説明

流体投与装置のエラストマー表面を処理する処理方法

流体投与装置のエラストマー表面を処理する処理方法であって、前記流体投与装置の1以上のエラストマー表面の1以上の支持体表面に化学グラフトを用いて薄膜を形成する処理を含み、前記薄膜は、製造段階及び組立段階におけるエラストマー表面間のくっつきを防ぐ、という処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体投与装置のエラストマー表面を処理する処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体投与装置は公知であり、通常は以下のものから成る。すなわち、貯蔵器、ポンプや弁などの投与部材、そして、投与開口部を備えた投与ヘッドである。ガスケットなどのエラストマー部品については、特に製造及び組立の段階において、いくつかの問題が見られる。製造及び/又は組立のラインを止めるおそれのある「くっつき」を避けるために、ガスケットについては、滑石で表面をこすり、洗浄した上で乾燥させる必要がある。こうした作業のために、当該投与装置の製造、組立作業は複雑になる。同様の問題は、他のエラストマー部品(例えば、ポンプのピストン)でも生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/078052号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題の回避を可能にする、エラストマー(特にガスケット)表面の処理方法を提案することを目的とする。
具体的には、本発明は、効果的で長持ちし、無公害で、実行が容易である、というエラストマー表面処理方法を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は、流体投与装置のエラストマー表面を処理する処理方法であって、前記流体投与装置の1以上のエラストマー表面の1以上の支持体表面に化学グラフトを用いて薄膜を形成する処理を含み、前記薄膜は、製造段階及び組立段階におけるエラストマー表面間のくっつきを防ぐ、という処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
前記薄膜は静電気防止特性を有する疎水性剤を含む、とするのが効果的である。
効果的な点として、前記化学グラフトにより、前記薄膜の分子と前記支持体表面との間に共有結合が生じる。
実施にあたって、前記グラフト処理は、非電気化学的条件において、エラストマー表面を1以上の定着剤を含む溶液と接触させる処理を含み、前記定着剤はクリーバブルなアリール塩であって、ビニル末端又はアクリル末端シロキサンから成るグループから選択された1以上のモノマ又はポリマであること、とする。
【0007】
「エラストマー表面」との用語は、エラストマー基材(すなわち、エラストマーで製造された基材)の表面を意味する。
「エラストマー」との用語は、架橋結合(cross-linking)後の粘弾特性と、低いガラス転移温度とを有するポリマを指す。
本発明の効果的な特徴として、エラストマーは加硫されている。
【0008】
実施にあたって、前記エラストマーは一般的なエラストマーのグループから選択される。
「一般的なエラストマー」との用語は、連続使用温度の上限が80℃未満である、不飽和かつ無極性の多目的エラストマーを意味する。
実施にあたって、一般的なエラストマーのグループには、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)が含まれる。単体でもよいし、混合物としてもよい。
【0009】
実施にあたって、前記エラストマーは特殊なエラストマーのグループから選択される。
「特殊なエラストマー」との用語は、連続使用温度の上限が150℃未満であるエラストマーを意味する。
実施にあたって、特殊なエラストマーのグループには以下のものが含まれる。すなわち、ポリイソブチレン又はブチルゴム(PIB又はIIR)、ネオプレン(CR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンモノマ(EPDM)又はエチレンプロピレンモノマ(EPM)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性物質オレフィン(TPO)であって、単体でもよいし、混合物としてもよい。
【0010】
実施にあたって、前記エラストマーは、非常に特殊なエラストマーのグループから選択される。
「非常に特殊なエラストマー」との用語は、高温に耐えることができると共に特定の性質を有する、というエラストマーを意味する。
実施にあたって、当該非常に特殊なエラストマーのグループに含まれるのは、シリコーンエラストマー((無機性):ビニルメチルシリコーン(VMQ)、フェニルビニルメチルシリコーン(PVMQ)、フルオロビニルメチルシリコーン(FVMQ)、メチルシリコーン(MQ));フルオロエラストマー(FKM);パーフルオロエラストマー(FFKM);ポリアクリルエラストマー(ACM);アクリルエチレン(AEM);クロロスルホン化ポリエチレン(CSM);エピクロルヒドリンエラストマー(CO及びECO);である。単独でもよいし、混合物の形でもよい。
【0011】
実施にあたって、前記エラストマーは特定のポリマを10%から95%含むが、当該比率はエラストマー中のポリマの平均量と理解すべきである。
実施にあたって、前記エラストマー基材は30%以上のエラストマーを含む。
また、前記化学グラフトは水媒体の中で実行されること、とするのが効果的である。
実施にあたって、クリーバブル(cleavable)なアリール塩は、アリールジアゾニウム塩、アリールアンモニウム塩、アリールホスホニウム塩、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩から成るグループから選択される。
【0012】
クリーバブルなアリール塩は、一般式ArN2+,X-で表される化合物から選択される。Arはアリール基を表し、X-は陰イオンを表す。有機化合物中のアリール基は芳香族環に由来する官能基である。
実施において、X-陰イオンは以下から選択される。すなわち、I-、Cl-、Br-などのハロゲン化物などの無機陰イオン;テトラフルオロボレートなどのハロゲンほう酸塩;アルコラート、カルボン酸塩、過塩素酸塩、スルホン酸塩などの有機陰イオン。
【0013】
実施にあたって、アリール基Arは、3〜8個の炭素を有する1以上の芳香環で構成される一置換又は多置換の芳香環基又は複素芳香環基から選択することができる。複素芳香環化合物のヘテロ原子は、N、O、P、Sから選択される。置換基としては、アルキル基及び1以上のヘテロ原子(N、O、F、Cl、P、Si、Br、Sなど)がある。
実施にあたって、アリール基は、NO2、COH、CN、CO2H、アミン、ケトン、エステル、ハロゲンなどの誘引基で置換されたアリール基から選択される。
【0014】
実施にあたって、アリール基は、フェニル基及びニトロフェニル基から成るグループから選択される。
実施にあたって、クリーバブルなアリール塩は、以下のものから成るグループから選択される。すなわち、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート;4−ニトロフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート;4−ブロモフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート;4−アミノフェニルジアゾニウム塩化物;4−アミノメチルフェニルジアゾニウム塩化物;2−メチル−4−クロロフェニルジアゾニウム塩化物;4−ベンゾイルベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート;4−シアノフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート;4−カルボキシフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート;4−アセトアミドフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート;4−フェニル酢酸ジアゾニウムテトラフルオロボレート;2−メチル−4−[(2−メチルフェニル)ジアゼニル]ベンゼンジアゾニウム硫酸塩;9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロ−1−アントラセンジアゾニウム塩化物;4−ニトロナフタレンジアゾニウムテトラフルオロボレート;ナフタレンジアゾニウムテトラフルオロボレート。
【0015】
実施にあたって、クリーバブルなアリール塩は、以下から成るグループから選択される。すなわち、4−ニトロフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート;4−アミノフェニルジアゾニウム塩化物;2−メチル−4−クロロフェニルジアゾニウム塩化物;4−カルボキシフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート。
実施にあたって、クリーバブルなアリール塩の濃度は、5×10-3モル(M)から10-1Mの範囲である。
【0016】
実施にあたって、クリーバブルなアリール塩の濃度は、約5×10-2Mである。
実施にあたって、クリーバブルなアリール塩は原位置で(in situ)調製される。
「ビニル末端又はアクリル末端シロキサン」との用語は、シリコン原子と酸素原子とが交互に並んだ直鎖又は分枝鎖で形成され、末端にビニル又はアクリルのモチーフ(motifs)を含む、飽和したシリコン及び酸素水素化物を意味する。
【0017】
実施にあたって、ビニル末端又はアクリル末端シロキサンは、ビニル末端又はアクリル末端ポリメチルシロキサンなどのビニル末端又はアクリル末端ポリアルキルシロキサン;ポリジメチルシロキサン-アクリレート(PDMS-アクリレート)などのビニル末端又はアクリル末端ポリジメチルシロキサン;ポリビニルフェニルシロキサンなどのビニル末端又はアクリル末端ポリフェニルシロキサンなどのビニル末端又はアクリル末端ポリアリールシロキサン;ビニル末端又はアクリル末端ポリメチルフェニルシロキサンなどのビニル末端又はアクリル末端ポリアリールアルキルシロキサン、から成るグループから選択される。
【0018】
前記化学グラフト処理については、前記薄膜用のアンカー層の形成のためのジアゾニウム塩の化学活性化によって開始される、とするのが効果的である。
実施にあたって、前記化学活性化は溶液中の還元剤の存在によって開始される。
実施にあたって、溶液は還元剤から成るものとする。
「還元剤」との用語は、酸化還元反応中に電子を供与する化合物を意味する。本発明の一つの局面として、クリーバブルなアリール塩の酸化還元電位に対する還元剤の酸化還元電位差は、0.3ボルト(V)から3Vの範囲にある。
【0019】
本発明の一つの局面として、還元剤は、以下から成るグループから選択される。すなわち、鉄、亜鉛、ニッケルを含む、微粉砕可能な還元金属;メタロセンの形をとることの可能な金属塩;次亜リン酸、アスコルビン酸を含む有機還元剤。
実施にあたって、還元剤の濃度は0.005Mから2Mの範囲にある。
実施にあたって、還元剤の濃度は約0.6Mである。
【0020】
実施にあたって、前記薄膜の厚みは1マイクロメータ(μm)未満であって、10オングストローム(Å)から2000Åの範囲にある。10Åから800Åの範囲にあるのが効果的であり、400Åから1000Åの範囲にあるのが好ましい。従来のコーティング技術では、ここまで薄い化学グラフト層を得ることは不可能である。
また、前記投与装置は、流体を格納している貯蔵器と、前記貯蔵器に固定されるポンプまたは弁である投与部材と、投与開口部を備えた投与ヘッドとを有し、当該投与ヘッドは前記投与部材を駆動させること、とするのが効果的である。
【0021】
また、前記エラストマー表面とは、ポンプまたは弁である投与部材のネックガスケット及び弁ガスケットの両方又は一方であること、とするのが効果的である。
また、前記流体は点鼻又は経口の形で噴霧される医薬であること、とするのが効果的である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施にあたっては、国際公開第2008/078052号に記載されたものに類似の方法を用いることが可能である。当該国際公開に記載されているのは、非電気化学的条件の下で堅い支持体の表面に有機薄膜を設ける方法である。驚くべきことに、このタイプの方法は、エラストマー表面(特に、投与装置のガスケット)に薄膜を形成するのに適していることが分かった。そのようなグラフト法の適用は、これまで考えられてこなかった。これにより、流体投与装置の製造及び組立の間に通常必要となる、滑石を用いた除塵作業が不要となる。
【0023】
要約すれば、本方法は、エラストマーの支持体表面に薄膜を形成することを目的とする。本方法は主に、前記支持体表面を液体溶液に浸す処理から成る。液体溶液は1以上の溶媒と1以上の定着剤とを含み、当該定着剤からはラジカル体(radical entities)の形成が可能である。
「薄膜」とは、特に有機性のポリマ膜であって、例えば、有機化学種の複数の単位から生じ、本方法が実施される支持体表面に共有結合の形で結合されるものである。具体的には、支持体の表面に共有結合の形で結合され、類似の性質の構造単位から成る1以上の層を有する膜のことである。各種単位間で進む共有結合により、膜厚に応じた結合力が実現される。薄膜には、帯電防止特性を有する疎水性剤を含ませるのが好ましい。
【0024】
本方法に関連して用いられる溶媒は、プロトン性でも非プロトン性でもよい。ただし、前記溶媒は定着剤を溶かすものとするのが好ましい。
「プロトン性溶媒」との用語は、陽子の形で放出することの可能な水素原子を1以上含む溶媒を意味する。プロトン性溶媒は、以下から成るグループから選択すればよい。すなわち、水;脱イオン水;蒸留水(酸性化してもよいが、必須ではない);酢酸;メタノールやエタノールなどのヒドロキシル化溶媒;エチレングリコールなどの低分子量の液体グリコール;そして、これらの混合物。第1の例では、プロトン性溶媒は、プロトン性溶媒単独で成るものとしてもよいし、異なるプロトン性溶媒の混合物によって成るものとしてもよい。次の例では、プロトン性溶媒又はプロトン性溶媒の混合物に1以上の非プロトン性溶媒を混合するとしてもよい。理解されるであろうが、この場合、結果として生じる混合物はプロトン性溶媒の特徴を示すものでなければならない。酸性化した水は、好ましいプロトン性溶媒であるが、より具体的に言えば、酸性化した蒸留水や、酸性化した脱イオン水が好ましい。
【0025】
「非プロトン性溶媒」との用語は、プロトン性ではないと考えられる溶媒を意味する。非極限状況の下では、こうした溶媒は、陽子の放出や受け入れには適していない。非プロトン性溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)から選択するのが効果的である。
「定着剤」との用語は、特定の条件下で、ラジカル化学グラフトなどのラジカル反応によって支持体表面に化学吸着するのに適した有機分子全般を指す。
そのような分子は、ラジカルと反応するのに適した1以上の官能基と、化学吸着後に別のラジカルと反応する反応性官能基とを含む。つまり、支持体表面に最初の分子をグラフトした後、当該分子はポリマ膜を形成することができ、更にその後、環境に存在する他の分子と反応することができる。
【0026】
「ラジカル化学グラフト」との用語は、具体的には、不対電子を有する分子実体を用いて、共有結合の形でエラストマー表面との結合を形成することを指す。その場合の前記分子実体は、それらがグラフトされる表面とは関わりなく発生させられる。そのため、ラジカル反応の結果として、共有結合が、先ず対象のエラストマー表面とグラフトされる定着剤の派生物との間に形成され、その後、グラフトされた派生物と環境に存在する分子との間に形成される。
【0027】
「定着剤の派生物」との用語は、具体的には、定着剤から生じる化学的単位を指し、当該定着剤がラジカル化学グラフトによって、特にエラストマー表面と、又は他のラジカルと化学反応した後に生じるものである。当業者にとっては自明であるが、定着剤の派生物の化学吸着の後に別のラジカルと反応する官能基は、特に支持体表面との共有結合に含まれる官能基とは別のものである。定着剤については、クリーバブルなアリール塩であって、アリールジアゾニウム塩、アリールアンモニウム塩、アリールホスホニウム塩、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩から成るグループから選択するのが効果的である。
【0028】
エラストマー表面とは、好ましくは、医薬流体投与装置のネックガスケット又は弁ガスケットである。ガスケットは、何らかの適当なエラストマー材料(エチレンプロピレンジエンモノマ(EPDM)、クロロプレン、ニトリルゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)、その他)から製造することができる。
水媒体の中で実現される、支持体表面への疎水性分子の直接的共有結合の代わりに、事前にグラフトしておいた多孔性層に疎水性分子を浸み込ませる、という方法を用いることも可能である。
【0029】
本発明はまた、製造段階及び組立段階におけるエラストマー表面間のくっつきの回避を目的とした、本発明の化学グラフト法の使用法を提供する。
本発明はまた、クリーバブルなアリール塩から生じるアリールモチーフを少なくとも有し、そして、シロキサンのモチーフを少なくとも有する、グラフト処理されたポリマによって構成された薄膜を有すること、を特徴とするエラストマー基材に関する。
【0030】
エラストマー(EPDM)帯材(strip)のひっつき防止処理の例:
当該EPDM帯材ひっつき防止処理は、例えば国際公開第2008/078052号の特許出願に記載されたGraftFast(登録商標)技術を用いて、エラストマー帯材に潤滑コーティングをグラフトする処理から成る。
長さ30センチメートル(cm)、幅5cmの帯材を、GraftFast(登録商標)槽に浸し、環境温度において、1分当たり30回転(30rpm)で30分間撹拌した。当該GraftFast(登録商標)槽には、ジビニル性PDMS(1リットルにつき1グラム(g/L))、4-アミノ安息香酸(1リットルにつき0.05モル(mol/L))、ドデシル硫酸ナトリウム(0.01mol/L)、塩化水素酸(0.23mol/L)、次亜リン酸(0.313mol/L)、亜硝酸ナトリウム(0.047mol/L)を入れてあった。こうしたやり方で、1.6Lの量で、6つの帯材(5cm×30cm)を縦方向に処理した(2Lの例(specimen of 2L))。
【0031】
その後、帯材のすすぎ処理を、以下の連続した4つの段階で実行した。(i)環境温度の界面活性剤型洗剤の水溶液(10%vol)を上から浴びせ、(ii)40℃の界面活性剤型洗剤の水溶液(10%vol)に浸し、5分間超音波(100ワット(W))を当て、(iii)環境温度の界面活性剤型洗剤の水溶液(10%vol)を上から浴びせ、そして最終段階として、(iv)環境温度の浄水に浸して5分間撹拌した。
【0032】
最後に、水の痕跡が全て消えるまで、圧縮空気流で帯材を乾燥させた。
2つのテストを実施して、本EPDM帯材のひっつき防止特性を観察した。
第1テストは、2枚の処理後のEPDM帯材を重ねてきつく巻くというものである。巻いた状態の帯材は、96時間(h)にわたって輪ゴムできつく結束しておいた。4日後、輪ゴムを取り除き、帯材が広がる際の状態を観察した。帯材が広がる間、抵抗も変形も観察されなかった。輪ゴムを取り除くと直ちに、何ら補助をしなくとも、帯材は展開した。
【0033】
第2テストでは、処理後のEPDM帯材をプラスチック(pp)製の管に巻いて、colson結束バンドによって96時間きつく結束しておいた。4日後に結束バンドを切って、帯材が広がる際の状態を観察した。帯材が広がる間、抵抗も変形も観察されなかった。結束バンドを切ると直ちに、何ら補助をしなくとも、帯材は展開した。
当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱しない形で、様々な変更を考案することが可能であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体投与装置のエラストマー表面を処理する処理方法であって、
前記流体投与装置の1以上のエラストマー表面の1以上の支持体表面に化学グラフトを用いて薄膜を形成する処理を含み、
前記薄膜は、製造段階及び組立段階におけるエラストマー表面間のくっつきを防ぐこと、
を特徴とする処理方法。
【請求項2】
前記グラフト処理は、非電気化学的条件において、エラストマー表面を1以上の定着剤を含む溶液と接触させる処理を含み、
前記定着剤はクリーバブルなアリール塩であって、ビニル末端又はアクリル末端シロキサンから成るグループから選択された1以上のモノマ又はポリマであること、
を特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
クリーバブルなアリール塩は、アリールジアゾニウム塩と、アリールアンモニウム塩と、アリールホスホニウム塩と、アリールスルホニウム塩と、アリールヨードニウム塩とから成るグループから選択されること、
を特徴とする請求項2に記載の処理方法。
【請求項4】
ビニル末端又はアクリル末端シロキサンは、
ビニル末端又はアクリル末端ポリメチルシロキサンを含むビニル末端又はアクリル末端ポリアルキルシロキサンと;
ポリジメチルシロキサン-アクリレート(PDMS-アクリレート)を含むビニル末端又はアクリル末端ポリジメチルシロキサンと;
ポリビニルフェニルシロキサンを含むビニル末端又はアクリル末端ポリフェニルシロキサンを含むビニル末端又はアクリル末端ポリアリールシロキサンと;
ビニル末端又はアクリル末端ポリメチルフェニルシロキサンを含むビニル末端又はアクリル末端ポリアリールアルキルシロキサンと、
から成るグループから選択されること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項5】
前記化学グラフト処理は化学活性化によって開始されること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記化学活性化は溶液中の還元剤の存在によって開始されること、
を特徴とする請求項5に記載の処理方法。
【請求項7】
還元剤は、鉄、亜鉛、ニッケルを含む、微粉砕可能な還元金属と、メタロセンの形をとることの可能な金属塩と、次亜リン酸、アスコルビン酸を含む有機還元剤と、から成るグループから選択されること、
を特徴とする請求項6に記載の処理方法。
【請求項8】
前記化学グラフトは水媒体の中で実行されること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項9】
前記薄膜の厚みは1μm未満であって、好ましくは10Åから2000Åの範囲にあること、
を特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項10】
前記投与装置は、流体を格納している貯蔵器と、前記貯蔵器に固定されるポンプまたは弁である投与部材と、投与開口部を備えた投与ヘッドとを有し、当該投与ヘッドは前記投与部材を駆動させること、
を特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項11】
前記エラストマー表面とは、ポンプまたは弁である投与部材のネックガスケット及び弁ガスケットの両方又は一方であること、
を特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項12】
前記流体は点鼻又は経口の形で噴霧される医薬であること、
を特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項13】
製造段階及び組立段階におけるエラストマー表面間のくっつきの回避を目的とした、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の処理方法の使用法。
【請求項14】
クリーバブルなアリール塩から生じるアリールモチーフを少なくとも有し、そして、シロキサンのモチーフを少なくとも有する、グラフト処理されたポリマによって構成された薄膜を有すること、を特徴とするエラストマー基材。

【公表番号】特表2013−515804(P2013−515804A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545400(P2012−545400)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052885
【国際公開番号】WO2011/077052
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(502343252)アプター フランス エスアーエス (144)
【Fターム(参考)】