説明

流体分析器用の3ウェーハチャネル構造

流体分析器用の3ウェーハチャネルまたはカラム構造。本構造は、ヒータおよび相互作用要素を含む支持部材、膜または支持ウェーハ(42)を有することができる。この膜は、相互作用要素の側に面した1つのウェーハ(30)のチャネル(32)および他方の側に面した他のウェーハ(44)のスペース(46)を有することができる。膜(42)は、膜の両側の圧力を等しくするための穴(45)を有することができる。サンプルが膜の両側にあることがあるので、膜中の検出器は、優れた感度のために、チャネル(32)とスペース(46)の両方にさらされていることがある。これらのウェーハは、非流動性粘性材料の薄い膜で接着されることがある。毛細管が、チャネルの入口および出口に取り付けられ、チャネルの長くされた寸法に対して平行であることがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体分析器構造に関し、特に、微小流体分析器に関する。より詳細には、本発明は、分析器の流体輸送構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2005年5月17日に出願された米国特許仮出願第60/681,776号の恩恵を主張する。本出願は、2006年3月15日に出願された米国特許仮出願第60/743,486号の恩恵を主張する。
【0003】
米国政府は、本出願に一定の権利を有することができる。
U.Bonne等による「An Optical Micro−spectrometer」という名称の2006年5月16日に出願された米国特許出願第11/383,723号、代理人整理番号H0008131(1100.1371101)は、参照により本発明書に組み込まれる。U.Bonne等による「Chemical Impedance Detectors for Fluid Analyzers」という名称の2006年5月16日に出願された米国特許出願第11/383,728号、代理人整理番号H0009333(1100.1410101)は、参照により本発明書に組み込まれる。U.Bonne等による「A Thermal Pump」という名称の2006年5月16日に出願された米国特許出願第11/383,663号、代理人整理番号H0010160(1100.1412101)は、参照により本発明書に組み込まれる。N.Iwamoto等による「Stationary Phase for a Micro Fluid Analyzer」という名称の2006年5月16日に出願された米国特許出願第11/383,650号、代理人整理番号H0010503(1100.1411101)は、参照により本発明書に組み込まれる。2005年5月17日に出願された米国特許仮出願第60/681,776号は、参照により本発明書に組み込まれる。2006年3月15日に出願された米国特許仮出願第60/743,486号は、参照により本発明書に組み込まれる。2004年7月30日に出願された米国特許出願第10/909,071号は、参照により本発明書に組み込まれる。2002年5月28日に発行された米国特許第6,393,894号は、参照により本発明書に組み込まれる。2005年1月4日に発行された米国特許第6,837,118号は、参照により本発明書に組み込まれる。2006年2月21日に発行された米国特許第7,000,452号は、参照により本発明書に組み込まれる。これらの出願および特許は、流体分析器に関係した構造およびプロセスの態様を開示している可能性がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、分析器用の流体輸送チャネル、カラムまたは毛細管の構造であり、チャネルまたは同様なものの膜にギャップまたは開口を有する。この構造は、そのようなチャネルに位置付けされた熱伝導度検出器の感度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明は、サンプル分析用のヒータおよび固定相を支持する膜に沿ったサンプルの流れのための1つのチャネルまたは複数のチャネルを含むことができる。1つのチャネルまたは複数のチャネルは、微小流体分析器の一体化部分であることがある。分析器は、1つのチャネルまたは複数のチャネルを組み込む事前濃縮器(PC)(つまり、濃縮器)またはクロマトグラフィ分離器(CS)を有することができる。図1は、検出強化(位相調整)微小ガス分析器(MGA)10用の位相調整ヒータアレイ構造であることがある流体分析器のシステム図である。この図は、本明細書で説明される特別設計チャネルを含むことができる微小ガス装置10の特定の細部を明らかにしている。位相調整MGA10およびこれの変形物は、様々なクロマトグラフィ用途に使用されることがある。
【0006】
サンプルの流れ11は、差動熱伝導度検出器(TCD)(または、他のデバイス)15の第1の脚部の入力ポート12に入ることができる。ポンプ16は、チューブ17を介して装置10を通り抜ける流体の流れ11を引き起こすことができる。このポンプは、熱ポンプまたは非熱的ポンプであってもよく、かつ、濃縮器21および/または分離器23に一体化されてもよく、または、濃縮器もしくは分離器の外にあってもよい。図1のシステム10のために、追加のポンプまたはより少ないポンプ、および様々なチューブまたは配管の配列もしくは構成があってもよい。流体11は、TDC15、濃縮器21、流量センサ22、分離器23、およびTDC18を通って移送されることがある。制御装置19は、流体の流れと、濃縮器21および分離器23の活動状態とを管理することができる。制御装置19は、TDC15、濃縮器21、流量センサ22、分離器23、TDC18、およびポンプ16に接続されることがある。検出器15および18ならびにセンサ22からのデータは、制御装置19に送られることがあり、そして次に、制御装置19がデータを処理することができる。用語「流体」は、ガスもしくは液体、または両方を意味することができる。
【0007】
図2は、センサ装置10の部分の模式図であり、図1の濃縮器21および/または分離器23のヒータ部分を表す。センサ装置10のこの部分は、基板またはホルダ24および制御装置19を含むことができる。制御装置19は、基板24の中に組み込まれてもよく、または組み込まれなくてもよい。基板24は、これに位置付けされたいくつかの薄膜ヒータ要素25、26、27、および28を有することができる。4つのヒータ要素のみが示されているが、任意の数、例えば2から1000のヒータ要素が設けられてもよいが、一般に、20〜100の範囲である。ヒータ要素25、26、27および28は、任意の適切な電気導体、すなわち、安定な金属、合金膜または他の材料から製造されてもよい。ヒータ要素25、26、27、および28は、図2および3に示されるように、低熱質量、低面内熱伝導の薄い膜、基板または支持部材24に設けられることがある。
【0008】
図3で、基板30は、サンプル流体の流れ11を受け入れるためのチャネル32を有する適切に画定された単チャネル位相調整ヒータ機構およびチャネル構造31を有することができる。このチャネルは、支持部材24の近くのシリコン・チャネル・ウェーハ基板30を選択的にエッチングすることによって製造されることがある。このチャネルは、入力ポート33および排出ポート34を含むことができる。
【0009】
センサ装置10は、また、流れるサンプル流体11にさらされるようにいくつかの相互作用要素をチャネル32の内部に含むことができる。相互作用要素の各々は、対応するヒータ要素に隣接して、すなわちできるだけ密に熱接触するように位置付けされることがある。例えば、図3では、相互作用要素35、36、37、および38は、チャネル32中の支持部材24の表面に設けられ、ヒータ要素25、26、27、および28にそれぞれ隣接していることがある。チャネル32の端部に検出器15および18があることがある。支持部材24の他方の側にチャネルまたはスペース46があることがあり、そこのすみずみまでサンプル流体11が同様に存在することがある。チャネルまたはスペース46は、ウェーハまたは下部キャップ41によって塞がれた端部を有することがあり、このチャネルまたはスペース46には、スペース46が密封閉じ込めと同様であるような具合に入口33および出口34が位置付けされている。チャネルまたはスペース46中のサンプル11の流入および流出は、図5a、5bおよび6に示されるように、支持部材または膜24の穴45を通してであることがある。機構31のウェーハ41および関連した部品の構造上の構成は、図3に示された例示の実施例のものと違っていることがある。
【0010】
この例示の実施例には示されていない相互作用膜要素を有する他のチャネルがあることがある。相互作用要素は、液体またはガスクロマトグラフィで一般的に使用される任意の数の物質から形成された膜であることがある。さらに、相互作用物質は、様々な度合いの極性および/または疎水性を達成するために、目標分析物の最適な吸着および/または分離を達成するために、適切なドーパントによって部分修正されることがある。
【0011】
微小ガス分析器10は、様々な吸着材料A、B、C、...(ガスクロマトグラフィ(GC)の文献で固定相として知られている)をコーティングされた、濃縮器および分離器要素の予め配列されたパターンがあるような具合に、様々な方法で製造された相互作用要素35、36、...、37および38を有することがある。濃縮器21要素と分離器23要素の比が選ばれるだけでなく、どの要素がA、B、C...などをコーティングされるかが、濃縮および分離プロセスに貢献するように決定されることがある(選ばれた脱着温度と共に)。B、C、...、要素のものと異なるAのための要素温度ランピング速度の選択肢が選ばれることがある。「A」要素のグループからガスを分離した後で、他の組のガスが「B」要素のグループから分離されるなどのやり方で、このシステムに汎用性が付加されることがある。
【0012】
制御装置19は、図2に示されるように、ヒータ要素25、26、27、28および検出器15および18の各々に電気的に接続されることがある。1つまたは複数の上流相互作用要素によって生成された上流濃度パルスがその相互作用要素に達したほぼそのときに、対応する相互作用要素35、36、37、および38の各々が加熱され、流れるサンプル流体11の中に選ばれた成分を脱着するように、制御装置19は、時間位相調整シーケンスでヒータ要素25、26、27および28に給電することができる(図4の最下部を参照されたい)。濃度パルスの成分ガスの所望の濃度を達成するために、任意の数の相互作用要素が使用されてもよい。結果として生じる濃度パルスは、制御装置19による分析のために検出器18で感知されることがある。
【0013】
図4は、各ヒータ要素で生成された対応する濃度パルスと共に、例示の相対的なヒータ温度を示すグラフである。ここに示されるように、制御装置19は、電圧信号50を用いて時間位相調整シーケンスでヒータ要素25、26、27および28に給電することができる。ヒータ要素25、26、27および28の時間位相調整ヒータ相対的温度は、温度プロファイルすなわち線51、52、53および54でそれぞれ示されることがある。
【0014】
示された実施例では、制御装置19(図2)は、最初にヒータ要素25に給電して、図4の線51で示されるようにそれの温度を上昇させることができる。第1のヒータ要素25は第1の相互作用要素35に熱的に結合されているので(図3)、第1の相互作用要素は、流れるサンプル流体11の中に選ばれた成分を脱着して第1の濃度パルス61を生成するが(図4)、一方で、他のヒータ要素はどれも未だパルス給電されない。流れるサンプル流体11は、矢印62で示されるように、第1の濃度パルス61を下流に第2のヒータ要素26の方へ運ぶ。
【0015】
制御装置19は、次に、第2のヒータ要素26に給電して、要素25に対するエネルギーパルスが止まる以前に始まって、線52で示されるようにそれの温度を上昇させる。第2のヒータ要素26は第2の相互作用要素36に熱的に結合されているので、第2の相互作用要素も選ばれた成分を流れるサンプル流体11の中に脱着して、第2の濃度パルスを生成する。制御装置19は、図4に示されるように、第2の濃度パルスが第1の濃度パルス61に実質的に重なってより高い濃度パルス63を生成するようなやり方で、第2のヒータ要素26に給電することができる。流れるサンプル流体11は、矢印64で示されるように、より大きな濃度パルス63を下流に第3のヒータ要素27の方へ運ぶことができる。
【0016】
制御装置19は、次に、第3のヒータ要素27に給電して、図4に線53で示されるようにそれの温度を上昇させることができる。第3のヒータ要素27は第3の相互作用要素37に熱的に結合されているので、第3の相互作用要素37は、選ばれた成分を流れるサンプル流体の中に脱着して、第3の濃度パルスを生成することができる。制御装置19は、第3の濃度パルスが、第1および第2のヒータ要素25および26によって生成されたより大きな濃度パルス63に実質的に重なって、さらに大きな濃度パルス65を生成するように、第3のヒータ要素27に給電することができる。流れるサンプル流体11は、矢印66で示されるように、このより大きな濃度パルス65を下流に「N番目」のヒータ要素28の方へ運ぶことができる。
【0017】
制御装置19は、次に、「N番目」のヒータ要素28に給電して、線54で示されるようにそれの温度を上昇させることができる。「N番目」のヒータ要素28は「N番目」の相互作用要素38に熱的に結合されているので、「N番目」の相互作用要素38は、選ばれた成分を流れるサンプル流体11の中に脱着して、「N番目」の濃度パルスを生成することができる。制御装置19は、「N番目」の濃度パルスが、前のN−1の相互作用要素によって生成されるような大きな濃度パルス65に実質的に重なって、より大きな濃度パルス67を生成するようなやり方で、「N番目」のヒータ要素28に給電することができる。流れるサンプル流体11は、結果として得られた「N番目」の濃度パルス67を分離器23および/または検出器18のどちらかに運ぶことができる。
【0018】
図5aおよび6は、分析器10の位相調整ヒータ機構31の端部断面図を示す。チャネル位相調整ヒータ機構は、膜または支持部材24中に組み込まれることがある。支持部材24は、構造、ウェーハまたは基板30に取り付けられることがある。固定具43が、支持部材30を構造30および内部チャネル32に対して所定の位置に保持することができる。支持部材24は、構造、支持物またはウェーハ41と支持部材24の間の支持部材24に近接してまたはこれの下にスペース、チャネルまたは開口46を有することがある基板またはウェーハ42の上に位置付けされることがある。図5aおよび6に示されるように、下部キャップまたはウェーハ41の上に、膜または支持部材24を支持するためのウェーハ42があることがある。図5aは、開口の付いた膜も支持する薄くされた(下部チャネルの望ましい高さに等しいレベルに)中間ウェーハを有する構造を表すことができる。図6は、同じ上部および下部チャネルを実現することができるが、中間ウェーハを薄くするのではなく、下部ウェーハが、下部チャネルを所望の高さまで部分的に「埋め」る「ペグ」を有している。図5aおよび6の特徴32および46は、2つのチャネル、例えば上チャネルおよび下チャネルと見なされてもよい。
【0019】
構造31において、膜の開口は、上および下(第1および第2)チャネル中の圧力を等しくし、かつ、加熱された膜と、1つまたは複数のチャネルの1つまたは複数の壁との間の熱伝導を妨げることができる。この構造は膜中に位置付けされた検出器を有することができ、この検出器は、第1のチャネルに面し、かつ第2のチャネルに面している感知領域を有することができる。上部ウェーハ、中間ウェーハ、下部ウェーハ(図5aおよび6の方向から)および膜の構造のうちの少なくとも1つの要素は、シリコンよりも低熱伝導度の材料を有することがある。
【0020】
図5aの構造31は、ウェーハ42の上端と同じ高さである表面を有する下部キャップウェーハ41を有することがある。図6の構造31は、ウェーハ42のスペース46の底部分よりも高くなった、下部キャップウェーハ41に付いた部分を有することができる。スペース46を最小限にする態様は、場合によっては望ましいことがある。図5a、5bおよび6の構造31は、チャネルまたはスペース32と46の間の膜または支持部材24に切取り部、穴またはポート45を有することがあり、その結果、サンプル流体がこれらのチャネルまたはスペースの間を動くことができるようになる。
【0021】
相互作用要素または固定相などの設計に基づいた吸着物コーティング表面のあるところを除いて、非吸着熱絶縁性材料のコーティング44が、ヒータおよびサンプル輸送機構構造31のチャネル32の内壁に塗られることがある。
【0022】
図5a、5bおよび6に示されるように切取り部45の付いた膜または支持部材24の製造を用いた本チャネル構造31は、チャネル32の膜24が漏れるか破裂するかもしれないという重大な危険性のない高サンプルガス圧力下での使用を含んだ多くの有利点を有することがあり、膜24からこれの支持構造42(シリコン、重合体、または他の材料)への高熱伝導損失はあったとしても小さく、したがって、膜の下の空気を介した環境への高熱伝導損失の減少を維持する。また、本構造31は、チャネル中の集積化TCD15または18がこれの上面および下面からサンプル分析物ピークにさらされることを可能にすることができ、したがって、1つの検出器表面曝露の約2倍の感度向上を実現する。本構造31は、また、熱またはエレクトロニクス微小ポンプまたはポンプ16の一体化を容易にすることができる。
【0023】
図5a、5bおよび6に示された本3ウェーハ構造31は、ヒータ機構およびチャネル構造31の特殊な下部キャップ41の製造および組立にもかかわらず、本明細書で指摘された有利点を妥当な製造コストで実現することができる。直接曝露固定相、例えば固定相35を有しない部分またはスペース46に、膜24の下のサンプルガスの流れがあることがある。はっきりさせるために、固定相または相互作用要素35は図5bに示されていない。膜または支持物24のへりに沿った開口、ポートまたは切取り部45は、膜24の両方の広い表面の圧力を等しくすることができる。下部キャップ41は、機構31の外の環境からの部分またはスペース46の封じ込めまたは密封を行うことができる。チャネルスペース32は、同様に、外部環境から保護または密封される。開口またはポート45によって、膜24およびスペース46の1つの側のチャネルスペース32は、他方の側と、システム10によって分析される同じサンプルまたは分析物11を共有することができる。ポートまたは開口45の寸法の例には、長さ200ミクロンおよび幅5ミクロンがあることがある。チャンバスペース32の壁に近接した縁部に取り付けられた開口45の間に、約20ミクロンの膜24があることがある。膜24の20ミクロンは、膜支持物69と見なされることがある。各ポートまたは開口45の間に支持物69があることがある。
【0024】
本構造31は、ウェーハレベルで製造され、それによってそのコストを低く保つことができる。材料には、シリコン、1つまたは複数の重合体、および/または他の材料があることがある。本構造は、MEMS技術を用いて製造されることがある。3つのウェーハには、上部キャップ30、膜24を保持するための中間キャップ42、およびスペース46を含むための下部キャップ41があることがある。膜の一方の側だけに固定相35のある本構造31の分解能の低下は、もしあったとして、同じ全体積ガス/液体比を維持しかつ膜24の下のまたは近接したスペース46を最小限にすることによって、修正されることがある。ウェーハ間(W−W)接着に使用される接着剤は、溶融されたとき非常に流動性があり、密封接着するように意図された領域をそのままにしておく傾向があることがある。代わりに、W−W接着は、部分的にベークされた重合体(例えば、SU8または同様なもの)の薄膜などのより粘性の高い材料を用いて行われて、より優れたより弾性の高い密封を実現し、さらに、密封表面から流れ出しかつ/またはチャネルを塞ぐ(例えば、内部で丸くなる)ことのないように、以前の構造で使用された液体インジウム「接着剤」を排除することができる。W−W接着は、粘性重合体、半田金属、および陽極接着を形成するための要素から成るグループからの材料を用いて行われることがある。
【0025】
本構造31は、膜24の両方の広い表面をサンプル11にさらすことを実現することができる。膜24の2つの広い側の間に差圧がないために薄い層が圧力応力を受けないので、この薄い層を膜24として構造化すること、またはエッチングすることが可能である。ヒータおよび固定相(相互作用要素)のためのこの薄膜および支持部材24は、全体的な低製造コストと共に、優れた信頼性、応用性、エネルギー節約、集積化検出器感度、および微小ポンプとの一体化性を有する位相調整システム10を実現することができる。
【0026】
要約すると、本構造31は、医療、産業、環境および行政用途のために、高いサンプル11圧力、低電池使用、コンパクトさ、感度、携帯性、安全性(IS認証)、および他の要素への応用性に関する位相調整システム10改善を実現することができる。
【0027】
本3レベルまたはウェーハ位相調整構造31は、それの固定相支持膜24の破裂圧力によって制限されないサンプルガス圧力に耐え、そのような膜の低エネルギー動作を可能にし、さらにチャネル32中に位置付けされた検出器15および18の高性能を可能にすることができる。検出器の高性能は、検出器の最上部と底部での分析物ピークへの曝露によっている可能性がある。
【0028】
本構造31は、以下の特徴を含むことができる。機構31の構造材料としてSiに対してエポキシ樹脂または重合体を使用することで、例えば約149/0.2=745であることがあるSi/重合体の熱伝導度(TC)の比によって部分的に支配される係数だけ、加熱された膜24からの熱の放散速度を減少させることができる。温度変化による反りを防ぐために、チャネル材料(例えば、SU8または同等物)は、シリコンウェーハに接着されることがある。分析物の吸着に対して有機チャネル材料を「不動態化」するために、不活性非触媒性かつ無視可能な吸着能力の材料44(例えば、Ni、Au、または同様なもの)の非常に薄いコーティングが、共形コーティング方法によってチャネル32の壁の内側に真空堆積されることがある。この材料は、また、ウェーハ41および42の内部表面であることがある、スペース46の壁または内部表面に堆積されることがある。
【0029】
CNT(カーボンナノチューブ)は、本チャネルまたはスペース32の固定相材料に似ていることがある、流体分析器の毛細管の内側の固定相材料35として使用されることがある。また、位相調整事前濃縮器21および/または分離器23のチャネルの内部の相互作用要素35としてCNTを成長してもよい。そのような材料の特定の例は、GC要求に合わせて調整されてもよい「処理された」CNT(おそらくLawrence Livermore National Labsから入手可能)であることがある。
【0030】
Si(使用されることがある)、熱成長SiO、およびSiの膨張温度係数(TCE)および膜歪みが、ここで表にそれぞれ示されている。この表から、中間膜材料が望ましいことを決定することができる。
【0031】
【表1】

【0032】
図7aおよび7bは、構造31の側面断面図および上面図をそれぞれ示す。本ウェーハ構造31は、それぞれの毛細管が、通常行われるように、チップの長手方向寸法に対して直角ではなくほぼ平行な状態で、毛細管71が入口および出口から位相調整チップに入りまた出るように毛細管71を取り付けること可能にすることができ、これによって、スペースを節約し、大規模生産においてウェーハをチップダイシングすること(生産プロセスにいて水およびくずが位相調整チャネルに入らないように)との両立性を提供することができる。各毛細管71は、エポキシ樹脂72でウェーハ30または他の適切な構造部分に取り付けられてもよい。図7aに、下部キャップウェーハ41、ヒータウェーハ42および上部キャップウェーハ30が示されている。図7bは、エポキシ樹脂72を用いた毛細管71取付けの上面図である。
【0033】
図8は、例示の実施例として熱伝導度検出器(TCD)15または18のような検出器の例示の実施例の配置を示し、この検出器は、本チャネル構造31の支持部材または膜24の中に配置されることがある。サンプル11は、検出器要素73の上および下を流れることができる。検出器15、18の位置は、チャネル構造31の壁膜支持物69およびチャネルスペース32の近くのギャップまたは開口45を含むことがある。リードアウト74は、検出器要素73への電気接続を行うことができる。検出器の寸法75は、約100ミクロンであることがある。図5bのポートまたはギャップ45は、内部チャネル32のチャネル構造31の壁と一直線に並んでいるように見える。図8において、検出器15または18に関して、ギャップ45は、チャネルまたはスペース32の壁との整列から数ミクロン離れて一直線に並べられているように見える。検出器配置の様々な設計が実施されることがある。感知要素73は、検出器の感度向上のために、支持部材または膜24の両側に位置付けされるか、さらされることがある。
【0034】
重合体膜をベースにしたセンサは、一般に、微量ガスにさらされると、膜抵抗率、誘電率、歪みおよび/または重量のどれかを変化させることがある。また、金属酸化物膜は、抵抗率を変化させ、検出器要素として働くことができる。多孔質のスピンコーティング可能な材料は、分析器10の濃縮器21および分離器23のGC事前濃縮および分離部分でそれぞれ使用されることがある。
【0035】
また、重合体膜は、SAW検出器(膜質量の変化に敏感な表面音響波)の形のガスクロマトグラフィでガス検出のために使用されることがある。有用な検出器の結果が、MPN(ドデカンチオール単分子層で保護された金ナノ粒子)膜で得られることがあり、MPN膜は、異なるガスにさらされたとき、電気伝導度が変化する。この膜は、毛細管カラムまたはチャネルでGC分離器膜として使用されたとき、優れた結果を有することがある。
【0036】
本明細書において、内容の一部は、他のやり方または時制で述べられているが、仮説的または予言的性質のものであることがある。
本発明は、少なくとも1つの例示の実施例に関連して説明されたが、本明細書を読むと、多くの変形物および修正物が当業者には明らかになるだろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、全てのそのような変形物および修正物を含むように、従来技術を考慮してできるだけ広く解釈される意図である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本チャネルおよび熱伝導度検出器を含むことができる検出強化流体分析器用の例示の位相調整ヒータアレイ構造を示すシステム図である。
【図2】位相調整ヒータ配列を示す上面図である。
【図3】ヒータ配列および関連した相互作用要素を示す断面図である。
【図4】位相調整ヒータ配列の動作を示すグラフである。
【図5A】分析器のチャネルの例示の実施例を示す断面図である。
【図5B】分析器のチャネルの例示の実施例を示す上面図である。
【図6】分析器のチャネルの他の例示の実施例を示す断面図である。
【図7A】分析器のチャネルへの毛細管取付けの例示の実施例を示す断面図である。
【図7B】分析器のチャネルへの毛細管取付けの例示の実施例を示す上面図である。
【図8】分析器のチャネル中に位置付けされた熱伝導度検出器の例示の実施例を示す上面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体分析器用のチャネル構造であって、
第1のウェーハと、
前記第1のウェーハ上に位置付けされた第2のウェーハと、
前記第2のウェーハ上に位置付けされた膜と、
前記膜上に位置付けされた第3のウェーハと、
前記膜上に位置付けされた、前記流体分析器の固定相と、
前記固定相に面した開放側を有する、前記第3のウェーハ中に位置付けされた第1のチャネルと、
前記膜に面した開放側を有する、前記第1のウェーハ中に位置付けされた第2のチャネルと、を備えるチャネル構造。
【請求項2】
前記膜が、前記第1のチャネルと第2のチャネルとの間に開口を有する、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記固定相に近接した前記膜中に位置付けされたヒータをさらに備える、請求項2に記載の構造。
【請求項4】
前記膜の前記開口が、前記第1および第2のチャネル中の圧力を等しくし、かつ前記加熱された膜と少なくとも1つのチャネルの1つまたは複数の壁との間の熱伝導を妨げる、請求項3に記載の構造。
【請求項5】
前記膜中に位置付けされた検出器をさらに備え、
前記検出器が、前記第1のチャネルに面しかつ前記第2のチャネルに面する感知領域を有する、請求項2に記載の構造。
【請求項6】
前記第1のウェーハ、前記第2のウェーハ、前記第3のウェーハおよび前記膜を備える構造の少なくとも1つの要素が、シリコンよりも低熱伝導度の材料を備える、請求項1に記載の構造。
【請求項7】
分析器用の流体の流れのための構造であって、
中間ウェーハの長くされた寸法に沿って位置付けされた開口を有する中間ウェーハと、
前記中間ウェーハの前記開口に近接して位置付けされ、前記中間ウェーハの前記長くされた寸法にほぼ平行な長くされた寸法を有する支持部材と、
前記中間ウェーハの前記長くされた寸法にほぼ平行なトップキャップ・ウェーハの長くされた寸法に沿ってチャネルを有するトップキャップ・ウェーハであって、前記チャネルが、前記中間ウェーハの前記長くされた寸法に沿って開口を有し、かつ、前記支持部材に面した前記チャネルの前記開口を有するトップキャップ・ウェーハと、
前記中間ウェーハに近接して位置付けされ、前記トップキャップ・ウェーハの前記チャネルに面した前記中間ウェーハの前記開口の側と反対の、前記中間ウェーハの前記開口の側を覆う下部キャップウェーハと、を備える構造。
【請求項8】
前記支持要素が、前記トップキャップの前記チャネルと前記中間ウェーハの前記開口との間に少なくとも1つの穴を有する、請求項7に記載の構造。
【請求項9】
前記支持部材中に位置付けされた少なくとも1つのヒータ要素と、
前記ヒータ要素に近接した少なくとも1つの相互作用要素と、をさらに備える、請求項8に記載の構造。
【請求項10】
前記支持部材および前記相互作用要素の表面が、サンプル流体にさらされることができ、
前記支持部材中の検出器が、前記トップキャップの前記チャネル間の前記開口に面した前記支持部材の表面に近接しかつ前記中間ウェーハの前記開口に面した表面に近接した能動感知領域を有することがある、請求項9に記載の構造。
【請求項11】
前記支持部材が、粘性重合体、半田金属、および陽極接着を形成するための要素から成るグループからの材料を用いて、前記中間ウェーハに接着され、
前記トップキャップ・ウェーハが、粘性重合体、半田金属、および陽極接着を形成するための要素から成るグループからの材料を用いて、前記支持部材に接着され、
前記下部キャップウェーハが、粘性重合体、半田金属、および陽極接着を形成するための要素から成るグループからの材料を用いて、前記中間ウェーハに接着される、請求項7に記載の構造。
【請求項12】
前記チャネルが、入口および出口を有し、
前記入口が、これに結合された第1の毛細管を有し、
前記出口が、これに結合された第2の毛細管を有する、請求項7に記載の構造。
【請求項13】
前記第1の毛細管が、エポキシ樹脂で前記チャネルの前記入口に結合された一端を有し、
前記第2の毛細管が、エポキシ樹脂で前記チャネルの前記出口に結合された一端を有し、
前記第1および第2の毛細管が、前記チャネルの前記長くされた寸法に平行な面内で前記チャネル入口および出口にそれぞれ結合されている、請求項9に記載の構造。
【請求項14】
熱ポンプが、前記支持部材中の前記少なくとも1つのヒータ要素間に一体化されている、請求項9に記載の構造。
【請求項15】
支持ウェーハと、
第1のチャネルを形成するように前記支持ウェーハの第1の側に位置付けされた第1のキャップウェーハと、
第2のチャネルを形成するように前記支持ウェーハの第2の側に位置付けされた第2のキャップウェーハと、を備える流体分析器用のチャネルであって、
前記支持ウェーハが、前記第1のチャネルと前記第2のチャネルの間に少なくとも1つの開口を有するチャネル。
【請求項16】
前記支持ウェーハ中に位置付けされた少なくとも1つのヒータ要素と、
前記少なくとも1つのヒータ要素に近接した少なくとも1つの相互作用要素と、をさらに備える、請求項15に記載のチャネル。
【請求項17】
前記第1のチャネルの入口に結合された第1の毛細管と、
前記第1のチャネルの出口に結合された第2の毛細管と、をさらに備え、
前記第1および第2の毛細管が、前記支持ウェーハの前記入口と前記出口を横切る線にほぼ平行に並べられている、請求項15に記載のチャネル。
【請求項18】
前記第1のキャップウェーハが、粘性材料の薄い層で前記支持ウェーハの前記第1の側に接着され、さらに、
前記第2のキャップウェーハが、粘性材料の薄い層で前記支持ウェーハの前記第2の側に接着されている、請求項15に記載のチャネル。
【請求項19】
前記第1のチャネルの中に一体化され、少なくとも1つのヒータ要素および弁を備える熱ポンプをさらに備える、請求項16に記載のチャネル。
【請求項20】
前記支持ウェーハ中に位置付けされた検出器をさらに備え、
前記検出器が、前記支持ウェーハの前記第1の側および前記第2の側に感知用曝露部分を有する、請求項15に記載のチャネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−534629(P2009−534629A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500537(P2009−500537)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/062068
【国際公開番号】WO2008/005588
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】