説明

流体圧用シリンダヘッド

【課題】
ピストン軸の摺動を円滑とすることができるとともに、部品点数および製造工数を低減することができる流体圧用シリンダヘッドを提供すること。
【解決手段】
流体圧シリンダAの端部に取着され、該流体圧シリンダAの内部への異物の混入を防止するためのダストシール部12と、シリンダ内に充填される流体の漏れを防止するためのオイルシール部と、及びシリンダに挿通されるピストン軸を受けるための軸受部とが設けられた流体圧シリンダ用ヘッドにおいて、
前記流体圧用シリンダヘッドを構成するヘッド本体は、樹脂材により構成されており、
前記ダストシール部及び軸受部は前記ヘッド本体に一体成形されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧用のシリンダに取り付けられるシリンダヘッド、すなわち、流体圧用シリンダヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示すような従来技術の流体圧用シリンダヘッド(以下、適宜、単に「シリンダヘッド」という)9の材質としては、通常、安価な鉄材が使用されていた。しかしながら、流体圧用シリンダAを挿通するピストン軸A1も鉄材からなるために、筒状に形成された樹脂材からなる軸受部91をシリンダヘッド9に嵌入させる構成とすることにより、ピストン軸A1の傷つき、かじり等を防止していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、筒状に形成された樹脂材からなる軸受部91を後付けする構成とすると、部品点数及び製造工数が増えてしまうと指摘される可能性があった。
【0004】
また、流体圧用シリンダヘッド9には、軸受部91の他、ダストシール部92を設ける必要があるが、ダストシール部92を後付けすると、部品点数及び製造工数が増えてしまうと指摘される可能性があった。
【0005】
そこで、案出されたのが本発明であって、本発明は、ピストン軸の摺動を円滑とすることができるとともに、部品点数および製造工数を低減することができる流体圧用シリンダヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために独立形式の請求項である請求項1記載の流体圧シリンダ用ヘッドは、流体圧シリンダの端部に取着され、該流体圧シリンダの内部への異物の混入を防止するためのダストシール部と、前記流体圧シリンダ内に充填される流体の漏れを防止するためのオイルシール部と、及びシリンダに挿通されるピストン軸を受けるための軸受部とが設けられており、更に、前記流体圧用シリンダヘッドを構成するヘッド本体は、樹脂材により構成されており、前記ダストシール部及び軸受部は、前記ヘッド本体に一体成形されていることを特徴としている。
【0007】
このように構成された請求項1記載の流体圧シリンダ用ヘッドによれば、ヘッド本体が樹脂材により成形されるとともに、ダストシール部及び軸受部がヘッド本体に一体成形されているので、ヘッド本体を加工した後に、ダストシール部及び軸受部を別部材で成形するとともに、後付けする工程を省略することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヘッド本体が樹脂材により構成されるとともに、ダストシール部及び軸受部がヘッド本体に一体成形されているので、ピストン軸の摺動を円滑とすることができるとともに、部品点数を低減することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態の例(実施例)について説明する。勿論、本発明の技術的範囲は、下記実施例そのものに何ら限定されるものではない。
【0010】
(第1実施例)
図1は、本発明の第1の実施例(第1実施例)である流体圧シリンダヘッド(以下、適宜、単に「シリンダヘッド」という。)1の断面図である。シリンダヘッド1は、図1に示すように、流体圧シリンダ(以下、適宜、単に「シリンダ」という。)Aの端部に取り付けられるものである。
【0011】
シリンダヘッド1は、ヘッド本体11と、ダストシール部12と、オイルシール部13と、軸受部14と、抜止部15とを備えている。
【0012】
ヘッド本体11は、樹脂材(ポリアミド(PA)や、ポリアセタール(POM)等)から成り、このヘッド本体11に、ダストシール部12、オイルシール部13、軸受部14、および抜止部15が設けられることにより、シリンダヘッド1が構成される。
【0013】
ダストシール部12は、塵や埃等がシリンダA内に混入してしまうことを防止するためのものであり、樹脂材(PAや、POM等)から成り、ヘッド本体11の外方壁部11aのピストン軸A1側に設けられている。図1に示すダストシール部12は、略へ字状に形成されている。
【0014】
オイルシール部13は、シリンダA内に充填されている流体がシリンダAの外へ漏出してしまうことを防止するためのものであり、樹脂材(NBRや、ウレタンゴム等)から成る環状のオイルシール部材13aにより構成されている。このオイルシール部材13aが、ヘッド本体11の中央で且つピストン軸A1側に形成された環状溝部(言い換えれば、環状の凹部)11bに配設されることにより、オイルシール部13を構成するのである。
【0015】
軸受部14は、シリンダAに挿通されるピストン軸A1を軸受けするものであり、樹脂材(PAや、POM等)から成る。この軸受部14は、ヘッド本体11のダストシール部12とオイルシール部13との間に形成される第1軸受部14aと、オイルシール部13とヘッド本体11の内方壁部11cとの間に形成される第2軸受部14bとによって構成される。このように、ヘッド本体11を樹脂材により構成することにより、部分的に軸受部を設けた従来技術に比べて、ピストン軸A1の往復摺動運動を円滑とすることができるのである。
【0016】
抜止部15は、シリンダヘッド1がシリンダAから抜けてしまうことを防止するためのものであり、鋼材から成るスナップリングにより構成されており、ヘッド本体11の周壁部11dに形成されている。これは、シリンダAが軽負荷用であるために、スナップリング止めで足りるのである。
【0017】
ここで、ダストシール部12および軸受部14は、ヘッド本体11と一体に成形されている。これは、ヘッド本体11を樹脂材により構成したことにより可能となったものである。このようにダストシール部12及び軸受部14をヘッド本体11と一体に成形したことにより、ヘッド本体11のピストン軸A1の軸方向に対する厚みを小さくすることができ、ひいては、シリンダヘッド1の取着後におけるシリンダAの全長を短くしたり、シリンダA内の流体充填空間A2を大きくすることが可能となる。また、部品点数の低減、及び製造工数の低減を実現することができる。
【0018】
(第2実施例)
次に、上記実施例とは別の実施例(第2実施例)の流体圧用シリンダヘッド2について説明する。第2実施例を説明するに当たり、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0019】
図2は、第2実施例のシリンダヘッド2の断面図である。シリンダヘッド2には、オイルシール部材13aおよびこのオイルシール部材13aの脱抜を防止するための脱抜防止部材21を嵌入するための連通環状溝部(言い換えれば、端部に連通する環状の凹部)11eが形成されている。従って、ヘッド本体11を成形する際に、同時に連通環状溝部11eを形成することが可能となり、第1実施例に比べて、ヘッド本体11を樹脂成形した後に環状溝部11bを形成する工程を省略することが可能となる。
【0020】
また、図2に示すように、環状溝部11eに嵌め込まれた脱抜防止部材21と第1軸受部14aとの間に段差Sが、設けられている。そして、これにより、脱抜防止部材21とシリンダAに挿通されたピストン軸A1との間に間隙が形成されるが、これは、別部材である脱抜防止部材21を後から組み込むために脱抜防止部材21と第1軸受部14aとを同芯とすることが難しいこと、脱抜防止部材21は、接着材により接着されるが、この接着材が飛び出して、ピストン軸A1の摺動に影響を与えてしまうことを防止するためである。すなわち、第2実施例のシリンダヘッド2においては、第2軸受部14bは、形成されない。
【0021】
図3は、シリンダヘッド2にオイルシール部13を構成する様子を示した図である。このように、まず、オイルシール部材13aを連通環状溝部11eに嵌入し、その後又は同時に、脱抜防止部材21を嵌入する。この脱抜防止部材21をシリンダヘッド2に接着等により固定することにより、オイルシール部13が構成されるのである。
【0022】
以上、実施例に基づき、本発明を説明したが、上記実施例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であり、本発明の技術的範囲には、それらの改良変形が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施例である流体圧用シリンダヘッドの断面図である。
【図2】本発明の第2実施例である流体圧用シリンダヘッドの断面図である。
【図3】第2実施例の流体圧用シリンダヘッドにオイルシール部を構成する様子を示した図である。
【図4】従来技術の流体圧用シリンダヘッドの断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1,2 流体圧用シリンダヘッド
11 ヘッド本体
11a 外方壁部
11b 環状溝部
11c 内方壁部
11d 周壁部
11e 連通環状溝部
12 ダストシール部
13 オイルシール部
13a オイルシール部材
14 軸受部
15 抜止部
14a 第1軸受部
14b 第2軸受部
15 抜止部
21 脱抜防止部材
A シリンダ
A1 ピストン軸
A2 流体充填空間
S 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧シリンダの端部に取着され、該流体圧シリンダの内部への異物の混入を防止するためのダストシール部と、前記流体圧シリンダ内に充填される流体の漏れを防止するためのオイルシール部と、及びシリンダに挿通されるピストン軸を受けるための軸受部とが設けられた流体圧シリンダ用ヘッドにおいて、
前記流体圧用シリンダヘッドを構成するヘッド本体は、樹脂材により構成されており、
前記ダストシール部及び軸受部は、前記ヘッド本体に一体成形されていることを特徴とする流体圧シリンダ用ヘッド。
【請求項2】
ヘッド本体のシリンダ内部側端部には、環状溝部が形成されており、
この環状溝部には、前記ヘッド本体と別体であってオイルシール部を構成するオイルシール部材が配設されるとともに、該オイルシール部材の脱抜を防止するための脱抜防止部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の流体圧用シリンダヘッド。
【請求項3】
脱抜防止部材は、樹脂材により構成されており、ヘッド本体に接着固定されていることを特徴とする請求項2に記載の流体圧用シリンダヘッド。
【請求項4】
軸受部が、ダストシール部とオイルシール部との間に形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の流体圧シリンダ用ヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−132557(P2006−132557A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318738(P2004−318738)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】