説明

流体制御器

【課題】操作時にステムが回転した場合に押圧体が同時に回転することがなく、ダイアフラムに対して不要な応力が作用することでダイアフラムの破損や寿命の低下を招くことがなく、加えて金属の板材をプレス成型した押圧体を使用することができるため軽量化を図ることが可能である流体制御器を提供すること。
【解決手段】入口流路と出口流路を有するバルブボディと、前記バルブボディ上に配設されたボンネット4と、前記ボンネットを上下方向に貫通して設けられたステム5と、前記入口流路から前記出口流路への流体の流通を許容又は遮断するダイアフラムと、前記ダイアフラムを押圧する押圧体6とを備えており、前記ステムの下端には上向きのネジ穴5aが形成され、前記ネジ穴には頭部を有するネジ20が螺合されており、前記押圧体は、前記ネジの頭部と前記ステムの下端との間に挟持されることにより、前記ステムに対して回転可能に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアフラムを押圧する押圧体をステムに対して回転可能に接続した構造を有する流体制御器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイアフラムにより流路を開閉する流体制御器(ダイアフラム弁)におけるダイアフラムを押圧する押圧体とステムとの接続構造としては、例えば下記特許文献1〜4に記載された構造が知られている。
特許文献1に記載された流体制御器は、軽量化を図るために、ダイアフラムを押圧する押圧体及びボンネットとして金属の板材をプレス成型したものを使用し、押圧体をステムの下端部にかしめて接続している。
しかしながら、このような接続構造の場合、押圧体とステムとがかしめにより強固に固定されるため、ステムに対して押圧体が回転することができない。そのため、操作時にステムが回転すると押圧体も一体的に回転してしまい、ダイアフラムに対して不要な応力が作用することで、ダイアフラムの破損や寿命の低下を招く虞があった。
【0003】
特許文献2に記載された流体制御器は、シャフトに凹部を設けて、当該凹部に押圧体に係合させることにより、押圧体とステムとを接続している。
特許文献3に記載された流体制御器は、シャフトの下端部に雄ネジを形成し、当該雄ネジを押圧体に螺合することにより、押圧体とステムとを接続している。
特許文献4に記載された流体制御器は、押圧体の上端部に雄ネジを形成し、当該雄ネジをシャフト下端部に螺合することにより、押圧体とステムとを接続している。
しかしながら、これらの接続構造はいずれも、金属の板材をプレス成型した押圧体を使用した場合には採用することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−127441号公報
【特許文献2】特許第3027450号公報
【特許文献3】特開平8−28721号公報
【特許文献4】特開2006−220231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術が有する問題点を解決すべくなされたものであって、操作時にステムが回転した場合に押圧体が同時に回転することがなく、ダイアフラムに対して不要な応力が作用することでダイアフラムの破損や寿命の低下を招くことがなく、加えて金属の板材をプレス成型した押圧体を使用することができるため軽量化を図ることが可能である流体制御器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、入口流路と出口流路を有するバルブボディと、前記バルブボディ上に配設されたボンネットと、前記ボンネットを上下方向に貫通して設けられたステムと、前記入口流路から前記出口流路への流体の流通を許容又は遮断するダイアフラムと、前記ダイアフラムを押圧する押圧体とを備えており、前記ステムの下端には上向きのネジ穴が形成され、前記ネジ穴には頭部を有するネジが螺合されており、前記押圧体は、前記ネジの頭部と前記ステムの下端との間に挟持されることにより、前記ステムに対して回転可能に接続されていることを特徴とする流体制御器に関する。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記ネジが、前記ネジ穴に螺合された後に拡径されていることを特徴とする請求項1記載の流体制御器に関する。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記ネジは、該ネジの長さ方向を貫通する貫通穴を有しており、前記貫通穴に対してピンを圧入した後に該ピンを抜くことにより前記ネジが拡径されていることを特徴とする請求項2記載の流体制御器に関する。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記ネジ穴の上方には、該ネジ穴と連続する非ネジ穴部が形成されており、前記非ネジ穴部の径は、前記貫通穴の径より大きいことを特徴とする請求項3記載の流体制御器に関する。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記ボンネット及び前記押圧体は、金属板をプレス成型して形成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の流体制御器に関する。
【0011】
請求項6に係る発明は、前記ボンネットは、有底円筒状のカップを上下逆向きにした形状であって、下方に向けて開放されており、前記ボンネットの下端部にはフランジが溶接されており、前記フランジは、前記ボンネットの内部において、前記押圧体の上下動をガイドするガイドを周方向に有しており、前記押圧体の外縁部には周方向に凹部が形成されており、前記凹部に対して前記ガイドが嵌まっていることを特徴とする請求項5記載の流体制御器に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、ステムの下端には上向きのネジ穴が形成され、ネジ穴には頭部を有するネジが螺合されており、押圧体は、ネジの頭部とステムの下端との間に挟持されることにより、ステムに対して回転可能に接続されているから、操作時にステムが回転した場合に押圧体が同時に回転することがなく、ダイアフラムに対して不要な応力が作用することでダイアフラムの破損や寿命の低下を招くことがない。また、金属の板材をプレス成型した押圧体を使用した場合に採用することができる構造であるため、流体制御器の軽量化を図ることが可能である。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、ネジがネジ穴に螺合された後に拡径されていることから、使用に伴ってネジがネジ穴内で回転することが防止され、適切な螺合状態(ダイアフラムを押圧する押圧体がステムに対して回転可能に接続された状態)を長期間にわたって維持することが可能となる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、ネジが、該ネジの長さ方向を貫通する貫通穴を有しており、前記貫通穴に対してピンを圧入した後に該ピンを抜くことにより拡径されていることから、ネジ穴に螺合した状態のネジを容易に且つ確実に拡径することが可能である。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、ネジ穴の上方には該ネジ穴と連続する非ネジ穴部が形成されており、非ネジ穴部の径は貫通穴の径より大きいことから、ピンを圧入する際に先端を非ネジ穴部まで到達させることで、ピンが貫通穴を確実に貫通した状態となる。これにより、ネジを全長に亘って均等に拡径させることが可能となる。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、ボンネット及び押圧体が金属板をプレス成型して形成されていることから、無垢材から削り出した場合に比べて肉厚を薄くすることができ、流体制御器を軽量化することが可能となる。また、錆の発生を抑制することができる。更に、研磨工程を削減することができるため、表面に微細空孔を有さないボンネット及び押圧体を備えた流体制御器を得ることができる。
【0017】
請求項6に係る発明によれば、ボンネットは、有底円筒状のカップを上下逆向きにした形状であって下方に向けて開放されており、ボンネットの下端部にはフランジが溶接されており、フランジはボンネットの内部において押圧体の上下動をガイドするガイドを周方向に有しており、押圧体の外縁部には周方向に凹部が形成されており、凹部に対してガイドが嵌まっていることから、仮にステムを介して押圧体に回転力が加わったとしても、ガイドが回り止めの機能を発揮し、押圧体が回転することが確実に防がれる。また、凹部及びガイドが周方向に等間隔で複数設けられていれば、押圧体が傾くことなく安定して上下動するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る流体制御器の全体構造を示す部分断面正面図である。
【図2】本発明に係る流体制御器の要部拡大断面斜視図である。
【図3】本発明に係る流体制御器の要部拡大断面正面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】本発明に係る流体制御器の要部分解断面斜視図である。
【図6】ネジを拡径するために貫通穴に対してピンを圧入している様子を示す図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る流体制御器の全体構造を示す部分断面正面図である。
【図8】本発明の第二実施形態に係る流体制御器の要部断面正面図である。
【図9】本発明の第二実施形態に係る流体制御器の要部拡大断面正面図である。
【図10】本発明の第二実施形態に係る流体制御器の要部分解断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る流体制御器の好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る流体制御器の全体構造を示す部分断面正面図、図2は本発明に係る流体制御器の要部拡大断面斜視図、図3は本発明に係る流体制御器の要部拡大断面正面図、図4は図3の要部拡大図、図5は本発明に係る流体制御器の要部分解断面斜視図である。
【0020】
本発明に係る流体制御器は、入口流路と出口流路を有するバルブボディ(1)と、バルブボディ(1)の入口流路から出口流路への流体の流通を許容又は遮断するダイアフラム(2)と、ダイアフラム(2)を作動させるアクチュエータ(3)とを備えている。
【0021】
バルブボディ(1)は、流体の入口となる入口流路(1a)と、流体の出口となる出口流路(1b)とを備えている。
【0022】
ダイアフラム(2)は、バルブボディ(1)に設けられた流路内底面に対して当接離反(昇降)することにより、入口流路(1a)から出口流路(1b)への流体の流通を許容又は遮断する。
【0023】
ダイアフラム(2)は、屈曲性、耐食性、耐熱性に優れた弾性素材から形成されている。
素材としては、四沸化エチレン樹脂(PTFE)、三弗化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、四弗化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)等の合成樹脂や、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレンゴム、ブタジエン・イソブチレン合成ゴム、ポリクロロプレンゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム(FPM)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等のゴムが好適に使用される。図示例では、合成樹脂層とゴム層の二層構造からなるダイアフラム(2)が使用されている。
【0024】
アクチュエータ(3)は、バルブボディ(1)上に配設されたボンネット(4)と、ボンネット(4)を上下方向に貫通して設けられたステム(5)と、ダイアフラム(2)を押圧する押圧体(6)と、ボンネット(4)上に配設されてステム(5)を上下動させる駆動機構(7)とを備えている。
【0025】
ボンネット(4)は、有底円筒状のカップを上下逆向きにした(カップの底面を上に配置した)形状であって、下方に向けて開放されている。ボンネット(4)の上部(カップの底面に相当する部分)には穴(4a)が形成されており、ステム(5)はこの穴(4a)を通ってボンネット(4)を上下に貫通している。
ボンネット(4)の下端部にはフランジ(8)が溶接されている。フランジ(8)は、バルブボディ(1)の上端部のフランジとの間でダイアフラム(2)を挟持する部分であって、ボルト挿通用の貫通穴(8a)と、押圧体(6)の上下動をガイドするガイド(8b)を有している。ガイド(8b)は、ボンネット(4)の内部において内方向に延びた後に上方向に延びており(即ち断面L字状に延びており)、周方向に等間隔で複数箇所(図示例では6箇所)に形成されている。
【0026】
ステム(5)は、ボンネット(4)とその上部の駆動機構(7)を上下方向に貫通しており、その下端部には押圧体(6)が接続されている。
ステム(5)の上端部と中途部には、上部受け部材(9a)と下部受け部材(9b)とからなる受け部材が外嵌されている。上部受け部材(9a)は、後述する上部カバー(13a)により支持されており、下部受け部材(9b)は、後述する下部カバー(13b)により支持されている。
ステム(5)の中途部(下部受け部材(9b)のやや上方)には、外縁に立ち上がり部を有する略円板状のピストン(10)が外嵌されている。ピストン(10)は、スナップリング(11)とスペーサリング(12)により上下から挟持されており、これらピストン(10)、スナップリング(11)、スペーサリング(12)は、ステム(5)と共に上下動する。
【0027】
駆動機構(7)は、カバー(13)と、カバー(13)の内部に収容されたコイルバネ(14)と、コイルバネ(14)の下端部を受けるピストン(10)とを備えている。
カバー(13)は、有底円筒状のカップを上下逆向きにした(カップの底面を上に配置した)形状であって下方に向けた開放された上部カバー(13a)と、上部カバー(13a)の下方開放部分を塞ぐように溶接された略円板状の下部カバー(13b)とから構成されている。
【0028】
上部カバー(13a)の内側面には、上方位置にコイルバネ(14)の上端部を受けるバネ受け板(18)が、下方位置にピストン(10)の下端位置を定めるピストン受け板(15)が、夫々固定されている。
ピストン受け板(15)と下部カバー(13b)の間には空間(16)が形成されており、上部カバー(13a)の側面には空間(16)に高圧エアを導入するための導入口(17)が取り付けられている。
下部カバー(13b)は、ボンネット(4)の上部に溶接やねじ込み等によって固定されている。
【0029】
導入口(17)から空間(16)に高圧エアが導入されると、ピストン(10)がコイルバネ(14)の付勢力に抗して上昇し、これに伴ってステム(5)が上昇する。高圧エアの導入が無くなると、コイルバネ(14)の付勢力によりピストン(10)は下降し、これに伴ってステム(5)も下降する。
【0030】
押圧体(6)は、上部押圧体(6a)と下部押圧体(6b)とから構成されている。
上部押圧体(6a)と下部押圧体(6b)は、互いの外縁部(周縁部)において接合一体化されており、中央部においては両部材の間に空間(6c)が形成されている。
上部押圧体(6a)の中央部にはステム(5)の下端部が接続されており、押圧体(6)はステム(5)の上下動に伴って上部押圧体(6a)と下部押圧体(6b)の間で圧縮弾性変形する(空間(6c)が縮む)ことが可能となっている。
下部押圧体(6b)の下面には、貫通穴(19)に挿入された吊り金具(22)によりダイアフラム(2)が接続される。これにより、ステム(5)の上下動に伴ってダイアフラム(2)も上下動する。
【0031】
下部押圧体(6b)の外縁部は上部押圧体(6a)の外縁部より上方に突出しており、この突出部分には周方向に等間隔で複数(図示例では6つ)の凹部(6d)が形成されている。凹部(6d)は内向きに凹んで上下方向に延びており、夫々の凹部(6d)にはフランジ(8)のガイド(8b)が嵌まっている。フランジ(8)はボンネット(4)に固定されているため、ステム(5)を介して押圧体(6)に回転力が加わったとしても、ガイド(8b)が回り止めの機能を発揮し、押圧体(6)は回転しない。
【0032】
バルブボディ(1)、ボンネット(4)、フランジ(8)、押圧体(6)、ピストン(10)、上部カバー(13a)、下部カバー(13b)は、従来の流体制御器と同様にステンレス等の金属の無垢材から削り出して形成したものであってもよいが、金属板(板材又はフープ材)のプレス成型により形成することが好ましい。
バルブボディ(1)は、金属板(板材又はフープ材)のプレス成型により形成した複数の部品を溶接して組み立てたものであることが好ましい。複数の部品を溶接して組み立てる場合、例えば、入口流路部と、出口流路部と、入口流路部と出口流路部とを繋ぐ連結部と、連結部の上方でボンネットを支持するフランジ部、の4つの部品を溶接して組み立てる構成とすることができる。
【0033】
このように、金属板のプレス成型により形成した部品を使用し、これらを溶接等により接合して流体制御器を製作することにより、金属の無垢材から削り出した部品を使用した場合に比べて流体制御器を軽量化することが可能となる。また、錆の発生を抑制することができる。更に、研磨工程を削減することができるため、表面に微細空孔を有さないボンネット及び押圧体を備えた流体制御器を得ることができる。
【0034】
上部押圧体(6a)は、ネジ(20)によりステム(5)と接続されている。
以下、上部押圧体(6a)とステム(5)の接続構造について詳細に説明する。
ステム(5)の下端には上向きのネジ穴(5a)が形成されており、このネジ穴(5a)に、ネジ部及び該ネジ部よりも大径の頭部(20a)を有するネジ(20)が螺合されている。
ステム(5)の下端部には、上方に大径部(5d)が、下方に小径部(5c)が夫々形成されており、ネジ穴(5a)は小径部(5c)から大径部(5d)にかけて形成されている(図4,5参照)。
上部押圧体(6a)の中央部には穴(6f)が形成されており、この穴(6f)にステム(5)の小径部(5c)が貫入されている。小径部(5c)の下面と上部押圧体(6a)の下面とは略面一となっており、上部押圧体(6a)の上面は大径部(5d)の下面に当接している。
【0035】
上部押圧体(6a)は、ネジ(20)の頭部とステム(5)の下端との間に挟持されている。これにより、押圧体(6)とステム(5)とが接続されているが、この接続状態において押圧体(6)はステム(5)に対して回転可能となっている。尚、押圧体(6)がステム(5)に対して回転可能とは、ステム(5)を固定した状態で押圧体(6)のみを回転することができること、換言すればステム(5)が回転した時に押圧体(6)が回転しないことを意味する。
【0036】
押圧体(6)がステム(5)に対して確実に回転可能な状態となるように、小径部(5c)の高さを、上部押圧体(6a)の厚さよりも大きく設定することが好ましい。即ち、上部押圧体(6a)の上面が大径部(5d)の下面に当接した状態において、小径部(5c)の下面が上部押圧体(6a)の下面から突出するように設定することが好ましい。
これにより、ネジ(20)を完全にねじ込んだ状態(図4参照)においても、ネジ(20)の頭部(20a)の上面と上部押圧体(6a)の下面との間に微小な隙間(クリアランス)が生じるため、押圧体(6)がステム(5)に対して確実に回転可能な状態となる。隙間の大きさは0.1〜0.2mmとすることが好ましい。
また、小径部(5c)を形成する代わりに、ネジ穴(5a)に段差等を設け、ネジ(20)を一定以上ねじ込んだら停止するようにしておくことで、小径部(5c)が無くても、ネジ(20)の頭部(20a)の上面と上部押圧体(6a)の下面との間に微小な隙間(クリアランス)を生じさせることができる。
【0037】
上記したように、押圧体(6)がステム(5)に対して回転可能に接続されていることにより、操作時にステム(5)が回転した場合でも押圧体(6)が同時に回転することがない。そのため、ダイアフラム(2)に対して不要な応力(ねじり応力等)が作用することでダイアフラムの破損や寿命の低下が生じることが防がれる。
【0038】
ネジ(20)は、その長さ方向を貫通する貫通穴(20b)を有しており、ネジ穴(5a)に螺合された後に拡径されている。
ネジ(20)の拡径は、ネジ(20)をネジ穴(5a)に螺合した後、貫通穴(20b)に対して該貫通穴(20b)よりも大径のピン(21)を圧入し(図6参照)、その後、ピン(21)を貫通穴(20b)から抜くことにより行われる。
【0039】
このように、ネジ(20)がネジ穴(5a)に螺合された後に拡径されていることにより、ネジ(20)がネジ穴(5a)に対して強固に固定され、使用に伴ってネジ(20)がネジ穴(5a)内で回転することが防止される。そのため、適切な螺合状態(ダイアフラムを押圧する押圧体がステムに対して回転可能に接続された状態)を長期間にわたって維持することが可能となる。
【0040】
ネジ穴(5a)の上方には、該ネジ穴(5a)と同軸に連続する非ネジ穴部(5b)が形成されている。この非ネジ穴部(5b)の径は、貫通穴(20b)の径より大きく設定されている。
このような非ネジ穴部(5b)を形成することにより、ピン(21)を圧入する際に先端を非ネジ穴部(5b)まで到達させることで、ピン(21)が貫通穴(20b)を確実に貫通した状態となる。これにより、ネジ(20)を全長に亘って均等に拡径させることが可能となる。
【0041】
図7は本発明の第二実施形態に係る流体制御器の全体構造を示す部分断面正面図、図8は本発明の第二実施形態に係る流体制御器の要部断面正面図、図9は本発明の第二実施形態に係る流体制御器の要部拡大断面正面図、図10は本発明の第二実施形態に係る流体制御器の要部分解断面斜視図である。
【0042】
この第二実施形態に係る流体制御器は、上述した図1〜図5に示す流体制御器(以下、第一実施形態と称す)と基本構成は同じであるため、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ以下に説明する。
【0043】
第一実施形態の流体制御器は操作機構(7)が空圧作動式であるのに対して、第二実施形態の流体制御器は操作機構(7)が手動式(ハンドル式)である。この手動式操作機構の構造はハンドルの回転に伴ってステムが上下動する従来公知の構造である。
【0044】
第二実施形態の流体制御器は、上部押圧体(6a)の上面とステム(5)の大径部(5d)の下面との間、及び、上部押圧体(6a)の下面とネジ(20)の頭部(20a)の上面の間に、夫々ドーナツ板状のパッキン(23)(24)が介装されている。
パッキン(23)(24)の材質としては、カーボン入りPTFE等が使用される。
このようなパッキン(23)(24)を設けることにより、操作機構(7)のハンドルを手動で操作(回転)してステム(5)を回転させた場合に、ステムの大径部(5d)の下面がパッキン(23)の接触面との間で滑り、ネジ(20)の頭部(20a)の上面がパッキン(24)の接触面との間で滑ることとなる。そのため、ステム(5)の回転力が押圧体(6)に伝達されることがなく、押圧体(6)が回転することがない。
これにより、ダイアフラムに対して不要な応力が作用してダイアフラムの破損や寿命の低下を招くことがない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る流体制御器は、半導体、医薬品、食品等の幅広い技術分野において、配管内の流体の流通を許容又は遮断するために利用される。
【符号の説明】
【0046】
1 バルブボディ
1a 入口流路
1b 出口流路
2 ダイアフラム
4 ボンネット
5 ステム
5a ネジ穴
5b 非ネジ穴部
6 押圧体
20 ネジ
20a 頭部
20b 貫通穴
21 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口流路と出口流路を有するバルブボディと、前記バルブボディ上に配設されたボンネットと、前記ボンネットを上下方向に貫通して設けられたステムと、前記入口流路から前記出口流路への流体の流通を許容又は遮断するダイアフラムと、前記ダイアフラムを押圧する押圧体とを備えており、
前記ステムの下端には上向きのネジ穴が形成され、前記ネジ穴には頭部を有するネジが螺合されており、
前記押圧体は、前記ネジの頭部と前記ステムの下端との間に挟持されることにより、前記ステムに対して回転可能に接続されていることを特徴とする流体制御器。
【請求項2】
前記ネジが、前記ネジ穴に螺合された後に拡径されていることを特徴とする請求項1記載の流体制御器。
【請求項3】
前記ネジは、該ネジの長さ方向を貫通する貫通穴を有しており、
前記貫通穴に対してピンを圧入した後に該ピンを抜くことにより前記ネジが拡径されていることを特徴とする請求項2記載の流体制御器。
【請求項4】
前記ネジ穴の上方には、該ネジ穴と連続する非ネジ穴部が形成されており、
前記非ネジ穴部の径は、前記貫通穴の径より大きいことを特徴とする請求項3記載の流体制御器。
【請求項5】
前記ボンネット及び前記押圧体は、金属板をプレス成型して形成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の流体制御器。
【請求項6】
前記ボンネットは、有底円筒状のカップを上下逆向きにした形状であって、下方に向けて開放されており、
前記ボンネットの下端部にはフランジが溶接されており、
前記フランジは、前記ボンネットの内部において、前記押圧体の上下動をガイドするガイドを周方向に有しており、
前記押圧体の外縁部には、周方向に凹部が形成されており、
前記凹部の夫々に対して前記ガイドが嵌まっている
ことを特徴とする請求項5記載の流体制御器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−154403(P2012−154403A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13503(P2011−13503)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】