説明

流体投与部材、およびそうした部材を有する投与装置

流体投与部材、およびそうした部材を有する投与装置
流体投与部材であって、入り口ダクトが形作られた本体と、本体の中で移動することができる駆動ロッドと、駆動ロッドに連結された駆動部材と、流体が貯蔵された貯蔵器の開口部の中に本体を固定するための固定手段と、投与部材に関する情報を供給することが可能なIDユニットと、を有し、特徴となるのは、IDユニットは、本体と固定手段との間に形作られた隙間の中に収容されていることである、という投与部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入り口ダクトが形作られた本体と、本体の中で移動可能な駆動ロッドと、駆動ロッドに連結された駆動部材と、そして流体が貯蔵された貯蔵器の開口部に本体を固定するための固定手段とを有する流体投与部材に関する。
【背景技術】
【0002】
そうしたデザインは、香水、化粧品、さらには医薬品の分野において、フラスコやボトルなどの貯蔵器に貯蔵された流体を投与するために用いられるポンプまたは弁としては、完全に従来式である。
さらに具体的に言えば、本発明は、投与部材、さらに一般的にはこうした投与部材を用いた投与装置が本物であることを証明し、トレースする能力に関連する。疑いの余地なく投与部材の出所を識別可能とすることで、本物品と模倣品または偽造品とが瞬時かつ容易に区別できるようにすることが重要である。特にトレーサビリティという目的のためには、製造から販売または販売の申し込みまでの投与部材の経路または行程が追跡可能なことは重要である。仏国特許FR 2 832134号の文書で提示された解決方法では、投与部材を構成する構成部品の1つに識別(ID)ユニットを設け、この識別(ID)ユニットにより、前記投与部材に関する情報を提供することができる、としている。IDユニットは、集積回路と、情報が含まれた信号を送信することができるアンテナとを有する。信号は、高周波タイプとしてもよい。このようにすれば、IDユニットは、そのアンテナで受信された送信済み情報リクエスト信号に応答して、信号の形で情報を供給することができる。
【0003】
前記出願によるIDユニットは、投与部材の内部のさまざまな箇所に位置付けることができる。しかし、さまざまな実施の形態において、提案された位置付けには多数の問題点が見られる。
ポンプまたは弁の本体の下にはめられたリングにIDユニットを置くと、ユニットとその支持体とが貯蔵器を通して見えてしまう、という問題が見られる。つまり、この特定の位置決めは外観上の問題点を含んでいる。
【0004】
また、投与装置ヘッドの中にIDユニットを配置しても問題が生じる。その問題とは、前記ヘッドを取り除いたり引き抜いたりして、そうしたチップを有さない投与装置ヘッドと取替えることができる、という点である。したがって、この実施の形態は、偽造の立証において特に問題がある。
前記出願における別の実施の形態では、IDユニットは、貯蔵器の開口部のガスケットの下に収容された支持リングに、ポンプ本体を囲む形で置かれている。この位置付けに関する問題点は、開口部の径の寸法を決めるにあたって、ユニットとその支持体とを挿入する十分なスペースが残るようにする必要がある、という点である。このため、この実施の形態は、ポンプ本体の径とほぼ等しい径を有する貯蔵器のネックには適当でない。ポンプ本体とネックにより形作られた開口部との間のスペースは、リングを入れるため十分なものではないためである。
【0005】
終わりに、最後の実施の形態では、IDユニットをネックガスケット上で特別なリセスの中に設置することが構想されている。こうした位置決めに関する大きな問題点は、カラーが貯蔵器にクリンプ留めされる間にIDユニットが強く押され、それが原因で、場合によれば前記ユニットが故障、あるいは修復不可能なまでに破損する、という可能性がある点である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、投与部材またはそうした部材を有する投与装置の内部にIDユニットを収容するための位置付けに関する上記の従来技術の問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明は、流体投与部材であって、入り口ダクトが形作られた本体と、本体の中で移動することができる駆動ロッドと、駆動ロッドに連結された駆動部材と、流体が貯蔵された貯蔵器の開口部の中に本体を固定するための固定手段と、投与部材に関する情報を供給することが可能なIDユニットと、を有し、特徴となるのは、IDユニットは、本体と固定手段との間に形作られた隙間の中に収容されていることである、という投与部材を提供する。
【発明の効果】
【0008】
効果的な構成として、前記隙間はネックガスケットにより形作られ、前記ネックガスケットは、本体の周囲に配置され、貯蔵器の開口部に押し付けられる設計となっていることとする。
また、効果的な構成として、前記隙間は環状のハウジングを形成しており、当該環状のハウジングは、本体、固定手段の部分、そしてネックガスケットにより形作られていることとする。
また、効果的な構成として、前記隙間は環状のハウジングを形成しており、当該環状のハウジングは、本体、固定手段のうちクリンプ留めされた部分、そしてネックガスケットにより形作られていることとする。
また、効果的な構成として、前記部分は、本体に形成されたリムの下にはまっていることとする。
本発明の別の実施の形態において、IDユニットは、投与部材を構成する構成部品に固定するか、あるいは変形例において、たとえば樹脂製の基板の上に配置するか、またはその基板に内蔵または封入することができる。
【0009】
本発明はさらに、貯蔵器と本発明の投与部材とを有する、スプレーなどの流体投与装置に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に関して、本発明のいくつかの実施の形態を非限定的な例として示す添付図を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、ポンプまたは弁などの投与部材全てに適用できる。したがって、図示された投与部材1は、ポンプであっても弁であってもよい。投与部材1は、当該投与部材1を貯蔵器2に設置するために必要な構成部品を全て有する。このため、貯蔵器2は開口部20が形作られたネック21を有し、前記開口部20を介して貯蔵器2の内部は外部に通じている。
【0011】
投与部材1は入り口スリーブ11が形作られた本体10を有し、前記入り口スリーブ11にはディップチューブ14を接続することができ、このディップチューブ14は貯蔵器2の内部でその下側壁まで下方に延びている。本体のうち入り口スリーブ11から遠く離れた方の端部には、外向きに突き出したリム12がある。投与部材は駆動ロッド13をさらに有し、当該駆動ロッド13は、本体10の内部で並進移動するよう設置されている。駆動ロッド13は、部材(図示せず)を動かし、ポンプの場合はピストン、弁の場合は弁部材となり得る。しかし、このことは本発明において重要ではない。プッシャの形の駆動部材15は、駆動ロッド13の上側端部に設置される。図示された例において、プッシャ15には投与開口部16(たとえば、ノズルの形)が形成されている。こうした投与部材の動作は極めて単純で公知である。すなわち、プッシャ15を押して本体10の中の駆動ロッド13を移動させるだけで、任意の一定量の流体が駆動ロッド13から投与開口部16まで投与される。これは、化粧品、香水、さらには医薬品の分野におけるポンプまたは弁としては完全に従来通りである。
【0012】
本体10を貯蔵器2の開口部20に固定するため、固定手段17が設けられており、ここでの固定手段17は圧着カラーの形をしている。圧着カラー17には本体10のリム12を格納するためのハウジングが形成されており、また、前記圧着カラー17により、ネック21の周囲に圧接状態が実現される。これは、非限定的な実施の形態である。なぜなら、プラスチック製のリングまたはタレットの形で固定手段を備え、前記リングまたはタレットは、たとえばネックの内側または外側にはめられ、また、本体10のリム12を格納するためのハウジングが形成されている、とすることもできるからである。固定手段の特定の形は、本発明において重要でない。固定手段は、ネジ留め、スナップ留め、あるいは圧力はめ用のリングの形で備えてもよい。本発明においては、固定手段とポンプまたは弁の本体との間に隙間があるだけで十分である。
開口部20で密封様態の固定を実現するため、効果的な構成として、固定手段17はネックガスケット18を有し、当該ネックガスケット18はネック21の上側端部に押し付けられる設計となっている。ここまで説明してきたポンプまたは弁は完全に従来式である。
【0013】
本発明において、投与部材はIDユニット3を有し、当該IDユニット3により投与部材に関する情報を提供することができる。IDユニットにより提供される情報はいかなるタイプであってもよい。たとえば、前記情報として、投与部材の特性、製造の日時および場所、送り先、出荷日、受け取り日時、受け取り場所、等についての情報に関するものが考えられる。例として、情報は無線電信でIDユニットから送信することができる。この場合、IDユニットはリングを形成し、当該リングは、ソレノイドまたはシルクスクリーンを形成するアンテナ302と組み合わされた集積回路301を有し、前記ソレノイドまたはシルクスクリーンは、たとえば成形または他の手段により樹脂または他の何らかの適当な素材で作られた基板303に内蔵または封入されている、とすることができる。この形態は、図3に示されている。
【0014】
図5は、高周波ユニットを形成するリングの断面図であって、これは別の実施の形態における図である。この高周波ユニットには、プレコートワイヤのコイルで作られたアンテナ302が見られ、それは前記アンテナ302に接続された集積回路301が内蔵された基板303の上に載せられている。これは、高周波タイプのIDユニットとしては従来式である。集積回路は、情報送信ユニットから来る情報を保管し、その情報はアンテナ302により受信される。送信ユニットはまた、集積回路301に保管された情報を再生または配信するためにも使われる。すなわち、送信ユニットから情報リクエスト信号が送信されると、この信号はアンテナ302により受信され、前記情報リクエスト信号に応じて、集積回路301は保管された情報をアンテナ302を介して再生する。
【0015】
当然のことながら、こうした高周波IDユニットの使用は単に一例にすぎず、他の何らかの情報送信技術を用いて機能するいかなるタイプのIDユニットを使ってもよいことは理解されるだろう。
図1および2を参照する。見て取れるように、IDユニット3は隙間19に置かれている。隙間は環状のハウジングを形成しており、当該環状のハウジングは、固定手段17、本体10、そして密封ガスケット18で形作られている。
【0016】
IDユニット3は、何らかの適当な手段により隙間に保持されている。
見て取れるように、IDユニット3は本体10に組み合わされており、前記ユニットは隙間19の中に収容され、当該隙間19は、第1に貯蔵器2のネック21に配置されたネックガスケット18、第2に固定手段17により形作られている。
本発明において、IDユニット3は投与部材に固定または形成されているが、投与装置を構成する部品(具体的に言えば、固定手段17、密封ガスケット18、そして本体10)の構造を変化させたり、IDユニットを支持するための特別な部品を付け加えたりする必要はない。さらに、IDユニットは外側から完全に見えない状態のまま保たれ、投与装置をかなりの程度破損しない限り、その位置から取り除くことはできない。
【0017】
本発明の実施の形態において、本体のリム12の下に収容された固定手段17のうちクリンプ留めされた部分170には、隙間19が形作られている。また、IDユニット3は、前記クリンプ留めされた部分170の張り出し形状171に適合するよう形作ることができる。この場合、前記IDユニットは、前記張り出し形状171に対向する面取り部分30を有する。当然のことながら、前記IDユニット3をこうした形状として、使用される固定手段17とその形状に応じて、多かれ少なかれ前記ユニット3により隙間19を形成することができる、とするのが好ましい。
【0018】
図4に示す実施の形態において、固定手段17はタレット172と圧着リング175とを有する。タレットは本体をスナップ留めハウジングに格納し、また、前記タレットには固定フランジ173が形成されている。フランジをネックガスケットに押し付け、その結果圧着リング175が貯蔵器のネックに押し付けられるようにする形で、フランジは圧着リング175と係合される。
【0019】
タレットは、部分170が本体を囲み、これと同軸上になる状態で延びている。これにより、部分170と本体との間には環状の隙間19が形成されている。また、隙間19の下側の端部は、ネックガスケットにより形作られている。
IDユニットは、図1乃至3のIDユニットと同一であってもよく、隙間に格納または固定されている。
【0020】
理解すべきこととして、本発明における「固定手段」という言葉には、流体投与部材を貯蔵器の開口部の上またはその中に保持する働きをする単一または複数パーツの装置であれば、あらゆるものが含まれる。固定手段には、投与部材の構成部品(たとえば、図4のようなブロックフェルール)さえ形成することができる。
本発明において、IDユニット3は、投与部材から分離不可能であるという意味において、完全に投与部材の真の一体化部品である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態を構成する投与部材が設けられた流体投与装置の縦断面における部分図である。
【図2】本発明の実施の形態を構成する投与部材を用いた投与装置の一部分を大きく拡大した図である。
【図3】高周波IDユニットの実施の形態を示す概略図である。
【図4】本発明の別の実施の形態を構成する投与部材が設けられた流体投与装置の断面図である。
【図5】高周波IDユニットの別の実施の形態の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体投与部材(1)であって、
・入り口ダクト(11)が形作られた本体(10)と、
・本体の中で移動することができる駆動ロッド(13)と、
・駆動ロッドに連結された駆動部材(15)と、
・流体が貯蔵された貯蔵器(2)の開口部(20)の中に本体(10)を固定するための固定手段(17)と、
・投与部材に関する情報を供給することが可能なIDユニット(3)と、を有し、
特徴となるのは、
IDユニット(3)は、本体(10)と固定手段(17)との間に形作られた隙間の中に収容されていることである、
という投与部材。
【請求項2】
前記隙間(19)はネックガスケット(18)により形作られ、前記ネックガスケット(18)は、本体の周囲に配置され、開口部(20)に押し付けられる設計となっていること、
を特徴とする請求項1に記載の投与部材。
【請求項3】
前記隙間(19)は環状のハウジングを形成しており、当該環状のハウジングは、本体(10)、固定手段(17)の部分(170)、そしてネックガスケット(18)により形作られていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の投与部材。
【請求項4】
前記部分(170)は、本体に形成されたリム(12)の下にはまっていること、
を特徴とする請求項3に記載の投与部材。
【請求項5】
IDユニット(3)は集積回路(301)とアンテナ(302)を有し、前記アンテナ(302)は、情報が含まれた信号の送信が可能なこと、
を特徴とする請求項1に記載の投与部材。
【請求項6】
IDユニット(3)は本体(10)に固定されていること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の投与部材。
【請求項7】
IDユニット(3)は基板(303)を有し、当該基板(303)の中または上に集積回路(301)とアンテナ(302)とが配置されていること、
を特徴とする請求項5に記載の投与部材。
【請求項8】
固定手段は、圧着、ネジ留め、スナップ留め、または圧力はめ用のリングを有すること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の投与部材。
【請求項9】
流体投与装置であって、
貯蔵器(2)と請求項1乃至8のいずれかに記載の投与部材(1)とを有すること、
を特徴とする流体投与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−534462(P2007−534462A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544529(P2006−544529)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050719
【国際公開番号】WO2005/061121
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(502343252)バルワー エス.アー.エス. (144)
【Fターム(参考)】