説明

流体処理装置

【課題】分子運動促進部によって流体を分子運動活性した励起状態となし、この流体にα線放射体2が放射するα線を照射することにより、流体処理を能率よく行うと共に簡潔で廉価な構成にすることができる流体処理装置を提供する。
【解決手段】内部空間を流入口14から送出口16に向けて流体の流路とする枠体4の内側に、α線を放射するα線放射材を備えたα線放射体2を設け、流体にα線を照射して電離させることにより流体処理をする流体処理装置1であって、前記枠体4に流体の分子運動を活性化させる分子運動促進部3を設け、該分子運動促進部3により分子運動活性化をした流体に、α線を照射し流体処理を行なう構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α粒子線の電離作用を利用して水,空気,ガス,燃料用油等流体の殺菌,脱臭,低分子化,活性化,劣化防止等の流体処理を行う流体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、α粒子線(ヘリウム原子)を放射するα線放射材を有するα線放射体を、内部空間を流入口から送出口に向けて流体の流路とする枠体の内側に設け、流体にα粒子線(以下単にα線と言う)を照射して電離させることにより流体処理を行なう流体処理装置は、特許文献1及び特許文献2で示される構成のものが既に公知である。
上記特許文献1のα線放射体は、麦飯石粉末を主体に水晶粉末や酸化チタン粉末、珪酸アルミ化合物粉末等をバインダと混合し、粒径5mm程度に造粒し焼成することにより圧電気現象を示す硬質粒状体となし、この粒状体の表面に酸化トリウムを付着させてα線粒状放射体となし、複数のα線粒状放射体をネット状の保持部材に流通隣接間隔を有して配設した構成にしている。
また特許文献2によるα線放射体は、流体の流通を可能とする保持芯材に固着層を介し、酸化トリウムからなるα線放射材をα線放射セラミック化することにより、照射作用効率の高い構成にしている。
【0003】
上記α線放射体はいずれもα線のもつ大きな電離作用によって、流体分子のイオン化並びに核の人工変換等を生じさせて空気,ガス,油,水等の分子構造を変化させる。即ち、水にあっては強力なイオン化によりクラスタを小さくし、効率のよい水の殺菌,脱臭,脱色等が行なわれる。同様に空気に対しては例えばラザフォードの理論による次式で示される空気分子の核の人工変換を等を発生させ、燃焼効率の改善,脱臭,浮遊菌の殺菌等が行われる。また油類についてはイオン活性化,劣化防止等を行なうことができ、燃料油においては炭素分子結合の切断による小分子化及びラジカル化による燃焼効率を改善することができる。
【特許文献1】特開2005−9898号公報
【特許文献2】特開2008−224233号公報
【0004】
【化1】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2による流体処理装置は、α線に衝突した流体の分子を電離作用によってイオン化し種々改質し所期の効果を奏する特徴を有しているが、α線放射材が放射するα線の線量と放射有効距離に制約があるため、枠体内で流通方向の上流側から下流側に流れる流体分子にα線を効率よく照射し得ない問題がある。そのためα線放射材を保持芯材や粒状体等の保持部材に多量にコーテングすることが試みられるが、この場合には大量のα線放射材を必要とするので、装置価格がコスト高になると共に、α線放射材を保持部材に厚くコーテングすることは困難である等の製造上の課題を生ずる。
【0006】
一方、表面積を大きくした保持部材や、小さな網目にしたネット状の保持部材にα線放射材をコーテングした場合には、α線放射材を薄くコーテングしてもα線量を確保することができるが、枠体内で流通方向に交差する方向に設置するα線放射体の流通抵抗が大きくなる等の問題がある。
この発明は上記課題を解決するため、枠体内で流通する流体の分子運動を活性化させることにより、α線放射体によるα線の照射効率を向上させることができる流体処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための流体処理装置は、第1に、内部空間を流入口14から送出口16に向けて流体の流路とする枠体4の内側に、α線を放射するα線放射材を備えたα線放射体2を設け、流体にα線を照射して電離させることにより流体処理をする流体処理装置1において、前記枠体4に流体の分子運動を活性化させる分子運動促進部3を設け、該分子運動促進部3により分子運動活性化をした流体にα線を照射し流体処理を行なう構成にしたことを特徴としている。
【0008】
第2に、α線放射体2を、α線放射材をコーテングした粒状体からなるα線粒状放射体2aとし、多数のα線粒状放射体2aを枠体4内に移動及び流体の流通を可能に充填する構成としたことを特徴としている。
【0009】
第3に、α線放射体2を枠体4内に設けるフィルタ17の上流側又は下流側に近接させて設けることを特徴としている。
【0010】
第4に、α線放射体2を枠体4内で回転可能に支持することを特徴としている。
【0011】
第5に、分子運動促進部3を、α線放射体2に向けて超音波を発生させる超音波発生部7にすることを特徴としている。
【0012】
第6に、分子運動促進部3を、α線放射体2に向けて磁力線を発生させる磁気発生部6にしたことを特徴としている。
【0013】
第7に、枠体4に、内部を流通する流体に対し別の流体を供給する流体供給ノズル31を設けたことを特徴としている。
【0014】
第8に、枠体4に、内部を流通する流体に対しα線放射体2の上流側又は下流側でミストを供給するミスト供給管23を設けたことを特徴としている。
【0015】
第9に、流体処理装置1の送出口16を別の流体処理装置1aの枠体4に接続し、流体処理装置1によって流体処理した処理流体を、別の流体処理装置1aの枠体4を流通する流体に供給して流体処理をすることを特徴としている。
【0016】
第10に、送出口16を下流側流体処理装置1bの枠体4に接続し、上流側流体処理装置1aによって流体処理した処理流体を下流側流体処理装置1bの枠体4を流通する流体に供給すると共に、この供給部の上流側に高温エネルギを煙突内に供給するバーナ装置36を設けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
上記のように構成した流体処理装置は次のような効果を奏することができる。請求項1の発明により、分子運動促進部が生ずる分子運動活性エネルギによって流体を分子運動活性化及びイオン化させると共に、この励起状態となした流体にα線放射体が放射するα線を照射することにより、照射効率を高めより多くの流体分子及び原子核をα線に接触させ、電離作用を促進し流体処理を能率よく行うことができる。
これにより、空気やガス,水,油類等の浄化,品質機能の改善,劣化防止,活性化、或いは燃料の燃焼効率の向上等の効果をもたらすと共に、流体処理装置を簡潔で廉価な構成にすることができる。
【0018】
請求項2の発明により、各α線粒状放射体は枠体内で移動し流通可能に積層した状態になり、流体分子を粒状体の表面に繰り返し接触させて流体を流通させるので、α線による流体処理を促進することができる。
【0019】
請求項3の発明により、α線放射体をフィルタの上流側又は下流側に近接させることにより、α線放射体をフィルタ又はフィルタの取付け構造を利用して簡単に設置することができる。
【0020】
請求項4の発明により、枠体内でα線放射体を作動させることにより、流通する流体の分子に対しα線放射体から放射されるα線を効率よく接触させ、流体処理を促進することができる。
【0021】
請求項5の発明により、超音波発生部は超音波をα線放射体側に向けて発生させるので、流体分子を運動活性化しα線による照射効率を高め流体処理を能率よく行うことができる。また超音波発生部は枠体の適正位置に省スペースで設置することができると共に、エアークリーナ等の利用装置に対する後付け作業も容易にすることができる。
【0022】
請求項6の発明により、磁気発生部はα線放射体側に向けて磁力線を発生し磁気エネルギによって流体分子を運動活性化させるので、α線による照射効率を高め流体処理を能率よく行うことを可能にする。また磁気発生部は枠体の適正位置に簡単に設置することができる。
また磁気発生部は交流電気により磁力線を発生する交流型にすると、向きを変える磁界エネルギによって流体分子をより運動活性化させるので、α線による照射効率をより高めた流体処理を促進することができる。
【0023】
請求項7の発明により、流体供給ノズルから枠体内の流体に別の流体を簡単に供給することができると共に、複数の流体を混合させた流体処理を行うことができる。
これにより枠体内に供給される別の流体は、α線放射体が放射するα線によって電離させイオン化したものを、枠体内の処理流体と混合させることもでき、混合処理流体をエンジンや燃焼炉,化学合成装置等の各種利用装置に供給することができる。
【0024】
請求項8の発明により、ミスト供給管から枠体内の流体にミストを簡単に供給することができると共に、ミストを流体に混合させた流体処理を行うことができる。これにより枠体内に供給されるミストを、α線放射体が放射するα線によって電離する場合には、イオン化したミストと流体処理された処理流体とを簡単に混合させることもできる。
【0025】
請求項9の発明により、流体処理装置で流体処理した処理流体を、別の流体処理装置の枠体を流通する流体に供給し混合させることにより、流体処理装置によってイオン活性した処理流体によって別の流体処理装置の流体を簡単に処理することができる。また別の流体処理装置には、その枠体内にα線放射体の設置を省略することもできるので、別の流体処理装置の簡潔化を図ることができると共にメンテナンス作業を省力化することができる。
【0026】
請求項10の発明により、送出口を下流側流体処理装置の枠体に接続し、上流側流体処理装置によって流体処理した処理流体を下流側流体処理装置の枠体を流通する流体に供給すると共に、この供給部の上流側に高温エネルギを煙突内に供給するバーナ装置36を設けることにより、上記下流側流体処理装置の枠体の上流側でバーナ装置が供給する高温エネルギによって、例えば煙突内を流れる排ガス中のタール分を燃やして予め除去したのち、上流側流体処理装置による排ガス処理を効率よく行なわせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図10において符号1はα線放射体2と分子運動促進部3とを、流体の処理流路(処理室)を形成する枠体4に設けて流体処理をする流体処理装置である。この実施形態で用いるα線放射体2は、前記特許文献1,2で示される技術に基づき酸化トリウムによる放射エネルギを、4・01〜10MeV程度のα粒子線を放射するようにしている。これによりα線放射体2は、放射するα線を空気や水及び油等の流体を被処理物として照射するとき、公知の作用によって流体を構成する分子又は原子核にα線を衝突(接触)させて電離(イオン活性化)し流体処理(改質)することができる。
【0028】
また空気にα線を照射した場合には、α線によって空気分子の電離作用を強化促進
するので、空気中の79.7%程度を占める窒素(N)を原子核人工変換作用によって水素(H)と酸素(O)とに変化させ、また空気中の水分(H2O)を水素イオン(H+)と水酸基(OH-)とに変化させる。これにより空気は人工的に可燃物に変えられて増加可燃物となり、当該空気を燃料油と共に内燃機関や各種の燃焼装置等に供給して燃焼させるとき完全燃焼運転が可能になる。従って、燃料供給バルブを絞り気味にしても所期の燃焼エネルギを十分に得ることができ、燃料油の消費量を簡単に低減することができる。また排ガスに対し有害成分を低減することができ、また各種ガスに対してもα線はガスが有する成分を改質する。
【0029】
また油にα線を照射した場合には、油中の炭素(C)結合を切断し分子量をより小さくし気化し易い油を得ることができて燃焼促進をすることができる。
また水にα線を照射した場合には、水(H2O)を水素イオン(H+)と水酸基(OH-)とに変化させると同時に、溶存酸素の量により過酸化水素(H22)を発生させることができる。これにより水はα線による流体処理によって、殺菌力を有した機能水に改質することができる。
【0030】
一方、分子運動促進部3は、流体を流通方向(処理方向)上流側から下流側に向けて流通案内させる枠体4に、後述するような磁気発生部6又は超音波発生部7或いは図示しない高周波発生体等のいずれか又はこれ等を組み合わせて設けることによって構成することができる。
そして、分子運動促進部3が発生する分子運動活性エネルギ(以下単に運動エネルギと言う)は、枠体4内を流通する流体の分子運動の活性化及びイオン化等(以下単に分子運動活性と言う)を促進し励起状態にする。
【0031】
即ち、流体の分子は流れ方向(Y方向)及び側方(X方向)並びに合成方向の分子運動を活性化されるので、運動活性した流体分子とα線放射材から定性的に放射されるα線は、互いに接触(衝突)することができる照射率が格段に高められる。これにより一定方向に流れる流体であっても、その分子に対する電離の促進並びに核の人工変換等をより生じさせることができる。
従って、α線放射体2及び放射されるα線に向けて一定方向に流通移動している流体に対し、その分子を側方への揺らぎ運動(分子運動活性)を付与するように分散加速させながらα線と強力に接触させることができるため、α線による流体分子の電離を促進し流体処理を効率よく行なわせることができる。
【0032】
次に図1〜図3を参照し、上記α線放射体2と分子運動促進部3を備えた第1,第2,第3実施形態に関わる流体処理装置1及びその使用態様について説明する。先ず図2で示す第1実施形態の流体処理装置1は、自動車11のエンジン12が備える気化器12aの上流側に設けられるエアークリーナ13のクリーナケースを枠体(処理筒)4となしている。そして、上記処理筒4内にその両端に形成される流入口14と送出口16の間で、α線放射体2と分子運動促進部3とを設けることにより装置を構成している。
【0033】
図示例の流体処理装置1は、ネット型のα線放射体2を処理筒4内に着脱自在に取付けられる、エアーフィルタ17の上流側と下流側の両フィルタ面に対面させた状態で着脱自在に設けている。分子運動促進部3は超音波を発振する超音波発生部7となし、エアークリーナ13の上流側に設置されるα線放射体2に向けて超音波を発振するように設けている。尚、上記超音波発生部7は、十分な分子運動活性を有し且つ市販され採用し易い仕様として、20,000万〜250,000万Hzレベルの超音波を発射するものであることが望ましい。
【0034】
また超音波発生部7は、α線放射体2に対する距離又は向きを調節できるように、処理筒4の下壁に設けた取付部7aに発振頭部を位置調節自在に取付け、自動車11に搭載されるバッテリ(電源)18に、メインスイッチ19と超音波発生器21を設けて接続している。尚、実施形態においてメインスイッチ19は、自動車11の操縦部に設置される図示しないスタータスイッチと連携して作動させるようにしている。
【0035】
図示例の超音波発生部7は、フィルタ(エアーフィルタ)17のフィルタ面を略覆う大きさと形状のα線放射体2に対し、処理筒4に流入口14側を側方に向けて屈曲形成した下壁の略中心位置に設け、α線放射体2の上流側における空気に発射する超音波を略均一に付与させることができる。これにより超音波発生部7はエアーフィルタ17の上流側で空気を超音波によって分子運動活性し、空気分子がα線放射体2を通過するときα線との接触を促進する。尚、超音波発生部7は必要により側方に向けて屈曲させた上壁や、処理筒4の側壁(周壁)に必要数設けることができる。
【0036】
この構成により自動車11のエンジン12は、流体処理装置1の流入口14から吸入した外気(空気)を、超音波発生部7と第1のα線放射体2とエアーフィルタ17と第2のα線放射体2を通過させ燃焼室に供給して運転される。
このとき空気は、α線放射体2の上流側で超音波発生部7による超音波エネルギが付与されるので、分子運動の活性化及びイオン化され励起状態となり、より多くの窒素原子核にα線が衝突し易くなり多くの核の人工変換を起こして、多量の水素及び酸素等を生成することになる。
【0037】
このように流体処理された処理空気は、気化器12aで燃料油と混合して完全燃焼化を促進し燃焼効率を向上させることができる。
また空気中の水分も同様にα線と接触し水素と酸素に分離し増加燃焼物になるので、燃焼効率をより高めて燃料油の消費量を低減すると共に、排ガス中の有害成分を低減させてクリーンな排ガスとして排出することができる。
【0038】
そして、図示例の流体処理装置1は、上記のように1次流体処理をしたのちエアーフィルタ17を通過させて濾過した空気を、エアーフィルタ17の下流側に設置するα線放射体2を通過させ、燃焼室の直前でα線の照射をさらに行うことができる。従って、前記1次流体処理に併せて流体処理をより促進させた空気を燃焼室に送るため、エンジン12の燃焼効率をより高め完全燃焼化の促進と、燃料消費量の低減並びに排ガスの浄化をより効果的にすることができる等の特徴がある。
【0039】
尚、エアーフィルタ17はエンジン毎にその能力及び形状が定められているので、α線放射体2をエアークリーナ13の構造を利用して設置する場合には、該α線放射体2の設置数並びに形状や大きさは、当該エアークリーナ13の形状や流入量に対応して設置される。また図示例の流体処理装置1は、2枚の通風可能な網状のα線放射体2を、エアの流通方向と交差し上流側と下流側を仕切るようにエアーフィルタ17側に保持させて設置したが、このα線放射体2は内部のエア流通抵抗を少なくするために1枚にすることもでき、エアーフィルタ17の上流側又は下流側のいずれかに設置することもできる。
【0040】
次に図3を参照し、第2実施形態に関わる流体処理装置1とその使用例について説明する。尚、以下各実施形態において前記した実施形態のものと同様な構成及び作用については説明を省略する。図示例のエアークリーナ13は、第1実施形態と同様にα線放射体2をエアーフィルタ17に対面させており、分子運動促進部3を交流電気によって磁気を発生させる交流型の磁気発生部6にしている。この磁気発生部6はα線放射体2の外周を囲むように所定幅を有して処理筒4に装着し、電源18にメインスイッチ19及び交流変調磁場発生装置21aを介して接続している。また磁気発生部6は処理筒4に沿って位置調節可能に設け、且つ交流変調磁場発生装置21aにより発生磁力を調節可能にしている。
【0041】
上記構成による流体処理装置1は、メインスイッチ19がON状態でスタータスイッチをONにするとエンジン12が始動され、磁気発生部6が通電により磁気を発生し、処理筒4の外周から流路内に向けて交流磁界を形成する。これによりα線放射体2を磁界内に置くことができ、α線放射体2に至る空気は磁気エネルギによって空気分子の運動が活性化し、α線の照射による流体処理が促進される。
【0042】
このとき磁気発生部6は交流電気により磁界の向きを瞬時的に変えるので、磁場の状態を激しく変える磁力によって、空気分子は分子運動をより活性化させた励起状態にすることができる。これにより例えば永久磁石を使用する場合よりも、α線による空気の電離作用効率を上げることができる。
さらに磁気発生部6は超音波発生部7のように作動部分を有しないので、装置の耐久性を高めることができ、メンテナンス作業を省力化することができる。また磁気発生部6は処理筒4に対しその外側に簡単に設けることができるので、既存の自動車等のエンジン12に対しても流体処理装置1の後付け作業を容易にすることができる。また磁気発生部6は処理筒4内を流れる空気(流体)に直接接触しないので、流体による汚損や早期の損耗等を防止し耐久性を向上させることができる。
【0043】
尚、処理筒4には前記交流型の磁気発生部6に限ることなく、永久磁石型の磁気発生部6を設けることもできる。また点線で示すように処理筒4内に、複数の永久磁石を流通間隔を有し流通方向に交差させて設けることもできる。この場合は隣接する永久磁石は同極を互いに対向させて設けると、反発磁力によって分子運動活性をより強くすることができる。
【0044】
また上記交流型の磁気発生部6と永久磁石型の磁気発生部6とを併設した構成にすることもでき、この場合には交流型の磁気発生部6による磁界に制約があるとき、制約部分を永久磁石型の磁気発生部6によって簡単に補うことができる。さらに超音波発生部7も処理筒4に簡単に設置することができるので、必要とする箇所の分子運動活性を容易に補填することができ、大型エンジンや各種燃焼装置に適応した流体処理装置1にすることができる。
【0045】
次に図4を参照し、第3実施形態に関わる流体処理装置1とその使用例について説明する。この例では第2実施形態と同様なα線放射体2と磁気発生部6及びエアーフィルタ17を有するエアークリーナ13において、該エアーフィルタ17の下流側で処理筒4の一部に、ミスト発生装置22のミスト供給管23を設けた流体処理装置1にしている。
上記ミスト発生装置22は、ミスト発生部24と該ミスト発生部24内にミスト材を供給する供給部26とからなり、ミスト発生部24で発生するミストを断熱部材で覆ったミスト供給管23から、処理筒4内に供給しエンジン12に供給することができる。
【0046】
図示例のミスト発生装置22は、ミスト発生部24をミスト供給管23の基部を上部に設けるタンクとし、該タンクの底部をエンジン12の排気管25に取付けている。これにより供給部26から水を滴下状に供給し、高温になる排気管25による伝熱により蒸発させて、発生する水蒸気(ミスト)をミスト供給管23を介し処理筒4に供給することができる。
上記構成からなるミスト発生装置22を備えた流体処理装置1は、ミスト供給管23から供給されるミストを、上流側で前記実施形態と同様に処理された処理空気に合流し、混合させたミスト混合空気をエンジン12に供給することができる。
【0047】
このときα線が照射されるミストの水分子は、処理空気或いはα線の照射によって電離が起こり、水素(H)と酸素(O)になり可燃物に変化するため、燃焼増量材として燃料になり油と混合し燃焼を促進する。従って、ミスト発生装置22を備える流体処理装置1は、燃料の完全燃焼化を促進することができエンジンの燃料消費量を格段に低減させ、且つクリーンな排ガスにすることができる。この際ミストを供給方向規制手段或いは供給ガイド構造によってトルネード(渦流)状にして供給すると、ミスト混合空気を加速させて燃焼効率をより向上させることができる。
【0048】
またα線放射体2は点線で示すように、ミスト供給管23の供給口の下流側に設けることができる。この場合にはミストに、α線を直接的に照射することができるので、水分子の電離をより促進させることができる。この際にネット状のα線放射体2は、処理筒4内の形状に合わせて空気の流通方向と交差させ、上流側と下流側を仕切るように内挿して設置すると、拡散する各ミスト粒に対しα線を効率よく照射することができる。
尚、ミスト供給管23をエアーフィルタ17の下流側に設けるものでは、大粒ミストによりエアーフィルタ17を濡らさない等の利点がある。
【0049】
また図示例のエンジン12は空気処理用の流体処理装置1に併せて、図9で後述するような燃料処理用の流体処理装置1を設けることにより、燃料油を予め流体処理することによって改質された処理燃料油をエンジン12に供給するようにしている。これによれば空気と燃料油を共に流体処理し改質するので、燃焼効率及び燃料消費量等の改善を相乗効果を有して改善することができる。
【0050】
尚、上記ミスト発生装置22は、排気管25に限定することなくエンジン12で加熱される任意箇所に設けることができる。またミストの発生供給手段は、水蒸気発生型の他に例えば超音波発生素子を利用して液体をミスト化させる手段にすることもできる。
また上記のような流体処理装置1を、例えば排ガス処理や化学プラント等でガスや液体の処理に用いる場合には、ミスト発生装置22は水に限ることなく油や薬液をミスト化して供給することもできる。
【0051】
また流体処理装置1をトラックや船舶等大型エンジンのエアークリーナ13に使用する場合は、当該エアークリーナ13は一般に円筒ドラム状の処理筒4内に円筒状に形成されたエアーフィルタ17が内装されているところ、この構造を利用して例えばエアーフィルタ17と処理筒4との間に形成される空間部内に、ネット状のα線放射体2をエアーフィルタ17に巻き付けるように装着し、且つ処理筒4の外周に分子運動促進部3を設けることが望ましい。この際エアーフィルタ17はエンジン毎にその能力及び形状が定められているため、α線放射体2の設置数並びに形状や大きさは、エアークリーナ13の形状や濾過能力等に対応して設ける。
【0052】
次に図5,図6を参照し、第4実施形態に関わる流体処理装置1及びその使用例について説明する。この流体処理装置1は円筒状の処理筒4の内部に、上流側からエアーフィルタ17と永久磁石型の磁気発生部6と回転型のα線放射体2と永久磁石型の磁気発生部6とネット型のα線放射体2と保護用ネット24を順次配設している。
処理筒4は外周に所定の間隔を有する空間部(流体供給室)25を気密に形成する外部カバー26を設け、且つ流入口14側に流入管27を接続すると共に、流出口16側に流出管28を接続している。尚、エアーフィルタ17は、点線で示すように流入口14側に設置することもでき、また不要の場合は除去することができる。
【0053】
上記処理筒4には、α線放射体2が位置する外周に交流型の磁気発生部6を設置し、必要により超音波発生部7を所望箇所に設置し、また前記のものと同様なミスト発生装置22のミスト供給管23を設け、且つ複数の流体供給ノズル31を設けている。
流体供給室25は、外部に配置される流体供給装置30から送られる空気やガス又は各種の液体を、各流体供給ノズル31から処理筒4内の適所に供給することができる。
流体供給装置30は前記実施形態或いは本実施形態のものと同様な流体処理装置1と同様な構成を備え、当該流体処理装置1で処理した空気を処理筒4内に供給する。
【0054】
α線放射体2は処理筒4内で流体の流通方向と交差する方向に作動させることにより、α線と空気分子との接触を促進する。即ち、実施形態のα線放射体2は図5,図6(B)に示すように複数のプロペラ形状をなすネット型の羽根体4aとしており、各羽根体4aは処理筒4の中心に沿って支持される回転軸32に放射方向に突設する構成にしている。 図示例の回転軸32は両端を、処理筒4内に横断方向に平行状に並べて固定される、複数の棒状永久磁石型の磁気発生部6に設けた軸支部33に回転可能に軸支している。
【0055】
また複数の羽根体4aは、回転軸32の軸心方向に所定間隔を有し且つ軸心回りに各羽根体4aの位相を変えて立設することにより、処理筒4の断面の全面に流通方向視で各羽根体4aを臨ませ、各α線放射体2に空気を効率よく接触させるようにしている。
従って、上記構成されるα線放射体2は、プロペラ形状の各羽根体4aが空気の流通力(風圧)を受ける合成力によって回転軸32を中心に回転するので、α線と空気分子との接触をより促進した流体処理をすることができ、且つ流通抵抗を大きくしないため羽根体4aの数を多くし流体処理能力を増大させることができる。
【0056】
尚、羽根体4aはネット状のものに限ることなく、捻り板状のプロペラ体にα線放射材をコーテングしたものにすることができる。また羽根体4aからなるα線放射体2は、回転軸32を回転駆動装置によって強制的に回転させると、流体を攪拌しながら流通方向に加速させるので、流通抵抗を軽減した流体処理をすることができる。また回転するα線放射体2は、付着しようとする塵埃や水滴等を遠心力によって付着防止するので、α線の照射作用を長期保持し清掃等煩雑なメンテナンス作業を省力化することができる。
【0057】
またα線放射体2は前記羽根体4aの形状に限定することなく、例えばα線放射材を備えた螺旋形状にすることもでき、この場合には空気を流通させる間に螺旋面に沿って案内するので、α線と空気分子との接触をより促進すると共に空気に渦流を生じさせて流通することができる。また螺旋体からなるα線放射体2を回転駆動する場合には、固定支持した場合より流通抵抗を低減できると共に、下流側に向け渦流の発生を付勢し流通加速させることができる。また回転軸32は磁気発生部6の構成部材にすることができる。さらにα線放射体2は上記のような回転作動に限ることなく、処理筒4内で任意方向に往復作動や振動させる手段によっても、α線を流体分子に効率よく接触させて流体処理をすることができる。
【0058】
以上のように構成される流体処理装置1は、流出口16側からエアーフィルタ17を介して供給される空気を、最上流側の永久磁石型の磁気発生部6が分子運動活性させ、これを回転するα線放射体2から放射されるα線に接触させて一次流体処理する。次いで一次流体処理された空気は、交流型の磁気発生部6による磁界及び超音波発生部7による超音波を受けて、前記した分子運動活性環境下で二次流体処理され、さらに最下流側に設置されるネット状のα線放射体2を通過するとき三次流体処理され、流出口16から流出管28へ移送される。またミスト供給管23から必要により供給されるミストも、空気と混合しながら同様に効率よく流体処理される。
【0059】
これにより空気とミストは、同一の処理筒4内で共に能率よく流体処理することができ、均質な混合状態で図示しないエンジンや燃焼炉,化学合成装置等の各種利用装置に供給することができる。
また実施形態の流体処理装置1は処理筒4内の適所に、流体供給ノズル31を介して空気を補給したり、流体供給装置30で流体処理された処理空気やガスを簡単に補充することができる。従って、上記各種利用装置で必要とするガスや液体を、処理筒4に同時的に供給し空気処理に併せて能率よく流体処理することができる。
【0060】
また流体処理装置1は、各種の流体を複合的に供給可能として同時的に混合し流体処理をするので、処理流体を燃焼用に限ることなく、空気浄化装置や排ガス処理装置並びに、α線により複数分子を個別分子に電離して行なう化学合成プラント等の製造装置や、その前処理用装置等として用途を拡大することができる等の特徴がある。尚、上記のような各種利用装置において流体処理装置1は、流体を加熱する過熱部や流体を冷却する冷却部を必要により所望箇所に簡単に付設できるため、多様な流体処理を高性能且つ廉価に行うことができる。
【0061】
次に図7,図8を参照し、第5実施形態に関わる流体処理装置1及びその使用例について説明する。この実施形態に関わる流体処理装置1は、例えば油,石炭,木材等の各種燃料を燃焼させる燃焼装置35において、その排ガスを排出する排気路(煙突等)に設置する例を示す。この例によれば、排ガスをα線放射体2によって流体処理し、有害成分の無害化又は低無害化を可能にすることができると共に、高性能且つ廉価に構成することができる。
【0062】
図示例の排ガス処理装置1は煙突の中途に排ガスの流通方向の上流側から、バーナ装置36で発生させた高温エネルギ(火焔や高温空気等)を煙突内に供給する燃焼管37と、前記のものと同様な流体供給装置30となる上流側流体処理装置1aの流体供給ノズル31とを煙突内に臨設し、これらの最下流側に下流側流体処理装置1bを設けている。また煙突の排ガス口には雨水の浸入を防止する笠状のカバー28aを設け、該カバー28aと排ガス口との間に筒状に形成したネット型のα線放射体2を付設している。
【0063】
この排ガス処理装置1のバーナ装置36は、バーナ部で発生させる火力を燃焼管37を介して煙突内に供給するため、排ガス中のタール分を燃やしてタール処理する排ガスの一次排ガス処理を行なう。これによりバーナ装置36は、下流側に設置される流体処理装置1bによる排ガス処理(流体処理)の処理負荷を軽減しつつタール処理を効率よく行なわせ、且つタール付着による装置の汚損や処理負荷の増大等を防止する。
この際に流入管27内に渦流案内壁38を形成し燃焼管37から供給する火焔を渦巻き状に案内させるようにすると、燃焼ガスを下流側に向けて竜巻状に発生させることができ、タールの燃焼をより促進しタール処理効率をより向上させて、排気をよりスムーズにすることができる。
【0064】
流体供給装置30は上流側流体処理装置1aによって、予めα線放射体2によって空気処理をした処理空気を、上記一次排ガス処理が行なわれた排ガスに対し、流体供給ノズル31から供給し二次排ガス処理を行なうようにしている。
即ち、上記流体供給装置30は、ブロア等で構成される空気供給器39によって供給される空気を、図8で示す構成の上流側流体処理装置1aによって前記実施形態のものと同様に流体処理し、イオン活性させた処理空気を煙突内の供給部で排ガスに供給し混合させることができる。
これにより排ガスは処理空気によって強力なイオン化作用を受けるので、イオン化している排ガス中の、例えば一酸化炭素(CO)に対してイオン化された酸素(O)がこれを強力に酸化し、二酸化炭素(CO2)に変えて無害化する。また同様に他の有害成分も酸化又は還元されるため無害化されて下流側に送られる。
【0065】
図示例の上流側流体処理装置1aは、ネット型のα線放射体2を縦筒状に形成し、処理筒4内でモータ41の回転軸42によって回転可能に支持される板状の回転部材43に着脱可能に取付け、且つ処理筒4の外周に交流型の磁気発生部6を設けた構成にしている。
これにより流体処理装置1は、回動するα線放射体2に流入口14から供給される空気を通過させて流出口16から送り出す際に、図5の第4実施形態で示したものと同様に処理筒4内を磁気発生部6によって空気分子の運動活性環境となし、この処理筒4内で筒状のα線放射体2を回転作動させるので、空気は攪拌されながらα線放射体2を複数段に横断通過することになり、空気分子とα線との接触が一層促進されて流体処理される。
【0066】
また図8に点線で示すように、回転する筒状のα線放射体2内にネット型のα線放射体2を放射状に設けると、回転による空気の攪拌をより促進しながら空気分子とα線との接触が一層促進され処理漏れを防止した流体処理を行うことができる。
尚、この上流側流体処理装置1aには、側方に設置される洗浄用ノズル44から洗浄液を回転する筒状のα線放射体2に噴射させて自動的に洗浄すると共に、洗浄済みの洗浄液を排液口46から排出するメンテナンス構造を設けている。
【0067】
次に煙突の最下流側に設置されて排ガスの三次排ガス処理を行なう第5実施形態に関わる下流側流体処理装置1bについて説明する。この下流側流体処理装置1bは処理筒4を煙突の直径より大きなドラム状に形成しており、その流入口14側に下流側の煙突を形成する流入管27を接続し、流出口16側に上流側の煙突を形成する流出管28を接続している。そして、処理筒4は内央部に流入口14に対面させて下向き皿状に形成したネット型のα線放射体2を設け、このα線放射体2の中心部上方に超音波発生部7を下向きに設けている。また処理筒4の内周には、ドーナツ状に形成したネット型のα線放射体2を、上記皿状のα線放射体2の側方上方に迂回状の流通間隔を形成して設けている。また処理筒4の内周には、板状体にα線放射材をコーテングしたパネル型のα線放射体2を貼着している。
【0068】
また前記超音波発生部7とは別の分子運動促進部3としての交流型の磁気発生部6は、処理筒4の外周と流入管27の終端部の外周に設けている。さらに前記皿型のα線放射体2の下面には、永久磁石型のα線放射体2を必要により設置するようにしている。
上記構成による下流側流体処理装置1bは、流入口14から供給される排ガスを分子運動促進部3によって処理筒4内で分子運動を活性化させる。この分子運動活性環境下において、先ず下向き皿状のα線放射体2によって流体処理したのち、外周部分から流出する排ガスを上方のα線放射体2によって漏れなく流体処理し、パネル型のα線放射体2が処理筒内壁に沿う排ガスを処理するので、三次排ガス処理の完全化とスムーズな排出を行うことができる。
【0069】
以上のように構成される流体処理装置1は、タールを除去する一次排ガス処理と、α線放射体2により流体処理された処理空気を排ガスに供給混合する二次排ガス処理(排ガス処理空気改質処理)と、排ガスを処理筒4内のα線放射体2を通過させてα線を照射する三次排ガス処理等を、煙突内で順次一連に行なうことができるため、大量の排ガスであっても能率よく流体処理しクリーンに排出することができる。
【0070】
上記流体処理において上流側流体処理装置1aを備えた流体供給装置30は、下流側に設置される径大な処理筒4内に処理空気を強制的に供給するので、容量の大きい処理筒4内で排ガスと十分に混合させて排ガス処理をより確実に促進することができる。また処理筒4内のα線放射体2及び内壁等の汚損を抑制することができ、装置の簡潔化を図ることができると共にメンテナンス作業を省力化することができる。
この実施形態では上流側流体処理装置1aで流体処理した処理流体を、下流側流体処理装置1bの枠体4を流通する流体に供給しこの供給部で混合させて流体処理をするので、その処理筒4内へのα線放射体2の設置を不要にすることもでき、α線放射体2を汚損させることなく、装置の簡潔化とメンテナンス作業の省力化を図ることができる。
【0071】
尚、処理筒4のα線放射体2及び磁気発生部6等は、流体供給装置30による排ガス処理が十分な場合には、その設置を省略することができる。
さらに排ガス処理装置1aは、必要によりミスト供給管23を設けると、前記実施形態のものと同様なミスト処理を付加的に行なうことができ、排ガスの状況に応じ清浄化をより促進することができる。また処理筒4に前記上流側流体処理装置1aのもの同様な洗浄装置を設け、図示しない洗浄用ノズルから洗浄液を噴射させるようにすると、メンテナンス作業を省力化することができる。
また上記流体処理装置1は排ガス処理の他、食材加工或いは畜舎や工場等の室内空気の脱臭や清浄化並びに酸素量の増大化を効果的に行うことができる。この場合にはバーナ装置36や下流側流体処理装置1bの設置を省略した筒部内に、室外の空気を取り入れて室内に供給すると共に、上流側流体処理装置1aに室内の空気を供給することが望ましい。
【0072】
次に図9,図10を参照し、第6実施形態に関わる流体処理装置1とその使用例について説明する。この流体処理装置1は図4で示す第3実施形態においてエンジン12の燃料配管系12bに前記したように設けると、燃料改質用の液体処理装置として利用することができる。この例では処理筒4を断面円形状のパイプとし、内装させるα線放射体2は前記特許文献1に示されるものと同様の、表面にα線放射材をコーテングした多数の粒状体(以下α線粒状放射体と言う)2aによって構成している。上記構成による流体処理装置1を通過する流体のうち、油類は多数のα線粒状放射体2aによって強力な電離作用を受けて活性化,劣化防止等を実現することができ、燃料油の場合は炭素分子結合の切断による小分子化及びラジカル化によって燃焼効率を改善することができ、また排ガスをクリーンにすることができる。
【0073】
図示例の流体処理装置1は、処理筒4内に前記α線粒状放射体2aと、処理筒4内で所定量のα線粒状放射体2aを仕切り保持する円盤ネット状のセパレータ47を挿入した状態で、流入口14と流出口16に複数の流通孔48aを有する蓋48を設けた構成にしている。また分子運動促進部3は、交流型の磁気発生部6を処理筒4の外周で少なくとも下流側位置に設けた構成にしている。
そして、右側の蓋48に継ぎ手49を介し燃料配管である流入管27を、また左側の蓋48に継ぎ手49を介し送出管28を接続し、図4で示す流体処理装置1を備えた燃料配管系を構成する。
【0074】
上記構成において複数のセパレータ47は、棒状の芯材51に所定間隔を有して中心部を支持することにより、処理筒4内に複数の処理室を区画形成している。また各処理室内にはスペースに応じた所定数のα線粒状放射体2aを入れることにより、各α線粒状放射体2aが自由に移動する移動空間を形成し、目詰まりの発生を防止し流体抵抗の増大を抑制している。また燃料油が下流側に流動するとき、各処理室内のα線粒状放射体2aは、各セパレータ47に堰き止められて移動可能に集積し、且つ隣接する処理室側への移動を規制される。
【0075】
そして、流体の流通に基づきα線粒状放射体2aを下流側に移動集積させた状態で、上流側のセパレータ47と蓋48との間に空間部(スペース)を確実に形成するので、処理筒4内にセパレータ47を設けないで多量のα線粒状放射体2aを入れた場合に比べ、燃料油の流通抵抗を低減することができる。従って、処理筒4を長大に形成しα線粒状放射体2aを多量に入れた場合でも、燃料油の流通を妨げることなく流体処理性能を向上させることができる。
【0076】
また各α線粒状放射体2aは各処理室内で燃料油の流れや振動による移動運動を自由にするので、流通する燃料油は各α線粒状放射体2aとの表面接触を十分となしα線による流体処理を促進する。さらに磁気発生部6による燃料油の分子運動活性環境下において、燃料油処理がより促進されるので、燃料油の燃焼効率を向上させると共に、排ガス中の有害物をより低減することができる。
【0077】
また上記流体処理装置1には処理筒4の外周に、前記したものと同様の流体供給ノズル31を設け、処理筒4内の適所に空気等を簡単に供給することができる。この流体供給ノズル31は上流側のセパレータ47の下流側に近接させて設けることが望ましく、この場合には処理室の上流側に空気を供給することができるので、下流側に集積状態になるα線粒状放射体2aに支障されることなく、流体処理された処理空気を燃料油に混合することができる。
【0078】
燃料油に処理空気を混合した空気混合燃料油は、下流側でα線放射体2が集積することによって形成される複雑に屈折した小隙間を通るとき、複数のα線粒状放射体2aに表面接触しつつα線照射による流体処理が繰り返されるため、より微細な気泡(ナノバブル)を含有する改質燃料油にすることができる。
このように処理された改質燃料油はエンジン12に供給すると、より燃焼効率を上げると共に、排ガス中の有害物の低減並びに燃料の消費量も低減することができる。
【0079】
尚、前記芯材51は永久磁石型の磁気発生部6を兼用する構成にすることができ、この場合には処理筒4の中心部の磁力を簡単に補うことができるので、交流型の磁気発生部6の小型化を図ることができる。また交流型の磁気発生部6を用いない場合には、芯材51又はセパレータ47を永久磁石型の磁気発生部6にすると、より簡潔で廉価な構成によって流体処理をすることができる。またα線放射体2の下流側の中央部位には、例えば流通を部分的に規制する流通調節板52を芯材51に設けるか、セパレータ47の中央部分の流通孔48aを小径にすると、流体を局部的な流出を抑制しα線放射体2に均質的に接触させることができる。
【0080】
また図示例の流体処理装置1は、α線放射体2を多数の粒状体からなるα線粒状放射体2aにしたが、図10で示すように前記した各実施形態で示されるものと同様のネット型又はシート型(板状体)のα線放射体2にすることができる。
即ち、図10(A)に示すα線放射体2は、表面にα線放射材を備えたシート型のものを渦巻状に丸めることにより、処理筒4の断面方向に所定の流通間隔を形成し挿入している。またα線放射体2はネット型のものを所定長さで大小複数の円筒状に形成し、処理筒4の断面方向に所定の流通間隔を有して互いに挿入保持させることもできる。
【0081】
図10(B)に示すα線放射体2は、上記のものと同様のネット型又はシート型のものによって、流通方向に沿う所定長さの単位処理室を、断面方向に複数形成することにより流通方向視で蜂の巣状に設けている。これによれば径大な処理筒4内でも単位処理室毎に区画した状態で流体処理を能率よく行なうことができる。また単位処理室は板状体に流通方向の捻りや傾斜又は湾曲面を加えると、単位処理室内を流通する流体をα線放射材に直接的に接触させることができると共に、単位処理室長さを短くして装置の小型化並びにα線放射材の節約を図ることができる。
【0082】
さらに板状体に流通方向に交差する傾斜や捻りを有する各単位処理室を、流通方向に互いに逆向きに配設すると、最下流側から流体に渦流を形成し送り出すことができる。
また上記のように構成される処理筒4は、複数のものを図示しない連結管を介し簡単に連結することができると共に、流体を長い距離にわたり目的に応じた流体処理をすることができる。従って、各種利用装置が必要とする流体処理性能を生産性の高い構成によって廉価に製作することができる。また上記連結管には必要による前記ミスト供給管23や流体供給ノズル31,分子運動促進部3等の付加構造の設置を容易にすることができる。
【0083】
さらに上記のように流体を長い距離にわたって処理する場合には、図示しない長いパイプ又はホースを処理筒4とし、その内部に既述のα線粒状放射体2a或いは各種のα線放射体2を入れて処理することができる。この場合には長い処理筒4はいか様な形状にも長さと径を選択し曲げ形成することができるので、各種の目的に応じた流体処理及び利用装置への設置を行ない易くすることができる。また処理筒4は例えば可撓性を有するホースにしてα線粒状放射体2aを入れると、円形断面又は任意形状断面の柱部材に対し螺旋状に巻き付けることが容易となり、流体を長い螺旋経路に沿って移動させるので各種の気体に対しても効率のよい流体処理を促進することができる。また流体処理装置1の構造を省スペースにできると共に、廉価に製作することができる等の利点がある。
【0084】
尚、上記実施形態の流体処理装置1は、燃料油に限らず汚れた油並びに廃油の浄化処理や食用油の改質等にも簡単且つ廉価に使用することができる。
上記構成による流体処理装置1によって水を流体処理する場合は、水分子は集合状態にある各α線粒状放射体2aを通過する間にα線の照射を幾重にも受けるので、処理水は過酸化水素(H22)の発生及びH++OH-イオンを効率よく生成する。
従って、改質された生成水は植物や庭木に散布等の手段によって供給すると、細菌や病原体に作用しH+又はOH-イオンの安定化反応によって殺菌するため、消毒剤を必要としないで病気の発生を抑制したり植物本来の治癒力を高めることができる。また生成水は殺菌後に上記作用反応を速やかに終えると共に、クラスタの小さい水分子になっているため動植物への吸収をより促すことができる。
【0085】
即ち、この生成水によれば、消毒剤の使用を抑制した作物の栽培育成を合理的に行うことができると共に、手洗いや排泄物の洗浄、まな板等調理用品の洗浄やカビの発生予防等も行うことができる。また薬害のある消毒剤や洗剤に依存することなく、人体や環境に優しい殺菌洗浄等によって、ノロウイルス等の院内感染予防分野や食品加工施設或いは浄水施設等への設置も速やか且つ低コストに実現することができる。
【0086】
さらに、実施形態の構成の流体処理装置1は、上記α線粒状放射体2aに代えてα線のコーテングを省略したセラッミック粒状体(以下ハードボールと言う)を処理筒4内に多数充填して使用することもできる。即ち、この場合のハードボールは特許文献1で示される、内部層のセラミック原料が麦飯石粉末を主成分とし、圧電気現象を示す強誘電体として水晶粉末及び酸化チタン粉末と、バインダとしての珪酸アルミ化合物粉末等を添加混合して、所要の形状・サイズの粒状体に形成後焼成した硬質セラッミック粒状体であることが望ましい。
【0087】
これにより圧電気現象を有するハードボールを多数収容した流体処理装置1は、水の流通により各ハードボールが互いに接触し合う衝突力や表面が水と接触する摩擦によってハードボール内に生じた電気の放電が無限的に繰り返される結果、水分子をH++OH-にイオン化して最小レベルの水クラスタを形成する。また水道水中に含有する塩素等の発癌性のある有害物質を分解して無くしたよい水を簡単に生成することができる。
【0088】
従って、水を流体処理する応用装置としてハードボールを内装した流体処理装置1は、前記α線粒状放射体2aのように過酸化水素を生じることなく、且つ水道水でも低コストに活性化処理することができるので、各家庭の水道や業務用水道,水処理用,温泉等に簡単に設置でき好適化することができる。また上記流体処理装置1は処理筒4を上下方向に向けて設置すると共に、下側から流体をハードボールの自重に抗して供給すると、ハードボールの機能をより発揮させて流体処理を促進する等の特徴がある。
【0089】
また上記生成水は管路内にカルシウムイオンを付着させないので、スケールの付き難いボイラ用水として廉価に使用することができる。また上記流体処理装置1はボイラの所要箇所に簡単に組み込んで使用することもできる。
また処理筒4の中途で空気を供給混合することが容易で、微細気泡を含有したイオン活性の高い気泡含有活性水を簡単且つ廉価に生成することができる。これにより各種燃焼装置に対し、気泡含有活性水を燃料と共に供給させることを容易に可能とし、また界面活性を向上するため燃料との混合率が高まり乳化の完全化を行い燃焼し易くする。従って、完全燃焼化を図りつつ燃料の節約並びに排ガスの清浄化等も促進することができる。
【0090】
さらに前記各実施形態で示したようにα線放射体2或いはα線粒状放射体2aを有する流体処理装置1は、排ガス中のCOを低減させる装置はもとより、COを有効資源に利用する手段と方法をも容易に可能にするものである。即ち、流体処理装置1は排ガス中のCOに対しα線を接触させるので、COをO+COに簡単に分解することができる。そして、分解されたCOを触媒を用いて固定し、固定されたCOに再びα線を接触させることによってC+Oに分解し、Cを触媒を用いてCに安定化させて回収する。
【0091】
次いで回収されたCにHを混合し、触媒内でα線を接触させて炭化水素系化合物を生成させる。以上のように流体処理装置1を利用して、COの低減又は回収を行うことにより、排ガスを燃料又は燃料増加剤に変えることができるので、簡単且つ経済的な手段によって地球温暖化防止に大きく貢献することができる等の特徴がある。
尚、流体処理装置1によるCO処理は、煙突や排気管等を流れる排ガスに限ることなく、各種のCO低減対策用途に装置の大型化を防止し簡単に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の流体処理装置を自動車エンジンに設けた構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に関わる流体処理装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に関わる流体処理装置の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に関わる流体処理装置の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に関わる流体処理装置の構成を示す断面図である。
【図6】(A)は図5のA−A線断面図である。(B)は図5のB−B線断面図である。(C)は図5のC−C線断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態に関わる流体処理装置の構成を示す断面図である。
【図8】図5の流体供給装置の構成を示す平断面図である。
【図9】本発明の第6実施形態に関わる流体処理装置の構成を示す断面図である。
【図10】図9の処理筒内に設置されるα線放射体の別実施形態を示し(A)はネット型のα線放射体を丸めた状態を示す断面図である。(B)は蜂の巣状に形成したα線放射体の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 流体処理装置
1a 別の流体処理装置
2 α線放射体
2a α線粒状放射体
3 分子運動促進部
4 枠体(処理筒)
7 超音波発生部
14 流入口
16 送出口
17 フィルタ
23 ミスト供給管
31 流体供給ノズル
36 バーナ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を流入口(14)から送出口(16)に向けて流体の流路とする枠体(4)の内側に、α線を放射するα線放射材を備えたα線放射体(2)を設け、流体にα線を照射して電離させることにより流体処理をする流体処理装置(1)において、前記枠体(4)に流体の分子運動を活性化させる分子運動促進部(3)を設け、該分子運動促進部(3)により分子運動活性化をした流体にα線を照射し流体処理を行なう構成にしたことを特徴とする流体処理装置。
【請求項2】
α線放射体(2)を、α線放射材をコーテングした粒状体からなるα線粒状放射体(2a)とし、多数のα線粒状放射体(2a)を枠体(4)内に移動及び流体の流通を可能に充填する構成とした請求項1の流体処理装置。
【請求項3】
α線放射体(2)を枠体(4)内に設けるフィルタ(17)の上流側又は下流側に近接させて設ける請求項1又は2の流体処理装置。
【請求項4】
α線放射体(2)を枠体(4)内で回転可能に支持する請求項1又は2又は3の流体処理装置。
【請求項5】
分子運動促進部(3)を、α線放射体(2)に向けて超音波を発生させる超音波発生部7にする請求項1又は2又は3又は4の流体処理装置。
【請求項6】
分子運動促進部(3)を、α線放射体(2)に向けて磁力線を発生させる磁気発生部(6)にした請求項1又は2又は3又は4又は5の流体処理装置。
【請求項7】
枠体(4)に、内部を流通する流体に対し別の流体を供給する流体供給ノズル(31)を設けた請求項1又は2又は3又は4又は5又は6の流体処理装置。
【請求項8】
枠体(4)に、内部を流通する流体に対しα線放射体(2)の上流側又は下流側でミストを供給するミスト供給管(23)を設けた請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7の流体処理装置。
【請求項9】
流体処理装置(1)の送出口(16)を別の流体処理装置(1a)の枠体(4)に接続し、流体処理装置(1)によって流体処理した処理流体を、別の流体処理装置(1a)の枠体(4)を流通する流体に供給して流体処理をする請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8の流体処理装置。
【請求項10】
送出口(16)を下流側流体処理装置(1b)の枠体(4)に接続し、上流側流体処理装置(1a)によって流体処理した処理流体を下流側流体処理装置(1b)の枠体(4)を流通する流体に供給すると共に、この供給部の上流側に高温エネルギを煙突内に供給するバーナ装置(36)を設ける請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9記載の流体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−142698(P2010−142698A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320314(P2008−320314)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(393016538)
【Fターム(参考)】