説明

流体噴出装置

【課題】 流体噴出装置において、噴流を当てるべきスペースの大きさ及び洗浄効率に応じて、噴流の噴出範囲及び発振周波数を変化させることを課題とする。
【解決手段】 ノズル16及びキャビティ13を有するキャビティ本体10と、出口部15を有する出口部本体11とを分割可能にする。出口部15の開口角度θ及び開口幅Wの異なる出口部本体11を必要数だけ準備しておく。一つのキャビティ本体10に対して、洗浄対象物に最も適した出口部15の開口角度θ及び開口幅Wを有する出口部本体11を接続して使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦によって噴流を自己発振させる流体噴出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の流体噴出装置であって、入口ポートから供給される流体(圧縮空気)を噴射するノズル、ノズルから噴射される噴流を自己発振させるキャビティ(空室)、自己発振した噴流を大気に噴出する出口部を有している。この流体噴出装置においては、噴流とキャビティの側壁との間に左右2個の渦ができ、左右の渦の回転エネルギー、内圧の差などを利用して噴流を左右に交互に曲げて発振し、噴流がキャビティの側壁に全く付着することなく、噴流に自己発振をさせる。流体噴出装置から噴出され左右に交互に動く噴流を利用して、物体(例えば製品)の表面に付着した水分や切り粉などを除去し、物体の表面を洗浄することができる。
【特許文献1】特開平3−77660号公報 大形の物体を洗浄する場合、噴流の噴出範囲(広がり範囲)が広ければ、少数の流体噴出装置の出口の近くで洗浄を行うことができるので、噴流の消費量が節減され、エネルギーの節約になる。小形の物体又は大形の物体の一部分を洗浄する場合には、噴流の噴出範囲を狭くして、洗浄に利用されない噴流を少なくすれば、エネルギーの節約になる。また、洗浄を行う場合、物体の表面の状態や除去すべき物体の種類によって、最も洗浄効率の高い噴流の発振周波数が異なると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、流体噴出装置において、噴流を当てるべきスペースの大きさに応じて、噴流の噴出範囲を変化させることを第1の課題とし、洗浄すべき対象によって噴流の発振周波数を変化させることを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、前記課題を達成するために、入口ポートから供給される圧縮空気を噴射するノズル、ノズルから噴射される噴流を自己発振させるキャビティ、自己発振した噴流を大気に噴出する出口部を備えた流体噴出装置において、ノズル及びキャビティを有するキャビティ本体と、出口部を有する出口部本体とを分割可能となし、一つのキャビティ本体に対して出口部の開口角度の異なる複数の出口部本体の任意の一つを接続したことにより噴流の噴出範囲を設定したことを構成1とする。
【0005】
本発明は、入口ポートから供給される圧縮空気を噴射するノズル、ノズルから噴射される噴流を自己発振させるキャビティ、自己発振した噴流を大気に噴出する出口部を備えた流体噴出装置において、ノズル及びキャビティを有するキャビティ本体と、出口部を有する出口部本体とを分割可能となし、一つのキャビティ本体に対して出口部の開口角度及び開口幅の異なる複数の出口部本体の任意の一つを接続したことにより噴流の発振周波数及び噴出範囲を設定できることを構成2とする。
【0006】
本発明は、入口ポートから供給される圧縮空気を噴射するノズル、ノズルから噴射される噴流を自己発振させるキャビティ、自己発振した噴流を大気に噴出する出口部を備えた流体噴出装置において、ノズル及びキャビティを有するキャビティ本体と、出口部を有する出口部本体とを分割可能となし、一つの出口部本体に対してキャビティの形状の異なる複数のキャビティ本体の任意の一つを接続したことにより発振周波数を設定できることを構成3とする。
【0007】
本発明は、構成1〜3において、キャビティ本体と出口部本体とを所定の位置で接続させるための位置決め手段を形成し、キャビティ本体と出口部本体とが接続された場合に、キャビティの中心と出口部の中心とが合致することを構成4とする。
【0008】
本発明は、構成4において、位置決め手段として、キャビティ本体の下流端面に凹部又は凸部を形成し、出口部本体の上流端面に凸部又は凹部を形成したことを構成5とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、一つのキャビティ本体に対して出口部の開口角度の異なる複数の出口部本体の任意の一つを接続し、噴流を当てるべきスペースの大きさに応じて、噴流の噴出範囲を変化させることができる。従って、大形の物体の洗浄を行う場合、少数の流体噴出装置の出口の近くで洗浄を行うことができるので、噴流の消費量が節減され、エネルギーの節約になる。小形の物体又は大形の物体の一部分を洗浄する場合には、噴流の噴出範囲を狭くして、洗浄に利用されない噴流を少なくすることができ、エネルギーの節約になる。
【0010】
また、本発明においては、一つの出口部本体に対してキャビティ形状の異なる複数のキャビティ本体の任意の一つを接続し、洗浄すべき対象によって噴流の発振周波数を変化させることができる。従って、ある物体の洗浄に最も適した発振周波数の噴流を利用して、洗浄効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、噴流を当てるべきスペースの大きさに応じて、噴流の噴出範囲を変化させるという課題を、ノズル及びキャビティを有するキャビティ本体と、出口部を有する出口部本体とを分割可能となし、一つのキャビティ本体に対して出口部の開口角度の異なる複数の出口部本体の任意の一つを接続するという簡単な手段により実現した。
【実施例1】
【0012】
図1〜図3は、本発明の流体噴出装置の実施例1を示す。流体噴出装置はキャビティ本体10、出口部本体11及びカバー12からなり、キャビティ本体10と出口部本体11とが平面上において接続され、接続されたキャビティ本体10・出口部本体11の上面にカバー12が接続されている。キャビティ本体10の中央部に上面視でほぼ楕円形のキャビティ13が窪みとして形成され、キャビティ13の左右には側壁14A、14Bがあり、キャビティ13の下側には平板状の下壁があり、キャビティ13の上壁は平板状のカバー12の下面である。キャビティ13の上流側にはノズル16及び入口ポート17が配設され、入口ポート17には配管を介して圧縮空気が供給されるように構成されている。
【0013】
出口部本体11には窪んだ出口部15が形成され、出口部15の上流端には出口部上流端24が開口され、出口部15の下流端は大気に連通されている。上面視で出口部15の左右には出口部側壁25A、25Bがあり、出口部15の下側には平板状の下壁があり、出口部15の上壁は平板状のカバー12の下面である。出口部側壁25Aの延長線と出口部側壁25Bの延長線とが交差する角度を開口角度θといい、開口角度120 度の例が図示されている。キャビティ13の上流端にはノズル16が開口され、キャビティ13の下流端にはキャビティ下流端18が開口されている。出口部上流端24の幅を開口幅Wと称することとする。
【0014】
キャビティ本体10の下流側端面19は出口部本体11との接続面であり、出口部本体11の上流側端面20はキャビティ本体10との接続面である。下流側端面19と上流側端面20とを正しい位置で接続させるための位置決め手段として、下流側端面19の中央部には凹部21が形成され、上流側端面20の中央部には凸部22が形成されている。キャビティ本体10と出口部本体11とを正しい位置で接続する場合には、出口部本体11の凸部22がキャビティ本体10の凹部21に嵌合され、キャビティ13の中心と出口部15の中心とが合致する。図2(a) に示した流体噴出装置の場合は、合致したキャビティ下流端18・出口部上流端24が1個の突起のような形状となり、合致したキャビティ下流端18・出口部上流端24が噴流を分流させ、渦を発生させる。しかし、通常は予めキャビティ下流端18の幅を全ての出口部上流端24の出口幅Wよりも大きく製作しておき、出口部上流端18で噴流を分流させ、渦を発生させる。
【0015】
図2に示すように、上面視でキャビティ本体10のキャビティ13の左右には、貫通した2本の挿通孔26A、26Bが形成され、挿通孔26A、26Bには大径孔27A、27Bと小径孔28A、28Bとがある。大径孔27A、27Bはキャビティ本体10の上流側の端部に位置し、大径孔27A、27Bと小径孔28A、28Bの段差部は後述のボルト33A、33Bの頭部が当接する箇所である。出口部本体11には上流側端面20に開口した2個のねじ孔29A、29Bが形成され、キャビティ本体10と出口部本体11とを正しい位置で接続したとき、ねじ孔29A、29Bが挿通孔26A、26Bと同一軸線上に位置するようにされている。キャビティ本体10には上面に開口した2個のねじ孔31A、31Bが、キャビティ13と挿通孔26A、26Bとの間の位置に形成されている。出口部本体11には上面に開口した2個のねじ孔32A、32Bが、2個のねじ孔29A、29Bと出口部本体11の左右側部との間に形成されている。カバー12には4個の上下に貫通した挿通孔30が形成され、挿通孔30は接続された状態のキャビティ本体10のねじ孔31A、31B及び出口部本体11のねじ孔32A、32Bと同一軸線上に位置するようにされている。
【0016】
本発明の流体噴出装置の組立方について説明する。キャビティ本体10の凹部21に出口部本体11の凸部22を嵌合させ、挿通孔26A、26Bにボルト33A、33Bを挿通させ、ボルト33A、33Bをねじ孔29A、29Bに螺合させると、キャビティ本体10と出口部本体11とが連結される。次に連結されたキャビティ本体10・出口部本体11の上面にカバー12を当接させ、短ボルト34(図3(a) 参照)をカバー12の各挿通孔30に挿通させ、短ボルト34をキャビティ本体10のねじ孔31A、31B及び出口部本体11のねじ孔32A、32Bにそれぞれ螺合させると、連結されたキャビティ本体10・出口部本体11にカバー12が連結される。こうして流体噴出装置が組み立てられる。
【0017】
本発明の流体噴出装置を用いて噴出実験を行った。図3(a) に示すように、0.2MPaの圧縮空気を用いて噴出させ、左右に交互に動く噴流の発振周波数及び流速を、出口部15より下流400mmで振幅範囲の中心から左右に40mmの2位置で測定した。キャビティ13の横幅(図2で左右方向の幅)の寸法を18mm、キャビティ13の縦幅(図2で縦方向の幅)の寸法を21mmとした。
【0018】
図3(b) は、開口幅Wを9、8、7、6mmと変化させ、開口角度θを60、90、120度と変化させたときの発振周波数を示す。図3(b) から開口幅Wを9mmから8、7、6mmと小さくしていくと発振周波数が高くなることが分かり、また開口角度θを60度から90度、120度と大きくしていくと発振周波数が高くなることが分かる。
【0019】
図3(c) は図3(b) の開口幅9mm、開口角度60度の場合の時間に対する流速の変化を示す。また、図3(d) は図3(b) の開口幅8mm、開口角度90度の場合の時間に対する流速の変化を示す。図3(c) 、図3(d) により開口幅と開口角度を変化させることにより、発振周波数が変化する状態がよく分かる。
【0020】
キャビティ13の形状と噴流の発振周波数との関係として、例えば図2(a) においてキャビティ13の横幅寸法を大きくしていくと発振周波数が上昇し、キャビティ13の縦幅寸法を大きくしていくと発振周波数が低下することが他の実験により判明している。
【0021】
洗浄すべき物体の大きさに応じて噴流の噴出範囲を変化させたいときは、出口部15の開口角度θの異なる出口部本体11を必要数作成しておく。そして、所望の形状のキャビティ13を有するキャビティ本体10に、各物体の洗浄に適した開口角度θを有する出口部本体11を接続して使用する。また、洗浄すべき物体の種類に応じて噴流の発振周波数を変化させたいときは、キャビティ13の形状の異なるキャビティ本体10を必要数作成しておく。そして、一つの出口部本体11に対してキャビティ13の形状の異なる複数のキャビティ本体10の任意の一つを接続して、各物体の洗浄に最も適した発振周波数を発生する流体噴出装置を作成して使用する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
流体噴出装置から噴出され左右に交互に動く噴流を利用して、物体の表面に付着した水分や切り粉などを除去し、物体の表面を洗浄することができる。本発明では、噴流の噴出範囲及び発振周波数を洗浄すべき物体に最も適したものとすることができるので、噴流の消費量が節減され、洗浄効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の流体噴出装置の実施例1の外観を示し、図1(a) は背面図、図1(b) は上面図、図1(c) は正面図、図1(d) は右側面図である。
【図2】図2(a) は図1(d) の断面を矢印A−A方向からみた断面図、図2(b) は図2(a) の流体噴出装置を分割してキャビティ本体のみを示す図、図2(c) は図2(a) の流体噴出装置を分割して出口部本体のみを示す図である。
【図3】図3(a) は流体噴出装置の噴射実験を行う場合の噴流の発振周波数及び流速の測定箇所を示す図であり、図3(b) は開口幅及び開口角度を変化させた場合の発振周波数を示す図であり、図3(c) は開口幅を9mm、開口角度を60度とした場合の時間に対する流速の変化を示すグラフ、図3(d) は開口幅を8mm、開口角度を90度とした場合の時間に対する流速の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0024】
10 キャビティ本体
11 出口部本体
12 カバー
13 キャビティ
15 出口部
16 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口ポートから供給される圧縮空気を噴射するノズル、ノズルから噴射される噴流を自己発振させるキャビティ、自己発振した噴流を大気に噴出する出口部を備えた流体噴出装置において、
ノズル及びキャビティを有するキャビティ本体と、出口部を有する出口部本体とを分割可能となし、一つのキャビティ本体に対して出口部の開口角度の異なる複数の出口部本体の任意の一つを接続したことにより噴流の噴出範囲を設定したことを特徴とする流体噴出装置。
【請求項2】
入口ポートから供給される圧縮空気を噴射するノズル、ノズルから噴射される噴流を自己発振させるキャビティ、自己発振した噴流を大気に噴出する出口部を備えた流体噴出装置において、
ノズル及びキャビティを有するキャビティ本体と、出口部を有する出口部本体とを分割可能となし、一つのキャビティ本体に対して出口部の開口角度及び開口幅の異なる複数の出口部本体の任意の一つを接続したことにより噴流の発振周波数及び噴出範囲を設定できることを特徴とする流体噴出装置。
【請求項3】
入口ポートから供給される圧縮空気を噴射するノズル、ノズルから噴射される噴流を自己発振させるキャビティ、自己発振した噴流を大気に噴出する出口部を備えた流体噴出装置において、
ノズル及びキャビティを有するキャビティ本体と、出口部を有する出口部本体とを分割可能となし、一つの出口部本体に対してキャビティの形状の異なる複数のキャビティ本体の任意の一つを接続したことにより発振周波数を設定できることを特徴とする流体噴出装置。
【請求項4】
キャビティ本体と出口部本体とを所定の位置で接続させるための位置決め手段を形成し、キャビティ本体と出口部本体とが接続された場合に、キャビティの中心と出口部の中心とが合致する請求項1〜3のうちの一つの流体噴出装置。
【請求項5】
位置決め手段として、キャビティ本体の下流端面に凹部又は凸部を形成し、出口部本体の上流端面に凸部又は凹部を形成した請求項4の流体噴出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−136781(P2006−136781A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327531(P2004−327531)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】