説明

流体噴射装置

【課題】所期の噴射特性を維持すること。
【解決手段】流体を噴射する複数のノズルが形成された噴射面を有する流体噴射ヘッドと、前記噴射面に密着する密着面を有するキャップ部と、前記噴射面のうち複数の前記ノズルが形成された領域に対して前記密着面を密着部分が徐々に広がるように密着させるキャッピング動作、及び、前記密着面と前記噴射面と平行にした状態で前記噴射面から前記密着面を離す解除動作を前記キャップ部に行わせる制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を噴射する流体噴射装置として、例えば下記特許文献1に記載のインクジェット式記録装置が知られている。インクジェット式記録装置は、記録媒体(媒体)にインクを噴射して文字や画像等を記録する装置である。インクジェット式記録装置は、インクを選択的に噴射するノズルを有する噴射ヘッドを有している。
【0003】
インクジェット式記録装置では、良好な噴射特性を維持又は回復させるため、例えばノズルの形成された噴射面を覆うキャッピング動作など、当該噴射ヘッドのメンテナンス動作が定期的に行われる。例えば特許文献1には、噴射面に密着して噴射ヘッドを覆うキャップ部材を有する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−6681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、キャップ部材を噴射面に密着させるときにノズルに空気が入り込み、ノズル内のメニスカスが破壊され、噴射特性が低下してしまう可能性がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、所期の噴射特性を維持することができる流体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流体噴射装置は、流体を噴射する複数のノズルが形成された噴射面を有する流体噴射ヘッドと、前記噴射面に密着する密着面を有するキャップ部と、前記噴射面のうち複数の前記ノズルが形成された領域に対して前記密着面を密着部分が徐々に広がるように密着させるキャッピング動作、及び、前記密着面と前記噴射面と平行にした状態で前記噴射面から前記密着面を離す解除動作を前記キャップ部に行わせる制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、噴射面のうち複数のノズルが形成された領域に対して密着面を密着部分が徐々に広がるように密着させるキャッピング動作が行われるため、ノズル内への空気の入り込みが抑えられ、ノズル内のメニスカスの破壊を防ぐことができる。また、解除動作では、密着面と噴射面と平行にした状態で噴射面から密着面が離されるため、ノズル内に微量の負圧を発生させることができる。このため、ノズル内の流体の一部を排出させることができるため、ノズル内のクリーニングが行われることになる。このようにメニスカスの破壊を防ぎつつ、ノズル内の詰まりを防ぐことができるため、所期の噴射特性を維持することができる。
【0009】
上記の流体噴射装置は、複数の前記ノズルは、一方向に並ぶように配置されており、前記制御部は、前記密着部分が前記一方向に広がるように前記密着面を前記噴射面に密着させることを特徴とする。
本発明によれば、複数のノズルが並ぶ方向に密着部分が広がるので、装置設計時において各部材の配置や動作方向などを合わせやすくなる。
【0010】
上記の流体噴射装置は、複数の前記ノズルは、複数列に配置されており、前記キャップ部は、前記ノズルの列ごとに設けられており、前記制御部は、前記キャップ部ごとにそれぞれ独立して動作を制御可能であることを特徴とする。
本発明によれば、複数のノズルが複数列に配置されており、キャップ部がノズルの列ごとに設けられており、制御部がキャップ部ごとにそれぞれ独立して動作を制御可能であることとしたので、ノズル列ごとにキャッピング動作及び解除動作を行わせることができる。これにより、流体噴射ヘッドに対してより細やかなメンテナンスを行うことができる。
【0011】
上記の流体噴射装置は、前記キャップ部は、可撓性を有するように形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、キャップ部が可撓性を有するように形成されているため、密着部分を徐々に広げる動作を行いやすくすることができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、前記密着面を払拭する密着面払拭部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、密着面を払拭することができるため、密着面を清浄な状態に保持することができる。
【0013】
上記の流体噴射装置は、前記噴射面を払拭する噴射面払拭部を更に備え、前記噴射面払拭部は、前記密着面払拭部を兼ねていることを特徴とする。
本発明によれば、噴射面を払拭する噴射面払拭部を更に備え、噴射面払拭部が密着面払拭部を兼ねていることとしたので、装置内の部品点数の削減及び省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る印刷装置の構成を示す概略図。
【図2】ヘッドの構成を示す概略断面図。
【図3】ヘッドの構成を示す概略断面図。
【図4】キャッピング機構の構成を示す側面図。
【図5】制御系の構成を示すブロック図。
【図6】キャッピング動作の一工程を示す図。
【図7】キャッピング動作の一工程を示す図。
【図8】キャッピング動作の一工程を示す図。
【図9】解除動作の一工程を示す図。
【図10】解除動作の一工程を示す図。
【図11】キャッピング機構の他の構成を示す側面図。
【図12】キャッピング動作の他の工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷装置PRT(液体噴射装置)の概略構成を示す図である。本実施形態では、印刷装置PRTとして例えばインクジェット型の印刷装置を例に挙げて説明する。
【0016】
図1に示す印刷装置PRTは、例えば、紙、プラスチックシートなどのシート状の媒体Mを搬送しつつ印刷処理を行う装置である。印刷装置PRTは、筐体PBと、媒体Mにインクを噴射するインクジェット機構IJと、当該インクジェット機構IJにインクを供給するインク供給機構SPと、媒体Mを搬送する搬送機構CVと、インクジェット機構IJの保全動作を行うメンテナンス機構MNと、これら各機構を制御する制御装置CONTとを備えている。
【0017】
本実施形態では、色素材料(機能材料)を例えば水などの液状媒体に分散させたインクが用いられている。加えて、本実施形態では、例えば水分含有率が50%程度(通常は70%程度)の高粘度インクが用いられている。また、本実施形態に係る印刷装置PRTとして、例えば商業用の印刷装置を用いても構わない。
【0018】
以下、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、例えば媒体Mの搬送方向をX方向とし、当該媒体Mの搬送面においてX方向に直交する方向をY方向とし、X軸及びY軸を含む平面に垂直な方向をZ方向と表記する。また、X軸周りの回転方向をθX方向、Y軸周りの回転方向をθY方向、Z軸周りの回転方向をθZ方向とする。
【0019】
筐体PBは、例えばY方向を長手とするように形成されている。筐体PBには、上記のインクジェット機構IJ、インク供給機構SP、搬送機構CV、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTの各部が取り付けられている。筐体PBには、例えばプラテン13が設けられている。プラテン13は、媒体Mを支持する支持部材である。プラテン13は、例えば筐体PBのうちX方向の中央部に配置されている。プラテン13は、+Z方向に向けられた平坦面13aを有している。当該平坦面13aは、媒体Mを支持する支持面として用いられる。
【0020】
搬送機構CVは、例えば搬送ローラーや当該搬送ローラーを駆動するモーターなどを有している。搬送機構CVは、例えば筐体PBの−X側から当該筐体PBの内部に媒体Mを搬送し、当該筐体PBの+X側から当該筐体PBの外部に排出する。搬送機構CVは、筐体PBの内部において、媒体Mがプラテン13上を通過するように当該媒体Mを搬送する。搬送機構CVは、例えば制御装置CONTによって搬送のタイミングや搬送量などが制御されるようになっている。
【0021】
インクジェット機構IJは、インクを噴射するヘッドHと、当該ヘッドHを保持して移動させるヘッド移動機構ACとを有している。ヘッドHは、プラテン13上に送り出された媒体Mに向けてインクを噴射する。ヘッドHは、インクを噴射する噴射面Haを有している。噴射面Haは、例えば−Z方向に向けられており、例えばプラテン13の支持面13aに対向するように配置されている。
【0022】
ヘッド移動機構ACは、キャリッジ4を有している。ヘッドHは、当該キャリッジ4に固定されている。キャリッジ4は、筐体PBの長手方向(X方向)に架けられたガイド軸8に当接されている。ヘッドH及びキャリッジ4は、例えばプラテン13の+Z方向に配置されている。
【0023】
ヘッド移動機構ACは、キャリッジ4の他、例えばパルスモーター9と、当該パルスモーター9によって回転駆動される駆動プーリー10と、駆動プーリー10とはプリンタ本体5の幅方向の反対側に設けられた遊転プーリー11と、駆動プーリー10と遊転プーリー11との間に掛け渡されてキャリッジ4に接続されたタイミングベルト12とを有している。
【0024】
キャリッジ4は、当該タイミングベルト12に接続されている。キャリッジ4は、タイミングベルト12の回転に伴ってY方向に移動可能に設けられている。Y方向へ移動する際、キャリッジ4は、ガイド軸8によって案内されるようになっている。
【0025】
インク供給機構SPは、ヘッドHにインクを供給する。インク供給機構SPには、例えば複数のインクカートリッジ6が収容されている。本実施形態の印刷装置PRTは、インクカートリッジ6がヘッドHとは異なる位置に収容される構成(オフキャリッジ型)である。インク供給機構SPは、例えばヘッドHとインクカートリッジ6とを接続する供給チューブTBを有している。インク供給機構SPは、当該供給チューブTBを介してインクカートリッジ6内に貯留されるインクをヘッドHに供給する不図示のポンプ機構を有している。
【0026】
メンテナンス機構MNは、ヘッドHのホームポジションに配置されている。このホームポジションは、例えば媒体Mに対して印刷が行われる領域から外れた領域に設定されている。本実施形態では、例えばプラテン13の+Y側にホームポジションが設定されている。ホームポジションは、例えば印刷装置PRTの電源がオフである時や、長時間に亘って記録が行われない時などに、ヘッドHが待機する場所である。
【0027】
メンテナンス機構MNは、例えばヘッドHの噴射面Haを覆うキャッピング機構CPや、当該噴射面Haを払拭するワイピング機構WP、噴射面Ha(ノズルNZ)を吸引する吸引機構SCなどを有している。キャッピング機構CPは、キャッピング部材50を有している。キャッピング部材50は、密着面50a(図4等参照)を噴射面Haに密着させる構成となっている。ワイピング機構WPは、噴射面Haを払拭する第一第一ワイピング部材51と、キャッピング部材50の密着面50aを払拭する第二ワイピング部材54とを有している。
【0028】
吸引機構SCは、例えば噴射面Haとの間に密閉空間を形成する密閉部材52と、当該密閉空間を吸引する吸引ポンプ53とを有している。ヘッドHから上記キャッピング機構CP、ワイピング機構WP及び吸引機構SCを介してメンテナンス機構MN側に排出された廃インクは、例えば廃液回収機構(不図示)において回収されるようになっている。
【0029】
図2は、ヘッドHの構成を示す側断面図である。図3は、ヘッドHの構成を説明する要部断面図である。
図2に示されるように、ヘッドHは、導入針ユニット17、ヘッドケース18、流路ユニット19及びアクチュエータユニット20を備えている。
【0030】
導入針ユニット17の上面には、フィルタ21を介在させた状態で2本のインク導入針22が並んで取り付けられている。導入針ユニット17の内部には、各インク導入針22に対応したインク導入路23が形成されている。インク導入路23の上端は、フィルタ21を介してインク導入針22に接続されている。インク導入路23の下端は、パッキン24を介してヘッドケース18内部のケース流路25に接続されている。インク導入針22には、それぞれサブタンク2が装着されている。
【0031】
サブタンク2は、例えばポリプロピレン等の樹脂製材料を用いて形成されている。サブタンク2には、インク室27が設けられている。インク室27は、例えばすり鉢状に形成された凹部27aを有している。凹部27aは、開口部27bを有している。開口部27bには、透明な弾性シート26が貼り付けられている。凹部27aの底部には、連通孔27cが形成されている。連通孔27cは、インク室27の凹部27aとインク供給室27dとの間を連通するように形成されている。インク供給室27dは、例えば供給チューブTBに接続されている。インク供給室27dのうち例えば供給チューブTBとの接続部分には、例えば不図示のフィルタなどが設けられている。
【0032】
弾性シート26は、開口部27bを塞ぐように貼り付けられている。弾性シート26は、インク室27の圧力に応じて伸縮するようになっている。弾性シート26は、例えばインク室27の圧力が外部の圧力よりも高くなると凹部27aの外側へ向けて膨張した状態となり、インク室27の容積が増加した状態となる。インク室27の圧力が外部の圧力よりも低くなると凹部27aの内側へ向けて膨張した状態となり、インク室27の容積が減少した状態となる。
【0033】
弾性シート26には、弁27eが取り付けられている。弁27eは、凹部27aから連通孔27cを介してインク供給室27dに接続されており、インク供給室27d側から連通孔27cを開閉するように形成されている。弁27eは、弾性シート26が膨張及び収縮に連動して連通孔27cを開閉するようになっている。具体的には、インク室27の容積を減少させる方向に弾性シート26が膨張したときに連通孔27cが開状態となり、インク室27の容積を増加させる方向に弾性シート26が膨張したときには連通孔27cが閉状態となる。弁27eには、所定の弾性力を付与する付勢部材27fが取り付けられており、連通孔27cの開閉の圧力が調整されている。
【0034】
サブタンク2は、針接続部28に接続されている。針接続部28は、インク導入針22サブタンク2とインク導入針22とを接続する部分である。インク室27の凹部27aには、当該針接続部28に接続される接続流路29が形成されている。針接続部28の内部空間には、インク導入針22がほぼ隙間無く嵌め込まれるシール材31が設けられている。インク導入針22がシール材31に嵌め込まれることで、サブタンク2と導入針ユニット17との間がほぼ漏れの無い状態で接続されるようになっている。
【0035】
図3に示すように、ヘッドケース18は、合成樹脂などを用いて形成されている。ヘッドケース18は、例えば中空部を有するように箱型に形成されている。ヘッドケース18は、上端側がパッキン24を介して導入針ユニット17を取り付けられている。ヘッドケース18の下端面には、流路ユニット19が接合されている。ヘッドケース18の内部に形成された中空部37内には、アクチュエータユニット20が収容されている。
【0036】
ヘッドケース18の内部には、高さ方向を貫通してケース流路25が設けられている。ケース流路25の上端は、パッキン24を介して導入針ユニット17のインク導入路23に連通されている。ケース流路25の下端は、流路ユニット19内の共通インク室44に連通されている。このため、インク導入針22から導入されたインクDは、インク導入路23及びケース流路25を通じて共通インク室44側に供給されるようになっている。
【0037】
アクチュエータユニット20は、例えば櫛歯状に配置された複数の圧電振動子38と、当該圧電振動子38を保持する固定板39と、圧電振動子38に対して制御装置CONTからの駆動信号を供給するフレキシブルケーブル40とを有している。
【0038】
圧電振動子38は、図中下側端部が固定板39の下端面から突出するように固定されている。このように、各圧電振動子38は、所謂片持ち梁の状態で固定板39上に取り付けられている。各圧電振動子38を支持する固定板39は、例えば厚さ1mm程度のステンレス鋼によって構成されている。固定板39のうち例えば圧電振動子38の固定された面とは異なる面が中空部37を区画するケース内壁面に接着されている。
【0039】
流路ユニット19は、振動板41、流路基板42及びノズル基板43を有している。振動板41、流路基板42及びノズル基板43は、積層された状態で接着されている。流路ユニット19は、共通インク室44からインク供給口45、圧力室46を通り、ノズルNZに至るまでの一連のインク流路(液体流路)を構成している。圧力室46は、ノズルNZの配列方向(ノズル列方向)に対して直交する方向が長手方向となるように形成されている。
【0040】
共通インク室44は、ケース流路25に接続されている。共通インク室44には、インク導入針22側からのインクDが導入される室である。また、共通インク室44は、インク供給口45に接続されている。共通インク室44に導入されたインクDは、当該インク供給口45を通じて各圧力室46に分配されるようになっている。
【0041】
ノズル基板43は、流路ユニット19の底部に配置されている。ノズル基板43には、媒体Mに形成される画像などのドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数のノズルNZが形成されている。ノズル基板43としては、例えばステンレス鋼などの金属製の板材が用いられる。
【0042】
図4は、ヘッドH及びキャッピング機構CPの構成を示す側面図である。
図4に示すように、キャッピング機構CPは、キャッピング部材50及び駆動機構ACTを有している。キャッピング部材50は、例えばゴムやエラストマなどの材料を用いて板状に形成されており、可撓性を有している。このため、キャッピング部材50は、例えば噴射面Haに対して反り返る方向に湾曲した状態に変形可能である。
【0043】
キャッピング部材50は、ヘッドHの噴射面Haに対して密着させる密着面50aを有している。密着面50aは、ヘッドHの噴射面Haに対向して設けられている。キャッピング部材50は、噴射面Haのうち少なくともノズルNZが形成されている範囲を覆う寸法に形成されている。
【0044】
駆動機構ACTは、キャッピング部材50をヘッドHとの間で移動させる移動機構と、キャッピング部材50を例えば上記した状態に湾曲させるなどキャッピング部材50を変形させる変形機構と、を有している。このような移動機構及び変形機構としては、例えばモーター機構、エアシリンダ機構などのアクチュエータが用いられる。勿論、他のアクチュエータを用いても構わない。駆動機構ACTは、例えば制御装置CONTからの制御信号に基づいてキャッピング部材50を移動させたり変形させたりする。
【0045】
図5は印刷装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
制御装置CONTには、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置IP、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置MRなどが接続されており、上述した搬送機構CVや、ヘッド移動機構AC、メンテナンス機構MN等が接続されている。制御装置CONTは、メンテナンス機構MNのうち例えばキャッピング機構CPやワイピング機構WPなどを制御可能である。
【0046】
印刷装置PRTは、それぞれの圧電振動子38に入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。この駆動信号発生器62は、制御装置CONTに接続されている。駆動信号発生器62には、ヘッドHの圧電振動子38に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、各圧電振動子38に対して、個別に駆動信号を供給可能に設けられている。
【0047】
次に、上記のように構成された印刷装置PRTの動作を説明する。
ヘッドHによる印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、搬送機構CVによって媒体MをヘッドHの−Z側に配置させる。媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、ヘッドHを移動させつつ、印刷する画像の画像データに基づいてノズルNZに係る駆動信号発生器62から圧電振動子38に駆動信号を入力する。
【0048】
圧電振動子38に駆動信号が入力されると、圧電振動子38が伸縮する。圧電振動子38の伸縮により、圧力室46の容積が変化し、インクを収容した圧力室46の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズルNZからインクが噴射される。ノズルNZから噴射されたインクによって、媒体Mに所望の画像が形成される。なお、圧電振動子38を伸縮させる場合、上記の第1電気信号を圧電振動子38に供給しても構わない。また、第1電気信号とは異なる駆動信号を圧電振動子38に供給しても構わない。
【0049】
また、制御装置CONTは、ヘッドHのメンテナンス動作として、例えばキャッピング動作、吸引動作、ワイピング動作などを行わせる。キャッピング動作を行わせる場合、制御装置CONTは、ヘッドHをホームポジションに移動させ、ヘッドHの噴射面Haとキャッピング部材50の密着面50aとを対向させる。このとき、図6に示すように、キャッピング部材50を撓ませた状態とし、密着面50aが噴射面Haに対して反る方向に湾曲させておく。
【0050】
この状態から、制御装置CONTは、駆動機構ACTにより、キャッピング部材50をヘッドH側へ移動させ、密着面50aを噴射面Haに密着させる。この動作により、図7に示すように、密着面50aの一端部(図中左端)のみが噴射面Haに密着し(密着部分50b)、他の部分は噴射面Haから離れるように湾曲した状態となる。
【0051】
密着面50aの一部を噴射面Haに密着させた後、制御装置CONTは、駆動機構ACTにより、密着面50aをノズルNZの列が配置された一端部(図中左端)から他端部(図中右端)に掛けて一方向に徐々に噴射面Haに密着させていく。この動作により、図8に示すように、密着部分50bが密着面50aの一端部から他端部へ一方向に徐々に広がっていく。なお、ここでは密着部分50bの広がる方向を、ノズルNZの列が配置されている方向としたが、これに限られることは無く、他の方向であっても構わない。
【0052】
密着面50aの全面が噴射面Haに密着されたら、キャッピング動作が完了となる。上記の動作において、制御装置CONTは、噴射面Haのうち複数のノズルNZが形成された領域に対して密着面50aを密着部分50bが徐々に広がるように密着させるため、ノズルNZ内への空気の入り込みが抑えられ、ノズルNZ内のメニスカスの破壊が抑えられることになる。
【0053】
次に、当該キャッピング動作を解除する解除動作を説明する。
キャッピング動作が完了した状態において、ヘッドHの噴射面Haとキャッピング部材50の密着面50aとは平行な状態で密着されている。解除動作を行う場合、制御装置CONTは、駆動機構ACTにより、密着面50aと噴射面Haとの間を平行な状態に保ったまま、キャッピング部材50をヘッドHから離れる方向(−Z方向)へ移動させる。
【0054】
この動作により、図9に示すように、密着面50aと噴射面Haと平行にした状態で噴射面Haから密着面50aが離されるため、ノズルNZ内に微量の負圧が発生する。当該負圧により、ノズルNZから密着面50aへとインクDが排出される。このため、ノズルNZ内のインクの増粘や詰まりなどが解消されることになる。
【0055】
制御装置CONTは、キャッピング部材50をヘッドHから引き離した後、密着面50aに付着したインクDを除去させる。インクDの除去動作を行う際には、図10に示すように、制御装置CONTは、ワイピング機構WPの第二ワイピング部材54に密着面50aを払拭させる。この動作により、第二ワイピング部材54によって密着面50a上のインクDが払拭され、密着面50a上が清浄な状態に保持される。
【0056】
なお、キャッピング動作及び解除動作の他、例えば吸引動作を行う場合には、制御装置CONTは、密閉部材52を用いてヘッドHの噴射面Haとの間に密閉空間を形成させ、吸引ポンプ53を用いて当該密閉空間を吸引させる。この動作により、密閉空間が負圧になり、ノズルNZからインクが排出される。排出されたインクは、不図示の廃液回収機構に回収される。また、ワイピング動作を行う場合、制御装置CONTは、ワイピング機構WPの第一ワイピング部材51をヘッドHの噴射面Haに当接させ、この状態から第一ワイピング部材51の+Z側の先端がヘッドHの噴射面Haを例えば+Y方向に払拭させる。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、噴射面Haのうち複数のノズルNZが形成された領域に対して密着面50aを密着部分50bが徐々に広がるように密着させるキャッピング動作が行われるため、ノズルNZ内への空気の入り込みが抑えられ、ノズルNZ内のメニスカスの破壊を防ぐことができる。また、キャッピング動作の解除動作では、密着面50aと噴射面Haとを平行にした状態で噴射面Haから密着面50aが離されるため、ノズルNZ内に微量の負圧を発生させることができる。このため、ノズルNZ内のインクの一部を排出させることができ、ノズルNZ内のクリーニングが行われることになる。このようにメニスカスの破壊を防ぎつつ、ノズル内の詰まりを防ぐことができるため、所期の噴射特性を維持することができる。
【0058】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、キャッピング部材50が噴射面Haのほぼ全面を覆う寸法に形成されていたが、これに限られることは無い。例えば図11に示すように、ノズルNZの列毎にキャッピング部材50を設ける構成であっても構わない。この場合、図11及び図12に示すように、例えば駆動機構ACTによって各キャッピング部材50を個別に駆動する構成とすることが好ましい。
【0059】
また、上記実施形態においては、キャッピングの解除動作において、キャッピング部材50の密着面50aに付着したインクDを第二ワイピング部材54によって払拭する態様を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、例えば、第一ワイピング部材51によって密着面50aを払拭する構成としても構わない。
【0060】
また、上記実施形態では、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を収容した液体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。
【0061】
また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【0062】
液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0063】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および液体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
PRT…印刷装置 IJ…インクジェット機構 CONT…制御装置 H…ヘッド Ha…噴射面 CP…キャッピング機構 WP…ワイピング機構 D…インク NZ…ノズル 50…キャッピング部材 50a…密着面 50b…密着部分 51…第一ワイピング部材 54…第二ワイピング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射する複数のノズルが形成された噴射面を有する流体噴射ヘッドと、
前記噴射面に密着する密着面を有するキャップ部と、
前記噴射面のうち複数の前記ノズルが形成された領域に対して前記密着面を密着部分が徐々に広がるように密着させるキャッピング動作、及び、前記密着面と前記噴射面と平行にした状態で前記噴射面から前記密着面を離す解除動作を前記キャップ部に行わせる制御部と
を備える流体噴射装置。
【請求項2】
複数の前記ノズルは、一方向に並ぶように配置されており、
前記制御部は、前記密着部分が前記一方向に広がるように前記密着面を前記噴射面に密着させる
請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
複数の前記ノズルは、複数列に配置されており、
前記キャップ部は、前記ノズルの列ごとに設けられており、
前記制御部は、前記キャップ部ごとにそれぞれ独立して動作を制御可能である
請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記キャップ部は、可撓性を有するように形成されている
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記密着面を払拭する密着面払拭部を更に備える
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記噴射面を払拭する噴射面払拭部を更に備え、
前記噴射面払拭部は、前記密着面払拭部を兼ねている
請求項5に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−255620(P2011−255620A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133167(P2010−133167)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】