説明

流体噴射装置

【課題】回転体の強度低下を抑制することができる流体噴射装置を提供すること。
【解決手段】媒体へ流体を噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体の噴射方向上に設けられ、回転可能な回転体と、前記回転体上に設けられ、前記媒体を支持する媒体支持部と、前記回転体上であって前記媒体支持部に対して回転方向にずれた位置に設けられ、前記噴射ヘッドをキャッピングするキャップ部と、前記回転体の外周に対向して設けられ、前記流体を受ける流体受部とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置は、流体を噴射可能な噴射ヘッドを備え、この噴射ヘッドから各種の流体を被記録材等に向けて噴射する装置である。流体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式噴射ヘッド(以下、単に噴射ヘッドという)を備え、この噴射ヘッド(噴射ヘッド)のノズルから液体状のインク(流体)をインク滴として記録紙等の記録媒体に向けて噴射、着弾させドットを形成することで記録を行うインクジェット式記録装置が知られている。
【0003】
流体噴射装置では、噴射ヘッドから噴射される流体の良好な噴射状態を維持又は回復するため、当該噴射ヘッドのメンテナンスを定期的に行っている。その具体的なメンテナンス動作として、キャップ部材を噴射ヘッドに対向させ、ノズルからインクを吐出させることでノズルのメニスカスを調整する動作などが挙げられる(例えば、特許文献1)。
【0004】
近年では、噴射ヘッドの下方に回転体を配置させ、当該回転体に記録媒体の支持部とキャップ部材とを取り付けた構成が知られている。この構成では、回転体を回転させることにより、記録媒体の支持部とキャップ部材とを噴射ヘッドにそれぞれ対向させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−174766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記メニスカス調整を繰り返し行う内に、キャップ部材内にインクが溜まってしまうことがある。キャップ部材内にインクが溜まった状態でメニスカス調整を行うと、キャップ部材内からインクが溢れ出してしまったり、また、キャップ部材を吸引する場合にはインク溜まりによって吸引効率が低下してしまったりなど、噴射ヘッドのメンテナンス性が低下する虞がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、噴射ヘッドのメンテナンス性を確保することが可能な流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る流体噴射装置は、所定の搬送面上を搬送される媒体へ流体を噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体の噴射方向上に設けられ、回転可能な回転体と、前記回転体上に設けられ、前記媒体を支持する媒体支持部と、前記回転体上であって前記媒体支持部に対して回転方向にずれた位置に設けられ、前記噴射ヘッドをキャッピングするキャップ部と、前記回転体を第1速度で回動させ前記流体噴射ヘッドに前記媒体支持部と前記キャップ部とをそれぞれ対向させる対向動作、及び、前記回転体を前記第1速度とは異なる第2速度で回動させ前記キャップ部内の前記流体を飛散させる飛散動作、を切り替えて行わせる制御装置とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、キャップ部内の流体を飛散させる飛散動作を行わせることができるので、キャップ部内に流体が溜まるのを防ぐことができる。これにより、噴射ヘッドのメンテナンス性の確保することができる。
【0010】
上記の流体噴射装置は、前記回転体の外周に対向して設けられ、前記流体を受ける流体受部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、回転体の外周に対向するように流体受部が設けられることとしたので、飛散した流体を回収することができる。これにより、メンテナンス性を向上させることができる。
【0011】
上記の流体噴射装置は、前記流体受部の上端は、前記搬送面に接するように配置されることを特徴とする。
本発明によれば、流体受部の上端が搬送面に接するように配置されることとしたので、飛散した流体が搬送面上に飛び出すのをより確実に防ぐことができる。これにより、媒体に流体が誤って付着するのを防ぐことができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、前記制御装置は、前記キャップ部が前記搬送面よりも下側に配置されているときに前記飛散動作を行わせることを特徴とする。
本発明によれば、キャップ部が搬送面よりも下側に配置されているときに飛散動作を行わせることとしたので、飛散した流体が媒体に付着するのを防ぐことができる。
【0013】
上記の流体噴射装置は、前記制御装置は、前記回転体を往復回動させることで前記飛散動作を行わせることを特徴とする。
本発明によれば、回転体を往復運動させることで飛散動作を行わせることとしたので、より確実にキャップ部内の流体を飛散させることができる。
【0014】
上記の流体噴射装置は、前記制御装置は、前記回転体の回動を急停止させることで前記飛散動作を行わせることを特徴とする。
本発明によれば、回転体の回動を急停止させることで飛散動作を行わせることとしたので、急停止による慣性力を利用して流体を効率的に飛散させることができる。
【0015】
本発明に係る流体噴射装置は、媒体へ流体を噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体の噴射方向上に設けられ、回転可能な回転体と、前記回転体上に設けられ、前記媒体を支持する媒体支持部と、前記回転体上であって前記媒体支持部に対して回転方向にずれた位置に設けられ、前記噴射ヘッドをキャッピングするキャップ部と、前記回転体の回転速度を変化させながら前記回転体を回転させる制御装置とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、回転体の回転速度を変化させながら回転体を回転させることができるので、回転速度の変化によってキャップ部内の流体を飛散させることができる。これにより、キャップ部内に流体が溜まるのを防ぐことができ、噴射ヘッドのメンテナンス性の確保することができる。
【0017】
上記の流体噴射装置は、前記制御装置は、前記キャップ部の位置に応じて前記回転速度を変化させることを特徴とする。
本発明によれば、キャップ部の位置に応じて回転速度を変化させることとしたので、飛散した流体が他の部位や媒体等に付着するのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタ装置の構成を示す概略図。
【図2】プリンタ装置の一部の構成を示す図。
【図3】噴射ヘッドの噴射面の構成を示す図。
【図4】噴射ヘッドの断面構成を示す図。
【図5】メンテナンス装置の構成を示す断面図。
【図6】プリンタ装置の構成を示すブロック図。
【図7】プリンタ装置の動作の様子を示す図。
【図8】同、動作図。
【図9】同、動作図。
【図10】同、動作図。
【図11】同、動作図。
【図12】同、動作図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面をもとにして、本発明に係る流体噴射装置の実施の形態を説明する。流体噴射装置の各部材を認識可能な大きさとするため、以下の説明に用いる各図面には、縮尺が適宜変更された状態で各部材が示されている。本実施形態では、流体噴射装置としてインクジェット式のプリンタ装置を例に挙げて説明する。
【0020】
図1は、本実施形態のインクジェット式プリンタ(以下、プリンタ装置PRTと称す)の概略構成図である。図2は、噴射ヘッド周辺の要部平面図である。図3は、噴射ヘッドのノズル開口形成面を示す平面図である。
【0021】
図1においては、XYZ直交座標系を設定し、XYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する場合がある。この場合においては、図中左右方向をX方向とし、図中紙面の奥行き方向をY方向とし、X方向及びY方向のそれぞれと直交する方向(すなわち図中上下方向)をZ方向とする。
【0022】
これらの図に示すように、プリンタ装置PRTは、記録媒体Mに画像や文字などを記録する装置である。記録媒体Mとしては、例えば紙やプラスチックなどが用いられる。プリンタ装置PRTは、インク噴射機構IJ、搬送機構CR、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTを有している。
【0023】
インク噴射機構IJは、記録媒体Mにインク滴(流体)を噴射する部分である。インク噴射機構IJは、噴射ヘッド(流体噴射ヘッド)11及びインク供給部12を有している。本実施形態で用いるインクは、染料や顔料、これを溶解または分散する溶媒を基本的成分とし、必要に応じて各種添加剤が添加された液状体を用いる。
【0024】
噴射ヘッド11は、記録媒体Mに複数色のインク滴を噴射可能なヘッドである。噴射ヘッド11は、例えば図2に示すように、プリンタ装置PRTが対象とする最大サイズの記録媒体Mの少なくとも一辺を越える長さ(最大記録紙幅W)に亘ってノズル形成領域15を有するライン型の噴射ヘッドである。噴射ヘッド11は、例えばZ方向上に移動可能に設けられている。噴射ヘッド11は、ノズル13及び共通インク室14を有している。
【0025】
共通インク室14は、例えば4色(イエロー:Y、マゼンタ:M、シアン:C、ブラック:K)に対応するインクを保持する(共通インク室14Y、14M、14C、14K)。ノズル形成領域15は、上記各色の共通インク室14に対応して設けられている(ノズル形成領域15Y、15M、15C、15K)。
【0026】
ノズル13は、噴射ヘッド11のノズル形成領域15Y、15M、15C、15K内にそれぞれ複数設けられ、例えば上記4色のインク滴を吐出する開口部である。ノズル13は、例えば図3に示すようにY方向に複数配列されている(ノズル列L)。ノズル列Lは、各色のノズル形成領域15Y、15M、15C、15Kについて、1列又は複数列設けられる。ノズル13の数やノズル列Lの数は、適宜設定される。噴射ヘッド11のうちノズル13が設けられる面が噴射面11Aとなる。噴射面11Aは、噴射ヘッド11の−Z側に設けられる。噴射ヘッド11は、−Z側へインク滴を噴射するようになっている。
【0027】
図4は、噴射ヘッド11の構成を示す断面図である。
同図に示すように、噴射ヘッド11は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えている。
【0028】
ヘッド本体18は、合成樹脂からなる箱形の部材である。ヘッド本体18には、駆動ユニット24を収容する収容室23と、外部から供給されたインクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成されている。
【0029】
収容室23内に配置された駆動ユニット24は、複数の圧電素子25と、複数の圧電素子25の上端を支持する固定部材26と、駆動信号を圧電素子25に供給する柔軟なケーブル27とを備えている。圧電素子25は、複数のノズル13のそれぞれに対応して設けられている。
【0030】
内部流路28は、ヘッド本体18を図4上下方向に貫通して形成されている。内部流路28は、図中上端部がインク供給部12に接続されている。内部流路28は、インク供給部12から供給されてくるインクを図示下端側の開口端を介して流路形成ユニット22へ流通させるインクの流路である。
【0031】
流路形成ユニット22は、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を積層し、接着剤等で接合一体化された構成になっている。流路形成ユニット22には、ヘッド本体18の内部流路28に接続された共通インク室14と、共通インク室14に接続されたインク供給口30と、インク供給口30に接続された圧力室31とを備えている。圧力室31は、各々のノズル13に対応して設けられている。各々の圧力室31は、共通インク室14と反対側の端部においてノズル13に接続されている。
【0032】
振動板19は、例えばステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムがラミネート加工された構成になっている。振動板19のうち圧力室31に対応する部分には島部32が形成されている。島部32は、例えばエッチングなどにより支持板を環状に除去することで、圧電素子25の下端に接合されている。
【0033】
島部32はダイヤフラム部として機能する。振動板19は、圧力室31上において、島部32の周囲の弾性フィルムの部分が圧電素子25の駆動に応じて弾性変形し、島部32が上下動するようになっている。振動板19と内部流路28の下端近傍との間にも、支持板の一部を除去して弾性フィルムのみとした部分が設けられており、この部分が共通インク室14内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33となっている。
【0034】
流路基板20は、内部流路28の下端とノズル13とを接続する共通インク室14、インク供給口30、及び圧力室31などのインク流通室を形成するための凹部を有する。これらの凹部は、流路基板20の基材となるシリコン単結晶基板を異方性エッチングすることで形成されている。
【0035】
ノズル基板21は、所定方向に所定間隔(ピッチ)で形成された複数のノズル13を有する。本実施形態のノズル基板21は、例えばステンレス鋼等の金属で形成された板状の部材である。ノズル基板21の外面が噴射面11Aである。
【0036】
このように構成された噴射ヘッド11は、ケーブル27を介して圧電素子25に駆動信号が入力されることで、圧電素子25が伸縮するようになっている。圧電素子25の伸縮は、振動板19の変形(キャビティに接近する方向及び離れる方向への変形)として伝達されるようになっている。振動板19の変形により、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動するようになっている。この圧力の変動によって、ノズル13から、インクが噴射されるようになっている。
【0037】
図1に戻って、インク供給部12は、インク噴射機構IJの一側に配置され、噴射ヘッド11の各共通インク室14Y、14M、14C、14Kに接続されている。このインク供給部12は、上記4色のインクを貯蔵するインクタンク12Y、12M、12C、12Kを有している。インク供給部12は、不図示のインク供給機構を有しており、当該インク供給機構を用いてインクを噴射ヘッド11へと供給するようになっている。
【0038】
搬送機構CRは、紙送りローラ35、排出ローラ36などを有している。紙送りローラ35、排出ローラ36は、不図示のモータ機構によって回転駆動されるようになっている。搬送機構CRは、インク噴射機構IJによるインク滴の噴射動作に連動させて記録媒体Mを搬送面MRに沿って搬送するようになっている。
【0039】
メンテナンス機構MNは、噴射ヘッド11のメンテナンスを行う。図1及び図5に示すように、メンテナンス機構MNは、回転体40、プラテン部材41、キャップ部材42、インク保持部材43、インク受部材44、吸引機構45及びインク排出タンク46を有している。
【0040】
回転体40は、噴射ヘッド11の−Z側に配置された円筒状部材である。回転体40は、円筒の高さ方向がY軸方向に一致するように配置されている。回転体40は、例えば不図示の回転機構を有しており、当該回転機構によってθY方向(Y軸周りの方向)に回転可能に設けられている。回転体40の内部には、ベアリング部材47が設けられている。ベアリング部材47は、回転体40と同一の中心軸を有する円筒状部材である。ベアリング部材47は、θY方向には回転しないように固定されている。回転体40は、ベアリング部材47の外周に回転可能に支持された状態になっている。ベアリング部材47は、開口部47aを有している。開口部47aは、例えば図中+Z軸側に設けられている。ベアリング部材47の+Y側端部及び−Y側端部は封止された状態になっている。図5に示す状態では、ベアリング部材47の開口部47aは、回転体40の内面によって封止されている。
【0041】
プラテン部材41は、噴射ヘッド11の−Z方向上で記録媒体Mを支持する媒体支持部である。プラテン部材41は、回転体40上に設けられている。プラテン部材41は、回転体40の径方向上に記録媒体Mを支持する支持面41aを有している。プラテン部材41は、プラテン部材41が回転体40の+Z方向上に配置されている状態において、支持面41aが記録媒体Mの搬送面MR上に重なるようになっている。プラテン部材41は、支持面41aが噴射ヘッド11のノズル形成領域15よりも広い領域をカバーするように形成されている。プラテン部材41は、回転体40がθY方向に回転することにより、回転体40の外周上を移動するようになっている。
【0042】
キャップ部材42は、噴射ヘッド11の噴射面11Aをキャッピングするトレイ状部材である。キャップ部材42は、ノズル13内で粘度が高くなったインクを排出させる排出動作を行う際、排出されるインクを受ける部分でもある。キャップ部材42は、回転体40上のうち、プラテン部材41の反対側に設けられている。したがって、プラテン部材41とキャップ部材42とは、回転体40上で回転方向に180°ずれた位置に配置されていることになる。キャップ部材42とプラテン部材41とをこのように離れた位置に配置させることにより、キャップ部材42からインクが溢れるような場合であっても、インクがプラテン部材41に到達しにくい構成となっている。キャップ部材42は、トレイ内部にインク吸収材42aを有している。キャップ部材42の底部には、開口部42bが設けられている。開口部42bは、回転体40に形成された貫通孔40bに連通されている。キャップ部材42は、噴射ヘッド11のノズル形成領域15よりも広い領域をカバーするように形成されている。
【0043】
インク保持部材43は、キャップ部材42から溢れたインクを保持する部材である。インク保持部材43は、回転体40上のうちプラテン部材41とキャップ部材42との間に配置されている。本実施形態では、回転体40上のうち例えばプラテン部材41とキャップ部材42との中間に1つずつ配置されている。したがって、回転体40上には、回転方向に90°ずれるごとに、それぞれプラテン部材41、インク保持部材43、キャップ部材42及びインク保持部材43が配置されることになる。
【0044】
インク受部材44は、回転体40の回転動作により例えばキャップ部材42などから流出したインクを受けるインク受部である。インク受部材44は、記録媒体Mの搬送面MRの−Z側に配置されている。インク受部材44は、上端部(+Z側端部)が搬送面MRに接するように配置されている。インク受部材44は、外周40aに対向するように設けられている。インク受部材44は、例えば回転体40の外周40aに沿って断面視半円形に形成されている。インク受部材44は、−Z側端部に排出口44aを有している。排出口44aは、インク受部材44によって受けられたインクを排出する部分である。
【0045】
吸引機構45は、例えばポンプなどの吸引源を有しており、ベアリング部材47の内部及びインク受部材44の排出口44aにそれぞれ接続されている。吸引機構45は、例えばベアリング部材47の内部と、排出口44aとを別個に独立して吸引することができるようになっている。
【0046】
インク排出タンク46は、インク受部材44に溜まったインクを排出する部分である。インク排出タンク46は、例えばプリンタ装置PRTの−Z側端部に配置されており、着脱可能に設けられている。インク排出タンク46は、例えば吸引機構45の下流側に接続されている。
【0047】
この他メンテナンス機構MNとしては、図示を省略するが、例えば噴射ヘッド11の噴射面11Aに付着している異物を拭き取ったり、払ったりするワイピング装置などが設けられている。
【0048】
図6は、プリンタ装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
本実施形態におけるプリンタ装置PRTは、全体の動作を制御する制御装置CONTを備えている。制御装置CONTには、プリンタ装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置59と、プリンタ装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置60とが接続されている。
【0049】
制御装置CONTには、インク噴射機構IJ、搬送機構CR、メンテナンス機構MNなど、プリンタ装置PRTの各部が接続されている。プリンタ装置PRTは、圧電素子25を含む駆動ユニットに入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。駆動信号発生器62は、制御装置CONTに接続されている。
【0050】
駆動信号発生器62には、噴射ヘッド11の圧電素子25に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、入力されたデータ及びタイミング信号に基づいて吐出パルス等の駆動信号を発生する。
【0051】
次に、上記のように構成されたプリンタ装置PRTの動作を説明する。
噴射ヘッド11による印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、図7に示すように、プラテン部材41が回転体40の+Z側に配置されるように回転体40の回転位置を調整する。このとき制御装置CONTは、プラテン部材41の支持面41aがXY平面に平行になるように、プラテン部材41の姿勢を微調整する。
【0052】
プラテン部材41の位置合わせを行った後、制御装置CONTは、搬送機構CRによって記録媒体Mをプラテン部材41の支持面41a上に配置させる。記録媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、印刷する画像の画像データに基づいて、駆動信号発生器62から圧電素子25に駆動信号を入力する。
【0053】
圧電素子25に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。圧電素子25の伸縮により、振動板19が圧力室31に近接する方向および離れる方向に変形(移動)する。振動板19の変形に伴い、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル13からインクが噴射される。ノズル13から噴射されたインクによって、記録媒体Mに所望の画像が形成される。
【0054】
噴射ヘッド11のメンテナンス動作を行う場合、制御装置CONTは、図8に示すように、キャップ部材42が回転体40の+Z側に配置されるように回転体40を所定の回動速度(ω1:図9参照)で180°回動させる。このとき制御装置CONTは、キャップ部材42が噴射ヘッド11の噴射面11Aに平行になるようにキャップ部材42の姿勢を微調整する。キャップ部材42を回転体40の+Z側に配置させることにより、回転体40の貫通孔40bとベアリング部材47の開口部47aとが重なり、キャップ部材42内とベアリング部材47内とが連通された状態になる。
【0055】
キャップ部材42の位置合わせを行った後、制御装置CONTは、噴射ヘッド13を−Z方向に移動させ、キャップ部材42に当接させる。噴射ヘッド13をキャップ部材42に当接させた後、制御装置CONTは吸引機構45を作動させ、ベアリング部材47の内部を吸引させる。ベアリング部材47の内部が吸引されることで、当該ベアリング部材47の内部に連通されたキャップ部材42内が吸引されて負圧となる。この負圧により、噴射ヘッド11の各ノズル13からインクLQが吸引され、ノズル13内のインクLQの粘度が適正に保持されることになる。
【0056】
ノズル13から吸引されたインクは、キャップ部材42内のインク吸収材42aによって吸収される。キャップ部材42内にインクが溜まった状態で吸引動作を行うと、吸引効率が低下し、キャップ部材42内を十分に負圧にすることができなくなってしまう。このため、ノズルから十分にインクを吐出させることができず、メンテナンス性が低下してしまう。
【0057】
これに対して、本実施形態では、回転体40を回転させることにより、キャップ部材42内のインクをキャップ部材42の外部に飛散させる飛散動作を行わせる。この動作により、キャップ部材42内のインクが排出されるため、メンテナンス性が維持されることとなる。
【0058】
具体的な動作として、インクLQの噴射が行われた後、制御装置CONTは、図9に示すように、上記回転速度ω1で回転体40を回転させる。回転体40の回転によってキャップ部材42の上端が搬送面MRよりも下側(−Z側)に移動した後、制御装置CONTは、図10に示すように、回転速度をω2として回転体40を同じ回転方向に回転させる。
【0059】
回転速度をω2としては、噴射ヘッド11に対向させる部位をプラテン部材41とキャップ部材42とで切り替える際の回転速度ω1よりも大きな回転速度とすることができる。回転速度ω2で回転体40を回転させることにより、回転の遠心力によってキャップ部材42のインク吸収材42aに吸収されたインクLQがキャップ部材42の外部に飛散し、キャップ部材42内部からインクLQが排出されることになる。
【0060】
制御装置CONTは、インクLQを飛散させた後、図11に示すように、プラテン部材41を再び回転体40の+Z側に配置させる。プラテン部材41の位置合わせを行った後、制御装置CONTは、上記同様の記録動作行わせることで、次の記録媒体Mについて画像を記録させる。
【0061】
一方、図11に示すように、キャップ部材42内から飛散したインクLQは、インク受部材44の内壁を伝わってインク受部材44の底部に溜まった状態となる。この状態において、制御装置CONTは、図12に示すように、吸引機構45を作動させることにより、インク受部材44の排出口44aからインクLQを排出させる。排出されたインクLQは、インク排出タンク46内に収容される。
【0062】
このように、本実施形態によれば、回転体40の回転速度を変化させてキャップ部材42内のインクLQを飛散させるので、キャップ部材42内にインクLQが溜まるのを防ぐことができる。これにより、吸引機構45による吸引効率が低下するのを防ぐことができ、噴射ヘッド11のメンテナンス性の確保することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、回転体40の外周40aに対向するようにインク受部材44が設けられることとしたので、飛散したインクが装置内に飛び散ってしまうのを防ぐことができる。また、インク受部材の上端が搬送面MRに接するように配置されることとしたので、飛散したインクが搬送面MR上に飛び出すのをより確実に防ぐことができる。これにより、記録媒体Mに流体が誤って付着するのを防ぐことができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、キャップ部材42が搬送面MRよりも下側に配置されているときに飛散動作を行わせることとしたので、飛散したインクが記録媒体Mに付着するのをより確実に防ぐことができる。
【0065】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、飛散動作を行う場合において、例えば回転体40を回転方向に往復回動させるようにしても構わない。回転体40を往復回動させることで、飛散動作が複数回行われることになるため、一層確実にキャップ部材42内のインクLQを飛散させることができる。
【0066】
また、飛散動作を行う場合において、例えば回転体40の回動を回動速度ω2から急停止させるようにしても構わない。回動動作を急停止させることによってキャップ部材42内に慣性力を発生させることができる。この慣性力により、インクLQを効率的に飛散させることができる。
【0067】
また、上記実施形態においては、インク受部材44の形状を回転体40の外周40aに沿った形状としたが、これに限られることは無く、例えばトレイ状(断面視コ字状)、断面視楕円形状、断面視放物線状など、上記以外の構成であっても構わない。
【0068】
また、上記実施形態においては、メンテナンス機構MNのうち回転体40に設けられている構成要素がプラテン部材41、キャップ部材42及びインク保持部材43であるとしたが、これに限られることは無く、例えば上記実施形態において図示を省略したワイピング装置などを回転体40に設ける構成としても勿論構わない。
【0069】
また、上記実施形態においては、キャップ部材42内にインク吸収材42aを配置する構成としたが、これに限られることは無く、例えばインク吸収材42aを設けない構成であっても構わない。
【0070】
また、上記実施形態においては、回転体40の回転軸中心部分に吸引機構を接続させ、キャップ部材42を吸引しながらノズル13のメンテナンスを行う構成としたが、これに限られることは無く、例えばノズル13を吸引することなく、噴射ヘッド11内を別途加圧機構などによって加圧させることによってノズル13からインクを噴射させるようにしても構わない。
【0071】
上記実施例は、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を収容した液体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および液体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
PRT…プリンタ装置 M…記録媒体 IJ…インク噴射機構 CR…搬送機構 MN…メンテナンス機構 CONT…制御装置 LQ…インク 11…噴射ヘッド 40…回転体 41…プラテン部材 42…キャップ部材 43…インク保持部材 44…インク受部材 45…吸引機構 46…インク排出タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送面上を搬送される媒体へ流体を噴射する流体噴射ヘッドと、
前記流体の噴射方向上に設けられ、回転可能な回転体と、
前記回転体上に設けられ、前記媒体を支持する媒体支持部と、
前記回転体上であって前記媒体支持部に対して回転方向にずれた位置に設けられ、前記噴射ヘッドをキャッピングするキャップ部と、
前記回転体を第1速度で回動させ前記流体噴射ヘッドに前記媒体支持部と前記キャップ部とをそれぞれ対向させる対向動作、及び、前記回転体を前記第1速度とは異なる第2速度で回動させ前記キャップ部内の前記流体を飛散させる飛散動作、を切り替えて行わせる制御装置と
を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記回転体の外周に対向して設けられ、前記流体を受ける流体受部
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記流体受部の上端は、前記搬送面に接するように配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記キャップ部が前記搬送面よりも下側に配置されているときに前記飛散動作を行わせる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記回転体を往復回動させることで前記飛散動作を行わせる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記回転体の回動を急停止させることで前記飛散動作を行わせる
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
媒体へ流体を噴射する流体噴射ヘッドと、
前記流体の噴射方向上に設けられ、回転可能な回転体と、
前記回転体上に設けられ、前記媒体を支持する媒体支持部と、
前記回転体上であって前記媒体支持部に対して回転方向にずれた位置に設けられ、前記噴射ヘッドをキャッピングするキャップ部と、
前記回転体の回転速度を変化させながら前記回転体を回転させる制御装置と
を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記キャップ部の位置に応じて前記回転速度を変化させる
ことを特徴とする請求項7に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−167602(P2010−167602A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10363(P2009−10363)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】