説明

流体混合方法及びマイクロデバイス並びにその製作方法

【課題】複数種類の流体を混合する混合場であるマイクロ空間を狭小にすることができ、狭小な混合場の一点に交差するように流体同士を混合することができるので、均一且つ迅速な混合を行うことができる。
【解決手段】各供給流路12、14は、該各供給流路の中心軸が混合場18の一点で交差するように混合場18の回りに放射状に配置され、混合場18に接続される各供給流路12、14の先端部には、流体の流れを縮流するように先端部のうちの少なくとも一部にテーパー60が形成され、テーパー60は、放射状に配置された各供給流路12、14の流路先端同士を繋いで仮想円を描いたときの相当直径D1が、テーパー60を形成しないで各供給流路12、14の流路先端同士を繋いで仮想円を描いたときの相当直径D2よりも小さくなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体混合方法及びマイクロデバイス並びにその製作方法に係り、特に複数種類の流体をそれぞれ独立した供給流路を流通させて混合場に交差するように合流させ、該混合場において流体同士の混合(混合による反応も含む)を行い、混合流体を混合場から排出する流体混合方法、及びその方法を実施するマイクロデバイス並びにその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類の流体を効率的に混合するための装置の一つとして、例えば、特許文献1には、混合槽内において流体の旋回流が発生するように混合槽に流体を供給するマイクロミキサーが提案されている。しかし、例えば単分散性がよく極めて微細な微細粒子(乳化銀微粒子、磁気微粒子、有機系顔料微粒子等)を混合反応により製造しようとする場合、極めて均一且つ迅速な混合が要求され、特許文献1のマイクロミキサーでは十分ではないという問題がある。
【0003】
一方、特許文献2のマイクロデバイスは、複数種類の流体をマイクロ空間な混合場の一点で交差させるように合流させることで、均一な瞬時混合を行うことのできるように構成したものである。このマイクロデバイスは、図11に示されるように、マイクロデバイスに流入した各流体スA、Bを合流領域1に供給する供給チャンネル2、3及び合流した流体Cを合流領域1からマイクロデバイスの外部に排出する排出チャンネル4を有している。そして、少なくとも、1種の流体を供給する供給チャンネル2、3は、合流領域1に流入する複数のサブチャンネル2A、2Bを有して成り、複数のサブチャンネル2A、2Bの少なくとも1の中心軸と、そのサブチャンネルが供給する流体以外の他種類の流体の内の少なくとも1つの中心軸が1点5で交差するように、サブチャンネル及び供給チャンネルが形成されている。
【0004】
このように、複数種類(例えばA、B)の流体をそれぞれ独立した流路を流通させてマイクロ空間の混合場に交差するように合流させて混合を行う場合、流体A、Bをそれぞれの供給流路(合計2本)を流通させて混合場に供給するよりも、流体A、Bを複数に分割(供給流路を分割)して混合場に供給した方が混合性能を向上させることができる。
【特許文献1】特開2006−167600号公報
【特許文献2】特開2005−288254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のマイクロデバイスの場合、流体の分割にともなって供給流路の本数も多くなるので、多くなった供給流路を混合場に接続しようとすると、混合場の容積が大きくならざるを得ないという問題がある。例えば、混合場を円板状のマイクロ空間として形成し、混合場に8本の供給流路を放射状に接続する場合、8本の供給流路の流路径を合計したと略同じ円周を有する断面円形な混合場となる。従って、供給流路の本数が増えれば増えるほど、混合場の断面円形が大きくなり、混合場の容積も増大する。この結果、混合場の容積が大きくなり過ぎて、本来のマイクロ空間な混合場を形成できなくなるという欠点がある。
【0006】
理屈上では、供給流路の本数の増加にともなって、供給流路の流路径を細くすれば、混合場の直径も小さくできる。しかし、混合場はマイクロ空間として形成しなくてはならず、供給流路の流路径も元々細いものを使用しており、更に細くすることは圧力損失が大きくなると共に、製作上でも難しくなる。
【0007】
また、理想的には、流体の混合を混合場の中だけで完結させることが望ましいが、如何に迅速な混合が可能なマイクロデバイスであっても、流体同士が混合場の中だけで混合が完結するということは稀であり、排出流路も重要な混合の場となる。ところが、従来は、混合場と排出流路とは別体と考えられており、両者の寸法、及び相対的な位置決め精度に関しては検討されていないのが実情である。
【0008】
このように、複数の流体を混合場の一点で交差するように混合させ、混合した混合流体を混合場から排出するマイクロデバイスにおいては、複数の供給流路と混合場との相対的な位置精度、及び混合場と排出流路の相対的な位置精度を高くすることのできる製作方法が必要になる。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、複数種類の流体を混合する混合場であるマイクロ空間を狭小にすることができ、狭小な混合場の一点に交差するように流体同士を混合することができるので、均一且つ迅速な混合を行うことができる流体混合方法及び、マイクロデバイスを提供することを目的とする。
【0010】
また、複数の供給流路と混合場との相対的な位置精度、及び混合場と排出流路の相対的な位置精度を高くすることのできるので、均一且つ迅速な混合を更に確実なものとすることができるマイクロデバイスの製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、複数種類の流体を、それぞれ独立した供給流路を流通させてマイクロ空間の混合場に合流して流体同士を混合し、混合した混合流体を前記混合場から排出流路を介して排出する流体混合方法において、前記複数種類の流体のうちの少なくとも一種類の流体を複数の流体に分割して流通させる分割工程と、前記分割工程後のそれぞれの流体について、前記混合場に合流する直前で縮流する縮流工程と、前記縮流したそれぞれの流体を、前記混合場の一点で交差するように合流させて流体同士を混合する合流工程と、前記混合された混合流体を前記混合場から排出する排出工程と、を備えたことを特徴とする流体混合方法を提供する。
【0012】
本発明の請求項1によれば、縮流工程において、分割工程後のそれぞれの流体について、混合場に合流する直前で縮流するようにした。これにより、分割工程において複数種類の流体を分割することにより供給流路の本数が増加しても、混合する混合場であるマイクロ空間を狭小にすることができる。また、合流する流体が混合場の一点で交差するように衝突・接触させることで、これらの流体は、それが有する運動エネルギーによって、瞬間的により小さい流体塊に細分化されると共に、流体塊同士の接触状態が改善される。従って、縮流による混合場の狭小化により流体同士の拡散混合距離を短くでき、しかも狭小な混合場の一点に交差するように流体同士を混合して、直ちに排出流路から排出させるので、従来にない均一で且つ迅速な混合を行うことができる。
【0013】
尚、本発明は、混合場で流体同士を混合することで説明しているが、混合による反応も含み、以下同様である。
【0014】
請求項2は請求項1において、前記混合場は円板状のマイクロ空間であって、円板直径が1mm以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項2は、混合場の形状と大きさを規定したものであり、混合場は直径が1mm以下のマイクロ空間であることが好ましい。これにより、より均一且つより迅速な混合を行うことができる。通常は、複数種類の流体を分割することにより供給流路の本数が増加するため、混合場の直径(相当直径)を1mm以下にすることは、流路の圧力損失や細作加工上難しいが、上記の縮流工程を設けることで可能となる。
【0016】
請求項3は請求項1又は2において、排出工程では、排出される混合流体を流れ方向に縮流することを特徴とする。
【0017】
請求項3によれば、排出工程において、排出される混合流体を流れ方向に縮流することで、拡散混合距離を短くすることができる。これにより、混合場において流体同士の混合が終了せず、排出工程で混合が行われたとしても、混合拡散距離が短いので、混合を促進できる。
【0018】
請求項4は、請求項1〜3の何れか1において、前記分割工程、縮流工程、合流工程、排出工程を1単位のユニット工程として、該ユニット工程を多段で行うことを特徴とする。
【0019】
請求項4は、分割工程、縮流工程、合流工程、排出工程を1単位のユニット工程として、該ユニット工程を多段で行うようにしたので、例えば、流体A、Bを先ず混合して反応させ、反応生成物Cと流体Dとを混合して反応させる多段反応を行うことができる。従って、反応を多段階に行うことができるだけでなく、混合(反応も含む)する流体の特性や性質に応じて色々な混合の態様をとることができる。
【0020】
本発明の請求項5は前記目的を達成するために、複数種類の流体を、それぞれ独立した供給流路を流通させてマイクロ空間の混合場に合流して流体同士を混合し、混合した混合流体を前記混合場から排出流路を介して排出するマイクロデバイスにおいて、前記供給流路は、複数種類の流体のうちの少なくとも一種類の流体を複数の流体に分割して流通させるように複数本に分割した分割供給流路を含み、前記分割供給流路を含む各供給流路は、該各供給流路の中心軸が前記混合場の一点で交差するように前記混合場の回りに放射状に配置され、前記混合場に接続される各供給流路の先端部には、流体の流れを縮流するように前記先端部のうちの少なくとも一部にテーパーが形成され、前記テーパーは、前記放射状に配置された各供給流路の流路先端同士を繋いで仮想円を描いたときの相当直径D1が、前記テーパーを形成しないで各供給流路の流路先端同士を繋いで仮想円を描いたときの相当直径D2よりも小さくなるように形成されていることを特徴とするマイクロデバイスを提供する。
【0021】
請求項5は本発明を装置として構成したものであり、混合場に合流する各流体が流通する複数本の供給流路の先端部(混合場への連通口近傍)のうちの少なくとも一部にテーパーを形成したので、複数種類の流体を分割することにより供給流路の本数が増加しても、混合場であるマイクロ空間を狭小にすることができる。これにより、混合場における流体同士の拡散混合距離が短くでき、しかも狭小な混合場の一点に交差するように流体同士を混合して、直ちに排出流路から排出させるので、均一且つ迅速な混合を行うことができる。
【0022】
尚、通常、テーパーとは円錐状に径が次第に減少している状態及び部分を意味するが、本発明では「流路の内側に向けて傾斜した傾斜部分」という意味であり、以下同様である。従って、「供給流路の先端部のうちの少なくとも一部にテーパーを形成した」とは、例えば、供給流路の流路断面が四角形の場合、4辺のうちの少なくとも1辺が内側に傾斜してテーパーを形成しているとの意味である。
【0023】
請求項6は請求項5において、前記混合場は円板状のマイクロ空間であって、円板直径が1mm以下であることを特徴とする。
【0024】
請求項6によれば、混合場は直径が1mm以下のマイクロ空間であるようにすることで、より均一且つより迅速な混合を行うことができる。
【0025】
請求項7は請求項5又は6において、前記各供給流路の先端部は、前記テーパーにより流路幅を狭め、該狭めたことによる流路断面積の減少を、流路深さを深くすることで補うように形成されていることを特徴とする。
【0026】
請求項7によれば、各供給流路の先端部は、テーパーにより流路幅を狭め、該狭めたことによる流路断面積の減少を、流路深さを深くすることで補うように形成されているので、複数種類の流体を分割することにより供給流路の本数が増加しても、混合する混合場であるマイクロ空間を狭小にすることができ、しかも流路の圧力損失を増加しないようにできる。
【0027】
請求項8は請求項5〜7の何れか1において、前記相当直径D1と前記排出流路の流路断面の直径D3とが同じであることを特徴とする。
【0028】
請求項8によれば、混合場の直径と排出流路の流路断面の直径とを同じにしたので、排出流路における拡散混合距離を短くできる。これにより、混合場において流体同士の混合が終了せず、排出工程で混合が行われたとしても、拡散混合距離が短いので、混合を促進できる。
【0029】
請求項9は請求項5〜8の何れか1において、前記排出流路は、前記混合流体の流れ方向に先細形状に形成されていることを特徴とする。
【0030】
請求項9によれば、排出流路における拡散混合距離を短くすることができる。これにより、混合場において流体同士の混合が終了せず、排出工程で混合が行われたとしても、混合拡散距離が短いので、混合を促進できる。
【0031】
請求項10は、請求項5〜9の何れか1において、前記各供給流路の中心軸を動かさないで、前記混合場に旋回流を発生させるように前記テーパーの向きが調整されていることを特徴とする。
【0032】
請求項10によれば、各供給流路の先端部には、各供給流路の中心軸を動かさないで、混合場に旋回流を発生させるようにテーパーの向きが調整されているので、流体同士を混合場の一点で交差するように合流させることができ、しかも混合場内に旋回流を発生させることができる。これにより、混合の促進を一層図ることができる。
【0033】
請求項11は、請求項5〜10の何れか1のマイクロデバイスを複数直列に連結して成ることを特徴とするマイクロデバイス。
【0034】
請求項11によれば、流体の分割、縮流、合流、排出を1ユニットとして、該ユニットを多段で行うことができるので、例えば、流体ABを先ず混合して反応させ、反応生成物と流体Cとを混合して反応させることができる。従って、反応を多段階に行うことができるだけでなく、混合(反応も含む)する流体の特性や性質に応じて色々な混合の態様をとることができる。
【0035】
本発明の請求項12は前記目的を達成するために、複数種類の流体を、それぞれ独立した供給流路を流通させてマイクロ空間の混合場に合流して流体同士を混合し、混合した混合流体を前記混合場から排出流路を介して排出するマイクロデバイスを構成する複数の板状のブロックのうちの前記混合場及び該混合場に連通する前記複数本の供給流路を形成する合流ブロックと、前記排出流路を形成する排出ブロックとを製作する方法において、加工前の前記合流ブロックと前記排出ブロックとの板面同士を合わせて仮止め手段で仮止めする第1の工程と、前記仮止めされた状態で前記合流ブロックと前記排出ブロックとを着脱自在にピン結合するための複数のピンとピン孔を形成する第2の工程と、前記ピン孔にピンを挿入して前記合流ブロックと前記排出ブロックとをピン結合すると共に、前記仮止め手段を取り外す第3の工程と、前記ピン結合したまま、前記排出ブロック側の板面の中心位置から、前記合流ブロックの途中まで孔を穿設して、前記排出流路と前記混合場とを互い中心軸が一致するように形成する第4の工程と、前記排出ブロックを前記合流ブロックから取り外して一旦分解する第5の工程と、前記合流ブロックの前記排出ブロック側の面に、前記第4の工程で形成された混合場の中心軸から放射状に前記供給流路と同じ本数の流路溝を形成する第6の工程と、前記合流ブロックに前記排出ブロックを再びピン結合して組み立てる第7の工程と、を備えたことを特徴とするマイクロデバイスの製作方法を提供する。
【0036】
請求項12によれば、第1〜第3の工程において、合流ブロックと排出ブロックとを分解・組立したときに両者が正しく位置決されるためのピン及びピン孔を形成し、両者をピン結合する。
【0037】
次に、第4〜第5の工程において、ピン結合により合流ブロックと排出ブロックとを結合した状態で、排出ブロック側の板面の中心位置から、合流ブロックの途中まで孔を穿設して排出流路と混合場とを一度に形成して中心軸を一致させる。そして、合流ブロックと排出ブロックとを一旦分解する。
【0038】
次に、第6〜第7の工程において、合流ブロックの排出ブロック側の面に、混合場の中心軸から放射状に供給流路と同じ本数の流路溝を形成し、両者を再び組み立てることで、混合場、供給流路、排出流路を形成する。
【0039】
このように、合流ブロックと排出ブロックとを分解・組立の際の位置決め精度が良くなるように、ピン孔とピンとで着脱自在に結合できるようにした状態で、先ず混合場と排出流路の中心軸を一致させるように混合場と排出流路とを形成した後、混合場の中心軸から放射状に供給流路を形成するようにしたので、複数の供給流路と混合場との相対的な位置精度、及び混合場と排出流路の相対的な位置精度を高くすることができる。これにより、均一且つ迅速な混合を行うことのできるマイクロデバイスを製作することができる。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、本発明の流体混合方法及びマイクロデバイスによれば、複数種類の流体を混合する混合場であるマイクロ空間を狭小にすることができ、狭小な混合場の一点に交差するように流体同士を混合することができるので、均一且つ迅速な混合を行うことができる。
【0041】
また、本発明のマイクロデバイスの製作方法によれば、複数の供給流路と混合場との相対的な位置精度、及び混合場と排出流路の相対的な位置精度を高くすることのできるので、均一且つ迅速な混合を更に確実なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、添付図面に従って、本発明に係る流体混合方法及びマイクロデバイス並びにその製作方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0043】
図1は、本発明のマイクロデバイスの一例を示す図であり、4つのパーツを分解した状態を斜視図で示した分解斜視図である。本実施の形態では、2種類の流体A、Bの例で説明するが、2種類に限定するものではなく、3種類以上でもよい。
【0044】
本発明のマイクロデバイス30は、複数種類の流体A、Bを、それぞれ独立した供給流路12、14を流通させてマイクロ空間の混合場18に合流して流体同士を混合し、混合した混合流体Cを混合場18から排出流路16を介して排出するように構成され、以下その構造を説明する。
【0045】
ここで、流体とは、液体及び液体として扱うことのできる液体混合物も含む。混合する物としては、固体及び/又は気体を含む液体があり、例えば粉末のような微細な固体(例えば金属微粒子)及び/又は微細な気泡を含む液体混合物であってもよい。また、液体は溶解していない他の種類の液体を含むものであってもよく、例えばエマルジョンであってもよい。また、流体は気体であってもよく、気体に微細な固体を含んでいてもよい。
【0046】
図1に示すように、マイクロデバイス30は、主として、それぞれが円板状の形状をした供給ブロック32、合流ブロック34、第1排出ブロック36、及び第2排出ブロック37により構成される。そして、マイクロデバイス30を組み立てるには、円板状をしたこれらのブロック32、34、36、37のうち、合流ブロック34と第1排出ブロック36とを複数のピン31とピン孔33とによりピン結合しておき、この状態で4つのブロック32、34、36、37を、図示しないにより一体的に締結する。従って、図1の各ブロックには、前記したピン孔33以外に、図示しないボルト孔が形成されている。
【0047】
供給ブロック32の合流ブロック34に対向する側面39には、2本の環状溝38、40が同芯状に穿設されており、マイクロデバイス30を組み立て状態において、2本の環状溝38、40は流体Aと流体Bとがそれぞれ流れるリング状流路を形成する。そして、供給ブロック32の合流ブロック34に対向しない反対側の側面35から外側環状溝38と内側環状溝40に達する貫通孔42、44がそれぞれ形成される。かかる2本の貫通孔42、44のうち、外側の環状溝38に連通する貫通孔42には、流体Aを供給する図示しない供給手段(ポンプ及び連結チューブ等)が連結され、内側環状溝40に連通する貫通孔44には、流体Bを供給する図示しない供給手段(ポンプ及び連結チューブ等)が連結される。図1では、外側環状溝38に流体Aを流し、内側環状溝40に流体Bを流すようにしたが、逆にしてもよい。
【0048】
合流ブロック34の第1排出ブロック36に対向する側面41の中心には円形状の合流孔46が形成され、この合流孔46から放射状に4本の長尺放射状溝48、48…と4本の短尺放射状溝50、50…が交互に穿設される。これら合流孔46や放射状溝48、50はマイクロデバイス30を組み立てた状態において、合流孔46は混合場18となり、放射状溝48、50は流体A、Bが流れる放射状流路を形成する。
【0049】
また、8本の放射状溝48,50のうち、長尺放射状溝48の先端から合流ブロック34の厚み方向にそれぞれ貫通孔52、52…が形成され、これらの貫通孔52は供給ブロック32に形成されている前述の外側環状溝38に連通される。同様に、短尺放射状溝50の先端から合流ブロック34の厚み方向にそれぞれ貫通孔54、54…が形成され、これらの貫通孔54は供給ブロック32に形成されている内側環状溝40に連通される。
【0050】
また、第1排出ブロック36の中心には、ブロック厚み方向に1本の貫通孔56が形成され、この貫通孔56が第1の排出流路58となる。更に、第2排出ブロック37の中心には、ブロック厚み方向に1本の貫通孔57が形成され、この貫通孔57が第2の排出流路59となる。そして、第1の排出流路58と第2の排出流路59とから成る排出流路16が混合場18に連通される。この場合、第1の排出流路58は第2の排出流路59よりも流路径が細くなるように形成されることが好ましい。
【0051】
上記の構成により、流体Aは供給ブロック32の貫通孔42→外側環状溝38→合流ブロック34の貫通孔52→長尺放射状溝48から構成される供給流路12を流れて4つの分割流に分割されて混合場18(合流孔46)に至る。一方、流体Bは供給ブロック32の貫通孔44→内側環状溝40→合流ブロック34の貫通孔54→短尺放射状溝50から構成される供給流路14を流れて4つの分割流に分割されて混合場18(合流孔46)に至る。そして、混合場18において混合された混合流体Cは、排出流路16を介して混合場18から排出される。
【0052】
このように、2種類の流体A、Bを8つの流体に分割することにより、混合場18における流体同士の拡散混合距離Mを短くすることができ、これにより混合が促進される。
【0053】
図2は、流体A、Bの分割(即ち、供給流路12、14の分割)により混合場18における拡散混合距離Mの違いを示した概念図である。図2(A)は、2種類の流体A、Bを合計8流体に分割した拡散混合距離M1を示し、図2(B)は合計16流体に分割した拡散混合距離M2を示している。図2の(A)と(B)との比較から分かるように、拡散混合距離M2は拡散混合距離M1の1/2に短くなる。
【0054】
そして、混合場18において流体Aの分割流と流体Bの分割流とがそれぞれの運動エネルギーを有して合流する。合流して混合された混合流体は、90°流れ方向を変え、第1の排出流路58及び第2の排出流路59を介して混合場18から排出される。
【0055】
かかるマイクロデバイス30において、図1に示したように、合流ブロック34と第1排出ブロック36とはピン結合される。即ち、合流ブロック34と第1排出ブロック36を合わせた状態での円周位置に、それぞれピン孔33(図1では3個ずつ合計6個)が形成される。そして、ピン31をピン孔33に挿入することにより、合流ブロック34と第1排出ブロック36とをピン結合する。このピン結合の効果については、後記するマイクロデバイス30の製作方法のところで説明する。
【0056】
また、本発明のマイクロデバイス30は、図3(B)に示すように、混合場18に接続される8本の供給流路12、14の先端部には、流体A、Bの流れを縮流するように先端部のうちの少なくとも一部にテーパー60が形成される。
【0057】
図3(A)、(B)の対比から分かるように、テーパー60は、放射状に配置された8本の供給流路12、14の流路先端同士を繋いで仮想円62を描いたときの相当直径D1が、テーパー60を形成しないで8本の供給流路12、14の流路先端同士を繋いで仮想円62を描いたときの相当直径D2よりも小さくなる。
【0058】
これにより、図4の(A)と(B)との対比から分かるように、流体A、Bを分割することにより供給流路12、14の本数が2本から8本に増加しても、混合する混合場18であるマイクロ空間を狭小にすることができる。この結果、4(B)のように、流体A、Bの拡散混合距離M4を、図4(A)の拡散混合距離M3よりも短くなる。
【0059】
具体例で説明すると、供給流路12、14の流路断面が幅・深さがそれぞれ200μmの四角形状に形成された場合、テーパー60を形成しない図3(A)における混合場18の相当直径D2は523μmになる。ところが、図3(B)で示した本発明のマイクロデバイス30のように、混合場18に接続される供給流路12、14の先端部にテーパー60を形成して供給流路12、14の幅を100μmにすると、相当直径D1は261μmとなり、テーパー60がない場合の半分となる。
【0060】
混合場18の交差点64は、相当直径のセンターとなり、混合場18に流入する流体A、Bのベクトルの交点とする。もし、流れが一点で交わらない場合は、流れのベクトルが形成する多角形(もしくは立方体)の重心位置を、相当直径のセンターとすることが好ましい。尚、供給流路12、14の流路断面は四角形状が好ましいが、特に規制する必要は無い。SUSの材料に対してエッチング加工を施す場合、流路断面が半円形状になるが、この様な形状に対しても本発明は効果的である。
【0061】
また、本発明のように、混合場18に接続される供給流路12、14の流路先端部にテーパー60を形成して流路先端部のみの流路幅を狭くすることで、供給流路12、14の全体幅を狭くする場合と比較して、流動に起因する圧力損失を低減できる。
【0062】
供給流路12、14の流路先端部にテーパー60を形成する目安としては、図5に示すように、流れ方向の距離Lに対する流路幅の縮小分ΔD(d1−d2)の比率 ΔD/Lが0.1〜100の範囲が好ましく、更に好ましくはΔD/Lが1〜10の範囲である。
【0063】
ところで、流体A、Bの分割数が多く(例えば8本以上)、混合場18を狭小にするために供給流路12、14自体も更に細径にする必要がある場合には、流路先端部だけにテーパー60を形成するようにしても圧力損失が大きくなる場合がある。また、流体A、Bの接触界面における界面積を増すためには、流路幅よりも流路深さを増す方が好ましい。そこで、この場合には、図6(A)、(B)に示すように、各供給流路12、14の流路先端部は、テーパー60により流路幅を狭め、該狭めたことによる流路断面積の減少を、流路先端部の流路深さH1をその他の流路深さH2よりも深くすることで補うように形成するとよい。これにより、界面積の増大に寄与できる上、流動による圧力損失を低減することが可能である。この場合、供給流路12、14において流体A、Bの滞留部を発生させないために供給流路12、14の入口から混合場18に接続されるまでの流路断面積を一定に保つことが好ましい。
【0064】
更に、供給流路12、14の流路先端部にテーパー60を形成して流路幅を狭くすることにより、混合場18に流入する流体A、Bの流速を向上することが可能である。これにより、混合を促進できると共に、混合による反応で反応物が析出する場合には、析出物が流路先端部の壁面に付着して流れを乱すことを抑制できる。また、供給流路12、14の途中に流路を狭めた狭幅部を形成すれば、狭幅部がオリフィスとして機能し、流体A、Bを複数ある供給チャンネルに均等に分配することが可能となる。
【0065】
本発明のマイクロデバイス30において、狭小に形成される混合場18の形状としては、円板状のマイクロ空間であることが好ましい。また、混合場18から排出流路16にかけて、混合に影響する部分の寸法は、流体を流したときのRe数の値が2300以下となるような流路寸法であることが好ましい。具体的には、流量、流体A、Bの粘性にも依存するが、迅速混合を行う場合、流路寸法の上限は等価直径において1mm以下が好ましく、600μm以下がより好ましい。また、流路寸法の下限は流体の圧力損失や加工方法の観点から1μm以上とするのが好ましい。ここで、等価直径とは流路断面を円形とした場合の直径である。
【0066】
また、図7のように、8本の供給流路12、14の中心軸66を動かさないで、混合場18に旋回流を発生させるようにテーパー60の向きが調整されるようにすると、均一且つ迅速な混合を促進する上で一層好ましい。具体的な一例として、供給流路12、14の流路断面が四角形状の4辺のうちの幅方向に対向する辺の1辺のみを内側に傾斜してテーパー60を形成する。これにより、従来の2つの流体から8つの流体に分割することにより供給流路12、14の本数が増加しても、混合する混合場18であるマイクロ空間を狭小にすることができる。また、合流する流体が混合場18の一点で交差するように衝突・接触させることで、こられの流体は、それが有する運動エネルギーによって、瞬間的により小さい流体塊に細分化されると共に、流体塊同士の接触状態が改善される。従って、混合場における流体同士の拡散混合距離が短くでき、しかも狭小な混合場の一点に交差するように流体同士を混合して、直ちに排出流路から排出させるので、均一且つ迅速な混合を行うことができる。
【0067】
以上は、供給流路12、14や混合場18に関することであるが、排出流路16についても次のようにすることが好ましい。即ち、排出流路16、特に第1の排出流路58の流路断面の直径D3は、混合場18の直径D1と同じであることが好ましい。これにより、図4(B)の混合場18を第1の排出流路16の流路断面と置き換えたときに、拡散混合距離M4を短くすることができる。従って、混合場18において流体同士の混合が終了せず、排出流路16で混合が行われたとしても、拡散混合距離が短いので、混合を促進できる。更には、図8に示すように、排出流路16を、混合流体Cの流れ方向に先細形状(D1>D2)に形成することにより、排出流路16を流れる混合流体Cの層流がより薄層化される。これにより、拡散時間が短縮され、より一層高速な混合が実現できる。
【0068】
上記の如く構成されたマイクロデバイス30は、マイクロドリル加工、マイクロ放電加工、めっきを利用したモールディング、射出成形、ドライエッチング、ウエットエッチング、及びホットエンボス加工等の精密加工技術を利用して製造することができる。また、汎用的な旋盤、ボール盤を用いる機械加工技術も利用できる。例えば、供給流路12、14の流路についてみると、流路先端部に形成するテーパー60の部分だけをマイクロ放電加工により形成し、他の部分はマイクロドリル加工を使用するとよい。
【0069】
マイクロデバイス30の材料としては、特に限定されるものではなく、上述の加工技術を適用できるものであればよい。具体的には、金属材料(鉄、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、各種の金属等)、樹脂材料(フッ素樹脂、アクリル樹脂等)、ガラス(シリコン、パイレックス、石英等)を用いることができる。
【0070】
上記したように、本実施の形態では、供給ブロック32、合流ブロック、34、第1排出ブロック36、第2排出ブロックをボルト44で連結するが、流体A、Bのリーク防止用にブロック同士の間にOリングを用いていることが好ましい。しかし、組み立方法は、これに限定するものではない。例えば、ブロック同士の部材表面の分子間力を利用したり、接着剤による直接接合を利用することも可能である。直接接合を利用することにより、Oリングを省略することが可能となり、ゴム系の材料を腐食する流体にも適用できるようになる。シリコンとパイレックスの場合は、素材の熱膨張係数が近いため、加熱直接接合が可能である。一方、熱膨張係数が異なる素材を接合する場合は、真空中でアルゴンイオンビーム等を部材に照射して、部材の表面を原子レベルで洗浄し、常温で加圧接合する常温直接接合(表面活性化接合技術)を利用することができる。常温直接接合技術は、各素材を異なる材料で構成する場合に、熱的ストレスを緩和できる利点がある。尚、直接接合を行うことで、微細な供給流路12、14、混合場18、排出流路16等が、接着剤のはみ出しにより閉塞する危険から開放される。
【0071】
また、マイクロデバイス30に流体Aや流体Bを供給する供給手段には、流体A、Bの流れを制御する流体制御機能が必要である。特に、マイクロスケールな供給流路12、14、混合場18、及び排出流路16における流体の挙動は、マクロスケールとは異なる性質を持つため、マイクロスケールに適した制御方式を考えなければならない。流体制御方式は形態分類すると連続流動方式と液滴(液体プラグ)方式があり、駆動力分類すると電気的駆動方式と圧力駆動方式がある。
【0072】
これらの方式のうち最も広く用いられるのが連続流動方式である。連続流動式の流体制御では、マイクロ流路16内は全て流体で満たされ外部に用意したシリンジポンプなどの圧力源によって、流体全体を駆動するのが一般的である。この方法は、デッドボリュームが大きいことなどが難点であるが比較的簡単なセットアップで制御システムを実現できることが大きな利点である。
【0073】
また、マイクロデバイス30の温度制御は、デバイス全体を温度制御された容器中に入れることにより制御してもよいし、金属抵抗線やポリシリコンなどのヒーター構造をデバイス内に作り込み、加熱についてはこれを使用し、冷却については自然冷却でサーマルサイクルを行つてもよい。温度のセンシングは、金属抵抗線を使用する場合はヒーターと同じ抵抗線をもう一つ作り込んでおき、その抵抗値の変化に基づいて温度検出を行うのが好ましく、ポリシリコンを使用する場合は熱電対を用いて検出を行うのが好ましい。また、ペルチェ素子を流路に接触させることによって外部から加熱、冷却を行ってもよい。これにより、拡散速度を速め、迅速な混合が可能となる。更に、マイクロデバイス10に冷却装置を組込み、所望の部位のみを急過熱/急冷却することで、混合(反応)の安定性を向上させることも可能である。
【0074】
本発明に用いられるマイクロデバイス30の数は、勿論、一つでも構わないが、必要に応じて複数直列化して多段混合を行うようにしてもよい。あるいは複数並列化し(ナンバリングアップ)、その処理量を増大させるようにしてもよい。
【0075】
次に、上記の如く構成されたマイクロデバイス30を用いて本発明の流体混合方法について説明する。
【0076】
本発明の流体混合方法は、主として、分割工程と、縮流工程と、合流工程と、排出工程と、の4つの工程で構成される。
【0077】
分割工程(供給ブロック)では、流体A、Bをそれぞれ4分割、合計8つの流体に分割して流通させる。これにより、従来2つの流体A、Bをそのまま混合場18において合流させるときの拡散混合距離よりも、8つの流体A、Bとして混合場18において合流させるときの拡散混合距離の方が顕著に短くなるので、混合を促進する。
【0078】
次に、縮流工程(合流ブロック)では、分割工程後の8つの流体について、混合場18に合流する直前で縮流する。これにより、2つの流体を8つの流体に分割することにより供給流路12、14の本数が増加しても、混合する混合場18であるマイクロ空間を狭小にすることができる。
【0079】
次に、合流工程(合流ブロック)では、縮流した8つの流体を、混合場18の一点(交差点)64で交差するように合流させて流体同士を混合する。このように、合流する8つの流体A、Bが一点64で交差するように衝突・接触させることで、こられの流体A、Bは、それが有する運動エネルギーによって、瞬間的により小さい流体塊に細分化されると共に、流体塊同士の接触状態が改善される。
【0080】
従って、縮流工程では、混合場18における流体同士の拡散混合距離が短くでき、合流工程では混合場18の一点64に交差するように流体同士を混合するようにしたので、均一且つ迅速な混合を行うことができる。
【0081】
次に、排出工程(排出ブロック)では、混合された混合流体を混合場18から排出する。この場合、排出ブロックを第1排出ブロックと第2排出ブロックに分け、第1排出ブロックに形成される出流路の直径D3が混合場18の直径D1と同じようにした。これにより、混合場において流体同士の混合が終了せず、排出工程で混合が行われたとしても、混合拡散距離が短いので、混合を促進できる。排出流路を、混合流体の流れ方向に先細形状に形成すると一層よい。更には、テーパー60の向きを調整して、混合場18に旋回流を発生させるようにすると特によい。
【0082】
図9は、本発明のマイクロデバイスの別の態様であり、上記したマイクロデバイスを2段直列に連結して構成したものの分解図である。直列する多段数は、2段に限定するものではなく、3段以上でもよい。
【0083】
図9のマイクロデバイス70は、主として、それぞれ円板状に形成された第1供給ブロック72、第1合流ブロック74、第1排出ブロック76、第2供給ブロック78、第2合流ブロック80、第2排出ブロック82、及び第3排出ブロック84とで構成される。
【0084】
尚、第1供給ブロック72、第1合流ブロック74、第1排出ブロック76は、図1で説明した供給ブロック32、合流ブロック34、及び第1排出ブロック36と同様であるので説明を省略し、それ以外のブロックについて説明する。
【0085】
円板状の第2供給ブロック78の中心軸には、第1排出ブロック76の排出流路77に連通する貫通孔85が形成され、この貫通孔85に混合流体Cが供給される。一方、第2供給ブロック78には、その中心軸を中心として1本の環状溝86が形成され、第2供給ブロック78と第2合流ブロックを合わせることにより、リング状流路が形成される。そして、第2供給ブロック78の周面には環状溝86に連通する貫通孔88が形成され、流体Dが該貫通孔88から環状溝86に供給される。
【0086】
また、第2合流ブロック80の中心軸には、第2供給ブロック78の貫通孔85に連通する合流孔90が形成され、この合流孔90が混合流体Cと新たな流体Dとが合流して混合される混合場92となる。更に、第2合流ブロック80の第2排出ブロック82に対向する側面94には、合流孔90を中心した4本の放射状溝96、96…が形成される。そして、放射状溝96の先端から第2合流ブロック80の厚み方向にそれぞれ貫通孔98、98…が形成され、これらの貫通孔98は第2供給ブロック78に形成されている前述の環状溝86に連通される。
【0087】
また、第2排出ブロック82の中心軸には、ブロック厚み方向に1本の貫通孔100が形成され、この貫通孔100が第2の排出流路102となる。更に、第3排出ブロック84の中心軸には、ブロック厚み方向に1本の貫通孔104が形成され、この貫通孔104が第3の排出流路106となる。そして、第2の排出流路102及び第3の排出流路106が混合場92に連通される。
【0088】
上記の如く構成されたマイクロデバイス70によれば、流体A、Bを8つの流れに分割して1段目の混合場18において混合して反応させ、反応生成物Cと4つに分割した流体Dとを2段目の混合場92において混合して反応させることができる。従って、反応を多段階に行うことができるだけでなく、混合(反応も含む)する流体の特性や性質に応じて色々な混合の態様をとることができる。
【0089】
尚、マイクロデバイス70の場合にも、図2〜図7で説明したように、混合場92に連通する供給流路の流路先端部を縮流するようにテーパー60を形成することが好ましい。また、排出流路を混合場の直径と同等にし、更には先細形状とすることが好ましい。その他、マイクロデバイス30で説明した特徴を、全てマイクロデバイス70にも備えることが好ましい。
【0090】
次に、図10に従って本発明のマイクロデバイス30、70の製作方法について説明する。
【0091】
本発明のマイクロデバイス30、70の製作方法は、マイクロデバイス30、70を構成する上記した複数の円板状ブロック(供給ブロック32、合流ブロック34、排出ブロック36等)のうちの、合流ブロック34(74)、80と、排出流路16を形成する排出ブロック36(76)、82との製作方法である。尚、以後の説明は、合流ブロック34と排出ブロック36の例で説明する。
【0092】
先ず、図10(A)の第1加工において、未だ供給流路12、14、混合場18、排出流路16等が加工されていない加工前の合流ブロック34と排出ブロック36との板面同士を合わせて仮止め手段110(例えばクランプ、小型万力等)で仮止めする。
【0093】
次に、図10(B)の第2加工及び第3加工において、仮止めされた状態で、例えばマイクロドリルを使用し、排出ブロック36の側から複数のピン孔33を穿設して、穿設したピン孔33にピン31を挿入する。そして、仮止めに使用した仮止め手段110は取り外す。ピン孔33としては、混合場18及び排出流路16の中心軸を中心とした円周上に等距離間隔で3箇所以上形成することが好ましい。これにより、合流ブロック34と排出ブロック36とは着脱自在にピン結合される。また、3つのピン31は非対称の配置とすることで、合流ブロック34と排出ブロックの相対的な向きの間違えを防止でき、組立てミスを防止できる。更に、3本のピン31の径をそれぞれ異なるようにしておくことでも、合流ブロック34と排出ブロックの相対的な向きの間違えを防止できる。
【0094】
次に、図10(C)の第4加工において、合流ブロック34と排出ブロック36とをピン結合したまま、排出ブロック36側の板面の中心位置から、例えばマイクロドリルを使用し、合流ブロック34の途中まで穴を穿設して排出流路16と混合場18を形成すると共に、これにより排出流路16と混合場18との中心軸112を一致させる。
【0095】
次に、図10(D)の第5加工において、排出ブロック36を合流ブロック34から取り外して一旦分解する。
【0096】
次に、図10(E)の第6加工において、合流ブロック34の排出ブロック36側の板面に、第4の工程で形成された混合場18の中心軸112から放射状に供給流路12、14と同じ本数の放射状溝48、58を形成する。
【0097】
次に、図10(F)の第6加工において、合流ブロック34に排出ブロック36を再びピン結合して組み立てる。これにより、供給流路12、14、混合場18、排出流路16が形成される。尚、合流ブロック34及び排出ブロック36以外のブロックをボルトで締結するときに、ピン31が排出ブロック36側に出っ張ると邪魔になるので突起部分を切断しておく。
【0098】
本発明のマイクロデバイスの製作方法によれば、合流ブロック34と排出ブロック36とを分解・組立の際の位置決め精度が良くなるように、ピン孔33とピン31とで着脱自在に結合できるようにした状態で、先ず混合場18と排出流路16の中心軸を一致させるように混合場18と排出流路16とを形成した後、混合場18の中心軸112から放射状に供給流路12、14を形成するようにした。これにより、複数の供給流路12、14と混合場18との相対的な位置精度、及び混合場18と排出流路16の相対的な位置精度を極めて高く製作することができる。従って、均一且つ迅速な混合を行うことのできるマイクロデバイス30、70を製作することができる。
【0099】
また、合流ブロック34と排出ブロック36との正確な位置決めが可能なため、高度な組み立て技術を有する技術者がいなくとも、分解して洗浄し、再び精度良く組み立てることが可能である。
【0100】
尚、本実施の形態では、マイクロデバイス10、30を横型にした例で説明したが、マイクロデバイス10、30を縦型にすることで、比重による層流の乱れを抑制できる。この結果、比重が大幅に異なる流体や、分散している粒子が大きな場合でも、迅速な混合を安定して行うことが可能である。
【実施例】
【0101】
以下、図1に示したマイクロデバイス30を使用して、有機系顔料微粒子を製造する実施例を説明する。しかし、この実施例に限定されるものではない。
【0102】
(1)流体A(有機系顔料水溶液)の調製
ピグメントイエロー128(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、CROMOPHTAL YELLOW 8GNP)3.0gをジメチルスルホキシド45.5mL、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)2.49mL、アクアロンKH−10(第一工業製薬(株)社製)2.4g、N−ビニルピロリドン(和光純薬(株)社製)0.6g、ポリビニルピロリドンK30(東京化成工業(株)社製)0.15g、VPE0201(和光純薬(株)社製)1.5gと共に室温で溶解した。流体AのpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。
【0103】
(2)流体Bとしては蒸留水を使用した。
【0104】
そして、これらの流体A,Bを、0.45μmのミクロフィルター(ザルトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除いた。
【0105】
(3)マイクロデバイス30の条件
(i)供給流路本数…2種類の流体A,Bを、それぞれについて5本に分割(合計10本の流路が合流する。尚、図1の装置の場合は各4本で合計8本である。)
(ii)供給流路12、14の直径…各400μm
(iii)混合場18の直径…800μm
(iv)排出流路16の直径…800μm
(v)混合場18において各供給流路12、14と排出流路16との中心軸同士の交差角度…90°
(vi)装置の材質…ステンレス(SUS304)
(vii)流路加工法…マイクロ放電加工で行い、供給ブロック32、合流ブロック34、第1排出ブロック36、第2排出ブロック37の4つのパーツの封止方法は鏡面研磨による金属面シールで行った。マイクロデバイス10の入り口に長さ50cm、等価直径1mmのテフロン(登録商標)チューブ2本を用いて接続し、その先にそれぞれ流体Aと流体Bとを入れたシリンジを繋ぎ、ポンプにセットした。また、マイクロデバイス10の出口には長さ1.5m、等価直径2mmを有するテフロン(登録商標)チューブを接続した。そして、流体Aを150mL/min、流体Bを600mL/minの送液速度にて送り出した。
【0106】
マイクロデバイス30は、各供給流路の先端部にテーパー60を形成しないもの(比較例)と、テーパー60を形成して混合場18に入る流れを縮流して、混合場18における流体同士A,Bの拡散距離を比較例の1/2に小さくしたもの(実施例)と、を使用して対比した。
【0107】
その結果、比較例のマイクロデバイスによって得られた有機系顔料微粒子の体積平均粒径Mvは25.2nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は1.50であった。
【0108】
これに対して、実施例のマイクロデバイスによって得られた有機系顔料微粒子の体積平均粒径Mv、及び単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比ともに比較例よりも小さくなり、良い結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明のマイクロデバイスの分解斜視図
【図2】流体を分割することにより、混合場での拡散混合距離が短くなることを説明する説明図
【図3】供給流路の流路先端部にテーパーを形成した場合と形成しない場合での混合場の相当直径を比較する説明図
【図4】テーパーを形成したことにより混合場あるいは排出流路での拡散混合距離が短くなることを説明する説明図
【図5】供給流路の流路先端部のテーパーを説明する説明図
【図6】流路断面積を変えずにテーパーを形成する説明図
【図7】混合場に旋回流を形成するためのテーパーの形成方法を説明する説明図
【図8】排出流路を先細形状にする概念図
【図9】本発明のマイクロデバイスの別態様で、多段混合を行うものの分解斜視図
【図10】本発明のマイクロデバイスの製作方法を説明する説明図
【図11】従来のマイクロデバイスを説明する説明図
【符号の説明】
【0110】
30、70…マイクロデバイス、12、14…流体の供給流路、16…排出流路、18…混合場、32供給ブロック、34…合流ブロック、36…第1排出ブロック、37…第2排出ブロック、38…外側環状溝、40…内側環状溝、42、44…供給ブロックの貫通孔、46…合流孔(混合場18)、48…長尺放射状溝、50…短尺放射状溝、52、54…合流ブロックの貫通孔、56…貫通孔(58…第1の排出流路)、57…貫通孔(
59…第2の排出流路)、60…テーパー、62…仮想円、64…交差点、66…供給流路の中心軸、72…第1供給ブロック、74…第1合流ブロック、76…第1排出ブロック、78…第2供給ブロック、80…第2合流ブロック、82…第2排出ブロック、84…第3排出ブロック、85…貫通孔、86…環状溝、90…合流孔、92…混合場、96…放射状溝、98…貫通孔、100…貫通孔(102…第2の排出流路)、104…貫通孔(106…第3の排出流路)、110…仮止め手段、112…混合場の中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の流体を、それぞれ独立した供給流路を流通させてマイクロ空間の混合場に合流して流体同士を混合し、混合した混合流体を前記混合場から排出流路を介して排出する流体混合方法において、
前記複数種類の流体のうちの少なくとも一種類の流体を複数の流体に分割して流通させる分割工程と、
前記分割工程後のそれぞれの流体について、前記混合場に合流する直前で縮流する縮流工程と、
前記縮流したそれぞれの流体を、前記混合場の一点で交差するように合流させて流体同士を混合する合流工程と、
前記混合された混合流体を前記混合場から排出する排出工程と、を備えたことを特徴とする流体混合方法。
【請求項2】
前記混合場は円板状のマイクロ空間であって、円板直径が1mm以下であることを特徴とする請求項1の流体混合方法。
【請求項3】
前記排出工程では、排出される混合流体を流れ方向に縮流することを特徴とする請求項1又は2の流体混合方法。
【請求項4】
前記分割工程、縮流工程、合流工程、排出工程を1単位のユニット工程として、該ユニット工程を多段で行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1の流体混合方法。
【請求項5】
複数種類の流体を、それぞれ独立した供給流路を流通させてマイクロ空間の混合場に合流して流体同士を混合し、混合した混合流体を前記混合場から排出流路を介して排出するマイクロデバイスにおいて、
前記供給流路は、複数種類の流体のうちの少なくとも一種類の流体を複数の流体に分割して流通させるように複数本に分割した分割供給流路を含み、
前記分割供給流路を含む各供給流路は、該各供給流路の中心軸が前記混合場の一点で交差するように前記混合場の回りに放射状に配置され、
前記混合場に接続される各供給流路の先端部には、流体の流れを縮流するように前記先端部のうちの少なくとも一部にテーパーが形成され、
前記テーパーは、前記放射状に配置された各供給流路の流路先端同士を繋いで仮想円を描いたときの相当直径D1が、前記テーパーを形成しないで各供給流路の流路先端同士を繋いで仮想円を描いたときの相当直径D2よりも小さくなるように形成されていることを特徴とするマイクロデバイス。
【請求項6】
前記混合場は円板状のマイクロ空間であって、円板直径が1mm以下であることを特徴とする請求項5のマイクロデバイス。
【請求項7】
前記各供給流路の先端部は、前記テーパーにより流路幅を狭め、該狭めたことによる流路断面積の減少を、流路深さを深くすることで補うように形成されていることを特徴とする請求項5又は6のマイクロデバイス。
【請求項8】
前記相当直径D1と前記排出流路の流路断面の直径D3とが同じであることを特徴とする請求項5〜7の何れか1のマイクロデバイス。
【請求項9】
前記排出流路は、前記混合流体の流れ方向に先細形状に形成されていることを特徴とする請求項5〜8の何れか1のマイクロデバイス。
【請求項10】
前記各供給流路の中心軸を動かさないで、前記混合場に旋回流を発生させるように前記テーパーの向きが調整されていることを特徴とする請求項5〜9の何れか1のマイクロデバイス。
【請求項11】
請求項5〜10の何れか1のマイクロデバイスを複数直列に連結して成ることを特徴とするマイクロデバイス。
【請求項12】
複数種類の流体を、それぞれ独立した供給流路を流通させてマイクロ空間の混合場に合流して流体同士を混合し、混合した混合流体を前記混合場から排出流路を介して排出するマイクロデバイスを構成する複数の板状のブロックのうちの前記混合場及び該混合場に連通する前記複数本の供給流路を形成する合流ブロックと、前記排出流路を形成する排出ブロックとを製作する方法において、
加工前の前記合流ブロックと前記排出ブロックとの板面同士を合わせて仮止め手段で仮止めする第1の工程と、
前記仮止めされた状態で前記合流ブロックと前記排出ブロックとを着脱自在にピン結合するための複数のピンとピン孔を形成する第2の工程と、
前記ピン孔にピンを挿入して前記合流ブロックと前記排出ブロックとをピン結合すると共に、前記仮止め手段を取り外す第3の工程と、
前記ピン結合したまま、前記排出ブロック側の板面の中心位置から、前記合流ブロックの途中まで孔を穿設して、前記排出流路と前記混合場とを互い中心軸が一致するように形成する第4の工程と、
前記排出ブロックを前記合流ブロックから取り外して一旦分解する第5の工程と、
前記合流ブロックの前記排出ブロック側の面に、前記第4の工程で形成された混合場の中心軸から放射状に前記供給流路と同じ本数の流路溝を形成する第6の工程と、
前記合流ブロックに前記排出ブロックを再びピン結合して組み立てる第7の工程と、を備えたことを特徴とするマイクロデバイスの製作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−86889(P2008−86889A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269528(P2006−269528)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】