説明

流体噴射装置

【課題】切除液と造影剤とを切替えて噴射できる流体噴射装置を提供する。
【解決手段】流体噴射装置1は、切除液または造影剤のいずれか一方を噴射させる一つの流体噴射部40と、流体噴射部40に切除液または造影剤を供給する流体供給手段としてのポンプ20と、流体噴射部40とポンプ20とを接続するカテーテル6と、噴射させる流体を切除液または造影剤のいずれか一方に切替える切替え手段としてのバルブ31,32、が備えられている。よって、造影によって確認した細管組織内の切除対象物を切除する場合は、供給する流体を造影剤から切除液に切替えて切除を行い、切除後の細管組織の状態を確認する場合は切除液から造影剤に切替えることができ、造影及び切除毎にカテーテル6の挿入、抜き出しを行う必要がなく、患者及び施術者の双方にとって負担を著しく軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切除液または造影剤を切替えて一つの流体噴射部から噴射させる流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、循環器系の造影を可能にするために、生体の血管内に挿入して造影剤を射出する造影カテーテルが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、生体の血管等の細管組織内に挿入し、血管中閉塞物等の切除に適するものとしてカテーテル先端に配設され切除液をパルス流噴射させる流体噴射装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−84087号公報
【特許文献2】特許第4311483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1及び特許文献2はそれぞれ、生体の細管組織内の造影、細管組織内の閉塞物等の切除に適した流体噴射装置である。ここで、造影によって確認した細管組織内の切除対象物を切除する場合は、造影カテーテルを抜き出し、改めて切除用流体噴射装置を有する切除用カテーテルを細管組織内に挿入しなくてはならない。或いは、切除後の細管組織の状態を確認する場合に造影カテーテルを再挿入しなければならない。
【0006】
このように、造影カテーテルと切除用カテーテルとを交互に細管組織に挿入することは、患者にとって、また、施術者にとっても負担が大きいという課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係る流体噴射装置は、切除液または造影剤のいずれか一方を噴射させる一つの流体噴射部と、前記流体噴射部に前記切除液または前記造影剤を供給する流体供給手段と、前記流体噴射部と前記流体供給手段とを接続する流体供給チューブと、噴射させる流体を前記切除液または前記造影剤のいずれか一方に切替える切替え手段と、が備えられていることを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、切替え手段によって流体噴射部に供給する流体を切除液または造影剤のいずれかに切替え、一つの流体噴射装置から切除液を噴射して組織切除を行い、造影剤を噴射して組織の造影を行うことが可能である。従って、造影剤によって確認した細管組織内の切除対象物を切除する場合は、供給する流体を造影剤から切除液に切替えて切除を行い、切除後の細管組織の状態を確認する場合は切除液から造影剤に切替えることができる。
【0010】
よって、造影及び切除毎にカテーテルの挿入、抜き出しを行う必要がなく、患者または施術者の双方にとって、負担を著しく軽減できる。
【0011】
[適用例2]上記適用例に係る流体噴射装置は、前記流体噴射部が、流体室と、前記流体室の容積を変更する容積変更手段とを有し、パルス流噴射と連続流噴射とに切り替え可能であることが好ましい。
【0012】
このような構成の流体噴射装置は、容積変更手段を駆動することによって流体を脈流に変換しパルス流噴射させる。また、容積変更手段を駆動しない場合(流体室の容積が一定に維持される場合)は連続流噴射させることが可能である。すなわち、パルス流噴射または連続流噴射を選択でき、流体噴射装置の用途に合った適切な噴射状態で使用することが可能となる。
【0013】
ここで脈流とは、流体の流れる方向が一定で、流体の流量または流速が周期的または不定期な変動を伴った流体の流動を意味する。脈流には、流体の流動と停止とを繰り返す間欠流も含むが、流体の流量または流速が周期的または不定期な変動をしていればよいため、必ずしも間欠流である必要はない。同様に、流体をパルス状に噴射するとは、噴射する流体の流量または移動速度が周期的または不定期に変動した流体の噴射を意味する。パルス流噴射の一例として、流体の噴射と非噴射とを繰り返す間欠噴射が挙げられるが、噴射する流体の流量または移動速度が周期的または不定期に変動していればよいため、必ずしも間欠噴射である必要はない。
【0014】
[適用例3]上記適用例に係る流体噴射装置は、前記流体噴射部による前記造影剤の噴射圧力が、切除力を有しない程度に制御されることが望ましい。
【0015】
このようにすれば、造影剤注入時に生体組織を傷つけることがなく安全性を確保することができる。また、噴射圧力を低くすればパルス流噴射により造影剤を注入してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係る流体噴射装置を示す構成説明図。
【図2】実施形態1に係る流体噴射部を示す断面図。
【図3】実施形態1の変形例1に係る流体噴射装置の一部を示す構成説明図。
【図4】実施形態1の変形例2に係る流体噴射装置の一部を示す構成説明図。
【図5】実施形態2に係る流体噴射装置を示す構成説明図。
【図6】実施形態2の変形例に係る流体噴射装置を示す構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明による流体噴射装置は、インク等を用いた描画、細密な物体及び構造物の洗浄、手術用メス等様々に採用可能であるが、切除液を噴射させて生体組織を切開または切除することと、造影剤を噴射させて細管組織内に注入することが可能な流体噴射装置を例示して説明する。従って、実施形態にて用いる切除液は、水または生理食塩水等である。
なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(実施形態1)
【0018】
図1は、実施形態1に係る流体噴射装置を示す構成説明図である。図1において、流体噴射装置1は、切除液容器2と、造影剤容器3と、切替え手段30と、流体供給手段としてのポンプ20を含む駆動制御部10と、流体噴射部40と、から構成されている。
【0019】
切替え手段30は、バルブ31とバルブ32とからなり、図示しないバルブ制御回路によって開閉制御される。切除液容器2とポンプ20とは流体供給管4によりバルブ32を介して接続されており、切除液が送液される。また、造影剤容器3とポンプ20とは流体供給管5によりバルブ31を介して接続されており、造影剤が送液される。
【0020】
バルブ31,32は、切除液容器2、造影剤容器3からポンプ20に向かう液体流動を可能とし、逆方向への流動を不可能とすることからチェックバルブであって、本実施形態における切替え手段30は、二つの流入側流路と一つの流出側流路を有する三方弁構造である。
【0021】
駆動制御部10には、ポンプ20を駆動制御するポンプ駆動回路と、切替え手段30のバルブ31,32の開閉を制御するバルブ制御回路と、流体噴射部40の駆動を制御する圧電素子駆動回路(共に、図示を省略する)と、流体噴射装置1の起動スイッチ11と、切除液または造影剤の供給を切替えるための切替えスイッチ12と、が備えられている。
【0022】
また、流体噴射部40とポンプ20とは、流体供給チューブ6によって接続されている。流体供給チューブ6は、血管等の細管組織に倣って挿入されるため柔軟性を有しており、本実施形態ではカテーテルに相当する。よって、以降、流体供給チューブ6をカテーテル6と表す。
【0023】
流体噴射部40は、ポンプ20から供給される切除液または造影剤を流体噴射開口部83からパルス流噴射または連続流噴射が可能な構成であり、以下にその構成を図面に基づき説明する。
【0024】
図2は、本実施形態に係る流体噴射部を示す断面図である。流体噴射部40は、上ケース61と下ケース62の互いの対向面が接合された状態で、断面形状がほぼ円形の筒状に構成されている。下ケース62の上ケース61との対向面には凹部が穿設され、この凹部と、上ケース61と下ケース62との対向面の間に密着固定されるダイアフラム51とで形成される空間が流体室70である。
【0025】
下ケース62には、流体室70に連通する入口流路81と出口流路82とが形成され、ダイアフラム51の流体室70に対して反対側の表面には容積変更手段としての圧電素子52が固着されている。なお、出口流路82の先端部は流体噴射開口部83である。
【0026】
図2からも明らかなように、本実施形態に係る流体噴射部40は、入口流路81、流体室70、及び出口流路82が一直線上に形成されている。このような構成にすることによって、流体が衝突する壁部を少なくすることができるため、流体が衝突する壁部において滞留する気泡を減らすことができる。その結果、滞留した気泡の影響によって流体室70の圧力が低下することを防止できる。
なお、入口流路81、流体室70、及び出口流路82とは、必ずしも一直線上に形成されていなくてもよい。
【0027】
また、図2において、ダイアフラム51は、流体室70の底面(下ケース62によって形成される面)と平行に配置されている。言い換えれば、ダイアフラム51は流体の流れる方向に対して平行に配置されているとも言える。このような構成にすることによって、流体噴射部40の外径をカテーテル6の外径と同程度にすることができ、後述するように流体噴射部40を血管等の細管組織に挿入することが可能となる。
【0028】
また、ダイアフラム51を流体室70の底面と平行に配置することによって、ダイアフラム51が流体室70を形成する面積を大きくすることができる。これにより、ダイアフラム51の変形によって流体室70の容積を縮小する量(=流体室内の流体排除体積)を大きくすることができる。例えばダイアフラム51を流体室70の底面と垂直に配置すると、ダイアフラム51が流体室70を形成する面積は流体噴射部40の外径に制限され、ダイアフラム51の変形によって流体室70の流体排除体積を大きくすることができない。
【0029】
次に、本実施形態における流体噴射部の流体吐出動作について図1、図2を参照して説明する。まず、パルス流噴射の場合を説明する。本実施形態の流体噴射部40の流体吐出は、入口流路81側の合成イナータンスL1と出口流路82側の合成イナータンスL2の差によって行われる。
【0030】
まず、イナータンスについて説明する。
イナータンスLは、流体の密度をρ、流路の断面積をS、流路の長さをhとしたとき、L=ρ×h/Sで表される。流路の圧力差をΔP、流路を流れる流体の流量をQとした場合に、イナータンスLを用いて流路内の運動方程式を変形することで、ΔP=L×dQ/dtという関係が導き出される。
【0031】
つまり、イナータンスLは、流量の時間変化に与える影響度合いを示しており、イナータンスLが大きいほど流量の時間変化が少なく、イナータンスLが小さいほど流量の時間変化が大きくなる。
【0032】
入口流路81側の合成イナータンスL1は、入口流路81の範囲において算出される。また、出口流路82側の合成イナータンスL2は、出口流路82の範囲において算出される。
【0033】
そして、本実施形態では、入口流路81側の合成イナータンスL1が出口流路82側の合成イナータンスL2よりも大きくなるように、入口流路81の流路長及び断面積、出口流路82の流路長及び断面積を設定する。
【0034】
次に、流体噴射動作について説明する。
入口流路81には、ポンプ20によって常に一定圧力(定常流量)で流体が供給されている。その結果、圧電素子52が動作を行わない場合、ポンプ20の吐出力と入口流路81側全体の流路抵抗の差によって流体は流体室70内に流動する。
【0035】
ここで、駆動信号が入力され圧電素子52がダイアフラム51の流体室70側の面の法線方向の流体室70側に急激に凸状に変位したとすると、圧電素子52によってダイアフラム51が同様に流体室70側に凸状に押圧され、ダイアフラム51が流体室70の容積を縮小する方向に変形する。流体室70内の圧力は、入口流路81側及び出口流路82側の合成イナータンスL1,L2が十分な大きさを有していれば急速に上昇して数十気圧に達する。
【0036】
この圧力は、入口流路81に加えられていたポンプ20による圧力よりはるかに大きいため、入口流路81から流体室70内への流体の流入はその圧力によって減少し、出口流路82からの流出は増加する。
【0037】
しかし、入口流路81側の合成イナータンスL1は、出口流路82側の合成イナータンスL2よりも大きく、入口流路81から流体室70へ流入する流量の減少量よりも、出口流路82から吐出される流体の増加量のほうが大きいため、出口流路82にパルス状の流体吐出、つまり、脈流が発生する。この吐出の際の圧力変動により流体噴射開口部83から流体が噴射される。
【0038】
一方、流体室70内は、入口流路81からの流体流入量の減少と出口流路82からの流体流出の増加との相互作用で、圧力上昇直後に真空に近い低圧状態となる。そして、圧電素子52を元の形状に復元すると、ポンプ20の圧力と、流体室70内の低圧状態の双方によって一定時間経過後、入口流路81の流体は圧電素子52の動作前(変位前)と同様な速度で流体室70内に向かう流れが復帰する。
【0039】
入口流路81内の流体の流動が復帰した後、圧電素子52の変位があれば、流体噴射開口部83からパルス状の液滴を継続して噴射させる。
【0040】
なお、上述した流体噴射部40はイナータンス効果により流体をパルス流噴射させる構成を例示しているが、入口流路81にチェックバルブを設け、流体室70に流体を流入させるときにはチェックバルブを開放し、流体室70の容積を縮小するときにはチェックバルブを閉鎖する構成としてもよい。
【0041】
圧電素子52を駆動しない場合、つまり、流体室70の容積を一定のまま維持した場合には脈流は発生せず、流体の吐出は連続流噴射となる。
【0042】
従って、流体噴射開口部83からの流体吐出は、流体噴射部40を駆動した場合には脈流が発生してパルス流噴射となり、駆動しない場合には連続流噴射となり、一つの流体噴射部40でパルス流噴射と連続流噴射とに切替えることが可能である。
【0043】
続いて、本実施形態に係る流体噴射装置1の駆動方法について図1、図2を参照して説明する。まず、切替えスイッチ12を操作して切除液を噴射させるか、造影剤を噴射させるかを決定する。ここでは、造影剤を選択した場合を説明する。造影剤を選択すると、バルブ制御回路によりバルブ32を閉鎖し、バルブ31を開放する。従って、切除液は流動しない。
【0044】
次に、起動スイッチ11をONにすると、ポンプ駆動回路によりポンプ20が起動する。造影剤吐出には連続流噴射とすることが予め決定されている場合には、圧電素子52は駆動しない。また、パルス流噴射とする場合には、起動スイッチ11をONすることに伴い、圧電素子駆動回路により圧電素子52が駆動され脈流が発生しパルス流噴射となる。この際、造影剤を噴射させる場合には、連続流噴射であれ、パルス流噴射であれ、生体組織を傷つけない程度の噴射圧力に設定する。
【0045】
なお、造影剤としては、血管等の細管組織内に注入する場合には、例えばX線不透過物質であるヨード造影剤等が用いられ、必要に応じてX線造影を行う。
【0046】
造影剤により切除すべき患部が特定された場合、起動スイッチ11をOFFにして一旦ポンプ20の駆動を停止させる。パルス流噴射をしていた場合には、圧電素子52の駆動を停止し、次いでポンプ20の駆動を停止させる。そして、切替えスイッチ12を操作し造影剤吐出から切除液吐出に切替える。この操作に伴い、バルブ制御回路によりバルブ32を開放し、バルブ31を閉鎖する。従って、造影剤は流動しない。
【0047】
次に、起動スイッチ11をONにすると、ポンプ駆動回路によりポンプ20が起動する。切除液吐出をパルス流噴射とする場合には、起動スイッチ11をONすることに伴い、圧電素子駆動回路により圧電素子52が駆動され脈流が発生しパルス流噴射となる。また、連続流噴射とすることが予め決定されている場合には、圧電素子52は駆動させない。切除液を吐出させるときは生体組織を切除または切開することを目的とするために、切除または切開に必要な噴射圧力に制御される。次いでパルス流噴射と連続流噴射の場合の切除力について説明する。
【0048】
パルス流噴射の場合、主にパルス化した流体の先頭波や流体粒の衝撃圧によって生体組織を削り取るように切除する。この際、パルス一個の衝撃圧による切除力を決定する要因は、パルス流の流体粒の大きさを決定する流体室70の容積変化量(流体排除体積)と、パルス流の流体粒の速度を決定する流体室70の容積を縮小させる速度(流体室70の容積を縮小させる際の圧電素子52の駆動時間に相当する)であるため、流体供給圧力は低圧でもよい。また、噴射流量も少量でよいという特性を有している。
【0049】
連続流噴射の場合、連続的に噴射される流体の流体圧で生体組織を押し広げながら切除または切開が行われる。従って、流体圧による切除力はポンプ20による流体供給圧力に影響される。このことから連続流噴射の場合はパルス流噴射に比べて噴射流量を増加しやすい。
【0050】
これら連続流噴射とパルス流噴射の特性を考慮すると、造影剤を細管組織内に注入する場合には連続流噴射とし、生体組織の切除にはパルス流噴射とすることがより好ましく、造影剤の場合は切除力のない範囲にポンプ20の流体供給圧力を制御する。
【0051】
以上説明したように、切替え手段30によって流体噴射部40に供給する流体を切除液または造影剤のいずれかに切替えることにより、造影によって確認した細管組織内の切除対象物を切除する場合は、供給する流体を造影剤から切除液に切替えて切除を行い、切除後の細管組織の状態を確認する場合は切除液から造影剤に切替えることができる。
【0052】
よって、造影及び切除毎にカテーテル6の挿入、抜き出しを行う必要がなく、患者及び施術者の双方にとって負担を著しく軽減できる。
【0053】
また、流体噴射部40が、流体室70と、流体室70の容積を変更する容積変更手段としての圧電素子52、ダイアフラム51を有し、圧電素子52を駆動することによって流体を脈流に変換しパルス流噴射させ、圧電素子52を駆動しない場合(流体室70の容積が一定に維持される場合)は連続流噴射させるというように流体噴射を切替えることができる。
【0054】
パルス流噴射の場合、主にパルス化した流体の先頭波や流体粒の衝撃圧によって生体組織を削り取るように切除することから、供給する流体供給圧力は低圧でもよく、また供給流量も極めて少なくできるという特性を有し、生体組織の切除に適している。
【0055】
また、連続流噴射の場合は、流体の流体圧で生体組織を押し広げながら切除することから細管組織内の閉塞物等の剥離切除に適していると考えられ、パルス流噴射または連続流噴射に切り替えれば様々な手術に対応することができる。この際、噴射流切替えスイッチを設ければ容易に切替えが可能となる。
【0056】
また、連続流噴射の場合は、流体供給圧力を低くしてもパルス流噴射に比べて噴射流量を増加しやすいことから造影剤注入により適している。
(変形例1)
【0057】
続いて、上述した実施形態1の変形例について説明する。変形例1は、造影剤、切除液それぞれの供給に専用のポンプを設けていることに特徴を有している。実施形態1との相違箇所を中心に説明する。なお、実施形態1との共通要素には同じ符号を附して説明する。
図3は、変形例1に係る流体噴射装置の一部を示す構成説明図である。図3において、切除液を供給する流体供給管4にはポンプ21が接続され、造影剤を供給する流体供給管5にはポンプ20が接続されている。
【0058】
そして、カテーテル6と、ポンプ20とポンプ21の間に切替え手段30が配設されている。切替え手段30は、バルブ31とバルブ32とからなり、図示しないバルブ制御回路によって開閉制御される。ポンプ21とカテーテル6とはバルブ32を介して接続されており、切除液が送液される。また、ポンプ20とカテーテル6とはバルブ31を介して接続されており、造影剤が送液される。変形例1における切替え手段30は、二つの流入側流路と一つの流出側流路を有する三方弁構造である。
【0059】
続いて、変形例1に係る流体噴射装置1の駆動方法について図1、図3を参照して説明する。まず、切替えスイッチ12を操作して切除液を噴射するか、造影剤を噴射させるかを決定する。ここでは、造影剤を選択した場合を説明する。造影剤を選択すると、バルブ制御回路によりバルブ32を閉鎖し、バルブ31を開放する。従って、切除液は流動しない。
【0060】
次に、起動スイッチ11をONにすると、ポンプ駆動回路によりポンプ20が起動する。造影剤吐出には連続流噴射とすることが予め決定されている場合には、圧電素子52は駆動しない。また、パルス流噴射とする場合には、起動スイッチ11をONすることに伴い、圧電素子駆動回路により圧電素子52が駆動され脈流が発生しパルス流噴射となる。この際、造影剤を噴射させる場合には、連続流噴射であれ、パルス流噴射であれ、生体組織を傷つけない程度の噴射圧力に設定される。
【0061】
造影剤により切除すべき患部が特定された場合、起動スイッチ11をOFFにして一旦ポンプ20の駆動を停止させる。パルス流噴射をしていた場合には、圧電素子52の駆動を停止し、次いでポンプ20の駆動を停止させる。そして、切替えスイッチ12を操作し造影剤吐出から切除液吐出に切替える。この操作に伴い、バルブ制御回路によりバルブ32を開放し、バルブ31を閉鎖する。従って、造影剤は流動しない。
【0062】
次に、起動スイッチ11をONにすると、ポンプ駆動回路によりポンプ21が起動する。切除液吐出をパルス流噴射とする場合には、起動スイッチ11をONすることに伴い、圧電素子駆動回路により圧電素子52が駆動され脈流が発生しパルス流噴射となる。また、連続流噴射とすることが予め決定されている場合には、圧電素子52は駆動させない。切除液を吐出させるときは生体組織を切除または切開することを目的とするために、切除に必要な噴射圧力に制御される。
【0063】
このような変形例1の構成であっても前述した実施形態1と同様な効果が得られる。さらに、造影剤と切除液の供給それぞれに専用のポンプ20とポンプ21とを有していることから、造影剤供給または切除液供給のそれぞれに適した流体供給圧力で流体を供給することができるという利点がある。
(変形例2)
【0064】
続いて、変形例2の流体噴射装置について説明する。変形例2は、造影剤、切除液それぞれの供給に専用のポンプとバルブを設けていることに特徴を有している。実施形態1及び変形例1との相違箇所を中心に説明する。なお、実施形態1との共通要素には同じ符号を附して説明する。
【0065】
図4は、変形例2に係る流体噴射装置の一部を示す構成説明図である。図4において、切除液を供給する流体供給管4にはポンプ21が接続され、ポンプ21の上流側にバルブ34が配設されている。また、造影剤を供給する流体供給管5にはポンプ20が接続され、ポンプ20の上流側にバルブ33が配設されている。バルブ33とバルブ34は、図示しないバルブ制御回路によって開閉制御される。なお、流体供給管5及び流体供給管4は、管継ぎ手35によりカテーテル6に接続されている。
【0066】
変形例2の駆動方法は、前述した変形例1と同様であるが、造影剤を供給する場合は、バルブ33を開放しポンプ20を起動させる。この際、バルブ34は閉鎖されている。切除液の場合は、バルブ34を開放しポンプ21を起動させる。この際、バルブ33は閉鎖されている。
【0067】
このような変形例2の構成であっても前述した実施形態1及び変形例1と同様な効果が得られる。
【0068】
なお、バルブ33をポンプ20と管継ぎ手35との間、バルブ34をポンプ21と管継ぎ手35との間に配設する構成としてもよい。
(実施形態2)
【0069】
続いて、実施形態2に係る流体噴射装置について図面を参照して説明する。実施形態2は、前述した実施形態1が、切除液または造影剤を1本のカテーテル6で流体噴射部に送液する構成に対して、切除液、造影剤それぞれに専用の流体供給チューブで送液する構成としたことに特徴を有する。実施形態1と共通部分については同じ符号を附し、相違箇所を中心に説明する。
【0070】
図5は、実施形態2に係る流体噴射装置を示す構成説明図である。図5において、流体噴射装置1は、造影剤容器3に接続する流体供給管5と、バルブ33と、ポンプ20と、チューブ9と、切除液容器2に接続する流体供給管4とバルブ34と、ポンプ21と、チューブ8と、チューブ8,9が連通する流体噴射部40とから構成されている。よって、チューブ8には切除液が、チューブ9には造影剤が送液される。なお、ポンプ20,21から上流側の構成は前述した変形例2と同じであるため説明を省略する。
【0071】
流体噴射部40の基本構成は実施形態1(図2、参照)と同じであり、入口流路81側端部に導入チューブ7が接続されている。導入チューブ7は柔軟性を有し、チューブ8,9が挿入されている。導入チューブ7の両端部には、栓部材90,91が設けられている。栓部材90と栓部材91との間は、チューブ8,9の流路を確保しつつ密閉される。
【0072】
流体噴射部40と栓部材90と導入チューブ7とで囲まれた空間93は液体溜りであって、入口流路81にチューブ8,9を直接接続できないため、バッファーとして設けている。
【0073】
なお、本実施形態の駆動方法は、造影剤を専用のチューブ9により送液すること、切除液を専用のチューブ8により送液すること以外は前述した変形例2と同じである。従って、前述した実施形態1と同様な効果を有する。
【0074】
また、造影剤を造影剤容器3からチューブ9まで専用の流路で送液し、切除液を切除液容器2からチューブ8まで専用の流路で送液することで、ポンプ20,21それぞれの流体供給圧力を適正値に固定することが可能となり、制御が容易になる効果がある。
さらに、導入チューブ7を設けることで、細いチューブ8,9を保護することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、導入チューブ7は、チューブ8,9の長さ方向の大部分を覆うように構成されているが、流体噴射部40側の栓部材90の範囲にだけ設ける構成としてもよい。
(実施形態2の変形例)
【0076】
続いて、実施形態2の変形例について図面を参照して説明する。この変形例は、前述した実施形態2の導入チューブ7とチューブ8,9とを一体化していることに特徴を有している。従って、実施形態2との相違箇所を中心に説明する。なお、共通部分には同じ符号を附して説明する。
【0077】
図6は、実施形態2の変形例に係る流体噴射装置を示す構成説明図である。図6において、流体噴射部40には、柔軟性を有する流体供給チューブ101が接続され、流体噴射部40とは反対側の端部は分岐継ぎ手110に接続されている。
【0078】
流体供給チューブ101には、造影剤を送液するための第1流路102と、切除液を送液するための第2流路103が開口されている。そして、第1流路102、第2流路103と、入口流路81との間に液体溜りとしての空間93が設けられている。よって、流体供給チューブ101は、第1流路102と第2流路103を有するカテーテルといえる。
【0079】
分岐継ぎ手110には、第1流路102に連通する接続流路111と、接続流路111に連通する接続流路112とが形成され、接続流路112は接続管116に連通し、接続管116はポンプ20に接続されている。さらに、分岐継ぎ手110には、第2流路103に連通する接続流路113と、接続流路113に連通する接続流路114とが形成され、接続流路114は接続管115に連通し、接続管115はポンプ21に接続されている。なお、ポンプ20,21から上流側の構成は前述した変形例2と同じであるため説明を省略する。
【0080】
なお、この変形例の駆動方法は、造影剤を第1流路102により送液すること、切除液を第2流路103により送液すること以外は前述した実施形態2と同じである。従って、前述した実施形態2と同様な効果を有する。
【0081】
また、第1流路102と第2流路103とを流体供給チューブ101に形成しているため、チューブ8,9と導入チューブ7とを有する実施形態2(図5、参照)よりも流路径を大きくすることが可能で、流路抵抗を小さくすることができ、その分、ポンプ20,21の流体供給圧力を小さくすることができる。
【0082】
なお、前述した実施形態1及び実施形態2では、流体噴射部40がダイアフラム51を圧電素子52によって押圧することによって脈流を発生させる構成としたが、これに限らず、脈流を発生させる構成であれば他の形態でも構わない。例えばピストン(プランジャー)を圧電素子を用いて駆動することによって流体室の容積を変化させ、脈流を発生させてもよい。また、流体室内の液体をレーザー誘起によって泡状(バブル)にし、バブルを噴射させることによって脈流を発生するようにしてもよい。これらの構成でも、流体噴射部の駆動を停止すれば連続流噴射に切替えることができる。
【0083】
また、前述した実施形態1及び実施形態2では、噴射する流体を切除液と造影剤の二種類を例示したが、流体は二種類に限らずもっと多くすることが可能である。たとえば、切除液と造影剤の他に、治療用の薬液を用いることができ、これらの複数種類の液体を適宜組み合わせ、それぞれ用途に応じて切替えて噴射させることも可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…流体噴射装置、2…切除液容器、3…造影剤容器、6…カテーテル(流体供給チューブ)、20…流体供給手段としてのポンプ、30…切替え手段、31,32…バルブ、40…流体噴射部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切除液または造影剤のいずれか一方を噴射させる一つの流体噴射部と、
前記流体噴射部に前記切除液または前記造影剤を供給する流体供給手段と、
前記流体噴射部と前記流体供給手段とを接続する流体供給チューブと、
噴射させる流体を前記切除液または前記造影剤のいずれか一方に切替える切替え手段と、
が備えられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記流体噴射部が、流体室と、前記流体室の容積を変更する容積変更手段とを有し、パルス流噴射と連続流噴射とに切り替え可能であることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置において、
前記流体噴射部による前記造影剤の噴射圧力が、切除力を有しない程度に制御されることを特徴とする流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−67331(P2011−67331A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220279(P2009−220279)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】