より選択され得るが、これらに限定されない。
【0035】
適切には、硬化の間に孔構造の安定化を助長するためにリン酸塩形成剤(phosphatising agent)を添加し得る。リン酸塩形成剤はリン酸であり得る。
【0036】
スラリーは1日〜60日、好ましくは1日〜50日、より好ましくは1日〜30日の期間に亘って硬化させ得る。
【0037】
本発明の第7の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理する方法であって:
・第1または第2の要旨またはそれら双方による多孔性粒状材料の透過性塊を準備すること;および
・汚染物質を含有する流体を多孔性粒状材料の透過性塊に通過させること
を含む方法が提供される。
【0038】
流体は汚染された水または汚染された気体状流体であってよい。流体中の汚染物質は酸;金属イオン(鉛、アルミニウム、ベリリウム、カドミウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、マンガン、水銀、銀、亜鉛など);半金属(アンチモンまたはヒ素など);アニオン(ホウ酸塩、炭酸塩、シアン化物、金属オキシアニオン錯体、シュウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物など);および気体(二酸化炭素、酸化窒素、亜酸化窒素、二酸化硫黄、三酸化硫黄など);ならびにこれらのうち1種または2種以上の組合せからなる群より選択され得るが、これらに限定されない。
【0039】
組成物またはスラリーは1%〜99%(重量/重量)のボーキサイト精製残留物および1%〜99%(重量/重量)のセメント系結合材を含み得る。好ましい組成物は50%〜95%(乾燥重量)のボーキサイト精製残留物および5%〜50%(重量)のセメント系結合材を含む。より好ましい組成物は70%〜90%(重量)のボーキサイト精製残留物および10%〜30%(重量)のセメント系結合材を含み、そして最も好ましい組成物は80%〜85%(乾燥重量)のボーキサイト精製残留物および15%〜20%(重量)のセメント系結合材を含む。好都合には、追加の添加剤がボーキサイト精製残留物に添加されていてよく、追加の添加剤は砂、粉状苛性製鋼スラグ残留物、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化カルシウムなど)、アルカリ土類金属炭酸塩(炭酸カルシウムなど)、アルカリ土類金属酸化物(酸化マグネシウムなど)、次亜塩素酸カルシウム、ナトリウムミョウバン、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、石膏、リン酸塩(リン酸アンモニウムなど)、リン酸、ハイドロタルサイト、ゼオライト、かんらん石(またはオリビン)および輝石(塩基性または超塩基性火成岩中に存在するものを含む)、塩化バリウム、ケイ酸およびその塩類、メタケイ酸およびその塩類、鉄ミョウバン石または他のミョウバングループの鉱物およびマガディアイト、ならびにこれらのうち1種または2種以上の組合せからなる群より選択される。組成物の酸中和能を増強し、または流体中の特定汚染物質の除去能力を増強するために、追加の添加剤をスラリーに添加してよい。
【0040】
適切には、ボーキサイト精製残留物は約10.5未満のpHを有する。好ましくは、ボーキサイト精製残留物は約8〜約10の範囲にあるpHを有する。
【0041】
トバモライトゲルを形成可能なセメント系結合材が好ましい。好ましいセメント系結合材は普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントおよびハイアルミナセメントからなる群より選択されるセメント、またはトバモライトゲルの発達に依存した任意の他の市販で入手可能なセメント結合剤(cementing agent)である。
【0042】
本明細書において、用語「含む」は「主に含むが、必ずしもこれのみでない」ことを意味する。更に、語句「含む」のバリエーション、例えば「含み」などは対応した様々な意味を有する。
用語「赤泥」は以下、「処理済赤泥」、「部分処理赤泥」、「未処理赤泥」およびボーキサイト精製残留物を含み得るものとする。
用語「処理済赤泥」は以下、10.5未満のpHを有する赤泥を意味するものとする。
用語「部分処理赤泥」(または部分的に処理された赤泥)は以下、10.5以上13.5未満の範囲にあるpHを有する赤泥を意味するものとする。用語「未処理赤泥」は13.5以上のpH値を有する赤泥を意味するものとする。
【0043】
多孔性ペレット製造のための部分処理赤泥
赤泥の処理は、赤泥の水に対する重量比を1:5として水と混合したときに10.5未満の反応pHを有する物質を得るように、カルシウムおよび/またはマグネシウムイオンで処理することを含み得る。別法では、赤泥の処理は酸の添加によりこれを中和することを含み得る。もう1つの別法では、赤泥の処理は二酸化炭素に接触させること;または石膏などの鉱物を添加することを含み得る。
【0044】
処理済赤泥は、酸処理中和およびか焼により活性化した赤泥、または水での洗浄または寸法分離(整粒)などにより様々な方法で化学的および/または物理的に変化させた赤泥であり得る。
【0045】
赤泥を、その重量の5倍の水と混合したときに10.5未満の反応pHを有するようにカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンと少なくとも部分的に反応させて、処理済赤泥とする。より好ましくは、その重量の5倍の水と混合したときの反応pHは約10、約9.5、約9、約8.5および約8からなる群より選択される値より小さい。処理済赤泥のその重量の5倍の水と混合したときの反応pHは約8〜10.5、あるいは約8.5〜10、あるいは約8〜8.5、あるいは約8〜9、あるいは約8.5〜9.5、あるいは約9〜10、あるいは約9.5〜10、あるいは約9〜9.5であってよく、および約10.5、10、9.5、9、8.5または8であってよい。
【0046】
本明細書に定義する処理済赤泥を製造(または調製)し得る1つの方法は、国際特許出願PCT/AU03/00865および国際特許出願PCT/AU01/01383に記載されているように(これらの開示内容はその全体が本明細書に組み込まれる)、未処理または部分処理赤泥をカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンと反応させることによるものである。処理済赤泥を製造し得るもう1つの方法は、未処理または部分処理赤泥を、赤泥の反応pHを10.5未満に減少させるのに十分な量の海水と反応させることによるものである。例えば、未処理赤泥が約13.5のpHおよび約20,000mg/Lの液相中アルカリ度を有する場合、約5倍体積の世界平均的海水を添加することにより、pHを9.0〜9.5に、およびアルカリ度を約300mg/Lに低下させる。
【0047】
国際特許出願PCT/AU03/00865および国際特許出願PCT/AU01/01383に教示されているように、未処理または部分処理赤泥をカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンと反応させる方法は、未処理または部分処理赤泥を、基準量および処理量のカルシウムイオンと基準量および処理量のマグネシウムイオンとを含有する水性処理溶液と、赤泥の反応pHをその1重量部を蒸留または脱イオン水5重量部と混合したときに10.5未満とするのに十分な時間に亘って混合することを含み得る。カルシウムおよびマグネシウムイオンの基準量は、処理溶液および赤泥の合計体積単位リットルあたり、それぞれ8ミリモルおよび12ミリモルであり;カルシウムイオンの処理量は、赤泥の全アルカリ度の単位モルあたり少なくとも25ミリモル(炭酸カルシウム等量アルカリ度換算)であり、マグネシウムイオンの処理量は、赤泥の全アルカリ度単位モルあたり少なくとも400ミリモル(炭酸カルシウム等量アルカリ度換算)である。海水を使用し得ることに加えて、国際特許出願PCT/AU03/00865および国際特許出願PCT/AU01/01383に教示されているように、カルシウムおよびマグネシウム源の例には、地下硬水ブライン(hard groundwater brine)、天然含塩ブライン(例えば蒸発により濃縮した海水、岩塩坑からの苦汁ブライン、または塩湖ブライン)、排塩水(例えば脱塩(または淡水化)プラントからのもの)、ならびに塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムを溶解させて得られる溶液が含まれる。しかしながら、カルシウムおよび/またはマグネシウムイオン源はこれらの例に限定されない。
【0048】
処理済を製造し得る更なる方法は:
(a)赤泥のpHおよびアルカリ度の少なくとも一方を低下させるように、未処理または部分処理赤泥をアルカリ土類金属(典型的にはカルシウムもしくはマグネシウムまたはそれら2つの混合物)の水溶性塩と接触させる工程;および
(b)赤泥のpHを10.5未満に低下させるように、未処理または部分処理赤泥を酸と接触させる工程
を含む。
【0049】
工程(b)において、赤泥のpHは約8.5〜10、あるいは約8.5〜9.5、あるいは約9〜10、あるいは約9.5〜10、好ましくは約9〜9.5に低下し得、また、約10.5、約10、約9.5、約9、約8.5および約8からなる群より選択される値に低下し得る。
【0050】
この方法の工程(a)において、赤泥の液相の全アルカリ度は、炭酸カルシウムアルカリ度換算で、約200mg/L〜1000mg/L、あるいは約200mg/L〜900mg/L、あるいは約200mg/L〜800mg/L、あるいは約200mg/L〜700mg/L、あるいは約200mg/L〜600mg/L、あるいは約200mg/L〜500mg/L、あるいは約200mg/L〜400mg/L、あるいは約200mg/L〜300mg/L、あるいは約300mg/L〜1000mg/L、あるいは約400mg/L〜1000mg/L、あるいは約500mg/L〜1000mg/L、あるいは約600mg/L〜1000mg/L、あるいは約700mg/L〜1000mg/L、あるいは約800mg/L〜1000mg/L、あるいは約900mg/L〜1000mg/L、好ましくは300mg/L未満に低下し得、また、約1000mg/L、約900mg/L、約800mg/L、約700mg/L、約600mg/L、約500mg/L、約400mg/L、約300mg/Lおよび約200mg/Lからなる群より選択される値未満に低下し得、また、約1000、約950、約900、約850、約800、約750、約700、約650、約600、約550、約500、約450、約400、約350、約300、約250および約200mg/Lからなる群より選択される値に低下し得る。
【0051】
このpHは典型的には約9.5未満、好ましくは約9.0未満に低下し、また約9.5、約9.25、約9.0、約8.75、約8.5、約8.25および約8からなる群より選択される値に低下し得る。また、液相の全アルカリ度は、炭酸カルシウム等量アルカリ度換算で、好ましくは約200mg/L、約150mg/Lおよび約100mg/Lからなる群より選択される値未満に低下し、また約200、約175、約150、約125、約100、約75および約50mg/Lからなる群より選択される値に低下し得る。
【0052】
多孔性ペレット製造の目的で本明細書中に定義されるところの処理済赤泥は、鉱物の複合混合物から成る乾燥赤色固体であり、この複合混合物は次のものを通常含む:豊富なヘマタイト、ベーマイト、ギブサイト、ソーダライト、石英およびカンクリナイト、より少量のアラゴナイト、ブルース石、カルサイト、ダイアスポア、水酸化鉄、石膏、ハイドロカルマイト、ハイドロタルサイト、p−アルミノハイドロカルサイトおよびポートランダイト、ならびにごくわずかの低溶解性微量金属。これは高い酸中和能(処理済赤泥単位kgあたり2.5〜7.5モルの酸)および極めて高い微量金属捕捉能(処理済赤泥単位kgあたり1,000ミリグラム等量以上の金属)を有し;また、リン酸塩および他のいくつかの化学種を捕捉および結合する高い能力も有する。処理済赤泥は個々の用途に適するように様々な形態(例えばスラリー、粉末、ペレットなど)で製造できるが、そのいずれもが、高い酸中和能にもかかわらず、中性に近い土壌反応pH(10.5未満およびより典型的には8.2〜8.6)を有する。処理済赤泥の土壌反応pHは中性に十分近く、また、そのTCLP(毒性指標浸出法)値は十分低く、特別許可を得る必要なく運搬および使用できる程度である。
【0053】
しかしながら、上述のことから理解されるように、本発明の組成物および方法に使用するための赤泥は本明細書に定義する処理済赤泥に限定されず、酸での処理により少なくとも「部分処理」された赤泥(即ち10.5〜13.5のpHを有する);二酸化炭素での処理により少なくとも部分処理された赤泥;またはカルシウムおよび/またはマグネシウムを含有する1種または2種以上の鉱物(石膏など)の添加により少なくとも部分処理された赤泥であってもよい。赤泥は、簡便には、赤泥の水性懸濁液に二酸化炭素をバブリングすることによって、またはそのような懸濁液に加圧下にて二酸化炭素を注入することによって、赤泥の反応pHが10.5および13の間からなる群より選択される値未満に低下させることとする、二酸化炭素での処理により少なくとも部分処理されていてよい。
【0054】
処理済赤泥の典型的な鉱物学および化学的組成を以下の表2にまとめて示す。
【表2】
【0055】
処理済赤泥のテクスチャ(texture:または肌理)および鉱物学性(mineralogy)により、赤泥は極めて高い微量元素捕捉および結合能(>1000mg等量/kg、pH値>6.5にて)および微量元素をこれと接触している水からストリッピングする能力を有するものとなる。処理済赤泥の金属結合性質は材齢が増すにつれてより強くなる。高い金属結合能に加えて、処理済赤泥は酸中和能を有し、これは乾燥処理済赤泥単位kgあたり3.5モルの酸より多く、通常、乾燥処理済赤泥単位kgあたり4.5モルの酸より多い。これら性質により、処理済赤泥は水処理および他の同様の用途に幅広く適したものとなっている。
【0056】
処理済赤泥の鉱物の構成要素は個々にであれ、集合した状態であれ、人間および動物に対して非毒性である。処理済赤泥中に存在する鉱物の多くは人間用医薬品に使用されるものである。
【0057】
処理済赤泥または部分処理赤泥は好ましくは微粉状である。
【0058】
処理済赤泥を本発明の組成物および方法に使用する格別の利点は、可溶性塩濃度(特にナトリウム濃度)が未処理赤泥中の濃度より実質的に低いことである。処理済赤泥のこの特徴は、処理済赤泥の塩度を、環境に排出されることとなる水や、灌漑目的でまたは哺乳動物の飲用水として使用される水と同等に低くしなければならない場合に特に重要である。
【0059】
セメント系結合材
セメント系物質はトバモライトゲルであり得る。最も典型的なトバモライトゲルは工業用セメントの凝結において生じ、また、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、およびハイアルミナセメント、またはトバモライトゲルの発達に依存した任意の他の市販で入手可能なセメント結合剤を含み(但しこれらに限定されない)、以下、「セメント」と呼ぶものとする。トバモライトゲルには4つの主要構成要素が存在し、これらはケイ酸三カルシウム(C3S)、ケイ酸二カルシウム(C2S)、アルミン酸三カルシウム(C3A)および鉄アルミン酸四カルシウム(C4AF)である。
【0060】
ペレット形成の間に有機添加剤を導入すると、繊維質マットを生じることにより更なる結合強度を付与できると同時に、組織の木部および師部により、流体フローに対して追加の相互接続路を提供できる。加えて、有機物は適切な細菌繁殖培地を提供し、よって、形成されたペレットは生物地球化学的反応(例えば硫酸還元および脱窒)を効率的に進行させ得る嫌気性処理に使用し得る。更に、ペレット内の有機物は植物成長のための更なる栄養および炭素源を提供でき、ペレットを土壌改善プログラムまたは鉢植え用混合増量剤に使用できよう。ペレットに導入され得る有機物には下水汚泥、サトウキビ圧搾残留物、わらくず、腐葉土(mulch)および麻繊維などが含まれ得るが、これらに限定されない。添加する有機物量の好ましい範囲は乾燥混合物の0%〜15%(重量)の範囲であり、より好ましい範囲は乾燥混合物の0.4%〜10%(重量)であり、更により好ましい範囲は乾燥混合物の0.6%〜8%(重量)であり、そして最も好ましい範囲は乾燥混合物の0.8%〜5.0%(重量)である。
【0061】
鉱物添加剤
処理済赤泥の操業上の利点は、PCT/AU01/01383に教示されるように鉱物添加剤の添加によりしばしば助長され得る。使用の可能性のある添加剤には、アルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば炭酸ナトリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば水酸化カルシウム)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば炭酸カルシウム)、アルカリ土類金属酸化物(例えば酸化マグネシウム)、次亜塩素酸カルシウム、ナトリウムミョウバン、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、石膏、リン酸塩(例えばリン酸アンモニウム)、リン酸、ハイドロタルサイト、ゼオライト、かんらん石(またはオリビン)および輝石(塩基性または超塩基性火成岩中に存在するものを含む)、塩化バリウム、ケイ酸およびその塩類、メタケイ酸およびその塩類、鉄ミョウバン石または他のミョウバングループの鉱物およびマガディアイトからなる群より選択される1種または2種以上の物質が含まれる。これら物質の1種または2種以上がペレット状にすべき混合物に添加されて、ペレットの特定の性質を増強し得る。任意の1種の鉱物添加剤についての添加割合の好ましい範囲は乾燥混合物の0%〜30%(重量)の範囲であり、より好ましい範囲は乾燥混合物の1%〜25%(重量)であり、更により好ましい範囲は乾燥混合物の2%〜20%(重量)であり、そして最も好ましい範囲は乾燥混合物の5%〜15%(重量)である。鉱物添加剤の添加により使用する赤泥の量が減ることが理解されるであろう。
【0062】
スラリー水
水を適当な割合で添加し、乾燥セメント系物質と混合すると、トバモライトゲルが形成される。このことはペレット形成に好都合である。しかしながら、水の添加量が少なすぎると、得られるトバモライトゲルは凝結して、マクロ孔度が望ましくない程に高レベルで、かつ強度が低い固体物質となり、他方、水の添加量が多すぎると、得られるトバモライトゲルは凝結して、孔寸法分布が小さく、透過性が低下し、かつ乾燥特性に乏しい固体物質となる。
【0063】
乾燥気味の混合物を得るよりも湿潤気味の混合物を得るほうが好ましい。乾燥した構成成分(ingredients:または原料)に水を添加し、滑らかなペーストになるまで混合しなければならない。添加すべき水の量の好ましい範囲は、使用する処理済赤泥ブレンド、ブレンド中に存在する酸中和水酸化物および酸化物鉱物の割合、および処理済赤泥の初期含水量に依存する。
【0064】
処理済赤泥およびポルトランドセメントを結合材として使用する場合、水添加量についての好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水15%〜55%(重量)、より好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水25%〜45%(重量)、更により好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水30%〜40%(重量)、そして最も好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水33%〜37%(重量)である。しかしながら、水の最適量も、使用する赤泥の含水量(これはバッチ間でばらつき得る)に依存し、従って、添加すべき水の厳密な量はオペレータの経験に基づいて決められることになる。
【0065】
シリカ供給物
トバモライトゲルを形成するための追加のシリカ源を提供するように他の成分を混合物中に含めてよく、他の成分にはケイ砂、珪藻岩、フライアッシュ、ボトムアッシュ、および破砕ケイ酸塩岩などが含まれ得、単独でまたは組み合わせて添加し得るが、これらに限定されない。これらシリカ源の添加量の好ましい範囲は0%〜30%(乾燥重量)、より好ましい範囲は3%〜20%(乾燥重量)、そして最も好ましい範囲は5%〜12%(乾燥重量)である。
【0066】
可塑剤および重合剤
可塑剤および/または重合剤(polymeriser)も、ペレット形成を容易にするため、湿潤混合物のワーカビリティを高めるため、凝結始発時間を抑制するため、硬化生産物に更なる結合強度を付与するため、および/またはペレットのスレーキングを防止すべく水を凝結ペレット中へ孔に沿って透過させるように濡れ性表面を提供するために、組成物に添加してよい。
【0067】
可塑剤および重合剤にはセルロース質物質(メチル−ヒドロキシエチル−セルロース(MHEC)およびヒドロキシプロピル−メチル−セルロース(HPMC)など)および重合化剤(ジブチルフタレート(DBP)など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
処理済赤泥ブレンド(例えばHPMC)を用いたペレット混合物に添加するには、高度に置換された有機可塑剤および重合剤(例えばHPMC)が好ましく、他方、低イオン強度系(例えば淡水で濯いだ処理済赤泥)では、それ程高度にではなく置換された可塑剤/重合剤(例えばMHEC)を使用してよく;可塑剤の塩析(過剰な塩負荷)により可塑剤の性能が低下する。好ましい可塑剤添加割合は乾燥混合物の約0.01%〜約8%(重量)であり、好ましい範囲は乾燥混合物の約0.4%〜約5%(重量)であり、更により好ましい範囲は乾燥混合物の約0.6%〜約3%(重量)である。最も好ましい範囲は乾燥混合物の約0.8%〜約2.0%(重量)である。
【0069】
空気連行剤(またはAE剤)
空気の連行により、ペレットに多孔性および透過性が付与される。空気は2つの方法の一方または双方により連行し得る。第1はスラリーを物理的に混合する際に小さい気泡を伴うようにすることであり、第2は空気連行剤でスラリーの有する化学条件下にて気体を放出させるか、スラリーを混合する間に空気を導入するよう支援することである。空気連行剤には過酸化水素、有機ポリマーおよび市販で入手可能な有機発泡剤が含まれ得る。
【0070】
過酸化水素はスラリーの有する化学条件下にて不安定になり、分解して酸素を生じ、この酸素は膨張して孔を設ける。気泡が上方に向かって移動することにより、ペレット透過性が付与される(孔の相互接続または連続)。
【0071】
過酸化水素は空気連行剤として様々な強度で使用してよく、好ましくは過酸化水素0.1%〜75%(重量対体積)、より好ましくは過酸化水素1%〜30%(重量対体積)、そして最も好ましくは過酸化水素3%〜10%(重量対体積)の範囲にある。過酸化水素3%(重量対体積)の場合、添加割合は好ましくは乾燥混合物単位kgあたり1mL〜25mLであり、より好ましくは乾燥混合物単位kgあたり2mL〜20mLであり、更により好ましくは乾燥混合物単位kgあたり5mL〜15mLであり、そして最も好ましくは乾燥混合物単位kgあたり8mL〜10mLである。空気連行剤の添加割合をより高くすることまたは濃度をより高くすることにより、多孔性(または孔度)および透過性が高められるが、物理的強度は低下する。
【0072】
リン酸塩形成剤
ペレット内でのアパタイト様鉱物および鉱物結晶間でのリン酸塩架橋部の発達により、強度上の更なる利点、特に濡れ強度が付与され得、これは空気連行剤と組み合わさってミクロ孔度の向上および安定性を助長する。また、リン酸塩は重金属を捕捉および結合するようにも機能する。リン酸塩形成剤をペレット混合物に添加してよく、これにはリン酸、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムが含まれ得る。
【0073】
リン酸塩形成剤はリン酸であり得る。リン酸は約0.01M〜約18M、好ましくは0.1M〜約5M、より好ましくは0.5M〜約3M、そして更により好ましくは約1M〜約2Mの強度を有し得る。強度1.5Mのリン酸の場合、好ましい添加割合は乾燥構成成分単位kgあたり0.2mL〜4mL、好ましくは乾燥構成成分単位kgあたり約1mL〜約3.5mL、より好ましくは乾燥構成成分単位kgあたり約1.5mL〜約2.5mL、更により好ましくは乾燥構成成分単位kgあたり約2mL〜約2.5mLであり得る。
【0074】
混合
乾燥材料は、水または他の湿潤材料(リン酸塩形成剤および/または空気連行剤を含む水性溶液など)を導入する前に、好ましくは<2mmに、より好ましくは<1mmに、更により好ましくは<500μmに、そして最も好ましくは<250μmに篩過し、そして材料の凝集を低減するよう十分に混合してよい。
【0075】
湿潤材料は、これらを混合して一緒にした後に乾燥材料に添加することが好ましいが、湿潤材料を個々に添加してもよい。湿潤構成成分を乾燥構成成分と個々に混合するのであれば、好ましい混合順序は、乾燥材料に水を添加し、その後、リン酸塩形成剤または空気連行剤を添加することである。
【0076】
混合プロセスの間に空気連行を確実に完了させるためにスラリーを過度に混合する(即ち湿潤気味から乾燥気味のスラリーとする)ことが好ましい。混合を一旦停止すると空気連行が実質的に減少してしまうので、好ましくは空気連行が完了するまで混合すべきである。
【0077】
混合は様々な手段で実施でき、これには市販で入手可能な剪断力ミキサー、および材料を転動させるコンクリートミキサーが含まれる。混合により、スラリー材料は好ましくは1分間あたり少なくとも10回、より好ましくは1分間あたり約20回、そして更により好ましくは1分間あたり約30回の割合(市販で入手可能なコンクリートミキサーでの1分間あたりの標準的回転数で示す)で、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも約10分間に亘って折り畳まれる。剪断力ミキサー(例えばパン用ミキサー)は典型的には、標準的なコンクリートミキサーより高い混合割合(または速度)で稼働し、機械の仕様に応じて混合時間を適宜に調整し得る。
【0078】
ペレット成型および乾燥
トバモライトゲルの強度は時間とともに、数ヶ月、更には数年もの期間に及んで上昇し続ける。約28日後、更なる強度上昇は次第に穏やかになる。セメントの凝結の始発はC3AおよびC4AF形のトバモライトの発達により0〜10日の期間に亘って起こり、C3SおよびC2Sトバモライトゲルは0〜400日の期間に亘って生じる。
【0079】
スラブキャスティング
本発明による組成物はキャスティングによりスラブとし得る。スラブ流し込みは正確な目盛を有する十分な容積のミキサー(例えばバッチ作業オフロード作業(batching works off road works))、および可塑剤などを混合するためのIBCミキサーを要し得る。全ての材料をスクリーニングする(またはスクリーンに通す)ことが必要であり得、よってセメント、石灰、酸化マグネシウムのミキサー入口の上方にて振動スクリーンを用いてよい。
【0080】
処理済赤泥スラリーをミキサーに加える前にポンプ移送してウェットスクリーンに通してよい。スラブ作製はスラブ運搬のためにバックホーを、また、持上げ用フックをスラブに成型する場合にはクレーンを要する。スラブは貯蔵のために積重ねてよく、倉庫内で乾燥させた後に破砕してよく、その後、バルクまたは袋詰めした状態などで運搬してよい。スラブはそのまま運搬してよく、または現場で破砕してもよい。スラブは露天で貯蔵してよい。
【0081】
破砕
一旦硬化させた後、スラブまたは粗ペレットブロックを破砕または機械的にチッピングもしくは切断/剪断し、そして分類して任意の所望寸法を有するペレットを得るようにしてよい。ペレットは、好ましくはそれを充填するカラムの内径の約1/10未満の寸法、より好ましくはカラムの内径の約1/20未満の寸法、更により好ましくはカラムの内径の約1/40未満の寸法、そして最も好ましくはカラムの内径の約1/50未満の寸法に破砕される。
【0082】
典型的には、破砕したペレットは約0.05mm〜100mmの好ましい範囲の寸法分布を有し、より好ましい寸法分布範囲は約0.1mm〜約10mmであり、より好ましい寸法分布範囲は約0.2mm〜約5mmであり、そして最も好ましい寸法分布範囲は約0.5mm〜約2.5mmである。しかしながら、大幅に異なる寸法範囲を有するペレットを、特定の用途に対して必要とされるように選択してよい。例えば、大きい粒子(玉石の寸法)はストリーム(または河川)床用途に使用するのに必要とされ得、これに対して、0.5mm〜2mmの寸法を有するペレットは小さい水処理カラムに最適であり得る。
【0083】
粒子の形成
本発明の組成物は粒状ブレンドの形態で提供され得、または、使用した破砕または切断法に応じて混合成分で構成された細礫、ペレット、タブレット、レンガ(またはブリック)、チャンクまたはブロックとして提供され得る。好ましくは、本発明の組成物は、組成物の成分の密着混合物でできたペレットの形態で提供される。いずれの粗粒子も好ましくは破砕され、切断/剪断され、または細砕される(もしくは挽かれる)。この破砕、切断または細砕後、粒子を篩過またはスクリーニングして、各用途につき所望される寸法範囲を得る。寸法は典型的には0.05mm〜10cmの範囲にある。しかしながら、破砕、切断または細砕により、0.05mm未満の直径を有する粒子も存在し得る。0.05mm未満の材料は通常、透過性を使用の間中維持するために粒子から除去する必要があるが、必ずしも廃棄しなくてよい。
【0084】
また、破砕、細砕または切断後に除去した微細な材料は、液圧プレスを用いて均質混合物をペレット状に圧縮することにより、または圧縮ローラもしくは造粒機または簡便または効率的であると考えられる任意の他の同様の手段によりペレット形成し得る。運搬および中程度に粗雑な扱いに耐えるのに十分な強度および安定性を有する圧縮したペレットを、約50MPa以上の圧縮に付す(または加圧する)ことにより容易に形成できる。しかしながら、約150MPa以上の加圧が好ましく、そして、約250MPa以上の加圧がより好ましい。約50、100、150、200、250、300、350または400MPa、または約50〜500MPa、または約100〜450MPa、または約150〜400MPa、または約200〜350MPaの加圧を使用し得る。また、強固かつ安定なペレットは、均質混合物に水を添加することにより調製した湿ったスラリーより作製することもできる。混合物を殆どまたは全く圧縮せずにローリングすることによりペレットを適切な含水量で作製できる。所望であれば、市販で入手可能なペレット結合材(化学、医薬またはこれに類する産業にて使用されるもの、例えばメチルセルロースまたはその他のセルロース誘導体)を混合物に添加して、更なる物理的強度を付与することができる。
【0085】
本発明による組成物は水質管理バリア、地下反応バリアおよび濾過カラムを含む透過性水処理システムに使用できる。
【0086】
水質管理バリア
本発明による組成物は、小川または排水路にて水流を止めることなく酸を中和し、または水から金属、半金属およびいくつかの他の潜在的汚染物質(例えばシアン化物およびリン酸塩)を除去するために小川または排水路に配置され得る透過性バリアを作製するために使用できる。水が水路にある水質管理バリアを通って流れるときに、水質が実質的に改善される。
【0087】
本発明による組成物は必要に応じて水路に配置され得る多孔性バッグまたは同様の容器に充填され得る。好ましい容器は、微細な孔寸法(<5ミクロン)を有するジオテキスタイルバッグの形態であるが、その他の材料も容器を構成するために使用できる。
【0088】
このバリア(または壁)は以下のものを含む任意の寸法または形状に構成してよい:
A)15kg〜30kgのペレットを保持する枕状のバッグ;洪水管理に使用される砂袋のようなもの。このバッグは必要に応じてより大きくても、より小さくてもよいが、必要な場所に手で設置するにはこれが便利な寸法である。このバッグは小さい排水路または水路に一時的に設置するのに適切であり得る。
B)ソーセージ状で、15kg〜50kgまたはそれより多くの本発明による組成物でできたペレットを保持するように設計されたバッグ。寸法につき制限はないが、これより大きいソーセージ状物は所定位置に配置するのがより困難であり得、持上げ機械を用いる必要があり得る。このバッグはより大きな水路に使用するのに、または汚染水が溢れ出たり意図的でなく放出されるのを包囲するための緊急事態用のバリアを作製するのに適切であり得る。
C)細長いバッグが台形断面および排水路または水路の一方から他方まで延在するように設計された長さを有するように設けられ得、そしてこれは水路の底部に固定される。この設計を有するバッグは水流の体積が大きく変動する排水路または水路においてより永続的に使用するのに適切であり得る。このバッグは、流速が小さくかつ汚染濃度が高いときに水を処理するのに適切であり得る。流速が小さくかつ汚染物質がかなり希薄であるときは水処理はそれ程重要でなく、そのような場合、バッグ内の組成物の酸中和または汚染物質捕捉能を低下させることなく、水が水質管理バリアの頂部の上方を単に流れ過ぎる。よって、必要なときに水を処理し、排出条件により処理を要しないときは処理しない。
【0089】
本発明による組成物を収容するバッグは、汚染された水が溢れたときに必要となる場所または金属汚染された酸性水の放出に対して何らかの緊急事態対応が必要となり得る場所に近い位置に備えられ得る。後者の意味では、このバッグは油の溢れに迅速に応答するように貯蔵されたバリアと同様に使用され得る。水質管理バリアの透水係数は重要である。本発明による組成物の構成成分および構成成分を処理するための処理工程は、個々の用途の要件に合致するように選択し得る。
【0090】
本発明による組成物の水処理能には限界があるため、組成物を長期に亘る用途に使用する場合は、組成物の性能をモニターする必要がある。組成物の酸または金属除去能が尽きた場合には交換する必要があろう。
【0091】
モニタリングは下流の水質またはバッグの内容物の副標本を調べること、およびバッグ内の組成物の残りの酸中和および金属結合能を試験することを伴い得る。捕捉する汚染物質のタイプに応じて、組成物の水処理能が消耗すれば、組成物を土壌調整剤または改良剤として農業に再使用し、これによりバッグ内の組成物を交換するコストを低減することがしばしば適切であり得る。
【0092】
地下透過性反応バリア
本発明による組成物は、水流を妨げることなく酸を中和し、また地下水から金属、半金属およびいくつかの他の潜在的汚染物質(例えばシアン化物およびリン酸塩)を除去するために地中に配置され得る透過性地下反応バリアを提供するために使用できる。地下水が透過性地下反応バリアを通って流れるときに、地下水の水質が改善される。
【0093】
地下反応バリアまたは処理壁は永久的、半永久的または交換可能な壁またはバリア部の構造体を含み得、この各々は本発明による組成物のペレットを保持する容器を各々含んで成る。壁またはバリアは、地下水により運ばれる汚染物質プルームの流路を横断して設け得る。本発明による組成物を含む地下反応バリアが交換可能であるとき、ペレットの除去を助けるべく処理領域にペレットを閉じ込めるように、処理領域に対してジオテキスタイルのライニング(または内張)を設けてよい。処理領域の全体を覆う単一のジオテキスタイルライナー内に組成物でできたペレットを収容し得る。別法では、バリアまたは壁を上記ようなジオテキスタイルバッグとしても、またはこれを含むものとしてもよい。地下反応バリアを形成するようにバッグを処理領域内で積重ねてよい。
【0094】
汚染された地下水は動水勾配により地下反応バリアを静的に通過し得、そして水中の汚染物質を物理的、化学的および/または生物学的方法によって除去し得る。処理すべき地下水中の汚染物質に応じて、沈殿、収着、酸化または還元、固定または分解により反応を生じさせ得る。
【0095】
地下反応バリアは水を地表まで運ぶ必要なく、汚染物質処理を現場で行い得るので、地下水浄化のための常套のポンプ・アンド・トリート(ポンプ移送そして処理)法に対していくつかの利点がある。加えて、本発明による処理は汚染物質を反応領域に通過させるために自然に生じた動水勾配を利用しているので、ポンプを稼働させるためにエネルギーを連続的に入力する必要がない。また、地下反応バリアの交換または再生は周期的なものでしかなく、地下反応バリアが消耗し、またはバリア寿命の間に詰まったときに必要となるものである。
【0096】
バリアは汚染された地下水を大量に処理する能力を有するように通常設計される。コストのために、問題全体の一部のみを処理するバリアを設置することもある。バリアの処理能が枯渇したとき、バリアを除去および交換するよりも、既に設置しているバリアのやや上流に新たなバリアを設置することがより簡単で安価であり得る。そのような方法では、処理プログラムのコストを多年にまたがって分散させることができる。
【0097】
地下バリアを設置するため、地下水プルームを横断する簡単な溝を堀り、そして反応材料で埋め戻してよい。溝は専門家用溝掘り機を用いて掘ることができる。溝の寸法は反応材料の透過性、周囲の土質材料の透過性、汚染物質除去反応がバリア内で起きるために必要な滞留時間、流入水中の汚染物質の濃度、汚染された地下水プルームの幅および深さ、および地下反応バリアの設計寿命に応じて決め得る。加えて、地下水流を反応バリアへと導くために他の土工事を施し得る(例えば遮水壁と反応ゲート式(funnel and gate system))。本発明によるバリアの透過性は組成物の粒子寸法を増大または減少させることによって制御できる。
【0098】
濾過/反応カラムまたはタンク
本発明による組成物は、水流を酷く妨げることなく酸を中和し、また水中の金属または半金属およびいくつかの他の潜在的汚染物質(例えばシアン化物およびリン酸塩)を除去するために透過性カラムまたはタンクに充填するために使用できる。
【0099】
この水は産業廃水、汚染された飲用水または酸性鉱山廃水であり得る。
【0100】
水を重力下にてカラムまたはタンクに通じ(直接フィードとしても、サイフォンによってもよい)、ポンプ移送でカラムに通じ、または真空下にて吸引してカラムまたはタンクに通じることができる。水が透過性カラムまたはタンクを通って流れるときに、水質が実質的に改善され得る。
【0101】
本発明に従う濾過/反応カラムまたはタンクは、本発明による組成物を含むカラムまたはタンクであってよい。濾過/反応カラムまたはタンクは本発明による組成物が充填された適切なチューブであり得る。特定の汚染物質を除去するために一方の端部から他方の端部へ水が通され得る。汚染物質は沈殿、収着、酸化または還元、固定または分解反応により除去でき、または水中懸濁粒子に付着させることにより除去できる(これら粒子は連続孔空間を通過できないのでペレットを物理的に分離することに除去される)。カラムまたはタンクはほぼ任意の材料から構成でき、これには竹、PVCパイプ、ポリエチレンドラム、ステンレス鋼パイプ、およびポリカーボネートチューブ、または任意の他の適当な材料が含まれる。少なくとも一方の端部をキャップして濾過/反応媒体を容器内に保持すべきである。濾過/反応カラムまたはタンクを用いることの利点は、過負荷が起こったときに濾過/反応媒体を容易に置換できること、物理的な詰まりが起きているかを判断するためにシステムを通る流速を簡単にモニターできること、流速および保持時間を容易に調整できること、流出水の水質を簡単にモニターできること、カラムまたはタンクをあらゆる所望の高さおよび直径に構成できること、および必要に応じて逆流可能なようにカラムまたはタンクを設計できることである。
【0102】
濾過/反応カラムまたはタンク内の濾過/反応媒体はリッジ付きチューブ縁部と接触しているので、これら境目間で選択流路がいくつか生じ得る。加えて、微粉状媒体は詰まり易いので、濾過/反応カラムまたはタンクに極微粉状媒体を使用することはより好ましさが劣る。このような問題を克服するため、カラムまたはタンク内のペレットの粒子寸法をカラムまたはタンクの内径に基づいて制限し、よって、ペレットはカラムまたはタンクの内径の1/10未満の粒子寸法を有すべきである。加えて、カラムまたはタンクにおける処理は、ペレットの粒子寸法がカラムの内径の1/50未満であるときに最も効率的である。しかしながら、濾過/反応媒体が実質的に詰まるのを防止するには、ペレットの80%以上を100μmより粗大とべきであり、好ましくはペレットの90%以上を100μmより粗大とべきであり、より好ましくはペレットの95%以上を100μmより粗大とべきであり、そして最も好ましくはペレットの98%以上を100μmより粗大とべきである。
【0103】
濾過/反応媒体の詰まりを防止するために流入水中の懸濁粒子の予備濾過を粗粒砂および砂利のフィルターを用いて行うことができ、このフィルターは逆流により蓄積物を除去できる。処理済赤泥ペレットの過負荷が起こると、濾過/反応カラムを単に解体してペレットを抜き出し、交換し、および処分できる。工業プラントでは、いくつかのカラムを直列および/または並列に使用してよく、これにより、他のカラムが過負荷状態になっているときに新しいカラムを利用して廃水を処理することができる。
【0104】
本発明による多孔性ペレットの他の用途
本発明による組成物でできたペレットは、栄養物を除去するためまたは藻類の過剰増殖を防止するために、魚用水槽、観賞用の池または他の水塊における砂利として使用できる。
【0105】
本発明のもう1つの態様において、本発明に従う組成物でできたペレットのバッグを水塊中に吊下げてよく、または浮遊島として形成して、水を処理するようにできる。
【0106】
可動または固定式の水処理タンクを設けてよく、このタンクに本発明による組成物のペレットを充填して、水を連続的および必要なときのいずれにでも処理するようにできる。
【0107】
別法では、粗い砂利または玉石の寸法のペレットを流動している水塊(例えば小川)に直接配置して、酸を中和し、または金属汚染物質を除去するようにしてよい。
【0108】
また本発明は、潜在的に酸を形成する物質(硫黄および/または窒素の酸化物など)を含有するガスを処理するため、または極性有機分子を除去するようにガスを処理するためのカラムを提供することにも及ぶ。
【0109】
本発明のもう1つの態様において、本発明に従う組成物でできた多孔性ペレットブランケットが臭気放出を制御するために提供される。
【0110】
従って、本発明の教示内容に追従すれば、赤泥を含む組成物でできた安定で強固な多孔性粒子を作製できる。この粒子はペレットの形態であり得、高い酸中和・金属結合能に加えて大きな表面積を有し、また保持し得る。この粒子が本質的に有する透過性により、流水をこの材料に通過させおよびその周囲に流すことができる。乾燥させたとき、この粒子が塵を形成する傾向は低い。
【0111】
本発明の第8の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料であって、セメント系材料およびボーキサイト精製残留物の混合物を含む多孔性粒状材料が提供される。
【0112】
孔の体積は粒状材料の体積の10%〜90%であり得る。孔の少なくとも10%は開放セルまたは連続孔であり得る。粒状材料の孔は分布した孔寸法を有する。粒状材料の孔寸法は0.1〜2000μmの範囲にある。
【0113】
本発明の第9の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、粒子の各々がセメント系材料およびボーキサイト精製残留物の混合物を含む多孔性粒状材料が提供される。
【0114】
セメント系組成物
本発明の第10の要旨によれば、部分中和赤泥(または部分的にもしくは一部が中和された赤泥)およびセメントを含むセメント系組成物であって、部分中和赤泥が、カルシウム、マグネシウムまたはそれらの組合せによって付与される、炭酸カルシウム等量で単位リットルあたり少なくとも3.5ミリモルの全硬度を有する水と接触することにより予備処理されているセメント系組成物が提供される。
【0115】
赤泥の予備処理において、そのpHは最大約10.5かつ最小約8.2の値に低下し得る。赤泥のpHは8.2〜10.5の範囲内であればどの値にでも都合よく低下させ得る。この範囲において可能な限り低い値に低下させることが好ましい。pHは約8.5〜10、またあるいは約8.5〜9.5、またあるいは約8.5〜9.5、また別法では約9〜10、また更に別法では約9.5〜10、または約9〜約9.5に低下させ得る。
【0116】
本発明の第11の要旨によれば、セメント系組成物の製造方法であって:
(a)バイエル法より回収した赤泥を、カルシウム、マグネシウムまたはそれらの組合せによって付与される、炭酸カルシウム等量で単位リットルあたり少なくとも3.5ミリモルの全硬度を有する水と接触させて、部分中和赤泥を得ること;および
(b)部分中和赤泥をセメントと混合して、セメント系組成物を得ること
を含む方法が提供される。
【0117】
工程(a)において、赤泥のpHは最大約10.5かつ最小約8.2の値に低下し得る。赤泥のpHは8.2〜10.5の範囲内であればどの値にでも都合よく低下させ得る。この範囲において可能な限り低い値に低下させることが好ましい。pHは約8.5〜10、あるいは約8.5〜9.5、別法では約9〜10、更に別法では約9.5〜10、または約9〜約9.5に低下させ得る。
【0118】
本発明による方法は、工程(a)の後および工程(b)の前に、
工程(a1)部分中和赤泥を乾燥させて乾燥固体材料を得ること
を含み得る。
【0119】
本発明のこの要旨による方法は、工程(a1)の後および工程(b)の前に、
工程(a2)工程(a1)の乾燥固体材料を粉砕して部分中和乾燥粉砕赤泥を得ること
を更に含み得る。
【0120】
セメントは組成物中に約1重量%〜約99重量%の濃度で存在し得、また部分中和赤泥は組成物中に約99重量%〜約1重量%の濃度で存在し得る。
【0121】
工程(c)における粉砕は破砕(crushing)および/または微粉砕(pulverising)により実施できる。これは任意の破砕機および/または微粉砕機(コーンクラッシャー、ロッドミル、ボールミル、ジョークラッシャーまたはオービタルクラッシャーを含み得る)により実施してよい。
【0122】
また本発明は、本発明による方法によって作製されたセメント系組成物にも及ぶ。
【0123】
オプションとして、本発明による方法は、工程(a)の後および工程(b)の前に、
赤泥(または部分的に低下させた赤泥)を酸と接触させて、赤泥のpHの最大約10.5かつ最小約8.2への全低下の一部を行う工程
を含む。
【0124】
更なるオプションとして、この方法は、工程(a)の後および工程(b)の前に、
赤泥(または部分的にpHを低下させた赤泥)から液相を分離する工程
を含み得る。
【0125】
本発明による方法の工程(a)において部分中和赤泥の予備処理に使用する水は、カルシウム+マグネシウムにより付与されるその全硬度を、単位リットルあたり炭酸カルシウム等量で3.5ミリモル以上とする必要がある。しかしながら、10.5未満のpHを達成するには、カルシウム+マグネシウムにより付与される水の全硬度は、単位リットルあたり炭酸カルシウム等量で約5ミリモルより高いことが好ましく、より好ましくは単位リットルあたり炭酸カルシウム等量で10ミリモルより高く、更により好ましくは単位リットルあたり炭酸カルシウム等量で約15ミリモルより高い。水はカルシウムおよびマグネシウムの少なくとも一方について基準量および処理量を有することが好都合である。カルシウムについての基準量は約150mg/L(1.5ミリモル/リットル 炭酸カルシウム等量)であり、マグネシウムについての基準量は約250mg/L(2.5ミリモル/リットル 炭酸カルシウム等量)である。カルシウム 約200〜約300mg/Lおよびマグネシウム 約300〜約750mg/Lを含有するブラインにより満足できる結果が得られているが、処理を効率的に行うには、300mg/Lを超えるカルシウム濃度および約750mg/Lを超えるマグネシウム濃度が好ましいことが判明している。ある特定の条件組に対する最善の濃度は、溶液中で形成され得る様々な化合物の溶解度、溶液の温度およびセメント系組成物を使用する使用および環境条件に依存する。
【0126】
よって、工程(a)における部分中和赤泥の予備処理に使用する水は、一般的な水道水におけるよりも著しく高い濃度のカルシウムおよび/またはマグネシウムを含有することが好ましい。水道水または飲用水の水質に適用される規則は通常、硬度(これは一般的にCaCO3等量で示される)を基準とするガイドラインを含んでいる。全硬度(Ca硬度+Mg硬度)は飲用水では500mg/L未満とすべきものとされ、これは単位リットルあたり約5ミリモル未満に等しい。よって、CaおよびMgの合計濃度は単位リットルあたり約5ミリモル未満とすべきであり、これは本発明による方法の工程(a)において赤泥を中和または部分中和するのに使用するCaおよびMg濃度に比べて極めて低い。硬水だと、石鹸およびその他の洗剤は泡立たない。それどころか、水面にスカムが形成される。硬度に関する基準範囲は以下の通り:
軟水: 0〜59mg/L(0〜0.59mM)
中程度の軟水: 60〜119mg/L(0.6〜1.19mM)
硬水: 120〜179mg/L(1.2〜1.79mM)
非常な硬水: 180〜240mg/L(1.8〜2.4mM)
極めて非常な硬水: >400mg/L(>4mM)
【0127】
60mg/L未満の硬度を有する水は、鉄および鋼の継手、ポンプおよびパイプにおける腐食電位が上昇しており、他方、350mg/Lより高い硬度を有する水はファウリングおよびスケール形成の可能性が増大する。従って、上述の望ましくない作用を回避するには、飲用水は350mg/L(これは約3.5ミリモルのCa+Mgに等しい)以下の全硬度を有するべきである。良質の飲用水は好ましくは60〜180mg/L(これは約0.6〜1.8ミリモルのCa+Mgに等しい)の範囲にある全硬度を有する。
【0128】
本発明のこの要旨による方法の工程(a)において、赤泥のpHは8.2〜10.5の範囲内であればどの値にでも都合よく低下させる。pHは約8.5〜10、あるいは約8.5〜9.5、またあるいは約8.5〜9、また別法では約9〜10、また更に別法では約9.5〜10、または約9〜約9.5に都合よく低下させる。
【0129】
本発明のこの要旨による方法の工程(a)において、赤泥の全アルカリ度は、炭酸カルシウムアルカリ度換算で、約200mg/L〜1000mg/L、あるいは約200mg/L〜900mg/L、あるいは約200mg/L〜800mg/L、あるいは約200mg/L〜700mg/L、あるいは約200mg/L〜600mg/L、あるいは約200mg/L〜500mg/L、あるいは約200mg/L〜400mg/L、あるいは約200mg/L〜300mg/L、あるいは約300mg/L〜1000mg/L、あるいは約400mg/L〜1000mg/L、あるいは約500mg/L〜1000mg/L、あるいは約600mg/L〜1000mg/L、あるいは約700mg/L〜1000mg/L、あるいは約800mg/L〜1000mg/L、あるいは約900mg/L〜1000mg/L、好ましくは300mg/L未満に低下し得る。
【0130】
この方法の工程(a)において、pHは好都合には約10.5未満、好ましくは約9.5未満、より好ましくは約9.0未満に低下し、また、全アルカリ度は、炭酸カルシウム等量アルカリ度換算で、300mg/L未満に低下し、および好ましくは200mg/L未満に低下する。
【0131】
好ましい組成物は50%〜95%(乾燥重量)の部分中和赤泥および5%〜50%(重量)のセメントを含む。より好ましい組成物は70%〜90%(乾燥重量)の部分中和赤泥および10%〜30%(乾燥重量)のセメントを含む。最も好ましい組成物は80%〜85%(乾燥重量)の部分中和赤泥および15%〜20%(重量)のセメントを含む。
【0132】
本発明の1つの態様において、組成物は少なくとも30重量%の部分中和赤泥を含む。もう1つの態様において、組成物は少なくとも50重量%の部分中和赤泥を含む。
【0133】
本発明者らは、部分中和赤泥でできたセメント系組成物が高い酸中和および金属結合能を維持していることを見出した。このような組成物は黄鉄鋼酸化の結果または任意の他の手段により生じる酸分(acidity)を処理することができ、また硫酸塩耐性を有する。また本発明者らは、特定の用途の要請により付加される所定の限界に至るまで、部分中和赤泥が組成物の強度に悪影響を及ぼさないセメント代替物として機能でき、また、急な岩肌に付着して、危惧される岩の落下に抗して岩を安定化させ得ることを見出した。更に、本発明による組成物は乾燥させたときに知覚し得るほどの塵の問題を引き起こさず、そして極めて微細なテクチャまたは表面のディテール(または細部もしくは装飾)を有する物品に成型可能であることを見出した。
【0134】
本発明による組成物は従来のセメント系組成物に対して、実質的な強度低下を招かない代替物として使用できる。
【0135】
本発明による組成物は、型表面の微細なテクスチャディテールを成型表面に転写して保持するように成型できるキャスタブル材料を提供するために使用できる。
【0136】
本発明の1つの態様において、セメントの0.2重量%〜3重量%の超可塑剤、例えばMAPEI(商標) N10およびR14、MAPETAR(商標)またはMAPEPLAST RMXを本発明による組成物に添加して吹付けコンクリート(またはショットクリート)を得ることができ、この吹付けコンクリートは酸中和能が増大しており、重金属を捕捉し、および垂直壁面に噴霧できるものである。
【0137】
本発明のもう1つの態様において、追加の水と、セメントの0.2重量%〜3重量%の超可塑剤、例えばMAPEI(商標) N10およびR14、MAPETAR(商標)またはMAPEPLAST RMXとを本発明による組成物に添加してグラウトを得ることができ、このグラウトは岩または土壌物質中に圧力注入して、その強度を増加させ、かつその浸透性を低下させ、および任意の酸分を中和し、かつ孔流体中に存在し得る任意の微量金属を捕捉し得るものである。
【0138】
本発明のもう1つの態様において、組成物を押し出して多孔性ペレットとし、続いてこれを硬化および乾燥させる。その後、乾燥したペレットを酸性水改善のために使用できる。このような改善(または浄化)は地下水ダクトもしくは帯水層にて、または処理容器内で行い得る。
【0139】
セメント系組成物のための部分処理赤泥
セメント系組成物のための部分中和赤泥は、水性溶液中のカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンを添加することによって、または酸を添加することによって、または二酸化炭素を注入することによって、または石膏などの鉱物を添加することによって、あるいはこれらの方法のいくつかを組み合わせることによって、ボーキサイト精製所からの赤泥を少なくとも部分的に反応させることにより得ることができる。
【0140】
別法では、部分中和赤泥は、ボーキサイト精製所からの赤泥を、チタン精製プロセスから回収した鉄含有残留物、鉄含有土壌、鉄含有岩材(鉄鉱石採掘の副産物として生じる粉体など)またはボーキサイトからなる群より選択される材料と少なくとも部分的に反応させることにより得ることができる。
【0141】
国際特許出願PCT/AU03/00865に記載されているように(この開示内容はその全体が本明細書に組み込まれる)、ボーキサイト精製所からの赤泥はカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンと反応させ得る。少なくとも部分中和した赤泥を製造し得るもう1つの方法は、ボーキサイト精製所からの赤泥を、赤泥の反応pHを10.5未満に減少させるのに十分な量の海水(好ましくは、簡便には太陽の作用で、蒸発により濃縮した海水)と反応させることによるものである。例えば、未処理赤泥が約13.5のpHおよび約20,000mg/Lのアルカリ度を有する場合、約5倍体積の世界平均的海水を添加することにより、pHを9.0〜9.5に、およびアルカリ度を約300mg/Lに低下させることが判明した。更に、国際特許出願PCT/AU03/00865は、ボーキサイト精製所からの赤泥1部を、基準量および処理量のカルシウムイオンと基準量および処理量のマグネシウムイオンとを含有する水5重量部と、赤泥の反応pHを10.5未満とするのに十分な長さの時間に亘って混合することにより、ボーキサイト精製所からの赤泥をカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンと反応させることを教示している。カルシウムおよびマグネシウムイオンの基準量は、処理溶液および赤泥の合計体積単位リットルあたり、それぞれ8ミリモルおよび12ミリモルである。カルシウムイオンの処理量は、赤泥の全アルカリ度単位モルあたり少なくとも25ミリモル(炭酸カルシウム等量アルカリ度換算)であり、他方、マグネシウムイオンの処理量は、赤泥の全アルカリ度単位モルあたり少なくとも400ミリモル(炭酸カルシウム等量アルカリ度換算)である。適切なカルシウムまたはマグネシウムイオン源には、カルシウムまたはマグネシウムの可溶性または部分可溶性塩、例えばカルシウムおよびマグネシウムの塩化物、硫酸塩または硝酸塩が含まれる。
【0142】
部分中和赤泥の一般的組成は、その元となったボーキサイト鉱石の組成、そのボーキサイトを処理した精製所で使用された操作手順、および赤泥を得た後にどのように処理したかに依存する。
【0143】
ボーキサイト精製所からの原料赤泥の中和は、可溶性のCaおよびMg塩の添加により可溶性の水酸化物および炭酸塩が低溶解性の鉱物沈殿となったときに達成される マクコンシー(McConchie),D.、クラーク(Clark),M.W.、フォークス(Fawkes),R.、ハナハン(Hanahan),C.およびデービス−マクコンシー,F.、2000年、「酸性硫酸塩土壌、硫化物鉱山尾鉱および酸性鉱山廃水の管理における海水で中和したボーキサイト精製残留物の使用(The use of seawater-neutralised bauxite refinery residues in the management of acid sulfate soils, sulphidic mine tailings and acid mine drainage)」、第3回クイーンズランド環境会議、1、第201〜208頁、ブリスベン、オーストラリア。この方法は塩基度を約9.0のpHまで低下させ、可溶性のアルカリ分(alkalinity)の殆どを固体のアルカリ分に変える。より詳細には、赤泥廃棄物中の水酸基イオンの大部分が海水中のマグネシウムとの反応により中和されてブルース石[Mg3(OH)6]およびハイドロタルサイト[Mg6Al2O3(OH)16・4H2O]を形成するが、いくらかは追加のベーマイト[AlOOH]およびギブサイト[Al(OH)3]の沈殿に消費され、そしていくらかは海水中のカルシウムと反応してハイドロカルマイト[Ca2Al(OH)7・3H2O]およびp−アルミノハイドロカルサイト[CaAl2(CO3)2(OH)4・3H2O]を形成する。
【0144】
部分中和赤泥は豊富なAl、Fe、MgおよびCaの水酸化物および炭酸塩を含み、コンクリートの凝結のためのトバモライトゲル構成要素を提供するか、コンクリートの早期凝結を誘発するのに適切な添加剤を提供する。逆に、部分中和赤泥中の石膏含量が増加すると凝結速度が遅くなり得る。
【0145】
ボーキサイト精製所からの赤泥が海水、または蒸発により濃縮した海水、または他のカルシウムおよびマグネシウムに富むブライン、または可溶性カルシウムおよびマグネシウム塩、またはこれら選択肢のいくつかの組合せを用いて部分中和されている場合、部分中和赤泥は高い酸中和能(部分中和赤泥単位kgあたり2.5〜7.5モルの酸)を依然として有する。また、これは極めて高い微量金属捕捉能(部分中和赤泥単位kgあたり1,000ミリグラム等量以上の金属)も有する。更に、これはリン酸塩および他のいくつかの化学種を捕捉および結合する高い能力を有する。部分中和赤泥は個々の用途に適するように様々な形態(例えばスラリー、粉末、ペレットなど)で製造できるが、そのいずれもが、高い酸中和能にもかかわらず、中性に近い土壌反応pH(10.5未満およびより典型的には8.2〜8.6)を有する。部分中和赤泥の土壌反応pHは中性に十分近く、また、そのTCLP(毒性指標浸出法)値は十分低く、特別許可を得る必要なく運搬および使用できる程度である。
【0146】
部分中和赤泥を本発明の組成物および方法に使用する格別の利点は、可溶性塩濃度(特にナトリウム濃度)が未処理赤泥中の濃度より実質的に低いことである。この効果は、ナトリウムまたは塩度に対して敏感な環境に排出されることとなる処理水の塩度が上昇する場合や、灌漑用水として使用されることなる排水の塩度が植物の生長に悪影響を及ぼし、潜在的効果がより低い場合に特に重要であり得る。更に、可溶性塩濃度の減少は、本発明に従うセメント系組成物の最終強度の増加に寄与するものである。
【0147】
コンクリート強度はトバモライトゲル形成により決まる。最も典型的には、トバモライトゲルは水硬性セメントの凝結において生じる。水硬性セメントには、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、ハイアルミナセメント、および他の市販で入手可能なセメント結合剤を含む。本明細書において、表現「セメント」は水硬性セメントの上記の例を含むものとして理解されるべきである。
【0148】
トバモライトゲルには通常、次の4つの主要構成要素が存在する:ケイ酸三カルシウム(C3S)、ケイ酸二カルシウム(C2S)、アルミン酸三カルシウム(C3Al)および鉄アルミン酸四カルシウム(C4AlFe)。
【0149】
赤泥を部分中和する場合(ブライン添加によっても、海水もしくは濃縮海水添加によってもよく、また、可溶性マグネシウムおよびカルシウム塩を補充するか否かに関わらず)、赤泥のアルカリ分は可溶形(その殆どは炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムである)から不溶形(これは一連のアルミノ−ヒドロキシ炭酸塩として固体となって沈殿する)に変わる。過剰のナトリウムは残りのブレーンと一緒に系外に排出される。アルミノ−ヒドロキシ炭酸塩は酸アタックに抗するpH緩衝システムとして機能する。しかしながら、アルミノ−ヒドロキシ炭酸塩は、セメント(OPCを含む)をセメント系組成物中の部分中和赤泥で少なくとも部分的に置換し、その際に組成物の強度を著しく低下させることのないように、追加のポゾラン材料も提供する。
【0150】
中和されていない赤泥(乾燥または湿潤状態)は高いNa含量を有し、これはセメント系組成物の強度発現に対して不利益となる。そのようなセメント系組成物における一価のアルカリ金属(NaおよびK)はトバモライトゲルと相互作用して、アルカリ骨材反応、アルカリ炭酸塩反応およびアルカリシリカ反応を起こす(www.pavement.comを参照のこと)。
【0151】
アルカリ骨材反応はモルタルまたはコンクリートにおける化学反応であって、ポルトランドセメントまたは他の供給源に由来するアルカリ金属(ナトリウムまたはカリウム)と、骨材中に存在する特定の化合物との間の化学反応である。ある条件下では、この反応によってコンクリートまたはモルタルの有害な膨張が生じ得、これは強度発現に対して不利益となる。
【0152】
アルカリ炭酸塩反応はアルカリ金属(ナトリウムまたはカリウム)と、ある種の骨材中に存在する特定の炭酸塩岩(特にカルサイト、ドロマイトおよびドロマイト質石灰石)との間の化学反応である。この反応の生成物も使用中のコンクリートに異常膨張およびひび割れを生じ得る。
【0153】
アルカリシリカ反応はアルカリ金属(ナトリウムまたはカリウム)と、ある種の骨材中に存在する特定のケイ質岩または鉱物(オパリンシリカ、チャート、カルセドニー、非常に硬い歪んだ石英(flint strained quartz)および酸性火山ガラスなど)との間の化学反応である。この反応の生成物も使用中のコンクリートに異常膨張およびひび割れを生じ得る。
【0154】
セメント系組成物中の高いナトリム含量によって引き起こされる膨張およびひび割れはシリカゲルの形成により悪化し得、これもまた最終強度を低下させ、製品寿命を短縮する。
【0155】
水洗した(高い割合で存在する水酸化物を除去するため)赤泥は、ナトリウム含量が著しく低下しているが、酸中和能も殆どない。このような赤泥は、本発明によるセメント系組成物の酸中和能に対し十分寄与しないため、本発明によるセメント系組成物に使用するには望ましくない。加えて、このような赤泥中にはアルミノ−ヒドロキシ炭酸塩が存在しないため(中和の間にCaおよびMgカチオンの添加により沈殿させていないからである)、本発明によるセメント系組成物に導入される部分中和赤泥のポゾラン能(pozzolanic attributes)を増強することもない。ポゾラン性を追加し、かつナトリウム含量を未中和の赤泥より低下させることにより、独特かつ改善された性質が本発明の組成物に付与される。
【0156】
水およびセメント系組成物
水はトバモライトゲルの水和/活性化ならびに混合の間の潤滑に重要である。混合物中の水の量は混合コンシステンシー、ワーカビリティおよび最終強度に大きく影響する。水は少なすぎても、多すぎても強度を低下させる。また、水が少なすぎるとワーカビリティに支障をきたす。強度に関しては、湿潤気味の混合物を得るよりも乾燥気味の混合物を得るほうが好ましい。吹付けコンクリートでは、乾燥過度より湿潤過度の混合物を得ることが好ましく、また殆どのグラウト用途では湿潤混合物を使用することが必須である。乾燥構成成分に水を添加し、滑らかなペーストになるまで混合(またはブレンド)しなければならない。添加すべき水の量の好ましい範囲は、使用する部分中和赤泥ブレンド、ブレンド中に存在する酸中和水酸化物および酸化物鉱物の割合、部分中和赤泥の初期含水量、および最終生産物の使用目的に依存する。
【0157】
耐荷重コンクリートでは、水添加量についての好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水15%〜55%(重量)、より好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水25%〜45%(重量)、更により好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水30%〜40%(重量)、そして最も好ましい範囲は乾燥原料に対して水33%〜37%(重量)である。
【0158】
吹付けコンクリートでは、水添加量についての好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水25%〜80%(重量)、より好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水35%〜75%(重量)、更により好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水45%〜70%(重量)、そして最も好ましい範囲は乾燥原料に対して水50%〜60%(重量)である。
【0159】
グラウトでは、水添加量についての好ましい範囲は、使用する装置、グラウト注入すべき岩または土壌物質の多孔性および透過性の特性およびその他の技術的因子に依存するが、一般的には、乾燥構成成分に対して水25%〜98%(重量)、より好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水35%〜95%(重量)、更により好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水45%〜90%(重量)、そして最も好ましい範囲は乾燥原料に対して水55%〜85%(重量)である。被注入物質の透過性が高いほど、孔寸法が大きいほど、ポンプ移送距離が短いほどおよび注入パイプの直径が大きいほど、より乾燥した混合物を要し、他方、被注入物質の透過性が低いほど、孔が小さいほど、ポンプ移送距離が長いほどおよび注入パイプの直径が小さいほど、より湿潤な混合物が好ましい。
【0160】
シリカ供給物およびセメント系組成物
追加のシリカ源を、トバモライトゲル形成を増進するために混合物中に含めてよい。これにはケイ砂、珪藻土、フライアッシュ、ボトムアッシュまたは破砕ケイ酸塩岩が含まれ得る。追加のシリカ源は単独でまたは組み合わせて添加し得る。追加のシリカ源の好ましい濃度は0%〜30%(乾燥重量)の範囲にあり、より好ましい範囲は3%〜20%(乾燥重量)、そして最も好ましい範囲は5%〜12%(乾燥重量)である。
【0161】
可塑剤/重合剤
可塑剤/重合剤も、湿潤混合物のワーカビリティを高めるため、凝結始発時間を抑制するため、および硬化生産物に更なる結合強度を付与するために混合物に添加してよい。可塑剤/重合剤にはMethocell(登録商標)、セルロースエーテル、メチル−ヒドロキシエチル−セルロース(MHEC)、ヒドロキシプロピル−メチル−セルロース(HPMC)およびBricky’s Mate(商標)が含まれるが、これらに限定されない。部分中和赤泥ブレンドを用いた混合物に添加するには、高度に置換された有機可塑剤/重合剤(例えばHPMC)が好ましい。低イオン強度系(例えば淡水で濯いだ部分中和赤泥)では、それ程高度にではなく置換された可塑剤/重合剤(例えばMHEC)を使用してよい。添加する可塑剤の好ましい濃度は乾燥混合物の0%〜8%(重量)であり、より好ましい濃度は乾燥混合物の0.1%〜5%(重量)の範囲にあり、更により好ましい濃度は乾燥混合物の0.2%〜3%(重量)の範囲にあり、そして最も好ましい濃度は乾燥混合物の0.3%〜2.0%(重量)の範囲にある。
【0162】
空気連行剤(またはAE剤)
空気の連行により、最終生産物における多孔性および透過性が上昇する。空気連行剤は、混合の間にコンクリート中に分断(shear)された空気を捕捉する能力を高めることにより、または混合および凝結の間に、スラリーの有する化学的条件下にて気体を放出することで機能する。空気連行剤を使用すると、コンクリートの膨張および収縮能力が高まり、その際にひび割れを生じず、よって、最終コンクリート生産物を寒冷気候下にて繰り返される凍結および溶解から保護する。
【0163】
空気連行剤には過酸化水素、有機ポリマーおよび市販で入手可能な有機発泡剤(例えばEP2021(商標))が含まれるが、これらに限定されない。過酸化水素はスラリーの有する化学条件下にて分解する。これは酸素を放出し、この酸素は膨張して孔を設ける。気泡が移動することで、連続孔(または相互接続された孔)を通じてのペレット透過性が付与される。空気連行剤は、成型の間のスラリーの振動締固めにより影響を受けない。
【0164】
過酸化水素は空気連行剤として様々な強度で使用してよい。強度は好ましくは過酸化水素0.1%〜75%(重量対体積)、より好ましくは1%〜30%(重量対体積)、そして最も好ましくは3%〜10%(重量対体積)の範囲にある。強度3%(重量対体積)の場合、添加割合は好ましくは乾燥混合物単位kgあたり1mL〜25mLであり、より好ましくは乾燥混合物単位kgあたり約2mL〜約20mLであり、更により好ましくは乾燥混合物単位kgあたり約5mL〜約15mLであり、そして最も好ましくは乾燥混合物単位kgあたり約8mL〜約10mLである。空気連行剤の添加割合をより高くすることまたは濃度をより高くすることにより、多孔性(または孔度)および透過性が高められるが、物理的強度は低下する。
【0165】
リン酸塩形成剤
アパタイト様鉱物および/または鉱物結晶間でのリン酸塩架橋部の発達により、強度上の更なる利点、特に濡れ強度が付与され得る。リン酸塩は重金属を捕捉および結合するようにも機能する。よって、リン酸塩形成剤を混合物に添加してよく、これにはリン酸、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、およびリン酸二水素カリウムが含まれ得る。リン酸を0.01M〜18Mの好ましい強度で使用してよく、より好ましくは0.1M〜5Mのリン酸強度で使用してよく、更により好ましくは0.5M〜3Mのリン酸強度で使用してよい。最も好ましいリン酸強度は1M〜2Mである。1.5Mのリン酸強度の場合、乾燥構成成分単位kgあたり0.2mL〜4mLの添加割合を使用してよく、より好ましい添加割合は乾燥構成成分単位kgあたり1mL〜3.5mLであり、更により好ましくい添加割合は乾燥構成成分単位kgあたり1.5mL〜2.5mL、そして最も好ましい割合は乾燥構成成分単位kgあたり2mL〜2.5mLである。
【0166】
有機物
セメント系組成物を形成する間に有機物を導入すると、繊維質マットを提供できると同時に、組織の木部および師部により、流体フローに対して追加の相互接続路を提供できる。加えて、有機物は適切な細菌繁殖培地を提供し得る。形成された生産物は嫌気性処理に効率的に使用し得、そして生物地球化学的反応(例えば硫酸還元および脱窒)を効率的に進行させ得る。生産物に導入され得る有機物には下水汚泥、サトウキビバガス、わらくず、腐葉土および麻繊維が含まれるが、これらに限定されない。添加する有機物の濃度は乾燥混合物の0%〜15%(重量)の範囲にあり得る。好ましい濃度は乾燥混合物の0.4%〜10%(重量)の範囲にあり、更により好ましい濃度は乾燥混合物の0.6%〜8%(重量)の範囲にあり、そして最も好ましい濃度は乾燥混合物の0.8%〜5.0%(重量)の範囲にある。
【0167】
補強材
大きな構造物およびコンクリート打設物を補強することが、コンクリートを特に抗張力下にて耐荷重性とする場合に必要であり得る。最も典型的には、コンクリートの補強は鋼補強材を用いて行われる。しかしながら、塩化物浸入および鋼腐食により、補強ロッドの周囲で腐食膨張が起こるため、コンクリートはしばしば破損される。この結果、常套の補強鋼はしばしば亜鉛メッキされ、またはエポキシで被覆して、鋼を腐食塩から隔離している。これに対する別法は、鋼を陰極として電流を流すことによる陰極防食を用いることである。もう1つの別法は、耐食鋼(例えばステンレス鋼)または鋼でない代替物(ガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、ポリプロピレン繊維またはポリエチレン繊維など)を用いることである。コンクリートに繊維を短繊維(長さ約50mm)として添加して、コンクリートを周囲に凝結させる交差結合(または架橋)状マットを提供し、そして強度を改善し得る。
【0168】
凝結促進剤
本発明によるセメント系組成物に凝結促進剤を添加して、組成物中のC3A、C4AF成分の形成を促進することにより、または他の水の需要の高い鉱物成長を誘発することにより、迅速に凝結させ得る。しかしながら、セメント系組成物の凝結プロセスを初期にて促進すると、しばしばその代わりに最終強度が低下することとなる。凝結促進剤は典型的には無機的な性質を有するものであり(但し必ずしもそうでない)、そして、凝結の早い段階で使用される化合物または水を要する生成物を生じる化合物を提供し得る。凝結促進剤には、無機物側としてアルカリ金属(K、NaおよびLi)の水酸化物、酸化物、アルミン酸塩および炭酸塩、アルカリ土類金属(CaおよびMg)の水酸化物、酸化物、アルミン酸塩および炭酸塩、フュームドシリカ、ケイ酸、第二鉄塩(塩化物、硝酸塩および硫酸塩を含む)およびモンモリロナイト粘土、または有機物側としてN,N−ジメチルアクリルアミド、AMIS、RMT、ナフタレンスルホン酸およびホルムアルデヒドが含まれる。
【0169】
凝結遅延剤
凝結遅延剤を添加して、セメント系組成物の凝結の始発を遅くし得る。一般的な凝結遅延剤は石膏(硫酸カルシウム二水和物)である。これは特にこの目的で水硬性セメントに添加され得るものである。コンクリートの凝結時間を遅らせることにより、コンクリートの平滑化、加工および流し込みのための作業時間をはるかに長くできる。このことは、一度で連続的に大量に流し込む必要があるときに特に重要である。加えて、凝結プロセスを遅くすることにより、コンクリートのひび割れおよび収縮が起こりにくくなる。収縮を防止するために、石膏をトリエタノールアミンと組み合わせて使用できる。
【0170】
耐塩剤
耐塩剤は凝結した生産物を塩水から保護するのを支援する。C3A含量の低いコンクリートは硫酸塩アタックに対してより一層耐性である。凝結構造をC3AからC4AF、C2S、C3Sおよび他の化合物(CA、C3A4(四アルミン酸三カルシウム)、およびC2AS(アルミノケイ酸二カルシウム)など)へシフトさせる添加剤を含めることにより、より大きな塩保護を得ることができる。より高い耐塩性を得るには、第二鉄塩またはアルミン酸カルシウムを組成物に添加し得る。可塑剤は混合水の塩度の作用を受けて、その性能が低下することがある。例えば、MHEC(メチル−ヒドロキシ−エチルセルロース)は塩許容度が低く、塩の少ない環境で得られた強度は、塩の多い環境に混合すると失われる。しかしながら、このことは塩許容度の高い変異体であるHPMC(ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース)を用いることにより克服できる。
【0171】
他の添加剤
所望により、最終生産物(または製品)の地球化学的および物理的特性を変えるために他の成分を混合物に添加してよく、他の成分にはシリカ供給物、可塑剤、リン酸塩形成剤および空気連行剤が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0172】
構成成分の混合
乾燥材料を好ましくは<2mmに、より好ましくは<1mmに、更により好ましくは<500μmに、そして最も好ましくは<250μmに篩過してよい。これらは材料の凝集を低減するよう十分に混合することが好ましい。これは材料の凝集を低減するために十分に混合することが好ましい。湿潤材料(水、任意のリン酸塩形成剤および任意の空気連行剤)は混合して一緒にした後に乾燥材料に添加することが好ましい。あるいは、湿潤材料を個々に添加してよい。湿潤構成成分を乾燥構成成分と個々に混合するのであれば、混合順序は水、その後にリン酸塩形成剤、その後に空気連行剤とし得る。混合を一旦停止すると空気連行が実質的に減少してしまうので、混合プロセスの間に空気連行を確実に完了させるためにスラリーをより長時間混合し得る(即ち湿潤気味から乾燥気味のスラリーとする)。リン酸塩形成剤はリン酸とし得る。空気連行剤は過酸化水素とし得る。
【0173】
混合は様々な手段で実施でき、これには市販で入手可能な剪断力ミキサー、および材料を転動させるコンクリートミキサーが含まれる。材料を混合すると、混合物は1分間あたり少なくとも10回の割合、好ましくは1分間あたり少なくとも20回の割合、そしてより好ましくは1分間あたり少なくとも30回の割合で、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間に亘って折り畳まれる。(これら割合は市販で入手可能なコンクリートミキサーでの1分間あたりの回転数と同じであり得る。)剪断力ミキサー(パン用ミキサーなど)は標準的なコンクリートミキサーより高い混合割合(または速度)で使用され得る。機械の仕様に応じて混合時間を適宜に調整し得る。
【0174】
流し込み、成型および乾燥
最適コンクリート強度は通常約28日間硬化(または養生)後に得られる。しかしながら、硬化は何ヶ月、更には数年にも亘って継続する。セメントの凝結の始発はC3AlおよびC4AlF形のトバモライトの発達により0〜10日の期間に亘って起こる。C3SおよびC2Sトバモライトゲルは0〜400日の期間に亘って生じる。
【0175】
強度を最大限にするため、流し込んだ生産物は使用の前に、水分損失を制限する環境中にて少なくとも28日間保持することが好ましい。硬化の間、水の損失を最小限にするため、およびC3Sトバモライト発達を促進するために、温度は実際的範囲でできるだけ低く維持することが好ましい。生産物を好ましくは少なくとも28日間硬化させて、C3Sトバモライトゲルの発達をもたらし、少量の微粉(<0.15mm)を有し、塵の問題を引き起こす可能性の低い生産物を形成する。
【0176】
ヘーベルコンクリート
へーベールコンクリートは高孔度、軽量コンクリートであり、非耐荷重性の壁構造において重量を削減するために使用される。典型的にはブロック状に成型されるが、流し込んで大面積のスラブとして所定の高さに持ち上げることもできる。この製造方法は、EP2021などの発泡(極度の空気連行)剤を添加すること以外は典型的なコンクリートの製造方法と同様である。混合の際、EP2021はシェービングクリームのように大量に発泡して、極めて多孔性のセメント組成物を提供し、この組成物は孔を保持したまま凝結する。その孔により、ヘーベルコンクリートは高い貯水能を有し、よって、コンクリート製プランターボックスなどに理想的である。
【0177】
吹付けコンクリート
壁および天井に噴霧できる吹付けコンクリートを本発明による方法によって製造し得る。これを実現するため、トバモライトゲル(垂直壁面に吹付けたときに壁に付着する)の形成を起こすべく水を添加して使用に備える際、最終的な吹付け組成物のポンプ移送性を改善するために、超可塑剤を本発明による組成物に添加し得る。その後、水和混合物(これは、混合物の効率的なポンプ移送を容易にするのに必要な量より多くの水を含んでいないことが好ましい)をポンプ移送し、そしてスプレーノズルから垂直壁面に吹付ける。スプレーノズルから飛び出す直前に、既に水和した組成物に凝結促進剤を添加する。いくつかの用途では、この位置で繊維強化材も添加してよい。凝結促進剤により、噴霧したコンクリートが壁面からスランプする(または垂れる)前に迅速に凝結させる。典型的には、凝結促進剤はフュームドシリカ、アルカリ土類金属またはアルカリ金属の水酸化物などの乾燥粉末である。
【0178】
グラウト
グラウトは、ダム近傍の岩もしくは土壌物質における洩出を封止するなどの環境的用途、または水を内部または外部に維持する必要のある他の構造体に使用される。本発明による組成物は、グラウト注入プロセスにより制御すべき流体が酸性、苛性、塩性、酸性かつ塩性、または苛性かつ塩性である場合に特に有用である。必要とされる実際のグラウト混合物は、グラウトが注入される岩または土壌の地球化学的特性、グラウトを施すために使用する装置、およびグラウト注入プロセスにより制御すべき水の組成に応じて決まる。グラウト組成を決定するのにワーカビリティおよび凝結特性が特に重要であるが、強度はさほど重大ではない。強度要件の殆どはグラウト注入される岩または土壌物質によって満たされ、またグラウトを施すことによって生じ得る追加の強度は比較的小さいのが通常だからである。
【0179】
次の3つの特性に基づいて理想的なグラウトを選択することを教示する:構成成分、グラウト溶液および最終生産物の特性。グラウトの構成成分は、安価で豊富に供給される水の中で容易に移動できる材料であって、浸入し易いように微粉状であり、予測されるあらゆる貯蔵状態にて安定であり、および非毒性、非腐食性、非可燃性または非爆発性の材料とすべきである。グラウト溶液は、あらゆる常温下にて安定である水と同様の粘度を示し、一般的で安価な化学種により触媒され、地下水において一般的に認められる溶解した塩に対して敏感でなく(または影響を受け難く)、安定なpHを有し、および容易かつ簡単にゲル化時間を変更できるものとすべきである。よって、グラウト注入プロセスより得られる最終生産物は永久的で、地下水において通常認められる化学的条件により影響を受けず、および高い強度を有するものとすべきである。これらは満足することの難しい基準の組であることは明らかであり、現在市販されているどのグラウトもこれら特質の全てを有するとは言えない。しかしながら、個々のプロジェクトおよび/または現場に対して重要である特性により、上記基準のうち1つまたは2つ以上が必然的に関係のないものとなり、適切なグラウト選択が可能となり得る。
【0180】
図面の詳細な説明
図1は本発明による組成物でできたあるペレットのSEM写真であって、そのペレット形成の間に発達したマクロ孔の分布を示すものである。この写真はペレット形成プロセスの間に発達したマクロ孔の分布を示す。
図2は図1のペレットのSEM写真であって、その内部の微細孔の細部を示すものである。図2から、ペレットはかなり分散した孔寸法を有することがわかる。マクロ孔寸法は20〜100μm寸法のオーダーであり、またミクロ孔は0.2μm〜1μmのオーダーであって、壁を通ってマクロ孔間を接続している。他の実験結果において、最大200μmのマクロ孔寸法が得られている。
図3は図1および図2のペレットのSEM写真であって、その微細相互接続トバモライトゲル形成部を示すものである。図3はペレット1の微細相互接続トバモライトゲルを示す。大きな菱面体晶は、硬化の間に孔の水から結晶化したCaCO3である。
図4は図1〜図3のペレットのSEM写真であって、2つの炭酸塩充填マクロ孔のつぶれた(collapsed)上部を示すものである。
図5はペレット2のSEM写真であって、ペレット形成プロセスの間に発達したマクロ孔の分布を示すものである。
図6はペレット2の表面の高解像度写真であって、ペレット中に張り巡らされた(またはこれを貫通する)マクロ孔ネットワークを示すものである。
図7は実施例2に関して以下に説明する。
図8は実施例5に関して以下に説明する。
地下透過性反応バリアの例示的な工業的実施を図9を参照して以下に説明する。
【0181】
実施例
多孔性粒状材料
実施例1:発達させたペレットの内孔についての走査型電子顕微鏡検査
以下の手順により2種のペレットを作製した。
【0182】
ペレット1を、以下の成分を混合してスラリーを形成することにより作製した。
80g処理済赤泥
4g消石灰
4g酸化マグネシウム
2gHPMC可塑剤/重合剤
15gポルトランドセメント
8g乾燥構成成分のケイ砂
70mLの水
8mLの3%H2O2 および
0.22mLの1.5M H3PO4
上記成分を剪断力ミキサーにて1分間混合した。湿潤なスラリーを、高さ対直径のアスペクト比が3.5:1である型内に流し入れ、そして制限するように蓋をして、28日間硬化させた(または養生した)。
【0183】
ペレット2を、以下の成分を混合してスラリーを形成することにより作製した。
70g処理済赤泥
2gHPMC可塑剤
15gポルトランドセメント
13gのケイ砂
70mLの水
0.8mLの3%H2O2 および
0.22mLの1.5M H3PO4
上記成分を剪断力ミキサーにて1分間混合した。湿潤なスラリーを、高さ対直径のアスペクト比が3.5:1である型内に流し入れ、制限するように型に蓋をして、28日間硬化させた(または養生した)。
【0184】
28日後、型を開けて、ペレットのサンプルを走査型電子顕微鏡にて検査して、微細なテクスチャおよび構造上の特性を調べた。
【0185】
添付のSEM写真である図1〜図6は、ペレットの多孔性の性質およびその構造を形成している微粉状鉱物の格子ネットワークを示し、また、ペレット形成の間に発達した孔空間の内部に酸中和鉱物が存在していることを示す。
【0186】
実施例2:多孔性ペレットで構成したカラムを使用した金属に富む皮革廃水の処理
図7を参照し、実施例2の結果を得るために使用した研究所装置の概略ダイアグラムをそこに示す。この試験では上記実施例1にて得られたペレット1を軽く破砕し、そして篩過して、250μm〜500μm、500μm〜750μm、750μm〜1000μmおよび1000μm〜2000μmの4つの粒度範囲とした材料を用いた。濾過/反応カラム(10)を準備するため、4つの粒度の各々を25%ずつとするペレット混合物を作製した。ポリカーボネート管(内径44mm)を用いて3つの濾過/反応カラム(10、20、30)を構成した。各カラム(10、20、30)を一方の端部にて封かんし、プレフィルターのジオテキスタイル詰物として機能する10cm長さの粗粒砂および砂利混合物(12)と、5cm長さの処理済赤泥ペレット(14)と、もう1つのジオテキスタイル詰物(16)として、処理済赤泥ペレット(14)を所定位置に保持するための10cm長さの粗粒砂および砂利パックとにより充填した。濾過/反応カラム(10、20、30)を、各カラム間に位置する凝結/沈殿容器(22、24)と直列にして組立てた。
【0187】
皮革廃水をカラムに600MPa真空(26)下で流し、凝結/沈殿容器(32)に回収した。これを分析し、そして同じ廃水に処理済赤泥を直接添加したときのデータと比較するためである。反応/濾過カラム(10、20、30)内の処理済赤泥ペレットの合計質量は、直接添加実験にて添加した処理済赤泥の量と同じものとした。廃液の分析、直接添加の結果、および反応/濾過カラムの結果を以下の表3に示す。表3は、発達させた多孔性ペレットを濾過管(反応カラム)にて使用した皮革廃水の処理より得られたデータを示すものである。
【0188】
【表3】
【0189】
実施例3:多孔性ペレットのバッチを4m3セメントミキサー構成成分にて作製するための手引き
200kgのA1処理済赤泥 <2mmにスクリーニングしたもの
400kgの普通ポルトランドセメント
250kgの微粉状ケイ砂
100kgの消石灰 <1mmにスクリーニングしたもの
200kgの酸化マグネシウム <1mmにスクリーニングしたもの
50kgのヒドロ−プロピルメチルセルロース(HPMC)可塑剤
約2000Lの水
25Lの3%過酸化水素(H2O2)
7Lの1.5Mオルトリン酸(H3PO4)
乾燥材料の総重量:3,000kg
湿潤材料の総重量:約2,032kg
総湿重量:約5,032kg(2m3)
【0190】
上記したように乾燥処理済赤泥を使用することは任意であると理解されたい。代わりに、約50%の含水量を有する処理済赤泥を用いてよいが、処理済赤泥に含まれる水の量に正比例して、追加すべき水の量を減らす必要がある。洗浄した処理済赤泥は必須でないが、処理済赤泥は処理されていなければならない。例えば、使用する処理済赤泥を50%スラリーとして供給すると、乾燥添加剤および少量の水だけが必要となる。処理済赤泥をスクリーニングしたスラリーとして使用すると、処理済赤泥の乾燥に要する時間およびコストがなくなり、これにより、処理済赤泥製造における主な障害を克服することができる。
【0191】
上記構成成分は汎用処理済赤泥C5T10ブレンドを製造するためのものである。他のブレンドを製造してよいが、混合物を注意深く調整する必要があり得、また、カルシウムまたはマグネシウム不足またはカルシウム+マグネシウムに対するナトリウムの比が高いことが凝結特性に悪影響を及ぼさないことを確実にするように、少量の消石灰および酸化マグネシウムを維持する必要があり得る。
【0192】
実施例4:ペレット状組成物を作製するプロセス工程
工程1:400Lの水をミキサーに加え、そして2tのスクリーニングした処理済赤泥を加え、乾燥ペーストが形成されるまで混合する。
工程2:混合しながら、1Lのリン酸を10Lの水で希釈し、これをミキサーに加えて15分間混合する。
工程3:400kgのセメントをミキサーに加え、追加の400Lの水と一緒に15分間混合する。必要ならば、潤滑性を改善するために少量の洗剤を添加してよい。
工程4:主要構成成分を撹拌し続けながら、IBCにて200kgの酸化マグネシウムおよび100kgの消石灰を300Lの水と一緒に10分間激しく混合する。
工程5:予備混合した石灰および酸化マグネシウムをメインのミキサーに加えて、10分間混合する。
工程6:構成成分を撹拌し続けながら、IBCにて25kgのHPMCを150Lの熱水と合わせて5分間激しく混合し、その後、300Lに希釈して更に5分間混合する。
工程7:予備混合したポリマーをメインのミキサーに加えて、10分間混合する。
工程8:工程6および7を繰り返す。
工程9:所望のコンシステンシーが得られるまで(簡単な指標試験を目下開発中である)、混合物に水(<300L 処理済赤泥の含水量による)を添加する。
工程10:混合し続けながら、2Lの過酸化水素を23Lの水で希釈し、希釈した過酸化水素をミキサーに加えて5分間混合する。
工程11:混合物をスラブに100mm〜200mmの厚さで流し込む:所望の量の混合物を保持できるように型枠を前もって組立てておく必要がある。
工程12:流し込んだスラブを3〜6時間ゲル化させ、その後、これを長方形ブロック(これは硬化して破砕が必要になるまで、容易に持上げて積重ねておくことができる)に区分する。
工程13:区分したブロックを7〜10日間凝結させ、その後、最終硬化のために積重ねる。
工程14:積重ねたブロックを、スラブをペレット状にするために衝撃粉砕を用いる場合は更に最小21日間、またはカッター(例えばウッドチッパー)を用いる場合は更に7日間硬化させる。
【0193】
実施例5:工業的応用
汚染物質を含有する流体から汚染物質を除去するために、上記実施例1〜4のいずれかに記載のようにして作製したペレットを工業プロセスに使用することができる。
【0194】
例示的な工業的応用を図8に示し、これは汚染された水を処理するための工業プロセス(100)の概略ダイアグラムである。プロセス(100)は汚染水を保持する供給タンク(105)を含む。供給タンク(105)は汚染水を供給ラインに通じて一連の汚染物質除去タンク(110、120、130)に供給する。汚染物質除去タンク(110、120、130)の各々には、上記実施例1〜4のいずれかに記載のようにして作製したペレットの透過性塊(110’、120’、130’)が充填されている。ペレットの透過性塊(110’、120’、130’)は、汚染物質除去タンク(110、120、130)に充填された状態で、約60%の孔度εを有する。ペレットの透過性塊(110’、120’、130’)は2つの多孔性砂層(112)の間に充填されており、多孔性砂層(112)は3〜5mmの範囲にある粒子寸法を有し、フィルターとして機能する。ペレットの透過性塊(110’、120’、130’)は、汚染物質除去タンク(110、120、130)から取り出すためにワイヤーメッシュネット(図示せず)内に収容されている。使用の際、汚染物質を含有する水をスプレー(図示せず)により、タンク(110)の上側砂層(112)上へ均等に分配する。高孔度ペレット(110’)は上記のように供給水中に存在する汚染物質の少なくとも一部を除去するのを助ける。その後、供給水はタンク(120、130)に各々配置された残りのペレットの透過性塊(120’、130’)を連続的に通過して、更なる汚染物質を連続的に水から除去し、この水は最終的にはタンク130’から矢印114で示すように取り出される。
【0195】
水汚染物質流速などのプロセス(100)の変数は、供給タンク105の水中の汚染物質濃度に応じて可変であり得ることが理解されよう。
【0196】
また、他の態様においては、タンク(110、120、130)をカラムと置換し得ること、および流体を汚染物資を含有する気体とし得ることも理解されよう。
【0197】
もう1つの工業的応用を図9に示し、これは汚染水を処理するために使用される地下透過性反応バリア(220)の断面図である。地下透過性反応バリア(220)は上記実施例1〜4のいずれかに記載のようにして作製したペレットの塊で構成される。透過性反応バリア(220)は図示するように溝壁(230)によって溝内に設けられる。透過性反応バリア(220)は土壌表面(220)より下方にて、汚染物質を含有する水路(210)に配置される。透過性反応バリア(220)を通過した水(210’)は入口側の水(210)よりも低い汚染物質濃度を有する。
【0198】
処理済赤泥はペレット状に作製されているので、取扱いが容易であることが理解されよう。また、ペレットは透過性が高いが、乾燥状態において微細な赤塵を形成せず(この点、赤泥と相異する)、これにより、ペレットは流動している酸性水、金属に富む水、および人口集中部に近い領域の水ならびに排ガスを処理するのに適したものとなっている。また、ペレットを中程度の透過性を維持することの必要な透過性反応バリアまたは静的水処理カラムもしくはタンクにも使用できることが理解されよう。
【0199】
また、ペレットは、微細赤泥粒子の下流における損失に付随する問題も克服する。
【0200】
開示した態様を参照しつつ本発明を具体的な細部まで説明したが、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の概念および範囲内において多くの変形および改変が成され得ることが理解されよう。
【0201】
実施例6:本発明によるセメント系組成物
【表4】
【0202】
実施例7:本発明による別のセメント系組成物
【表5】
【0203】
実施例8:セメント系ペーストにおけるポゾランとしての部分中和赤泥(セメント置換)
ペースト混合物を4種調製し、それぞれA、B、CおよびDとした。混合物Aは、オーストラリアン・スタンダード AS 1315に従って調製した。混合物B、CおよびDは、100%普通ポルトランドセメント(OPC)を使用する代わりに、部分中和赤泥のスラリーの割合を上昇させた普通ポルトランドセメント(OPC)を混合することにより調製したこと以外は、同様にして調製した。この部分中和赤泥のスラリーは、カルシウム+マグネシウムにより付与される硬度が5ミリモル(炭酸カルシウム等量)以上である水性溶液と赤泥を反応させることによって、そのpHを8.2〜10.5に低下させたものである。スラリーは約51%の固形分を含有するものであった。
【0204】
部分中和赤泥で置換したOPCの量は表6に列挙した通りである。置換割合(%)はそれぞれ5%、10%および20%とした。4種の混合物はいずれも25mm立方とし、4種の混合物はいずれも0.45の水対結合材比にてキャスティングした。
【0205】
4種の混合物をいずれも、23℃の霧室に貯蔵した封かんプラスチックバッグ内にて56日間連続的に硬化させ、その後、各々のサンプルを圧縮強度試験に付した。結果は以下の通りである。
【0206】
【表6】
【0207】
凝結終結時間は300〜340分であり、これら混合物間で違いは認められなかった。
【0208】
混合物A(100%OPC)の場合、硬化ペーストの圧縮強度は28日後で70MPaであったのに対し、混合物D(OPCを部分中和赤泥により20%置換)の場合、硬化ペーストの圧縮強度は28日後で60MPaであった。
【0209】
100%OPCの場合、硬化ペースト(28日後)の半断熱温度は42℃であったのに対し、OPCを部分中和赤泥で20%置換した場合、硬化ペースト(28日後)の半断熱温度は100%OPCの場合で48℃であった
【0210】
各混合物のフローまたはスランプを混合5分後に評価した。混合物A、BおよびCのペーストは極めて流動的であった。しかしながら、混合物D(OPCを部分中和赤泥により20%置換)のペーストはかなり劣っていた。
【0211】
ワーカビリティ(または作業性)は、均質材料を得るようにペーストまたはコンクリートを混合および打設する容易さの程度を示すものである。この特性の指標は1つではなく、本実施例においては、材料を円錐容器にて締固めた後、容器の一方の端部を持上げて、これにより得られた材料のフローを調べるという修正フロー試験を用いた。フローが高いほどより流動的なペーストであることを示していた。
【0212】
ペーストの凝結時間をオーストラリアン・スタンダード AS 1315に従って測定した。部分中和赤泥の添加により、混合物B、C、Dの凝結始発時間をそれぞれ18%、10%および17%延した。これは100%OPC対照標準混合物Aと比較してそれ程大きな変化量でないと考えられた。
【0213】
混合物の凝結終結時間は300〜340分であり、リファレンスおよび試験用調製物間で明白な差はなかった。
【0214】
ペーストの凝結始発および終結時間の測定は、針を貫通させることに対する特定の抵抗性に相当する。針の貫通に影響する変数は多く存在するが、本実施例においては水和ペースト中の部分中和赤泥の含量を除く全てのパラメータを一定に維持した。
【0215】
混合物A、BおよびCでは強度が硬化56日目まで連続的に増加したが、混合物D(部分中和赤泥20%、OPC80%)は霧硬化の最初の7日間後で限界強度増加に達した。
【0216】
実施例9:コンクリートにおけるポゾランとしての部分中和赤泥(セメント置換)
公称圧縮強度40MPaを有する汎用コンクリートとして使用するよう意図したセメント系組成物の混合物を2種調製した。これらをそれぞれ混合物EおよびFとした。混合物Eでは、100%普通ポルトランドセメント(OPC)を結合材として使用した。混合物Fの組成は実施例3の結果、即ち、40MPaコンクリート(この圧縮強度は最小許容レベル未満に低下していない)を得るようにOPCの最大20%を部分中和赤泥で置換し得ることに基づいて決定した。
【0217】
コンクリートをいずれも75mmのスランプを示すように混合した。20%部分中和赤泥を含有するコンクリートの水対結合材比を増加させる必要があることが判明した。2種の混合物の組成を表7に示し、表中、固体の質量は単位立方メートルあたりの表乾(または表面乾燥飽水状態の)重量にて示す。
【0218】
【表7】
【0219】
双方の混合物のサンプルを23℃の霧室に貯蔵した封かんプラスチックバッグ内にて連続的に硬化させた。種々の段階を経た後、サンプルを圧縮強度試験に付した。結果は以下の通りである。
【0220】
3日間発達させた早期圧縮強度は混合物EおよびFで同様であった。3〜7日硬化の間、混合物Eの強度は混合物Fより高速で上昇した。7〜28日では、両コンクリートは同様の強度増加を示し、霧硬化28日後にて混合物Fは混合物Eより強度が約10%低かった。混合物Fの28日圧縮強度が低かったのは、リファレンスの混合物Eコンクリートに比べて75mmスランプに必要な水対結合比が高いことによる。同等のスランプとするためにより高い水対結合材比が必要とされることは(表7を参照のこと)、より適切な減水剤を用いることによって克服できるであろう。
【0221】
混合物Eおよび混合物Fで水対結合材比が相異することは、混合物Fコンクリートで28日圧縮強度の減少が認められたことと一部関係しているものと考えられる。しかしながら、いずれのコンクリートも40MPaの28日設計強度に達していた。
【0222】
両混合物EおよびFのピーク半断熱温度は30.5℃付近であり、いずれの場合も混合開始後11.25時間後に生じていた。
【0223】
部分中和赤泥が凝結促進剤として機能するため、混合物Fのワーカビリティは混合物Eより低かった。しかしながら、混合物のワーカビリティにおける低下は可塑剤を添加することにより克服できた。部分中和赤泥をOPC置換物として使用することにより、より大きな初期強度(7日間硬化)および31.5℃のより高い半断熱温度(7日間硬化後)が得られた。上記の半断熱温度の上昇は、表面積対体積比が小さい場合に、熱応力により早期ひび割れが生じ得るので特に重要である。半断熱温度の増加は、硬化の間に生じる鉄アルミン酸四カルシウム(C4AF)の割合が高く、またコンクリートに用いるポルトランドセメントにおいて形成されるケイ酸三カルシウム(C3S)およびケイ酸二カルシウム(C2S)が少ないために起こり得る。別法では、このセメントは、部分中和赤泥により追加のアルミン酸塩が供給されるので、ハイアルミナタイプのセメントに転用し得る。
【0224】
実施例10:緻密さ(fine detail)保持
3種の非多孔性混合物(部分中和赤泥4部およびセメント1部;混合物G)(部分中和赤泥3部、砂1部およびセメント1部;混合物H)およびモルタル(砂4部およびセメント1部;混合物I)を250mlの型に流し込んだ。この型の内壁面には質量目盛用の微細な浮き出し文字が設けられていた。ブロックが硬化すると型を破壊し、混合物GおよびHはいずれも目盛を容易に読み取ることができる緻密さ(または肌理の細かさ)を保持していたのに対し、混合物Iはそのような緻密さを保持していなかった。セメント系組成物の表面に緻密さを保持することは、滑り止め付きタイルおよびコンクリート路を製造するのに重要である。セメント系組成物における部分中和赤泥により緻密さが得られるということは、タイルまたは他の製作物(コンクリート彫刻または建築物および壁用装飾(例えばエンボス加工または成型された)面など)の表面に緻密さを施し得ることを教示するものである。水の表面張力により得られる毛管作用引き込みを利用し得る極めて微細なラインにより、水で滑る危険が生じる前に、水をこれら微細な溝に引き込んで除去することができる。
【0225】
実施例11:テラコッタタイル
セメント1部、砂1部および部分中和赤泥3部を含む多孔性型セメント組成物を調製し、これは極めて優れた耐湿潤および乾燥性を有するものであった。この組成物から作製したテラコッタセメント舗装材も優れた耐凍結/溶解性を有するものであった。この舗装材は、セメント舗装材の表面に酸化物粉末を散布することにより作製される常套の舗装材に比べて、これらを形成した後および舗装材がまだ濡れている間も都合がよい。このような常套の舗装材の場合、酸化物コーティングは暫く後に摩耗して下層の(着色されていない)セメントを露出させるが、本発明の方法によって作製されたタイルは全体に亘って均一な色を有しているので、このタイルの摩耗は色に何ら影響しない。
【0226】
実施例12:気泡(またはブローン)セメント組成物
実施例10の組成物をEP2021(発泡剤)と組み合わせることにより、軽量(多孔性)敷石およびタイルが得られた。
【0227】
実施例13:酸中和
3種の非多孔性組成物として混合物J、混合物Kおよび混合物Lを、実施例8と同様にして調製した。各混合物につき1つのサンプルを得て数日間硬化させ、その後、ドリル加工で中央穴を貫通させ、そして1.5cm厚さのスラブを切断した。その後、3種のスラブを別個の1L瓶のMilli−Q水中に吊下げ、pHを2.5に調整した。各瓶につき合計50mlの硫酸が添加されるようになるまで、硫酸を少量添加することによってそれぞれのpHを数日毎に再調整してpH2.5に戻した。約2ヶ月に及ぶ各瓶につき50mL増分の酸添加の後、サンプルはスラブを取り出して表面試験に付すまで4週間に亘って瓶内の溶液と平衡を保つことができ、溶液pHをスラブと平衡なものにしていた。4週間の平衡期間の溶液pHを1週間に2度モニターした。サンプルJは第1週間目のうちにセメントスラブと平衡状態に達し、サンプルKは第2週間目の半ばまでに平衡状態に達し、およびサンプルLは第3週間目の半ばまでに平衡状態に達した。各溶液の最終的な平衡状態pHは以下の通りであった:
混合物Jのサンプルについて: 7.94
混合物Kのサンプルについて: 7.88
混合物Lのサンプルについて: 7.79
【0228】
混合物JおよびKセメントは酸性溶液中のpHが、混合物Lのサンプルよりかなり早く上昇し、このことはこれら各混合物のサンプルの酸中和能をより容易に利用できることを示している。混合物Lのサンプルは最終的に、スラブの表面腐食(またはエッチング)および表面鉱物沈着が極めて激しかった。混合物JおよびKセメントのサンプルはいずれも多少の腐食が見られたものの、混合物Lのサンプルほどではなかった。また、混合物JおよびKセメントのサンプルはいずれもその表面に鉱物沈着が見られたが、混合物Jのほうがより多量の沈着物を有していた。混合物Kセメントのサンプルはその表面に微細な針状鉱物結晶を有していた。
【0229】
実施例14:耐酸性
混合物EおよびF(実施例4のもの)のそれぞれにつき1つのサンプルをHCl、HNO3およびH2SO4の各々の10%酸溶液に浸漬した。8週間後、全てのサンプルを取り出し、各々の質量損失を測定した。各酸中1週間後、ポルトランドセメント対照標準(混合物E)は完全に分解し、損失100%であったのに対し、10%HNO3に浸漬した混合物Fのサンプルはその質量の10%しか失われず、10%HClに浸漬した混合物Fのサンプルはその質量の約20%を失い、10%H2SO4に浸漬した混合物Fのサンプルはその質量の約40%を失った。
【0230】
10%の強度において、酸のモル濃度はHClで1.2M、HNO3で1.6MおよびH2SO4で1.8Mであった。組成物に対するアタックに利用可能なH+のモル数はHClおよびHNO3で同様であるが、H2SO4では3.6Mが利用可能であった。硫酸に浸漬したサンプルについての質量損失がより大きかったのは、おそらく、HNO3の場合に比べて水素イオンを3倍利用可能であったことによるものと考えられる。HClによるアタックに対する感受性が部分中和赤泥を含有する混合物で大きいのは、本発明による組成物の耐塩素性がより低いことによって説明し得る。
【0231】
よって、本発明に従って製造されるセメント系組成物は、酸性硫酸塩土壌または酸化性硫化物廃岩または鉱区での選鉱くずの作用を受ける領域において使用するのに特に適する。硫酸塩耐性は通常、アルミン酸三カルシウム(C3A)成分の割合の低下と関係し、耐硫酸塩セメントでは4〜10%のC3A含量が望ましい。本発明による組成物の硫酸塩耐性はスラリーを吹付ける能力と相俟って、酸浸出を最小限とし、および酸素拡散を防止して更なる硫化物酸化を防止するために、露天掘りの壁(open cut pit wall)に噴霧し得る材料を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】図1は本発明による組成物のペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】図2は本発明による組成物のペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】図3は本発明による組成物のペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】図4は本発明による組成物のペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】図5は本発明による組成物のペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6】図6は本発明による組成物のペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図7】図7は実施例2に記載の結果を得るために使用した例示的な研究所装置の概略ダイアグラムを示す。
【図8】図8は本発明による組成物を有するペレットを用いて汚染水を処理するための例示的な工業プロセスの概略ダイアグラムを示す。
【図9】図9は本発明によるペレットを利用した地下透過性反応バリアの断面図を示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は流体中の1種以上の汚染物質の処理に関する。より詳細には、本発明は汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料およびそのような粒状材料の製造方法に関する。
【0002】
また、本発明はセメント系(またはセメント質)組成物にも関する。より詳細には、本発明は常套の流し込み(pouring)、ポンプ移送、グラウト注入および吹付け法を用いて製造および適用できるセメント系組成物であって、耐酸セメント系組成物、耐硫酸塩セメント系組成物、耐含塩ブライン(saline brine:または塩水)セメント系組成物、微粉状表面加工(textured)セメント系組成物、通気(aerated)または気泡(blown)セメント系組成物、およびテラコッタセメント系組成物などとしての用途に好都合なものに関する。また、本発明はそのような組成物の製造方法にも関する。
【0003】
発明の背景
酸性鉱排水(Acid mine drainage:AMD)は硫化物尾鉱が貯蔵された場所であればどこにおいても周知の問題であり、これは殆どの銅、鉛、亜鉛、ニッケルおよび銀の採掘および精錬作業、漂砂鉱床に関するもの以外の殆どの金回収作業、多くの石炭採掘および選鉱作業などに影響を及ぼすものである。人間活動が硫化鉱物を大気に曝すことを伴う場所であればどこにおいても、硫化物が生じた酸性水(微量金属含量が高いことが多い)を酸化させ得るために、環境を害する危険性が潜在的に存在する。これら微量金属は高い生態毒性を有することがあり、これらは環境に対して極めて有害である。鉱物回収作業による金属に富む酸性浸出液の形成および散逸を防止することは、近年の採掘作業に対する管理問題および採掘作業の廃止に付随する廃棄鉱床に対する主要な浄化問題を招く。AMDの制御は現在および従来の双方の鉱区にとって高くつく取り組みである。金属に富む酸性水を現在および従来の鉱区より放出することは、採掘および鉱石選鉱作業に伴う環境破壊の最たるものであると広く考えられている。
【0004】
同様に、多くの工業プロセスも金属に富む酸性水ストリーム(例えば製革、電気メッキ加工、肥料製造およびその他諸々)を生じ、これは排出または処分する前に処理することが必要である。多くの工業および廃棄物管理プロセスは、水と相互作用して酸を生じ得る化合物または成分を生じる臭気を含む排ガスも生じる。
【0005】
従って、上述したような酸性水および微量金属で汚染された水を大量に低コストで処理するために使用できる方法および組成物に対する需要が存在する。
【0006】
アルミナ(Al2O3)はバイエル(Bayer)法にて工業的に製造される。バイエル法は水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて、ボーキサイト鉱石中に存在するアルミナ鉱物を選択的に溶解させるものである。これによりアルミン酸ナトリウム溶液を生じ、この溶液からピュアなAl(OH)3が析出する。ボーキサイト鉱石の苛性ソーダ温浸(digestion)より得られる残留物(または残渣)は一般的に「赤泥」として知られている。ボーキサイト精製(または精製所)残留物または赤泥は高い鉄イオン含量を有し、pH値が約13.5という高い苛性度を有する。アルミナ製造においてこのような苛性度の高いボーキサイト精製残留物が大量に生じ、そしてこれを安全かつ経済的に処分するのは困難であり得る。
【0007】
ボーキサイト精製残留物に対する地球化学的研究は、極めて高い表面積/体積比および高い粒子荷電対質量比を有する粒子によりこれを制することを示している。またこのような研究は、アルカリ性を維持しつつも苛性ではないように低下したpHを有するボーキサイト精製残留物が酸を中和し、および新たな低溶解性鉱物を他の鉱物との共沈によりおよび他の鉱物中元素との同形置換により形成することによって多くの微量元素および他の化合物を結合させ得ることも示している。
【0008】
赤泥の望ましい酸中和および金属結合特性にもかかわらず、これは取扱いが困難で、高い水分含量を有するために運搬コストを実質的に増大させ、極めて低い透過性(または浸透性)を有し、乾燥させ物理的に破砕したときに微細な赤塵を形成する。このような制約は、遠隔地にある貯留水を処理する場合は深刻な障害とはならないが、流動している酸性水、金属に富む水、および人口集中部に近い領域の水ならびに排ガスを処理する能力に対しては悪影響を与える。これらは更に、中程度の透過性を維持することの必要な透過性反応バリアまたは静的水処理カラムもしくはタンクに赤泥を使用することにつき重大な制限を加える。赤泥は、ボーキサイト精製所から得られた形態では、微細赤泥粒子の下流にて生じ得る損失は許容できない程であるので、流動している水塊を処理するためにこれを使用できないことは明らかである。更に、微細赤泥粒子の粒子寸法が小さいために、多くの場合、これらは反応バリアに使用するのに適切でない。
【0009】
コンクリートは、最も基本的なものでは、砂、砂利(または骨材)およびセメントから成り、これらは水と組み合わされてトバモライトゲルの形成を促し、このゲルは酸化物をアルミン酸塩およびケイ酸塩に変えることによって砂および砂利(または骨材)を結合して固体の塊にする。普通ポルトランドセメント(OPC)では、セメント結合の4つの主成分はケイ酸三カルシウム(C3S)、ケイ酸二カルシウム(C2S)、アルミン酸三カルシウム(C3A)および鉄アルミン酸四カルシウム(C4AF)である。ハイアルミナセメントも、塩水(saline water)および高温に対する優れた耐性を提供するために使用されるが、これは一般的に強度が低く、より高価である。
【0010】
【表1】
【0011】
大量の赤泥がオーストラリアやその他の国にあるボーキサイト精製所より毎年生じており、苛性赤泥は特に長期間に亘る廃棄場所にて環境問題を潜在的に引き起こし得るため、これを処分する経済的に維持し得、かつ環境的に許容し得る方法が強く求められている。
【0012】
赤泥をセメント系組成物に利用する様々な試みがなされている。この点に関し、シング(Singh),Mは次の自身のMTech論文の第1章にて文献を概説している:題目「ヒンダルコ社の非苛性化泥およびフライアッシュからの安定化ブロックおよび特殊セメントの製造に関する研究(Studies on the Preparation of Stabilized blocks and Special Cements from Hindalco's Uncausticized Mud and Fly Ash)」、デパートメント・オブ・ケミカル・エンジニアリング・アンド・テクノロジー、インスティチュート・オブ・テクノロジー、バナラス・ヒンドゥー大学、バラナシ、インド(1995年5月)。しかしながら、この論文で概説されているいずれの刊行物にも本発明のセメント系組成物またはその製造方法は開示されていない。
【0013】
赤泥、セメントおよび砂を含有するレンガがジャマイカで製造されている。このレンガは約4.7MPaの圧縮強度を有することが分かった。
【0014】
仏国特許公報第2 760 003号は赤泥および石灰岩または他の酸化カルシウム含有材料を含む鉄に富むセメントクリンカーを開示している。このクリンカーはキルン内で1175℃〜1250℃の温度にて焼成したものであった。洗浄および非洗浄赤泥が用いられていた。またこの文献は上記クリンカーから得られた水硬性セメントも開示している。更に、赤泥をベースとするセメントクリンカーから、これを石灰含有材料および追加の赤泥と混合して水硬性セメントおよびモルタルを製造することを開示している。水による洗浄および1175℃を超える温度(赤泥の所定の構成要素が分解する温度)への加熱を別としても、この文献は赤泥をセメント系組成物に導入する前に更に処理することを何ら開示していない。
【0015】
米国特許第5,456,553号は赤泥を、土壌の補強剤としての酸化鉄粉末および石灰と組み合わせて使用することを記載している。これはセメント系組成物の製造もコンクリートの製造も開示していない。
【0016】
米国特許第5,931,772号は脱水し、乾燥させ、および篩過した赤泥を廃棄材料と組み合わせて使用し、その後、ポゾラン材料(セメント、フライアッシュまたは石灰)と混合する組成物の製造を記載している。この特許は廃棄物を処理およびカプセル封入して、埋立物として処分するための化学的に比較的不活性な固体廃棄物とすることを記載している。使用した赤泥は中和されていなかった。
【0017】
米国特許第3,989,513号は鉄鉱石を高温で精錬するために、赤泥を酸化カルシウム材料および還元剤と混合することを記載している。この特許は赤泥をセメント系組成物に使用することを開示していない。
【0018】
カナディアン・ビルディング・ダイジェスト(http://irc.nrc-cnrc.gc.ca/cbd/cbd215e.html)は、ビトリファイド(またはガラス固化)赤泥をコンクリート骨材として使用することを示唆している。ビトリファイド赤泥は化学的に不活性であるので、ビトリファイド赤泥は赤泥と相異する。ビトリファイド赤泥は充填剤としてしか使用されていない。ビトリフィケーションにより赤泥の地球化学的反応性が除かれる。
【0019】
インターナショナル・リサーチ・デベロップメント・センター(1992年)http://web.idrc.ca/en/ev-2691-201-1-do_TOPIC.htmlは赤泥を他の廃棄物(フライアッシュを含む)と混合して建設用レンガを形成することを示唆していた。グランヴィル(Glanville),J.I.(1991年)、「ボーキサイト廃レンガ(ジャマイカ):評価レポート(Bauxite waste bricks (Jamaica): Evaluation Report)」、1991年6月、IDRC、オタワは赤泥および他の廃棄物でできたレンガを評価して、高ナトリウム含量が塩浸出および塩風解(これは赤泥レンガを用いて建設された構造体を弱体化する)を招くことを示した。これら刊行物は、レンガ構造物に使用した赤泥のナトリウム度(sodicity)または塩含量の低下について検討していなかった。
【0020】
ワグ(Wagh),A.S.およびドゥース(Douse),V.E.(1991年)、「バイエル法廃棄物のシリケート結合非焼成セラミック(Silicate bonded unsintered ceramic of Bayer process waste)」、ジャーナル・オブ・マテリアルズ・リサーチ、ピッツバーグ、ペンシルバニア:6(5) 1095〜1102はバイエル法廃棄物でできたシリケート結合セラミックをセラミック材料として使用することを記載したものである。この刊行物はセメントをポゾラン材料として赤泥と一緒に組み合わせて使用することも、赤泥を建設用材料として使用することも、赤泥を中和してナトリウム度を低下させて使用することも開示していない。
【0021】
発明の目的
本発明の目的は上述の不都合または需要の少なくとも1つに対処し、またはこれを改善することにある。
【0022】
発明の要旨
本発明の第1の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料であって、セメント系マトリクスおよびボーキサイト精製残留物を含む多孔性粒状材料が提供される。
【0023】
好都合には、粒状材料における孔の体積%は10%〜90%;20%〜80%;30%〜70%;40%〜60%;または45%〜55%からなる群より選択される範囲にある。適切には、粒状材料に在る孔の少なくとも一部は開放セル(open cell)または連続孔(interconnected pores:または相互接続した孔)であり得る。好ましくは、孔の少なくとも10%が開放セルまたは連続孔である。より好ましくは、粒状材料において開放セルまたは連続孔である孔の割合は10%〜100%;20%〜100%;30%〜100%;40%〜100%;50%〜100%;60%〜100%;70%〜100%;80%〜100%;および90%〜100%からなる群より選択される範囲にある。
【0024】
好都合には、粒状材料の孔は分布した孔寸法を有する。粒状材料の孔寸法は0.1〜2000μmの範囲にあり得る。孔は、100〜2000μmの範囲にある孔寸法を有するマクロ孔、10〜100μmの範囲にある孔寸法を有するメソ孔および0.1〜10μmの範囲にある孔寸法を有するミクロ孔より成り得る。マクロ子の少なくとも一部はメソ孔またはミクロ孔により連続しており、メソ孔の少なくとも一部はミクロ孔により連続している。
【0025】
本発明の第2の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、粒子がセメント系マトリクスおよびボーキサイト精製残留物を含む多孔性粒状材料が提供される。
【0026】
適切には、粒状材料は細礫(または砂粒)、ペレット、ブリケット(briquette)、押出物、砂利、玉石、ブロック、インターロッキングブロックおよびスラブからなる群より選択される形態で存在し得る。
【0027】
本発明の第3の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための反応性透過性バリア(reactive permeable barrier:または透過性反応壁)であって、第1もしくは第2の要旨またはこれら双方による多孔性粒状材料の透過性塊(permeable mass)を含んで成り、使用に際して多孔性粒状材料の透過性塊が汚染物質を含有する流体の流路に配置されるものが提供される。
【0028】
反応性透過性バリア(または壁)は地下反応性透過性バリアであってよい。他の態様においては、反応性透過性バリアはカラムまたはタンクなどの容器内に配置されていてよい。
【0029】
本発明の第4の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を形成するための組成物であって、組成物がボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を含み、セメント系結合材が第1もしくは第2の要旨またはそれら双方による多孔性粒状材料を形成するのに十分な量で存在する組成物が提供される。
【0030】
適切には、組成物を水性媒体中に混合する際に粒状材料内に孔を生じさせるために、孔発生剤が組成物中に含まれ得る。孔発生剤は過酸化水素、有機ポリマーおよび発泡剤からなる群より選択され得るが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の第5の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を製造する方法であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、方法は:
(a)ボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を水性媒体中で混合してスラリーを形成すること;
(b)スラリーを、セメント系マトリクスおよびボーキサイト精製残留物を有する多孔性粒状材料を形成するように規定された時間かつ規定された温度範囲内にて硬化させる(または養生する)こと
を含む方法が提供される。
【0032】
本発明の第6の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を製造する方法であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、方法は:
(a)ボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を水性媒体中で混合してスラリーを形成すること;
(b)スラリーを型内で硬化させて(または養生して)、セメント系マトリクスおよびボーキサイト精製残留物を有する多孔性粒状材料の凝集塊を形成すること
を含む方法が提供される。
【0033】
型は、多孔性粒状材料の凝集塊を細礫、ペレット、ブリケット、押出物、砂利、玉石、ブロック、インターロッキングブロックまたはスラブからなる群より選択される形態にて形成するように形作られていてよい。
【0034】
適切には、孔発生剤は粒状材料内に孔を生じさせるために孔発生剤を混合工程において添加してよい。孔発生剤は過酸化水素、有機ポリマー、発泡剤および空気などの気体より選択され得るが、これらに限定されない。
【0035】
適切には、硬化の間に孔構造の安定化を助長するためにリン酸塩形成剤(phosphatising agent)を添加し得る。リン酸塩形成剤はリン酸であり得る。
【0036】
スラリーは1日〜60日、好ましくは1日〜50日、より好ましくは1日〜30日の期間に亘って硬化させ得る。
【0037】
本発明の第7の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理する方法であって:
・第1または第2の要旨またはそれら双方による多孔性粒状材料の透過性塊を準備すること;および
・汚染物質を含有する流体を多孔性粒状材料の透過性塊に通過させること
を含む方法が提供される。
【0038】
流体は汚染された水または汚染された気体状流体であってよい。流体中の汚染物質は酸;金属イオン(鉛、アルミニウム、ベリリウム、カドミウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、マンガン、水銀、銀、亜鉛など);半金属(アンチモンまたはヒ素など);アニオン(ホウ酸塩、炭酸塩、シアン化物、金属オキシアニオン錯体、シュウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物など);および気体(二酸化炭素、酸化窒素、亜酸化窒素、二酸化硫黄、三酸化硫黄など);ならびにこれらのうち1種または2種以上の組合せからなる群より選択され得るが、これらに限定されない。
【0039】
組成物またはスラリーは1%〜99%(重量/重量)のボーキサイト精製残留物および1%〜99%(重量/重量)のセメント系結合材を含み得る。好ましい組成物は50%〜95%(乾燥重量)のボーキサイト精製残留物および5%〜50%(重量)のセメント系結合材を含む。より好ましい組成物は70%〜90%(重量)のボーキサイト精製残留物および10%〜30%(重量)のセメント系結合材を含み、そして最も好ましい組成物は80%〜85%(乾燥重量)のボーキサイト精製残留物および15%〜20%(重量)のセメント系結合材を含む。好都合には、追加の添加剤がボーキサイト精製残留物に添加されていてよく、追加の添加剤は砂、粉状苛性製鋼スラグ残留物、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化カルシウムなど)、アルカリ土類金属炭酸塩(炭酸カルシウムなど)、アルカリ土類金属酸化物(酸化マグネシウムなど)、次亜塩素酸カルシウム、ナトリウムミョウバン、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、石膏、リン酸塩(リン酸アンモニウムなど)、リン酸、ハイドロタルサイト、ゼオライト、かんらん石(またはオリビン)および輝石(塩基性または超塩基性火成岩中に存在するものを含む)、塩化バリウム、ケイ酸およびその塩類、メタケイ酸およびその塩類、鉄ミョウバン石または他のミョウバングループの鉱物およびマガディアイト、ならびにこれらのうち1種または2種以上の組合せからなる群より選択される。組成物の酸中和能を増強し、または流体中の特定汚染物質の除去能力を増強するために、追加の添加剤をスラリーに添加してよい。
【0040】
適切には、ボーキサイト精製残留物は約10.5未満のpHを有する。好ましくは、ボーキサイト精製残留物は約8〜約10の範囲にあるpHを有する。
【0041】
トバモライトゲルを形成可能なセメント系結合材が好ましい。好ましいセメント系結合材は普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントおよびハイアルミナセメントからなる群より選択されるセメント、またはトバモライトゲルの発達に依存した任意の他の市販で入手可能なセメント結合剤(cementing agent)である。
【0042】
本明細書において、用語「含む」は「主に含むが、必ずしもこれのみでない」ことを意味する。更に、語句「含む」のバリエーション、例えば「含み」などは対応した様々な意味を有する。
用語「赤泥」は以下、「処理済赤泥」、「部分処理赤泥」、「未処理赤泥」およびボーキサイト精製残留物を含み得るものとする。
用語「処理済赤泥」は以下、10.5未満のpHを有する赤泥を意味するものとする。
用語「部分処理赤泥」(または部分的に処理された赤泥)は以下、10.5以上13.5未満の範囲にあるpHを有する赤泥を意味するものとする。用語「未処理赤泥」は13.5以上のpH値を有する赤泥を意味するものとする。
【0043】
多孔性ペレット製造のための部分処理赤泥
赤泥の処理は、赤泥の水に対する重量比を1:5として水と混合したときに10.5未満の反応pHを有する物質を得るように、カルシウムおよび/またはマグネシウムイオンで処理することを含み得る。別法では、赤泥の処理は酸の添加によりこれを中和することを含み得る。もう1つの別法では、赤泥の処理は二酸化炭素に接触させること;または石膏などの鉱物を添加することを含み得る。
【0044】
処理済赤泥は、酸処理中和およびか焼により活性化した赤泥、または水での洗浄または寸法分離(整粒)などにより様々な方法で化学的および/または物理的に変化させた赤泥であり得る。
【0045】
赤泥を、その重量の5倍の水と混合したときに10.5未満の反応pHを有するようにカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンと少なくとも部分的に反応させて、処理済赤泥とする。より好ましくは、その重量の5倍の水と混合したときの反応pHは約10、約9.5、約9、約8.5および約8からなる群より選択される値より小さい。処理済赤泥のその重量の5倍の水と混合したときの反応pHは約8〜10.5、あるいは約8.5〜10、あるいは約8〜8.5、あるいは約8〜9、あるいは約8.5〜9.5、あるいは約9〜10、あるいは約9.5〜10、あるいは約9〜9.5であってよく、および約10.5、10、9.5、9、8.5または8であってよい。
【0046】
本明細書に定義する処理済赤泥を製造(または調製)し得る1つの方法は、国際特許出願PCT/AU03/00865および国際特許出願PCT/AU01/01383に記載されているように(これらの開示内容はその全体が本明細書に組み込まれる)、未処理または部分処理赤泥をカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンと反応させることによるものである。処理済赤泥を製造し得るもう1つの方法は、未処理または部分処理赤泥を、赤泥の反応pHを10.5未満に減少させるのに十分な量の海水と反応させることによるものである。例えば、未処理赤泥が約13.5のpHおよび約20,000mg/Lの液相中アルカリ度を有する場合、約5倍体積の世界平均的海水を添加することにより、pHを9.0〜9.5に、およびアルカリ度を約300mg/Lに低下させる。
【0047】
国際特許出願PCT/AU03/00865および国際特許出願PCT/AU01/01383に教示されているように、未処理または部分処理赤泥をカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンと反応させる方法は、未処理または部分処理赤泥を、基準量および処理量のカルシウムイオンと基準量および処理量のマグネシウムイオンとを含有する水性処理溶液と、赤泥の反応pHをその1重量部を蒸留または脱イオン水5重量部と混合したときに10.5未満とするのに十分な時間に亘って混合することを含み得る。カルシウムおよびマグネシウムイオンの基準量は、処理溶液および赤泥の合計体積単位リットルあたり、それぞれ8ミリモルおよび12ミリモルであり;カルシウムイオンの処理量は、赤泥の全アルカリ度の単位モルあたり少なくとも25ミリモル(炭酸カルシウム等量アルカリ度換算)であり、マグネシウムイオンの処理量は、赤泥の全アルカリ度単位モルあたり少なくとも400ミリモル(炭酸カルシウム等量アルカリ度換算)である。海水を使用し得ることに加えて、国際特許出願PCT/AU03/00865および国際特許出願PCT/AU01/01383に教示されているように、カルシウムおよびマグネシウム源の例には、地下硬水ブライン(hard groundwater brine)、天然含塩ブライン(例えば蒸発により濃縮した海水、岩塩坑からの苦汁ブライン、または塩湖ブライン)、排塩水(例えば脱塩(または淡水化)プラントからのもの)、ならびに塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムを溶解させて得られる溶液が含まれる。しかしながら、カルシウムおよび/またはマグネシウムイオン源はこれらの例に限定されない。
【0048】
処理済を製造し得る更なる方法は:
(a)赤泥のpHおよびアルカリ度の少なくとも一方を低下させるように、未処理または部分処理赤泥をアルカリ土類金属(典型的にはカルシウムもしくはマグネシウムまたはそれら2つの混合物)の水溶性塩と接触させる工程;および
(b)赤泥のpHを10.5未満に低下させるように、未処理または部分処理赤泥を酸と接触させる工程
を含む。
【0049】
工程(b)において、赤泥のpHは約8.5〜10、あるいは約8.5〜9.5、あるいは約9〜10、あるいは約9.5〜10、好ましくは約9〜9.5に低下し得、また、約10.5、約10、約9.5、約9、約8.5および約8からなる群より選択される値に低下し得る。
【0050】
この方法の工程(a)において、赤泥の液相の全アルカリ度は、炭酸カルシウムアルカリ度換算で、約200mg/L〜1000mg/L、あるいは約200mg/L〜900mg/L、あるいは約200mg/L〜800mg/L、あるいは約200mg/L〜700mg/L、あるいは約200mg/L〜600mg/L、あるいは約200mg/L〜500mg/L、あるいは約200mg/L〜400mg/L、あるいは約200mg/L〜300mg/L、あるいは約300mg/L〜1000mg/L、あるいは約400mg/L〜1000mg/L、あるいは約500mg/L〜1000mg/L、あるいは約600mg/L〜1000mg/L、あるいは約700mg/L〜1000mg/L、あるいは約800mg/L〜1000mg/L、あるいは約900mg/L〜1000mg/L、好ましくは300mg/L未満に低下し得、また、約1000mg/L、約900mg/L、約800mg/L、約700mg/L、約600mg/L、約500mg/L、約400mg/L、約300mg/Lおよび約200mg/Lからなる群より選択される値未満に低下し得、また、約1000、約950、約900、約850、約800、約750、約700、約650、約600、約550、約500、約450、約400、約350、約300、約250および約200mg/Lからなる群より選択される値に低下し得る。
【0051】
このpHは典型的には約9.5未満、好ましくは約9.0未満に低下し、また約9.5、約9.25、約9.0、約8.75、約8.5、約8.25および約8からなる群より選択される値に低下し得る。また、液相の全アルカリ度は、炭酸カルシウム等量アルカリ度換算で、好ましくは約200mg/L、約150mg/Lおよび約100mg/Lからなる群より選択される値未満に低下し、また約200、約175、約150、約125、約100、約75および約50mg/Lからなる群より選択される値に低下し得る。
【0052】
多孔性ペレット製造の目的で本明細書中に定義されるところの処理済赤泥は、鉱物の複合混合物から成る乾燥赤色固体であり、この複合混合物は次のものを通常含む:豊富なヘマタイト、ベーマイト、ギブサイト、ソーダライト、石英およびカンクリナイト、より少量のアラゴナイト、ブルース石、カルサイト、ダイアスポア、水酸化鉄、石膏、ハイドロカルマイト、ハイドロタルサイト、p−アルミノハイドロカルサイトおよびポートランダイト、ならびにごくわずかの低溶解性微量金属。これは高い酸中和能(処理済赤泥単位kgあたり2.5〜7.5モルの酸)および極めて高い微量金属捕捉能(処理済赤泥単位kgあたり1,000ミリグラム等量以上の金属)を有し;また、リン酸塩および他のいくつかの化学種を捕捉および結合する高い能力も有する。処理済赤泥は個々の用途に適するように様々な形態(例えばスラリー、粉末、ペレットなど)で製造できるが、そのいずれもが、高い酸中和能にもかかわらず、中性に近い土壌反応pH(10.5未満およびより典型的には8.2〜8.6)を有する。処理済赤泥の土壌反応pHは中性に十分近く、また、そのTCLP(毒性指標浸出法)値は十分低く、特別許可を得る必要なく運搬および使用できる程度である。
【0053】
しかしながら、上述のことから理解されるように、本発明の組成物および方法に使用するための赤泥は本明細書に定義する処理済赤泥に限定されず、酸での処理により少なくとも「部分処理」された赤泥(即ち10.5〜13.5のpHを有する);二酸化炭素での処理により少なくとも部分処理された赤泥;またはカルシウムおよび/またはマグネシウムを含有する1種または2種以上の鉱物(石膏など)の添加により少なくとも部分処理された赤泥であってもよい。赤泥は、簡便には、赤泥の水性懸濁液に二酸化炭素をバブリングすることによって、またはそのような懸濁液に加圧下にて二酸化炭素を注入することによって、赤泥の反応pHが10.5および13の間からなる群より選択される値未満に低下させることとする、二酸化炭素での処理により少なくとも部分処理されていてよい。
【0054】
処理済赤泥の典型的な鉱物学および化学的組成を以下の表2にまとめて示す。
【表2】
【0055】
処理済赤泥のテクスチャ(texture:または肌理)および鉱物学性(mineralogy)により、赤泥は極めて高い微量元素捕捉および結合能(>1000mg等量/kg、pH値>6.5にて)および微量元素をこれと接触している水からストリッピングする能力を有するものとなる。処理済赤泥の金属結合性質は材齢が増すにつれてより強くなる。高い金属結合能に加えて、処理済赤泥は酸中和能を有し、これは乾燥処理済赤泥単位kgあたり3.5モルの酸より多く、通常、乾燥処理済赤泥単位kgあたり4.5モルの酸より多い。これら性質により、処理済赤泥は水処理および他の同様の用途に幅広く適したものとなっている。
【0056】
処理済赤泥の鉱物の構成要素は個々にであれ、集合した状態であれ、人間および動物に対して非毒性である。処理済赤泥中に存在する鉱物の多くは人間用医薬品に使用されるものである。
【0057】
処理済赤泥または部分処理赤泥は好ましくは微粉状である。
【0058】
処理済赤泥を本発明の組成物および方法に使用する格別の利点は、可溶性塩濃度(特にナトリウム濃度)が未処理赤泥中の濃度より実質的に低いことである。処理済赤泥のこの特徴は、処理済赤泥の塩度を、環境に排出されることとなる水や、灌漑目的でまたは哺乳動物の飲用水として使用される水と同等に低くしなければならない場合に特に重要である。
【0059】
セメント系結合材
セメント系物質はトバモライトゲルであり得る。最も典型的なトバモライトゲルは工業用セメントの凝結において生じ、また、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、およびハイアルミナセメント、またはトバモライトゲルの発達に依存した任意の他の市販で入手可能なセメント結合剤を含み(但しこれらに限定されない)、以下、「セメント」と呼ぶものとする。トバモライトゲルには4つの主要構成要素が存在し、これらはケイ酸三カルシウム(C3S)、ケイ酸二カルシウム(C2S)、アルミン酸三カルシウム(C3A)および鉄アルミン酸四カルシウム(C4AF)である。
【0060】
ペレット形成の間に有機添加剤を導入すると、繊維質マットを生じることにより更なる結合強度を付与できると同時に、組織の木部および師部により、流体フローに対して追加の相互接続路を提供できる。加えて、有機物は適切な細菌繁殖培地を提供し、よって、形成されたペレットは生物地球化学的反応(例えば硫酸還元および脱窒)を効率的に進行させ得る嫌気性処理に使用し得る。更に、ペレット内の有機物は植物成長のための更なる栄養および炭素源を提供でき、ペレットを土壌改善プログラムまたは鉢植え用混合増量剤に使用できよう。ペレットに導入され得る有機物には下水汚泥、サトウキビ圧搾残留物、わらくず、腐葉土(mulch)および麻繊維などが含まれ得るが、これらに限定されない。添加する有機物量の好ましい範囲は乾燥混合物の0%〜15%(重量)の範囲であり、より好ましい範囲は乾燥混合物の0.4%〜10%(重量)であり、更により好ましい範囲は乾燥混合物の0.6%〜8%(重量)であり、そして最も好ましい範囲は乾燥混合物の0.8%〜5.0%(重量)である。
【0061】
鉱物添加剤
処理済赤泥の操業上の利点は、PCT/AU01/01383に教示されるように鉱物添加剤の添加によりしばしば助長され得る。使用の可能性のある添加剤には、アルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば炭酸ナトリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば水酸化カルシウム)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば炭酸カルシウム)、アルカリ土類金属酸化物(例えば酸化マグネシウム)、次亜塩素酸カルシウム、ナトリウムミョウバン、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、石膏、リン酸塩(例えばリン酸アンモニウム)、リン酸、ハイドロタルサイト、ゼオライト、かんらん石(またはオリビン)および輝石(塩基性または超塩基性火成岩中に存在するものを含む)、塩化バリウム、ケイ酸およびその塩類、メタケイ酸およびその塩類、鉄ミョウバン石または他のミョウバングループの鉱物およびマガディアイトからなる群より選択される1種または2種以上の物質が含まれる。これら物質の1種または2種以上がペレット状にすべき混合物に添加されて、ペレットの特定の性質を増強し得る。任意の1種の鉱物添加剤についての添加割合の好ましい範囲は乾燥混合物の0%〜30%(重量)の範囲であり、より好ましい範囲は乾燥混合物の1%〜25%(重量)であり、更により好ましい範囲は乾燥混合物の2%〜20%(重量)であり、そして最も好ましい範囲は乾燥混合物の5%〜15%(重量)である。鉱物添加剤の添加により使用する赤泥の量が減ることが理解されるであろう。
【0062】
スラリー水
水を適当な割合で添加し、乾燥セメント系物質と混合すると、トバモライトゲルが形成される。このことはペレット形成に好都合である。しかしながら、水の添加量が少なすぎると、得られるトバモライトゲルは凝結して、マクロ孔度が望ましくない程に高レベルで、かつ強度が低い固体物質となり、他方、水の添加量が多すぎると、得られるトバモライトゲルは凝結して、孔寸法分布が小さく、透過性が低下し、かつ乾燥特性に乏しい固体物質となる。
【0063】
乾燥気味の混合物を得るよりも湿潤気味の混合物を得るほうが好ましい。乾燥した構成成分(ingredients:または原料)に水を添加し、滑らかなペーストになるまで混合しなければならない。添加すべき水の量の好ましい範囲は、使用する処理済赤泥ブレンド、ブレンド中に存在する酸中和水酸化物および酸化物鉱物の割合、および処理済赤泥の初期含水量に依存する。
【0064】
処理済赤泥およびポルトランドセメントを結合材として使用する場合、水添加量についての好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水15%〜55%(重量)、より好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水25%〜45%(重量)、更により好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水30%〜40%(重量)、そして最も好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水33%〜37%(重量)である。しかしながら、水の最適量も、使用する赤泥の含水量(これはバッチ間でばらつき得る)に依存し、従って、添加すべき水の厳密な量はオペレータの経験に基づいて決められることになる。
【0065】
シリカ供給物
トバモライトゲルを形成するための追加のシリカ源を提供するように他の成分を混合物中に含めてよく、他の成分にはケイ砂、珪藻岩、フライアッシュ、ボトムアッシュ、および破砕ケイ酸塩岩などが含まれ得、単独でまたは組み合わせて添加し得るが、これらに限定されない。これらシリカ源の添加量の好ましい範囲は0%〜30%(乾燥重量)、より好ましい範囲は3%〜20%(乾燥重量)、そして最も好ましい範囲は5%〜12%(乾燥重量)である。
【0066】
可塑剤および重合剤
可塑剤および/または重合剤(polymeriser)も、ペレット形成を容易にするため、湿潤混合物のワーカビリティを高めるため、凝結始発時間を抑制するため、硬化生産物に更なる結合強度を付与するため、および/またはペレットのスレーキングを防止すべく水を凝結ペレット中へ孔に沿って透過させるように濡れ性表面を提供するために、組成物に添加してよい。
【0067】
可塑剤および重合剤にはセルロース質物質(メチル−ヒドロキシエチル−セルロース(MHEC)およびヒドロキシプロピル−メチル−セルロース(HPMC)など)および重合化剤(ジブチルフタレート(DBP)など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
処理済赤泥ブレンド(例えばHPMC)を用いたペレット混合物に添加するには、高度に置換された有機可塑剤および重合剤(例えばHPMC)が好ましく、他方、低イオン強度系(例えば淡水で濯いだ処理済赤泥)では、それ程高度にではなく置換された可塑剤/重合剤(例えばMHEC)を使用してよく;可塑剤の塩析(過剰な塩負荷)により可塑剤の性能が低下する。好ましい可塑剤添加割合は乾燥混合物の約0.01%〜約8%(重量)であり、好ましい範囲は乾燥混合物の約0.4%〜約5%(重量)であり、更により好ましい範囲は乾燥混合物の約0.6%〜約3%(重量)である。最も好ましい範囲は乾燥混合物の約0.8%〜約2.0%(重量)である。
【0069】
空気連行剤(またはAE剤)
空気の連行により、ペレットに多孔性および透過性が付与される。空気は2つの方法の一方または双方により連行し得る。第1はスラリーを物理的に混合する際に小さい気泡を伴うようにすることであり、第2は空気連行剤でスラリーの有する化学条件下にて気体を放出させるか、スラリーを混合する間に空気を導入するよう支援することである。空気連行剤には過酸化水素、有機ポリマーおよび市販で入手可能な有機発泡剤が含まれ得る。
【0070】
過酸化水素はスラリーの有する化学条件下にて不安定になり、分解して酸素を生じ、この酸素は膨張して孔を設ける。気泡が上方に向かって移動することにより、ペレット透過性が付与される(孔の相互接続または連続)。
【0071】
過酸化水素は空気連行剤として様々な強度で使用してよく、好ましくは過酸化水素0.1%〜75%(重量対体積)、より好ましくは過酸化水素1%〜30%(重量対体積)、そして最も好ましくは過酸化水素3%〜10%(重量対体積)の範囲にある。過酸化水素3%(重量対体積)の場合、添加割合は好ましくは乾燥混合物単位kgあたり1mL〜25mLであり、より好ましくは乾燥混合物単位kgあたり2mL〜20mLであり、更により好ましくは乾燥混合物単位kgあたり5mL〜15mLであり、そして最も好ましくは乾燥混合物単位kgあたり8mL〜10mLである。空気連行剤の添加割合をより高くすることまたは濃度をより高くすることにより、多孔性(または孔度)および透過性が高められるが、物理的強度は低下する。
【0072】
リン酸塩形成剤
ペレット内でのアパタイト様鉱物および鉱物結晶間でのリン酸塩架橋部の発達により、強度上の更なる利点、特に濡れ強度が付与され得、これは空気連行剤と組み合わさってミクロ孔度の向上および安定性を助長する。また、リン酸塩は重金属を捕捉および結合するようにも機能する。リン酸塩形成剤をペレット混合物に添加してよく、これにはリン酸、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムが含まれ得る。
【0073】
リン酸塩形成剤はリン酸であり得る。リン酸は約0.01M〜約18M、好ましくは0.1M〜約5M、より好ましくは0.5M〜約3M、そして更により好ましくは約1M〜約2Mの強度を有し得る。強度1.5Mのリン酸の場合、好ましい添加割合は乾燥構成成分単位kgあたり0.2mL〜4mL、好ましくは乾燥構成成分単位kgあたり約1mL〜約3.5mL、より好ましくは乾燥構成成分単位kgあたり約1.5mL〜約2.5mL、更により好ましくは乾燥構成成分単位kgあたり約2mL〜約2.5mLであり得る。
【0074】
混合
乾燥材料は、水または他の湿潤材料(リン酸塩形成剤および/または空気連行剤を含む水性溶液など)を導入する前に、好ましくは<2mmに、より好ましくは<1mmに、更により好ましくは<500μmに、そして最も好ましくは<250μmに篩過し、そして材料の凝集を低減するよう十分に混合してよい。
【0075】
湿潤材料は、これらを混合して一緒にした後に乾燥材料に添加することが好ましいが、湿潤材料を個々に添加してもよい。湿潤構成成分を乾燥構成成分と個々に混合するのであれば、好ましい混合順序は、乾燥材料に水を添加し、その後、リン酸塩形成剤または空気連行剤を添加することである。
【0076】
混合プロセスの間に空気連行を確実に完了させるためにスラリーを過度に混合する(即ち湿潤気味から乾燥気味のスラリーとする)ことが好ましい。混合を一旦停止すると空気連行が実質的に減少してしまうので、好ましくは空気連行が完了するまで混合すべきである。
【0077】
混合は様々な手段で実施でき、これには市販で入手可能な剪断力ミキサー、および材料を転動させるコンクリートミキサーが含まれる。混合により、スラリー材料は好ましくは1分間あたり少なくとも10回、より好ましくは1分間あたり約20回、そして更により好ましくは1分間あたり約30回の割合(市販で入手可能なコンクリートミキサーでの1分間あたりの標準的回転数で示す)で、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも約10分間に亘って折り畳まれる。剪断力ミキサー(例えばパン用ミキサー)は典型的には、標準的なコンクリートミキサーより高い混合割合(または速度)で稼働し、機械の仕様に応じて混合時間を適宜に調整し得る。
【0078】
ペレット成型および乾燥
トバモライトゲルの強度は時間とともに、数ヶ月、更には数年もの期間に及んで上昇し続ける。約28日後、更なる強度上昇は次第に穏やかになる。セメントの凝結の始発はC3AおよびC4AF形のトバモライトの発達により0〜10日の期間に亘って起こり、C3SおよびC2Sトバモライトゲルは0〜400日の期間に亘って生じる。
【0079】
スラブキャスティング
本発明による組成物はキャスティングによりスラブとし得る。スラブ流し込みは正確な目盛を有する十分な容積のミキサー(例えばバッチ作業オフロード作業(batching works off road works))、および可塑剤などを混合するためのIBCミキサーを要し得る。全ての材料をスクリーニングする(またはスクリーンに通す)ことが必要であり得、よってセメント、石灰、酸化マグネシウムのミキサー入口の上方にて振動スクリーンを用いてよい。
【0080】
処理済赤泥スラリーをミキサーに加える前にポンプ移送してウェットスクリーンに通してよい。スラブ作製はスラブ運搬のためにバックホーを、また、持上げ用フックをスラブに成型する場合にはクレーンを要する。スラブは貯蔵のために積重ねてよく、倉庫内で乾燥させた後に破砕してよく、その後、バルクまたは袋詰めした状態などで運搬してよい。スラブはそのまま運搬してよく、または現場で破砕してもよい。スラブは露天で貯蔵してよい。
【0081】
破砕
一旦硬化させた後、スラブまたは粗ペレットブロックを破砕または機械的にチッピングもしくは切断/剪断し、そして分類して任意の所望寸法を有するペレットを得るようにしてよい。ペレットは、好ましくはそれを充填するカラムの内径の約1/10未満の寸法、より好ましくはカラムの内径の約1/20未満の寸法、更により好ましくはカラムの内径の約1/40未満の寸法、そして最も好ましくはカラムの内径の約1/50未満の寸法に破砕される。
【0082】
典型的には、破砕したペレットは約0.05mm〜100mmの好ましい範囲の寸法分布を有し、より好ましい寸法分布範囲は約0.1mm〜約10mmであり、より好ましい寸法分布範囲は約0.2mm〜約5mmであり、そして最も好ましい寸法分布範囲は約0.5mm〜約2.5mmである。しかしながら、大幅に異なる寸法範囲を有するペレットを、特定の用途に対して必要とされるように選択してよい。例えば、大きい粒子(玉石の寸法)はストリーム(または河川)床用途に使用するのに必要とされ得、これに対して、0.5mm〜2mmの寸法を有するペレットは小さい水処理カラムに最適であり得る。
【0083】
粒子の形成
本発明の組成物は粒状ブレンドの形態で提供され得、または、使用した破砕または切断法に応じて混合成分で構成された細礫、ペレット、タブレット、レンガ(またはブリック)、チャンクまたはブロックとして提供され得る。好ましくは、本発明の組成物は、組成物の成分の密着混合物でできたペレットの形態で提供される。いずれの粗粒子も好ましくは破砕され、切断/剪断され、または細砕される(もしくは挽かれる)。この破砕、切断または細砕後、粒子を篩過またはスクリーニングして、各用途につき所望される寸法範囲を得る。寸法は典型的には0.05mm〜10cmの範囲にある。しかしながら、破砕、切断または細砕により、0.05mm未満の直径を有する粒子も存在し得る。0.05mm未満の材料は通常、透過性を使用の間中維持するために粒子から除去する必要があるが、必ずしも廃棄しなくてよい。
【0084】
また、破砕、細砕または切断後に除去した微細な材料は、液圧プレスを用いて均質混合物をペレット状に圧縮することにより、または圧縮ローラもしくは造粒機または簡便または効率的であると考えられる任意の他の同様の手段によりペレット形成し得る。運搬および中程度に粗雑な扱いに耐えるのに十分な強度および安定性を有する圧縮したペレットを、約50MPa以上の圧縮に付す(または加圧する)ことにより容易に形成できる。しかしながら、約150MPa以上の加圧が好ましく、そして、約250MPa以上の加圧がより好ましい。約50、100、150、200、250、300、350または400MPa、または約50〜500MPa、または約100〜450MPa、または約150〜400MPa、または約200〜350MPaの加圧を使用し得る。また、強固かつ安定なペレットは、均質混合物に水を添加することにより調製した湿ったスラリーより作製することもできる。混合物を殆どまたは全く圧縮せずにローリングすることによりペレットを適切な含水量で作製できる。所望であれば、市販で入手可能なペレット結合材(化学、医薬またはこれに類する産業にて使用されるもの、例えばメチルセルロースまたはその他のセルロース誘導体)を混合物に添加して、更なる物理的強度を付与することができる。
【0085】
本発明による組成物は水質管理バリア、地下反応バリアおよび濾過カラムを含む透過性水処理システムに使用できる。
【0086】
水質管理バリア
本発明による組成物は、小川または排水路にて水流を止めることなく酸を中和し、または水から金属、半金属およびいくつかの他の潜在的汚染物質(例えばシアン化物およびリン酸塩)を除去するために小川または排水路に配置され得る透過性バリアを作製するために使用できる。水が水路にある水質管理バリアを通って流れるときに、水質が実質的に改善される。
【0087】
本発明による組成物は必要に応じて水路に配置され得る多孔性バッグまたは同様の容器に充填され得る。好ましい容器は、微細な孔寸法(<5ミクロン)を有するジオテキスタイルバッグの形態であるが、その他の材料も容器を構成するために使用できる。
【0088】
このバリア(または壁)は以下のものを含む任意の寸法または形状に構成してよい:
A)15kg〜30kgのペレットを保持する枕状のバッグ;洪水管理に使用される砂袋のようなもの。このバッグは必要に応じてより大きくても、より小さくてもよいが、必要な場所に手で設置するにはこれが便利な寸法である。このバッグは小さい排水路または水路に一時的に設置するのに適切であり得る。
B)ソーセージ状で、15kg〜50kgまたはそれより多くの本発明による組成物でできたペレットを保持するように設計されたバッグ。寸法につき制限はないが、これより大きいソーセージ状物は所定位置に配置するのがより困難であり得、持上げ機械を用いる必要があり得る。このバッグはより大きな水路に使用するのに、または汚染水が溢れ出たり意図的でなく放出されるのを包囲するための緊急事態用のバリアを作製するのに適切であり得る。
C)細長いバッグが台形断面および排水路または水路の一方から他方まで延在するように設計された長さを有するように設けられ得、そしてこれは水路の底部に固定される。この設計を有するバッグは水流の体積が大きく変動する排水路または水路においてより永続的に使用するのに適切であり得る。このバッグは、流速が小さくかつ汚染濃度が高いときに水を処理するのに適切であり得る。流速が小さくかつ汚染物質がかなり希薄であるときは水処理はそれ程重要でなく、そのような場合、バッグ内の組成物の酸中和または汚染物質捕捉能を低下させることなく、水が水質管理バリアの頂部の上方を単に流れ過ぎる。よって、必要なときに水を処理し、排出条件により処理を要しないときは処理しない。
【0089】
本発明による組成物を収容するバッグは、汚染された水が溢れたときに必要となる場所または金属汚染された酸性水の放出に対して何らかの緊急事態対応が必要となり得る場所に近い位置に備えられ得る。後者の意味では、このバッグは油の溢れに迅速に応答するように貯蔵されたバリアと同様に使用され得る。水質管理バリアの透水係数は重要である。本発明による組成物の構成成分および構成成分を処理するための処理工程は、個々の用途の要件に合致するように選択し得る。
【0090】
本発明による組成物の水処理能には限界があるため、組成物を長期に亘る用途に使用する場合は、組成物の性能をモニターする必要がある。組成物の酸または金属除去能が尽きた場合には交換する必要があろう。
【0091】
モニタリングは下流の水質またはバッグの内容物の副標本を調べること、およびバッグ内の組成物の残りの酸中和および金属結合能を試験することを伴い得る。捕捉する汚染物質のタイプに応じて、組成物の水処理能が消耗すれば、組成物を土壌調整剤または改良剤として農業に再使用し、これによりバッグ内の組成物を交換するコストを低減することがしばしば適切であり得る。
【0092】
地下透過性反応バリア
本発明による組成物は、水流を妨げることなく酸を中和し、また地下水から金属、半金属およびいくつかの他の潜在的汚染物質(例えばシアン化物およびリン酸塩)を除去するために地中に配置され得る透過性地下反応バリアを提供するために使用できる。地下水が透過性地下反応バリアを通って流れるときに、地下水の水質が改善される。
【0093】
地下反応バリアまたは処理壁は永久的、半永久的または交換可能な壁またはバリア部の構造体を含み得、この各々は本発明による組成物のペレットを保持する容器を各々含んで成る。壁またはバリアは、地下水により運ばれる汚染物質プルームの流路を横断して設け得る。本発明による組成物を含む地下反応バリアが交換可能であるとき、ペレットの除去を助けるべく処理領域にペレットを閉じ込めるように、処理領域に対してジオテキスタイルのライニング(または内張)を設けてよい。処理領域の全体を覆う単一のジオテキスタイルライナー内に組成物でできたペレットを収容し得る。別法では、バリアまたは壁を上記ようなジオテキスタイルバッグとしても、またはこれを含むものとしてもよい。地下反応バリアを形成するようにバッグを処理領域内で積重ねてよい。
【0094】
汚染された地下水は動水勾配により地下反応バリアを静的に通過し得、そして水中の汚染物質を物理的、化学的および/または生物学的方法によって除去し得る。処理すべき地下水中の汚染物質に応じて、沈殿、収着、酸化または還元、固定または分解により反応を生じさせ得る。
【0095】
地下反応バリアは水を地表まで運ぶ必要なく、汚染物質処理を現場で行い得るので、地下水浄化のための常套のポンプ・アンド・トリート(ポンプ移送そして処理)法に対していくつかの利点がある。加えて、本発明による処理は汚染物質を反応領域に通過させるために自然に生じた動水勾配を利用しているので、ポンプを稼働させるためにエネルギーを連続的に入力する必要がない。また、地下反応バリアの交換または再生は周期的なものでしかなく、地下反応バリアが消耗し、またはバリア寿命の間に詰まったときに必要となるものである。
【0096】
バリアは汚染された地下水を大量に処理する能力を有するように通常設計される。コストのために、問題全体の一部のみを処理するバリアを設置することもある。バリアの処理能が枯渇したとき、バリアを除去および交換するよりも、既に設置しているバリアのやや上流に新たなバリアを設置することがより簡単で安価であり得る。そのような方法では、処理プログラムのコストを多年にまたがって分散させることができる。
【0097】
地下バリアを設置するため、地下水プルームを横断する簡単な溝を堀り、そして反応材料で埋め戻してよい。溝は専門家用溝掘り機を用いて掘ることができる。溝の寸法は反応材料の透過性、周囲の土質材料の透過性、汚染物質除去反応がバリア内で起きるために必要な滞留時間、流入水中の汚染物質の濃度、汚染された地下水プルームの幅および深さ、および地下反応バリアの設計寿命に応じて決め得る。加えて、地下水流を反応バリアへと導くために他の土工事を施し得る(例えば遮水壁と反応ゲート式(funnel and gate system))。本発明によるバリアの透過性は組成物の粒子寸法を増大または減少させることによって制御できる。
【0098】
濾過/反応カラムまたはタンク
本発明による組成物は、水流を酷く妨げることなく酸を中和し、また水中の金属または半金属およびいくつかの他の潜在的汚染物質(例えばシアン化物およびリン酸塩)を除去するために透過性カラムまたはタンクに充填するために使用できる。
【0099】
この水は産業廃水、汚染された飲用水または酸性鉱山廃水であり得る。
【0100】
水を重力下にてカラムまたはタンクに通じ(直接フィードとしても、サイフォンによってもよい)、ポンプ移送でカラムに通じ、または真空下にて吸引してカラムまたはタンクに通じることができる。水が透過性カラムまたはタンクを通って流れるときに、水質が実質的に改善され得る。
【0101】
本発明に従う濾過/反応カラムまたはタンクは、本発明による組成物を含むカラムまたはタンクであってよい。濾過/反応カラムまたはタンクは本発明による組成物が充填された適切なチューブであり得る。特定の汚染物質を除去するために一方の端部から他方の端部へ水が通され得る。汚染物質は沈殿、収着、酸化または還元、固定または分解反応により除去でき、または水中懸濁粒子に付着させることにより除去できる(これら粒子は連続孔空間を通過できないのでペレットを物理的に分離することに除去される)。カラムまたはタンクはほぼ任意の材料から構成でき、これには竹、PVCパイプ、ポリエチレンドラム、ステンレス鋼パイプ、およびポリカーボネートチューブ、または任意の他の適当な材料が含まれる。少なくとも一方の端部をキャップして濾過/反応媒体を容器内に保持すべきである。濾過/反応カラムまたはタンクを用いることの利点は、過負荷が起こったときに濾過/反応媒体を容易に置換できること、物理的な詰まりが起きているかを判断するためにシステムを通る流速を簡単にモニターできること、流速および保持時間を容易に調整できること、流出水の水質を簡単にモニターできること、カラムまたはタンクをあらゆる所望の高さおよび直径に構成できること、および必要に応じて逆流可能なようにカラムまたはタンクを設計できることである。
【0102】
濾過/反応カラムまたはタンク内の濾過/反応媒体はリッジ付きチューブ縁部と接触しているので、これら境目間で選択流路がいくつか生じ得る。加えて、微粉状媒体は詰まり易いので、濾過/反応カラムまたはタンクに極微粉状媒体を使用することはより好ましさが劣る。このような問題を克服するため、カラムまたはタンク内のペレットの粒子寸法をカラムまたはタンクの内径に基づいて制限し、よって、ペレットはカラムまたはタンクの内径の1/10未満の粒子寸法を有すべきである。加えて、カラムまたはタンクにおける処理は、ペレットの粒子寸法がカラムの内径の1/50未満であるときに最も効率的である。しかしながら、濾過/反応媒体が実質的に詰まるのを防止するには、ペレットの80%以上を100μmより粗大とべきであり、好ましくはペレットの90%以上を100μmより粗大とべきであり、より好ましくはペレットの95%以上を100μmより粗大とべきであり、そして最も好ましくはペレットの98%以上を100μmより粗大とべきである。
【0103】
濾過/反応媒体の詰まりを防止するために流入水中の懸濁粒子の予備濾過を粗粒砂および砂利のフィルターを用いて行うことができ、このフィルターは逆流により蓄積物を除去できる。処理済赤泥ペレットの過負荷が起こると、濾過/反応カラムを単に解体してペレットを抜き出し、交換し、および処分できる。工業プラントでは、いくつかのカラムを直列および/または並列に使用してよく、これにより、他のカラムが過負荷状態になっているときに新しいカラムを利用して廃水を処理することができる。
【0104】
本発明による多孔性ペレットの他の用途
本発明による組成物でできたペレットは、栄養物を除去するためまたは藻類の過剰増殖を防止するために、魚用水槽、観賞用の池または他の水塊における砂利として使用できる。
【0105】
本発明のもう1つの態様において、本発明に従う組成物でできたペレットのバッグを水塊中に吊下げてよく、または浮遊島として形成して、水を処理するようにできる。
【0106】
可動または固定式の水処理タンクを設けてよく、このタンクに本発明による組成物のペレットを充填して、水を連続的および必要なときのいずれにでも処理するようにできる。
【0107】
別法では、粗い砂利または玉石の寸法のペレットを流動している水塊(例えば小川)に直接配置して、酸を中和し、または金属汚染物質を除去するようにしてよい。
【0108】
また本発明は、潜在的に酸を形成する物質(硫黄および/または窒素の酸化物など)を含有するガスを処理するため、または極性有機分子を除去するようにガスを処理するためのカラムを提供することにも及ぶ。
【0109】
本発明のもう1つの態様において、本発明に従う組成物でできた多孔性ペレットブランケットが臭気放出を制御するために提供される。
【0110】
従って、本発明の教示内容に追従すれば、赤泥を含む組成物でできた安定で強固な多孔性粒子を作製できる。この粒子はペレットの形態であり得、高い酸中和・金属結合能に加えて大きな表面積を有し、また保持し得る。この粒子が本質的に有する透過性により、流水をこの材料に通過させおよびその周囲に流すことができる。乾燥させたとき、この粒子が塵を形成する傾向は低い。
【0111】
本発明の第8の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料であって、セメント系材料およびボーキサイト精製残留物の混合物を含む多孔性粒状材料が提供される。
【0112】
孔の体積は粒状材料の体積の10%〜90%であり得る。孔の少なくとも10%は開放セルまたは連続孔であり得る。粒状材料の孔は分布した孔寸法を有する。粒状材料の孔寸法は0.1〜2000μmの範囲にある。
【0113】
本発明の第9の要旨によれば、汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、粒子の各々がセメント系材料およびボーキサイト精製残留物の混合物を含む多孔性粒状材料が提供される。
【0114】
セメント系組成物
本発明の第10の要旨によれば、部分中和赤泥(または部分的にもしくは一部が中和された赤泥)およびセメントを含むセメント系組成物であって、部分中和赤泥が、カルシウム、マグネシウムまたはそれらの組合せによって付与される、炭酸カルシウム等量で単位リットルあたり少なくとも3.5ミリモルの全硬度を有する水と接触することにより予備処理されているセメント系組成物が提供される。
【0115】
赤泥の予備処理において、そのpHは最大約10.5かつ最小約8.2の値に低下し得る。赤泥のpHは8.2〜10.5の範囲内であればどの値にでも都合よく低下させ得る。この範囲において可能な限り低い値に低下させることが好ましい。pHは約8.5〜10、またあるいは約8.5〜9.5、またあるいは約8.5〜9.5、また別法では約9〜10、また更に別法では約9.5〜10、または約9〜約9.5に低下させ得る。
【0116】
本発明の第11の要旨によれば、セメント系組成物の製造方法であって:
(a)バイエル法より回収した赤泥を、カルシウム、マグネシウムまたはそれらの組合せによって付与される、炭酸カルシウム等量で単位リットルあたり少なくとも3.5ミリモルの全硬度を有する水と接触させて、部分中和赤泥を得ること;および
(b)部分中和赤泥をセメントと混合して、セメント系組成物を得ること
を含む方法が提供される。
【0117】
工程(a)において、赤泥のpHは最大約10.5かつ最小約8.2の値に低下し得る。赤泥のpHは8.2〜10.5の範囲内であればどの値にでも都合よく低下させ得る。この範囲において可能な限り低い値に低下させることが好ましい。pHは約8.5〜10、あるいは約8.5〜9.5、別法では約9〜10、更に別法では約9.5〜10、または約9〜約9.5に低下させ得る。
【0118】
本発明による方法は、工程(a)の後および工程(b)の前に、
工程(a1)部分中和赤泥を乾燥させて乾燥固体材料を得ること
を含み得る。
【0119】
本発明のこの要旨による方法は、工程(a1)の後および工程(b)の前に、
工程(a2)工程(a1)の乾燥固体材料を粉砕して部分中和乾燥粉砕赤泥を得ること
を更に含み得る。
【0120】
セメントは組成物中に約1重量%〜約99重量%の濃度で存在し得、また部分中和赤泥は組成物中に約99重量%〜約1重量%の濃度で存在し得る。
【0121】
工程(c)における粉砕は破砕(crushing)および/または微粉砕(pulverising)により実施できる。これは任意の破砕機および/または微粉砕機(コーンクラッシャー、ロッドミル、ボールミル、ジョークラッシャーまたはオービタルクラッシャーを含み得る)により実施してよい。
【0122】
また本発明は、本発明による方法によって作製されたセメント系組成物にも及ぶ。
【0123】
オプションとして、本発明による方法は、工程(a)の後および工程(b)の前に、
赤泥(または部分的に低下させた赤泥)を酸と接触させて、赤泥のpHの最大約10.5かつ最小約8.2への全低下の一部を行う工程
を含む。
【0124】
更なるオプションとして、この方法は、工程(a)の後および工程(b)の前に、
赤泥(または部分的にpHを低下させた赤泥)から液相を分離する工程
を含み得る。
【0125】
本発明による方法の工程(a)において部分中和赤泥の予備処理に使用する水は、カルシウム+マグネシウムにより付与されるその全硬度を、単位リットルあたり炭酸カルシウム等量で3.5ミリモル以上とする必要がある。しかしながら、10.5未満のpHを達成するには、カルシウム+マグネシウムにより付与される水の全硬度は、単位リットルあたり炭酸カルシウム等量で約5ミリモルより高いことが好ましく、より好ましくは単位リットルあたり炭酸カルシウム等量で10ミリモルより高く、更により好ましくは単位リットルあたり炭酸カルシウム等量で約15ミリモルより高い。水はカルシウムおよびマグネシウムの少なくとも一方について基準量および処理量を有することが好都合である。カルシウムについての基準量は約150mg/L(1.5ミリモル/リットル 炭酸カルシウム等量)であり、マグネシウムについての基準量は約250mg/L(2.5ミリモル/リットル 炭酸カルシウム等量)である。カルシウム 約200〜約300mg/Lおよびマグネシウム 約300〜約750mg/Lを含有するブラインにより満足できる結果が得られているが、処理を効率的に行うには、300mg/Lを超えるカルシウム濃度および約750mg/Lを超えるマグネシウム濃度が好ましいことが判明している。ある特定の条件組に対する最善の濃度は、溶液中で形成され得る様々な化合物の溶解度、溶液の温度およびセメント系組成物を使用する使用および環境条件に依存する。
【0126】
よって、工程(a)における部分中和赤泥の予備処理に使用する水は、一般的な水道水におけるよりも著しく高い濃度のカルシウムおよび/またはマグネシウムを含有することが好ましい。水道水または飲用水の水質に適用される規則は通常、硬度(これは一般的にCaCO3等量で示される)を基準とするガイドラインを含んでいる。全硬度(Ca硬度+Mg硬度)は飲用水では500mg/L未満とすべきものとされ、これは単位リットルあたり約5ミリモル未満に等しい。よって、CaおよびMgの合計濃度は単位リットルあたり約5ミリモル未満とすべきであり、これは本発明による方法の工程(a)において赤泥を中和または部分中和するのに使用するCaおよびMg濃度に比べて極めて低い。硬水だと、石鹸およびその他の洗剤は泡立たない。それどころか、水面にスカムが形成される。硬度に関する基準範囲は以下の通り:
軟水: 0〜59mg/L(0〜0.59mM)
中程度の軟水: 60〜119mg/L(0.6〜1.19mM)
硬水: 120〜179mg/L(1.2〜1.79mM)
非常な硬水: 180〜240mg/L(1.8〜2.4mM)
極めて非常な硬水: >400mg/L(>4mM)
【0127】
60mg/L未満の硬度を有する水は、鉄および鋼の継手、ポンプおよびパイプにおける腐食電位が上昇しており、他方、350mg/Lより高い硬度を有する水はファウリングおよびスケール形成の可能性が増大する。従って、上述の望ましくない作用を回避するには、飲用水は350mg/L(これは約3.5ミリモルのCa+Mgに等しい)以下の全硬度を有するべきである。良質の飲用水は好ましくは60〜180mg/L(これは約0.6〜1.8ミリモルのCa+Mgに等しい)の範囲にある全硬度を有する。
【0128】
本発明のこの要旨による方法の工程(a)において、赤泥のpHは8.2〜10.5の範囲内であればどの値にでも都合よく低下させる。pHは約8.5〜10、あるいは約8.5〜9.5、またあるいは約8.5〜9、また別法では約9〜10、また更に別法では約9.5〜10、または約9〜約9.5に都合よく低下させる。
【0129】
本発明のこの要旨による方法の工程(a)において、赤泥の全アルカリ度は、炭酸カルシウムアルカリ度換算で、約200mg/L〜1000mg/L、あるいは約200mg/L〜900mg/L、あるいは約200mg/L〜800mg/L、あるいは約200mg/L〜700mg/L、あるいは約200mg/L〜600mg/L、あるいは約200mg/L〜500mg/L、あるいは約200mg/L〜400mg/L、あるいは約200mg/L〜300mg/L、あるいは約300mg/L〜1000mg/L、あるいは約400mg/L〜1000mg/L、あるいは約500mg/L〜1000mg/L、あるいは約600mg/L〜1000mg/L、あるいは約700mg/L〜1000mg/L、あるいは約800mg/L〜1000mg/L、あるいは約900mg/L〜1000mg/L、好ましくは300mg/L未満に低下し得る。
【0130】
この方法の工程(a)において、pHは好都合には約10.5未満、好ましくは約9.5未満、より好ましくは約9.0未満に低下し、また、全アルカリ度は、炭酸カルシウム等量アルカリ度換算で、300mg/L未満に低下し、および好ましくは200mg/L未満に低下する。
【0131】
好ましい組成物は50%〜95%(乾燥重量)の部分中和赤泥および5%〜50%(重量)のセメントを含む。より好ましい組成物は70%〜90%(乾燥重量)の部分中和赤泥および10%〜30%(乾燥重量)のセメントを含む。最も好ましい組成物は80%〜85%(乾燥重量)の部分中和赤泥および15%〜20%(重量)のセメントを含む。
【0132】
本発明の1つの態様において、組成物は少なくとも30重量%の部分中和赤泥を含む。もう1つの態様において、組成物は少なくとも50重量%の部分中和赤泥を含む。
【0133】
本発明者らは、部分中和赤泥でできたセメント系組成物が高い酸中和および金属結合能を維持していることを見出した。このような組成物は黄鉄鋼酸化の結果または任意の他の手段により生じる酸分(acidity)を処理することができ、また硫酸塩耐性を有する。また本発明者らは、特定の用途の要請により付加される所定の限界に至るまで、部分中和赤泥が組成物の強度に悪影響を及ぼさないセメント代替物として機能でき、また、急な岩肌に付着して、危惧される岩の落下に抗して岩を安定化させ得ることを見出した。更に、本発明による組成物は乾燥させたときに知覚し得るほどの塵の問題を引き起こさず、そして極めて微細なテクチャまたは表面のディテール(または細部もしくは装飾)を有する物品に成型可能であることを見出した。
【0134】
本発明による組成物は従来のセメント系組成物に対して、実質的な強度低下を招かない代替物として使用できる。
【0135】
本発明による組成物は、型表面の微細なテクスチャディテールを成型表面に転写して保持するように成型できるキャスタブル材料を提供するために使用できる。
【0136】
本発明の1つの態様において、セメントの0.2重量%〜3重量%の超可塑剤、例えばMAPEI(商標) N10およびR14、MAPETAR(商標)またはMAPEPLAST RMXを本発明による組成物に添加して吹付けコンクリート(またはショットクリート)を得ることができ、この吹付けコンクリートは酸中和能が増大しており、重金属を捕捉し、および垂直壁面に噴霧できるものである。
【0137】
本発明のもう1つの態様において、追加の水と、セメントの0.2重量%〜3重量%の超可塑剤、例えばMAPEI(商標) N10およびR14、MAPETAR(商標)またはMAPEPLAST RMXとを本発明による組成物に添加してグラウトを得ることができ、このグラウトは岩または土壌物質中に圧力注入して、その強度を増加させ、かつその浸透性を低下させ、および任意の酸分を中和し、かつ孔流体中に存在し得る任意の微量金属を捕捉し得るものである。
【0138】
本発明のもう1つの態様において、組成物を押し出して多孔性ペレットとし、続いてこれを硬化および乾燥させる。その後、乾燥したペレットを酸性水改善のために使用できる。このような改善(または浄化)は地下水ダクトもしくは帯水層にて、または処理容器内で行い得る。
【0139】
セメント系組成物のための部分処理赤泥
セメント系組成物のための部分中和赤泥は、水性溶液中のカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンを添加することによって、または酸を添加することによって、または二酸化炭素を注入することによって、または石膏などの鉱物を添加することによって、あるいはこれらの方法のいくつかを組み合わせることによって、ボーキサイト精製所からの赤泥を少なくとも部分的に反応させることにより得ることができる。
【0140】
別法では、部分中和赤泥は、ボーキサイト精製所からの赤泥を、チタン精製プロセスから回収した鉄含有残留物、鉄含有土壌、鉄含有岩材(鉄鉱石採掘の副産物として生じる粉体など)またはボーキサイトからなる群より選択される材料と少なくとも部分的に反応させることにより得ることができる。
【0141】
国際特許出願PCT/AU03/00865に記載されているように(この開示内容はその全体が本明細書に組み込まれる)、ボーキサイト精製所からの赤泥はカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンと反応させ得る。少なくとも部分中和した赤泥を製造し得るもう1つの方法は、ボーキサイト精製所からの赤泥を、赤泥の反応pHを10.5未満に減少させるのに十分な量の海水(好ましくは、簡便には太陽の作用で、蒸発により濃縮した海水)と反応させることによるものである。例えば、未処理赤泥が約13.5のpHおよび約20,000mg/Lのアルカリ度を有する場合、約5倍体積の世界平均的海水を添加することにより、pHを9.0〜9.5に、およびアルカリ度を約300mg/Lに低下させることが判明した。更に、国際特許出願PCT/AU03/00865は、ボーキサイト精製所からの赤泥1部を、基準量および処理量のカルシウムイオンと基準量および処理量のマグネシウムイオンとを含有する水5重量部と、赤泥の反応pHを10.5未満とするのに十分な長さの時間に亘って混合することにより、ボーキサイト精製所からの赤泥をカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンと反応させることを教示している。カルシウムおよびマグネシウムイオンの基準量は、処理溶液および赤泥の合計体積単位リットルあたり、それぞれ8ミリモルおよび12ミリモルである。カルシウムイオンの処理量は、赤泥の全アルカリ度単位モルあたり少なくとも25ミリモル(炭酸カルシウム等量アルカリ度換算)であり、他方、マグネシウムイオンの処理量は、赤泥の全アルカリ度単位モルあたり少なくとも400ミリモル(炭酸カルシウム等量アルカリ度換算)である。適切なカルシウムまたはマグネシウムイオン源には、カルシウムまたはマグネシウムの可溶性または部分可溶性塩、例えばカルシウムおよびマグネシウムの塩化物、硫酸塩または硝酸塩が含まれる。
【0142】
部分中和赤泥の一般的組成は、その元となったボーキサイト鉱石の組成、そのボーキサイトを処理した精製所で使用された操作手順、および赤泥を得た後にどのように処理したかに依存する。
【0143】
ボーキサイト精製所からの原料赤泥の中和は、可溶性のCaおよびMg塩の添加により可溶性の水酸化物および炭酸塩が低溶解性の鉱物沈殿となったときに達成される マクコンシー(McConchie),D.、クラーク(Clark),M.W.、フォークス(Fawkes),R.、ハナハン(Hanahan),C.およびデービス−マクコンシー,F.、2000年、「酸性硫酸塩土壌、硫化物鉱山尾鉱および酸性鉱山廃水の管理における海水で中和したボーキサイト精製残留物の使用(The use of seawater-neutralised bauxite refinery residues in the management of acid sulfate soils, sulphidic mine tailings and acid mine drainage)」、第3回クイーンズランド環境会議、1、第201〜208頁、ブリスベン、オーストラリア。この方法は塩基度を約9.0のpHまで低下させ、可溶性のアルカリ分(alkalinity)の殆どを固体のアルカリ分に変える。より詳細には、赤泥廃棄物中の水酸基イオンの大部分が海水中のマグネシウムとの反応により中和されてブルース石[Mg3(OH)6]およびハイドロタルサイト[Mg6Al2O3(OH)16・4H2O]を形成するが、いくらかは追加のベーマイト[AlOOH]およびギブサイト[Al(OH)3]の沈殿に消費され、そしていくらかは海水中のカルシウムと反応してハイドロカルマイト[Ca2Al(OH)7・3H2O]およびp−アルミノハイドロカルサイト[CaAl2(CO3)2(OH)4・3H2O]を形成する。
【0144】
部分中和赤泥は豊富なAl、Fe、MgおよびCaの水酸化物および炭酸塩を含み、コンクリートの凝結のためのトバモライトゲル構成要素を提供するか、コンクリートの早期凝結を誘発するのに適切な添加剤を提供する。逆に、部分中和赤泥中の石膏含量が増加すると凝結速度が遅くなり得る。
【0145】
ボーキサイト精製所からの赤泥が海水、または蒸発により濃縮した海水、または他のカルシウムおよびマグネシウムに富むブライン、または可溶性カルシウムおよびマグネシウム塩、またはこれら選択肢のいくつかの組合せを用いて部分中和されている場合、部分中和赤泥は高い酸中和能(部分中和赤泥単位kgあたり2.5〜7.5モルの酸)を依然として有する。また、これは極めて高い微量金属捕捉能(部分中和赤泥単位kgあたり1,000ミリグラム等量以上の金属)も有する。更に、これはリン酸塩および他のいくつかの化学種を捕捉および結合する高い能力を有する。部分中和赤泥は個々の用途に適するように様々な形態(例えばスラリー、粉末、ペレットなど)で製造できるが、そのいずれもが、高い酸中和能にもかかわらず、中性に近い土壌反応pH(10.5未満およびより典型的には8.2〜8.6)を有する。部分中和赤泥の土壌反応pHは中性に十分近く、また、そのTCLP(毒性指標浸出法)値は十分低く、特別許可を得る必要なく運搬および使用できる程度である。
【0146】
部分中和赤泥を本発明の組成物および方法に使用する格別の利点は、可溶性塩濃度(特にナトリウム濃度)が未処理赤泥中の濃度より実質的に低いことである。この効果は、ナトリウムまたは塩度に対して敏感な環境に排出されることとなる処理水の塩度が上昇する場合や、灌漑用水として使用されることなる排水の塩度が植物の生長に悪影響を及ぼし、潜在的効果がより低い場合に特に重要であり得る。更に、可溶性塩濃度の減少は、本発明に従うセメント系組成物の最終強度の増加に寄与するものである。
【0147】
コンクリート強度はトバモライトゲル形成により決まる。最も典型的には、トバモライトゲルは水硬性セメントの凝結において生じる。水硬性セメントには、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、ハイアルミナセメント、および他の市販で入手可能なセメント結合剤を含む。本明細書において、表現「セメント」は水硬性セメントの上記の例を含むものとして理解されるべきである。
【0148】
トバモライトゲルには通常、次の4つの主要構成要素が存在する:ケイ酸三カルシウム(C3S)、ケイ酸二カルシウム(C2S)、アルミン酸三カルシウム(C3Al)および鉄アルミン酸四カルシウム(C4AlFe)。
【0149】
赤泥を部分中和する場合(ブライン添加によっても、海水もしくは濃縮海水添加によってもよく、また、可溶性マグネシウムおよびカルシウム塩を補充するか否かに関わらず)、赤泥のアルカリ分は可溶形(その殆どは炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムである)から不溶形(これは一連のアルミノ−ヒドロキシ炭酸塩として固体となって沈殿する)に変わる。過剰のナトリウムは残りのブレーンと一緒に系外に排出される。アルミノ−ヒドロキシ炭酸塩は酸アタックに抗するpH緩衝システムとして機能する。しかしながら、アルミノ−ヒドロキシ炭酸塩は、セメント(OPCを含む)をセメント系組成物中の部分中和赤泥で少なくとも部分的に置換し、その際に組成物の強度を著しく低下させることのないように、追加のポゾラン材料も提供する。
【0150】
中和されていない赤泥(乾燥または湿潤状態)は高いNa含量を有し、これはセメント系組成物の強度発現に対して不利益となる。そのようなセメント系組成物における一価のアルカリ金属(NaおよびK)はトバモライトゲルと相互作用して、アルカリ骨材反応、アルカリ炭酸塩反応およびアルカリシリカ反応を起こす(www.pavement.comを参照のこと)。
【0151】
アルカリ骨材反応はモルタルまたはコンクリートにおける化学反応であって、ポルトランドセメントまたは他の供給源に由来するアルカリ金属(ナトリウムまたはカリウム)と、骨材中に存在する特定の化合物との間の化学反応である。ある条件下では、この反応によってコンクリートまたはモルタルの有害な膨張が生じ得、これは強度発現に対して不利益となる。
【0152】
アルカリ炭酸塩反応はアルカリ金属(ナトリウムまたはカリウム)と、ある種の骨材中に存在する特定の炭酸塩岩(特にカルサイト、ドロマイトおよびドロマイト質石灰石)との間の化学反応である。この反応の生成物も使用中のコンクリートに異常膨張およびひび割れを生じ得る。
【0153】
アルカリシリカ反応はアルカリ金属(ナトリウムまたはカリウム)と、ある種の骨材中に存在する特定のケイ質岩または鉱物(オパリンシリカ、チャート、カルセドニー、非常に硬い歪んだ石英(flint strained quartz)および酸性火山ガラスなど)との間の化学反応である。この反応の生成物も使用中のコンクリートに異常膨張およびひび割れを生じ得る。
【0154】
セメント系組成物中の高いナトリム含量によって引き起こされる膨張およびひび割れはシリカゲルの形成により悪化し得、これもまた最終強度を低下させ、製品寿命を短縮する。
【0155】
水洗した(高い割合で存在する水酸化物を除去するため)赤泥は、ナトリウム含量が著しく低下しているが、酸中和能も殆どない。このような赤泥は、本発明によるセメント系組成物の酸中和能に対し十分寄与しないため、本発明によるセメント系組成物に使用するには望ましくない。加えて、このような赤泥中にはアルミノ−ヒドロキシ炭酸塩が存在しないため(中和の間にCaおよびMgカチオンの添加により沈殿させていないからである)、本発明によるセメント系組成物に導入される部分中和赤泥のポゾラン能(pozzolanic attributes)を増強することもない。ポゾラン性を追加し、かつナトリウム含量を未中和の赤泥より低下させることにより、独特かつ改善された性質が本発明の組成物に付与される。
【0156】
水およびセメント系組成物
水はトバモライトゲルの水和/活性化ならびに混合の間の潤滑に重要である。混合物中の水の量は混合コンシステンシー、ワーカビリティおよび最終強度に大きく影響する。水は少なすぎても、多すぎても強度を低下させる。また、水が少なすぎるとワーカビリティに支障をきたす。強度に関しては、湿潤気味の混合物を得るよりも乾燥気味の混合物を得るほうが好ましい。吹付けコンクリートでは、乾燥過度より湿潤過度の混合物を得ることが好ましく、また殆どのグラウト用途では湿潤混合物を使用することが必須である。乾燥構成成分に水を添加し、滑らかなペーストになるまで混合(またはブレンド)しなければならない。添加すべき水の量の好ましい範囲は、使用する部分中和赤泥ブレンド、ブレンド中に存在する酸中和水酸化物および酸化物鉱物の割合、部分中和赤泥の初期含水量、および最終生産物の使用目的に依存する。
【0157】
耐荷重コンクリートでは、水添加量についての好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水15%〜55%(重量)、より好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水25%〜45%(重量)、更により好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水30%〜40%(重量)、そして最も好ましい範囲は乾燥原料に対して水33%〜37%(重量)である。
【0158】
吹付けコンクリートでは、水添加量についての好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水25%〜80%(重量)、より好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水35%〜75%(重量)、更により好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水45%〜70%(重量)、そして最も好ましい範囲は乾燥原料に対して水50%〜60%(重量)である。
【0159】
グラウトでは、水添加量についての好ましい範囲は、使用する装置、グラウト注入すべき岩または土壌物質の多孔性および透過性の特性およびその他の技術的因子に依存するが、一般的には、乾燥構成成分に対して水25%〜98%(重量)、より好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水35%〜95%(重量)、更により好ましい範囲は乾燥構成成分に対して水45%〜90%(重量)、そして最も好ましい範囲は乾燥原料に対して水55%〜85%(重量)である。被注入物質の透過性が高いほど、孔寸法が大きいほど、ポンプ移送距離が短いほどおよび注入パイプの直径が大きいほど、より乾燥した混合物を要し、他方、被注入物質の透過性が低いほど、孔が小さいほど、ポンプ移送距離が長いほどおよび注入パイプの直径が小さいほど、より湿潤な混合物が好ましい。
【0160】
シリカ供給物およびセメント系組成物
追加のシリカ源を、トバモライトゲル形成を増進するために混合物中に含めてよい。これにはケイ砂、珪藻土、フライアッシュ、ボトムアッシュまたは破砕ケイ酸塩岩が含まれ得る。追加のシリカ源は単独でまたは組み合わせて添加し得る。追加のシリカ源の好ましい濃度は0%〜30%(乾燥重量)の範囲にあり、より好ましい範囲は3%〜20%(乾燥重量)、そして最も好ましい範囲は5%〜12%(乾燥重量)である。
【0161】
可塑剤/重合剤
可塑剤/重合剤も、湿潤混合物のワーカビリティを高めるため、凝結始発時間を抑制するため、および硬化生産物に更なる結合強度を付与するために混合物に添加してよい。可塑剤/重合剤にはMethocell(登録商標)、セルロースエーテル、メチル−ヒドロキシエチル−セルロース(MHEC)、ヒドロキシプロピル−メチル−セルロース(HPMC)およびBricky’s Mate(商標)が含まれるが、これらに限定されない。部分中和赤泥ブレンドを用いた混合物に添加するには、高度に置換された有機可塑剤/重合剤(例えばHPMC)が好ましい。低イオン強度系(例えば淡水で濯いだ部分中和赤泥)では、それ程高度にではなく置換された可塑剤/重合剤(例えばMHEC)を使用してよい。添加する可塑剤の好ましい濃度は乾燥混合物の0%〜8%(重量)であり、より好ましい濃度は乾燥混合物の0.1%〜5%(重量)の範囲にあり、更により好ましい濃度は乾燥混合物の0.2%〜3%(重量)の範囲にあり、そして最も好ましい濃度は乾燥混合物の0.3%〜2.0%(重量)の範囲にある。
【0162】
空気連行剤(またはAE剤)
空気の連行により、最終生産物における多孔性および透過性が上昇する。空気連行剤は、混合の間にコンクリート中に分断(shear)された空気を捕捉する能力を高めることにより、または混合および凝結の間に、スラリーの有する化学的条件下にて気体を放出することで機能する。空気連行剤を使用すると、コンクリートの膨張および収縮能力が高まり、その際にひび割れを生じず、よって、最終コンクリート生産物を寒冷気候下にて繰り返される凍結および溶解から保護する。
【0163】
空気連行剤には過酸化水素、有機ポリマーおよび市販で入手可能な有機発泡剤(例えばEP2021(商標))が含まれるが、これらに限定されない。過酸化水素はスラリーの有する化学条件下にて分解する。これは酸素を放出し、この酸素は膨張して孔を設ける。気泡が移動することで、連続孔(または相互接続された孔)を通じてのペレット透過性が付与される。空気連行剤は、成型の間のスラリーの振動締固めにより影響を受けない。
【0164】
過酸化水素は空気連行剤として様々な強度で使用してよい。強度は好ましくは過酸化水素0.1%〜75%(重量対体積)、より好ましくは1%〜30%(重量対体積)、そして最も好ましくは3%〜10%(重量対体積)の範囲にある。強度3%(重量対体積)の場合、添加割合は好ましくは乾燥混合物単位kgあたり1mL〜25mLであり、より好ましくは乾燥混合物単位kgあたり約2mL〜約20mLであり、更により好ましくは乾燥混合物単位kgあたり約5mL〜約15mLであり、そして最も好ましくは乾燥混合物単位kgあたり約8mL〜約10mLである。空気連行剤の添加割合をより高くすることまたは濃度をより高くすることにより、多孔性(または孔度)および透過性が高められるが、物理的強度は低下する。
【0165】
リン酸塩形成剤
アパタイト様鉱物および/または鉱物結晶間でのリン酸塩架橋部の発達により、強度上の更なる利点、特に濡れ強度が付与され得る。リン酸塩は重金属を捕捉および結合するようにも機能する。よって、リン酸塩形成剤を混合物に添加してよく、これにはリン酸、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、およびリン酸二水素カリウムが含まれ得る。リン酸を0.01M〜18Mの好ましい強度で使用してよく、より好ましくは0.1M〜5Mのリン酸強度で使用してよく、更により好ましくは0.5M〜3Mのリン酸強度で使用してよい。最も好ましいリン酸強度は1M〜2Mである。1.5Mのリン酸強度の場合、乾燥構成成分単位kgあたり0.2mL〜4mLの添加割合を使用してよく、より好ましい添加割合は乾燥構成成分単位kgあたり1mL〜3.5mLであり、更により好ましくい添加割合は乾燥構成成分単位kgあたり1.5mL〜2.5mL、そして最も好ましい割合は乾燥構成成分単位kgあたり2mL〜2.5mLである。
【0166】
有機物
セメント系組成物を形成する間に有機物を導入すると、繊維質マットを提供できると同時に、組織の木部および師部により、流体フローに対して追加の相互接続路を提供できる。加えて、有機物は適切な細菌繁殖培地を提供し得る。形成された生産物は嫌気性処理に効率的に使用し得、そして生物地球化学的反応(例えば硫酸還元および脱窒)を効率的に進行させ得る。生産物に導入され得る有機物には下水汚泥、サトウキビバガス、わらくず、腐葉土および麻繊維が含まれるが、これらに限定されない。添加する有機物の濃度は乾燥混合物の0%〜15%(重量)の範囲にあり得る。好ましい濃度は乾燥混合物の0.4%〜10%(重量)の範囲にあり、更により好ましい濃度は乾燥混合物の0.6%〜8%(重量)の範囲にあり、そして最も好ましい濃度は乾燥混合物の0.8%〜5.0%(重量)の範囲にある。
【0167】
補強材
大きな構造物およびコンクリート打設物を補強することが、コンクリートを特に抗張力下にて耐荷重性とする場合に必要であり得る。最も典型的には、コンクリートの補強は鋼補強材を用いて行われる。しかしながら、塩化物浸入および鋼腐食により、補強ロッドの周囲で腐食膨張が起こるため、コンクリートはしばしば破損される。この結果、常套の補強鋼はしばしば亜鉛メッキされ、またはエポキシで被覆して、鋼を腐食塩から隔離している。これに対する別法は、鋼を陰極として電流を流すことによる陰極防食を用いることである。もう1つの別法は、耐食鋼(例えばステンレス鋼)または鋼でない代替物(ガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、ポリプロピレン繊維またはポリエチレン繊維など)を用いることである。コンクリートに繊維を短繊維(長さ約50mm)として添加して、コンクリートを周囲に凝結させる交差結合(または架橋)状マットを提供し、そして強度を改善し得る。
【0168】
凝結促進剤
本発明によるセメント系組成物に凝結促進剤を添加して、組成物中のC3A、C4AF成分の形成を促進することにより、または他の水の需要の高い鉱物成長を誘発することにより、迅速に凝結させ得る。しかしながら、セメント系組成物の凝結プロセスを初期にて促進すると、しばしばその代わりに最終強度が低下することとなる。凝結促進剤は典型的には無機的な性質を有するものであり(但し必ずしもそうでない)、そして、凝結の早い段階で使用される化合物または水を要する生成物を生じる化合物を提供し得る。凝結促進剤には、無機物側としてアルカリ金属(K、NaおよびLi)の水酸化物、酸化物、アルミン酸塩および炭酸塩、アルカリ土類金属(CaおよびMg)の水酸化物、酸化物、アルミン酸塩および炭酸塩、フュームドシリカ、ケイ酸、第二鉄塩(塩化物、硝酸塩および硫酸塩を含む)およびモンモリロナイト粘土、または有機物側としてN,N−ジメチルアクリルアミド、AMIS、RMT、ナフタレンスルホン酸およびホルムアルデヒドが含まれる。
【0169】
凝結遅延剤
凝結遅延剤を添加して、セメント系組成物の凝結の始発を遅くし得る。一般的な凝結遅延剤は石膏(硫酸カルシウム二水和物)である。これは特にこの目的で水硬性セメントに添加され得るものである。コンクリートの凝結時間を遅らせることにより、コンクリートの平滑化、加工および流し込みのための作業時間をはるかに長くできる。このことは、一度で連続的に大量に流し込む必要があるときに特に重要である。加えて、凝結プロセスを遅くすることにより、コンクリートのひび割れおよび収縮が起こりにくくなる。収縮を防止するために、石膏をトリエタノールアミンと組み合わせて使用できる。
【0170】
耐塩剤
耐塩剤は凝結した生産物を塩水から保護するのを支援する。C3A含量の低いコンクリートは硫酸塩アタックに対してより一層耐性である。凝結構造をC3AからC4AF、C2S、C3Sおよび他の化合物(CA、C3A4(四アルミン酸三カルシウム)、およびC2AS(アルミノケイ酸二カルシウム)など)へシフトさせる添加剤を含めることにより、より大きな塩保護を得ることができる。より高い耐塩性を得るには、第二鉄塩またはアルミン酸カルシウムを組成物に添加し得る。可塑剤は混合水の塩度の作用を受けて、その性能が低下することがある。例えば、MHEC(メチル−ヒドロキシ−エチルセルロース)は塩許容度が低く、塩の少ない環境で得られた強度は、塩の多い環境に混合すると失われる。しかしながら、このことは塩許容度の高い変異体であるHPMC(ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース)を用いることにより克服できる。
【0171】
他の添加剤
所望により、最終生産物(または製品)の地球化学的および物理的特性を変えるために他の成分を混合物に添加してよく、他の成分にはシリカ供給物、可塑剤、リン酸塩形成剤および空気連行剤が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0172】
構成成分の混合
乾燥材料を好ましくは<2mmに、より好ましくは<1mmに、更により好ましくは<500μmに、そして最も好ましくは<250μmに篩過してよい。これらは材料の凝集を低減するよう十分に混合することが好ましい。これは材料の凝集を低減するために十分に混合することが好ましい。湿潤材料(水、任意のリン酸塩形成剤および任意の空気連行剤)は混合して一緒にした後に乾燥材料に添加することが好ましい。あるいは、湿潤材料を個々に添加してよい。湿潤構成成分を乾燥構成成分と個々に混合するのであれば、混合順序は水、その後にリン酸塩形成剤、その後に空気連行剤とし得る。混合を一旦停止すると空気連行が実質的に減少してしまうので、混合プロセスの間に空気連行を確実に完了させるためにスラリーをより長時間混合し得る(即ち湿潤気味から乾燥気味のスラリーとする)。リン酸塩形成剤はリン酸とし得る。空気連行剤は過酸化水素とし得る。
【0173】
混合は様々な手段で実施でき、これには市販で入手可能な剪断力ミキサー、および材料を転動させるコンクリートミキサーが含まれる。材料を混合すると、混合物は1分間あたり少なくとも10回の割合、好ましくは1分間あたり少なくとも20回の割合、そしてより好ましくは1分間あたり少なくとも30回の割合で、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間に亘って折り畳まれる。(これら割合は市販で入手可能なコンクリートミキサーでの1分間あたりの回転数と同じであり得る。)剪断力ミキサー(パン用ミキサーなど)は標準的なコンクリートミキサーより高い混合割合(または速度)で使用され得る。機械の仕様に応じて混合時間を適宜に調整し得る。
【0174】
流し込み、成型および乾燥
最適コンクリート強度は通常約28日間硬化(または養生)後に得られる。しかしながら、硬化は何ヶ月、更には数年にも亘って継続する。セメントの凝結の始発はC3AlおよびC4AlF形のトバモライトの発達により0〜10日の期間に亘って起こる。C3SおよびC2Sトバモライトゲルは0〜400日の期間に亘って生じる。
【0175】
強度を最大限にするため、流し込んだ生産物は使用の前に、水分損失を制限する環境中にて少なくとも28日間保持することが好ましい。硬化の間、水の損失を最小限にするため、およびC3Sトバモライト発達を促進するために、温度は実際的範囲でできるだけ低く維持することが好ましい。生産物を好ましくは少なくとも28日間硬化させて、C3Sトバモライトゲルの発達をもたらし、少量の微粉(<0.15mm)を有し、塵の問題を引き起こす可能性の低い生産物を形成する。
【0176】
ヘーベルコンクリート
へーベールコンクリートは高孔度、軽量コンクリートであり、非耐荷重性の壁構造において重量を削減するために使用される。典型的にはブロック状に成型されるが、流し込んで大面積のスラブとして所定の高さに持ち上げることもできる。この製造方法は、EP2021などの発泡(極度の空気連行)剤を添加すること以外は典型的なコンクリートの製造方法と同様である。混合の際、EP2021はシェービングクリームのように大量に発泡して、極めて多孔性のセメント組成物を提供し、この組成物は孔を保持したまま凝結する。その孔により、ヘーベルコンクリートは高い貯水能を有し、よって、コンクリート製プランターボックスなどに理想的である。
【0177】
吹付けコンクリート
壁および天井に噴霧できる吹付けコンクリートを本発明による方法によって製造し得る。これを実現するため、トバモライトゲル(垂直壁面に吹付けたときに壁に付着する)の形成を起こすべく水を添加して使用に備える際、最終的な吹付け組成物のポンプ移送性を改善するために、超可塑剤を本発明による組成物に添加し得る。その後、水和混合物(これは、混合物の効率的なポンプ移送を容易にするのに必要な量より多くの水を含んでいないことが好ましい)をポンプ移送し、そしてスプレーノズルから垂直壁面に吹付ける。スプレーノズルから飛び出す直前に、既に水和した組成物に凝結促進剤を添加する。いくつかの用途では、この位置で繊維強化材も添加してよい。凝結促進剤により、噴霧したコンクリートが壁面からスランプする(または垂れる)前に迅速に凝結させる。典型的には、凝結促進剤はフュームドシリカ、アルカリ土類金属またはアルカリ金属の水酸化物などの乾燥粉末である。
【0178】
グラウト
グラウトは、ダム近傍の岩もしくは土壌物質における洩出を封止するなどの環境的用途、または水を内部または外部に維持する必要のある他の構造体に使用される。本発明による組成物は、グラウト注入プロセスにより制御すべき流体が酸性、苛性、塩性、酸性かつ塩性、または苛性かつ塩性である場合に特に有用である。必要とされる実際のグラウト混合物は、グラウトが注入される岩または土壌の地球化学的特性、グラウトを施すために使用する装置、およびグラウト注入プロセスにより制御すべき水の組成に応じて決まる。グラウト組成を決定するのにワーカビリティおよび凝結特性が特に重要であるが、強度はさほど重大ではない。強度要件の殆どはグラウト注入される岩または土壌物質によって満たされ、またグラウトを施すことによって生じ得る追加の強度は比較的小さいのが通常だからである。
【0179】
次の3つの特性に基づいて理想的なグラウトを選択することを教示する:構成成分、グラウト溶液および最終生産物の特性。グラウトの構成成分は、安価で豊富に供給される水の中で容易に移動できる材料であって、浸入し易いように微粉状であり、予測されるあらゆる貯蔵状態にて安定であり、および非毒性、非腐食性、非可燃性または非爆発性の材料とすべきである。グラウト溶液は、あらゆる常温下にて安定である水と同様の粘度を示し、一般的で安価な化学種により触媒され、地下水において一般的に認められる溶解した塩に対して敏感でなく(または影響を受け難く)、安定なpHを有し、および容易かつ簡単にゲル化時間を変更できるものとすべきである。よって、グラウト注入プロセスより得られる最終生産物は永久的で、地下水において通常認められる化学的条件により影響を受けず、および高い強度を有するものとすべきである。これらは満足することの難しい基準の組であることは明らかであり、現在市販されているどのグラウトもこれら特質の全てを有するとは言えない。しかしながら、個々のプロジェクトおよび/または現場に対して重要である特性により、上記基準のうち1つまたは2つ以上が必然的に関係のないものとなり、適切なグラウト選択が可能となり得る。
【0180】
図面の詳細な説明
図1は本発明による組成物でできたあるペレットのSEM写真であって、そのペレット形成の間に発達したマクロ孔の分布を示すものである。この写真はペレット形成プロセスの間に発達したマクロ孔の分布を示す。
図2は図1のペレットのSEM写真であって、その内部の微細孔の細部を示すものである。図2から、ペレットはかなり分散した孔寸法を有することがわかる。マクロ孔寸法は20〜100μm寸法のオーダーであり、またミクロ孔は0.2μm〜1μmのオーダーであって、壁を通ってマクロ孔間を接続している。他の実験結果において、最大200μmのマクロ孔寸法が得られている。
図3は図1および図2のペレットのSEM写真であって、その微細相互接続トバモライトゲル形成部を示すものである。図3はペレット1の微細相互接続トバモライトゲルを示す。大きな菱面体晶は、硬化の間に孔の水から結晶化したCaCO3である。
図4は図1〜図3のペレットのSEM写真であって、2つの炭酸塩充填マクロ孔のつぶれた(collapsed)上部を示すものである。
図5はペレット2のSEM写真であって、ペレット形成プロセスの間に発達したマクロ孔の分布を示すものである。
図6はペレット2の表面の高解像度写真であって、ペレット中に張り巡らされた(またはこれを貫通する)マクロ孔ネットワークを示すものである。
図7は実施例2に関して以下に説明する。
図8は実施例5に関して以下に説明する。
地下透過性反応バリアの例示的な工業的実施を図9を参照して以下に説明する。
【0181】
実施例
多孔性粒状材料
実施例1:発達させたペレットの内孔についての走査型電子顕微鏡検査
以下の手順により2種のペレットを作製した。
【0182】
ペレット1を、以下の成分を混合してスラリーを形成することにより作製した。
80g処理済赤泥
4g消石灰
4g酸化マグネシウム
2gHPMC可塑剤/重合剤
15gポルトランドセメント
8g乾燥構成成分のケイ砂
70mLの水
8mLの3%H2O2 および
0.22mLの1.5M H3PO4
上記成分を剪断力ミキサーにて1分間混合した。湿潤なスラリーを、高さ対直径のアスペクト比が3.5:1である型内に流し入れ、そして制限するように蓋をして、28日間硬化させた(または養生した)。
【0183】
ペレット2を、以下の成分を混合してスラリーを形成することにより作製した。
70g処理済赤泥
2gHPMC可塑剤
15gポルトランドセメント
13gのケイ砂
70mLの水
0.8mLの3%H2O2 および
0.22mLの1.5M H3PO4
上記成分を剪断力ミキサーにて1分間混合した。湿潤なスラリーを、高さ対直径のアスペクト比が3.5:1である型内に流し入れ、制限するように型に蓋をして、28日間硬化させた(または養生した)。
【0184】
28日後、型を開けて、ペレットのサンプルを走査型電子顕微鏡にて検査して、微細なテクスチャおよび構造上の特性を調べた。
【0185】
添付のSEM写真である図1〜図6は、ペレットの多孔性の性質およびその構造を形成している微粉状鉱物の格子ネットワークを示し、また、ペレット形成の間に発達した孔空間の内部に酸中和鉱物が存在していることを示す。
【0186】
実施例2:多孔性ペレットで構成したカラムを使用した金属に富む皮革廃水の処理
図7を参照し、実施例2の結果を得るために使用した研究所装置の概略ダイアグラムをそこに示す。この試験では上記実施例1にて得られたペレット1を軽く破砕し、そして篩過して、250μm〜500μm、500μm〜750μm、750μm〜1000μmおよび1000μm〜2000μmの4つの粒度範囲とした材料を用いた。濾過/反応カラム(10)を準備するため、4つの粒度の各々を25%ずつとするペレット混合物を作製した。ポリカーボネート管(内径44mm)を用いて3つの濾過/反応カラム(10、20、30)を構成した。各カラム(10、20、30)を一方の端部にて封かんし、プレフィルターのジオテキスタイル詰物として機能する10cm長さの粗粒砂および砂利混合物(12)と、5cm長さの処理済赤泥ペレット(14)と、もう1つのジオテキスタイル詰物(16)として、処理済赤泥ペレット(14)を所定位置に保持するための10cm長さの粗粒砂および砂利パックとにより充填した。濾過/反応カラム(10、20、30)を、各カラム間に位置する凝結/沈殿容器(22、24)と直列にして組立てた。
【0187】
皮革廃水をカラムに600MPa真空(26)下で流し、凝結/沈殿容器(32)に回収した。これを分析し、そして同じ廃水に処理済赤泥を直接添加したときのデータと比較するためである。反応/濾過カラム(10、20、30)内の処理済赤泥ペレットの合計質量は、直接添加実験にて添加した処理済赤泥の量と同じものとした。廃液の分析、直接添加の結果、および反応/濾過カラムの結果を以下の表3に示す。表3は、発達させた多孔性ペレットを濾過管(反応カラム)にて使用した皮革廃水の処理より得られたデータを示すものである。
【0188】
【表3】
【0189】
実施例3:多孔性ペレットのバッチを4m3セメントミキサー構成成分にて作製するための手引き
200kgのA1処理済赤泥 <2mmにスクリーニングしたもの
400kgの普通ポルトランドセメント
250kgの微粉状ケイ砂
100kgの消石灰 <1mmにスクリーニングしたもの
200kgの酸化マグネシウム <1mmにスクリーニングしたもの
50kgのヒドロ−プロピルメチルセルロース(HPMC)可塑剤
約2000Lの水
25Lの3%過酸化水素(H2O2)
7Lの1.5Mオルトリン酸(H3PO4)
乾燥材料の総重量:3,000kg
湿潤材料の総重量:約2,032kg
総湿重量:約5,032kg(2m3)
【0190】
上記したように乾燥処理済赤泥を使用することは任意であると理解されたい。代わりに、約50%の含水量を有する処理済赤泥を用いてよいが、処理済赤泥に含まれる水の量に正比例して、追加すべき水の量を減らす必要がある。洗浄した処理済赤泥は必須でないが、処理済赤泥は処理されていなければならない。例えば、使用する処理済赤泥を50%スラリーとして供給すると、乾燥添加剤および少量の水だけが必要となる。処理済赤泥をスクリーニングしたスラリーとして使用すると、処理済赤泥の乾燥に要する時間およびコストがなくなり、これにより、処理済赤泥製造における主な障害を克服することができる。
【0191】
上記構成成分は汎用処理済赤泥C5T10ブレンドを製造するためのものである。他のブレンドを製造してよいが、混合物を注意深く調整する必要があり得、また、カルシウムまたはマグネシウム不足またはカルシウム+マグネシウムに対するナトリウムの比が高いことが凝結特性に悪影響を及ぼさないことを確実にするように、少量の消石灰および酸化マグネシウムを維持する必要があり得る。
【0192】
実施例4:ペレット状組成物を作製するプロセス工程
工程1:400Lの水をミキサーに加え、そして2tのスクリーニングした処理済赤泥を加え、乾燥ペーストが形成されるまで混合する。
工程2:混合しながら、1Lのリン酸を10Lの水で希釈し、これをミキサーに加えて15分間混合する。
工程3:400kgのセメントをミキサーに加え、追加の400Lの水と一緒に15分間混合する。必要ならば、潤滑性を改善するために少量の洗剤を添加してよい。
工程4:主要構成成分を撹拌し続けながら、IBCにて200kgの酸化マグネシウムおよび100kgの消石灰を300Lの水と一緒に10分間激しく混合する。
工程5:予備混合した石灰および酸化マグネシウムをメインのミキサーに加えて、10分間混合する。
工程6:構成成分を撹拌し続けながら、IBCにて25kgのHPMCを150Lの熱水と合わせて5分間激しく混合し、その後、300Lに希釈して更に5分間混合する。
工程7:予備混合したポリマーをメインのミキサーに加えて、10分間混合する。
工程8:工程6および7を繰り返す。
工程9:所望のコンシステンシーが得られるまで(簡単な指標試験を目下開発中である)、混合物に水(<300L 処理済赤泥の含水量による)を添加する。
工程10:混合し続けながら、2Lの過酸化水素を23Lの水で希釈し、希釈した過酸化水素をミキサーに加えて5分間混合する。
工程11:混合物をスラブに100mm〜200mmの厚さで流し込む:所望の量の混合物を保持できるように型枠を前もって組立てておく必要がある。
工程12:流し込んだスラブを3〜6時間ゲル化させ、その後、これを長方形ブロック(これは硬化して破砕が必要になるまで、容易に持上げて積重ねておくことができる)に区分する。
工程13:区分したブロックを7〜10日間凝結させ、その後、最終硬化のために積重ねる。
工程14:積重ねたブロックを、スラブをペレット状にするために衝撃粉砕を用いる場合は更に最小21日間、またはカッター(例えばウッドチッパー)を用いる場合は更に7日間硬化させる。
【0193】
実施例5:工業的応用
汚染物質を含有する流体から汚染物質を除去するために、上記実施例1〜4のいずれかに記載のようにして作製したペレットを工業プロセスに使用することができる。
【0194】
例示的な工業的応用を図8に示し、これは汚染された水を処理するための工業プロセス(100)の概略ダイアグラムである。プロセス(100)は汚染水を保持する供給タンク(105)を含む。供給タンク(105)は汚染水を供給ラインに通じて一連の汚染物質除去タンク(110、120、130)に供給する。汚染物質除去タンク(110、120、130)の各々には、上記実施例1〜4のいずれかに記載のようにして作製したペレットの透過性塊(110’、120’、130’)が充填されている。ペレットの透過性塊(110’、120’、130’)は、汚染物質除去タンク(110、120、130)に充填された状態で、約60%の孔度εを有する。ペレットの透過性塊(110’、120’、130’)は2つの多孔性砂層(112)の間に充填されており、多孔性砂層(112)は3〜5mmの範囲にある粒子寸法を有し、フィルターとして機能する。ペレットの透過性塊(110’、120’、130’)は、汚染物質除去タンク(110、120、130)から取り出すためにワイヤーメッシュネット(図示せず)内に収容されている。使用の際、汚染物質を含有する水をスプレー(図示せず)により、タンク(110)の上側砂層(112)上へ均等に分配する。高孔度ペレット(110’)は上記のように供給水中に存在する汚染物質の少なくとも一部を除去するのを助ける。その後、供給水はタンク(120、130)に各々配置された残りのペレットの透過性塊(120’、130’)を連続的に通過して、更なる汚染物質を連続的に水から除去し、この水は最終的にはタンク130’から矢印114で示すように取り出される。
【0195】
水汚染物質流速などのプロセス(100)の変数は、供給タンク105の水中の汚染物質濃度に応じて可変であり得ることが理解されよう。
【0196】
また、他の態様においては、タンク(110、120、130)をカラムと置換し得ること、および流体を汚染物資を含有する気体とし得ることも理解されよう。
【0197】
もう1つの工業的応用を図9に示し、これは汚染水を処理するために使用される地下透過性反応バリア(220)の断面図である。地下透過性反応バリア(220)は上記実施例1〜4のいずれかに記載のようにして作製したペレットの塊で構成される。透過性反応バリア(220)は図示するように溝壁(230)によって溝内に設けられる。透過性反応バリア(220)は土壌表面(220)より下方にて、汚染物質を含有する水路(210)に配置される。透過性反応バリア(220)を通過した水(210’)は入口側の水(210)よりも低い汚染物質濃度を有する。
【0198】
処理済赤泥はペレット状に作製されているので、取扱いが容易であることが理解されよう。また、ペレットは透過性が高いが、乾燥状態において微細な赤塵を形成せず(この点、赤泥と相異する)、これにより、ペレットは流動している酸性水、金属に富む水、および人口集中部に近い領域の水ならびに排ガスを処理するのに適したものとなっている。また、ペレットを中程度の透過性を維持することの必要な透過性反応バリアまたは静的水処理カラムもしくはタンクにも使用できることが理解されよう。
【0199】
また、ペレットは、微細赤泥粒子の下流における損失に付随する問題も克服する。
【0200】
開示した態様を参照しつつ本発明を具体的な細部まで説明したが、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の概念および範囲内において多くの変形および改変が成され得ることが理解されよう。
【0201】
実施例6:本発明によるセメント系組成物
【表4】
【0202】
実施例7:本発明による別のセメント系組成物
【表5】
【0203】
実施例8:セメント系ペーストにおけるポゾランとしての部分中和赤泥(セメント置換)
ペースト混合物を4種調製し、それぞれA、B、CおよびDとした。混合物Aは、オーストラリアン・スタンダード AS 1315に従って調製した。混合物B、CおよびDは、100%普通ポルトランドセメント(OPC)を使用する代わりに、部分中和赤泥のスラリーの割合を上昇させた普通ポルトランドセメント(OPC)を混合することにより調製したこと以外は、同様にして調製した。この部分中和赤泥のスラリーは、カルシウム+マグネシウムにより付与される硬度が5ミリモル(炭酸カルシウム等量)以上である水性溶液と赤泥を反応させることによって、そのpHを8.2〜10.5に低下させたものである。スラリーは約51%の固形分を含有するものであった。
【0204】
部分中和赤泥で置換したOPCの量は表6に列挙した通りである。置換割合(%)はそれぞれ5%、10%および20%とした。4種の混合物はいずれも25mm立方とし、4種の混合物はいずれも0.45の水対結合材比にてキャスティングした。
【0205】
4種の混合物をいずれも、23℃の霧室に貯蔵した封かんプラスチックバッグ内にて56日間連続的に硬化させ、その後、各々のサンプルを圧縮強度試験に付した。結果は以下の通りである。
【0206】
【表6】
【0207】
凝結終結時間は300〜340分であり、これら混合物間で違いは認められなかった。
【0208】
混合物A(100%OPC)の場合、硬化ペーストの圧縮強度は28日後で70MPaであったのに対し、混合物D(OPCを部分中和赤泥により20%置換)の場合、硬化ペーストの圧縮強度は28日後で60MPaであった。
【0209】
100%OPCの場合、硬化ペースト(28日後)の半断熱温度は42℃であったのに対し、OPCを部分中和赤泥で20%置換した場合、硬化ペースト(28日後)の半断熱温度は100%OPCの場合で48℃であった
【0210】
各混合物のフローまたはスランプを混合5分後に評価した。混合物A、BおよびCのペーストは極めて流動的であった。しかしながら、混合物D(OPCを部分中和赤泥により20%置換)のペーストはかなり劣っていた。
【0211】
ワーカビリティ(または作業性)は、均質材料を得るようにペーストまたはコンクリートを混合および打設する容易さの程度を示すものである。この特性の指標は1つではなく、本実施例においては、材料を円錐容器にて締固めた後、容器の一方の端部を持上げて、これにより得られた材料のフローを調べるという修正フロー試験を用いた。フローが高いほどより流動的なペーストであることを示していた。
【0212】
ペーストの凝結時間をオーストラリアン・スタンダード AS 1315に従って測定した。部分中和赤泥の添加により、混合物B、C、Dの凝結始発時間をそれぞれ18%、10%および17%延した。これは100%OPC対照標準混合物Aと比較してそれ程大きな変化量でないと考えられた。
【0213】
混合物の凝結終結時間は300〜340分であり、リファレンスおよび試験用調製物間で明白な差はなかった。
【0214】
ペーストの凝結始発および終結時間の測定は、針を貫通させることに対する特定の抵抗性に相当する。針の貫通に影響する変数は多く存在するが、本実施例においては水和ペースト中の部分中和赤泥の含量を除く全てのパラメータを一定に維持した。
【0215】
混合物A、BおよびCでは強度が硬化56日目まで連続的に増加したが、混合物D(部分中和赤泥20%、OPC80%)は霧硬化の最初の7日間後で限界強度増加に達した。
【0216】
実施例9:コンクリートにおけるポゾランとしての部分中和赤泥(セメント置換)
公称圧縮強度40MPaを有する汎用コンクリートとして使用するよう意図したセメント系組成物の混合物を2種調製した。これらをそれぞれ混合物EおよびFとした。混合物Eでは、100%普通ポルトランドセメント(OPC)を結合材として使用した。混合物Fの組成は実施例3の結果、即ち、40MPaコンクリート(この圧縮強度は最小許容レベル未満に低下していない)を得るようにOPCの最大20%を部分中和赤泥で置換し得ることに基づいて決定した。
【0217】
コンクリートをいずれも75mmのスランプを示すように混合した。20%部分中和赤泥を含有するコンクリートの水対結合材比を増加させる必要があることが判明した。2種の混合物の組成を表7に示し、表中、固体の質量は単位立方メートルあたりの表乾(または表面乾燥飽水状態の)重量にて示す。
【0218】
【表7】
【0219】
双方の混合物のサンプルを23℃の霧室に貯蔵した封かんプラスチックバッグ内にて連続的に硬化させた。種々の段階を経た後、サンプルを圧縮強度試験に付した。結果は以下の通りである。
【0220】
3日間発達させた早期圧縮強度は混合物EおよびFで同様であった。3〜7日硬化の間、混合物Eの強度は混合物Fより高速で上昇した。7〜28日では、両コンクリートは同様の強度増加を示し、霧硬化28日後にて混合物Fは混合物Eより強度が約10%低かった。混合物Fの28日圧縮強度が低かったのは、リファレンスの混合物Eコンクリートに比べて75mmスランプに必要な水対結合比が高いことによる。同等のスランプとするためにより高い水対結合材比が必要とされることは(表7を参照のこと)、より適切な減水剤を用いることによって克服できるであろう。
【0221】
混合物Eおよび混合物Fで水対結合材比が相異することは、混合物Fコンクリートで28日圧縮強度の減少が認められたことと一部関係しているものと考えられる。しかしながら、いずれのコンクリートも40MPaの28日設計強度に達していた。
【0222】
両混合物EおよびFのピーク半断熱温度は30.5℃付近であり、いずれの場合も混合開始後11.25時間後に生じていた。
【0223】
部分中和赤泥が凝結促進剤として機能するため、混合物Fのワーカビリティは混合物Eより低かった。しかしながら、混合物のワーカビリティにおける低下は可塑剤を添加することにより克服できた。部分中和赤泥をOPC置換物として使用することにより、より大きな初期強度(7日間硬化)および31.5℃のより高い半断熱温度(7日間硬化後)が得られた。上記の半断熱温度の上昇は、表面積対体積比が小さい場合に、熱応力により早期ひび割れが生じ得るので特に重要である。半断熱温度の増加は、硬化の間に生じる鉄アルミン酸四カルシウム(C4AF)の割合が高く、またコンクリートに用いるポルトランドセメントにおいて形成されるケイ酸三カルシウム(C3S)およびケイ酸二カルシウム(C2S)が少ないために起こり得る。別法では、このセメントは、部分中和赤泥により追加のアルミン酸塩が供給されるので、ハイアルミナタイプのセメントに転用し得る。
【0224】
実施例10:緻密さ(fine detail)保持
3種の非多孔性混合物(部分中和赤泥4部およびセメント1部;混合物G)(部分中和赤泥3部、砂1部およびセメント1部;混合物H)およびモルタル(砂4部およびセメント1部;混合物I)を250mlの型に流し込んだ。この型の内壁面には質量目盛用の微細な浮き出し文字が設けられていた。ブロックが硬化すると型を破壊し、混合物GおよびHはいずれも目盛を容易に読み取ることができる緻密さ(または肌理の細かさ)を保持していたのに対し、混合物Iはそのような緻密さを保持していなかった。セメント系組成物の表面に緻密さを保持することは、滑り止め付きタイルおよびコンクリート路を製造するのに重要である。セメント系組成物における部分中和赤泥により緻密さが得られるということは、タイルまたは他の製作物(コンクリート彫刻または建築物および壁用装飾(例えばエンボス加工または成型された)面など)の表面に緻密さを施し得ることを教示するものである。水の表面張力により得られる毛管作用引き込みを利用し得る極めて微細なラインにより、水で滑る危険が生じる前に、水をこれら微細な溝に引き込んで除去することができる。
【0225】
実施例11:テラコッタタイル
セメント1部、砂1部および部分中和赤泥3部を含む多孔性型セメント組成物を調製し、これは極めて優れた耐湿潤および乾燥性を有するものであった。この組成物から作製したテラコッタセメント舗装材も優れた耐凍結/溶解性を有するものであった。この舗装材は、セメント舗装材の表面に酸化物粉末を散布することにより作製される常套の舗装材に比べて、これらを形成した後および舗装材がまだ濡れている間も都合がよい。このような常套の舗装材の場合、酸化物コーティングは暫く後に摩耗して下層の(着色されていない)セメントを露出させるが、本発明の方法によって作製されたタイルは全体に亘って均一な色を有しているので、このタイルの摩耗は色に何ら影響しない。
【0226】
実施例12:気泡(またはブローン)セメント組成物
実施例10の組成物をEP2021(発泡剤)と組み合わせることにより、軽量(多孔性)敷石およびタイルが得られた。
【0227】
実施例13:酸中和
3種の非多孔性組成物として混合物J、混合物Kおよび混合物Lを、実施例8と同様にして調製した。各混合物につき1つのサンプルを得て数日間硬化させ、その後、ドリル加工で中央穴を貫通させ、そして1.5cm厚さのスラブを切断した。その後、3種のスラブを別個の1L瓶のMilli−Q水中に吊下げ、pHを2.5に調整した。各瓶につき合計50mlの硫酸が添加されるようになるまで、硫酸を少量添加することによってそれぞれのpHを数日毎に再調整してpH2.5に戻した。約2ヶ月に及ぶ各瓶につき50mL増分の酸添加の後、サンプルはスラブを取り出して表面試験に付すまで4週間に亘って瓶内の溶液と平衡を保つことができ、溶液pHをスラブと平衡なものにしていた。4週間の平衡期間の溶液pHを1週間に2度モニターした。サンプルJは第1週間目のうちにセメントスラブと平衡状態に達し、サンプルKは第2週間目の半ばまでに平衡状態に達し、およびサンプルLは第3週間目の半ばまでに平衡状態に達した。各溶液の最終的な平衡状態pHは以下の通りであった:
混合物Jのサンプルについて: 7.94
混合物Kのサンプルについて: 7.88
混合物Lのサンプルについて: 7.79
【0228】
混合物JおよびKセメントは酸性溶液中のpHが、混合物Lのサンプルよりかなり早く上昇し、このことはこれら各混合物のサンプルの酸中和能をより容易に利用できることを示している。混合物Lのサンプルは最終的に、スラブの表面腐食(またはエッチング)および表面鉱物沈着が極めて激しかった。混合物JおよびKセメントのサンプルはいずれも多少の腐食が見られたものの、混合物Lのサンプルほどではなかった。また、混合物JおよびKセメントのサンプルはいずれもその表面に鉱物沈着が見られたが、混合物Jのほうがより多量の沈着物を有していた。混合物Kセメントのサンプルはその表面に微細な針状鉱物結晶を有していた。
【0229】
実施例14:耐酸性
混合物EおよびF(実施例4のもの)のそれぞれにつき1つのサンプルをHCl、HNO3およびH2SO4の各々の10%酸溶液に浸漬した。8週間後、全てのサンプルを取り出し、各々の質量損失を測定した。各酸中1週間後、ポルトランドセメント対照標準(混合物E)は完全に分解し、損失100%であったのに対し、10%HNO3に浸漬した混合物Fのサンプルはその質量の10%しか失われず、10%HClに浸漬した混合物Fのサンプルはその質量の約20%を失い、10%H2SO4に浸漬した混合物Fのサンプルはその質量の約40%を失った。
【0230】
10%の強度において、酸のモル濃度はHClで1.2M、HNO3で1.6MおよびH2SO4で1.8Mであった。組成物に対するアタックに利用可能なH+のモル数はHClおよびHNO3で同様であるが、H2SO4では3.6Mが利用可能であった。硫酸に浸漬したサンプルについての質量損失がより大きかったのは、おそらく、HNO3の場合に比べて水素イオンを3倍利用可能であったことによるものと考えられる。HClによるアタックに対する感受性が部分中和赤泥を含有する混合物で大きいのは、本発明による組成物の耐塩素性がより低いことによって説明し得る。
【0231】
よって、本発明に従って製造されるセメント系組成物は、酸性硫酸塩土壌または酸化性硫化物廃岩または鉱区での選鉱くずの作用を受ける領域において使用するのに特に適する。硫酸塩耐性は通常、アルミン酸三カルシウム(C3A)成分の割合の低下と関係し、耐硫酸塩セメントでは4〜10%のC3A含量が望ましい。本発明による組成物の硫酸塩耐性はスラリーを吹付ける能力と相俟って、酸浸出を最小限とし、および酸素拡散を防止して更なる硫化物酸化を防止するために、露天掘りの壁(open cut pit wall)に噴霧し得る材料を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】図1は本発明による組成物のペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】図2は本発明による組成物のペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】図3は本発明による組成物のペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】図4は本発明による組成物のペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】図5は本発明による組成物のペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6】図6は本発明による組成物のペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図7】図7は実施例2に記載の結果を得るために使用した例示的な研究所装置の概略ダイアグラムを示す。
【図8】図8は本発明による組成物を有するペレットを用いて汚染水を処理するための例示的な工業プロセスの概略ダイアグラムを示す。
【図9】図9は本発明によるペレットを利用した地下透過性反応バリアの断面図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料であって、粒状材料がセメント系材料およびボーキサイト精製残留物の混合物を含む、多孔性粒状材料。
【請求項2】
孔の体積が粒状材料の体積の10%〜90%である、請求項1に記載の多孔性粒状材料。
【請求項3】
孔の少なくとも10%が開放セルまたは連続孔である、請求項1に記載の多孔性粒状材料。
【請求項4】
粒状材料の孔が分布した孔寸法を有する、請求項1に記載の多孔性粒状材料。
【請求項5】
粒状材料の孔寸法が0.1〜2000μmの範囲にある、請求項1に記載の多孔性粒状材料。
【請求項6】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、粒子の各々がセメント系材料およびボーキサイト精製残留物の混合物を含む、多孔性粒状材料。
【請求項7】
細礫、ペレット、ブリケット、押出物、砂利、玉石、ブロック、インターロッキングブロックおよびスラブからなる群より選択される形態を有する、請求項6に記載の多孔性粒状材料。
【請求項8】
汚染物質を含有する流体の処理における、請求項1または6に記載の多孔性粒状材料の透過性塊を含む反応性透過性バリアの使用であって、多孔性粒状材料の透過性塊が汚染物質を含有する流体の流路に配置される使用。
【請求項9】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を形成するための組成物であって、組成物がボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を含み、セメント系結合材が請求項1または6に記載の多孔性粒状材料を形成するのに十分な量で存在する組成物。
【請求項10】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を形成するための組成物であって、組成物がボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を含み、セメント系結合材が請求項1または6に記載の多孔性粒状材料を形成するのに十分な量で存在し、組成物は、組成物を水性媒体中に混合する際に粒状材料内に孔を生じさせ得る孔発生剤を更に含む組成物。
【請求項11】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を形成するための組成物であって、組成物がボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を含み、セメント系結合材が請求項1または6に記載の多孔性粒状材料を形成するのに十分な量で存在し、組成物は、組成物を水性媒体中に混合する際に粒状材料内に孔を生じさせ得る孔発生剤を更に含み、孔発生剤が過酸化水素、有機ポリマーおよび発泡剤より選択される組成物。
【請求項12】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を形成するための組成物であって、組成物がボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を含み、セメント系結合材が請求項1または6に記載の多孔性粒状材料を形成するのに十分な量で存在し、組成物はリン酸塩形成剤を更に含む組成物。
【請求項13】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を製造する方法であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、方法は:
(a)ボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を水性媒体中で混合してスラリーを形成すること;および
(b)スラリーを多孔性粒状材料を形成するのに十分な時間に亘って昇温下で硬化させること
を含む方法。
【請求項14】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を製造する方法であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、方法は:
(a)ボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を水性媒体中で混合してスラリーを形成すること;および
(b)スラリーを型内で硬化させて多孔性粒状材料の凝集塊を形成すること
を含み、型は、多孔性粒状材料に細礫、ペレット、ブリケット、押出物、砂利、玉石、ブロック、インターロッキングブロックおよびスラブからなる群より選択される形態を付与するように形作られている方法。
【請求項15】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を製造する方法であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、方法は:
(a)ボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を水性媒体中で混合してスラリーを形成すること;および
(b)スラリーを多孔性粒状材料を形成するのに十分な時間に亘って昇温下で硬化させること
を含み、
硬化の間に孔構造の安定化を助長するために、工程(a)にてリン酸塩形成剤を添加し、残留物および結合材と混合する方法。
【請求項16】
スラリーが約1%〜約99%(重量/重量)のボーキサイト精製残留物および約1%〜約99%(重量/重量)のセメント系結合材を含む、請求項13、14または15に記載の方法。
【請求項17】
スラリーが砂、粉状苛性製鋼スラグ残留物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属酸化物、次亜塩素酸カルシウム、ナトリウムミョウバン、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、石膏、リン酸塩、リン酸、ハイドロタルサイト、ゼオライト、かんらん石、輝石、塩化バリウム、ケイ酸およびその塩類、メタケイ酸およびその塩類、ミョウバングループの鉱物、マガディアイト、シリカ供給物、可塑剤、重合剤、リン酸塩形成剤、空気連行剤、およびこれらのうちいずれか2つ以上の組合せからなる群より選択される添加剤を更に含む、請求項13、14または15に記載の方法。
【請求項18】
ボーキサイト精製残留物が約10.5未満のpHを有する、請求項13、14または15に記載の方法。
【請求項19】
セメント系結合材がトバモライトゲルを形成可能である、請求項13、14または15に記載の方法。
【請求項20】
汚染物質を含有する流体を処理する方法であって:
・請求項1または6に記載の多孔性粒状材料の透過性塊を準備すること;および
・汚染物質を含有する流体を多孔性粒状材料の透過性塊に通過させること
を含む方法。
【請求項21】
部分中和赤泥およびセメントを含むセメント系組成物であって、部分中和赤泥が、カルシウム、マグネシウムまたはそれらの組合せによって付与される、炭酸カルシウム等量で単位リットルあたり少なくとも3.5ミリモルの全硬度を有する水と接触することにより予備処理されているセメント系組成物。
【請求項22】
セメントが組成物中に約1重量%〜約99重量%の濃度で存在し、および部分中和赤泥が組成物中に約99重量%〜約1重量%の濃度で存在する、請求項21に記載のセメント系組成物。
【請求項23】
約0.2重量%〜約3重量%の超可塑性のセメントを更に含む、請求項21に記載のセメント系組成物。
【請求項24】
セルロースエーテル、メチル−ヒドロキシエチル−セルロース(MHEC)およびヒドロキシプロピル−メチル−セルロース(HPMC)からなる群より選択される可塑剤を更に含む、請求項21に記載のセメント系組成物。
【請求項25】
セメント系組成物の製造方法であって:
(a)バイエル法より回収した赤泥を、カルシウム、マグネシウムまたはそれらの組合せによって付与される、炭酸カルシウム等量で単位リットルあたり少なくとも3.5ミリモルの全硬度を有する水と接触させて、部分中和赤泥を得ること;および
(b)部分中和赤泥をセメントと混合して、セメント系組成物を得ること
を含む方法。
【請求項26】
工程(a)において、赤泥のpHが最大約10.5かつ最小約8.2の値に低下する、請求項25に記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項27】
工程(a)の後および工程(b)の前に、
工程(a1)部分中和赤泥を乾燥させて乾燥固体材料を得ること
を含む、請求項25に記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項28】
工程(a)の後および工程(b)の前に、
工程(a1)部分中和赤泥を乾燥させて乾燥固体材料を得ること、
を含み、ならびに工程(a1)および工程(b)の前に、
工程(a2)工程(a1)の乾燥固体材料を粉砕して部分中和乾燥粉砕赤泥を得ること
を更に含む、請求項25に記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項1】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料であって、粒状材料がセメント系材料およびボーキサイト精製残留物の混合物を含む、多孔性粒状材料。
【請求項2】
孔の体積が粒状材料の体積の10%〜90%である、請求項1に記載の多孔性粒状材料。
【請求項3】
孔の少なくとも10%が開放セルまたは連続孔である、請求項1に記載の多孔性粒状材料。
【請求項4】
粒状材料の孔が分布した孔寸法を有する、請求項1に記載の多孔性粒状材料。
【請求項5】
粒状材料の孔寸法が0.1〜2000μmの範囲にある、請求項1に記載の多孔性粒状材料。
【請求項6】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、粒子の各々がセメント系材料およびボーキサイト精製残留物の混合物を含む、多孔性粒状材料。
【請求項7】
細礫、ペレット、ブリケット、押出物、砂利、玉石、ブロック、インターロッキングブロックおよびスラブからなる群より選択される形態を有する、請求項6に記載の多孔性粒状材料。
【請求項8】
汚染物質を含有する流体の処理における、請求項1または6に記載の多孔性粒状材料の透過性塊を含む反応性透過性バリアの使用であって、多孔性粒状材料の透過性塊が汚染物質を含有する流体の流路に配置される使用。
【請求項9】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を形成するための組成物であって、組成物がボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を含み、セメント系結合材が請求項1または6に記載の多孔性粒状材料を形成するのに十分な量で存在する組成物。
【請求項10】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を形成するための組成物であって、組成物がボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を含み、セメント系結合材が請求項1または6に記載の多孔性粒状材料を形成するのに十分な量で存在し、組成物は、組成物を水性媒体中に混合する際に粒状材料内に孔を生じさせ得る孔発生剤を更に含む組成物。
【請求項11】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を形成するための組成物であって、組成物がボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を含み、セメント系結合材が請求項1または6に記載の多孔性粒状材料を形成するのに十分な量で存在し、組成物は、組成物を水性媒体中に混合する際に粒状材料内に孔を生じさせ得る孔発生剤を更に含み、孔発生剤が過酸化水素、有機ポリマーおよび発泡剤より選択される組成物。
【請求項12】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を形成するための組成物であって、組成物がボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を含み、セメント系結合材が請求項1または6に記載の多孔性粒状材料を形成するのに十分な量で存在し、組成物はリン酸塩形成剤を更に含む組成物。
【請求項13】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を製造する方法であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、方法は:
(a)ボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を水性媒体中で混合してスラリーを形成すること;および
(b)スラリーを多孔性粒状材料を形成するのに十分な時間に亘って昇温下で硬化させること
を含む方法。
【請求項14】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を製造する方法であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、方法は:
(a)ボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を水性媒体中で混合してスラリーを形成すること;および
(b)スラリーを型内で硬化させて多孔性粒状材料の凝集塊を形成すること
を含み、型は、多孔性粒状材料に細礫、ペレット、ブリケット、押出物、砂利、玉石、ブロック、インターロッキングブロックおよびスラブからなる群より選択される形態を付与するように形作られている方法。
【請求項15】
汚染物質を含有する流体を処理するための多孔性粒状材料を製造する方法であって、粒状材料が粒子の凝集塊を含み、方法は:
(a)ボーキサイト精製残留物およびセメント系結合材を水性媒体中で混合してスラリーを形成すること;および
(b)スラリーを多孔性粒状材料を形成するのに十分な時間に亘って昇温下で硬化させること
を含み、
硬化の間に孔構造の安定化を助長するために、工程(a)にてリン酸塩形成剤を添加し、残留物および結合材と混合する方法。
【請求項16】
スラリーが約1%〜約99%(重量/重量)のボーキサイト精製残留物および約1%〜約99%(重量/重量)のセメント系結合材を含む、請求項13、14または15に記載の方法。
【請求項17】
スラリーが砂、粉状苛性製鋼スラグ残留物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属酸化物、次亜塩素酸カルシウム、ナトリウムミョウバン、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、石膏、リン酸塩、リン酸、ハイドロタルサイト、ゼオライト、かんらん石、輝石、塩化バリウム、ケイ酸およびその塩類、メタケイ酸およびその塩類、ミョウバングループの鉱物、マガディアイト、シリカ供給物、可塑剤、重合剤、リン酸塩形成剤、空気連行剤、およびこれらのうちいずれか2つ以上の組合せからなる群より選択される添加剤を更に含む、請求項13、14または15に記載の方法。
【請求項18】
ボーキサイト精製残留物が約10.5未満のpHを有する、請求項13、14または15に記載の方法。
【請求項19】
セメント系結合材がトバモライトゲルを形成可能である、請求項13、14または15に記載の方法。
【請求項20】
汚染物質を含有する流体を処理する方法であって:
・請求項1または6に記載の多孔性粒状材料の透過性塊を準備すること;および
・汚染物質を含有する流体を多孔性粒状材料の透過性塊に通過させること
を含む方法。
【請求項21】
部分中和赤泥およびセメントを含むセメント系組成物であって、部分中和赤泥が、カルシウム、マグネシウムまたはそれらの組合せによって付与される、炭酸カルシウム等量で単位リットルあたり少なくとも3.5ミリモルの全硬度を有する水と接触することにより予備処理されているセメント系組成物。
【請求項22】
セメントが組成物中に約1重量%〜約99重量%の濃度で存在し、および部分中和赤泥が組成物中に約99重量%〜約1重量%の濃度で存在する、請求項21に記載のセメント系組成物。
【請求項23】
約0.2重量%〜約3重量%の超可塑性のセメントを更に含む、請求項21に記載のセメント系組成物。
【請求項24】
セルロースエーテル、メチル−ヒドロキシエチル−セルロース(MHEC)およびヒドロキシプロピル−メチル−セルロース(HPMC)からなる群より選択される可塑剤を更に含む、請求項21に記載のセメント系組成物。
【請求項25】
セメント系組成物の製造方法であって:
(a)バイエル法より回収した赤泥を、カルシウム、マグネシウムまたはそれらの組合せによって付与される、炭酸カルシウム等量で単位リットルあたり少なくとも3.5ミリモルの全硬度を有する水と接触させて、部分中和赤泥を得ること;および
(b)部分中和赤泥をセメントと混合して、セメント系組成物を得ること
を含む方法。
【請求項26】
工程(a)において、赤泥のpHが最大約10.5かつ最小約8.2の値に低下する、請求項25に記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項27】
工程(a)の後および工程(b)の前に、
工程(a1)部分中和赤泥を乾燥させて乾燥固体材料を得ること
を含む、請求項25に記載のセメント系組成物の製造方法。
【請求項28】
工程(a)の後および工程(b)の前に、
工程(a1)部分中和赤泥を乾燥させて乾燥固体材料を得ること、
を含み、ならびに工程(a1)および工程(b)の前に、
工程(a2)工程(a1)の乾燥固体材料を粉砕して部分中和乾燥粉砕赤泥を得ること
を更に含む、請求項25に記載のセメント系組成物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2007−516922(P2007−516922A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545844(P2006−545844)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001826
【国際公開番号】WO2005/061408
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506217841)マウント・アスパイアリング・ジオケミストリー・コンサルタンツ・プロプライエタリー・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】MT. ASPIRING GEOCHEMISTRY CONSULTANTS PTY LTD
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001826
【国際公開番号】WO2005/061408
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506217841)マウント・アスパイアリング・ジオケミストリー・コンサルタンツ・プロプライエタリー・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】MT. ASPIRING GEOCHEMISTRY CONSULTANTS PTY LTD
【Fターム(参考)】
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